説明

明日葉茶

【課題】明日葉独特の青臭さやえぐ味を低減させ、風味の良い、簡便に製造できる明日葉茶葉あるいはそれから抽出された明日葉茶飲料と、それらの製造方法を提供すること。
【解決手段】明日葉の乾燥物を焙煎加熱する工程を含有する処理で得られる非揉性明日葉茶葉、当該非揉性明日葉茶葉を用いて製造される明日葉茶飲料、及びそれらの製造方法が提供される。当該明日葉茶葉は、焙煎加熱処理での加熱温度が100〜150℃であることが好ましく、また、焙煎加熱に供される明日葉の乾燥物としては、ブランチング後、乾式乾燥処理された水分含量20%以下の乾燥物が好ましい。さらに、本発明により、明日葉特有の成分である明日葉カルコンが配合された明日葉カルコン機能配合飲料も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味に優れた明日葉茶葉、明日葉茶飲料、及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
明日葉(Angelica keiskei Koidz.)はセリ科の大型多年性草本であり、さまざまな健康促進効果が知られている。例えば、明日葉の有する生理活性としては、抗菌作用、抗腫瘍作用、胃酸分泌抑制作用、抗癌効果、神経成長因子(NGF)産生増強作用、肝細胞増殖因子産生増強作用が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、明日葉はそのインスリン様作用により、抗糖尿病作用があることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
明日葉に含まれる特徴的な成分として、キサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンを主とするカルコン類化合物が知られている。カルコン類化合物とは特定の化学構造を有するポリフェノールの一種である。近年、カルコン類化合物は多様な生理機能を有することが報告されており、例えば、抗がん活性、抗菌作用、抗ウイルス作用、セルライト解消作用、NGF産生増強作用、抗糖尿病作用等が知られている(例えば特許文献3、4及び非特許文献1参照)。
【0004】
特に明日葉に含まれる主要なカルコン類化合物であるキサントアンゲロールや4−ハイドロキシデリシン(以下これらを明日葉カルコンと総称する。)はいずれもインスリン様作用が確認されている。これらの明日葉カルコンはインスリンと同様の生理機能、すなわち前駆脂肪細胞を脂肪細胞に分化させる作用と、分化された脂肪細胞へのグルコースの取り込みを促進させる作用の両方を併せ持ち、さらには動物実験においても糖尿病改善効果、糖尿病の発症予防効果が認められており、医薬や健康食品素材としての効果が期待されている化合物である。
【0005】
従来、明日葉を材料とする明日葉茶の製造方法として、例えば公知の煎茶と同様の製法、すなわち明日葉の新芽に蒸熱・冷却工程を施した後、これを圧搾した後に粗揉及び揉捻の各工程を順次施し、更にこれを再加熱乾燥する中揉工程を行った後、精揉及び最終乾燥工程を施すという方法が知られている(例えば特許文献5)。
【0006】
上記従来法により得られた明日葉茶は、独特の青臭さや野菜に似た味を有することから、この味を敬遠する者がいるとして、特許文献6では明日葉茶の製造方法として、蒸熱・冷却工程、粗揉工程、仕上捻工程を含む煎茶製造工程を経て、煎茶状明日葉茶を得、当該煎茶を加熱乾燥した後に胴あぶり乾燥機によって焙煎して明日葉茶を製造している。
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/76614号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/014407号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/54682号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/096198号パンフレット
【特許文献5】特開昭61−158766号公報
【特許文献6】特開平1−262781号公報
【非特許文献1】J.R.Dimmock 他3名,Current Medicinal Chemistry,1999年,Vol.6,P1125−1149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、明日葉独特の青臭さ、野菜に似た味、更にはえぐ味を低減させ、風味の良い、簡便に製造できる明日葉茶葉、明日葉茶飲料及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、明日葉独特の青臭さ、野菜に似た味、更にはえぐ味を低減させ、風味の良い明日葉茶飲料を開発すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに従来明日葉茶の製造において使用されていた粗揉工程等を行わずに製造した明日葉を使用して焙煎加熱処理を施すことにより、呈味性に優れた明日葉茶飲料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明は、明日葉の乾燥物を焙煎加熱する工程を含有する処理で得られる非揉性明日葉茶葉に関する。
本発明の第1の発明において、焙煎加熱処理は明日葉独特の青臭さ、野菜に似た味、更にはえぐ味を低減できる温度範囲で設定することができる。また当該処理により明日葉茶葉に焙煎香が付与され、独特の風味の明日葉茶葉、明日葉茶飲料の提供が可能となる。この焙煎香は、焙煎処理と同等の加熱処理であれば付与することができ、その一例としては焙炒処理がある。焙炒処理方法としては、例えば特開平3−175970号公報に記載の焙炒処理方法があり、当該方法で明日葉乾燥物を焙炒処理することができる。
本発明の第1の発明の態様として、焙煎加熱処理での加熱温度が100〜150℃である非揉性明日葉茶葉が挙げられる。また、本発明の第1の発明は明日葉の乾燥物を使用するが当該乾燥物としては、明日葉をブランチング後、乾式乾燥処理した水分含量20%以下の乾燥物が挙げられる。乾式加熱処理としては、特にその方法に限定はなく、通常の乾式加熱で明日葉の水分を効率よく除去できる方法であればよい。
【0011】
本発明の第2の発明は、本発明の第1の発明の非揉性明日葉茶葉を用いて製造される明日葉茶飲料に関する。その態様として、レトルト殺菌した明日葉茶飲料が提供されるが、酸化防止剤の存在下にレトルト殺菌することにより、風味の増した明日葉茶飲料が提供される。
