説明

易引き裂き性構成物の製造方法

【課題】本発明はラミネート構成物におけるインキ上の引き裂き性向上させ、それによりフィルム全面が均一に引き裂ける易引き裂き性の構成物を提供するものである。
【解決手段】インキ上での引き裂き性の低下はインキ層と接着層の界面剥離あるいはインキ層の凝集破壊により柔らかいシーラントフィルムが硬い基材から分離し延びてしまうことによる。そこで、インキ層と接着層を強固に結びつけ一体化することで、引き裂き時に加わる物理力に抗し界面剥離を抑制することで、インキ上での引き裂き性が向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキにより描画された積層体に関するものであり、さらに詳しくは各種プラスチックフィルムに印刷インキを印刷後、接着剤を介しシーラントフィルムでサンドイッチされたラミネート構成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラミネート構成物は包装容器分野に多く用いられるが、包装容器の場合、内容物を取り出すため容器を開封する必要がある。一般市場において、開封は人間の手によって行われることが多く、その際に鋏等の器具を用いずに容器を引き裂いて開封出切ることは、利便性の面で大きなメリットとなる。ここで包装容器の引き裂き性が悪いと開封時に力が要る・思わぬ方向に切れてしまい内容物がこぼれるといった問題を生じるため、包装容器分野のラミネート構成物では、良好な引き裂き性が求められる。
【0003】
引き裂き性を付与する従来技術として、例えばフィルム端面を切れ込みを入れる等の工夫をし引き裂けるきっかけを作る方法があるが、このような方法では、引き裂き始めの改善にはなるものの、フィルム面そのものが引き裂きにくいと、途中でひっかかる・直線的に引き裂けないという事態を生じる。
【0004】
また、包装容器は内容物の表示ならび意匠性のために印刷インキにより描画されている場合が多いが、一般にインキ上は接着層とインキ層との結合力が無地部より劣るため引き裂き性が劣る。フィルム面の引き裂き性を向上するための手段として特開2008−274061に示されるように接着層を硬くすることで引き裂き性が向上することが知られているが、インキ部、無地部が混在する場合、接着層をインキ上で引き裂ける硬さにすると非画線部が硬くなりすぎ物性バランスがとれず、無地部に合わせるとインキ上で引き裂き性が劣ることになる。
【0005】
ラミネート構成物のフィルム全面でのスムースな引き裂き性を付与するのためには、インキ部の引き裂き性を向上し無地部の引き裂き性と近づけることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−274061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ラミネート構成物におけるインキ上の引き裂き性向上させ、それによりフィルム全面が均一に引き裂ける易引き裂き性の構成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インキ上での引き裂き性の低下はインキ層と接着層の界面剥離あるいはインキ層の凝集破壊により、柔らかいシーラントフィルムが硬い基材から分離し延びてしまうことによる。そこで、インキ層と接着層を強固に結びつけ一体化することで、引き裂き時に加わる物理力に抗し界面剥離を抑制することが、インキ上での引き裂き性を向上させるのに有効である。
【0009】
すなわち、本発明は、基材フイルム、インキ層、接着層およびシーラントフイルムの順に積層する易引き裂き性構成物の製造方法において、
インキ層が、官能基Aを有する化合物を含有し、
官能基Aを有する化合物の官能基Aが、グリシジル基、カルボジイミド基、
アジリジニル基およびオキサゾリン基から選ばれる何れかの官能基であり、
かつ
接着層が、官能基Bを有する化合物を含有し、
官能基Bを有する化合物の官能基Bが、カルボキシル基であり、
さらに、
官能基Bを有する化合物の官能基Bが、官能基Aを有する化合物の官能基A
と反応し得ることを特徴とする易引き裂き性構成物の製造方法に関するものである。
【0010】
さらに、本発明は、上記の製造方法で製造されてなる易引き裂き性構成物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ラミネート物の開封において、フィルム面全面に渡るスムースな引き裂き性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、インキ層中に官能基Aを有する化合物を含有していることが必要であり、同時に接着層中に官能基Aと反応しうる官能基Bを有する化合物を含有していることが必要である。
【0013】
なかでも官能基Aがグリシジル基、カルボジイミド基、アジリジニル基およびオキサゾリン基から選ばれる何れかの官能基であり、官能基Bがカルボキシル基である組み合わせが特に有用である。
【0014】
インキ層中の官能基Aと接着層中の官能基Bが反応することで、インキ層と接着層が強固に結びつき、引き裂きにかかる物理力に抗し界面での剥離を生じないためにシーラントが延びず、引き裂き性が向上する。そのため、官能基Aと官能基Bが反応した後、それぞれを有する化合物はそれぞれの層に強固に固定されている必要がある。
【0015】
その意味で官能基Aおよび官能基Bを有する化合物としては高分子量体が望ましく、例えば官能基Aであればバインダー樹脂中に、官能基Bは接着剤主剤中に存在していることが望ましい。
【0016】
次に、本発明のインキについて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。
【0017】
インキとして必要とされる機能を有するため、官能基Aを有する化合物のほかに、樹脂、有機溶剤、着色剤などを含むことが出来る。その他、必要に応じて体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などを含むこともできる。
【0018】
本発明のインキに使用される樹脂としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている樹脂を挙げることができる。樹脂の例としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン・ウレア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。樹脂の含有量は、インキの総重量に対して4〜25重量%が好ましく、更に好ましくは6〜20重量%である。
【0019】
上記樹脂のうち、汎用接着性、ボイル・レトルト適性の観点からポリウレタン・ウレア樹脂が好適である。ポリウレタン・ウレア樹脂は、ラミネート加工用インキの樹脂として広く一般的に用いられている。ポリウレタン・ウレア樹脂のインキにおける含有量は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点から4重量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25重量%以下が好ましく、更には6〜20重量%の範囲が好ましい。
