説明

昇降床付き貨物自動車

【課題】 従来の昇降床付き貨物自動車では、昇降床の昇降用として4本の油圧シリンダを使用しているので、その設置のために荷台上の有効スペースが制限されるとともに合計重量が重くなって荷物重量が制限され、しかも4本の連動同期システムが複雑になる。
【解決手段】 貨物自動車の荷台1上に昇降床2を昇降自在に設置した昇降床付きの貨物自動車において、昇降床2の4隅と4本の支柱11,11・・の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪6A〜6Dを介して昇降床吊持用の4本の索5A〜5Dを介設し、4本の索5A〜6Dを1基(又は2基)の駆動装置3で引き込み・繰り出し操作することで昇降床2を昇降させ得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、貨物自動車の荷台上にもう一つの荷物載置用の床を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の昇降床付き貨物自動車は、荷物を荷台上と昇降床上の上下2段に積載できるので、積荷スペースを有効利用できるとともに輸送効率を向上させることができるものである。
【0003】
ところで、この種の昇降床付き貨物自動車の一例として、特開2000−219077号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この特許文献1の昇降床付き貨物自動車は、荷台上の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱内にそれぞれ油圧シリンダ(4本)を上下向き姿勢で設置して、昇降床の4隅をそれぞれ各油圧シリンダで支持している。尚、各油圧シリンダの伸縮ロッド先端部にはそれぞれシーブが取付けられていて、該各シーブを介して昇降床の4隅をそれぞれワイヤーロープで懸架している。そして、この特許文献1の昇降床付き貨物自動車では、4本の油圧シリンダを同期伸縮させることにより昇降床を水平姿勢で昇降させ得るようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−219077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1の昇降床付き貨物自動車では、昇降床を昇降させるのに4本の油圧シリンダを使用しているので、次のような問題があった。
【0007】
(1) 各油圧シリンダ(4本)の合計重量が重くなって、その分、荷台上に積載される荷物重量が制限される。
【0008】
(2) 各油圧シリンダ(4本)をそれぞれ支柱内に設置したものでは、各支柱の太さが太くなり、その分、荷台上の有効スペースが狭くなる。
【0009】
(3) 4本の油圧シリンダで昇降床を昇降させるものでは、各油圧シリンダの伸縮動作(伸縮時期及び伸縮スピード)を4本とも正確に同期させる必要があり、そのために精密な連動同期システムが必要である。尚、4本の油圧シリンダのうち、1本でも同期伸縮動作が不揃いになると、昇降床にねじれ作用が働いたり該昇降床が傾斜状態で昇降するという問題が発生する。
【0010】
そこで、本願発明は、荷台上の昇降床を少ない数(1基又は2基)の駆動装置で昇降させ得るようにすることで、駆動装置の重量を軽減でき、駆動装置の占有スペースを小さくでき、駆動装置の同期作動の問題を解消又は軽減できるようにした、昇降床付き貨物自動車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、貨物自動車の荷台上にもう一つの床を昇降自在に設置した昇降床付き貨物自動車を対象にしている。
【0012】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明の昇降床付き貨物自動車は、荷台の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱で昇降床の4隅をガイドして荷台上に昇降床を昇降自在に設置したものである。
【0013】
そして、この請求項1の昇降床付き貨物自動車は、昇降床の4隅と4本の支柱の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪を介して昇降床吊持用の4本の索を介設する一方、該4本の索を1基の駆動装置で引き込み・繰り出し操作することで昇降床を昇降させ得るようにしている。
【0014】
