説明

易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維

【課題】染料に対する染色性が優れ、しかも、繊維の強度、および、熱収縮安定性を兼備した易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供すること。
【解決手段】可塑延伸および水洗工程を経た後、乾熱処理前に水蒸気弛緩熱処理を行うことにより、原繊維の破断強度が2.5cN/dtex以上、染色前後の300℃乾熱収縮率の比が2.5以下、染色繊維の明度指数L*値が25以下である易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン染料や分散染料等の染料に対する染色性が良好であるとともに、繊維の強度、および、熱収縮安定性に優れた易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維等のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、分子骨格のほとんどが芳香族環から構成されているため、優れた耐熱性と寸法安定性を発現する。これらの特性を活かして、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、産業用途のみならず、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される用途等に好適に使用されており、最近では、耐炎性と防炎性を生かした寝具、衣料、インテリア等の分野への用途が急速に広がりつつある。
【0003】
ここで、これら寝具、衣料、インテリア等の分野においては、審美性や視覚性の観点から、着色した繊維が求められる。それと同時に、優れた繊維強度や熱収縮安定性も求められる。
【0004】
そこで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の着色方法として、特定の顔料を、繊維の製造工程において紡糸液に含有させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、繊維の製造工程における顔料の添加は、ロット切り替え時の製造ロスが多くなるため小ロット対応の生産が困難であり、また、要求される任意の色相を得ることが困難である等の問題があった。
【0005】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の別の着色方法として染色法がある。しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、耐炎性や防炎性の面で優れた物性を有するものの、その剛直なポリマー分子鎖に起因して、通常の方法では染色が困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の染色性を向上させる方法として、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を紡糸液に添加して、カチオン染料に対して易染色性なメタ型芳香族ポリアミド繊維を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法によればカチオン染料に対しては、良好な染色性を有するメタ型芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。しかしながら、当該オニウム塩の添加によりコストが高くなり、また、製糸時や後加工時等に当該オニウム塩が繊維から脱落しないよう条件設定を厳しく管理しなければならないという問題があった。
【0007】
したがって、製造工程において顔料や添加剤等を加えて着色性や染色性を改善する方法によれば、着色性や染色性を付与することはできるものの、色相制御の困難性、生産効率、コストアップや工程増加、厳しい工程管理等の問題が発生していた。
【0008】
そこで、繊維の製造工程中に添加剤等を用いることなく良好な染色性を付与する別の方法として、アミド溶媒溶液を湿式紡糸した凝固糸を、溶媒および可溶化塩を含有する水性浴中で熱延伸し、次いで、水性浴中で延伸糸中に残存する溶剤および可溶化塩をすべて抽出洗浄し、さらに、実質的に張力をかけていない状態で蒸気処理した後に、実質的に張力をかけていない状態で10〜150℃で乾燥する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
この方法によれば、寝具、衣料、インテリア等の分野において求められる特性のうち、良好な染色性のみならず、良好な熱収縮安定性を有するメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。しかしながら、当該繊維は径0.1μm程度のミクロボイドが多数形成された多孔性繊維となってしまうため、他の要求特性である強度については満足できるものではなかった。
【0010】
また別の方法として、細孔を有する非晶質の繊維を形成し、水で膨潤した当該繊維を蒸気加熱し、染料を繊維の当該細孔中に拡散させることにより繊維構造全体にわたって染料が含有した繊維を得て、引き続き、当該繊維をガラス転移温度より高い温度にて十分な時間をかけて蒸気加熱を行うことにより当該細孔をつぶし、これにより染料を不可逆的に繊維内に閉じ込め、当該繊維を結晶化させる方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0011】
この方法によれば、染色性が良好であるとともに、洗濯収縮に対して安定な繊維を得ることができる。しかしながら、染色前後の熱収縮安定性に乏しく、染色により繊維が収縮してしまう問題があった。このため、特許文献4に記載の方法においては、繊維構造体の設計において困難性を伴うという問題があった。
【0012】
