昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置
【課題】 従来の昇降床付き貨物自動車では、昇降床を各支柱に対して確実に固定するものがなく、走行時の振動や急旋回時又は急停止時等の移動慣性により昇降床が支柱に対してガタついたり水平移動することがあった。
【解決手段】 貨物自動車の荷台1上に昇降床2を昇降自在に設置した昇降床付きの貨物自動車において、各支柱11の所定高さ位置で昇降床2の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段4を各支柱11に設けているとともに、支柱4と昇降床2との間に昇降床2を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段5を設けていることにより、昇降床2を支柱11に対してガタつきや水平移動が起こらないようにしている。
【解決手段】 貨物自動車の荷台1上に昇降床2を昇降自在に設置した昇降床付きの貨物自動車において、各支柱11の所定高さ位置で昇降床2の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段4を各支柱11に設けているとともに、支柱4と昇降床2との間に昇降床2を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段5を設けていることにより、昇降床2を支柱11に対してガタつきや水平移動が起こらないようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、貨物自動車の荷台上にもう一つの荷物載置用の床を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車に関し、さらに詳しくはそのような昇降床付き貨物自動車における昇降床支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の昇降床付き貨物自動車は、荷物を荷台上と昇降床上の上下2段に積載できるので、積荷スペースを有効利用できるとともに輸送効率を向上させることができるものである。
【0003】
この種の昇降床付き貨物自動車の一例として、特開2002−179394号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この特許文献1の昇降床付き貨物自動車は、図13(特許文献1の図2相当図)に示すように荷台上の4隅にそれぞれフレーム101を立設し、該4本のフレーム101にそれぞれ上下に長い案内枠材102を取付けている。各案内枠材102内には、昇降装置(ネジ式又は油圧シリンダ)によって昇降せしめられるブロック部103がそれぞれ設置されている。この各ブロック部(合計4つ)103は、昇降床104の4隅をそれぞれ支持している。
【0005】
そして、この特許文献1(図13)の昇降床付き貨物自動車は、各昇降装置で各ブロック部103を同期して昇降させることにより、昇降床104を水平姿勢を維持したまま昇降させることができるようになっている。
【0006】
ところで、この種の昇降床付き貨物自動車では、走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働くと、昇降床104(ブロック部103)が案内枠材102に対して上下にガタついたり水平方向に揺れることがある。そこで、この特許文献1の昇降床付き貨物自動車には、昇降床104を所定高さ位置でロックするためのロック装置105(4箇所)が設けられている。
【0007】
この各ロック装置105は、車体側に固定された縦向きのロッド106に対して水平回動し得る支持片107を有しているとともに、該支持片107の先端部に上向きの突起部108を設けている。各上向きの突起部108は、昇降床104の4隅付近の下面に設けた凹部(穴)109にそれぞれ下方から嵌入するものである。
【0008】
そして、この各ロック装置105は、不使用時には各支持片107をそれぞれ鎖線図示(符号107′)する外方退避位置に位置させているが、昇降床104をロックするときには、昇降床104を所望の支持高さより上方まで持ち上げた状態で各支持片を所定の支持高さに位置させた後、該各支持片をそれぞれ実線図示(符号107)する内方支持位置に水平回動させ、続いて昇降床104を降下させて各凹部109をそれぞれ各突起部108に嵌合させる。
【0009】
【特許文献1】特開2002−179394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1(図13)の昇降床付き貨物自動車に使用されている各ロック装置105は、各突起部108に対して昇降床104側の各凹部109を上方から嵌合させることで昇降床104をロックするものであるが、各凹部109が各突起部108に対して上方から嵌合しているだけなので、昇降床104の浮き上がりを阻止する機能はない(走行時に車体の振動による昇降床104の上下ガタつきを防止できない)。
【0011】
又、この各ロック装置105では、昇降床104を下動させて各凹部109を各突起部108に対して同時に嵌合させ得るようにするために、各凹部109の内径を各突起部108の外径より若干大きくする必要がある。特に、昇降床104に撓みが発生すると各凹部109間の距離が変化するので、その撓みによる各凹部109間の距離変化を見越して各凹部109の内径を大きくする必要がある。従って、この各ロック装置105では、各凹部109がそれぞれ突起部108に嵌合している状態でも、昇降床104が若干ではあるが水平面内で前後・左右に揺動する余地を残している。
【0012】
このように、特許文献1(図13)の昇降床付き貨物自動車に使用されているロック装置105では、ロック状態であっても、走行時に昇降床104が上下にガタついたり水平方向に揺動したりするのを確実に阻止することができず、昇降床104のガタつきや揺動による衝突音(騒音)が発生したり衝撃荷重が車体側に伝わったりする、という問題があった。
【0013】
そこで、本願発明は、昇降床付き貨物自動車において、昇降床ガタつきや水平揺動を確実に阻止し得るようにした昇降床支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、昇降床付き貨物自動車における昇降床支持装置を対象にしている。
【0015】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の昇降床付き貨物自動車は、荷台の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱で昇降床の4隅をガイドして荷台上に昇降床を昇降自在に設置したものである。
【0016】
昇降床昇降用の駆動装置としては、昇降床の4隅を同時に昇降させ得るものであれば適宜のものが採用できる。例えば、この駆動装置として、昇降床の4隅にそれぞれ昇降装置(油圧シリンダや可逆回転可能なモータでネジ棒を回転させるもの等)を設けたものや、後述の実施形態のように昇降床側に設けた油圧シリンダと複数本のワイヤーロープとで昇降床を昇降させるようにしたもの、等が使用可能である。
【0017】
又、各支柱は、横断面コ形のフレームで該フレームのコ形内部に縦向きのガイド溝を設けたものが好ましい。このような縦向きガイド溝を設けた支柱を使用したものでは、昇降床の4隅に各ガイド溝内に嵌入する突部を設けて、該各突部をそれぞれ支柱のガイド溝に嵌入させるようにするとよい。
【0018】
この請求項1の昇降床支持装置は、各支柱の所定高さ位置で昇降床の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段を各支柱に設けているとともに、支柱と昇降床との間に昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段を設けて構成している。
【0019】
上記各支持手段は、昇降床の4隅をそれぞれ各支柱の所定高さ位置で支持し得るものであれば適宜のものが採用できるが、一例として各支柱に昇降床の4隅(例えば突部)をそれぞれピンで受ける構造のものが採用できる。又、この各支持手段は、昇降床を上下複数箇所の高さで支持し得るようにするとよい。尚、この各支持手段は、昇降床の昇降時にはそれぞれ支持解除しておく。
【0020】
又、上記付勢手段は、各支持手段により昇降床を所定高さ位置で支持した状態で、該昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢するものであれば適宜のものが採用できるが、一例として支柱と昇降床間をターンバックルで引き締めるようにしたものや、昇降床を支柱に対してスプリングで付勢させるようにしたもの、等が採用できる。尚、昇降床の付勢方向は、前後又は左右の水平外向き方向でも斜め下向き方向でもよい。
【0021】
この請求項1の昇降床支持装置では、昇降床の4隅を所定高さ位置において各支持手段により各支柱に支持させ、その昇降床支持状態で付勢手段により昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢できるので、その昇降床付勢状態では、昇降床のいずれかの部位(側端面又は下面)がいずれかの支柱(又は支柱に取付けた支持手段)に押付けられている。従って、昇降床と付勢側支柱(又は支持手段)との間に隙間がなくなり、走行時における昇降床のガタつきや浮き上がりが起こらない。
