説明

易引き裂き性構成物の製造方法

【課題】本発明はラミネート構成物におけるインキ上の引き裂き性向上させ、それによりフィルム全面が均一に引き裂ける易引き裂き性の構成物を提供するものである。
【解決手段】インキ上での引き裂き性の低下はインキ層と接着層の界面剥離あるいはインキ層の凝集破壊により柔らかいシーラントフィルムが硬い基材から分離し延びてしまうことによる。そこで、インキ層と接着層を強固に結びつけ一体化することで、引き裂き時に加わる物理力に抗し界面剥離を抑制することで、インキ上での引き裂き性が向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキにより描画された積層体に関するものであり、さらに詳しくは各種プラスチックフィルムに印刷インキを印刷後、接着剤を介して、シーラントフィルムでサンドイッチされたラミネート構成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラミネート構成物は包装容器分野に多く用いられるが、包装容器の場合、内容物を取り出すため容器を開封する必要がある。一般市場において、開封は人間の手によって行われることが多く、その際に鋏等の器具を用いずに容器を引き裂いて開封出切ることは、利便性の面で大きなメリットとなる。ここで包装容器の引き裂き性が悪いと開封時に力が要る・思わぬ方向に切れてしまい内容物がこぼれるといった問題を生じるため、包装容器分野のラミネート積層物では、良好な引き裂き性が求められる。
【0003】
引き裂き性を付与する従来技術として、例えばフィルム端面を切れ込みを入れる等の工夫をし引き裂けるきっかけを作る方法があるが、このような方法では、引き裂き始めの改善にはなるものの、フィルム面そのものが引き裂きにくいと、途中でひっかかる・直線的に引き裂けないという事態を生じる。
【0004】
また、包装容器は内容物の表示ならび意匠性のために印刷インキにより描画されている場合が多いが、一般にインキ上は接着層とインキ層との結合力が無地部より劣るため引き裂き性が劣る。フィルム面の引き裂き性を向上するための手段として特開2008−274061に示されるようにラミネート接着層を硬くすることで引き裂き性が向上することが知られているが、インキ部、無地部が混在する場合、接着層をインキ上で引き裂ける硬さにすると非画線部が硬くなりすぎ物性バランスがとれず、無地部に合わせるとインキ上で引き裂き性が劣ることになる。
【0005】
フィルム全面でのスムースな引き裂き性を付与するのためには、インキ部の引き裂き性を向上し無地部の引き裂き性と近づけることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−274061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ラミネート構成物におけるインキ上の引き裂き性向上させ、それによりフィルム全面が均一に引き裂ける易引き裂き性の構成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インキ上での引き裂き性の低下はインキ層と接着層の界面剥離あるいはインキ層の凝集破壊により、柔らかいシーラントフィルムが硬い基材から分離し延びてしまうことによる。そこで、インキ層と接着層を強固に結びつけ一体化することで、引き裂き時に加わる物理力に抗し界面剥離を抑制することで、インキ上での引き裂き性が向上させることができる。
【0009】
すなわち、本発明は、基材フイルム、インキ層、接着層およびシーラントフイルムの順に積層する易引き裂き性構成物の製造方法において、
インキ層が、官能基Aを有する化合物(a1)を含有し、
接着層が、官能基Aを有する化合物(a2)を含有し、
かつ
インキ層が、官能基Aと反応しうる官能基Bを2つ以上有する添加剤(b)を含有 し、
さらに、
官能基Aを有する化合物(a1)と官能基Aを有する化合物(a2)とが、
添加剤(b)を架橋剤として、反応し得る、
ことを特徴とする易引き裂き性構成物の製造方法に関するものである。
【0010】
さらに、本発明は、
官能基Aが、水酸基であり、
ならびに
添加剤(b)がチタンキレート、チタンアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジル コニウムアルコキシド、アルミニウムキレートおよびアルミニウムアルコキシドか ら選ばれる1種以上
であることを特徴とする上記の易引き裂き性構成物の製造方法に関するものである。
【0011】
また、本発明は、官能基Aを有する化合物(a1)が、単糖類、オリゴ糖および糖アルコールから選ばれる1種類以上であることを特徴とする上記の易引き裂き性構成物の製造方法に関するものである。
【0012】
さらに、本発明は、官能基Aを有する化合物(a1)が、低分子多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であり、
該反応物が、一分子中に水酸基を2つ以上
含むことを特徴とする上記の易引き裂き性構成物の製造方法に関するものである。
【0013】
また、本発明は、上記の製造方法で製造されてなる易引き裂き性構成物に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ラミネート物の開封において、フィルム面全面に渡るスムースな引き裂き性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明ではインキ層と接着層に官能基Aを有する化合物を含有し、官能基Aと反応しうる官能基Bを2つ以上有する添加剤(b)が必要である。
【0016】
例えば官能基Aにカルボキシル基を用い、官能基Bとして一分子中にグリシジル基、カルボジイミド基、アジリジン基およびオキサゾリン基から選ばれる同種または異種の官能基を2個以上有している添加剤(b)と組み合わせることが出来る。
【0017】
また、官能基Aが水酸基であり、添加剤(b)が多官能イソシアネート化合物でもよい。
【0018】