昇降床吊持用の索としては、チエンやワイヤーロープが使用できる。索掛け輪は、索にチエンを使用したものではスプロケットが用いられ、索にワイヤーロープを使用したものではシーブが用いられる。索掛け輪は、昇降床の適所に所定個数取付けている。そして、4本の索は、それぞれ索掛け輪に巻掛けて昇降床の4隅をそれぞれ各支柱(4本)の上部位置から吊持し得る状態で介設されている。
【0015】
昇降床昇降用の駆動装置としては、この請求項1では索を引き込み・繰り出し操作し得るものであれば適宜のものが採用できる。例えば、この駆動装置として、油圧シリンダや、ウインチや、可逆回転可能なモータで索操作部を進退させ得るもの(ネジ棒回転式、ラック・ピニオン式等)等が使用可能である。
【0016】
そして、この請求項1の昇降床付き貨物自動車では、1基の駆動装置で4本の索を同時に且つ同量ずつ引き込み・繰り出し操作し得るようになっており、それにより昇降床を水平姿勢に維持したまま昇降させ得るようになっている。
【0017】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明の昇降床付き貨物自動車は、貨物自動車の荷台の4隅にそれぞれ支柱を立設し、該4本の支柱で昇降床の4隅をガイトして荷台上に昇降床を昇降自在に設置し、昇降床2の4隅と4本の支柱の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪を介して昇降床吊持用の4本の索を介設しているが、この点では上記請求項1のものと同じである。
【0018】
そして、この請求項2の昇降床付き貨物自動車では、4本の索を2基の駆動装置でそれぞれ2本ずつ引き込み・繰り出し操作することで昇降床を昇降させ得るようにしている。尚、各駆動装置(2基)は、それぞれ昇降床の4隅を支持する4本の索の2本ずつを操作するが、2本ずつであればどの位置の索を操作してもよい。
【0019】
この請求項2の場合は、昇降床を昇降させるのに2基の駆動装置を使用していることにより、両駆動装置を同期作動させる必要があるが、そのための連動同期システムは4基の駆動装置を連動同期させる場合より簡単なものでよい。
【0020】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の昇降床付き貨物自動車において、駆動装置として、索を引き込み・繰り出し操作する索操作部が直線方向に進退するものを採用しているとともに、該駆動装置を索操作部が水平方向に進退する姿勢で設置している。
【0021】
この請求項3で使用する直線作動式の駆動装置としては、油圧シリンダが一般的であるが、油圧シリンダのほかに可逆回転可能なモータで索操作部を進退させ得るものであれば
適宜の形式(例えば、ネジ棒回転式、ラック・ピニオン式等)のものも採用できる。
【0022】
この請求項3のように、索操作部を直線方向に進退させ得る駆動装置を使用し、且つ該駆動装置を索操作部が水平方向に進退する姿勢で設置すると、駆動装置の設置スペースが上下方向に狭いものでよい。
【0023】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項3の昇降床付き貨物自動車において、昇降床は上下に所定厚さをもつフレーム材からなる枠体の上面に床板を設置したものを使用し、駆動装置は油圧シリンダを採用しているとともに、該油圧シリンダを床板下面で枠体の上下厚さ範囲内に設置している。
【0024】
昇降床は、比較的広面積を有しており、積載荷物によって撓まないようにするために床板の下面に適度の厚さ(例えば150mm程度)のフレーム枠を設けている。従って、昇降床には、床板下面の枠体で囲われた部分に所定高さ(150mm程度)の空間部が形成されている。他方、駆動装置となる油圧シリンダは、長尺であるもののシリンダ直径はさほど大きくない。
【0025】
そして、この油圧シリンダを昇降床の床板下面の空間部に水平姿勢で設置すると、該油圧シリンダが昇降床の厚さ範囲内(余剰空間内)に収まる。
【0026】
[本願請求項5の発明]
本願請求項5の発明は、上記請求項1から4のいずれか1項の昇降床付き貨物自動車において、駆動装置と荷台の前後各位置との間に、駆動装置が昇降床下降側に作動したときに昇降床を下動させる少なくとも前後2本の下動用索を介設している。
【0027】
ところで、駆動装置が昇降床下降側に作動したときには、各索による吊上げ力がなくなって昇降床が自重で下動するようになるが、例えば昇降床上に積載した荷物重量が極端に偏位している場合や、昇降床の一部の隅部が支柱に対して引っ掛かっている(摩擦力が大きい)と、昇降床等の自重だけで昇降床が水平姿勢を維持したままスムーズに下降するとは限らない。