【0022】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の昇降床支持装置において、昇降床の一辺の両隅を支持する2つの支持手段が昇降床の水平移動を拘束し得るものであり、付勢手段が昇降床を前記水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するものであることを特徴としている。
【0023】
この請求項2の場合は、昇降床の一辺(例えば車輌の後側一辺)の両隅を当該位置にある2つの支柱に対してそれぞれ支持手段で水平移動不能に拘束するが、その拘束形態の一例として、昇降床の隅部と支柱にそれぞれピン穴を形成して、その両ピン穴にピンを挿入して連結する形態のものを採用できる。尚、この場合、昇降床における水平移動拘束側の辺とは対向側の辺の両隅は、各支持手段に単に載置するだけでよい。
【0024】
又、この請求項2の場合の付勢手段(例えばターンバックルによる引き寄せやスプリングによる付勢)は、昇降床における水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するが、その付勢方向は水平方向でも斜め下向き方向でもよい。
【0025】
この請求項2の昇降床支持装置では、昇降床の一方の辺の両隅を2つの支持手段で水平移動不能に拘束しているので、付勢手段は昇降床の拘束側とは対向側の辺に向けて付勢するだけで昇降床を確実にロックできるようになる。又、2つの支持手段で昇降床を水平移動不能に拘束していると、付勢手段で昇降床を一方向に付勢するだけで該昇降床をロックできるので、比較的簡単な構成で昇降床を支持できる。
【0026】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の昇降床支持装置において、付勢手段が昇降床を弾性的に付勢するものであることを特徴としている。
【0027】
この請求項3の場合の付勢手段としては、例えばスプリングを使用して昇降床を弾性的に付勢することができる。
【0028】
そして、この請求項3のように、付勢手段で昇降床を弾性的に付勢したものでは、走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働いたりしても、付勢手段の弾性作用(クッション作用)により昇降床による衝撃を緩和できるようになる。
【0029】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項の昇降床支持装置において、昇降床の少なくとも一辺の中間部に、昇降床を荷台から支える支持脚を設けていることを特徴としている。
【0030】
この請求項4の昇降床支持装置で使用される支持脚は、昇降床上に大重量の荷物を積載したときに該昇降床が荷重で撓むのを防止するものであり、好ましくは昇降床の長辺側の辺の中間部に設置するのがよい。又、この支持脚は、昇降床の少なくとも一辺の中間部にあればよいが、昇降床の対向する両辺のそれぞれ中間部に設けることが好ましい。さらに、昇降床を上下複数箇所の高さで支持し得るものでは、支持脚として昇降床の支持高さに応じて伸縮し得るものがよい。
【0031】
この請求項4のように、昇降床を支持脚で支持できるようにしたものでは、車輌停止状態では元より、走行中に振動があっても昇降床の中間部(支持脚で支持した部分)が下方に撓むのを防止できる。
【発明の効果】
【0032】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の昇降床支持装置は、各支柱の所定高さ位置で昇降床の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段を各支柱に設けているとともに、支柱と昇降床との間に昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段を設けて構成している。
【0033】
従って、この請求項1の昇降床支持装置では、昇降床の4隅を所定高さ位置において各支持手段により各支柱に支持させ、その昇降床支持状態で付勢手段により昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢できるので、昇降床と付勢側支柱(又は支持手段)との間に隙間をなくすことができ、走行時における昇降床のガタつきや浮き上がりを防止できるという効果がある。尚、このように、走行時に昇降床のガタつきや浮き上がりがなくなると、昇降床と支柱(又は付勢手段)との間の衝突音(騒音)が発生しなくなるとともに昇降床の衝撃荷重が車体側に伝わらなくなる。
【0034】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の昇降床支持装置において、昇降床の一辺の両隅を支持する2つの支持手段が昇降床の水平移動を拘束し、付勢手段が昇降床を前記水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するように構成している。
【0035】
従って、この請求項2の昇降床支持装置では、上記請求項1の効果に加えて、昇降床を一層確実にロックできるとともに、比較的簡単な構成で昇降床を支持できるという効果がある。
【0036】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の昇降床支持装置において、付勢手段が昇降床を弾性的に付勢するように構成されている。
【0037】
従って、この請求項3の昇降床支持装置では、付勢手段で昇降床を弾性的に付勢できるので、上記請求項1又は2の効果に加えて走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働いたりしても、付勢手段の弾性作用(クッション作用)により衝撃を緩和できるという効果がある。
【0038】
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項の昇降床支持装置において、昇降床の少なくとも一辺の中間部に、昇降床を荷台から支える支持脚を設けている。
【0039】
従って、この請求項4の昇降床支持装置では、昇降床を所定高さ位置において支持脚で支持できるので、上記請求項1〜3の効果に加えて、車輌停止状態では元より、走行中に振動があっても昇降床の中間部(支持脚で支持した部分)が下方に撓むのを防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
添付の図面を参照して本願のいくつかの実施形態を説明すると、図1〜図9には第1実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示され、図10には第2実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示され、図11には第3実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示され、図12には第3実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示されている。
【0041】
[図1〜図9の第1実施形態]
この第1実施形態に採用されている昇降床付き貨物自動車は、図1〜図3に示すように、貨物自動車の荷台1の上にもう一つの荷物載置用の床(昇降床)2を昇降自在に設置して、上下2段に荷物10,10・・を積み込み得るようにしたものである。
【0042】
荷台1の4隅には、それぞれ所定高さの支柱11,11・・を立設している。該4本の支柱11,11・・の上部は、四角形状の連結フレーム19で連結している。尚、荷台1の上部(各支柱11,11・・の外側)は、側板や天板等で囲ってもよい。
【0043】
4本の支柱11,11・・の内側には、荷台1とほぼ同面積の昇降床2が配置されている。この昇降床2は、その4隅がそれぞれ各支柱(4本)11,11・・にガイドされていて、該昇降床2が水平姿勢で昇降し得るようになっている。
【0044】
4本の支柱11,11・・には、図4〜図7に示すように横断面コ形のフレーム材が使用されている。即ち、この各支柱11,11・・は、中間板12の両サイドに2つの側板13,13をそれぞれ角度90°方向に突出させた横断面コ形のものが採用されている。そして、この各支柱11,11・・には、中間板12と両側板13,13とで囲われた部分に縦長のガイド溝14が形成されている。
【0045】
この4本の支柱11,11・・は、図4に示すように、車輌前側の2本をガイド溝14がそれぞれ後向きに開口するように設置している一方、車輌後側の2本をガイド溝14がそれぞれ左右内向きに開口するように設置している。
【0046】
昇降床2は、フレーム材を組立てた枠体の上面に床板を設置したものが採用されている。この昇降床2は、積載荷物によって撓まないようにするために、枠体として適度の厚さ(例えば150mm程度の厚さ)のフレーム材を使用している。そして、該枠体の上面に床板を設置した状態では、床板下面の枠体で囲われた部分に所定高さ(150mm程度)の空間部が形成されている。床板下面の空間部は、後述する昇降床昇降用の駆動装置3となる油圧シリンダ30を設置するためのスペースとして利用されている。
【0047】
