説明

易開封性包装用袋

【課題】 袋(1) の上部領域の一隅部に形成した注出口領域(2) にノッチ(4) と開封補助
線(5) とが形成された包装用袋であって、消費者が容易かつ失敗なく開封することのでき
る易開封性包装用袋を提供することを目的とする。
【解決手段】 注出口領域(2) の始端側シール部(3X)に設けたノッチ(4) から、注出口(2
a)を経由して、終端側シール部(3Y)に向けて開封補助線(5) を袋(1) の斜め方向に設ける
。開封補助線(5) は、両外側に位置する長線(5L), (5L)と、それらの内側に位置する短線
(5S)とで構成された並行な線群からなる。長線(5L), (5L)は、その始端が始端側シール部
(3X)の外縁に位置すると共に、その終端が終端側シール部(3Y)の外縁にまで達している。
短線(5S)は、その始端が前記のノッチ(4) の先端から2mm以上離れた位置からその始端側
シール部(3X)の内縁までの位置に位置すると共に、その終端が前記の終端側シール部(3Y)
の外縁にまで達している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋の上部領域の一隅部に内容物の注出口となる注出口領域が形成され かつ
その注出口領域にノッチと開封補助線とが形成された易開封性包装用袋に関するものであ
る。
【背景技術】
【0002】
(詰め替え用の包装用袋)
包装用袋として、内容物を他の容器(特に、吐出具付きのボトル等の容器)に詰め替え
る使い方をするものが普及している。この目的の包装用袋は、廃棄物の容積の減少に貢献
するところが大である上、消費者においては詰め替え品の方が割安で購入できるというメ
リットがある。この詰め替え用の包装用袋は、店頭に展示したときに消費者の注目を惹く
ようにすると共に、詰め替え作業の途中で床や流し台に置くことがあるため、立垂可能な
袋(自立袋、スタンディングパウチ)とするのが通常である。
【0003】
(注出口領域の設置)
上記の詰め替え用の包装用袋にあっては、他の容器への詰め替えを容易にするため、袋
の上部領域の一隅に注出口領域を設け、その注出口領域を開封して内容物の注出口として
用いることが多い。
【0004】
このときには、注出口領域の袋周縁における上辺側および側辺側のシール部のうち、開
封始端となる側のシール部(通常は袋の上辺側のシール部)にノッチを設けておくと共に
、さらにそのノッチから、注出口となる部分を経由して、開封終端となる側のシール部に
向けてレーザー光の照射により開封補助線を設けておくことも行われている。
【0005】
(特許文献1)
特開2001−58655号公報(特許文献1)には、袋の側縁溶着部4にノッチ6を
設けると共に、そのノッチ6から袋の上辺に向けてレーザ等による開封線7を1本ないし
複数本設けた包装用袋が示されている(請求項、段落0007、0013を参照)。
【0006】
(特許文献2)
特開2003−276744号公報(特許第4173312号)(特許文献2)には、
開封の起点となるノッチ14と、該ノッチ14に連続してまたは該ノッチ14と非連続に形成し
た開封補助線15とを設けた袋体において、その開封補助線15のノッチ14側の先端近傍部分
15a の向きを、該ノッチ14に加わる力の向きと異なるように形成(たとえば半円状に形成
)した袋体が示されている(請求項1〜4、 段落0025、図3〜7を参照)。
【0007】
(特許文献3)
特開2007−55636号公報(特許文献3)には、注出口10と上辺8との間の上部
シール部12には、包装袋1の上辺8から開始され、注出口10の流路11に沿って斜め上方に
延設され、さらに屈曲部25で方向を変えてノッチ20の終端部26が包装袋1の外方に向けて
下辺9と平行に延設された平面形状を有するノッチ20(すなわち「Jの字形」のノッチ20
)」が設けられ、注出口10を囲む2枚のフィルムにはレーザーによるハーフカット溝から
なる各2本の開封案内線30が、ノッチ20から離間し、かつノッチ20の終端部26の延長方向
に沿って設けられ、開封案内線30は、流路11全幅にわたって互いに平行に延在する平行部
31と、平行部31の開封開始側の端部からノッチ20の終端部26に向かってハの字状に開いた
開き部32とを有する包装袋1が示されている(要約書、請求項1を参照)。また、開封案
内線30の平行部を構成する2本のハーフカット溝の間に、レーザーによって形成されたハ
ーフカット溝からなる少なくとも1本の開封案内補助線33が形成された注出口付き包装袋
が示されている(請求項4、段落0045、図11を参照)。
【0008】
(特許文献4)
特開2009−57092号公報(特許文献4)には、先端部シール部1q、側部シール
