説明

映像伝送システム

【課題】一の伝送線路から他の伝送線路への映像信号の回り込みを防ぎつつ消費電力を低減する。
【解決手段】各々の伝送線路Lsから映像信号受信部12をみたインピーダンス及びアンプ18aから各々の伝送線路Lsをみたインピーダンスが何れも2つの抵抗Riの合成抵抗値となる。しかも、当該インピーダンスが映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスと同等であるため、送信時及び受信時の何れにおいても伝送線路Lsとのインピーダンスを整合することができる。故に一の伝送線路Lsを介して伝送される映像信号が復調部13に伝送されずに他の伝送線路Lsに回り込むことを防いで映像信号を効率的に伝送できるとともに、反転増幅器とアンプ18aを択一的に動作させるから消費電力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送線路を介して映像信号を送信する複数の端末器と、各端末器から送信される映像信号を受信して映像を表示する親機とを備え、それぞれに端末器が接続された複数の伝送線路が親機に接続されてなる映像伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の映像伝送システムとして、例えば、住戸外に設置されたカメラ付きのドアホン子器と、住戸内に設置されたモニタ付のインターホン親機(以下、「親機」と呼ぶ。)とが平衡2線式の伝送線路で接続され、ドアホン子器のカメラで撮像された映像が伝送線路を介して親機に伝送され、親機が具備するモニタに映像が表示されるようにしたテレビインターホンシステムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている従来例では、通話機能を有するドアホン子器だけでなく、通話機能を有さない端末器(カメラ装置)も伝送線路を介して親機に接続でき、ドアホン子器やカメラ装置を含む複数台の端末器が親機に対して伝送線路を介して送り接続される。但し、伝送線路で複数台の端末器を送り接続する配線形態においては、個々の端末器から送信する映像信号が衝突しないようにCSMA(キャリア検知多重接続)方式やTDMA(時分割多重接続)方式などのデータ伝送方式が採用される。
【0003】
ところで、複数台の端末器を親機に接続する場合、上述のように共通の伝送線路に送り接続する配線形態だけでなく、互いに異なる伝送線路を介して複数台の端末器を親機に接続する配線形態が存在する。かかる後者の配線形態においては、それぞれに伝送線路が接続される複数の接続端子と、これら複数の接続端子に共通接続されて各端末器から送信される映像信号を復調する復調回路とが親機に設けられる。ここで、端末器から親機へ映像信号を効率的に伝送するためには、伝送線路から親機の接続端子をみたインピーダンス(親機の入力インピーダンス)を、映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスよりも十分に高いインピーダンスとする必要がある。しかしながら、複数の接続端子からそれぞれ復調回路に至る複数の映像信号伝送路が途中で接続されて、その接続点から復調回路への共通の映像信号伝送路上に、上述の親機の入力インピーダンスを共通のインピーダンス素子として設ける場合、複数の接続端子のうちの一つから前記共通のインピーダンス素子に至る以前に、映像信号が複数の接続端子のうちの他の一つに回り込んでしまい、親機の表示手段で表示する映像の画質が劣化してしまう虞があった。
【0004】
これに対して本出願人は、一の伝送線路から他の伝送線路への映像信号の回り込みを防いだ映像伝送システムを既に提案している(特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載されている映像伝送システム(テレビインターシステム)は、図3に示すように住戸外に設置される複数台の端末器(カメラ付きドアホン子器又はカメラ装置)2と、これら複数台の端末器2と平衡2線式の伝送線路Lsを介して接続され且つ住戸内に設置される親機(インターホン親機)1と、同じく住戸内に設置されて平衡2線式の伝送線路Lsを介して親機1と接続された1乃至複数台の副親機3とを備えている。
【0006】
端末器2は、個体撮像素子やレンズ等の光学系を有するカメラ部20と、カメラ部20から出力する映像信号をディジタル信号に変換するとともにディジタルの映像信号を周波数シフトキーイングや位相シフトキーイングなどの変調方式で変調する変調部21と、変調された映像信号(以下、単に「映像信号」と呼ぶ。)を伝送線路Lsを介して親機1に送信する映像信号送信部22と、伝送線路Lsを介して親機1から送信される制御信号(後述する)を受信する制御信号受信部23と、CPUを主構成要素とし制御信号に基づく送信処理等を行う制御部24とを備えている。但し、端末器2がカメラ付きドアホン子器の場合は、親機1との間で伝送線路Lsを介したインターホン通話を実現するためにマイクロホンやスピーカ、音声信号の送受信手段、呼出信号の送信手段等を具備する必要があるが、このような構成を有するカメラ付きドアホン子器については従来周知であるから詳細な構成に関する図示並びに説明を省略する。