昇降床2の4隅には、4本の各支柱11,11・・のガイド溝14内にそれぞれ嵌入される突部21,21,22,22が形成されている。前側の2つの突部21,21はそれぞれ前方に向けて突出しており、後側の2つの突部22,22はそれぞれ左右外向きに突出していて、4つの各突部21,21,22,22を図4に示すようにそれぞれ各支柱11,11・・のガイド溝14内に若干の隙間をもって嵌入させている。尚、他の実施形態では、各突部21,21,22,22の側面に、ガイド溝14の内面に沿って転動するローラを取付けてもよい。
【0048】
この第1実施形態では、昇降床2を昇降させるための駆動装置3として、図1〜図3に示すように昇降床2の4隅をそれぞれ吊持する4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・と、該各上動用ワイヤーロープ32,32・・をそれぞれ巻掛ける各シーブ33,33・・と、各上動用ワイヤーロープ32,32・・を引き込み・繰り出し操作する1本の油圧シリンダ30とを有している。又、この第1実施形態の駆動装置3には、油圧シリンダ30が昇降床下降側に作動したときに昇降床2を強制的に下動させる4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・と、該各下動用ワイヤーロープ34,34・・をそれぞれ巻掛ける各シーブ35,35・・とを有している。
【0049】
駆動装置3となる油圧シリンダ30は、図1〜図3に示すように、昇降床2の左右中央部の後部寄り位置における床板下面の空間部においてロッドが前側に向く姿勢で設置している。尚、この油圧シリンダ30には、車体側に設けた油圧供給源から油圧ホースを介して作動油が供給される。
【0050】
油圧シリンダ30は、昇降床2の厚さ範囲に収まるように設置されていて、昇降床2の下面が荷台1の上面に近接(又は接触)するまで該昇降床2を下動させ得るようになっている。
【0051】
油圧シリンダ30のロッド先端部には、昇降床2の幅方向に向く姿勢で角棒状の移動体31が取付けられている。この移動体31は、油圧シリンダ30の伸縮に伴って前後動して、各上動用ワイヤーロープ32,32・・及び各下動用ワイヤーロープ34,34・・をそれぞれ引き込み・繰り出し操作するものである。
【0052】
次に、この第1実施形態で使用されている昇降床昇降用の駆動装置3による昇降床2の作動について説明する。
【0053】
油圧シリンダ30が最縮小している状態では、図2に示すように移動体31が車輌後方側にあって4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・がそれぞれ繰り出されている(昇降床2部分での長さが短くなる)一方、4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・がそれぞれ引き込まれて(昇降床2部分での長さが長くなる)、昇降床2が荷台1上に近接(又は接触)する位置まで下降している。他方、油圧シリンダ30が最縮小状態から伸長すると、図3に示すように移動体31が車輌前方側に移動し、4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・がそれぞれ引き込まれる(昇降床2部分での長さが長くなる)一方、4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・がそれぞれ繰り出されて(昇降床2部分での長さが短くなる)、昇降床2が各支柱11,11・・にガイドされながら水平姿勢を維持したまま所望高さまで上動させることができる。又、昇降床2の上動状態から、油圧シリンダ30が縮小すると、各上動用ワイヤーロープ32,32・・が緩む(繰り出される)一方で、各下動用ワイヤーロープ34,34・・が緊張する(引き込まれる)ので、昇降床2を水平姿勢を維持したまま確実に下降させることができる。尚、昇降床2の昇降ストロークは最大で170cm程度であるが、油圧シリンダ30の伸縮量を調整することで、昇降床2の上動高さを無段階に調整できる。
【0054】
そして、この第1実施形態の昇降床付き貨物自動車では、昇降床2を図1に実線図示するように最下動させた状態で該昇降床2上に荷物10,10・・を積み込んだ後、その荷物とともに昇降床2を所定高さまで上動させ(図1に符号2′で示す鎖線図示状態)、該昇降床2′の下方のスペース(荷台1上)に別の荷物10,10・・を積み込むことができる。
【0055】
この昇降床付き貨物自動車に使用されている第1実施形態の昇降床支持装置は、図4〜図9に示すように、4本の支柱11,11・・に昇降床2の4隅(各突部21,21,22,22)をそれぞれ支持する4つの支持手段4,4・・と、昇降床2を所定高さ位置において特定方向(第1実施形態では前方側の斜め下向き方向)に付勢する付勢手段5,5とを備えて構成されている。
【0056】
この第1実施形態では、各支持手段4,4・・として、各支柱11に形成したピン穴(前側支柱のピン穴15、後側支柱のピン穴16)と該各ピン穴(15,16)に挿入される4本のピン41,41,42,42とが使用されている。
【0057】
前側の2本の支柱11,11には、図4〜図6に示すように両側板13,13にそれぞれ上下に所定間隔(例えば10cm間隔)をもって複数個(図示例では8個)ずつのピン穴15,15・・を形成している。他方、後側の2本の支柱11,11にも、図4、図5、図7に示すように両側板13,13にそれぞれ上下に所定間隔(10cm間隔)をもって複数個(図示例では8個)ずつのピン穴16,16・・を形成している。後側支柱11,11の各ピン穴16,16・・は、図7に示すように上下に長い長穴状に形成されている。尚、前側支柱11,11のピン穴15,15・・は車輌の左右方向に向いており、後側支柱11,11のピン穴16,16・・は車輌の前後方向に向いている。
【0058】
支持手段4の一部となる各ピン41,41(又は42,42)は、支柱11の両側板13,13の対向位置にある1組のピン穴15,15(又は16,16)に跨がる長さを有している。
【0059】
昇降床2の前側の各突部21,21の下面には、前側支柱11の両ピン穴15,15に挿通されるピン41上に係合する凹部23が形成されている。他方、昇降床2の後側の各突部22,22には、後側支柱11の両ピン穴16,16に挿通されるピン42を挿通するピン穴24が形成されている。
【0060】
付勢手段5は、この第1実施形態では、図4及び図8に示すように2つのターンバックル50,50を使用している。このターンバックル50は、図5及び図9に拡大図示するように左右逆ネジを刻設した第1ボルト52と第2ボルト53とを枠形状の操作体51で連結したものである。尚、このターンバックル50は、両ボルト52,53に対して操作体51を回転させることで両ボルト52,53間の長さを調節し得るものである。
【0061】
この各ターンバックル50,50は、不使用時には図5に示すように各支柱11の下部位置における左右外側の面に格納しており、使用時には図8及び図9に示すように各前側支柱11,11と昇降床2の左右各側面との間に斜め下向き方向に向けて設置される。尚、ターンバックル50は、図9に示すように、第1ボルト52の端部を軸54で支柱11に枢支し、第2ボルト53の端部を軸55で昇降床2の側面に枢支して設置される。
【0062】
第1実施形態の昇降床支持装置には、昇降床2の左右各側辺の前後中間部を支持する一対の支持脚7,7(図4、図8参照)を有している。この各支持脚7,7は、それぞれ外筒71と該外筒71に対して伸縮するスライド棒72からなる伸縮自在なものが採用されている。スライド棒72には、その長さ方向に所定間隔(支柱11のピン穴間隔と同じ10cm間隔)をもって複数箇所にピン穴73,73・・(図9参照)が形成されており、外筒71の下端部においてスライド棒72側のいずれかのピン穴73にピン74(図9参照)をを差込むことによって、外筒71とスライド棒72とを所望長さに調節し得るようになっている。
【0063】
この各支持脚7,7は、不使用時には図4及び図5に示すように昇降床2の左右各側面に沿って格納している。そして、使用時には、昇降床2の高さ(荷台1上面からの高さ)に応じた長さに調節し、図8及び図9に示すように各支持脚7,7の各上部を昇降床2の左右側面に枢支して下向き姿勢にする一方、該支持脚7,7の下端を荷台1の上面に着座させることによって、該各支持脚7,7で昇降床2の両側部の中間部を支持できるようになっている。尚、この各支持脚7,7は、図9に示すように外筒71を下向き姿勢にした状態で、該外筒71を揺動不能にロックするようにするとよい。
【0064】
この第1実施形態の昇降床支持装置は、次のように使用される。
【0065】
まず、図2及び図5に示すように昇降床2を最下動させた状態で該昇降床2上に荷物10(図1参照)を積み込み、その後に昇降用の駆動装置3(油圧シリンダ30)を上動側に操作して昇降床2を所望高さまで上動させる。この場合、昇降床2を予定支持高さ(例えば図8又は図9の支持高さ)よりやや上方まで上動させておく。
【0066】
次に、前側の2本の支柱11,11に対して、予定支持高さにある各側の一対のピン穴15,15にそれぞれピン41,41を差込んだ後、駆動装置3(油圧シリンダ30)を下動操作して昇降床2の前側の各突部21,21の下面(凹部23)をそれぞれピン41,41上に着座させる。尚、この状態では、各上動用ワイヤーロープ32,32・・は緊張させたままである。
【0067】
次に、後側の2本の支柱11,11に対して、予定支持高さにある各側のピン穴16,16及び昇降床2の後側各突部22,22のピン穴24,24にそれぞれピン42,42を差込む。このとき、後側の各支柱11,11のピン穴16,16は上下に長い長穴となっているので、突部22側のピン穴24が支柱11側のピン穴(長穴)16に対して重合範囲が長くなり、両ピン穴16,24にピン42を容易に挿入できる。