【0012】
本発明の第3の発明は、明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料に関する。当該飲料は明日葉カルコンの機能が付与された明日葉茶飲料であり、当該飲料を摂取することにより、簡便に明日葉カルコンの機能を譲受することができる。
本発明の第3の発明の態様としては、本発明の第2の発明の明日葉茶飲料に明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料が挙げられる。
また、本発明の第4、第5の発明は本発明の第1、第2の発明の各々の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、より明日葉独特の青臭さ、野菜に似た味、更にはえぐ味を低減させ、濃厚さ、甘さ、香ばしさの点で風味の良い明日葉茶葉、更にはまろやかさも加味された高品質の明日葉茶飲料、及びそれらの製造方法が提供される。さらに当該製造方法は、粗揉、揉捻、中揉又は精揉工程などの揉み工程を含まない点において、従来法より極めて簡便であり、すっきりした飲み口の健康茶の製造に適した製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の明日葉茶葉は生鮮明日葉を原料として製造する。製造に使用する明日葉原料の部位に特に限定はないが、果実、種子、種皮、花、葉、茎、根、根茎、又は植物全体から適宜選択して使用すればよく、好適には茎、葉、もしくはこれらの混合物を使用すればよい。すなわち、本発明の「明日葉茶葉」とは、「葉」のみを原料とするものに限定されるものではなく、前記明日葉原料の部位を単独で、もしくは混合して製造されたものを包含するものである。
茎由来の焙煎処理物は、明日葉茶飲料の香味と甘みを増すことができる。また、葉由来の焙煎処理物は、高級感のある明日葉茶飲料を製造することができることから、明日葉原料の明日葉部位の配合を調整することにより、明日葉茶葉及び明日葉茶飲料の呈味性や品質を調整することが可能である。また、タンク培養等により工業的に培養された明日葉の組織や細胞培養物を使用することもできる。
【0015】
本願明細書において、「非揉性明日葉茶葉」とは明日葉原料を揉む作業を行わずに製造された明日葉茶葉のことを意味する。揉む作業とは、お茶の製造工程において一般的に行われている茶葉を揉む工程、例えば粗揉、揉捻、中揉又は精揉工程などの作業を示す。
【0016】
本発明の明日葉茶葉及び明日葉茶飲料としては、原料に明日葉を含んでいればよく、例えば明日葉以外の原料を混合したブレンド茶葉、及び当該ブレンド茶葉を使用した明日葉茶飲料としてもよい。なお本発明の明日葉茶飲料は、滅菌時の加熱に対しても安定で、保存性も優れていることから缶、ビン、ペットボトルなどの容器詰飲料とするのが好適である。
【0017】
本発明に係る明日葉茶葉の製造方法は、乾燥、焙煎の工程を必須とするものであり、本発明に係る明日葉茶飲料は、このような製法により得られた明日葉茶葉を用いて製造される。以下、本発明の明日葉茶葉ならびに明日葉茶飲料の製造方法を限定するものではないが、その例を挙げると、本発明の明日葉茶葉は、(1)ブランチング、(2)細断、(3)乾燥、(4)焙煎の各工程により製造され、本発明の明日葉茶飲料は、(5)前記(1)〜(4)の工程で得られた明日葉茶葉からの明日葉茶飲料の抽出、(6)調合、(7)充填及び殺菌の各工程により製造される。
【0018】
(1)ブランチング工程
ブランチングは、原料として使用される明日葉原料の変色や味の劣化を防ぐ目的で行われ、熱湯への浸漬やスチームを吹き付けることにより実施され、その目的に合致する方法を選択すればよいが、原料中の成分の減少を防ぐ観点からはスチームブランチングが好ましい。当該方法では、公知の蒸熱機、例えば網胴回転型蒸熱機、網胴回転攪拌型蒸熱機、オートクレーブ、送帯式蒸熱機などが使用できる。また熱湯に浸漬する場合は熱湯浸漬装置が使用できる。また、当該工程では、ブランチング後明日葉原料を冷水や冷風により冷却することが明日葉原料の変色や味の劣化防止に好適である。前記の蒸熱機は蒸気発生装置、蒸し機、給葉機及び冷却機などから構成されており、このような装置を使用することが好適である。
【0019】
ブランチング条件には特に限定はなく、明日葉原料の収穫時期や大きさにより適宜調整すればよく、例えば、飽和蒸気又は90℃以上の熱湯で10〜300秒間、好適には30〜60秒間加熱し、明日葉原料の殺菌と熱処理を行う。この熱処理により、明日葉原料の酸化酵素を不活性化して、乾燥中の褐色化を防ぐことができる。続いて、熱処理した明日葉原料の冷却処理により、熱による明日葉原料の蒸れが防止され、味、色沢、香気が良好な明日葉茶葉及び明日葉茶飲料の原料となる。
【0020】
(2)細断工程
細断工程は明日葉原料を小片化する工程であり、必要に応じ行えばよい。細断方法に特に限定はないが、ブランチング処理した明日葉原料を例えば5〜20mm程度の幅の短冊状に細断するのが好適である。細断によって、明日葉原料を小片化するとともに、次の乾燥処理時において、明日葉原料が重なったままとなることによる乾燥むらを防ぐことができる。当該細断工程においては、公知の細断装置、例えばギロチン式やブレード回転式細断機などを用いてもよく、また手作業により細断してもよい。
【0021】
(3)乾燥工程
乾燥処理は明日葉原料に乾式乾燥処理(以下、単に乾燥処理とも称する)を施すことにより実施される。乾燥工程で得られる乾燥処理物としては、明日葉原料中の水分が効率よく除去され、次の焙煎工程が効率よく行えればよく特に限定はないが、水分含量が20%以下の乾燥処理物がよく、より好ましくは10%以下、さらに好適には7%以下の乾燥処理物である。
乾燥方法としては特に限定はないが、例えば乾燥処理回数としては、単回でも複数回でもよい。単回での乾燥処理としては、例えば箱型通気乾燥装置を使用して、40〜100℃で1時間〜1週間乾燥処理する方法が例示される。
また、より効率的に明日葉の乾燥を行うには、複数回の乾燥処理がよく、例えば異なった条件での2段階の乾燥処理を実施すればよい。例えば1段階目の乾燥処理では、細断処理した明日葉を攪拌しながら、乾燥室庫内温度80〜180℃の比較的高い温度で10分〜5時間加熱することにより明日葉原料に含まれる水分の大部分を除去すればよい。なお、水の気化熱が奪われることにより、明日葉原料自体の品温上昇が抑制される条件を選択するのがよい。
【0022】