【0020】
ポリウレタン・ウレア樹脂は従来公知の方法、例えば、特開昭62−153366号公報、特開昭62−153367号公報、特開平1−236289号公報、特開平2−64173号公報、特開平2−64174号公報、特開平2−64175号公報などに開示されている方法により得ることができる。具体的には、ポリオール、ジオールなどの水酸基含有化合物とイソシアネート化合物をイソシアネート過剰で反応させイソシアネート末端プレポリマーを作り、更にアミン化合物と概プレポリマーをアミン過剰で反応させることにより得ることが出来る。
【0021】
ポリオール、ジオールなどの水酸基含有化合物としては、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3ープロパンジオール、1,3ーブタンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3ーメチルー1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4ーブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の低分子グリコール類ならびにnーブチルグリシジルエーテル、2ーエチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物を脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類などの一般にポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子量ジオールが挙げられる。
【0022】
なお、これら高分子量ジオールのうち、グリコール類と二塩基酸とから得られる高分子量ジオールを用いる場合は、グリコール類のうち5モル%までを以下の各種ポリオールに置換することが出来る。すなわち、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6ーヘキサントリオール、1,2,4ーブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等のポリオールに置換してもよい。これらポリオールは単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0023】
官能基Aとしてアジリジニル基を導入したい場合、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等の水酸基を有する多官能アジリジン化合物をウレタン重合時に組み込むことが出来る。
【0024】
また、ジメチロールブタン酸やジメチロールプロピオン酸のようなカルボキシル基を有するジオールを用いて樹脂合成を行った後、グリシジル基、カルボジイミド基、アジリジニル基およびオキサゾリン基の多官能物をグラフトすることが出来る。
【0025】
グリシジル基の多官能物としてはビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等、カルボジイミド基の多官能物としてはポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)等が挙げられる。
【0026】
アジリジニル基の多官能物としては3−(1−アジリジニル)プロピオネート、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0027】
オキサゾリン基の多官能物としては1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾイル)ベンゼン等が挙げられる。
【0028】
イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を挙げることが出来る。たとえば、1,5ーナフチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ージベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3ーフェニレンジイソシアネート、1,4ーフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタンー1,4ージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンー1,4ージイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4、4’ージイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等がその代表例としてあげられる。これら有機ジイソシアネート化合物は単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0029】
アミン化合物としては、たとえばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンー4,4’ージアミンなどがあげられる。
また、2ーヒドロキシエチルエチレンジアミン、2ーヒドロキシエチルプロピルジアミン、ジー2ーヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジー2ーヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2ーヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジー2ーヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類を用いることができる。
【0030】
さらに、反応停止を目的として一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジーnーブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。
【0031】
樹脂末端に官能基Aを導入したい場合、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いてカルボキシル基を導入した後、上記のように官能基Aの多官能物をグラフトしてもよい。
【0032】
また、官能基Aがグリシジル基の場合、樹脂末端を1級もしくは2級アミンとしたポリウレタンウレア樹脂を合成後、上に挙げたような多官能グリシジル化合物を反応させることで、樹脂中にグリシジル基を組み込むことができる。
【0033】