【0068】
尚、この状態では、昇降床2の後側の各突部22,22がピン42,42で枢支されていて昇降床2の前後移動を拘束しているが、昇降床の前側の各突部21,21はピン41,41上に載っただけである。
【0069】
次に、図8及び図9に示すように、左右の付勢手段5,5(ターンバックル50,50)を各前側支柱11,11と昇降床2の左右各側面との間で斜め下向き方向に介設し、各ターンバックル50の操作体51を回転させて両ボルト52,53を強く引き寄せる。この状態では、昇降床2の前側が各ターンバックル50,50で前方側斜め下向き方向に強く付勢されて、昇降床前側の各突部21,21が各ピン41,41を介して前側の各支柱11,11に強固に固定される。又、各ターンバックル50,50を緊締させると、昇降床2全体を前側に引っ張る作用も働くので、昇降床2の後側の各突部22,22も各ピン42,42を介して後側の各支柱11,11に強固に固定される。
【0070】
又、付勢手段5,5による付勢作業と前後して、図10に示すように左右の各支持脚7,7で昇降床2の左右各側部の中間部を荷台1上に支持する。
【0071】
このように、第1実施形態の昇降床支持装置では、比較的簡単な構成でもって昇降床2を各支柱11,11・・に強固に固定でき、走行時において車体が振動しても昇降床2がガタつくことがなく、且つ急旋回時や急停止時にも移動慣性で昇降床2が支柱11,11・・に対して水平移動することがない。従って、昇降床2のガタつきによる衝突音(騒音)が発生しないとともに、昇降床2の衝撃荷重が車体側に伝わらなくなる。
【0072】
又、各支持脚7,7で昇降床2の左右各側部の中間部を荷台1上に支持すると、車輌停止状態では元より、昇降床2上に荷物を積載した状態で走行時に強い振動があっても、昇降床2が下方に撓むのを防止できる。
【0073】
[図10の第2実施形態]
図10に示す第2実施形態の昇降床支持装置は、上記第1実施形態のものに、付勢手段として別の2つのターンバックル50A,50Aを追加したものである。
【0074】
図10の第2実施形態では、昇降床2の前側の辺の左右各端部寄り位置と前側の各支柱1,11との間にそれぞれターンバックル50A,50Aを左右斜め下向き方向に介設している。尚、この第2実施形態におけるその他の構成については、上記第1実施形態と同じなので、該第1実施形態の説明を援用する。
【0075】
この第2実施形態の昇降床支持装置では、第1実施形態の構成に別の2つのターンバックル50A,50Aを追加していることにより、昇降床2の前部側を左右方向にも確実に固定することができ、一層の安定感が得られる。
【0076】
[図11の第3実施形態]
図11に示す第3実施形態の昇降床支持装置では、付勢手段5としてターンバックルに代えてスプリング64による弾性付勢構造を採用している。
【0077】
この第3実施形態では、昇降床2の前側の左右各突部21上にL形のブラケット61を固定し、該ブラケット61の立上げ部にボルト挿通穴62を形成し、支柱11の中間板12に各ピン穴15,15・・と上下同間隔で複数個のボルト挿通穴17,17・・を形成している。ブラケット61側のボルト挿通穴62は、図11に示すように、昇降床2の突部21が支柱11のいずれかのピン穴15に挿通されたピン41上に載置された状態で、支柱11側のいずれかのボルト挿通穴17に対面するようになっている。
【0078】
そして、この第3実施形態の昇降床支持装置では、ブラケット61のボルト挿通穴62と該ボルト挿通穴62に対面する支柱11側のボルト挿通穴17とに支柱の外側からボルト63を挿通させ、内方側からボルト周りにスプリング64を嵌挿させた後、ボルト先端部からナット65を螺合・緊締させると、装着作業が完了する。尚、ボルト63の挿通作業は、前側支柱11の所望高さ位置にあるピン穴15にピン41を挿通させ、そのピン41の上に昇降床2の前側突部21を載せた状態で行われる。
【0079】
尚、図11では、前側の各支柱11の一方のみしか表示していないが、スプリング64による付勢手段5は前側の左右両支柱11にそれぞれ設けられている。又、昇降床2の後側の各突部22の支持構造は、第1実施形態のものと同じであって、該突部22に設けたピン穴24と支柱11の各ピン穴16,16とにピン42を挿通して該突部22を支持している。
【0080】
この第3実施形態の昇降床支持装置では、スプリング64を使用した付勢手段5により、昇降床2を前方(矢印A方向)に弾性的に付勢することができるので、走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働いたりしても、スプリング64の弾性作用(クッション作用)により衝撃を緩和できる。
【0081】
[図12の第4実施形態]
図12に示す第4実施形態の昇降床支持装置では、昇降床2における前側の各突部21及び後側の各突部22は、それぞれ前後各支柱11,11のピン穴15,15、16,16に挿通させた各ピン41,42の上に単に載置させただけであるが(固定していない)、昇降床2の左右側面の前後各端部寄り位置をそれぞれターンバックル50からなる付勢手段5,5で前後外向きの斜め下向き方向に付勢している。昇降床2の前後に設けた各ターンバックル50,50は、昇降床2の左右にもそれぞれ設けられている(合計4つのターンバックル50が使用されている)。
【0082】
この第4実施形態の昇降床支持装置では、昇降床2の前後の突部21,22はそれぞれピン41,42の上に載せられているだけなので、このままでは車体の振動時に各突部21,22が上方に浮き上がることがあるが、昇降床2の前後各端部寄り位置をそれぞれターンバックル50,50で斜め下向きの外方向に付勢しているので、該各突部21,22(4箇所)がそれぞれピン41,42を介して支柱11,11に固定されている。
【0083】
従って、この第4実施形態の昇降床支持装置でも、昇降床2を各支柱11,11に対して強固に固定され、走行時における昇降床2のガタつきや移動慣性による昇降床2の水平移動を確実に阻止できる。
【0084】
尚、上記第1、第2、第4の各実施形態で用いたターンバックル50は、その全長が長いために緊張状態でも若干の弾性機能を有している。このように、ターンバックル50に弾性機能があると、昇降床2に車体の移動慣性が働いても該ターンバックル50の弾性作用により衝撃を緩和することができる。特に、第4実施形態において、支柱11のガイド溝14と昇降床2の突部22の間に隙間が生じるように取付けた場合には、昇降床2が前後方向に動く際にターンバックル50の弾性作用により衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本願第1実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車の側面図である。
【図2】図1の昇降床付き貨物自動車における昇降機構の説明用斜視図(昇降床下動状態図)である。
【図3】図2からの状態変化図(昇降床上動状態図)である。
【図4】図1の昇降床付き貨物自動車における荷台部分を上方から見た図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】第1実施形態の昇降床支持装置における前側支柱部分の分解斜視図である。
【図7】第1実施形態の昇降床支持装置における後側支柱部分の分解斜視図である。
【図8】第1実施形態の昇降床支持装置で昇降床を支持した状態の斜視図である。
【図9】図8の拡大側面図である。
【図10】本願第2実施形態の昇降床支持装置で昇降床を支持した状態の斜視図である。
【図11】本願第3実施形態の昇降床支持装置の拡大図である。
【図12】本願第3実施形態の昇降床支持装置の図9相当図である。
【図13】公知(特許文献1)の昇降床付き貨物自動車の一部平面図である。
【符号の説明】
【0086】
1は荷台、2は昇降床、3は駆動装置、4は支持手段、5は付勢手段、7は支持脚、11は支柱、15,16はピン穴、21,22は昇降床の突部、24はピン穴、30は油圧シリンダ、41,42はピン、50はターンバックル、64はスプリングである。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、貨物自動車の荷台上にもう一つの荷物載置用の床を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車に関し、さらに詳しくはそのような昇降床付き貨物自動車における昇降床支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の昇降床付き貨物自動車は、荷物を荷台上と昇降床上の上下2段に積載できるので、積荷スペースを有効利用できるとともに輸送効率を向上させることができるものである。
【0003】
この種の昇降床付き貨物自動車の一例として、特開2002−179394号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この特許文献1の昇降床付き貨物自動車は、図13(特許文献1の図2相当図)に示すように荷台上の4隅にそれぞれフレーム101を立設し、該4本のフレーム101にそれぞれ上下に長い案内枠材102を取付けている。各案内枠材102内には、昇降装置(ネジ式又は油圧シリンダ)によって昇降せしめられるブロック部103がそれぞれ設置されている。この各ブロック部(合計4つ)103は、昇降床104の4隅をそれぞれ支持している。