部1p, 1rによって三方が囲まれた凸状部1dと、凸状部1dの先端部側の表面に連続して設け
られ、側部シール部1p, 1rにこれらを横断することなく延在された線状の溝からなるハー
フカット線1gと、側部シール部1p, 1rにおいて、ハーフカット線1gの端部に交差すると共
に側部シール部1p, 1rの一部を側方から切り取って側部シール部1p, 1rを縮幅させるため
のミシン目1hとを備えたパウチ容器が示されている(要約書を参照)。ここでハーフカッ
ト線(開封誘導線)1gは、実施例においては互いに並行な3本が近接して設けられたもの
であるが、直線状でも曲線状でもよいとされ、またレーザ光照射などによって形成するこ
とができるとある(段落0024〜0029参照)。
【0009】
(特許文献5)
特開平11−43160号公報(特許文献5)には、パウチ容器1の上縁部4bの端部に
、先端部5aを切断することで内容物を排出する出口6が形成される先細りのノズル部5を
突設した構造の袋が示されており(請求項1)、そのノズル部5に切断誘導部としてレー
ザーカットを設ける構成についても言及がある(段落0020)。
【0010】
(特許文献6)
特開2003−54577号公報(特許文献6)には、袋体の端縁部に設けられたノッ
チ1と、袋体の表面にその端縁部から袋体の開封方向に形成されたハーフカット線である
開封補助線2と、袋体の表面にその端縁部から離間するに従い前記開封補助線2に漸次接
近する切裂方向案内線3とを有し、前記ノッチ1が前記開封補助線2と前記切裂方向案内
線3との間に位置するようにした易開封手段が示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2001−58655号公報
【特許文献2】特開2003−276744号公報
【特許文献3】特開2007−55636号公報
【特許文献4】特開2009−57092号公報
【特許文献5】特開平11−43160号公報
【特許文献6】特開2003−54577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の特許文献の中では、特に特許文献2と特許文献3に記載の発明が、本発明と対比
されるべきバックグラウンド技術であると思われる。
【0013】
(特許文献2)
この特許文献2の請求項2〜4には、ノッチ14側の先端とそのノッチ14側の開封補助線
15側の先端との間が 0.3〜0.8 mmの間隔を有するように非連続に形成された態様が示され
ている(図5〜7)。この態様によれば、手でノッチ14に力を加えたときに開封補助線15
に沿って開封できる一方で、衝撃などの外部からの力によって開封補助線15に沿って亀裂
が生じる危険を小さくすることができるとしている。
【0014】
しかしながら、ノッチ14から引き裂きを開始するときの動作を特許文献2の図5を例に
とって説明すると、袋上部のノッチ14をはさんだ2箇所を左右の手の指先でつまんで図の
左右方向に広げることにより最初の抵抗を乗り越えようとする場合のみならず、その2箇
所を左右の手の指先でつまんで図の前後方向に引き裂くことにより最初の抵抗を乗り越え
ようとする場合も多く、あるいはそれらの両方が混在した捻るような動作を行うことも多
いと考えられる。そのため、詰め替え用の包装体の商品を購入する人が一般消費者であり
かつ開封に慣れていないことを考えると、ノッチ14から開封補助線15の開封始端部位に円
滑に乗り移ることができるかどうかに関して不確実さが残る。
【0015】
(特許文献3)
特許文献3においては、袋の下辺9に対して平行に引き裂きを行うべく、「Jの字形ス
リット」( 0.5〜1.5 mm程度の未切断部27を除き他はスリットされている)からなるノッ
チ20を設けるという特異なノッチ構造を採用すると共に、そのノッチ20のJの字の終端部
26を袋の下辺9に対して平行に向け、その終端部26からの引き裂き線を、その図2のよう
に2本の開封案内線30, 30(ハーフカット溝)のハの字状に開いた開き部32に導いて、乗
り移りを確実に行おうとしている。また先にも述べたように、その2本の開封案内線30,
30(ハーフカット溝)間に、少なくとも1本の開封案内補助線33(ハーフカット溝)を設
けた態様についても示されている。
【0016】
特許文献3における「Jの字形のノッチ20の終端部26」から「2本の開封案内線30, 30
(その案内線30, 30間に開封案内補助線33を設けてもよい)のハの字状の開き部32」への
乗り移り機構は、開封のための引き裂き線が袋の下辺9と平行になるようにするための特
