説明

昇降コード選択型ローマンシェード

【課題】 前後または左右の二枚幕体型、単一幕体の部分昇降型を実現できる小型で安価なドラム巻き取りタイプのローマンシェードを提供する。
【解決手段】 ヘッドレール1内に、それぞれドラム4,5を有する第1、第2の巻軸2,3を回動可能に支持する。ドラム4,5にそれぞれ第1,第2の昇降コード6,7の一端側を連結する。昇降コード6,7の他端側はヘッドレール1に吊られた幕体C1,C2に連結する。巻軸2,3は、それぞれ伝動機構11,12を介して第1、第2の駆動軸8,9に接続する。駆動軸8,9を一端側の操作機構10において、操作チェーン21,22、スプロケット13,14によって回転および回転停止操作可能とする。操作チェーン21による駆動軸8の回転を伝動機構11でドラム4に伝え、操作チェーン22による駆動軸9の回転を伝動機構12でドラム5に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1本のヘッドレールから垂下する複数の昇降コードあるいは昇降テープ(以下「昇降コード」と総称する。)を2組以上に分けて選択的に昇降させることができ、それによって幕体を前後に複数重ねて、あるいは左右に複数隣接して吊り、任意の幕体を自在に昇降させ、さらには一枚の幕体を複数組の部分に分けて部分別に昇降させることができるローマンシェードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローマンシェードは、ヘッドレールの壁に幕体の上端を係止し、ヘッドレールから昇降可能に垂下される昇降コードの一端部を幕体に連結し、昇降コードの昇降操作によって、幕体を昇降させるものである。昇降コードを昇降させるための機構として、操作コード牽引タイプと、ドラム巻き取りタイプの2つの形式がある。
操作コード牽引タイプにおいては、ヘッドレールの長手方向に所定の相互間隔を置いて複数垂下される昇降コードが、それぞれヘッドレール内のプーリーにかけられてヘッドレールに沿うように水平方向に屈折され、一括して操作コードに結合される。この操作コードは、ヘッドレールの一端側においてプーリーおよび停止手段を介して下方へ垂下される。幕体を上昇させるために操作コードを引き下げ、あるいは幕体を自重下降させるために停止手段の解除操作がなされる。
ドラム巻き取りタイプは、ヘッドレール内に、その延長方向に駆動軸が架設される。軸には所定相互間隔を置いて巻き取りドラムが取り付けられ、このドラムに昇降コードが、巻き上げおよび巻き解き可能に係止される。軸には、ヘッドレールの一端側においてプーリーが固着され、このプーリーに操作チェーンが掛け回される。操作チェーンを引き回し操作することで、軸とドラムを回転させ、操作コードを巻き上げて幕体を引き上げることができる。操作コードを任意の位置で係止部に係止させて幕体の上下位置を定める。
幕体を前後二重に吊る場合には、上記いずれかの機構の2台のローマンシェードを用意するか、特許文献1に記載されるように、ヘッドレールの前後の壁に吊り下げられた2枚の幕体をそれぞれの昇降コードで昇降させる機構をとる。特許文献1には、上記操作コード牽引タイプと、ドラム巻き取りタイプの2つの形式の機構を1つのヘッドレールに合体させて、2枚の幕体をそれぞれの昇降コードで昇降させるようにしたローマンシェードが記載されている。
しかしながら、一体化された機構で、一枚の幕体を部分別に昇降させ、あるいは複数の幕体を個別に昇降させることができるドラム巻き上げ式のローマンシェードは存在しない。
【特許文献1】特開2001−211993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
幕体を前後二重に吊る場合、あるいは左右に隣接して吊る場合に、2台のローマンシェードを用いるには、大きな設置スペースを要するし、設置費用も倍増する。操作コード牽引タイプは、幕体の幅が広くなると、それに応じて多数の昇降コードをまとめて引き回さなければならず、コードのよじれやプーリーからの脱落が生じやすく、また操作が重くなる難点がある。