【0028】
そこで、この請求項5のように、昇降床の下動用索を設けていると、駆動装置が昇降床下降側に作動したときに該下動用索で昇降床を水平姿勢のままで強制的に下動させることができる。
【0029】
尚、この下動用索は、2本の場合は4本の支柱の対角線位置にある2本の支柱付近に設け、3本の場合は1本を荷台前部の幅中央寄り位置で他の2本を荷台後部の左右の支柱付近に設け、4本の場合はそれぞれ4本の支柱付近に設けると、昇降床が上昇したときも該下動用索が荷台上での荷物の積み降ろし作業時に邪魔にならない。
【発明の効果】
【0030】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の昇降床付き貨物自動車は、荷台上に昇降自在に設置した昇降床の4隅と4本の支柱の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪を介して昇降床吊持用に4本の索を介設する一方、該4本の索を1基の駆動装置で引き込み・繰り出し操作することで昇降床を昇降させ得るようにしている。従って、この請求項1の昇降床付き貨物自動車には、次のような効果がある。
【0031】
(1) 昇降床の昇降操作を1基の駆動装置で行えるので、昇降床昇降用の駆動装置が軽量になり、その分、荷台上に積載する荷物重量を多くできる。
【0032】
(2) 駆動装置が1基であるので、該駆動装置の設置スペースが狭くてよく、その分、荷台上の有効スペース(荷物の積載スペース)を広くできる。
【0033】
(3) 1基の駆動装置で昇降床を昇降させるので、複数基(上記特許文献1では4基)の駆動装置で昇降させる場合のような連動同期システムが不要となる。又、複数基の駆動装置で昇降させる場合には、同期動作が不揃いになると、昇降床にねじれ作用が働いたり該昇降床が傾斜状態で昇降するという問題が生じるが、この請求項1の発明ではそのような問題を未然に解消できる。
【0034】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の昇降床付き貨物自動車は、上記請求項1と同様に、昇降床の4隅と4本の支柱の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪を介して昇降床吊持用に4本の索を介設したものにおいて、4本の索を2基の駆動装置でそれぞれ2本ずつ引き込み・繰り出し操作することで昇降床を昇降させ得るようにしている。
【0035】
従って、この請求項2の昇降床付き貨物自動車では、従来例の4基の駆動装置(油圧シリンダ)を使用したものに比して駆動装置の使用個数を1/2にでき、その分、駆動装置全体の重量を軽減できる(荷台上に積載する荷物重量を多くできる)とともに、荷台上での駆動装置の設置スペースを狭くできる(荷物の載置スペースを広くできる)。
【0036】
又、2基の駆動装置を使用しているので、両駆動装置の連動同期システムは必要であるが、2基の駆動装置では4基の駆動装置の連動同期システムより構成が簡単であり且つ誤作動が起こりにくいという効果がある。
【0037】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の昇降床付き貨物自動車において、駆動装置として索操作部が直線方向に進退するものを採用しているとともに、該駆動装置は索操作部が水平方向に進退する姿勢で設置している。
【0038】
従って、この請求項3の昇降床付き貨物自動車では、上記請求項1又は2の効果に加えて、駆動装置の設置スペースとして上下方向に狭いものでよく、荷台上の上下方向の余剰スペースを大きくできるという効果がある。
【0039】
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項3の昇降床付き貨物自動車において、駆動装置に油圧シリンダを採用しているとともに、該油圧シリンダを昇降床の厚さ範囲内に収容している。
【0040】
従って、この請求項4の昇降床付き貨物自動車では、駆動装置を昇降床の余剰空間(厚さ範囲)を利用して設置していることにより、上記請求項3の効果に加えて、該駆動装置の設置のために荷台上の荷物スペースを制限することがない(有効スペースを広くできる)という効果がある。
【0041】
[本願請求項5の発明の効果]
本願請求項5の発明は、上記請求項1〜4の昇降床付き貨物自動車において、駆動装置が昇降床下降側に作動したときに昇降床を下動させる下動用索を設けている。
【0042】