【0007】
伝送線路Lsは一対の接続端子25に接続されており、平衡−不平衡変換用の結合トランス26を介して映像信号送信部22と制御信号受信部23が接続端子25に接続されており、1乃至複数台の端末器2が伝送線路Lsに送り接続されている。また、制御信号受信部23の入力端が直流カット用のコンデンサC2並びにアンプAmpを介して結合トランス26と接続されている。
【0008】
映像信号送信部22は、映像信号を増幅するアンプ22aと、ベースがアンプ22aの出力端に接続されるとともにコレクタが抵抗R1を介してグランドに接地されたnpn型のバイポーラトランジスタ22bと、このトランジスタ22bのコレクタと制御電源Vccとの間に挿入されたインダクタL1とを具備し、トランジスタ22bのコレクタが直流カット用のコンデンサC1を介して結合トランス26に接続されて構成されている。ここで、映像信号の伝送周波数帯域におけるインダクタL1のインピーダンスが伝送線路Lsの特性インピーダンスよりも十分高い値に設定されており、伝送線路Lsからみた映像信号送信部22の出力インピーダンスが伝送線路Lsの特性インピーダンスよりも十分高くなるので、上述のように一の伝送線路Lsに複数の端末器2を送り接続しても映像信号の伝送損失が抑えられるから画質劣化がほとんど生じない映像伝送が可能となる。
【0009】
また、接続端子25にはスイッチSWを介して終端部27が接続されている。この終端部27は伝送線路Lsの特性インピーダンスに等しいインピーダンスを有し、自器が伝送線路Lsの末端に存在する場合にスイッチSWを閉成して伝送線路Lsを終端することで伝送線路Lsの末端における映像信号の反射を防ぐものである。但し、端末器2が必ずしも終端部27を具備する必要はなく、端末器2と別体に構成された終端器を伝送線路Lsに接続して終端するようにしても構わない。
【0010】
親機1は、CPUを主構成要素とする制御部10と、制御部10から与えられる制御データに基づき伝送線路Lsを介して端末器2に制御信号を送信する制御信号送信部11と、伝送線路Lsを介して伝送される映像信号を受信する映像信号受信部12と、映像信号受信部12で受信した映像信号を復調する復調部13と、復調部13で復調された映像信号によって映像を表示するモニタ部14と、映像信号受信部12で受信した映像信号を伝送線路Lsを介して副親機3に送信(中継)する映像信号送信部15と、それぞれに伝送線路Lsを介して1乃至複数台の端末器2が接続される複数対(図示例では2対)の接続端子16,16と、伝送線路Lsと制御信号送信部11及び映像信号受信部12との間で線路の平衡−不平衡変換を行う複数(図示例では2つ)の結合トランス17,17とを備えている。但し、カメラ付きドアホン子器からなる端末器2並びに副親機3との間でインターホン通話を行うためのマイクロホンやスピーカ、音声信号の送受信手段、呼出信号の受信手段等については、従来周知であるから図示並びに説明を省略する。
【0011】
また、制御信号送信部11の出力端がアンプ18aの入力端に接続されるとともに、アンプ18aの出力端がそれぞれ抵抗R2,R3を介して結合トランス17,17と接続されている。ここで、抵抗R2,R3の抵抗値は接続端子16からみた伝送線路Lsおよび複数の端末器2の等価インピーダンス値と等しい値に設定されている。さらに、映像信号受信部12が制御信号送信部11と並列に結合トランス17,17と接続されている。ところで、この従来例では複数台の端末器2を伝送線路Lsに送り接続し、各端末器2から送信される映像信号の衝突を回避するために時分割多重伝送方式を採用しており、親機1から伝送線路Lsを介して伝送する制御信号(同期信号)によって規定される複数のタイムスロットに複数台の端末器2を個別に割り当て、各端末器2が自器に割り当てられたタイムスロットで映像信号を送信している。従って、親機1では複数台の端末器2から並行して映像信号を受信することが可能であり、複数台の端末器2から送信された複数の映像を画面分割によって同時にモニタ部14に表示させることができる。但し、時分割多重伝送の詳細については従来周知であるから説明を省略する。
【0012】