これに対して、良好な染色性を有するとともに、繊維の強度、および、熱収縮安定性を兼ね備えたメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法が提案されている(特許文献5参照)。特許文献5においては、無機塩を含む水性凝固浴中で凝固せしめ、得られた凝固糸を水性洗浄浴中にて水洗し、次いで温水浴中にて延伸し、さらに温水浴中にて繊維中の無機塩を取り除き、続いて特定条件の水蒸気中で弛緩熱処理し、さらに特定条件の水蒸気中で延伸する一連の工程が記載されている。
【0013】
しかしながら、特許文献5に記載の方法により得られる繊維は、染色性および熱収縮安定性の面でいまだ満足できるものではなく、さらなる向上が求められていた。また、特許文献5に記載の方法では、工程が複雑になり、かつ蒸気加熱設備の増加により初期投資コストがアップする問題点があった。そこで、よりシンプルな製造方法が求められていた。
【0014】
【特許文献1】特開昭50−059522号公報
【特許文献2】特開平08−081827号公報
【特許文献3】特公昭50−013846号公報
【特許文献4】特開昭62−184127号公報
【特許文献5】特開2005−042262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、染料に対する染色性が優れ、しかも、繊維の強度、および、熱収縮安定性を兼備した易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、可塑延伸および水洗工程を経た後、乾熱処理前に水蒸気弛緩熱処理を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は、原繊維の破断強度が2.5cN/dtex以上、染色前後の300℃乾熱収縮率の比が2.5以下、染色繊維の明度指数L*値が25以下である易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、優れた耐熱性、耐炎性、防炎性を有するとともに、染料に対する染色性が良好であり、かつ、優れた繊維強度、および、熱収縮安定性を兼ね備える。このため、これらの特性が必要とされる分野における工業的価値は極めて大きく、例えば、寝具、衣料、インテリア等の審美性や視覚性を重視する分野においても好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
<易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維>
本発明の易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維は、以下の特定の物性を兼ね備える。本発明の易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の物性、構成、および、製造方法等について以下に説明する。
【0020】
[易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の物性]
〔破断強度〕
本発明の易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の原繊維(染色前の繊維)の破断強度は、2.5cN/dtex以上である。2.5cN/dtex以上であることが必須であり、2.7cN/dtex以上であることが好ましく、2.9以上であることがさらに好ましい。破断強度が2.5cN/dtex未満である場合には、紡績・染色等の後加工工程の通過性が悪化するため好ましくない。
なお、本発明における「破断強度」とは、JIS L 1015に基づき、以下の条件で測定して得られる値をいう。
【0021】
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
【0022】
本発明において、易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の破断強度は、後記する製造方法における可塑延伸工程において、延伸倍率を適正化することにより制御することができる。2.5cN/dtex以上とするためには、延伸倍率を2.5〜10.0倍とすればよい。
【0023】
〔染色前後の300℃乾熱収縮率の比〕
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、染色前後の300℃乾熱収縮率(染色前300℃乾熱収縮率/染色後300℃乾熱収縮率)の比が2.5以下である。染色前後の300℃乾熱収縮率の比は、2.5以下であることが必須であり、2.3以下が好ましく、2.2以下がさらに好ましく、2.1以下が最も好ましい。一般に、収縮率の比が2.5を超えて変化する場合には、染色工程で繊維の収縮が起こることから、原繊維構造体の設計が困難となる。
なお、本発明における「300℃乾熱収縮率」とは、以下の方法で得られる値をいう。
【0024】
(300℃乾熱収縮率)
約3300dtexのトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、互いに30cm離れた箇所に印をつける。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後、印間の長さLを測定する。測定結果Lをもとに、下記式にて得られる値を300℃乾熱収縮率(%)とする。
300℃乾熱収縮率(%)=(30−L)/30×100
【0025】
(染色前後の300℃乾熱収縮率の比)
上記の測定・算出法により、原繊維の300℃乾熱収縮率と染色繊維の300℃乾熱収縮率とをそれぞれ求める。得られた結果を用いて、下記式にて得られる値を染色前後の300℃乾熱収縮率の比とする。
染色前後の300℃乾熱収縮率比=原繊維の300℃乾熱収縮率/染色繊維の300℃乾熱収縮率
【0026】
なお、本発明における「染色」とは、特に指定されない場合には、以下の染色方法による染色を意味する。
【0027】
(染色方法)
カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL−ED(B−54))6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリア剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意する。引き続き、繊維と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施する。
【0028】
本発明において、易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の染色前後の300℃乾熱収縮率の比は、後記する製造方法における蒸気処理工程において、弛緩倍率を適正化することにより制御することができる。比を2.5以下とするためには、弛緩倍率を0.65〜1.0とすればよい。
【0029】
〔染色繊維の明度指数L*値〕
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、染色繊維の明度指数L*値が25以下である。明度指数L*値が25を超える場合には、十分な染色性が得られないため好ましくない。
【0030】
なお、本発明における「明度指数L*値」とは、上記の染色方法で染色した繊維に対して、以下の測定法で測定した値をいう。なお、L*は、数値が小さいほど濃染化されていることを示す。
【0031】
(測定方法)
カラー測色装置(マスベク社製、商品名:マクベスカラーアイ モデルCE−3100)を用いて、以下の測定条件で測定する。
{測定条件}
視野 :10度
光源 :D65
波長 :360〜740nm
【0032】
本発明において、易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の染色繊維の明度指数L*値は、後記する製造方法における水蒸気弛緩熱処理工程において、弛緩倍率を適正化することにより制御することができる。明度指数L*値を25以下とするためには、弛緩倍率を0.65〜1.0とすればよい。
【0033】
〔原繊維の300℃乾熱収縮率〕
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、染色前の原繊維の300℃乾熱収縮率が3.0%以下であることが好ましい。原繊維の300℃乾熱収縮率は、3.0%以下であることが必須であり、2.9%以下が好ましく、2.8%以下がさらに好ましい。収縮率が3.0%を超える場合には、高温雰囲気下での使用時に製品寸法が変化し、製品の破損が生じる等の問題が発生するため好ましくない。
なお、原繊維の300℃乾熱収縮率は、上記した300℃乾熱収縮率の測定方法によって測定する。
【0034】
本発明において、易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の原繊維の300℃乾熱収縮率は、後に記載する製造方法における水蒸気弛緩熱処理工程において、弛緩倍率を適正化することにより制御することができる。原繊維の300℃乾熱収縮率を3.0%以下とするためには、弛緩倍率を0.65〜1.0とすればよい。
【0035】
〔染色繊維の染着率〕
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、上記の染色方法で染色した染色繊維の染着率が90%以上であることが好ましい。染色繊維の染着率は、90%以上であることが必須であり、92%以上であることが好ましい。染色繊維の染着率は90%未満の場合には、染色工程における染料のロス量が増えることから、染色工程でのコストが増加するため好ましくない。
なお、本発明における「染着率」とは、以下の方法によって得られる値をいう。
【0036】
(染着率)
原繊維を染色した染色残液に、この染色残液と同容積のジクロロメタンを加え、残染料を抽出する。引き続き、抽出液について、波長670nm、540nm、530nmの吸光度をそれぞれ測定し、あらかじめ染料濃度が既知のジクロロメタン溶液から作成した上記3波長の検量線から抽出液の染料濃度をそれぞれ求め、上記3波長における濃度の平均値を抽出液の染料濃度(C)とする。染色前の染料濃度(Co)を用いて、以下の式にて得られる値を染着率(U)とする。
染着率(U)=(Co−C)/Co×100
【0037】
本発明において、易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の染色繊維の染着率は、後記する製造方法における水蒸気弛緩熱処理工程において、弛緩倍率を適正化することにより制御することができる。染色繊維の染着率を90%以上とするためには、弛緩倍率を0.65〜1.0とすればよい。
【0038】
〔染色繊維の限界酸素指数(LOI)〕
本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、上記の染色方法で染色した染色繊維の限界酸素指数(LOI))が30以上であることが好ましい。染色繊維の限界酸素指数(LOI)は、30以上であることが必須であり、30.5以上が好ましく、31.0以上がさらに好ましい。限界酸素指数(LOI)が30未満の場合には、高温雰囲気下での使用時に、製品が高熱により着火する恐れがあるため好ましくない。
【0039】
なお、本発明における「限界酸素指数(LOI)」とは、JIS K 7201のLOI測定法に基づき、綿状にした繊維材料をニードルパンチ加工によりシート状に成形した不織布につき、以下の測定条件で測定して得られる値をいう。
【0040】
(測定条件)
試験片の形 :V
寸法 :140mm×52mm
点火手順 :B(伝ぱ点火)
酸素濃度間隔:0.2%
【0041】
本発明において、易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の染色繊維の限界酸素指数(LOI)は、後に記載する製造方法における水洗工程において、残存溶媒量を低減することにより制御することができる。染色繊維の限界酸素指数(LOI))を30以上とするためには、残存溶媒量を0.1%以下とすればよい。