ポリウレタン・ウレア樹脂の重量平均分子量は、耐水性・耐溶剤性、耐ボイル・レトルト適性の観点から10,000以上、インキの再溶解性、印刷上のトラブル(版詰まり性や印刷適性が低下)の観点から100,000以下が好ましい。さらに好ましくは、20,000〜80,000の範囲である。ポリウレタン・ウレア樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィ(GPC)や、ポリマーの極限粘度と重量平均分子量との関係式などにより求めることができる。ポリウレタン・ウレア樹脂の骨格構造は、枝分かれを有する分岐状でも、直鎖状であってもよい。ポリウレタン・ウレア樹脂の末端はアミンであることが好ましい。
【0034】
本発明のインキに使用される有機溶剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている炭化水素系、ケトン系、エステル系、アルコール系有機溶剤を挙げることができる。具体的には、トルエン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンな__どの炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤を使用することができる。印刷後のインキ皮膜に残留する溶剤量低減の観点から、高沸点溶剤を少量併用使用することもできる。本発明のインキに使用される有機溶剤は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
本発明のインキに必要に応じて使用される着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などが挙げられる。藍インキには銅フタロシアニンを使用することが着色力の点から好ましい。
【0036】
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラなどが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラックを使用することが着色力の点から好ましい。
【0037】
顔料は、単独で、または色相および濃度の調整などを目的として2種以上を混合して用いることもできる。顔料は、インキの濃度・着色力を確保する量、好ましくはインキの総重量に対して、4〜50重量%の量でインキ中に含まれる。
【0038】
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
【0039】
本発明のインキは、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0040】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0041】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばウレタン・ウレア樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、着色剤として顔料を用いた場合は、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0042】
次に、本発明の易引き裂き性構成物について説明する。本発明の易引き裂き性構成物とは、基材フィルムに印刷されたインキ層がアンカーコート剤または接着剤を介してシーラントフィルムと積層されたラミネート構成物である。本発明のラミネート構成物は、本発明のインキを被印刷体にグラビア印刷またはフレキソ印刷などにより印刷し、押し出しラミネート(エクストルージョンラミネート)、ドライラミネート、ノンソルドライラミネートなどの方法で、シ−ラントをラミネートすることにより得ることが出来る。また、本発明の条件を満たさないインキを基材フィルムに上記方法にて印刷し、本発明のインキを最後に印刷し、上記方法にてラミネートした加工物も本発明のラミネート加工物として挙げることができる。
【0043】
本発明によってインキ層と接着層との結合が十分に強固になれば、インキ層は強固なほど引き裂き性は向上するので、インキ層内での結合向上のため、多官能イソシアネート化合物をインキ硬化剤として加えることが望ましい。
【0044】
本発明の易引き裂き性構成物に使用される基材フィルムとしては、グラビア印刷、またはフレキソ印刷に一般的に用いられるプラスチックを挙げることが出来る。プラスチックとしては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの一軸または二軸延伸された、または延伸されていないフィルムまたはシートが挙げられ、これらは一般的にコロナ放電処理や低温プラズマ処理などの表面処理が施されている。また更に、セロファン、防湿セロファン、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ポリアミドなどからなるフィルムまたはシート、あるいはこれらの積層体も挙げることができる。
【0045】
本発明の易引き裂き性構成物に使用されるシーラントフィルムは、前記プラスチックのフィルムまたはシート、あるいはアルミニウム箔などを挙げることができる。特に押し出しラミネート(エクストルージョンラミネート)される樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはそれらのけん化物、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0046】
本発明の易引き裂き性構成物に使用される接着剤としては、官能基Bを含んでなるラミネート加工に広く一般的に用いられているものを挙げることができ、主剤としてはエステル系、エーテル系、ウレタン系、変性ポリオレフィン系などが挙げられる。特に官能基Bがカルボキシル基の場合、末端がカルボキシル基となるように縮合したポリエステル樹脂を主剤としてもよいし、末端水酸基となる形で縮合したのちに酸無水物によってカルボキシル基を付加してもよい。ウレタン樹脂主剤にカルボキシル基を導入するならジメチロールプロピオン酸をウレタン重合で組み込んでもよいし、上述のようにグリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いてもよい。
【0047】
本発明の易引き裂き性構成物は、袋などの容器の形に成形され、飲食品、医療品、医療器具などの充填されて用いられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例で限定されるものではない。なお例中「部」とは重量部を、「%」は重量%を示す。
【0049】
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000の3−メチル−1、5−ペンタンジオ−ルとアジピン酸との縮重合物、即ちポリ(3−メチル−1、5−ペンチルアジペ−ト)ジオ−ル(以下、PMPAという)