別の工夫である。しかしながら、ノッチ20をJの字形スリットという特異な形状にしてあ
るため、開封時に指でつかむ箇所と、ノッチ20の終端部26から開封案内線30側に乗り移る
箇所との間がかなり離れることになり、その結果、一般消費者が取り扱うときの円滑開封
性の点で懸念がある。また、このJの字形スリットからなるノッチ20は、未切断部27を除
いては文字通りスリット状の貫通孔であるため、袋の上部領域において上部シール部12は
不安定となっている上、包装体の輸送中や取り扱い中や店頭での展示中にそのスリットの
所で引っ掛かりを生じやすく、誤開封となったり、未切断部27が切れてしまったりするお
それがある。
【0017】
(発明の目的)
本発明は、このような背景下において、袋の上部領域の一隅部に内容物の注出口となる
注出口領域が形成され、かつその注出口領域にノッチと開封補助線とが形成された易開封
性包装用袋を提供すること、殊に、包装体の取り扱い過程においては誤開封のおそれがな
く、かつ消費者が容易かつ失敗なく開封することのできる易開封性包装用袋を提供するこ
とを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の易開封性包装用袋は、
表裏のシート(1A), (1B)の周縁の必要部がシールされた袋(1) であって、該袋(1) の上
部領域の一隅部は、開封時に内容物の注出口(2a)となる注出口領域(2) に形成されている
こと、
その注出口領域(2) の袋周縁における上辺側および側辺側のシール部(3) のうち、開封
始端となるシール部を始端側シール部(3X)、開封終端となる側のシール部を終端側シール
部(3Y)とするとき、前記の始端側シール部(3X)には開封始端となるノッチ(4) が設けられ
ていること、
さらに、前記のノッチ(4) を設置した前記の始端側シール部(3X)の開封始端部位からは
、前記の注出口(2a)を経由して、前記の終端側シール部(3Y)の開封終端部位に向けて、レ
ーザー光の照射による開封補助線(5) が袋(1) の斜め方向に設けられていること、
ここで、前記の開封補助線(5) は、両外側に位置する少なくとも各1本の長線(5L), (5
L)と、それら両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置する少なくとも1本の短線(5S)とで構
成された並行な線群からなること、
そして、両外側に位置する長線(5L), (5L)は、その始端が前記の始端側シール部(3X)の
外縁に位置すると共に、その終端が前記の終端側シール部(3Y)の外縁にまで達しているこ
と、
一方、両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置する短線(5S)は、その始端が、前記の始端
側シール部(3X)における前記のノッチ(4) の先端から2mm以上離れた位置からその始端側
シール部(3X)の内縁までの位置に位置すると共に、その終端が、前記の終端側シール部(3
Y)の外縁にまで達していること、
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、包装用袋の製造段階から、その包装用袋への内容物の充填段階、その
包装体の流通段階、さらにはその包装体が消費者の手に渡って開封する段階に至るまで、
不測の開封がなされることがなく、しかも消費者が包装体の注出口領域の開封を容易かつ
失敗なく行うことのできる易開封性包装用袋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を詳細に説明する。
【0021】
(袋(1) の基本構造)
本発明の易開封性包装用袋は、表裏のシート(1A), (1B)の周縁の必要部がシールされた
袋(1) からなり、袋(1) の上部領域の一隅部は、開封時に内容物の注出口(2a)となる注出
口領域(2) に形成される。注出口領域(2) 以外の袋(1) の上辺側は開口部(6) となってお
り、その開口部(6) から内容物が充填された後、開口部(6) がシールされ、包装体となる

【0022】
なお、注出口領域(2) の注出口(2a)となる部位には、ストローを封入したり、リブ等の
保形材を設けたり、真空成型、圧空成型、エンボス加工等により膨らみをもたせておいた
りすることにより、注ぎ出し性(詰め替え性)を向上させることもできる。
【0023】
袋(1) の表裏のシート(1A), (1B)は、「基材層/シーラント層」の基本の層構成からな
り、基材層が袋(1) の外層側、シーラント層が袋(1) の内層側となる。
【0024】
基材層の例は、二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)、二軸延伸ナイロンフィルム