【0042】
[メタ型芳香族ポリアミドの構成]
本発明の易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維を構成するメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
【0043】
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型芳香族ポリアミドである。全繰り返し単位の好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%がメタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドであることが望ましい。
【0044】
〔メタ型芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、2,6−ジアミノクロロベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
【0045】
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型芳香族ポリアミドを構成するメタ型芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロロイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドそのもの、または、イソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
【0046】
〔メタ型芳香族ポリアミドの製造方法〕
メタ型芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
【0047】
<易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明の易染色性メタ型芳香族ポリアミド繊維は、上記の製造方法によって得られた芳香族ポリアミドを用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、弛緩処理工程、熱処理工程を経て製造される。
【0048】
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調整する。紡糸液の調整にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
【0049】
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
【0050】
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を紡出して凝固させる。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000〜30000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が適当である。
【0051】
凝固浴としても特に限定されるものではなく、従来公知の浴液を使用することができる。例えば、無機塩を含まない水性凝固浴を採用する場合には、NMP濃度40〜70質量%の水溶液を、浴液の温度20〜90℃の範囲として用いることができる。この場合の凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
本発明においては、凝固浴の成分あるいは条件を適宜調節することにより、繊維表面に形成されるスキンを薄くすることができ、その結果、染色性をより向上させることができる。
【0052】
[可塑延伸浴延伸工程]
可塑延伸浴延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。
可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。
【0053】
延伸倍率は2.5〜10.0倍の範囲が好ましく、さらに好ましくは2.5〜6.0倍である。本発明においては、可塑延伸浴での延伸により分子鎖配向を上げておくことが、最終的に得られる易染色性繊維の熱収縮安定性および強度のバランスを確保するのに重要である。
【0054】
可塑延伸浴中での延伸倍率が2.5倍未満である場合には、2.5cN/dtex以上の破断強度であって十分な熱収縮安定性を有する繊維を得ることが困難となる。一方で、延伸倍率が10.0倍を越える場合には、単糸切れが発生するため、生産安定性が悪くなる。
可塑延伸浴の温度は、20〜90℃の範囲が好ましい。温度が20〜90℃の範囲にあると、工程調子が良いため好ましい。
【0055】
[洗浄工程]
洗浄工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行なうことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段として、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
【0056】
温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば特に限定されるものではないが、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こり、繊維中に巨大なボイドが生成して品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
繊維中に溶媒が残っている場合には、高温での物性低下や収縮、限界酸素指数(LOI)の低下等が生じる。このため、繊維に含まれる溶媒量は、1%以下とすることが好ましく、0.1%以下とすることがより好ましい。