【0005】
そして、この特許文献1(図13)の昇降床付き貨物自動車は、各昇降装置で各ブロック部103を同期して昇降させることにより、昇降床104を水平姿勢を維持したまま昇降させることができるようになっている。
【0006】
ところで、この種の昇降床付き貨物自動車では、走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働くと、昇降床104(ブロック部103)が案内枠材102に対して上下にガタついたり水平方向に揺れることがある。そこで、この特許文献1の昇降床付き貨物自動車には、昇降床104を所定高さ位置でロックするためのロック装置105(4箇所)が設けられている。
【0007】
この各ロック装置105は、車体側に固定された縦向きのロッド106に対して水平回動し得る支持片107を有しているとともに、該支持片107の先端部に上向きの突起部108を設けている。各上向きの突起部108は、昇降床104の4隅付近の下面に設けた凹部(穴)109にそれぞれ下方から嵌入するものである。
【0008】
そして、この各ロック装置105は、不使用時には各支持片107をそれぞれ鎖線図示(符号107′)する外方退避位置に位置させているが、昇降床104をロックするときには、昇降床104を所望の支持高さより上方まで持ち上げた状態で各支持片を所定の支持高さに位置させた後、該各支持片をそれぞれ実線図示(符号107)する内方支持位置に水平回動させ、続いて昇降床104を降下させて各凹部109をそれぞれ各突起部108に嵌合させる。
【0009】
【特許文献1】特開2002−179394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1(図13)の昇降床付き貨物自動車に使用されている各ロック装置105は、各突起部108に対して昇降床104側の各凹部109を上方から嵌合させることで昇降床104をロックするものであるが、各凹部109が各突起部108に対して上方から嵌合しているだけなので、昇降床104の浮き上がりを阻止する機能はない(走行時に車体の振動による昇降床104の上下ガタつきを防止できない)。
【0011】
又、この各ロック装置105では、昇降床104を下動させて各凹部109を各突起部108に対して同時に嵌合させ得るようにするために、各凹部109の内径を各突起部108の外径より若干大きくする必要がある。特に、昇降床104に撓みが発生すると各凹部109間の距離が変化するので、その撓みによる各凹部109間の距離変化を見越して各凹部109の内径を大きくする必要がある。従って、この各ロック装置105では、各凹部109がそれぞれ突起部108に嵌合している状態でも、昇降床104が若干ではあるが水平面内で前後・左右に揺動する余地を残している。
【0012】
このように、特許文献1(図13)の昇降床付き貨物自動車に使用されているロック装置105では、ロック状態であっても、走行時に昇降床104が上下にガタついたり水平方向に揺動したりするのを確実に阻止することができず、昇降床104のガタつきや揺動による衝突音(騒音)が発生したり衝撃荷重が車体側に伝わったりする、という問題があった。
【0013】
そこで、本願発明は、昇降床付き貨物自動車において、昇降床ガタつきや水平揺動を確実に阻止し得るようにした昇降床支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、昇降床付き貨物自動車における昇降床支持装置を対象にしている。
【0015】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の昇降床付き貨物自動車は、荷台の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱で昇降床の4隅をガイドして荷台上に昇降床を昇降自在に設置したものである。
【0016】
昇降床昇降用の駆動装置としては、昇降床の4隅を同時に昇降させ得るものであれば適宜のものが採用できる。例えば、この駆動装置として、昇降床の4隅にそれぞれ昇降装置(油圧シリンダや可逆回転可能なモータでネジ棒を回転させるもの等)を設けたものや、後述の実施形態のように昇降床側に設けた油圧シリンダと複数本のワイヤーロープとで昇降床を昇降させるようにしたもの、等が使用可能である。
【0017】
又、各支柱は、横断面コ形のフレームで該フレームのコ形内部に縦向きのガイド溝を設けたものが好ましい。このような縦向きガイド溝を設けた支柱を使用したものでは、昇降床の4隅に各ガイド溝内に嵌入する突部を設けて、該各突部をそれぞれ支柱のガイド溝に嵌入させるようにするとよい。
【0018】
この請求項1の昇降床支持装置は、各支柱の所定高さ位置で昇降床の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段を各支柱に設けているとともに、支柱と昇降床との間に昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段を設けて構成している。
【0019】
上記各支持手段は、昇降床の4隅をそれぞれ各支柱の所定高さ位置で支持し得るものであれば適宜のものが採用できるが、一例として各支柱に昇降床の4隅(例えば突部)をそれぞれピンで受ける構造のものが採用できる。又、この各支持手段は、昇降床を上下複数箇所の高さで支持し得るようにするとよい。尚、この各支持手段は、昇降床の昇降時にはそれぞれ支持解除しておく。
【0020】
又、上記付勢手段は、各支持手段により昇降床を所定高さ位置で支持した状態で、該昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢するものであれば適宜のものが採用できるが、一例として支柱と昇降床間をターンバックルで引き締めるようにしたものや、昇降床を支柱に対してスプリングで付勢させるようにしたもの、等が採用できる。尚、昇降床の付勢方向は、前後又は左右の水平外向き方向でも斜め下向き方向でもよい。
【0021】
この請求項1の昇降床支持装置では、昇降床の4隅を所定高さ位置において各支持手段により各支柱に支持させ、その昇降床支持状態で付勢手段により昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢できるので、その昇降床付勢状態では、昇降床のいずれかの部位(側端面又は下面)がいずれかの支柱(又は支柱に取付けた支持手段)に押付けられている。従って、昇降床と付勢側支柱(又は支持手段)との間に隙間がなくなり、走行時における昇降床のガタつきや浮き上がりが起こらない。
【0022】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の昇降床支持装置において、昇降床の一辺の両隅を支持する2つの支持手段が昇降床の水平移動を拘束し得るものであり、付勢手段が昇降床を前記水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するものであることを特徴としている。
【0023】
この請求項2の場合は、昇降床の一辺(例えば車輌の後側一辺)の両隅を当該位置にある2つの支柱に対してそれぞれ支持手段で水平移動不能に拘束するが、その拘束形態の一例として、昇降床の隅部と支柱にそれぞれピン穴を形成して、その両ピン穴にピンを挿入して連結する形態のものを採用できる。尚、この場合、昇降床における水平移動拘束側の辺とは対向側の辺の両隅は、各支持手段に単に載置するだけでよい。
【0024】
又、この請求項2の場合の付勢手段(例えばターンバックルによる引き寄せやスプリングによる付勢)は、昇降床における水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するが、その付勢方向は水平方向でも斜め下向き方向でもよい。
【0025】
この請求項2の昇降床支持装置では、昇降床の一方の辺の両隅を2つの支持手段で水平移動不能に拘束しているので、付勢手段は昇降床の拘束側とは対向側の辺に向けて付勢するだけで昇降床を確実にロックできるようになる。又、2つの支持手段で昇降床を水平移動不能に拘束していると、付勢手段で昇降床を一方向に付勢するだけで該昇降床をロックできるので、比較的簡単な構成で昇降床を支持できる。
【0026】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の昇降床支持装置において、付勢手段が昇降床を弾性的に付勢するものであることを特徴としている。
【0027】
この請求項3の場合の付勢手段としては、例えばスプリングを使用して昇降床を弾性的に付勢することができる。
【0028】
そして、この請求項3のように、付勢手段で昇降床を弾性的に付勢したものでは、走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働いたりしても、付勢手段の弾性作用(クッション作用)により昇降床による衝撃を緩和できるようになる。
【0029】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項の昇降床支持装置において、昇降床の少なくとも一辺の中間部に、昇降床を荷台から支える支持脚を設けていることを特徴としている。
【0030】