従って、この請求項5の昇降床付き貨物自動車では、上記請求項1〜4の効果に加えて、駆動装置を昇降床下動側に作動させたときには下動用索により昇降床を水平姿勢に維持したまま確実に下動させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
添付の図面を参照して本願の実施形態を説明すると、図1〜図7には第1実施形態の昇降床付き貨物自動車が示され、図8〜図10には第2実施形態の昇降床付き貨物自動車が示されている。図1〜図7の第1実施形態は、本願の請求項1、請求項3、請求項4、請求項5に対応するもので、昇降床昇降用の駆動装置3として1基のみを使用したものである。又、図8〜図10の第2実施形態は、本願の請求項2、請求項3、請求項4、請求項5に対応するもので、昇降床昇降用の駆動装置3として2基を使用したものである。
【0044】
[図1〜図7の第1実施形態]
この第1実施形態の昇降床付き貨物自動車は、貨物自動車の荷台1の上にもう一つの荷物載置用の床(昇降床)2を昇降自在に設置して、上下2段に荷物10,10・・を積み込み得るようにしたものである。
【0045】
荷台1の4隅には、それぞれ所定高さの支柱11,11・・を立設している。該4本の支柱11,11・・の上部は、四角形状の連結フレーム12(図6、図7参照)で連結している。尚、荷台1の上部(各支柱11,11・・の外側)は、側板や天板等で囲ってもよい。
【0046】
4本の支柱11,11・・の内側には、荷台1とほぼ同面積の昇降床2が配置されている。この昇降床2は、その4隅がそれぞれ各支柱(4本)11,11・・にガイドされていて、該昇降床2が水平姿勢で昇降し得るようになっている。
【0047】
昇降床2は、図3〜図5に示すように、フレーム材21a〜21dを組立てた枠体21の上面に床板23を設置したものが採用されている。この昇降床2は、積載荷物によって撓まないようにするために、枠体21として適度の厚さ(図4の寸法Hで、例えば150mm程度の厚さ)のフレーム材21a〜21dを使用している。そして、該枠体21の上面に床板23を設置した状態では、床板23下面の枠体21で囲われた部分に所定高さH(150mm程度)の空間部24が形成されている。枠体21における左右のフレーム材21a,21b間には、図3及び図4に示すように、後述する油圧シリンダ3やシーブ6C,6D,8A等を取付けるための細幅の連結桟22が前後3箇所に取付けられている。この各連結桟22,22,22は、板状でその下面が枠体21の下面と同高さとなるように設置されており、該各連結桟22の上面と床板23の下面との間にはかなり高さ(例えば130〜140mm程度)の間隔が形成されている。
【0048】
昇降床2の4隅には、それぞれ各支柱11,11・・を嵌合させるための切欠部を設けている。そして、この実施形態では、図3及び図5に示すように昇降床2の4隅に、各支柱11,11・・の2面に接合する2個ずつの摺接ローラ26,27を設けて、該昇降床2の4隅がそれぞれ4本の支柱11,11・・に対してスムーズに昇降し得るようにしている。尚、昇降床2の4隅をそれぞれ各支柱11,11・・にガイドさせる機構としては、上記2個ずつの摺接ローラ26,27(支柱11の2面に接合する)に代えて、例えば、各支柱11にそれぞれ縦長のガイド溝を設ける一方、昇降床2の4隅にそれぞれ各ガイド溝内に嵌入する転動ローラを取付けたものでもよい。
【0049】
この第1実施形態では、昇降床2を吊上げるための吊上げ機構として、昇降床2の4隅をそれぞれ吊持する4本の上動用索5A〜5Dと、該各上動用索5A〜5Dをそれぞれ巻掛ける各索掛け輪6A〜6Dと、各上動用索5A〜5Dを引き込み・繰り出し操作する1基の駆動装置3とを有している。又、この第1実施形態では、該駆動装置3が昇降床下降側に作動したときに昇降床2を強制的に下動させる3本の下動用索7A〜7Cと、該各下動用索7A〜7Cを巻掛ける索掛け輪8A〜8Cとを有している。
【0050】
上記上動用索5A〜5D及び下動用索7A,7Cとしてはそれぞれチエンやワイヤーロープが使用可能であり、各索掛け輪6A〜6D,8A〜8Cとしてはそれぞれスプロケットやシーブが使用可能であるが、この実施形態では各索5A〜5D,7A〜7Cにワイヤーロープを使用する一方、各索掛け輪6A〜6D,8A〜8Cにシーブを使用している。そして、以下の説明では、該各索5A〜5D,7A〜7Cをワイヤーロープといい、該各索掛け輪6A〜6D,8A〜8Cをシーブということがある。
【0051】