【0057】
[水蒸気弛緩熱処理工程]
弛緩熱処理工程においては、洗浄工程において洗浄された繊維を、水蒸気中、好ましくは飽和水蒸気中で弛緩熱処理する。水蒸気中で弛緩熱処理することにより、繊維内部の非晶部分が著しく配向緩和し、染色性が向上するとともに、染色時等の熱による収縮を抑制することができる。
【0058】
水蒸気弛緩熱処理工程における水蒸気圧力は、196〜392kPaの範囲とすることが好ましく、225〜363kPaの範囲とすることがさらに好ましい。弛緩熱処理の水蒸気圧力が196kPa未満の場合には、繊維内部の非晶部分の十分な配向緩和が起きず、目的とする熱収縮安定性を付与することが困難となる。一方で、392kPaを越える場合には、熱収縮安定性は付与できるものの、繊維の易染性が大きく低下してしまうため好ましくない。
【0059】
また、水蒸気弛緩熱処理工程における弛緩倍率は、0.65〜1.0倍とすることが好ましく、0.65〜0.95倍の範囲とすることがさらに好ましい。弛緩倍率がこの範囲を超える場合には、繊維内部の非晶部分の十分な配向緩和が起こらず、目的とする熱収縮安定性を付与することが困難となる。さらに、繊維内部の非晶部分の配向緩和が不十分になるため、染色前後の300℃乾熱収縮率の比と、染色繊維の明度指数(L*値)が大きくなり、本発明の目的を達成することが困難となる。さらには、原繊維の300℃乾熱収縮率も大きくなり、その結果、染色繊維の染着率が低下する。このため、本発明においては、水蒸気弛緩熱処理工程における弛緩倍率の制御は、極めて重要である。
【0060】
[乾熱処理工程]
乾熱処理工程においては、水蒸気弛緩熱処理工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理としては特に限定されるものではないが、例えば、熱ローラー、熱板等を用いる方法を挙げることができる。これにより、最終的に、本発明の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって限定されるものではない。
【0062】
<測定方法>
実施例および比較例における各物性値は、下記の方法で測定した。
【0063】
[繊度]
JIS L 1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
【0064】
[破断強度、破断伸度]
JIS L 1015に基づき、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
【0065】
[300℃乾熱収縮率]
約3300dtexのトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、互いに30cm離れた箇所に印をつける。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後、印間の長さLを測定した。測定結果Lをもとに、下記式にて得られる値を300℃乾熱収縮率(%)とした。
300℃乾熱収縮率(%)=(30−L)/30×100
【0066】
[染色前後の300℃乾熱収縮率の比]
上記の測定・算出法により、原繊維の300℃乾熱収縮率と染色繊維の300℃乾熱収縮率とをそれぞれ求めた。得られた結果を用いて、下記式にて得られる値を染色前後の300℃乾熱収縮率の比とした。
染色前後の300℃乾熱収縮率比=原繊維の300℃乾熱収縮率/染色繊維の300℃乾熱収縮率
【0067】
[染着率]
原繊維を染色した染色残液に、この染色残液と同容積のジクロロメタンを加え、残染料を抽出する。引き続き、抽出液について、波長670nm、540nm、530nmの吸光度をそれぞれ測定し、あらかじめ染料濃度が既知のジクロロメタン溶液から作成した上記3波長の検量線から抽出液の染料濃度をそれぞれ求め、上記3波長における濃度の平均値を抽出液の染料濃度(C)とした。染色前の染料濃度(Co)を用いて、以下の式にて得られる値を染着率(U)とした。
染着率(U)=(Co−C)/Co×100
【0068】
[染色繊維(トウ)の明度指数L*値]
カラー測色装置(マスベク社製、商品名:マクベスカラーアイ モデルCE−3100)を用いて、以下の測定条件で測定を実施した。なお、L*は、数値が小さいほど濃染化されていることを示す。
(測定条件)
視野 :10度
光源 :D65
波長 :360〜740nm
【0069】
[限界酸素指数(LOI)]
JIS K 7201のLOI測定法に基づき、綿状にした繊維材料をニードルパンチ加工によりシート状に成形した不織布につき、以下の測定条件で測定を実施した。
(測定条件)
試験片の形 :V
寸法 :140mm×52mm
点火手順 :B(伝ぱ点火)
酸素濃度間隔:0.2%
【0070】
<実施例1>
[紡糸液調製工程]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した、固有粘度が1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末20.0質量部を、−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)80.0質量部中に懸濁させ、スラリー状にした。引き続き、懸濁液を60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。
【0071】
[紡糸・凝固工程]
得られたポリマー溶液を紡糸原液として、孔径0.07mm、孔数1500の紡糸口金から、40℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固浴の組成は、NMPが55質量%、水が45質量%であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
【0072】
[可塑延伸浴延伸工程]