上記1段階目の乾燥処理に使用する乾燥機は、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、回転型通気乾燥装置、連続式横型流動乾燥装置、振動流動層乾燥装置、ベルト式乾燥装置などが例示される。
【0023】
2段階目の乾燥処理で、大方の水分が除去された状態の明日葉原料をより低温で長時間処理し、本発明の使用に適した明日葉乾燥物とすることができる。例えばこの乾燥処理は、40〜80℃の比較的低い温度で、1時間〜72時間乾燥する。2段階目の乾燥処理に使用する乾燥機は、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、箱型通気乾燥装置、連続真空乾燥機、攪拌乾燥機、気流式乾燥機、マイクロ波を用いた乾燥機などが例示される。
【0024】
(4)焙煎工程
本発明における焙煎工程とは、収穫後の明日葉を蒸して粗揉みを行い、焙煎加熱処理するよりも、揉む工程を行わずに得られた明日葉の乾燥物、例えば上記の(1)〜(3)の工程を経て得られた明日葉乾燥物を焙煎加熱処理する工程であり、該工程により製造された非揉性明日葉茶葉を使用して明日葉茶飲料を製造することにより、茶飲料の生臭さを低減することができる。すなわち、明日葉を揉む工程を行うことなく、前記乾燥工程で得られた明日葉原料の焙煎加熱処理を行うことにより本発明の明日葉茶葉が製造される。
【0025】
なお、必要に応じ焙煎工程前に、明日葉原料から大きな茎などを選別除去してもよい。明日葉乾燥物を焙煎加熱処理する方法としては、公知の焙煎機を使用することができ、例えば、排気乾燥火入れ機、平釜、オーブン、ガスロースター、電熱ロースター、熱風ロースター、遠赤外線装置、ロータリー流動焙煎装置、ガス流動層焙煎装置、マイクロ波付流動層焙煎装置、複胴式胴あぶり乾燥機などが使用できる。
【0026】
焙煎加熱処理は明日葉独特の青臭さ、野菜に似た味、更にはえぐ味を低減できる温度範囲で設定することができる。また当該処理により明日葉茶葉に焙煎香が付与され、独特の風味の明日葉茶葉、明日葉茶飲料の提供が可能となる。この焙煎香は、焙煎加熱処理と同等の加熱処理であれば付与することができ、その一例としては焙炒処理がある。焙炒処理方法としては、例えば特開平3−175970号公報に記載の焙炒処理方法があり、当該方法で明日葉乾燥物を焙炒処理すればよく、明日葉の乾燥物を焙炒加熱する工程を含有する処理で得られる非揉性明日葉茶葉も本発明に包含される。
【0027】
なお、本願明細書において、「焙煎加熱処理での加熱温度」(以下、単に焙煎温度と称する)とは焙煎工程における被焙煎物(明日葉乾燥物)の設定到達温度のことを意味する。すなわち明日葉乾燥物を焙煎機に投入してから焙煎機内の温度を上昇させて到達した明日葉乾燥物の温度である。また、焙煎時間は加熱開始から設定温度に到達するまでの時間を意味し、設定温度到達直後に焙煎処理物の取出しが行われる。
【0028】
焙煎温度は、特に限定はなく、例えば100〜300℃の範囲から適宜選択すればよい。焙煎加熱処理を低温で行うと、焙煎加熱処理物が甘さと緑色の色彩に優れたものが得られるが、明日葉特有の生臭さ(えぐ味)が残る。一方、高温で行うと色彩は落ちるが、香ばしい香りが付与された明日葉茶葉が得られる。ただし、高温すぎるとこげ臭が強くなりすぎ、嗜好性が劣化する。このような観点からは、本発明での焙煎温度は、好適には100〜150℃であり、甘さを重視した茶葉及び茶飲料に仕上げたい場合は100〜120℃、甘さよりも香ばしさを際立たせた茶葉及び茶飲料に仕上げたい場合は、120〜150℃に設定すれば良い。また、原料として明日葉の葉のみを使用する場合は、後述の実施例14にも示すとおり、焙煎温度は120〜150℃とすることが好ましい。なお異なる焙煎温度で調製した明日葉茶葉を混合して、後述の抽出工程に使用することもできる。さらに、異なる焙煎温度で調製した明日葉茶葉からの抽出液を混合し、明日葉茶飲料とすることもできる。なお、殺菌工程において、加熱を伴う殺菌方法、例えばレトルト殺菌を実施する場合、加熱による明日葉茶飲料の風味に与える影響を考慮すると、高めの焙煎温度を適用し、明日葉茶葉を製造することが好ましい。例えば110℃焙煎加熱処理の明日葉茶葉よりも、110℃焙煎加熱処理の明日葉茶葉と135℃焙煎加熱処理の明日葉茶葉との等量混合品、120〜140℃焙煎加熱処理の明日葉茶葉がよく、特に135℃処理の焙煎明日葉茶葉の単独使用が好適である。
以上の、(1)〜(4)の工程により、本発明の明日葉茶葉を得ることができる。本発明の明日葉茶葉はそのまま後述の抽出工程に使用してもよいが、後述の実施例11、14及び15に示すようにティーバッグ詰め明日葉茶葉としてもよい。
【0029】
(5)抽出工程
焙煎工程で得られた明日葉茶葉を用いて、適切な溶媒による抽出工程を実施することにより、本発明の明日葉茶飲料が製造される。抽出工程は、明日葉茶葉を多量使用して高濃度の抽出物を調製し、後述の調合工程で湯水や水で希釈してもよく、また適切な濃度に抽出した抽出物をそのまま後述の調合工程に用いてもよい。抽出工程において使用される明日葉茶葉量に特に限定はないが、抽出溶媒に対して0.25〜3%w/v、好適には得られる茶飲料の濃厚さ、甘さ、香ばしさの点から、0.5〜2%w/vの範囲で使用すればよい。抽出溶媒としては特に限定はなく、飲用に供せられる水であればよいが、脱塩水、蒸留水の使用がより好ましい。
【0030】
抽出方法としては特に限定はなく、攪拌抽出などの従来の方法により行えばよい。例えば、煮沸脱気や窒素ガスなどの不活性ガスを通気して溶存酸素を除去した非酸素化雰囲気下で抽出する方法、例えば特許第3484612号公報記載の方法を使用してもよい。
さらに抽出工程前の抽出溶媒あるいは抽出工程後に得られた茶飲料に酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤として特に限定はないが、アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩の使用が好ましい。抽出溶媒及び/又は抽出後の茶飲料に対するアスコルビン酸又はアスコルビン酸塩の量に特に限定はないが、酸化防止効果や得られる茶飲料の味の濃厚さ、甘さ、香ばしさなどの官能の点からは0.001〜1.0%w/v、より好ましくは0.002〜0.5%w/v、更に好適には0.005〜0.2%w/vの範囲である。
なおアスコルビン酸又はアスコルビン酸塩の添加は、酸化防止効果及び得られる茶飲料の味の濃厚さ、甘さ、香ばしさの点から抽出工程前の抽出溶媒への添加が好ましい。
