説明

明色ないし白色の木材材料パネル

漂白木材繊維から製造されおよび/または白色顔料で原料着色された、明色ないし白色の木材材料パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漂白木材繊維から製造されおよび/または白色顔料で原料着色された明色ないし白色の木材材料ボードに関する。
【0002】
木材材料の分野で、いわゆる中密度繊維ボード(MDFボード)および高密度繊維ボード(HDFボード)が市場で大きく拡大している。製造される量は過去10年で三倍より多くなっている。
【0003】
MDFボードおよびHDFボードは通常のパーティクルボードと同様に処理できる。しかしこれらはその均一な構造のために、形材部品の製造に適しており、従って家具構造品にますます導入されている。従って、例えば部屋に備える製品および装飾目的の製品(例えば見本市の構造部品における)、高品質の家具はこれらのボードから製造され、引き続き木材状構造品の外観を保つために、無色の仕上げ材で被覆するかまたは上塗りで被覆する。
【0004】
これらのボードは使用される木材の種類に応じて、もちろん、多少とも目立つ褐色を有し、これが家具分野で乏しい美的価値を有する。
【0005】
WOA04/35276号に開示された顔料および染料を有する着色剤組成物での原料着色により、木材繊維の天然の色を相殺できる。この方法で、長い寿命を有する製品、例えば住居分野の家具の部品の製造に適した、着色され、完全に染色された、耐光堅牢性の、従って美的に高品質のMDFボードを得ることが可能である。
【0006】
しかし明色または白の木材材料ボード、特にMDFボードは現在まで利用されなかった。しかしこれらのボードは特に家具部品および内部装飾部品、例えば台所または浴室用の製造に注目される。
【0007】
紙パルプの漂白および白色顔料または白い充填剤、青い着色剤および場合により漂白剤の添加による白い紙の製造が長い間知られ、例えばPaper Trade Journal、145、26〜27頁(1961)に記載されているにもかかわらず、当業者はこの方法で白い木材材料ボード、特にMDFボードを得ることは予想できなかった。
【0008】
従って、MDFボードの製造に使用される木材繊維はなお酸化に弱く、従って変色しやすく、もはや紙パルプに含まれない物質(例えばリグニン)を有する。更にMDFボードは紙よりはるかに高い温度(約200℃)で製造され、木材繊維の自然の褐色のほかに、木材成分の酸化および熱分解による方法に関係した褐色が生じる。更に家具部品に配合されるMDFボードの光による暴露は通常の紙よりかなり長く、激しく、かなりの黄変を生じる。
【0009】
従って本発明の課題は明色ないし白色の木材材料ボードを提供することであった。
【0010】
漂白された木材繊維から製造される明色ないし白色の木材材料ボードが見出された。
【0011】
更に白色顔料で原料着色される明色ないし白色の木材材料ボードが見出された。
【0012】
更に付加的に任意の漂白剤を含有する白色顔料の分散液で原料着色される明色ないし白色の木材材料ボードが見出された。
【0013】
最後に漂白された木材繊維から製造され、白色顔料で原料着色される明色ないし白色の木材材料ボードが見出された。
【0014】
特に漂白された木材繊維から製造され、光学的漂白剤を含有する白色顔料の分散液で原料着色される、明色ないし白色の木材材料ボードが見出された。
【0015】
本発明による木材材料ボードは明るさまたは白い色合いにより際立っている。選択される手段の組合せに応じて、所望の白色度が容易に達成される。例えば木材繊維の漂白および付加的に光学的漂白剤を含有する白色顔料の分散液での原料着色により、特に白いボードが得られる。木材繊維の漂白のみによりまたは白色顔料での原料着色により白色度の少ない明色ボードも得られる。
【0016】
本発明による木材材料ボードはMDFボード、HDFボードまたはパーティクルボードであってもよい。MDFボードが特に有利である。