ここで、互いに異なる伝送線路Lsを介して複数台の端末器2を親機1に接続する配線形態においては、それぞれに伝送線路Lsが接続される複数の接続端子16,16と、これら複数の接続端子16,16に共通接続されて各端末器2から送信される映像信号を復調する復調部13とが親機1に設けられ、端末器2から親機1へ映像信号を効率的に伝送するために、映像信号受信部12のインピーダンスを、映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスよりも十分に高いインピーダンスとする必要がある。一方、接続端子16,16から復調部13をみたインピーダンス(復調部13の入力インピーダンス)が親機1の入力インピーダンスよりも高いと、片方の接続端子16を通過した映像信号が復調部13に伝送されずにもう片方の接続端子16に回り込んでしまう虞がある。
【0013】
そこで特許文献2に記載されている従来例の親機1では、一端が互いに異なる伝送線路Lsにそれぞれ接続され且つ映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスよりも十分に高いインピーダンスを持った複数(図示例では2つ)のインピーダンス素子(抵抗)R4,R5と、複数の抵抗R4,R5の他端が反転入力端子に接続されるとともに非反転入力端子がグランドに接地されてなる反転増幅器(オペアンプOP及び帰還抵抗RF)とで構成された加算回路を映像信号受信部12としている。但し、各端末器2からの映像信号は時分割多重伝送されるので、異なる端末器2の映像信号が映像信号受信部12において加算されるわけではない。
【0014】
而して、各々の伝送線路Lsから映像信号受信部12をみたインピーダンス(抵抗R4,R5の抵抗値)が映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスよりも高くなっているために映像信号が効率よく伝送できる。しかも、親機1の映像信号受信部12が加算回路で構成されているために抵抗R4,R5から反転増幅器への入力インピーダンスが伝送線路Lsの特性インピーダンスよりも低くなるから、一の伝送線路Lsを介して伝送される映像信号が復調部13に伝送されずに他の伝送線路Lsに回り込むことを防ぎ、その結果、親機1のモニタ部14で表示される映像の画質劣化が防止できるものである。
【特許文献1】特許3246353号公報
【特許文献2】特開2008−28567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献2に記載されている従来例では、アンプ18aを常時動作させることでアンプ18aの出力インピーダンスを低く保つ必要があるために消費電力が増大してしまうという問題があった。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、一の伝送線路から他の伝送線路への映像信号の回り込みを防ぎつつ消費電力を低減することができる映像伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、伝送線路を介して映像信号を送信する複数の端末器と、各端末器から送信される映像信号を受信して映像を表示する親機とを備え、それぞれに端末器が接続された複数の伝送線路が親機に接続されてなる映像伝送システムであって、端末器は、撮像手段と、撮像手段で撮像した映像を変調する変調手段と、変調手段で変調された映像信号を伝送線路を介して送信する送信手段と、親機から送信される映像信号と異なる別の制御信号を伝送線路を介して受信する受信手段とを有し、親機は、複数の伝送線路を介して伝送される映像信号を受信する受信手段と、受信手段で受信した映像信号を復調する復調手段と、復調された映像を表示する表示手段と、複数の伝送路を介して前記別の信号を送信する送信手段と、受信手段並びに送信手段を制御する制御手段とを有し、親機の受信手段は、一端が互いに異なる伝送線路にそれぞれ接続され且つ映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを持った複数のインピーダンス素子と、当該複数のインピーダンス素子の他端が反転入力端子に並列接続されるとともに非反転入力端子がグランドに接地されてなる反転増幅器とを備えて構成された加算回路からなり、親機の送信手段は、反転増幅器の反転入力端子と前記複数のインピーダンス素子との接続点に出力端子が接続されてなり、親機の制御手段は、前記別の信号を送信するときは送信手段の増幅器を動作させるとともに受信手段の反転増幅器を停止させ、映像信号を受信するときは受信手段の反転増幅器を動作させるとともに送信手段の増幅器を停止させることを特徴とする。
【0018】