この他、抽出工程時に抽出効率の向上、中和等の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩などを適宜添加することもできる。炭酸塩としては、例えば炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム(別名、重曹)、炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、リン酸塩としては、例えばリン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられる。
【0031】
抽出溶媒の液温に特に限定はないが、35℃以上がよく、より好ましくは得られる茶飲料の濃厚さ、甘さ、香ばしさの点から50℃以上、さらに好適には65〜100℃である。抽出時間も特に限定はなく、得られる茶飲料の濃厚さ、甘さ、香ばしさの点から選択すればよいが、例えば数秒〜1時間、より好ましくは30秒〜40分、さらに好適には1分〜15分である。
【0032】
(6)調合工程
調合工程は、必要に応じて茶飲料の味や風味の調整、強化、あるいは機能性の付与を目的として実施される工程である。本工程では、例えば香料、甘味料(砂糖、スクラロース、エリスリトール、キシリトール、羅漢果エキス等)、安定剤(ペクチン、カラギーナン、大豆多糖類等)、果汁、粉末果汁、野菜エキス、野菜ペースト、海藻由来成分や海藻抽出物(例えば、フコイダン含有物、アガロオリゴ糖含有物等)、きのこ粉末、明日葉等の植物の乾燥粉末、焙煎物又は発酵エキス、また健康食品素材として知られている成分(バナバエキス、アマチャヅルエキス、クコ葉エキス、桑の葉エキス、難消化性デキストリン、各種ビタミン類等)などを茶飲料に添加してもよく、還元剤を添加してもよい。また、中和等の目的で、前述したように食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩などを適宜添加することもできる。更に前述の抽出工程で高濃度の抽出液を得た場合は、本工程で水や湯水を添加することにより希釈することもできる。
【0033】
本工程では、好適には明日葉カルコンや当該化合物を含む組成物を添加することで明日葉茶飲料に明日葉カルコンを配合することができる。なお、本願明細書において明日葉カルコンとは、前述のように、明日葉に含まれるカルコン類化合物である4−ハイドロキシデリシン、キサントアンゲロールもしくはそれらの混合物を意味する。茶飲料に添加される明日葉カルコンを含む組成物としては、特に限定はないが、明日葉からエタノールや含水エタノール抽出して製造された明日葉エキスが例示される。本発明に使用する明日葉の含水エタノール抽出物は、明日葉カルコンを高濃度に含む抽出物であり、明日葉カルコンの生理作用を発揮する茶飲料を製造する場合に添加・配合する。なお、明日葉カルコンは水に不溶の化合物であり、従来の明日葉茶飲料には含有されていないか、もしくは含有されていてもごく微量であると考えられる。明日葉の含水エタノール抽出物としては、例えば特開2007−176919号公報に記載のように、40〜95%(w/w)のエタノール水溶液で抽出された抽出物が好ましく、さらに乳化剤を添加することにより可溶性を高めたものが好ましい。当該含水エタノール抽出物には、高濃度の明日葉カルコンが含有されており、水に可溶で体内への吸収もよく、また明日葉特有のえぐ味や青臭さが低減されていることから、飲料の素材として使用するのに適している。なお、本発明の明日葉茶飲料の態様として、明日葉カルコンが配合された茶飲料とする場合は、明日葉カルコンの生理作用を利用した機能性飲料とすることができる。例えば、明日葉カルコンを有効成分(関与する成分)として当該物質の生理作用、例えば血糖値を低下させる効果やアディポネクチンを増加させる効果を期待した食品や、その旨の表示、例えば血糖値が高めの方への飲用を勧めた表示を付した食品(例えば特定保健用食品)としての茶飲料とすることができる。
【0034】
明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料中の明日葉カルコンの含有量に特に限定はないが、4−ハイドロキシデリシンとキサントアンゲロールの総量として、飲料中に0.0001〜50mg/100mL、より好ましくは0.001〜25mg/100mL、更に好適には0.01〜20mg/100mLとなるよう配合されていればよく、当該飲料を摂取することにより、簡便に明日葉カルコンの機能を譲受することができる。
当該明日葉カルコン配合機能性飲料の摂取形態に特に限定はないが、一日あたり明日葉カルコンとして4−ハイドロキシデリシンを5mg程度摂取するような形態が好ましい。一日の飲用総量に合わせて、明日葉カルコン含有量を設定すればよい。
【0035】
(7)充填及び殺菌工程
前記調合工程で得られた明日葉茶飲料を容器詰飲料とする場合は、容器への充填工程が実施される。ここで容器とは特に限定はなく、通常飲料に使用されている容器であれば使用することができ、缶、ビン、ペットボトル、紙容器等が例示される。明日葉茶飲料の充填は、上記(6)の工程で得られた明日葉茶飲料を公知の装置を用いて容器に充填することにより実施される。また必要に応じ、上記(6)の工程で得られた明日葉茶飲料の沈殿物の遠心分離除去、フィルターろ過、加熱処理などを行った後に充填してもよい。
【0036】
殺菌方法としては特に限定はなく、従来の飲料に採用される殺菌方法を実施することができ、例えばレトルト殺菌方法、高温短時間殺菌方法、低温長時間殺菌方法、フィルターろ過殺菌方法などが使用できる。レトルト殺菌とは、一般に加圧下で100℃を越えて湿熱殺菌することを意味し、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあってはレトルト殺菌を採用することができる。ペットボトルや紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、その他の方法、例えば、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。レトルト殺菌を採用する場合は、前記容器詰明日葉茶飲料を、公知のレトルト殺菌機により105〜150℃、より好ましくは110〜130℃、さらに好適には115〜125℃の範囲で行えばよい。また、F値(殺菌強度)が、4〜80、より好ましくは10〜70、さらに好適には15〜60の範囲となるように行えばよい。なお121℃、1分間の殺菌条件のときのF値を1と定義し、例えば121℃、4分間の殺菌条件の場合、被殺菌物の中心部分が121℃で4分間保持されることを意味する。レトルト殺菌後は、放冷等の手段により冷却することができる。