【0017】
MDFボードおよびHDFボードは一般に連続法で製造される。洗浄した水で湿らせた、細かく切断した木材片(チップ)をまず80℃に予熱し、引き続き蒸解釜中で、2〜5バールの圧力下および100〜150℃の温度で軟化する。下流リファイナー中で、引き続きチップを脱フィルリル化する。リファイナーは2個の金属円板からなり、前記円板は半径方向の逃げが備えられ、互いに接近して反対方向に回転する。繊維はいわゆるブローラインによりリファイナーを離れる。ここで一般に接着剤を塗装する。一般に使用される結合剤は尿素/ホルムアルデヒド樹脂であり、一部の場合はメラミンで強化され、または耐湿性ボードには尿素/メラミン/ホルムアルデヒド樹脂である。結合剤として、イソシアネートも使用される。結合剤は一般に所望の添加剤(例えば硬化剤、パラフィン分散液、着色剤)と一緒に繊維に塗装する。接着剤を塗装した繊維を引き続き乾燥機に導入し、乾燥機中で湿分含量8〜15質量%に乾燥する。いくつかの分離した場合は、接着剤を引き続き特定の連続運転ミキサー中で乾燥した繊維に塗装する。
【0018】
パーティクルボードの製造において、予め乾燥したチップへの接着剤の塗装は連続ミキサー中で行う。
【0019】
接着剤を塗装した繊維またはチップを引き続き流し込み、マットを形成し、適当な場合は冷間プレスで予め圧縮し、170〜240℃の温度で熱間プレスで圧縮してボードを形成する。
【0020】
本発明による明色木材材料ボードの1つの構成の製造に、漂白木材繊維(以下に、木材繊維とチップの用語は区別されず、木材繊維の用語の代わりにチップを含むものとする)を使用する。
【0021】
木材繊維の化学的漂白において、木材の色を与える不純物は酸化および/または還元化学物質により破壊されるかまたは無効にされる。例えば過酸化水素、オゾン、酸素および有機過酸および無機過酸の塩、例えば過酢酸塩、過炭酸塩、および過ホウ酸塩、特にこれらのアルカリ金属塩、特にナトリウム塩が酸化漂白に適しており、過炭酸塩および過酸化水素が有利である。例えば還元性硫黄化合物、例えば亜ジチオン酸塩、ジ亜硫酸塩、亜硫酸塩、または二酸化硫黄、スルフィン酸およびその塩、特にアルカリ金属塩、特にナトリウム塩、およびヒドロキシカルボン酸、例えばクエン酸、およびリンゴ酸が還元漂白に適している。有利な還元剤はジ亜硫酸塩、および亜硫酸塩、特に亜硫酸水素ナトリウム、およびリンゴ酸およびクエン酸である。
【0022】
本発明による木材材料ボードに関して、まず酸化漂白して、引き続き還元漂白した木材繊維が特に有利である。
【0023】
酸化漂白は特に有利に過炭酸塩または過酸化水素を使用して実施し、還元漂白は亜硫酸塩、リンゴ酸またはクエン酸を使用して実施する。
【0024】
漂白工程において、便利な方法は、濃度5〜40質量%水性木材繊維分散液を連続的に向流塔中で90〜150℃の温度および3バールまでの圧力で漂白剤の水性溶液または分散液を用いて処理することである。前記方法は、遷移金属イオンによる漂白剤の分解を避けるために、一般に錯形成剤、例えばEDTAの存在で行う。
【0025】
本発明による木材材料ボードの有利な構成の場合に、特にMDF/HDFボードの場合に、繊維の漂白をボード製造中に行う。漂白剤を予熱器または蒸解釜中でチップに添加できる。有利に錯形成剤を添加する。
【0026】
原則的に植物から得られるすべての繊維材料を本発明による木材材料ボードの基材として使用できる。従って、例えば一般に使用される木材繊維のほかに、ヤシから得られる繊維が適している。有利な基材は明色木材タイプ、特にトウヒまたはマツであるが、暗色木材タイプ、例えばブナも使用できる。
【0027】
本発明による木材材料ボードの特に有利な構成において、漂白木材繊維の使用を白色顔料での原料着色と組み合わせる。これは白色度を決定的に改良することを可能にする。しかし白色顔料での原料着色は単独で行うこともできる。この場合に、明色ボードが同様に得られる。