ここで述べたいずれの組み合わせも、インキ層ならびに接着層中それぞれの層中での硬化による物性向上のため従来から実用化されている技術であるが、この発明において重要なのは、インキ層中の官能基Aを有する化合物(a1)と接着層中の官能基Aを有する化合物(a2)がそれぞれの層内で架橋反応を生じるのではなく、ひとつの添加剤(b)を介して、すなわち添加剤(b)が架橋剤としての作用をして、化合物(a1)と化合物(a2)が一体化することにある。ここで、化合物(a1)と化合物(a2)は同一の化合物であってもよい。
【0019】
例えば従来技術として、バインダー樹脂末端に1級もしくは2級のアミノ基を有するインキ層と、水酸基を含む接着層の組み合わせで、インキ層および/または接着層に多価イソシアネート化合物を添加しても、イソシアネート基の対アミノ基の反応速度と対水酸基の反応速度が大きく違うため、まずアミノ基が優先して多価イソシアネート化合物と反応しインキ層の内部架橋を生じ、残った多価イソシアネート化合物は大部分が接着層内で水酸基と反応することになり、インキ層と接着層を結合させるという目的は果たせない。
【0020】
そこでわれわれは、官能基Bと反応しうる共通の官能基Aをインキ層と接着層の両層に配置し官能基Bに対する反応速度を同じにすることで、界面での添加剤(b)によるインキ層中の化合物(a1)と接着層中の化合物(a2)の結合形成を促進した。
【0021】
インキ中の化合物(a1)は、添加剤(b)を介して接着剤中の化合物(a2)と反応し、それにより引き裂き時にかかる物理力に抗する必要がある。そのためには化合物(a1)は力がかかった際にインキ層中に安定して保持されている必要があるため、化合物(a1)は高分子量物であるのが望ましい。これは接着層中の化合物(a2)においても同様である。
【0022】
インキ成分中の高分子量物としては、例えばバインダー樹脂が挙げられ、バインダー樹脂がポリウレタン・ウレア樹脂の場合は、後述する方法で、例えば水酸基やカルボキシル基といった官能基Aを組み込むことが出来る。さらに併用する高分子量物に官能基Aをもたせてもよい。例えば官能基Aが水酸基の場合、アクリル樹脂、塩酢ビ樹脂、必要に応じ部分的にエステル化したセルロース等の多糖類、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられるし、官能基Aがカルボキシル基の場合、アクリル樹脂、ロジン、マレイン酸共重合物等が挙げられる。
【0023】
官能基Aが水酸基の場合、チタンキレート、チタンアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムキレートおよびアルミニウムアルコキシドから選ばれる1種以上を含むことを特徴とする添加剤との組み合わせも、特にドライラミネートにおいて有用である。添加量はインキ100部に対し0.3部から2部程度が望ましい。
【0024】
官能基Aとして水酸基を含む化合物(a1)として、単糖類、オリゴ糖、糖アルコール類が有用である。これらは常温で固体のため、これらの熔融温度以下でラミネートを行う方法では反応性に乏しく明確な効果を生じないが、高温の熔融樹脂を併用してラミネートを行う押し出しラミネートでは熱により熔融し添加剤(b)と反応する。単糖類としてはグルコース、ガラクトース、マンノース等がある。オリゴ糖としては、マルトース、スクロース等の2糖類のほかマルトトリオース等が挙げられる。糖アルコールとしてはキシリトール、ソルビトール、マンニトール等が上げられる。これらは常温で固体であるため、顔料と共に分散処理を行うか水等の親溶媒に溶解してインキに添加する。この化合物(a1)の添加量はインキ100部に対し0.3部から2部程度が適切である。
【0025】
また官能基Aとして水酸基を含む化合物(a1)として、低分子多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であり、該反応物が、一分子中に水酸基を2つ以上含む化合物が有用である。低分子多官能アルコール同士を多官能イソシアネートで繋いでもよいが、インキ中での相溶性を高めると同時に高分子量化により引き裂き時のインキ層への保持力アップのため、分子量500〜5000程度のポリマージオールと反応し組み込むことがとくに効果的である。低分子多官能アルコールとしては上に挙げた糖アルコール類のほかに、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。特に合成時のイソシアネートとの反応性を考慮すると、常温で液状もしくは溶剤に易溶であるジオール類やグリセリン、比較的低温で熔融もしくは有機溶剤に溶解するトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール等が有用である。ポリマージオールとしては、エーテル類、エステル類、ポリカーボネート類等の後述する一般にウレタン樹脂合成に使用されるものが挙げられる。多官能イソシアネートしては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート等の後述するジイソシアネートやそのアダクト体、ビュレット体等が挙げられる。
【0026】
化合物(a1)は、水酸基を2つ以上有する必要があるため、合成に際し最終的に水酸基モル数>イソシアネートモル数であることが必要である。また合成順番として全原料を一括に投入し合成してもよいが、前述の目的でポリマージオールと低分子多官能アルコールを効率よく一体化するため、まずポリマージオールの両末端に多官能イソシアネートを反応させ、そのイソシアネート残基に低分子多官能アルコールを反応させるのが望ましい。その他の合成条件は、有機溶剤や触媒の併用を含め、後述する通常のウレタン合成の条件に準じる。この化合物(a1)の添加量はインキ100部に対し1部〜10部が望ましい。
【0027】
次に、本発明のインキについて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。
【0028】