したがって、この発明は、前後または左右の2枚以上の幕体を吊る形式、さらには単一幕体の複数部の独立昇降形式を実現できる小型で安価なドラム巻き取りタイプのローマンシェードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この発明においては、ヘッドレール1内に、それの延長方向に沿って第1及び第2の巻軸2,3を支持する。巻軸2上に第1のドラム4を固着し、巻軸3上に第2のドラム5を固着する。第1のドラム4に、昇降コード6の一端側を巻き取り・巻き解き可能に連結し、他端側を第1の幕体C1に連結する。第2のドラム5に、昇降コード7の一端側を巻き取り・巻き解き可能に連結し、他端側を第2の幕体C2に連結する。巻軸2,3と平行に、かつ互いに同一軸線上に、第1及び第2の駆動軸8,9を架設する。駆動軸8,9は、一端側の操作機構10においてそれぞれ回転および回転停止操作可能とする。駆動軸8の回転を第1の伝動機構11で巻軸2に伝え、第2の駆動軸9の回転を伝動機構12で巻軸3に伝える。駆動軸8,9を選択的に回転操作することによって選択された第1または第2の巻軸2,3を回転させ、当該巻き軸2,3上のドラム4,5に係止された昇降コード6,7を当該昇降コード連結された幕体C1,C2と共に昇降操作可能とする。
昇降コード6,7をヘッドレール1に吊られた単一の幕体C1の左右方向に離れた部位にそれぞれ連結し、昇降コード6,7の選択的昇降により、単一の幕体C1の昇降を部分的に独立して操作可能に構成することができ、また昇降コード6,7をヘッドレール1に前後方向に二重に吊られた2枚の幕体C1,C2にそれぞれ連結し、昇降コード6,7の選択的昇降により、幕体C1,C2を選択的に昇降操作可能に構成することができ、さらに昇降コード6,7をヘッドレール1に左右方向に隣接して吊られた2枚の幕体C1,C2にそれぞれ連結し、昇降コード6,7の選択的昇降により、左右方向に相隣接する幕体C1,C2を選択的に昇降操作可能に構成することができる。
【発明の効果】
【0005】
この発明においては、前後または左右の二枚またはそれ以上の複数幕体型、さらには単一幕体の2カ所以上の部分昇降型を実現できる小型で安価なドラム巻き取りタイプのローマンシェードを提供することができる。複数幕体C1,C2の昇降操作は、ヘッドレール1の一端側の一カ所で共通に行うことができ、使用勝手も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のローマンシェードにおけるヘッドレールを設置状態において下方から見た概略的仰視図、図2は図1におけるII−II概略断面図、図3は図1におけるIII−III概略断面図、図4は操作機構の断面図、図5(a)は幕体を前後に二重に吊る本発明のローマンシェードの概略的斜視図、(b)は幕体を左右に吊る本発明のローマンシェードの概略的斜視図、(c)は単一の幕体を部分によって選択的に昇降させる本発明のローマンシェードの概略的斜視図である。
【0007】
図1ないし4において、ローマンシェードは、例えば、窓に沿って延長するように天井面等窓枠の上部位置、その他室内の任意位置に取り付けられるヘッドレール1を有する。ヘッドレール1は、設置状態において水平に伸びる天板1aと天板の前後の縁から下方へ直角に延出する前壁1b及び後壁1cを有し、下方に開放したほぼ断面コ字状の細長部材である。
【0008】
図1ないし4、図5(a)において、ヘッドレール1の前壁1b及び後壁1cには、前後に位置する第1および第2の幕体C1,C2の上縁部がそれぞれ面ファスナ等を介して固定される。例えば、第1の幕体C1をレース生地とし、第2の幕体C2を暗幕生地とする等、任意の生地の組み合わせが可能である。
または、図5(b)おいて、ヘッドレール1の前壁1bに、左右方向に隣接して第1および第2の幕体C1,C2の上縁部がそれぞれ面ファスナ等を介して固定される。
図5(c)おいては、ヘッドレール1の前壁1bに、単一の幕体C1の上縁部が面ファスナ等を介して固定される。
【0009】
以下、第1および第2の幕体C1,C2が前後に二重に吊られる場合を例にとり説明する。ヘッドレール1内には、当該ヘッドレールの延長方向に沿って第1及び第2の巻軸2,3が回転自在に支持される。第1の巻軸2上には、第1のドラム4が固着され、第2の巻軸3上には第2のドラム5固着される。図示しないが、第1および第2のドラム4,5は、それぞれ巻軸1,2上に相互間隔をおいて複数固着される。
【0010】
第1の昇降コード6の上端が、第1のドラム4に巻き取り・巻き解き可能に連結される。昇降コード6の下端は、第1の幕体C1に連結される。また、第2の昇降コード7の上端が、第2のドラム5に巻き取り・巻き解き可能に連結され、下端が第2の幕体C2に連結される。すなわち、第1の昇降コード6は、ドラム4から垂下し、第1の幕体C1の後面に沿って図示しない複数のコードリングを通り、幕体C1の下端に係止される。第2の昇降コード7は、ドラム5から垂下し、同様に幕体C2の下端に係止される。各幕体C1,C2について、それぞれ幅方向に複数の昇降コード6,7が係止され、したがって、各ドラム4,5もそれに応じて、ヘッドレール1の延長方向に対応する相互間隔をおいて複数設けられる。簡単のために、各昇降コード6,7にそれぞれ対応する2つのドラム4,5のみを代表して図示した。