請求項1の発明によれば、映像信号の受信時には送信手段の増幅器が停止するから、映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを持ったインピーダンス素子が伝送線路から見た入力インピーダンスとして機能してインピーダンスを整合することができ、また、別の信号の送信時には受信手段の反転増幅器が停止するから、インピーダンス素子が送信手段の出力インピーダンスとして機能してインピーダンスを整合することができる。故に、一の伝送線路から他の伝送線路への映像信号の回り込みを防ぐことができるとともに、受信手段の反転増幅器と送信手段の増幅器を択一的に動作させることで消費電力を低減することができる。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、親機は、複数の伝送線路と反転増幅器との間に挿入される平衡−不平衡変換用の結合トランスを有し、結合トランスと各伝送線路との間に前記インピーダンス素子が挿入されていることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明によれば、複数の伝送線路に対して結合トランスを共用することで回路規模の小型化が図れる。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、親機は、結合トランスと反転増幅器及び増幅器との間に映像信号と前記別の信号とを周波数多重し且つ周波数分離する多重分離部が挿入され、多重分離部のインピーダンスは、映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスよりも低く設定されることを特徴とする。
【0022】
請求項3の発明によれば、複数の伝送線路に対して多重分離部を共用することで回路規模の小型化が図れる。
【0023】
請求項4の発明は、上記目的を達成するために、請求項1〜3記載の映像伝送システムにおいて、親機の受信手段は、加算回路に代えて、一端が伝送線路に接続されるとともに映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを持ったインピーダンス素子と、バイポーラトランジスタのエミッタにインピーダンス素子の他端が接続されるとともに当該バイポーラトランジスタのベースがグランドに接地されてなるベース接地型の増幅回路とを有することを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明によれば、ベース接地型の増幅回路の入力インピーダンスは非常に低いため、映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを持ったインピーダンス素子が伝送線路から見た入力インピーダンスとして機能してインピーダンスを整合することができる。故に、一の伝送線路から他の伝送線路への映像信号の回り込みを防ぐことができるとともに、映像信号の受信時に送信手段の増幅器を停止させることで消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、一の伝送線路から他の伝送線路への映像信号の回り込みを防ぐことができるとともに、受信手段の反転増幅器と送信手段の増幅器を択一的に動作させることで消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図3に示した従来例と同様にテレビインターホンシステムに本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、本実施形態の基本構成は図3に示した従来例と共通であるから、この従来例と共通の構成要素については同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0027】
(実施形態1)
本実施形態における親機1では、結合トランス17の一方の巻線の両端に各々インピーダンス素子たる抵抗Riを介して複数対(図示例では2対)の接続端子16,16が並列接続されるとともに、結合トランス17の他方の巻線の一端がグランドに接地され、且つ他方の巻線の他端が多重分離部Fを介してオペアンプOPの反転入力端子とアンプ18aの出力端子とに並列接続されており、オペアンプOPと帰還抵抗RFからなる反転増幅器と複数(図示例では4つ)の抵抗Riによって映像信号受信部12が構成されている。尚、抵抗Riの抵抗値は、1組の接続端子16,16に接続されている2個の抵抗Riの合成抵抗が映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスと同等のインピーダンスとなる値に設定される。
【0028】
多重分離部Fは、インダクタLとコンデンサCの直列共振回路で構成されており、その共振周波数が映像信号の伝送周波数帯域と一致するようにインダクタL及びコンデンサCの定数(インダクタンス値並びに静電容量値)が設定されている。
【0029】
次に、本実施形態における親機1の送受信動作について説明する。
【0030】