インキとして必要とされる機能を有するため、化合物(a1)のほかに樹脂(バインダー)、有機溶剤、着色剤などを含むことが出来る。その他、必要に応じて体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などを含むこともできる。
また、インキの経時安定性に問題がない場合、この段階で添加剤(b)が存在してもよい。
【0029】
本発明のインキに使用される樹脂としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている樹脂を挙げることができる。樹脂の例としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン・ウレア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。樹脂の含有量は、インキの総重量に対して4〜25重量%が好ましく、更に好ましくは6〜20重量%である。
【0030】
上記樹脂のうち、汎用接着性、ボイル・レトルト適性の観点からポリウレタン・ウレア樹脂が好適である。ポリウレタン・ウレア樹脂は、ラミネート加工用インキの樹脂として広く一般的に用いられている。ポリウレタン・ウレア樹脂のインキにおける含有量は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点から4重量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25重量%以下が好ましく、更には6〜20重量%の範囲が好ましい。
【0031】
ポリウレタン・ウレア樹脂は従来公知の方法、例えば、特開昭62−153366号公報、特開昭62−153367号公報、特開平1−236289号公報、特開平2−64173号公報、特開平2−64174号公報、特開平2−64175号公報などに開示されている方法により得ることができる。具体的には、ポリオール、ジオールなどの水酸基含有化合物とイソシアネート化合物をイソシアネート過剰で反応させイソシアネート末端プレポリマーを作り、更にアミン化合物と概プレポリマーをアミン過剰で反応させることにより得ることが出来る。
【0032】
ポリオール、ジオールなどの水酸基含有化合物としては、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3ープロパンジオール、1,3ーブタンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3ーメチルー1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4ーブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の低分子グリコール類ならびにnーブチルグリシジルエーテル、2ーエチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物を脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類などの一般にポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子量ジオールが挙げられる。
【0033】
なお、これら高分子量ジオールのうち、グリコール類と二塩基酸とから得られる高分子量ジオールを用いる場合は、グリコール類のうち5モル%までを以下の各種ポリオールに置換することが出来る。すなわち、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6ーヘキサントリオール、1,2,4ーブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等のポリオールに置換してもよい。これらポリオールは単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0034】
また、ジメチロールブタン酸やジメチロールプロピオン酸のようなカルボキシル基を有するジオールを用いると樹脂中に官能基Aとしてカルボキシル基を組み込むことが出来る。
【0035】
イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を挙げることが出来る。たとえば、1,5ーナフチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ージベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3ーフェニレンジイソシアネート、1,4ーフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタンー1,4ージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンー1,4ージイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4、4’ージイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等がその代表例としてあげられる。これら有機ジイソシアネート化合物は単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0036】
アミン化合物としては、たとえばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンー4,4’ージアミンなどがあげられる。
【0037】
特に2ーヒドロキシエチルエチレンジアミン、2ーヒドロキシエチルプロピルジアミン、ジー2ーヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジー2ーヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2ーヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジー2ーヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類を用いることにより樹脂中に官能基Aとして水酸基を組み込むことが出来る。