【0011】
図2,図4に示すように、第1及び第2の駆動軸8,9が、第1及び第2の巻軸2,3と平行にヘッドレール1内に、互いに同一軸線上に架設される。駆動軸8,9は、操作機構10においてそれぞれ回転および回転停止操作可能である。第1の駆動軸8の回転は、第1の伝動機構11を介して第1の巻軸2に伝えられ、第2の駆動軸9の回転は、第2の伝動機構12を介して第2の巻軸3に伝えられる。第2の駆動軸9は中空軸であり、第1の駆動軸8は、第2の駆動軸9内を相対回転自在に貫通する貫通軸である。第1の駆動軸8は、一端側において操作機構10内の第1のスプロケット13に結合され、他端側は駆動軸8から突出する。第2の駆動軸9は、一端側において操作機構10内の第2のスプロケット14に結合される。
【0012】
第1の伝動機構11は、第1の駆動軸8の他端側に固着されたプーリ15と、第1の巻軸2に固着された受動プーリ16と、これら両プーリ15,16間に掛けられたベルト17を具備する。第2の伝動機構12は、第2の駆動軸9の他端側に固着されたプーリ18と、第2の巻軸3に固着された受動プーリ19と、これら両プーリ18,19間に掛けられたベルト20を具備する。
【0013】
操作機構10は、スプロケット13,14と、これら各スプロケットに掛けられた操作チェーン21,22と、スプロケット13,14の回転を任意の位置で停止させる図示しない停止機構を備える。
【0014】
このように構成されるローマンシェードにおいては、チェーン21,22を選択的に引き回して、選択されたいずれかのドラム4,5を回転させ、いずれかの昇降コード6,7をドラム4,5に巻き上げ、または巻解くことで、任意の幕体C1,C2を昇降させることができる。2枚の幕体C1,C2の昇降操作は、ヘッドレール1の一端側の一カ所で共通に行うことができる。
【0015】
複数のドラム4とドラム5をそれぞれ巻軸2,3上に左右に分けて配置し、それぞれのドラム4,5に、図5(b)に示すように、左側または右側の幕体C1,C2に係止された昇降コード6,7を結合することにより、操作チェーン20,21を操作して、選択的に左右の幕体C1,C2を昇降操作できるように構成することができる。
【0016】
さらに、図5(c)に示すように、複数のドラム4とドラム5に単一の幕体C1の任意位置に結合されたの昇降コード6,7を係止し、操作チェーン20,21を操作して、選択的に幕体C1の一部を昇降できるように構成することができる。
【0017】
この発明は、図示の実施形態に限定されるものではなく、例えば、伝動機構11,12は、チェーン、歯車等を用いた他の公知の機構に代えることができる。
【0018】
図示の実施形態においては、巻軸2,3の回転を調整するため、ヘッドレール1の他端側に回転調整機構22が設けられる。回転調整機構22は、駆動軸8,9と同心上に支持された支持軸23と、この軸に相対回転自在に支持されたプーリ25,26と、巻軸2,3の他端側に固着された受動プーリ27,28と、プーリ25・27,26・28間にそれぞれ掛けられたベルト29,30とを有する。
【0019】
図示の実施形態において、巻軸2,3をヘッドレール1内に上下斜めに配置したが、上部または下部に水平に並べて配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、例えば遮光幕と半透光幕のような2枚の異なる幕体を個別に昇降自在に吊るローマンシェードに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のローマンシェードにおけるヘッドレールを設置状態において下方から見た概略的仰視図である。
【図2】図1におけるII−II線による概略的断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線による概略的断面図である。
【図4】操作機構の概略的断面図である。
【図5】(a)は幕体を前後に二重に吊る本発明のローマンシェードの概略的斜視図、(b)は幕体を左右に吊る本発明のローマンシェードの概略的斜視図、(c)は単一の幕体を部分によって選択的に昇降させる本発明のローマンシェードの概略的斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ヘッドレール
2 第1巻軸
3 第2巻軸
4 第1ドラム
5 第2ドラム
6 第1昇降コード
7 第2昇降コード
8 第1駆動軸
9 第2駆動軸