【0028】
本発明により、白色顔料の用語は無機顔料、例えば二酸化チタン(ルチル、C.I.Pigment ホワイト6)、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム/マグネシウム混合物(例えばドロマイト)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、珪酸アルミニウムナトリウム、および白色を付与する強い光散乱プラスチックエマルジョンおよび分散液を含む。特に有利な白色顔料は二酸化チタンである。もちろん白色顔料の混合物も使用できる。
【0029】
白色顔料は有利に水性分散液の形で使用され、分散液中で白色顔料は微細に分散した形で存在し、それというのも白色顔料はこの形でブローラインにより別々にまたは接着剤と一緒に直接MDF/HDF製造工程に導入することができるからである。
【0030】
これらの顔料分散液は更に通常の助剤、特に湿潤剤、分散剤、消泡剤、殺菌剤、定着防止剤、保水剤、レオロジー変性剤を含有することができ、例えば攪拌ボールミル中ですべての成分の湿式混合により有利に製造される。
【0031】
製造される木材材料ボード中の白色顔料の勧められる濃度は乾燥繊維に対して一般に0.5〜15%、有利に1〜6%である。
【0032】
光学的漂白剤の添加により白色度の更なる増加を達成することができ、前記漂白剤はその青みがかった蛍光(補色)のために灰色化および黄変を相殺する。
【0033】
原則的にすべての青色発光蛍光染料、特にスチルベン、ジスチリルビフェニル、クマリン、ナフタルイミド、二重結合により結合したベンゾオキサゾールおよびベンゾイミダゾール系からなる化学的種類の物質からの市販の製品、例えばUltraphor(BASF)、Leucophor(Clariant)またはTinopal(Ciba)が適している。
【0034】
光学的漂白剤はMDF/HDF製造工程に水性分散液または溶液の形で別々にまたは白色顔料および接着剤と一緒に導入できる。
【0035】
光学的漂白剤を使用する場合は、製造した木材材料ボード中のその濃度は乾燥繊維に対して一般に0.01〜1%、有利に0.08〜0.2%である。
【0036】
すべての特徴(漂白木材繊維、白色顔料および光学的漂白剤)が組み合わされた本発明による木材材料ボードが特に有利であり、それというの個々の部分が共同作用により強められて全体で最大の白色度を生じるからである。
【0037】
方法に関して、白色顔料および光学的漂白剤を一緒に1つの水性分散液中で製造し、分散液を接着剤に添加し、接着剤をブローラインによりMDF/HDF製造工程に注入することが特に有利である。
【0038】
本発明による手段から生じる圧縮された木材材料ボードの物理的特性の変化を接着剤の品質および接着剤の量の選択により調節できる。
【0039】
実施例
本発明によるMDFボードの製造
未漂白木材繊維から同様に製造され、白色顔料および光学的漂白剤を添加しないMDFボードと比較した明度の差ΔLを、製造したボードの白色度の尺度として、CIELABによる色度測定による標準として決定する。
【0040】
例1
a)アンカー撹拌機およびサーモスタット調節加熱器を有する5リットル容器中で、木材パルプ(トウヒ)70gおよび水3リットル中のエチレンジアミンテトラ酢酸(TrilonB、BASF)1gを70℃で攪拌しながら加熱した。過炭酸ナトリウム7gを添加後、70〜75℃で1時間攪拌した。その後、亜ジチオン酸ナトリウム7gを添加し、最後に70〜75℃で更に30分攪拌した。
【0041】
室温に冷却後、木材スラリーを、メッシュ幅1mmのシーブ上で液体成分から分離し、水を流しながら短時間洗浄し、完全に延ばした。延ばした濾過材料を引き続き空気循環乾燥炉中で、60℃で3時間乾燥した。
b)工程a)からの漂白木材繊維をパドル式ミキサー中で完全に混合し、表1に記載される接着剤配合物で噴霧した。
【0042】
【表1】