【0038】
さらに、反応停止を目的として一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジーnーブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。
【0039】
さらに、特にポリウレタン樹脂中に官能基Aとしてカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。また官能基Aとして水酸基を末端に導入したいときには2エタノールアミンを反応停止剤として用いることが出来る。
【0040】
ポリウレタン・ウレア樹脂の重量平均分子量は、耐水性・耐溶剤性、耐ボイル・レトルト適性の観点から10,000以上、インキの再溶解性、印刷上のトラブル(版詰まり性や印刷適性が低下)の観点から100,000以下が好ましい。さらに好ましくは、20,000〜80,000の範囲である。ポリウレタン・ウレア樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィ(GPC)や、ポリマーの極限粘度と重量平均分子量との関係式などにより求めることができる。ポリウレタン・ウレア樹脂の骨格構造は、枝分かれを有する分岐状でも、直鎖状であってもよい。ポリウレタン・ウレア樹脂の末端はアミンであることが好ましい。
【0041】
本発明のインキに使用される有機溶剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている炭化水素系、ケトン系、エステル系、アルコール系有機溶剤を挙げることができる。具体的には、トルエン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンな__どの炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤を使用することができる。印刷後のインキ皮膜に残留する溶剤量低減の観点から、高沸点溶剤を少量併用使用することもできる。本発明のインキに使用される有機溶剤は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
本発明のインキに必要に応じて使用される着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などが挙げられる。藍インキには銅フタロシアニンを使用することが着色力の点から好ましい。
【0043】
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラなどが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラックを使用することが着色力の点から好ましい。
【0044】
顔料は、単独で、または色相および濃度の調整などを目的として2種以上を混合して用いることもできる。顔料は、インキの濃度・着色力を確保する量、好ましくはインキの総重量に対して、4〜50重量%の量でインキ中に含まれる。
【0045】
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
【0046】
本発明のインキは、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0047】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0048】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばウレタン・ウレア樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、着色剤として顔料を用いた場合は、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0049】
次に、本発明の易引き裂き性構成物について説明する。本発明の易引き裂き性構成物とは、基材フィルムに印刷されたインキ層がアンカーコート剤または接着剤を介してシーラントフィルムと積層されたラミネート構成物である。本発明のラミネート構成物は、本発明のインキを被印刷体にグラビア印刷またはフレキソ印刷などにより印刷し、押し出しラミネート(エクストルージョンラミネート)、ドライラミネート、ノンソルドライラミネートなどの方法で、シ−ラントをラミネートすることにより得ることが出来る。また、本発明の条件を満たさないインキを基材フィルムに上記方法にて印刷し、本発明のインキを最後に印刷し、上記方法にてラミネートした加工物も本発明のラミネート加工物として挙げることができる。
【0050】
添加剤(b)をインキ層に加えることで経時安定性が低下する場合、添加剤(b)は印刷の直前に添加する。本発明によってインキ層と接着層との結合が十分に強固になれば、インキ層は強固なほど引き裂き性は向上するので、インキ層内での結合向上のため、多官能イソシアネート化合物をインキ硬化剤として加えることが望ましい
【0051】
本発明の易引き裂き性構成物に使用される基材フィルムとしては、グラビア印刷、またはフレキソ印刷に一般的に用いられるプラスチックを挙げることが出来る。プラスチックとしては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの一軸または二軸延伸された、または延伸されていないフィルムまたはシートが挙げられ、これらは一般的にコロナ放電処理や低温プラズマ処理などの表面処理が施されている。また更に、セロファン、防湿セロファン、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ポリアミドなどからなるフィルムまたはシート、あるいはこれらの積層体も挙げることができる。
【0052】