駆動装置3には、油圧シリンダや、ウインチや、可逆回転可能なモータで索操作部を進退させ得るもの(ネジ棒回転式、ラック・ピニオン式等)等が使用可能であるが、この実施形態では駆動装置3として油圧シリンダを採用している。そして、以下の説明では、該駆動装置3として油圧シリンダということがある。
【0052】
この第1実施形態では、駆動装置として1本の油圧シリンダ3を使用している。この油圧シリンダ3は、図3及び図4に示すように、昇降床2のほぼ中央部における床板23の下面の空間部24に前後向き姿勢で設置している。この油圧シリンダ30は、そのチューブ31の太さが80〜100mm程度のものを使用している。そして、この油圧シリンダ3は、ロッド32が荷台1の後側に向く姿勢でチューブ31を2つの連結桟22,22上に固定して設置している。従って、この油圧シリンダ3は、昇降床2の枠体21の厚さ範囲(150mm程度)内に収容されている。尚、この油圧シリンダ3には、図示しない油圧ホースが床板23下面の空間部24を通して接続されている。
【0053】
油圧シリンダ3のロッド32の先端部には、昇降床2の幅方向に向く姿勢で角棒状の移動体4が取付けられている。この移動体4は、枠体21の左右各フレーム材21a,21bの内面間隔よりやや短い程度のかなりの長さを有している。そして、この移動体4は、油圧シリンダ3の伸縮に伴って前後動して、後述するように索を引き込み・繰り出し操作するための索操作部となるものである。尚、この移動体4は、水平姿勢を維持したままで前後動するようにガイドしておくとよい。
【0054】
昇降床上動用の4本のワイヤーロープ5A〜5Dは、図2、図3、図6に示すように、それぞれ次のように掛け回されている。1本目の上動用ワイヤーロープ5Aは、そのロープ一端5Aaを移動体4の中央右寄り位置に固定し、そのロープ他端側を車輌前方側に延出させて昇降床2の前端中央右寄り位置に取付けた第1のシーブ6A1と昇降床2の前端右側部に取付けた第2のシーブ6A2にそれぞれ巻掛けた後、ロープ他端5Abを前側右位置にある支柱11の上部位置に固定している。2本目の上動用ワイヤーロープ5Bは、そのロープ一端5Baを移動体4の中央左寄り位置に固定し、そのロープ他端側を車輌前方側に延出させて昇降床2の前端中央左寄り位置に取付けた第1のシーブ6B1と昇降床2の前端左側部に取付けた第2のシーブ6B2に巻掛けた後、ロープ他端5Bbを前側左位置にある支柱11の上部位置に固定している。3本目の上動用ワイヤーロープ5Cは、そのロープ一端5Caを移動体4の中央右寄り位置に固定し、そのロープ他端側を移動体4より前部側の連結桟22に取付けた第1及び第2の各シーブ6C1,6C2に巻掛けさらに車輌後方側に延出させて昇降床2の後端右側部に取付けた第3のシーブ6C3に巻掛けた後、ロープ他端5Cbを後側右位置にある支柱11の上部位置に固定している。4本目の上動用ワイヤーロープ5Dは、そのロープ一端5Daを移動体4の中央左寄り位置に固定し、そのロープ他端側を移動体4より前部側の連結桟22に取付けた第1及び第2の各シーブ6D1,6D2に巻掛けさらに車輌後方側に延出させて昇降床2の後端左側部に取付けた第3のシーブ6D3に巻掛けた後、ロープ他端5Dbを後側左位置にある支柱11の上部位置に固定している。
【0055】
他方、昇降床下動用の3本のワイヤーロープ7A〜7Cは、図2、図3、図6に示すように、それぞれ次のように掛け回されている。1本目の下動用ワイヤーロープ7Aは、そのロープ一端7Aaを移動体4の中央寄り位置に固定し、そのロープ他端側を移動体4より後部側の連結桟22に取付けた第1のシーブ8A1に巻掛けさらに車輌前方側に延出させて昇降床2の前端中央部に取付けた第2のシーブ8A2に巻掛けた後、ロープ他端7Abを荷台1の前端中央寄り位置に固定している。2本目の下動用ワイヤーロープ7Bは、そのロープ一端7Baを移動体4の右端部に固定し、そのロープ他端側を車輌後方側に延出させて昇降床2の後端右側部に取付けたシーブ8Bに巻掛けた後、ロープ他端7Bbを荷台1の後端右位置に固定している。3本目の下動用ワイヤーロープ7Cは、そのロープ一端7Caを移動体4の左端部に固定し、そのロープ他端側を車輌後方側に延出させて昇降床2の後端左側部に取付けたシーブ8Cに巻掛けた後、ロープ他端7Cbを荷台1の後端左位置に固定している。尚、この第1実施形態では、下動用ワイヤーロープ7A〜7Cは、車輌前部側の中央寄りに1本(符号7A)設け、車輌後部側の左右各端部に1本ずつ(符号7B,7C)設けているが、これらの下動用ワイヤーロープ7A〜7Cは荷台1上における荷物10の積み降ろし作業に邪魔にならない位置にある。
【0056】