引き続き、温度40℃の水/NMP=40/60の組成の可塑延伸浴中にて、5.2倍の延伸倍率で延伸を行った。
【0073】
[洗浄工程]
延伸後、20℃の水/NMP=70/30浴(浸漬長1.8m)、20℃の水浴(浸漬長3.6m)、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に順次通して、十分に洗浄を行った。
【0074】
[水蒸気弛緩熱処理工程]
洗浄した繊維に対して、飽和水蒸気圧力294kPa下、弛緩倍率0.80倍にて水蒸気弛緩熱処理を実施した。
【0075】
[乾熱処理工程]
弛緩熱処理実施後、表面温度350℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0076】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.95dtex、破断強度3.02cN/dtex、破断伸度28.5%、であった。また、300℃乾熱収縮率は3.0%であり、優れた熱収縮安定性を示した。原繊維の物性を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
[染色工程]
カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL−ED(B−54))6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリア剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意した。試料繊維をトウの状態で、繊維と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施した。染色処理後、ハイドロサルファイト2.0g/L、アミラジンD(第一工業製薬社製、商品名:アミラジンD)2.0g/L、水酸化ナトリウム1.0g/Lの割合で含有する処理液を用いて、浴比1:20で80℃下20分間の還元洗浄を実施し、水洗後に乾燥することにより染色繊維を得た。
【0079】
[染色繊維等の物性]
染色繊維の染着率は90.4%、L*値は25.0であり、良好な染色性を示した。また、染色前後の300℃乾熱収縮率比は2.07であり、熱収縮率変化が小さいことがわかった。限界酸素指数(LOI値)は30.5であり、良好な難燃性を示した。得られた結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
<実施例2>
[紡糸液調整工程]
撹拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)854.8部を入れ、このNMP中にメタフェニレンジアミン(以下、MPDAと略す)83.4部を溶解した。さらに、該溶液にイソフタル酸クロライド(以下、IPCと略す)156.9部を徐々に撹拌しながら添加し、反応を実施した。反応開始から40分間攪拌を継続した後、水酸化カルシウム粉末を57.1部添加し、さらに40分間撹拌した後に反応を終了させた。反応容器から重合溶液を取り出したところ、重合溶液は透明であり、ポリマー濃度は16%であった。
【0082】
[紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、水蒸気弛緩熱処理工程、乾熱処理工程]
得られた重合溶液を紡糸原液とし、可塑延伸浴中延伸倍率を5.3倍、水蒸気弛緩倍率を0.78倍とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0083】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度2.25dtex、破断強度2.92cN/dtex、破断伸度26.9%、300℃乾熱収縮率2.9%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0084】
[染色工程]
得られた繊維に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
【0085】
[染色繊維等の物性]
染着率は93.0%、L*値は24.8であり、良好な染色性を示した。また、染色前後の300℃乾熱収縮率比は2.10であり、熱収縮率変化が小さいことがわかった。限界酸素指数(LOI値)は31.9であり、良好な難燃性を示した。得られた結果を表2に示す。
【0086】
<実施例3>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴中延伸倍率を5.5倍、水蒸気弛緩倍率を0.69倍とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0087】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度2.16dtex、破断強度2.55cN/dtex、破断伸度31.1%、300℃乾熱収縮率2.7%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0088】
[染色工程]
得られた繊維に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
【0089】
[染色繊維等の物性]
染着率は90.2%、L*値は24.9であり、良好な染色性を示した。また、染色前後の300℃乾熱収縮率比は2.13であり、熱収縮率変化が小さいことがわかった。限界酸素指数(LOI値)は31.0であり、良好な難燃性を示した。
【0090】