この請求項4の昇降床支持装置で使用される支持脚は、昇降床上に大重量の荷物を積載したときに該昇降床が荷重で撓むのを防止するものであり、好ましくは昇降床の長辺側の辺の中間部に設置するのがよい。又、この支持脚は、昇降床の少なくとも一辺の中間部にあればよいが、昇降床の対向する両辺のそれぞれ中間部に設けることが好ましい。さらに、昇降床を上下複数箇所の高さで支持し得るものでは、支持脚として昇降床の支持高さに応じて伸縮し得るものがよい。
【0031】
この請求項4のように、昇降床を支持脚で支持できるようにしたものでは、車輌停止状態では元より、走行中に振動があっても昇降床の中間部(支持脚で支持した部分)が下方に撓むのを防止できる。
【発明の効果】
【0032】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の昇降床支持装置は、各支柱の所定高さ位置で昇降床の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段を各支柱に設けているとともに、支柱と昇降床との間に昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段を設けて構成している。
【0033】
従って、この請求項1の昇降床支持装置では、昇降床の4隅を所定高さ位置において各支持手段により各支柱に支持させ、その昇降床支持状態で付勢手段により昇降床を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢できるので、昇降床と付勢側支柱(又は支持手段)との間に隙間をなくすことができ、走行時における昇降床のガタつきや浮き上がりを防止できるという効果がある。尚、このように、走行時に昇降床のガタつきや浮き上がりがなくなると、昇降床と支柱(又は付勢手段)との間の衝突音(騒音)が発生しなくなるとともに昇降床の衝撃荷重が車体側に伝わらなくなる。
【0034】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の昇降床支持装置において、昇降床の一辺の両隅を支持する2つの支持手段が昇降床の水平移動を拘束し、付勢手段が昇降床を前記水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するように構成している。
【0035】
従って、この請求項2の昇降床支持装置では、上記請求項1の効果に加えて、昇降床を一層確実にロックできるとともに、比較的簡単な構成で昇降床を支持できるという効果がある。
【0036】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の昇降床支持装置において、付勢手段が昇降床を弾性的に付勢するように構成されている。
【0037】
従って、この請求項3の昇降床支持装置では、付勢手段で昇降床を弾性的に付勢できるので、上記請求項1又は2の効果に加えて走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働いたりしても、付勢手段の弾性作用(クッション作用)により衝撃を緩和できるという効果がある。
【0038】
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項の昇降床支持装置において、昇降床の少なくとも一辺の中間部に、昇降床を荷台から支える支持脚を設けている。
【0039】
従って、この請求項4の昇降床支持装置では、昇降床を所定高さ位置において支持脚で支持できるので、上記請求項1〜3の効果に加えて、車輌停止状態では元より、走行中に振動があっても昇降床の中間部(支持脚で支持した部分)が下方に撓むのを防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
添付の図面を参照して本願のいくつかの実施形態を説明すると、図1〜図9には第1実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示され、図10には第2実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示され、図11には第3実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示され、図12には第3実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車が示されている。
【0041】
[図1〜図9の第1実施形態]
この第1実施形態に採用されている昇降床付き貨物自動車は、図1〜図3に示すように、貨物自動車の荷台1の上にもう一つの荷物載置用の床(昇降床)2を昇降自在に設置して、上下2段に荷物10,10・・を積み込み得るようにしたものである。
【0042】
荷台1の4隅には、それぞれ所定高さの支柱11,11・・を立設している。該4本の支柱11,11・・の上部は、四角形状の連結フレーム19で連結している。尚、荷台1の上部(各支柱11,11・・の外側)は、側板や天板等で囲ってもよい。
【0043】
4本の支柱11,11・・の内側には、荷台1とほぼ同面積の昇降床2が配置されている。この昇降床2は、その4隅がそれぞれ各支柱(4本)11,11・・にガイドされていて、該昇降床2が水平姿勢で昇降し得るようになっている。
【0044】
4本の支柱11,11・・には、図4〜図7に示すように横断面コ形のフレーム材が使用されている。即ち、この各支柱11,11・・は、中間板12の両サイドに2つの側板13,13をそれぞれ角度90°方向に突出させた横断面コ形のものが採用されている。そして、この各支柱11,11・・には、中間板12と両側板13,13とで囲われた部分に縦長のガイド溝14が形成されている。
【0045】
この4本の支柱11,11・・は、図4に示すように、車輌前側の2本をガイド溝14がそれぞれ後向きに開口するように設置している一方、車輌後側の2本をガイド溝14がそれぞれ左右内向きに開口するように設置している。
【0046】
昇降床2は、フレーム材を組立てた枠体の上面に床板を設置したものが採用されている。この昇降床2は、積載荷物によって撓まないようにするために、枠体として適度の厚さ(例えば150mm程度の厚さ)のフレーム材を使用している。そして、該枠体の上面に床板を設置した状態では、床板下面の枠体で囲われた部分に所定高さ(150mm程度)の空間部が形成されている。床板下面の空間部は、後述する昇降床昇降用の駆動装置3となる油圧シリンダ30を設置するためのスペースとして利用されている。
【0047】
昇降床2の4隅には、4本の各支柱11,11・・のガイド溝14内にそれぞれ嵌入される突部21,21,22,22が形成されている。前側の2つの突部21,21はそれぞれ前方に向けて突出しており、後側の2つの突部22,22はそれぞれ左右外向きに突出していて、4つの各突部21,21,22,22を図4に示すようにそれぞれ各支柱11,11・・のガイド溝14内に若干の隙間をもって嵌入させている。尚、他の実施形態では、各突部21,21,22,22の側面に、ガイド溝14の内面に沿って転動するローラを取付けてもよい。
【0048】
この第1実施形態では、昇降床2を昇降させるための駆動装置3として、図1〜図3に示すように昇降床2の4隅をそれぞれ吊持する4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・と、該各上動用ワイヤーロープ32,32・・をそれぞれ巻掛ける各シーブ33,33・・と、各上動用ワイヤーロープ32,32・・を引き込み・繰り出し操作する1本の油圧シリンダ30とを有している。又、この第1実施形態の駆動装置3には、油圧シリンダ30が昇降床下降側に作動したときに昇降床2を強制的に下動させる4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・と、該各下動用ワイヤーロープ34,34・・をそれぞれ巻掛ける各シーブ35,35・・とを有している。
【0049】
駆動装置3となる油圧シリンダ30は、図1〜図3に示すように、昇降床2の左右中央部の後部寄り位置における床板下面の空間部においてロッドが前側に向く姿勢で設置している。尚、この油圧シリンダ30には、車体側に設けた油圧供給源から油圧ホースを介して作動油が供給される。
【0050】
油圧シリンダ30は、昇降床2の厚さ範囲に収まるように設置されていて、昇降床2の下面が荷台1の上面に近接(又は接触)するまで該昇降床2を下動させ得るようになっている。
【0051】
油圧シリンダ30のロッド先端部には、昇降床2の幅方向に向く姿勢で角棒状の移動体31が取付けられている。この移動体31は、油圧シリンダ30の伸縮に伴って前後動して、各上動用ワイヤーロープ32,32・・及び各下動用ワイヤーロープ34,34・・をそれぞれ引き込み・繰り出し操作するものである。
【0052】
次に、この第1実施形態で使用されている昇降床昇降用の駆動装置3による昇降床2の作動について説明する。
【0053】