【0037】
また、本発明により、前述した製造工程を有する明日葉茶葉の製造方法も提供される。すなわち、本発明は、下記工程(a)及び(b)を包含する非揉性明日葉茶葉の製造方法を提供する。
(a)明日葉を乾燥処理する工程、
(b)(a)工程で得られた明日葉の乾燥物を焙煎加熱処理する工程。
【0038】
前記(a)工程としては、明日葉をブランチング後、水分含量20%以下に乾燥処理する工程が例示される。また、前記(b)工程の焙煎温度としては100〜150℃が例示される。
【0039】
さらに、本発明は、上記製造方法により得られる非揉性明日葉茶葉を用いて明日葉茶飲料を製造する方法を提供する。その態様として、レトルト殺菌した明日葉茶飲料の製造方法が提供されるが、酸化防止剤の存在下でレトルト殺菌されてなる製造方法が例示される。また、当該茶飲料に明日葉カルコンを配合してもよい。
なお、前記非揉性明日葉茶葉、及び明日葉茶飲料の製造方法の詳細については、前述の非揉性明日葉茶葉、及び明日葉茶飲料に記載のとおりである。
【0040】
本発明により、明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料が提供される。明日葉カルコンを配合する明日葉茶飲料は、本発明で得られる明日葉茶飲料に限定されるものではなく、明日葉を原料として得られる明日葉茶飲料であればよい。また明日葉カルコンの製造方法にも限定はない。本発明の明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料中には、明日葉カルコンの生理作用を示すための有効量の明日葉カルコンが含有されていればよく、当該明日葉茶飲料は明日葉カルコンの生理作用、例えば血糖値を低下させる効果やアディポネクチンを増加させる効果を有する健康増進用・特定保健用食品用の明日葉茶飲料とすることができる。
【0041】
本発明の明日葉茶葉をそのまま、あるいはその粉砕物、またはその抽出物などの明日葉茶葉由来物を使用し、飲食品を製造することができる。
本発明の飲食品は、従来より飲食品の製造に使用されている原材料を用いることができる。例えば、原材料として、果糖ぶどう糖液糖、上白糖、グラニュー糖、果糖、ぶどう糖、オリゴ糖、水飴等の糖質、及び/又はアスパルテーム、ステビア、フコース、ミラクリン、ラカンカ等の甘味料、及び/又はタンパク質分解物、アミノ酸液、酵母エキス、グルタミン酸、呈味性核酸、アルギニン、アスパラギン、乳精ミネラル等の調味料、及び/又は赤キャベツ、アナトー、カロチノイド、フラボノイド、アントシアニン等の着色剤、及び/又はグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、及び/又はビタミンA、カロチン、ビタミンB1 、ビタミンB2 、ビタミンB6 、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、葉酸等のビタミン強化剤、及び/又はシリコーン等の製造用剤、及び/又は食塩、塩化カリウム、マグネシウムの塩、鉄の塩等のミネラル剤、及び/又はジェランガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ペクチン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、コンニャクマンナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、キチン、グルコサミン等の増粘材及び/又は食物繊維等の食品素材、プロポリス、セサミン、ロイヤルゼリー、コウライニンジンエキス、ニンニクエキス、ウコン等の機能性素材や食品添加物等の飲食可能な物質の使用が可能である。
【0042】
本明細書でいう飲食品とは、当該明日葉茶葉由来物を含有した飲食品であればよく、例えば製菓・製パン類、穀粉・麺類、農産・林産加工食品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、酒類、飲料、調味料及び食品素材等が挙げられる。特に、飲料、アルコール含有飲料、スープ類、調味料等に用いると新しい味覚の付与された飲食品となる。添加量は、0超〜100%未満で適宜選択できる。
【0043】
本発明の飲食品の製造法は、特に限定はないが、調理、加工及び一般に用いられている飲食品の製造法による製造を挙げることができ、製造された飲食品に、明日葉茶葉由来物が含有されていれば良い。すなわち、調理・加工前、調理・加工時、更には調理・加工後に明日葉茶葉由来物を添加してもよいし、調理及び加工品やその材料を明日葉茶葉由来物へ添加し、明日葉茶葉由来物を希釈してもよい。また本発明の明日葉茶葉又は明日葉茶飲料を他の茶葉又は茶飲料、例えば緑茶葉、烏龍茶葉、紅茶葉、黒茶葉、プーアル茶葉、ドクダミ茶葉、玄米茶葉又は各々の茶飲料などと混合するのも本発明の態様の範囲である。
【0044】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。なお、実施例における%は特に記載がない限りは(w/v)%を意味する。
【実施例】
【0045】
以下の実施例で調製した各種試料は、食品開発担当の5名のパネラーが官能評価試験によって評価した。その評価基準を表1に示す。なお、生臭さ・苦さは、マイナス評価として合算し総合評価を行っている。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1
(1)揉性明日葉茶飲料の調製
収穫した明日葉を洗浄後、蒸機(宮村鉄工所社製)を使用し、明日葉洗浄品を100℃のスチームで0.5〜1分間加熱し、蒸熱処理した後、寺田製作所社製の粗揉機を使用し、粗揉工程を行いながら水分を除き、水分含量が7%程度になるようにして粗揉処理を行った。得られた粗揉処理物を横山製作所社製の排気乾燥火入れ機を使用し、焙煎開始から品温が100℃に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた焙煎加熱処理物(明日葉茶葉)1%仕込みで100℃の湯水で10分間抽出した。熱水抽出後、茶漉しでろ過して揉性明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0048】
(2)非揉性明日葉茶飲料の調製