本発明の易引き裂き性構成物に使用されるシーラントは、前記プラスチックのフィルムまたはシート、あるいはアルミニウム箔などを挙げることができる。特に押し出しラミネート(エクストルージョンラミネート)される樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはそれらのけん化物、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0053】
本発明の易引き裂き性構成物に使用される接着剤としては、官能基Aを含んでいればラミネート加工に広く一般的に用いられているものを用いることができ、主剤としては、エステル系、エーテル系、ウレタン系、変性ポリオレフィン系などが挙げられる。官能基Aを組み込む方法としては、例えば官能基Aが水酸基の場合、末端が水酸基となるように縮合したポリエステル樹脂を主剤として用いてもよいし、ウレタン樹脂を主剤とする場合は、例えば上述の方法で水酸基を組み込むことが出来る。
【0054】
本発明の易引き裂き性構成物は、袋などの容器の形に成形され、飲食品、医療品、医療器具などの充填されて用いられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例で限定されるものではない。なお例中「部」とは重量部を、「%」は重量%を示す。
【0056】
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000の3−メチル−1、5−ペンタンジオ−ルとアジピン酸との縮重合物、即ちポリ(3−メチル−1、5−ペンチルアジペ−ト)ジオ−ル(以下、PMPAという)22.79部、イソホロンジイソシアネート5.32部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させた後、80℃に降温し、2−ジエチルアミノエタノール0.13部、酢酸エチル7.03部を加えさらに3時間反応させた後、酢酸エチル16.08部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液51.35部を得た。次いでイソホロンジアミン1.25部、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール0.5部、2−アミノエタノール0.01部、酢酸エチル25.9部、イソプロピルアルコール21部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液51.35部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量40000のポリウレタン樹脂溶液(PU01)を得た。
【0057】
[合成例2]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のPMPA22.55部、イソホロンジイソシアネート5.26部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させた後、80℃に降温し、2−ジエチルアミノエタノール0.13部、酢酸エチル6.95部を加えさらに3時間反応させた後、酢酸エチル15.91部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液50.8部を得た。次いでイソホロンジアミン2.06部、酢酸エチル26.14部、イソプロピルアルコール21部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液50.8部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量43000のポリウレタン樹脂溶液(PU02)を得た。
【0058】
[合成例3]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のPMPA38.93部、イソホロンジイソシアネート8.654部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させた後、エチレングリコール2.416部、シクロヘキサノン12.5部を加えIRにてイソシアネートのピークが消失するまで反応させた。反応終了確認後降温し、酢酸エチル37.5部を加え固形分50%のウレタン樹脂溶液(PU03)を得た。
【0059】
[合成例4]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のPMPA36.378部、イソホロンジイソシアネート8.087部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させた後、キシリトール5.535部、シクロヘキサノン12.5部を加えIRにてイソシアネートのピークが消失するまで反応させた。反応終了確認後降温し、酢酸エチル37.5部を加え固形分30%のウレタン樹脂溶液(PU04)を得た。
【0060】
[製造例1]
酸化チタン30部、ポリウレタン樹脂溶液(PU01)8.3部、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)11.7部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(PU01)33.3部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)16.7部を攪拌混合し白色インキ(W01)を得た。
【0061】
[製造例2]
ポリウレタン樹脂溶液(PU01)の代わりにポリウレタン樹脂溶液(PU02)を用い、製造例1同様の方法で白色インキ(W02)を得た。
【0062】
[製造例3]
ポリウレタン樹脂溶液(PU02)8.3部、ソルビトール1部、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)11.7部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(PU02)33.3部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)16.7部を攪拌混合し白色インキ(W03)を得た。