(ONY)、無延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、無
延伸ポリプロピレンフィルム、セルロース系フィルム、合成紙(ポリプロピレン系の多層
の合成紙等)、金属箔(アルミニウム箔(AL)等)などである。ナイロンフィルムやポ
リエステルフィルムはレーザー光を吸収しやすい樹脂であるので、基材層として特に好ま
しいフィルムである。基材層は、2層以上で構成してもよい。また基材層は、ガスバリア
性樹脂層、接着性樹脂層、アンカーコーティング層、蒸着層(金属蒸着層やセラミックス
蒸着層)、印刷層、トップコート層などを有していてもよい。基材層の厚みは、所定の強
度が得られる限りにおいて任意であるが、たとえば12〜120μm 程度とすることが多
い。
【0025】
シーラント層としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニア低密度ポリエチレン
(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合
体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合
体等のポリエチレン系樹脂;CPPと称されるポリプロピレン系樹脂;をはじめ、ヒート
シール性を有する種々の樹脂の層があげられる。シーラント層も2層以上で構成してもよ
い。シーラント層の厚みにも限定はないが、10〜250μm 程度、殊に20〜200μ
m 程度とすることが多い。
【0026】
各層間の積層は、蒸着層の形成の場合を除き、ドライラミネート法、ウエットラミネー
ト法、流延法、サンドラミネート法、共押出法、エクストルージョンコーティング法、印
刷法などの方法によりなされる。
【0027】
(袋(1) の具体的な構造)
上記の注出口領域(2) の袋周縁における上辺側および側辺側のシール部(3) のうち、開
封始端となるシール部を始端側シール部(3X)、開封終端となる側のシール部を終端側シー
ル部(3Y)と称することにする。
【0028】
(ノッチ(4) )
本発明の袋(1) にあっては、始端側シール部(3X)には開封始端となるノッチ(4) が設け
られる。このときには、図1〜2のように、始端側シール部(3X)に窪み(d) (殊に指先が
入る程度の窪み(d) )を設け、その窪み(d) の底ないし壁の部分に小さなノッチ(4) を設
けることが、引き裂きやすさの点からもデザインの点からも好ましい。ただし、窪み(d)
を設けることなく始端側シール部(3X)にノッチ(4) を設けてもよい。
【0029】
(開封補助線(5) )
さらに、上記のノッチ(4) を設置した始端側シール部(3X)の開封始端部位からは、上記
の注出口(2a)を経由して、終端側シール部(3Y)の開封終端部位に向けて、レーザー光の照
射による開封補助線(5) が袋(1) の斜め方向に設けられる。このときの「斜め方向」は、
始端側シール部(3X)が注出口領域(2) の袋周縁における上辺側および側辺側のシール部(3
) のどちらにあるかによって、「斜め下方」の場合と「斜め上方」の場合とがある。
【0030】
先にも述べたように袋(1) の表裏のシート(1A), (1B)は「基材層/シーラント層」の基
本の層構成からなり、基材層が袋(1) の外層側、シーラント層が袋(1) の内層側となるが
、レーザー光は、袋(1) の外層側となる基材層に吸収されやすく、袋(1) の内層側となる
ポリオレフィン系樹脂のようなシーラント層には吸収されにくいので、レーザー光の照射
による開封補助線(5) はハーフカット線となる。
【0031】
上記の開封補助線(5) は、両外側に位置する少なくとも各1本の長線(5L), (5L)と、そ
れら両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置する少なくとも1本の短線(5S)とで構成された
並行な線群からなる。
【0032】
少なくとも各1本の長線(5L), (5L)とは、
・一方の外側が1本で他方の外側も1本、
・一方の外側が2本で他方の外側が1本、
・一方の外側が1本で他方の外側が2本、
・一方の外側が2本で他方の外側も2本、
などを意味する。
【0033】
少なくとも1本の短線(5S)とは、1本ないし複数本を意味し、好ましくは1〜3本、な
かんずく2本が好適である。「並行な線群」とは、各線の間の間隔が実質的に同じである
線のグループを言う。各線は直線であることが好ましいが、ゆるやかな湾曲線のような曲
線とすることもできる。折れ線は適当ではない。