油圧シリンダ30が最縮小している状態では、図2に示すように移動体31が車輌後方側にあって4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・がそれぞれ繰り出されている(昇降床2部分での長さが短くなる)一方、4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・がそれぞれ引き込まれて(昇降床2部分での長さが長くなる)、昇降床2が荷台1上に近接(又は接触)する位置まで下降している。他方、油圧シリンダ30が最縮小状態から伸長すると、図3に示すように移動体31が車輌前方側に移動し、4本の上動用ワイヤーロープ32,32・・がそれぞれ引き込まれる(昇降床2部分での長さが長くなる)一方、4本の下動用ワイヤーロープ34,34・・がそれぞれ繰り出されて(昇降床2部分での長さが短くなる)、昇降床2が各支柱11,11・・にガイドされながら水平姿勢を維持したまま所望高さまで上動させることができる。又、昇降床2の上動状態から、油圧シリンダ30が縮小すると、各上動用ワイヤーロープ32,32・・が緩む(繰り出される)一方で、各下動用ワイヤーロープ34,34・・が緊張する(引き込まれる)ので、昇降床2を水平姿勢を維持したまま確実に下降させることができる。尚、昇降床2の昇降ストロークは最大で170cm程度であるが、油圧シリンダ30の伸縮量を調整することで、昇降床2の上動高さを無段階に調整できる。
【0054】
そして、この第1実施形態の昇降床付き貨物自動車では、昇降床2を図1に実線図示するように最下動させた状態で該昇降床2上に荷物10,10・・を積み込んだ後、その荷物とともに昇降床2を所定高さまで上動させ(図1に符号2′で示す鎖線図示状態)、該昇降床2′の下方のスペース(荷台1上)に別の荷物10,10・・を積み込むことができる。
【0055】
この昇降床付き貨物自動車に使用されている第1実施形態の昇降床支持装置は、図4〜図9に示すように、4本の支柱11,11・・に昇降床2の4隅(各突部21,21,22,22)をそれぞれ支持する4つの支持手段4,4・・と、昇降床2を所定高さ位置において特定方向(第1実施形態では前方側の斜め下向き方向)に付勢する付勢手段5,5とを備えて構成されている。
【0056】
この第1実施形態では、各支持手段4,4・・として、各支柱11に形成したピン穴(前側支柱のピン穴15、後側支柱のピン穴16)と該各ピン穴(15,16)に挿入される4本のピン41,41,42,42とが使用されている。
【0057】
前側の2本の支柱11,11には、図4〜図6に示すように両側板13,13にそれぞれ上下に所定間隔(例えば10cm間隔)をもって複数個(図示例では8個)ずつのピン穴15,15・・を形成している。他方、後側の2本の支柱11,11にも、図4、図5、図7に示すように両側板13,13にそれぞれ上下に所定間隔(10cm間隔)をもって複数個(図示例では8個)ずつのピン穴16,16・・を形成している。後側支柱11,11の各ピン穴16,16・・は、図7に示すように上下に長い長穴状に形成されている。尚、前側支柱11,11のピン穴15,15・・は車輌の左右方向に向いており、後側支柱11,11のピン穴16,16・・は車輌の前後方向に向いている。
【0058】
支持手段4の一部となる各ピン41,41(又は42,42)は、支柱11の両側板13,13の対向位置にある1組のピン穴15,15(又は16,16)に跨がる長さを有している。
【0059】
昇降床2の前側の各突部21,21の下面には、前側支柱11の両ピン穴15,15に挿通されるピン41上に係合する凹部23が形成されている。他方、昇降床2の後側の各突部22,22には、後側支柱11の両ピン穴16,16に挿通されるピン42を挿通するピン穴24が形成されている。
【0060】
付勢手段5は、この第1実施形態では、図4及び図8に示すように2つのターンバックル50,50を使用している。このターンバックル50は、図5及び図9に拡大図示するように左右逆ネジを刻設した第1ボルト52と第2ボルト53とを枠形状の操作体51で連結したものである。尚、このターンバックル50は、両ボルト52,53に対して操作体51を回転させることで両ボルト52,53間の長さを調節し得るものである。
【0061】
この各ターンバックル50,50は、不使用時には図5に示すように各支柱11の下部位置における左右外側の面に格納しており、使用時には図8及び図9に示すように各前側支柱11,11と昇降床2の左右各側面との間に斜め下向き方向に向けて設置される。尚、ターンバックル50は、図9に示すように、第1ボルト52の端部を軸54で支柱11に枢支し、第2ボルト53の端部を軸55で昇降床2の側面に枢支して設置される。
【0062】
第1実施形態の昇降床支持装置には、昇降床2の左右各側辺の前後中間部を支持する一対の支持脚7,7(図4、図8参照)を有している。この各支持脚7,7は、それぞれ外筒71と該外筒71に対して伸縮するスライド棒72からなる伸縮自在なものが採用されている。スライド棒72には、その長さ方向に所定間隔(支柱11のピン穴間隔と同じ10cm間隔)をもって複数箇所にピン穴73,73・・(図9参照)が形成されており、外筒71の下端部においてスライド棒72側のいずれかのピン穴73にピン74(図9参照)をを差込むことによって、外筒71とスライド棒72とを所望長さに調節し得るようになっている。
【0063】
この各支持脚7,7は、不使用時には図4及び図5に示すように昇降床2の左右各側面に沿って格納している。そして、使用時には、昇降床2の高さ(荷台1上面からの高さ)に応じた長さに調節し、図8及び図9に示すように各支持脚7,7の各上部を昇降床2の左右側面に枢支して下向き姿勢にする一方、該支持脚7,7の下端を荷台1の上面に着座させることによって、該各支持脚7,7で昇降床2の両側部の中間部を支持できるようになっている。尚、この各支持脚7,7は、図9に示すように外筒71を下向き姿勢にした状態で、該外筒71を揺動不能にロックするようにするとよい。
【0064】
この第1実施形態の昇降床支持装置は、次のように使用される。
【0065】
まず、図2及び図5に示すように昇降床2を最下動させた状態で該昇降床2上に荷物10(図1参照)を積み込み、その後に昇降用の駆動装置3(油圧シリンダ30)を上動側に操作して昇降床2を所望高さまで上動させる。この場合、昇降床2を予定支持高さ(例えば図8又は図9の支持高さ)よりやや上方まで上動させておく。
【0066】
次に、前側の2本の支柱11,11に対して、予定支持高さにある各側の一対のピン穴15,15にそれぞれピン41,41を差込んだ後、駆動装置3(油圧シリンダ30)を下動操作して昇降床2の前側の各突部21,21の下面(凹部23)をそれぞれピン41,41上に着座させる。尚、この状態では、各上動用ワイヤーロープ32,32・・は緊張させたままである。
【0067】
次に、後側の2本の支柱11,11に対して、予定支持高さにある各側のピン穴16,16及び昇降床2の後側各突部22,22のピン穴24,24にそれぞれピン42,42を差込む。このとき、後側の各支柱11,11のピン穴16,16は上下に長い長穴となっているので、突部22側のピン穴24が支柱11側のピン穴(長穴)16に対して重合範囲が長くなり、両ピン穴16,24にピン42を容易に挿入できる。
【0068】
尚、この状態では、昇降床2の後側の各突部22,22がピン42,42で枢支されていて昇降床2の前後移動を拘束しているが、昇降床の前側の各突部21,21はピン41,41上に載っただけである。
【0069】
次に、図8及び図9に示すように、左右の付勢手段5,5(ターンバックル50,50)を各前側支柱11,11と昇降床2の左右各側面との間で斜め下向き方向に介設し、各ターンバックル50の操作体51を回転させて両ボルト52,53を強く引き寄せる。この状態では、昇降床2の前側が各ターンバックル50,50で前方側斜め下向き方向に強く付勢されて、昇降床前側の各突部21,21が各ピン41,41を介して前側の各支柱11,11に強固に固定される。又、各ターンバックル50,50を緊締させると、昇降床2全体を前側に引っ張る作用も働くので、昇降床2の後側の各突部22,22も各ピン42,42を介して後側の各支柱11,11に強固に固定される。
【0070】
又、付勢手段5,5による付勢作業と前後して、図10に示すように左右の各支持脚7,7で昇降床2の左右各側部の中間部を荷台1上に支持する。
【0071】
このように、第1実施形態の昇降床支持装置では、比較的簡単な構成でもって昇降床2を各支柱11,11・・に強固に固定でき、走行時において車体が振動しても昇降床2がガタつくことがなく、且つ急旋回時や急停止時にも移動慣性で昇降床2が支柱11,11・・に対して水平移動することがない。従って、昇降床2のガタつきによる衝突音(騒音)が発生しないとともに、昇降床2の衝撃荷重が車体側に伝わらなくなる。
【0072】
又、各支持脚7,7で昇降床2の左右各側部の中間部を荷台1上に支持すると、車輌停止状態では元より、昇降床2上に荷物を積載した状態で走行時に強い振動があっても、昇降床2が下方に撓むのを防止できる。
【0073】
[図10の第2実施形態]
図10に示す第2実施形態の昇降床支持装置は、上記第1実施形態のものに、付勢手段として別の2つのターンバックル50A,50Aを追加したものである。
【0074】
図10の第2実施形態では、昇降床2の前側の辺の左右各端部寄り位置と前側の各支柱1,11との間にそれぞれターンバックル50A,50Aを左右斜め下向き方向に介設している。尚、この第2実施形態におけるその他の構成については、上記第1実施形態と同じなので、該第1実施形態の説明を援用する。
【0075】
この第2実施形態の昇降床支持装置では、第1実施形態の構成に別の2つのターンバックル50A,50Aを追加していることにより、昇降床2の前部側を左右方向にも確実に固定することができ、一層の安定感が得られる。
【0076】
[図11の第3実施形態]
図11に示す第3実施形態の昇降床支持装置では、付勢手段5としてターンバックルに代えてスプリング64による弾性付勢構造を採用している。