実施例1−(1)と同様に調製した明日葉蒸葉を、回転型通気乾燥装置であるロートスルーSRTA−60(大川原製作所社製)で庫内温度90〜120℃で1時間加熱して一次乾燥処理を行った後、箱型通気乾燥装置である温風食品乾燥機(ワコー社製)で温風温度60℃で10時間加熱して二次乾燥処理を行い、明日葉乾燥物(水分含量7%)を調製した。得られた乾燥物を排気乾燥火入れ機を使用し、焙煎開始から品温が100℃になるまで焙煎加熱処理した。得られた焙煎加熱処理物(明日葉茶葉)1%仕込みで100℃の湯水で10分間抽出した。抽出後、茶漉しでろ過して非揉性明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0049】
(3)官能評価試験
各々の官能評価試験の結果を表2に示す。表2に示すように、甘さ、香ばしさの面から両者は同等であった。しかし、揉性明日葉茶飲料は生臭さを感じるものであったが、非揉性明日葉茶飲料では生臭さを感じなかった。すなわち調製した飲料の不快な風味は揉む工程に起因していた。また、非揉性明日葉茶飲料の製造は、明日葉乾燥物を焙煎する工程からなり、揉む工程を含まないことから、簡便で製造コストもかからず好ましいものであった。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例2
(1)各種焙煎温度で処理した明日葉茶飲料の調製
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を85℃、100℃、110℃、120℃、130℃、135℃、140℃、150℃及び160℃の設定温度に到達するまで加熱し焙煎加熱処理した。得られた焙煎加熱処理物(明日葉茶葉)を1%仕込みで100℃の湯水で10分間抽出した。熱水抽出後、茶漉しでろ過して各種焙煎温度で処理した茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0052】
(2)官能評価試験
各種焙煎温度で処理した茶飲料の官能評価試験の結果を表3及び4に示す。表3及び4に示すように、甘さは100〜120℃の加熱処理がよく、香ばしさは120〜150℃の加熱処理がよく、85℃以下では生臭さ、160℃以上では焙煎による苦さが評価された。総合評価として、100〜150℃の焙煎温度が本発明に好適であることが示され、その温度により各種官能を示す非揉性明日葉茶飲料が提供されることが見出された。
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
実施例3
(1)各種焙煎加熱処理明日葉茶葉の仕込み量の検討
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物をそれぞれ110℃、135℃の設定温度に到達するまで加熱し110℃焙煎加熱処理明日葉茶葉、135℃焙煎加熱処理明日葉茶葉を各々調製した。0.25、0.5、1、2、3%仕込みとし、110℃焙煎明日葉茶葉の場合は100℃の湯水で、135℃焙煎明日葉茶葉の場合は65℃の湯水で10分間抽出した。抽出後、茶漉しでろ過して各種明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0056】
(2)官能評価試験
各種明日葉茶飲料の官能評価試験について、110℃焙煎明日葉茶飲料の結果を表5に、また、135℃焙煎明日葉茶飲料の結果を表6に示す。表5及び6に示すように、明日葉茶葉の仕込み量が少ないと濃さやうまさが感じられず、明日葉茶葉の仕込み量を多くすると苦味が強くなった。したがって、明日葉茶飲料に対する明日葉茶葉の仕込み量は、0.25〜3%が好ましく、濃さ、うまさの点から0.5〜2%がより好ましく、1%前後がさらに好ましいことが示された。
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
実施例4
(1)抽出液温の検討
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を135℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた焙煎加熱処理物(明日葉茶葉)1%仕込みで35℃、50℃、65℃、85℃、100℃の湯水で10分間抽出した。熱水抽出後、茶漉しでろ過して各種抽出液温で処理した明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0060】
(2)官能評価試験
各種抽出液温で処理した明日葉茶飲料の官能評価試験の結果を表7に示す。表7に示すように、抽出液温が35℃の明日葉茶飲料は濃さやうまさに関係する成分が抽出されず、薄い印象があった。一方、抽出液温が50℃以上の明日葉茶飲料は濃さやうまさが優れており、特に65℃以上の明日葉茶飲料は濃さやうまさがより優れており、良好であった。
【0061】
【表7】

【0062】
実施例5
(1)焙煎温度110℃と135℃で各々焙煎加熱処理した明日葉茶葉の混合品からの明日葉茶飲料の調製
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を110℃及び135℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた110℃焙煎明日葉茶葉、110℃焙煎明日葉茶葉と135℃焙煎明日葉茶葉の3:1又は1:1の比率での混合品、135℃焙煎明日葉茶葉を、1%仕込みで100℃の湯水で各々10分間抽出した。抽出後、茶漉しでろ過して各種明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0063】
(2)官能評価試験
各種明日葉茶飲料の官能評価試験の結果を表8に示す。表8に示すように、110℃焙煎明日葉茶葉と135℃焙煎明日葉茶葉をそれぞれ単独で抽出するよりも、ある割合で混合した方がそれぞれの香味の特徴を上乗せできた。
【0064】
【表8】

【0065】
実施例6
実施例5−(1)で得られた明日葉茶飲料を缶に充填し、レトルト殺菌(121℃、20分間)処理して、レトルト処理明日葉茶飲料を調製した。
【0066】
各種明日葉茶飲料の官能評価試験の結果を表9に示す。表9に示すように、さらにレトルト殺菌処理した場合には、110℃焙煎明日葉茶飲料の香味が変化し、生臭さを感じるようになった。しかし135℃焙煎明日葉茶飲料は甘みが引き出された。したがって、レトルト殺菌を行う場合は、高めの焙煎温度を適用することが好ましことが見出された。すなわち、レトルト処理を行う場合は、110℃焙煎明日葉茶葉よりも、135℃焙煎明日葉茶葉との等量混合品や135℃焙煎明日葉茶葉の単独使用が好適であることが見出された。
【0067】
【表9】

【0068】
実施例7
(1)レトルト殺菌処理における酸化防止剤の検討