10 操作機構
11 第1伝動機構
12 第1伝動機構
13 スプロケット
14 スプロケット
15 プーリ
16 プーリ
17 ベルト
18 プーリ
19 プーリ
20 ベルト
21 チェーン
22 チェーン
23 回転調整機構
24 軸
25 プーリ
26 プーリ
27 プーリ
28 プーリ
29 ベルト
30 ベルト
C1 第1幕体
C2 第2幕体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端においてヘッドレールに吊られる第1及び第2の幕体と、
前記ヘッドレール内に当該ヘッドレールの延長方向に沿って支持される第1及び第2の巻軸と、
第1の巻軸上に固着される第1のドラムと、
第2の巻軸上に固着される第2のドラムと、
前記第1のドラムに一端側が巻き取り・巻き解き可能に連結され、他端側が前記第1の幕体に連結される第1の昇降コードと、
前記第2のドラムに一端側が巻き取り・巻き解き可能に連結され、他端側が前記第2の幕体に連結される第2の昇降コードと、
前記第1及び第2の巻軸と平行に前記ヘッドレール内に互いに同一軸線上に架設され、一端側の操作機構においてそれぞれ回転および回転停止操作可能な第1及び第2の駆動軸と、
前記第1の駆動軸の回転を前記第1の巻軸に伝える第1の伝動機構と、
前記第2の駆動軸の回転を前記第2の巻軸に伝える第2の伝動機構とを具備し、
前記第1または第2の駆動軸を選択的に回転操作することによって選択された前記第1または第2の巻軸を回転させ、当該巻き軸上の前記ドラムに係止された前記昇降コードを当該昇降コード連結された前記幕体と共に昇降操作可能としたことを特徴とする昇降コード選択型ローマンシェード。
【請求項2】
前記操作機構は、前記ヘッドレールの一端側に支持され、前記第1及び第2の駆動軸と同一軸線上に隣接して配置された第1及び第2のスプロケットを具備し、
前記第1の駆動軸は、一端が前記第1のスプロケットに結合された中空軸であり、
前記第2の駆動軸は、一端が前記第2のスプロケットに結合され、前記第1のスプロケット及び前記第1の駆動軸を相対回転自在に貫通する貫通軸であることを特徴とする請求項1に記載の昇降コード選択型ローマンシェード。
【請求項3】
前記第1の幕体と第2の幕体が、前記ヘッドレールに前後方向に二重に吊られ、前記第1の昇降コードが第1の幕体に、第2の昇降コードが第2の幕体にそれぞれ連結され、
前記第1及び第2の昇降コードの選択的昇降により、前記第1の幕体と第2の幕体が選択的に昇降操作されることを特徴とする請求項1または2に記載の昇降コード選択型ローマンシェード。
【請求項4】
前記第1の幕体と第2の幕体が、前記ヘッドレールに左右方向に隣接して吊られ、前記第1の昇降コードが第1の幕体に、第2の昇降コードが第2の幕体にそれぞれ連結され、
前記第1及び第2の昇降コードの選択的昇降により、左右方向に相隣接する前記第1の幕体と第2の幕体が選択的に昇降操作されることを特徴とする請求項1または2に記載の昇降コード選択型ローマンシェード。
【請求項5】
上端においてヘッドレールに吊られる幕体と、
前記ヘッドレール内に当該ヘッドレールの延長方向に沿って支持される第1及び第2の巻軸と、
前記第1の巻軸上に固着される第1のドラムと、
当該第1のドラムに対して左右方向に離れた位置で前記第2の巻軸上に固着される第2のドラムと、
前記第1のドラムに一端側が巻き取り・巻き解き可能に連結され、他端側が前記幕体の第1の係止位置に連結される第1の昇降コードと、
前記第2のドラムに一端側が巻き取り・巻き解き可能に連結され、他端側が前記幕体の前記第1の係止位置から左右方向に離れた第2の係止位置に連結される第2の昇降コードと、
前記第1及び第2の巻軸と平行に前記ヘッドレール内に互いに同一軸線上に架設され、一端側の操作機構においてそれぞれ回転および回転停止操作可能な第1及び第2の駆動軸と、
前記第1の駆動軸の回転を前記第1の巻軸に伝える第1の伝動機構と、
前記第2の駆動軸の回転を前記第2の巻軸に伝える第2の伝動機構とを具備し、
前記第1または第2の駆動軸を選択的に回転操作することによって選択された前記第1または第2の巻軸を回転させ、当該巻き軸上の前記ドラムに係止された前記昇降コードを当該昇降コード連結された幕体と共に昇降操作可能とし、これにより幕体の昇降を部分的に独立して操作可能に構成したことを特徴とする昇降コード選択型ローマンシェード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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