【0034】
そして、上記の開封補助線(5) のうちの両外側に位置する長線(5L), (5L)は、その始端
が始端側シール部(3X)の「外縁」に位置すると共に、その終端が終端側シール部(3Y)の「
外縁」にまで達しているように構成する。始端側シール部(3X)に設けられるノッチ(4) の
先端は、両外側に位置する長線(5L), (5L)の間に位置することになり、そのノッチ(4) の
先端が開封始端になるので、開封時の開封線(引き裂き線)が長線(5L), (5L)の外側には
み出すような事態は生じない。
【0035】
一方、両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置する短線(5S)は、その始端が、上記の始端
側シール部(3X)における上記のノッチ(4) の先端から2mm以上離れた位置からその始端側
シール部(3X)の内縁までの位置に位置すると共に、その終端が、上記の終端側シール部(3
Y)の外縁にまで達しているように構成する。従って、始端側シール部(3X)のノッチ(4) を
設けた部位のシール巾は、ノッチ(4) の先端から見て開封補助線(5) の形成方向に、2mm
以上となるように留意する(たとえば2〜12mm、好ましくは3〜10mmというように)

【0036】
このようにノッチ(4) の先端と短線(5S)の始端との間には若干の距離があくようにして
あるので、袋の製造からその袋への内容物の充填段階、包装体の流通段階、さらには包装
体が消費者の手に渡った段階を通して、不測の開封が防止される。一方、短線(5S)の終端
は終端側シール部(3Y)の「外縁」にまで達しているので、開封始端となるノッチ(4) から
開封をはじめたときには、長線(5L), (5L)あるいは短線(5S)のいずれかに沿って円滑な開
封がなされる。
【0037】
(袋(1) の立垂構造)
袋(1) は、立垂可能な構造にすることが好ましい。立垂可能にするための手段は任意で
あるが、典型的な手段は袋底部を底ガセット(g) に形成することである。袋(1) は、必ず
しも立垂可能でなくてもよく、ガセット形状、平袋、合掌袋などとすることもできる。
【0038】
(包装体、内容物)
上記の袋(1) には、その開口部(6) から内容物が充填され、ついでその開口部(6) がヒ
ートシールによりシールされて包装体となる。
【0039】
内容物は、袋(1) の注出口(2a)から吐出できるものであれば、低粘度の液体から高粘度
のペーストまで任意であり、粉粒体も可能である。内容物の例は、液体洗剤、シャンプー
、リンス、入浴剤、調味料、食品や飲料、ペットフード、オイル類、消臭剤、接着剤、塗
料をはじめ多岐に渡る。
【0040】
(包装用袋の製造法)
包装用袋の製造は、2丁取り方式を例にとると、
・目的とする高さの袋(1) の2つ分の高さに相当する巾を有する表裏のシートを、それ
らを重ね合わせた状態で間歇的に走行させること、
・それら表裏のシートの両脇から両シート間に袋(1) の底部となる二つ折り状のテープ
(予め袋(1) 巾で間隔にパンチ孔を形成しておいたもの)を差し込んでいくと共に、底ガ
セット用のシールバーを用いてヒートシールを行って、袋(1) にしたときの底ガセット部
分のシール部を形成していくこと(内容物を充填したときに舟底形となる)、
・また、袋(1) にしたときの両サイドを形成するためのシールバーを用いて、表裏のシ
ートの巾方向にヒートシールを行って、袋(1) にしたときの両サイドのシール部を形成し
ていくこと、
続いて、これらのシール部に対して、切り離し、トリミングまたは打ち抜きを行うと共
に、表裏のシートの走行方向の中央線に沿ってカットすることにより、個々の袋(1) とな
すこと、
によりなされる。
【実施例】
【0041】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。
【0042】
(実施例1)
図1は、本発明の包装用袋の一例を示した正面図である。
図2は、図1の包装用袋の注出口領域(2) の拡大図である。
【0043】
基材層として、「厚み15μm の二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)/印刷層」の層
構成のシートと、「厚み12μm の二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)/アルミニ
ウム蒸着層」の層構成のシートとを用い、これらのシートを接着剤層を介して貼り合わせ
ることにより、「二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)/印刷層/接着剤層/アルミニウ