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を135℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた焙煎明日葉茶葉1%仕込みで65℃、85℃、100℃の湯水で10分間抽出した。抽出後、茶漉しでろ過してから酸化防止剤として0.02%となるようにアスコルビン酸を添加もしくは無添加の茶飲料を調製した。アスコルビン酸を添加したものには、pHを6.1付近に調整するため重曹を最終濃度で0.026%添加した。それぞれ缶容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)を行った。このようにして得られた明日葉茶飲料の官能評価を行った。
【0069】
(2)官能評価試験
実施例7−(1)で調製した各明日葉茶飲料の官能評価試験の結果を表10に示す。表10に示すように、アスコルビン酸を添加しない場合と比較して、アスコルビン酸の添加下にレトルト殺菌処理することによって、65℃、85℃、100℃のすべての抽出液温で、香味にまろやかさが新たに付加された。レトルト殺菌を行う場合は、アスコルビン酸を添加することが好ましいことが示された。
【0070】
【表10】

【0071】
実施例8
(1)アスコルビン酸の添加時期の検討
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を135℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた焙煎明日葉茶葉1%仕込みで、アスコルビン酸が0.02%になるように添加された65℃の湯水で10分間抽出した。抽出後、茶漉しでろ過し、pHを6.1付近に調整するため重曹を最終濃度で0.035%添加した。pH調整後、缶容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)した抽出処理前アスコルビン酸添加の明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
また、上記明日葉茶葉1%仕込みで、65℃の湯水で10分間抽出した後、茶漉しでろ過したろ過液に0.02%になるようにアスコルビン酸を添加し、pHを6.1付近に調整するため重曹を最終濃度で0.026%添加した。pH調整後、缶容器に充填し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)した抽出処理後アスコルビン酸添加の明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行った。
【0072】
(2)官能評価試験
実施例8−(1)で調製した各明日葉茶飲料の官能評価試験の結果を表11に示す。表11に示すように、アスコルビン酸の添加時期は、抽出処理前でも抽出処理後でも好ましいが、抽出処理前がより好ましいことが見出された。
【0073】
【表11】

【0074】
実施例9
(1)明日葉含水アルコール抽出物の調製
30Lの90℃脱イオン水中に、明日葉葉茎部乾燥物を破砕しチップ状にしたもの1kgを加え10分間加熱を行った。室温に戻した後、茹でた明日葉を30Lの脱イオン水で水洗いし、ろ過により水気をきった後、搾汁機にかけることによりさらに水分を除いた。この圧搾残渣の水分含量を測定し、最終的に60%(v/v)エタノール、20Lが含まれるように含水エタノールを圧搾残渣に加え、時々攪拌しながら室温で一晩抽出を行った。次に、ろ過により抽出液を抽出残渣と分離後、抽出残渣を搾汁機にかけることによりさらに抽出液を回収した。これら抽出液を合わせ、セライト500(ナカライテスク社製)でろ過することにより不溶性成分を除去した。セライトろ液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、濃縮物を80%(v/v)エタノールに溶解し66mLの明日葉含水アルコール抽出物を調製した。抽出物の固形成分濃度は428mg/mLであり、明日葉カルコン濃度はキサントアンゲロールと4−ハイドロキシデリシンの合計として20.5mg/mLであった。
【0075】
(2)カルコン類含有組成物の調製
実施例9−(1)で調製した明日葉含水アルコール抽出物の10.0mL分を減圧濃縮下でエタノールを除去したものに対して、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:MM−750(阪本薬品工業社製))20gを添加し脱イオン水で200mLとした。その後、ホモミキサーを用いて60℃、10,000rpm、10分間攪拌することで乳化を行い、明日葉カルコン含有組成物を得た。
【0076】
実施例10
(1)明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料の調製−1
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を135℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた焙煎明日葉茶葉を1%仕込みで、アスコルビン酸が0.02%になるように添加した65℃の湯水で10分間抽出した。抽出後、茶漉しでろ過し、pHを6.1付近に調整するため重曹を最終濃度で0.035%添加した。pH調整後、実施例9で調製した明日葉カルコン含有組成物を0.01mg/100mLになるように添加し、缶容器に充填した。また対照として、明日葉カルコン含有組成物無添加の抽出物を缶容器に充填した。これらを、それぞれレトルト殺菌処理(121℃、20分間)し、明日葉カルコン配合飲料を調製して官能評価を行った。
【0077】
(2)官能評価試験
実施例10−(1)で調製した試料の官能評価試験の結果を表12に示す。表12に示すように、明日葉カルコンの添加の有無で風味に影響は見られなかった。
【0078】
【表12】

【0079】
(3)明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料の調製−2
同様に明日葉カルコン含有組成物を明日葉カルコン3mg/100mLになるように添加し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)し、風味の良い明日葉カルコン配合飲料を調製した。
また同様に明日葉カルコン含有組成物を明日葉カルコン15mg/100mLになるように添加し、レトルト殺菌処理(121℃、20分間)し、明日葉カルコン配合健康飲料を調製した。