21.7部、イソホロンジイソシアネート5.3部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させた後、80℃に降温し、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート0.93部と酢酸エチル6.75部を加えさらに3時間反応させた後、酢酸エチル16.1部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液50.78部を得た。次いでイソホロンジアミン2.07部、酢酸エチル26.15部、イソプロピルアルコール21.0部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液50.78部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量46000のポリウレタン樹脂溶液(PU01)を得た。
【0050】
[合成例2]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のPMPA22.19部、イソホロンジイソシアネート5.43部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させた後、80℃に降温し、2−ジエチルアミノエタノール0.26部と酢酸エチル6.91部を加えさらに3時間反応させた後、酢酸エチル15.9部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液50.69部を得た。次いでイソホロンジアミン2.12部、酢酸エチル26.19部、イソプロピルアルコール21.0部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液50.69部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量41000のポリウレタン樹脂溶液(PU02)を得た。
【0051】
[合成例3]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、PU02を100部とりわけ、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル33.12部および酢酸エチル16.23部とイソプロピルアルコール6.95部室温にてを加え、次に50℃で3時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量43000のポリウレタン樹脂溶液(PU03)を得た。
【0052】
[製造例1]
酸化チタン30部、ポリウレタン樹脂溶液(PU01)8.3部、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)11.7部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(PU01)33.3部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)16.7部を攪拌混合し白色印刷インキを得た。この白色白インキ100部に、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)50部を希釈溶剤として添加混合し、さらにイソシアネート硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)3部を加え、希釈印刷インキ(W01)を得た。
【0053】
[製造例2]
製造例1と同様にポリウレタン樹脂溶液(PU01)を用いて白色白インキを調製し、これに酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)50部を希釈溶剤として添加混合し、希釈印刷インキ(W02)を得た。
【0054】
[製造例3]
製造例1と同様の方法でポリウレタン樹脂溶液PU03を用い希釈印刷インキ(W03)を得た。
【0055】
[製造例4]
製造例1と同様の方法でポリウレタン樹脂溶液PU02を用い希釈印刷インキ(W04)を得た。
【0056】
[実施例1]
製造例1で得られた希釈印刷インキ(W01)について、版深35μmグラビア版を備えたグラビア印刷機により、コロナ処理ナイロンフィルム(NY)に印刷して60℃で乾燥し印刷物を得た。得られた印刷物について、ラミネート接着剤として東洋モートン株式会社製TM−550(測定酸価14mgKOH/g)およびイソシアネート硬化剤(東洋モートン株式会社製CATRT−37)を用い通常の工程でPEシーラントフィルムとラミネートし、50℃で60時間エージングしたのち、引き裂き性を評価した。
【0057】
<引き裂き性の評価>
引き裂き性の評価は印刷部端、印刷に対し垂直方向にカッターできっかけを入れ、手で引き裂きを行い評価した。
引き裂き性の評価基準は以下の通りで、実用レベルは△以上である。評価を行い、結果を表1に示す。
(評価基準)
◎ :抵抗なく引き裂ける
○ :若干抵抗はあるが引き裂ける
△ :シーラントの伸びを若干生じるがなんとか引き裂ける
△×:引き裂き始めおよび/または途中で明らかなシーラントの伸びを生じる
× :全く引き裂けない
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で希釈印刷インキ(W02)を用い、印刷・ラミネートを行い、同様の方法で引き裂き性を評価した。
【0059】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で希釈印刷インキ(W03)を用い、印刷・ラミネートを行い、同様の方法で引き裂き性を評価した。
【0060】
[比較例]
実施例1と同様の方法で希釈印刷インキ(W04)を用い、印刷・ラミネートを行い、同様の方法で引き裂き性を評価した。
【0061】
[参考例]
本発明はインキ部の引き裂き性を無地部の引き裂き性に近づけることでフィルム全面でのスムースな引き裂き性を得ることを目的としているので、参考として上記条件でラミネートを行った非印刷部についても実施例1と同様の方法で引き裂き性評価した。
【0062】
結果を表1に示す。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フイルム、インキ層、接着層およびシーラントフイルムの順に積層する易引き裂き性構成物の製造方法において、
インキ層が、官能基Aを有する化合物を含有し、
官能基Aを有する化合物の官能基Aが、グリシジル基、カルボジイミド基、
アジリジニル基およびオキサゾリン基から選ばれる何れかの官能基であり、
かつ
接着層が、官能基Bを有する化合物を含有し、
官能基Bを有する化合物の官能基Bが、カルボキシル基であり、
さらに、
官能基Bを有する化合物の官能基Bが、官能基Aを有する化合物の官能基A
と反応し得ることを特徴とする易引き裂き性構成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法で製造されてなる易引き裂き性構成物。



【公開番号】特開2012−125977(P2012−125977A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278355(P2010−278355)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】