このように、第1実施形態の昇降床付き貨物自動車では、移動体4側から延出された4本の上動用ワイヤーロープ5A〜5Dがそれぞれ昇降床2の4隅にある各シーブ6A2,6B2、6C3,6D3に巻掛けられた後、各上動用ワイヤーロープのそれぞれの端部5Ab,5Bb,5Cb,5Dbを各支柱11,11・・の上部位置に固定しているので、該4本の上動用ワイヤーロープ5A〜5Dで昇降床2の4隅(各シーブ6A2,6B2、6C3,6D3)を吊持できる。尚、各上動用ワイヤーロープ5A〜5D及び各下動用ワイヤーロープ7A〜7Cは、それぞれ緊張した状態(弛みのない状態)で張設されており、後述のように移動体4が前後移動したときには、上動用及び下動用の各ワイヤーロープがそれぞれ即座に昇降床2を所定方向に作動させるようになっている。
【0057】
そして、この第1実施形態の昇降床付き貨物自動車では、油圧シリンダ3が最縮小している状態では、移動体4が図2、図3、図4及び図6に示すように車輌前方側に位置していて、4本の上動用ワイヤーロープ5A〜5Dがそれぞれ繰り出されている(昇降床2部分での長さが短くなる)一方、3本の下動用ワイヤーロープ7A〜7Cがそれぞれ引き込まれて(昇降床2部分での長さが長くなる)、昇降床2が荷台1上に近接(又は接触)する位置まで下降している。他方、油圧シリンダ3が最縮小状態から伸長すると、移動体4が車輌後方側に移動していき、4本の上動用ワイヤーロープ5A〜5Dがそれぞれ引き込まれる(昇降床2部分での長さが長くなる)一方、3本の下動用ワイヤーロープ7A〜7Cがそれぞれ繰り出される(昇降床2部分での長さが短くなる)。このとき、昇降床2の4隅にある各シーブ6A2,6B2、6C3,6D3を介して各上動用ワイヤーロープ5A〜5Dが昇降床2側に引き込まれることにより、昇降床2が各支柱11,11・・にガイドされながら水平姿勢を維持したまま上動するようになる。そして、油圧シリンダ3が最伸長した状態では、移動体4が図2、図3、図4にそれぞれ鎖線図示(符号4′)する位置及び図7の位置まで車輌後方側に移動して、昇降床2を図4の鎖線図示位置(符号2′の位置)及び図7に示す所望高さ位置まで上昇させることができる。
【0058】
又、昇降床2の上動状態から、油圧シリンダ3が縮小すると、各上動用ワイヤーロープ5A〜5Dが緩む(繰り出される)一方で、各下動用ワイヤーロープ7A〜7Cが緊張する(引き込まれる)ので、昇降床2を水平姿勢を維持したまま確実に下降させることができる。
【0059】
このように、第1実施形態の昇降床付き貨物自動車では、1本の油圧シリンダ3で昇降床2を昇降させ得るようになっているので、上記した本願の請求項1〜5の各効果を達成できる。
【0060】
この第1実施形態の昇降床付き貨物自動車では、空の状態から荷物を積み込む場合は、図1に示すように昇降床2を最下降させた状態で該昇降床2上に順次荷物10,10・・を積み込み、油圧シリンダ3を伸長させて昇降床2を荷物10,10・・とともに所定高さまで上動させ(昇降床が符号2′、油圧シリンダが符号3′、移動体が符号4′、荷物が符号10′の状態となる)、開放された荷台1上に別の荷物を積み込めばよい。又、昇降床2上及び荷台1上の各荷物10,10・・を降ろす場合は、上記積み込み手順とは逆順序で行えばよい。尚、この第1実施形態では、上動した昇降床2を油圧シリンダ3のみで支持するようにしているが、昇降床2を別の機構(例えば、昇降床2の4隅と各支柱11,11・・間でのロック機構や、荷台1上からの支え棒等)を共用して支持するようにしてもよい。
【0061】
[図8〜図10の第2実施形態]
この第2実施形態の昇降床付き貨物自動車は、上記第1実施形態のものに油圧シリンダ(駆動装置)3を2本使用したものである。尚、この第2実施形態の昇降床付き貨物自動車において、荷台1、各支柱11,11・・、昇降床2等は第1実施形態のものと同じである。
【0062】
この第2実施形態では、2本の油圧シリンダ3,3をそれぞれ昇降床2の前後各端部寄りの幅方向中央位置で第1実施形態と同様に床板23下面で枠体の高さ範囲内の空間部に設置している。前側の油圧シリンダ3は車輌後方側に向けて伸縮する一方、後側の油圧シリンダ3は車輌前方側に向けて伸縮するように設置されている。
【0063】
前後各油圧シリンダ3,3のロッドには、それぞれ移動体4,4が取付けられている。前側油圧シリンダ3の移動体4は比較的短かいものが使用されている一方、後側の油圧シリンダ3の移動体4は比較的長いものが使用されている。
【0064】