ム蒸着層/二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)」の層構成を有する厚み約30μm
の基材層を準備した。次に、この基材層に、シーラント層としての厚み140μm の直鎖
状低密度ポリエチレン層をドライラミネーション法によりラミネートすることにより、「
基材層/シーラント層」からなる長尺のシートを得た。
【0044】
上記で得た長尺のシートを半切(シート巾の半分に裁断)すると共に、それらの半切シ
ートの内面側を合わせてから、その合わせたシートの表裏の相対応する所定の部位にレー
ザー光を照射して、後述のような開封補助線(5) を形成させた。また、上記で得た別の長
尺のシートを所定の巾に裁断すると共に「く」の字形に折り込むことにより、底ガセット
(g) 形成用のテープを作製した。
【0045】
ついで、上記の開封補助線(5) 形成済みのシートと底ガセット形成用のテープとを用い
て、常法に従って、製袋、必要部へのヒートシール、個々の袋へのカッティングおよびト
リミングを行うことにより、図1に示した包装用袋の多数個を作製した。各袋(1) の寸法
は、高さが200mmで巾が140mmである。図1にハッチングで示した箇所はヒートシー
ル部である。
【0046】
この実施例1の袋(1) は表裏のフィルム(1A), (1B)で構成され、袋(1) の底部は立垂可
能なように底ガセット(g) に構成されている。フィルム(1A), (1B)および底ガセット(g)
形成用のフィルムは、先に述べた「基材層/シーラント層」の層構成を有するシートから
なる。
【0047】
図1において、袋(1) の上部領域の一隅部(円で囲んだ箇所)が注出口領域(2) であり
、この部分が開封時には内容物の注出口(2a)となる。
【0048】
この実施例1においては、注出口領域(2) の袋周縁におけるシール部(3) のうち、上辺
側のシール部が始端側シール部(3X)、側辺側のシール部が終端側シール部(3Y)になってい
る。そして、始端側シール部(3X)には指先が入る程度の窪み(d) を設け、その窪み(d) の
底の部分の1隅に小さなノッチ(4) を設けてある。このノッチ(4) が開封始端となる。
【0049】
上記のノッチ(4) を設置した上辺側の始端側シール部(3X)の開封始端部位からは、注出
口(2a)となる部位を経由して、側辺側の終端側シール部(3Y)の開封終端部位に向けて、開
封補助線(5) が袋(1) の斜め下方に設けられている(表のフィルム(1A)のみならず、裏の
フィルム(1B)の対応する箇所にも設けてある)。この開封補助線(5) は計4線の平行な線
群(直線群)からなり、両外側は長線(5L), (5L)で、内側の2つの線は短線(5S), (5S)で
構成されている。これらの4つの線は、いずれもレーザー光の照射により形成されたハー
フカット線である。
【0050】
なお、この実施例1においては、始端側シール部(3X)のノッチ(4) を設けた部位のシー
ル巾は、ノッチ(4) の先端から見て開封補助線(5) の形成方向に5mm(図2のシール巾w
が5mm)になるように設定してある。
【0051】
このうち両外側に位置する長線(5L), (5L)は、その始端が始端側シール部(3X)の外縁に
位置すると共に、その終端が終端側シール部(3Y)の外縁にまで達しており、それらの間に
ノッチ(4) の先端が位置している。そして、これらの長線(5L), (5L)の内側に位置する2
本の短線(5S), (5S)は、その始端が始端側シール部(3X)の内縁に位置すると共に、その終
端が終端側シール部(3Y)の外縁にまで達している。つまり、始端側シール部(3X)のゾーン
内には短線(5S), (5S)は存在しないので、ノッチ(4) の先端からの引き裂き線が不測に伝
播することがないようになっている。
【0052】
図1〜2の易開封性袋の多数個にその開口部(6) から内容物の一例としてのシャンプー
(実際にはシャンプーと同等の粘性を与えた水を使用)を430ml宛充填した後、開口部
(6) をヒートシールして包装体となした。包装体の表面の注出口領域(2) の4線の開封補
助線(5) 上には、引き裂き方向を示す矢印を印刷してあり、裏面には詰め替え方が注意書
きしてある。
【0053】
この包装体をモニターに手渡すと共に、その場で1個限りの開封をしてもらった。モニ
ターは、10代から60代までの計30名の男女とし、各人には1個の包装体を手渡して
単に「この窪みのところから開封して下さい」と述べただけで、どのように開封するかに
ついての詳しい説明はしなかった。
【0054】