【0077】
この第3実施形態では、昇降床2の前側の左右各突部21上にL形のブラケット61を固定し、該ブラケット61の立上げ部にボルト挿通穴62を形成し、支柱11の中間板12に各ピン穴15,15・・と上下同間隔で複数個のボルト挿通穴17,17・・を形成している。ブラケット61側のボルト挿通穴62は、図11に示すように、昇降床2の突部21が支柱11のいずれかのピン穴15に挿通されたピン41上に載置された状態で、支柱11側のいずれかのボルト挿通穴17に対面するようになっている。
【0078】
そして、この第3実施形態の昇降床支持装置では、ブラケット61のボルト挿通穴62と該ボルト挿通穴62に対面する支柱11側のボルト挿通穴17とに支柱の外側からボルト63を挿通させ、内方側からボルト周りにスプリング64を嵌挿させた後、ボルト先端部からナット65を螺合・緊締させると、装着作業が完了する。尚、ボルト63の挿通作業は、前側支柱11の所望高さ位置にあるピン穴15にピン41を挿通させ、そのピン41の上に昇降床2の前側突部21を載せた状態で行われる。
【0079】
尚、図11では、前側の各支柱11の一方のみしか表示していないが、スプリング64による付勢手段5は前側の左右両支柱11にそれぞれ設けられている。又、昇降床2の後側の各突部22の支持構造は、第1実施形態のものと同じであって、該突部22に設けたピン穴24と支柱11の各ピン穴16,16とにピン42を挿通して該突部22を支持している。
【0080】
この第3実施形態の昇降床支持装置では、スプリング64を使用した付勢手段5により、昇降床2を前方(矢印A方向)に弾性的に付勢することができるので、走行時に車体が振動したり急旋回時や急停止時等に移動慣性が働いたりしても、スプリング64の弾性作用(クッション作用)により衝撃を緩和できる。
【0081】
[図12の第4実施形態]
図12に示す第4実施形態の昇降床支持装置では、昇降床2における前側の各突部21及び後側の各突部22は、それぞれ前後各支柱11,11のピン穴15,15、16,16に挿通させた各ピン41,42の上に単に載置させただけであるが(固定していない)、昇降床2の左右側面の前後各端部寄り位置をそれぞれターンバックル50からなる付勢手段5,5で前後外向きの斜め下向き方向に付勢している。昇降床2の前後に設けた各ターンバックル50,50は、昇降床2の左右にもそれぞれ設けられている(合計4つのターンバックル50が使用されている)。
【0082】
この第4実施形態の昇降床支持装置では、昇降床2の前後の突部21,22はそれぞれピン41,42の上に載せられているだけなので、このままでは車体の振動時に各突部21,22が上方に浮き上がることがあるが、昇降床2の前後各端部寄り位置をそれぞれターンバックル50,50で斜め下向きの外方向に付勢しているので、該各突部21,22(4箇所)がそれぞれピン41,42を介して支柱11,11に固定されている。
【0083】
従って、この第4実施形態の昇降床支持装置でも、昇降床2を各支柱11,11に対して強固に固定され、走行時における昇降床2のガタつきや移動慣性による昇降床2の水平移動を確実に阻止できる。
【0084】
尚、上記第1、第2、第4の各実施形態で用いたターンバックル50は、その全長が長いために緊張状態でも若干の弾性機能を有している。このように、ターンバックル50に弾性機能があると、昇降床2に車体の移動慣性が働いても該ターンバックル50の弾性作用により衝撃を緩和することができる。特に、第4実施形態において、支柱11のガイド溝14と昇降床2の突部22の間に隙間が生じるように取付けた場合には、昇降床2が前後方向に動く際にターンバックル50の弾性作用により衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本願第1実施形態の昇降床支持装置を備えた昇降床付き貨物自動車の側面図である。
【図2】図1の昇降床付き貨物自動車における昇降機構の説明用斜視図(昇降床下動状態図)である。
【図3】図2からの状態変化図(昇降床上動状態図)である。
【図4】図1の昇降床付き貨物自動車における荷台部分を上方から見た図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】第1実施形態の昇降床支持装置における前側支柱部分の分解斜視図である。
【図7】第1実施形態の昇降床支持装置における後側支柱部分の分解斜視図である。
【図8】第1実施形態の昇降床支持装置で昇降床を支持した状態の斜視図である。
【図9】図8の拡大側面図である。
【図10】本願第2実施形態の昇降床支持装置で昇降床を支持した状態の斜視図である。
【図11】本願第3実施形態の昇降床支持装置の拡大図である。
【図12】本願第3実施形態の昇降床支持装置の図9相当図である。
【図13】公知(特許文献1)の昇降床付き貨物自動車の一部平面図である。
【符号の説明】
【0086】
1は荷台、2は昇降床、3は駆動装置、4は支持手段、5は付勢手段、7は支持脚、11は支柱、15,16はピン穴、21,22は昇降床の突部、24はピン穴、30は油圧シリンダ、41,42はピン、50はターンバックル、64はスプリングである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の荷台(1)の4隅にそれぞれ支柱(11,11・・)を立設し、該4本の支柱(11,11・・)で昇降床(2)の4隅をガイドして荷台(1)上に昇降床(2)を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車において、
各支柱(11,11・・)の所定高さ位置で昇降床(2)の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段(4,4・・)を各支柱(11,11・・)に設けているとともに、
支柱(4)と昇降床(2)との間に、昇降床(2)を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段(5)を設けている、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項2】
請求項1において、昇降床(2)の一辺の両隅を支持する2つの支持手段(4,4)が昇降床(2)の水平移動を拘束し得るものであり、付勢手段(5)が昇降床(2)を前記水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するものであることを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、付勢手段(5)が昇降床(2)を弾性的に付勢するものであることを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、昇降床(2)の少なくとも一辺の中間部に、昇降床(2)を荷台(1)から支える支持脚(7)を設けていることを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項1】
貨物自動車の荷台(1)の4隅にそれぞれ支柱(11,11・・)を立設し、該4本の支柱(11,11・・)で昇降床(2)の4隅をガイドして荷台(1)上に昇降床(2)を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車において、
各支柱(11,11・・)の所定高さ位置で昇降床(2)の4隅をそれぞれ下動不能に支持する4つの支持手段(4,4・・)を各支柱(11,11・・)に設けているとともに、
支柱(4)と昇降床(2)との間に、昇降床(2)を水平外向き方向又は斜め下向き方向に付勢する付勢手段(5)を設けている、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項2】
請求項1において、昇降床(2)の一辺の両隅を支持する2つの支持手段(4,4)が昇降床(2)の水平移動を拘束し得るものであり、付勢手段(5)が昇降床(2)を前記水平移動拘束側の辺とは対向側の辺に向けて付勢するものであることを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、付勢手段(5)が昇降床(2)を弾性的に付勢するものであることを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、昇降床(2)の少なくとも一辺の中間部に、昇降床(2)を荷台(1)から支える支持脚(7)を設けていることを特徴とする昇降床付き貨物自動車の昇降床支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−107355(P2009−107355A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278292(P2007−278292)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(393008360)株式会社タダノエンジニアリング (15)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(393008360)株式会社タダノエンジニアリング (15)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
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