前側油圧シリンダ3は、昇降床2の前部側を昇降させるもので、2本(1本目と2本目)の上動用ワイヤーロープ5A,5Bと1本(1本目)の下動用ワイヤーロープ7Aを引き込み・繰り出し操作するものである。又、後側の油圧シリンダ3は、昇降床2の後部側を昇降させるもので、2本(3本目と4本目)の上動用ワイヤーロープ5C,5Dと2本(2本目と3本目)の下動用ワイヤーロープ7B,7Cを引き込み・繰り出し操作するものである。
【0065】
4本の上動用ワイヤーロープ5A〜5Dと3本の下動用ワイヤーロープ7A〜7Cとは、それぞれ次のように設置されている。
【0066】
昇降床2の前右隅部を吊持する1本目の上動用ワイヤーロープ5Aは、そのロープ一端5Aaを前側移動体4の右端部に固定し、そのロープ他端側を車輌前方側に延出させて昇降床2の前端中央右寄り位置に取付けた第1のシーブ6A1と昇降床2の前端右側部に取付けた第2のシーブ6A2にそれぞれ巻掛けた後、ロープ他端5Abを前側右位置にある支柱11の上部位置に固定している。昇降床2の前左隅部を吊持する2本目の上動用ワイヤーロープ5Bは、そのロープ一端5Baを前側移動体4の左端部に固定し、そのロープ他端側を車輌前方側に延出させて昇降床2の前端中央左寄り位置に取付けた第1のシーブ6B1と昇降床2の前端左側部に取付けた第2のシーブ6B2に巻掛けた後、ロープ他端5Bbを前側左位置にある支柱11の上部位置に固定している。昇降床2の後右隅部を吊持する3本目の上動用ワイヤーロープ5Cは、そのロープ一端5Caを後側移動体4の中央右寄り位置に固定し、そのロープ他端側を車輌後方側に延出させて昇降床2の後端中央右寄り位置に取付けた第1のシーブ6C1と昇降床2の後端右側部に取付けた第2のシーブ6C2にそれぞれ巻掛けた後、ロープ他端5Cbを後側右位置にある支柱11の上部位置に固定している。昇降床2の後左隅部を吊持する4本目の上動用ワイヤーロープ5Dは、そのロープ一端5Daを後側移動体4の中央左寄り位置に固定し、そのロープ他端側を車輌後方側に延出させて昇降床2の後端中央左寄り位置に取付けた第1のシーブ6D1と昇降床2の後端左側部に取付けた第2のシーブ6D2に巻掛けた後、ロープ他端5Dbを後左位置にある支柱11の上部位置に固定している。
【0067】
他方、昇降床2の前部を下動させる1本目の下動用ワイヤーロープ7Aは、そのロープ一端7Aaを前側移動体4の中央寄り位置に固定し、そのロープ他端側を前側移動体4より後部側に取付けた第1のシーブ8A1に巻掛けさらに車輌前方側に延出させて昇降床2の前端中央部に取付けた第2のシーブ8A2に巻掛けた後、ロープ他端7Abを荷台1の前端中央寄り位置に固定している。昇降床2の後右隅部を下動させる2本目の下動用ワイヤーロープ7Bは、そのロープ一端7Baを後側移動体4の右端部に固定し、そのロープ他端側を後側移動体4より前部側に取付けた第1のシーブ8B1に巻掛けさらに車輌後方側に延出させて昇降床2の後端右側部に取付けた第2シーブ8B2に巻掛けた後、ロープ他端7Bbを荷台1の後端右位置に固定している。昇降床2の後左隅部を下動させる3本目の下動用ワイヤーロープ7Cは、そのロープ一端7Caを後側移動体4の左端部に固定し、そのロープ他端側を後側移動体4より前部側に取付けた第1のシーブ8C1に巻掛けさらに車輌後方側に延出させて昇降床2の後端左側部に取付けた第2シーブ8C2に巻掛けた後、ロープ他端7Cbを荷台1の後端左位置に固定している。
【0068】
尚、この第2実施形態の場合も、各上動用ワイヤーロープ5A〜5D及び各下動用ワイヤーロープ7A〜7Cは、それぞれ緊張した状態(弛みのない状態)で張設されている。
【0069】
又、この第2実施形態の昇降床付き貨物自動車では、前後の各油圧シリンダ3,3を同期して作動させるための連動同期システムが用いられており、昇降床2を昇降動作させるには両油圧シリンダ3,3を同期して伸縮作動させる。
【0070】
そして、この第2実施形態の場合も、両油圧シリンダ3,3を同期伸縮させることにより、上記第1実施形態の場合と同様に、各上動用ワイヤーロープ及び各シーブよにり昇降床2を水平姿勢に維持したまま昇降させ得るようになっている。
【0071】
この第2実施形態では、2本の油圧シリンダ3,3で昇降床2を昇降させるので、両油圧シリンダ3,3の連動同期システムが必要であるが、油圧シリンダ3,3が2本であるので特許文献1のように4本の油圧シリンダでそれぞれ昇降床の4隅を昇降させる場合より連動同期システムの構成が簡単であり、且つ誤作動が起こりにくい。又、この第2実施形態のものでも、上記した本願の請求項3〜5の各効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本願第1実施形態の昇降床付き貨物自動車の側面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図2における昇降床から床板を省略した状態の一部削除拡大図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図3の一部拡大斜視図である。