説明が不十分でありかつ各人につき1回限りの開封試験であるにもかかわらず、ノッチ
(4) を始端とする引き裂き試験の結果は良好であった。表裏のフィルム(1A), (1B)の引き
裂き線が注出口(2a)上を通るときにややずれるケースが全体の数例あったが、その場合で
も引き裂き線は開封補助線(5) 内にとどまっており、円滑開封に問題を生ずるほどの引き
裂きずれは認められなかった。
【0055】
(実施例2)
図3は、本発明の包装用袋の他の一例を示した注出口領域(2) の拡大図である。
この実施例2においては、始端側シール部(3X)のノッチ(4) を設けた部位のシール巾は
、実施例1と同じくノッチ(4) の先端から見て開封補助線(5) の形成方向に5mm(図2の
シール巾wが5mm)になるように設定してあるが、両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置
する短線(5S)の始端が、図3のように始端側シール部(3X)の内縁から外縁に向けて2mm入
り込んだ位置(ノッチ(4) 先端から内縁に向けて3mm入り込んだ位置)から斜め下方に向
けてはじまるようにしてある。そして、この実施例2においても、ノッチ(4) の先端から
の引き裂き線が不測に伝播することがないようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の易開封性包装用袋は、液体洗剤、シャンプー、調味料などを他の容器に円滑に
詰め替える目的に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の包装用袋の一例を示した正面図である。
【図2】図1の包装用袋の注出口領域(2) の拡大図である。
【図3】本発明の包装用袋の他の一例を示した注出口領域(2) の拡大図である。
【符号の説明】
【0058】
(1) …袋、
(1A), (1B)…表裏のシート、
(2) …注出口領域、
(2a)…注出口、
(3) …シール部、
(3X)…始端側シール部、 (3Y) …終端側シール部、
(4) …ノッチ、
(5) …開封補助線、
(5L)…長線、 (5S) …短線、
(6) …開口部
(d) …窪み、
(g) …底ガセット、
(w) …シール巾



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏のシート(1A), (1B)の周縁の必要部がシールされた袋(1) であって、該袋(1) の上
部領域の一隅部は、開封時に内容物の注出口(2a)となる注出口領域(2) に形成されている
こと、
その注出口領域(2) の袋周縁における上辺側および側辺側のシール部(3) のうち、開封
始端となるシール部を始端側シール部(3X)、開封終端となる側のシール部を終端側シール
部(3Y)とするとき、前記の始端側シール部(3X)には開封始端となるノッチ(4) が設けられ
ていること、
さらに、前記のノッチ(4) を設置した前記の始端側シール部(3X)の開封始端部位からは
、前記の注出口(2a)を経由して、前記の終端側シール部(3Y)の開封終端部位に向けて、レ
ーザー光の照射による開封補助線(5) が袋(1) の斜め方向に設けられていること、
ここで、前記の開封補助線(5) は、両外側に位置する少なくとも各1本の長線(5L), (5
L)と、それら両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置する少なくとも1本の短線(5S)とで構
成された並行な線群からなること、
そして、両外側に位置する長線(5L), (5L)は、その始端が前記の始端側シール部(3X)の
外縁に位置すると共に、その終端が前記の終端側シール部(3Y)の外縁にまで達しているこ
と、
一方、両外側の長線(5L), (5L)の内側に位置する短線(5S)は、その始端が、前記の始端
側シール部(3X)における前記のノッチ(4) の先端から2mm以上離れた位置からその始端側
シール部(3X)の内縁までの位置に位置すると共に、その終端が、前記の終端側シール部(3
Y)の外縁にまで達していること、
を特徴とする易開封性包装用袋。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−246174(P2011−246174A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122333(P2010−122333)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(390033868)株式会社メイワパックス (27)
【Fターム(参考)】