【0063】
[製造例4]
部分的にエステル化したセルロース(イーストマンコダックCAP504−02)20部をメチルエチルケトン40部とイソプロピルアルコール40部に溶解したもの20部を白色インキ(W02)の100部に加えよく攪拌し白色インキ(W04)とした。
【0064】
[製造例5]
白色インキ(W02)の100部にウレタン樹脂溶液(PU03)を10部加えよく攪拌し白色インキ(W05)とした。
【0065】
[製造例6、7]
白色インキ(W02)の100部にウレタン樹脂溶液(PU04)を10部加え白色インキ(W06)とした。さらに、白色インキ(W06)の100部に対しチタンキレート2部を加え白色インキ(W07)とした。
【0066】
[実施例1]
製造例1で得られた白色インキ(W01)について、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)50部を希釈溶剤として添加混合し、イソシアネート硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)3部を加え希釈印刷インキとし、版深35μmグラビア版を備えたグラビア印刷機により、コロナ処理ナイロンフィルム(NY)に各印刷インキを印刷して60℃で乾燥し、印刷物を得た。
【0067】
得られた印刷物について、通常の工程でPEシーラントフィルムに対し官能基Aとして水酸基を有するポリエステル系接着剤(東洋モートン株式会社製TM−550)/イソシアネート硬化剤(東洋モートン株式会社製CATRT−37)でドライラミネート(DL)、および同じく官能基Aとして水酸基を有するポリエステル系接着剤(東洋モートン株式会社製EL−510)/イソシアネート硬化剤(東洋モートン株式会社製CATRT−80)でエクストルージョンラミネート(EL)を行い、40℃で60時間エージングしたのち、得られたラミネート物の引き裂き評価を行った。
【0068】
<引き裂き性の評価>
引き裂き性の評価は印刷部端、印刷に対し垂直方向にカッターできっかけを入れ、手で引き裂きを行い評価した。評価はドライラミネート(DL)によるラミネート物の引き裂き性、エクストルージョンラミネート(EL)によるラミネート物の引き裂き性それぞれについて行った。
引き裂き性の評価基準は以下の通りで、実用レベルは△以上である。評価を行い、結果を表1に示す。
(評価基準)
◎ :抵抗なく引き裂ける
○ :若干抵抗はあるが引き裂ける
△ :シーラントの伸びを若干生じるがなんとか引き裂ける
△×:引き裂き始めおよび/または途中で明らかなシーラントの伸びを生じる
× :全く引き裂けない
【0069】
[実施例2〜7]
実施例1と同様の方法で白インキ(W03)〜白インキ(W07)の希釈印刷インキを調製し、また、実施例1と同様な方法で印刷・ラミネートを行い、引き裂き評価を行った。尚、白インキ(W07)にイソシアネート硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)を加えずに同様の所作を行い、実施例7とした。
【0070】
[比較例1]
白インキ(W01)にイソシアネート硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)を加えず、それ以外は実施例1と同様の方法で印刷・ラミネートを行い、引き裂き評価を行い比較例1とした。
【0071】
[比較例2]
白インキ(W02)を用い、実施例1と同様の方法で印刷・ラミネートを行い、引き裂き評価を行い比較例2とした。
【0072】
[参考例]
本発明はインキ部の引き裂き性を無地部の引き裂き性に近づけることでフィルム全面でのスムースな引き裂き性を得ることを目的としているので、参考として上記条件でラミネートを行った非印刷部についても実施例1と同様に引き裂き性評価した。
【0073】
実施した評価の組み合わせと評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フイルム、インキ層、接着層およびシーラントフイルムの順に積層する易引き裂き性構成物の製造方法において、
インキ層が、官能基Aを有する化合物(a1)を含有し、
接着層が、官能基Aを有する化合物(a2)を含有し、
かつ
インキ層が、官能基Aと反応しうる官能基Bを2つ以上有する添加剤(b)を含有 し、
さらに、
官能基Aを有する化合物(a1)と官能基Aを有する化合物(a2)とが、
添加剤(b)を架橋剤として、反応し得る、
ことを特徴とする易引き裂き性構成物の製造方法。
【請求項2】
官能基Aが、水酸基であり、
ならびに
添加剤(b)がチタンキレート、チタンアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジル コニウムアルコキシド、アルミニウムキレートおよびアルミニウムアルコキシドか ら選ばれる1種以上
であることを特徴とする請求項1記載の易引き裂き性構成物の製造方法。
【請求項3】
官能基Aを有する化合物(a1)が、単糖類、オリゴ糖および糖アルコールから選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1または2記載の易引き裂き性構成物の製造方法。
【請求項4】
官能基Aを有する化合物(a1)が、低分子多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であり、
該反応物が、一分子中に水酸基を2つ以上
含むことを特徴とする請求項1または2記載の易引き裂き性構成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4何れか1項に記載の製造方法で製造されてなる易引き裂き性構成物。


【公開番号】特開2012−125978(P2012−125978A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278356(P2010−278356)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】