【図6】第1実施形態における昇降機構の説明用斜視図(昇降床下動状態)である。
【図7】図6からの状態変化図(昇降床上動状態)である。
【図8】本願第2実施形態の昇降床付き貨物自動車の図2相当図である。
【図9】第2実施形態における昇降機構の説明用斜視図(昇降床下動状態)である。
【図10】図9からの状態変化図(昇降床上動状態)である。
【符号の説明】
【0073】
1は荷台、2は昇降床、3は駆動装置(油圧シリンダ)、4は移動体、5A〜5Dは上動用索(上動用ワイヤーロープ)、6A〜6Dは索掛け輪(シーブ)、7A〜7Cは下動用索(下動用ワイヤーロープ)、8A〜8Cは索掛け輪(シーブ)11は支柱、21は枠体、23は床板、24は空間部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の荷台(1)の4隅にそれぞれ支柱(11,11・・)を立設し、該4本の支柱(11,11・・)で昇降床(2)の4隅をガイドして前記荷台(1)上に昇降床(2)を昇降自在に設置した昇降床付きの貨物自動車であって、
前記昇降床(2)の4隅と前記4本の支柱(11,11・・)の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪(6A〜6D)を介して昇降床吊持用の4本の索(5A〜5D)を介設する一方、
前記4本の索(5A〜5D)を1基の駆動装置(3)で引き込み・繰り出し操作することで前記昇降床(2)を昇降させ得るようにしている、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車。
【請求項2】
貨物自動車の荷台(1)の4隅にそれぞれ支柱(11,11・・)を立設し、該4本の支柱(11,11・・)で昇降床(2)の4隅をガイドして前記荷台(1)上に昇降床(2)を昇降自在に設置した昇降床付きの貨物自動車であって、
前記昇降床(2)の4隅と前記4本の支柱(11,11・・)の各上部位置との間にそれぞれ索掛け輪(6A〜6D)を介して昇降床吊持用の4本の索(5A〜5D)を介設する一方、
前記4本の索(5A〜5D)を2基の駆動装置(3,3)でそれぞれ2本ずつ引き込み・繰り出し操作することで前記昇降床を昇降させ得るようにしている、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車。
【請求項3】
上記請求項1又は2において、
駆動装置(3)として、索(5A〜5D)を引き込み・繰り出し操作する索操作部(4)が直線方向に進退するものを採用しているとともに、
前記駆動装置(3)は前記索操作部(4)が水平方向に進退する姿勢で設置している、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車。
【請求項4】
上記請求項3において、
昇降床(2)は上下に所定厚さをもつフレーム材からなる枠体(21)の上面に床板(23)を設置したものを使用し、
駆動装置(3)は油圧シリンダを採用しているとともに、
該油圧シリンダ(3)を前記床板(23)下面で前記枠体(21)の上下厚さ範囲内に設置している、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車。
【請求項5】
上記請求項1から4のいずれか1項において、
駆動装置(3)と荷台(1)の前後各位置との間に、駆動装置(3)が昇降床下降側に作動したときに昇降床(2)を下動させる少なくとも前後2本の下動用索(7A〜7C)を介設している、
ことを特徴とする昇降床付き貨物自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−307907(P2008−307907A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154676(P2007−154676)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(393008360)株式会社タダノエンジニアリング (15)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)