【0043】
接着剤を塗装した繊維を引き続き流し込み、マットを形成し、冷間プレスで予め圧縮し、190℃でプレスしてボードを得た。
【0044】
比較例V1
例1b)に記載される方法に類似して未漂白木材繊維からMDFボードを製造した。
【0045】
例2
例1b)に類似して未漂白木材繊維(トウヒ)からMDFボードを製造し、木材繊維を、表2に記載され、白色顔料二酸化チタンを有する接着剤配合物で噴霧した。
【0046】
【表2】

【0047】
表3は標準として比較例V1にもとづき達成される白色度(明度の差ΔLで表現した)を示す。
【0048】
【表3】

【0049】
例3
亜硫酸水素ナトリウム7.5%に相当する、乾燥繊維に対して、濃度40質量%ジ亜硫酸ナトリウム水溶液を、MDF製造工程中に、MDFパイロット装置の蒸解釜中で、トウヒ木材のチップに添加した。MDF製造工程を通常のように21kg/hの供給量で継続し、チップをリファイナーにより脱フィブリル化し、表4に記載の接着剤配合物を得られた繊維にブローラインにより連続的に塗装した。
【0050】
【表4】

【0051】
接着剤を塗装した木材繊維を、連続乾燥機中で残留湿分含量約9質量%に乾燥し、引き続き断続的に流し込み、マットを形成し、冷間プレスで予め圧縮し、190℃で15s/mmのプレス時間係数でプレスして厚さ16mmのボードを形成した。
【0052】
比較例V2
例3に記載される方法に類似してMDFボードを製造したが、ジ亜硫酸ナトリウムを添加しなかった。
【0053】
表5は標準として比較例V2にもとづく達成された白色度(明度の差ΔLとして表現した)を示す。
【0054】
【表5】

【0055】
例4
トウヒ木材チップをミキサー中で、亜硫酸水素ナトリウム4.5%に相当する、乾燥繊維に対して、濃度40質量%ジ亜硫酸ナトリウム水溶液で噴霧した。引き続きこれらのチップをMDFパイロット装置の蒸解釜に供給した。MDF製造工程を通常のように21kg/hの供給量で継続し、リファイナーによりチップを脱フィルリル化し、表6に記載され、白色顔料二酸化チタンを有する接着剤配合物を、ブローラインにより連続的に得られた繊維に塗装した。
【0056】
【表6】

【0057】
接着剤を塗装した木材繊維を、下流連続乾燥機中で残留湿分含量約9質量%に乾燥し、引き続き断続的に流し込み、マットを形成し、冷間プレスで予め圧縮し、190℃で15s/mmのプレス時間係数でプレスして厚さ16mmのボードを形成した。
【0058】
比較例V3
例4に記載される方法に類似してMDFボードを製造したが、白色顔料を添加しなかった(二酸化チタンの代わりに同じ量の水を使用して製造した)。
【0059】
表7は標準として比較例V3にもとづき達成された白色度(明度の差ΔLとして表現した)を示す。
【0060】
【表7】

【0061】
例5
亜硫酸水素ナトリウム6%に相当する、乾燥繊維に対して濃度40質量%ジ亜硫酸ナトリウム水溶液を、MDF製造工程中に、MDFパイロット装置の蒸解釜中でブナ木材チップに添加した。MDF製造工程を通常のように30kg/hの供給量で継続し、リファイナーによりチップを脱フィブリル化し、表8に記載される接着剤配合物を連続的にブローラインにより得られた繊維に塗装した。
【0062】
【表8】

【0063】
接着剤を塗装した木材繊維を連続乾燥機中で下流で残留湿分含量約9質量%に乾燥し、引き続き断続的に流し込み、マットを形成し、冷間プレスで予め圧縮し、15s/mmのプレス時間係数で190℃で圧縮し、厚さ16mmのボードを得た。
【0064】
例6
表6に記載された接着剤配合物を使用して、例5に記載された方法に類似して、ただし白色顔料二酸化チタンを使用してMDFボードを製造した。
【0065】
例7
表9に記載された接着剤配合物を使用して、例5に記載された方法に類似して、ただし白色顔料二酸化チタンを光学的漂白剤と組み合わせて使用してMDFボードを製造した。
【0066】
【表9】

【0067】
比較例V4
例5に記載される方法に類似して、ただしジ亜硫酸ナトリウムを添加せずに、MDFボードを製造した。
【0068】
表10は標準として比較例V4にもとづき達成された白色度(明度の差ΔLとして表現した)を示す。
【0069】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
漂白された木材繊維から製造される明色ないし白色の木材材料ボード。
【請求項2】
木材繊維がまず酸化により、引き続き還元により漂白される請求項1記載の木材材料ボード。
【請求項3】
ボードの製造中に木材繊維が漂白される請求項1または2記載の木材材料ボード。
【請求項4】
白色顔料で原料着色される明色ないし白色の木材材料ボード。
【請求項5】
付加的に光学的漂白剤を含有する白色顔料の分散液で原料着色される請求項4記載の木材材料ボード。
【請求項6】
漂白された木材繊維から製造され、白色顔料で原料着色される請求項1から4までのいずれか1項記載の木材材料ボード。
【請求項7】
漂白された木材繊維から製造され、付加的に光学的漂白剤を含有する白色顔料の分散液で原料着色される請求項1から5までのいずれか1項記載の木材材料ボード。
【請求項8】
MDFボード、HDFボードまたはパーティクルボードである請求項1から7までのいずれか1項記載の木材材料ボード。

【公表番号】特表2008−516793(P2008−516793A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536056(P2007−536056)
【出願日】平成17年10月8日(2005.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010848
【国際公開番号】WO2006/042651
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】