【0080】
実施例11
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を110℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた明日葉茶葉を粉砕し、1袋5gとなるようにティーバッグを調製した。また実施例1−(1)と同様に調製した明日葉茶葉を使用し対照品を調製した。
ティーバッグ1袋を急須に入れ、熱湯を約400mL注ぎ、明日葉茶飲料を各々得た。対照品に比べ本発明品は良好な風味を示した。
【0081】
実施例12
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を110℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた明日葉茶葉を粉砕し、ふりかけとして、魚粉4.7kg、明日葉茶葉粉砕物0.8kg、ごま2.5kg、食塩1.0kg、グルタミン酸ソーダ0.5kgを混合し、常法に従って造粒した。
また実施例1−(1)と同様に調製した明日葉茶葉を使用し、同様に対照品を調製した。
対照品に比べ本発明品は良好な風味を示した。
【0082】
実施例13
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を135℃の設定温度に到達するまで焙煎加熱処理した。得られた明日葉茶葉の葉由来部分を細断し、茶漬けの素として、明日葉茶葉細断物1.0kg、あられ2.0kg、食塩2.3kg、うまみ調味料0.7kgを混合し1袋6gで袋詰めした。
また実施例1−(1)と同様に調製した明日葉茶葉の葉由来部分を使用し、同様に対照品を調製した。
対照品に比べ本発明品は良好な風味を示した。
【0083】
実施例14
(1)明日葉の葉のみを焙煎したティーバッグの調製
明日葉の葉のみを用いて実施例1−(2)と同様に調製した明日葉の葉乾燥物を100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、145℃、150℃及び160℃の設定温度に到達するまで加熱し焙煎加熱処理した。得られた明日葉茶葉を粉砕し、1袋2gとなるようにティーバッグを調製した。各種焙煎温度で処理し調製したティーバッグをそれぞれ急須に入れ、熱湯を約300mL注ぎ、明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行なった。
【0084】
(2)官能評価試験
各種焙煎温度で処理した茶飲料の官能評価試験の結果を表13及び14に示す。表13及び14に示すように、明日葉の葉のみを用いて調製した明日葉茶飲料は、全体的に濃さやうまさに関係する成分がよく抽出されるという評価であった。濃さ・うまさは120〜160℃の処理物が良く、中でも苦味の少ない120〜150℃の処理物が最適であり、くどさのない高級茶葉が提供された。
【0085】
【表13】

【0086】
【表14】

【0087】
実施例15
(1)明日葉乾燥物を焙煎したティーバッグ及び明日葉茶飲料の調製−1
実施例1−(2)と同様に調製した明日葉乾燥物を粉砕した後、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃及び160℃の設定温度に到達するまで加熱し焙煎加熱処理した。得られた明日葉茶葉を1袋4.5gとなるようにティーバッグを調製した。1Lのお湯をやかんで沸騰させ、各種焙煎温度で処理し調製したティーバッグをそれぞれ1袋入れ、3分間煮出し、明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行なった。
【0088】
(2)官能評価試験
各種焙煎温度で処理した茶飲料の官能評価試験の結果を表15及び16に示す。表15及び16に示すように、濃さ・うまさは135〜160℃の処理物が良く、中でも香ばしくて苦味の少ない140〜150℃の処理物が最適であり、良好な風味の明日葉茶が提供された。
【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
(3)明日葉乾燥物を焙煎したティーバッグ及び明日葉茶飲料の調製−2
実施例15−(1)と同様に各種焙煎温度で処理し調製したティーバッグを1Lの水の中に入れ、庫内温度が4℃の冷蔵庫内に2時間静置し、明日葉茶飲料を調製し、官能評価を行なった。
【0092】
(2)官能評価試験
各種焙煎温度で処理した茶飲料の官能評価試験の結果を表17及び18に示す。表17及び18に示すように、濃さ・うまさは135〜160℃の処理物が良く、中でも香ばしくて苦味の少ない140〜150℃の処理物が最適であり、良好な風味の明日葉茶が提供された。
【0093】
【表17】

【0094】
【表18】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明により、明日葉独特の青臭さ、野菜に似た味、更にはえぐ味を低減させ、濃厚さ、甘さ、香ばしさの点で風味の良い明日葉茶葉、ならびにまろやかさも加味された高品質の明日葉茶飲料、更に明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料、及びそれらの製造方法が提供される。当該製造方法は、粗揉、揉捻、中揉又は精揉工程などの揉み工程を含まないことから、従来法より極めて簡便である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明日葉の乾燥物を焙煎加熱する工程を含有する処理で得られる非揉性明日葉茶葉。
【請求項2】
焙煎加熱処理での加熱温度が100〜150℃である請求項1記載の非揉性明日葉茶葉。
【請求項3】
明日葉の乾燥物がブランチング後、乾式乾燥処理された水分含量20%以下の乾燥物である請求項1又は2記載の非揉性明日葉茶葉。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の非揉性明日葉茶葉を用いて製造される明日葉茶飲料。
【請求項5】
酸化防止剤の存在下にレトルト殺菌されてなる請求項4記載の明日葉茶飲料。
【請求項6】
明日葉カルコンが配合された明日葉茶飲料。

【公開番号】特開2009−171949(P2009−171949A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183761(P2008−183761)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】