<比較例1>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴中延伸倍率を2.4倍、水蒸気弛緩倍率を0.90倍とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0091】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.78dtex、破断強度1.78cN/dtex、破断伸度25.4%、300℃乾熱収縮率2.2%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0092】
[染色工程]
得られた繊維に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
【0093】
[染色繊維等の物性]
染着率は93.1%、L*値は23.9であり、良好な染色性を示した。また、染色前後の300℃乾熱収縮率比は2.10であり、熱収縮率変化が小さいことがわかった。限界酸素指数(LOI値)は32.0であり、良好な難燃性を示した。
【0094】
<比較例2>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴中延伸倍率を5.0倍、水蒸気弛緩倍率を1.05倍とした以外は、実施例3と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0095】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度2.02dtex、破断強度3.54cN/dtex、破断伸度27.1%、300℃乾熱収縮率7.0%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0096】
[染色工程]
得られた繊維に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
【0097】
[染色繊維等の物性]
染着率は83.4%、L*値は29.2であり、やや染色性に劣るものであった。また、染色前後の300℃乾熱収縮率比は3.05であり、熱収縮率変化が大きいことがわかった。限界酸素指数(LOI値)は30.5であり、良好な難燃性を示した。
【0098】
<比較例3>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴中延伸倍率を5.5倍、水蒸気弛緩処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0099】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度2.12dtex、破断強度3.25cN/dtex、破断伸度31.1%、300℃乾熱収縮率5.7%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0100】
[染色工程]
得られた繊維に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
【0101】
[染色繊維等の物性]
染着率は85.2%、L*値は28.9であり、やや染色性に劣るものであった。また、染色前後の300℃乾熱収縮率比は2.70であり、熱収縮率変化が大きいことがわかった。限界酸素指数(LOI値)は30.2であり、良好な難燃性を示した。
【0102】
<比較例4>
[原繊維の製造]
紡糸液調製工程における溶媒を、NMPからジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)に変更した以外は、実施例2と同様にして得た重合溶液を紡糸原液とし、特公昭62−184127号公報記載の方法に準じて乾式紡糸を行った。乾燥塔を出た繊維をDMAc30質量%の90℃浴にて4.0倍に延伸し、水蒸気弛緩工程を経ずに80℃でクリンプ加工を行うことにより、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
【0103】
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.55dtex、破断強度3.40cN/dtex、破断伸度56.1%、300℃乾熱収縮率15.7%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
【0104】
[染色工程]
得られた繊維に対し、特公昭62−184127号公報記載の実施例1に準じて染色工程を実施した。
【0105】
[染色繊維等の物性]
染着率は92.9%、L*値は24.7であり、良好な染色性を示した。しかし、染色前後の300℃乾熱収縮率比は2.67であり、熱収縮率変化が大きいことがわかった。さらに、限界酸素指数(LOI値)は27.0であり、難燃性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原繊維の破断強度が2.5cN/dtex以上、染色前後の300℃乾熱収縮率の比が2.5以下、染色繊維の明度指数L*値が25以下である易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項2】
原繊維の300℃乾熱収縮率が3.0%以下である請求項1記載の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項3】
染色繊維の染着率が90%以上である請求項1または2記載の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項4】
染色繊維の限界酸素指数(LOI)が30以上である請求項1から3いずれか記載の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維。

【公開番号】特開2009−120976(P2009−120976A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294016(P2007−294016)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】