親機1の制御部10は、制御信号送信部11から制御信号を送信する際、送信側のアンプ18aを動作させるとともに受信側の反転増幅器を停止する。このとき、アンプ18aの出力インピーダンスが低いために一対の抵抗Riがアンプ18aの出力インピーダンスとして機能して伝送線路Lsとのインピーダンス整合をとることができる。一方、伝送線路Lsを介して伝送される映像信号を受信する際、親機1の制御部10は、受信側の反転増幅器を動作させるとともに送信側のアンプ18aを停止する。このとき、反転増幅器の入力インピーダンスが低いために一対の抵抗Riが映像信号受信部12の入力インピーダンスとして機能して伝送線路Lsとのインピーダンス整合をとることができる。
【0031】
而して、各々の伝送線路Lsから映像信号受信部12をみたインピーダンス及びアンプ18aから各々の伝送線路Lsをみたインピーダンスが何れも2つの抵抗Riの合成抵抗値となり、しかも、当該インピーダンスが映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスと同等であるため、送信時及び受信時の何れにおいても伝送線路Lsとのインピーダンスを整合することが可能である。よって、一の伝送線路Lsを介して伝送される映像信号が復調部13に伝送されずに他の伝送線路Lsに回り込むことを防いで映像信号を効率的に伝送できるとともに、反転増幅器とアンプ18aを択一的に動作させるから、図3に示した従来例と比較して消費電力を低減することができる。また、本実施形態では結合トランス17と多重分離部Fを複数の伝送線路Lsに対して共用しているため、各伝送線路Ls毎に結合トランス17を設けている従来例と比較して回路規模を低減して小型化が図れるという利点がある。さらに、抵抗Riから結合トランス17をみたときのインピーダンスが相対的に低くなるため、伝送線路Lsに接続される端末器2の台数による信号レベルの変動やインピーダンスの不整合が生じないため、安定した信号伝送が可能になるという利点もある。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態は、親機1における映像信号受信部12’の構成に特徴があり、その他の構成については実施形態1並びに図3に示した従来例と共通である。従って、共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0033】
本実施形態における映像信号受信部12’は、図2に示すように映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスと同等のインピーダンスを有するインピーダンス素子(抵抗Ri)と、結合トランス17を介して抵抗Riと接続されたベース接地型の増幅回路APとで構成されている。
【0034】
増幅回路APは、直流阻止用のコンデンサC1を介してベース接地されたバイポーラトランジスタQと、バイポーラトランジスタQのコレクタと制御電源Vccとの間に挿入されたコレクタ抵抗Rcと、バイポーラトランジスタQのエミッタとグランドとの間に挿入されたエミッタ抵抗(入力抵抗)Reと、バイポーラトランジスタQのベース−コレクタ間及びベース−エミッタ間にそれぞれ挿入されたバイアス抵抗Rx,Rxとを有している。
【0035】
而して、ベース接地型のトランジスタ増幅回路は入力インピーダンスが非常に低いことを特徴としているので、各々の伝送線路Lsから映像信号受信部12’をみたインピーダンスが2つの抵抗Riの合成抵抗値となり、しかも、当該インピーダンスが映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路Lsの特性インピーダンスと同等であるために伝送線路Lsとのインピーダンスを整合することが可能である。よって、一の伝送線路Lsを介して伝送される映像信号が復調部13に伝送されずに他の伝送線路Lsに回り込むことを防いで映像信号を効率的に伝送できるとともに、ベース接地型の増幅回路とアンプ18aを択一的に動作させることで消費電力を低減することができる。しかも、実施形態1のオペアンプOPによる加算回路の構成と比較して、ディスクリートのバイポーラトランジスタで映像信号受信回路12’を構成することが可能となってコストダウンが図れるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態1を示す一部省略したシステム構成図である。
【図2】本発明の実施形態2を示す一部省略したシステム構成図である。
【図3】従来例を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 親機
2 端末器
10 制御部(制御手段)
11 制御信号送信部(送信手段)
12 映像信号受信部(受信手段)
13 復調部(復調手段)
Ls 伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線路を介して映像信号を送信する複数の端末器と、各端末器から送信される映像信号を受信して映像を表示する親機とを備え、それぞれに端末器が接続された複数の伝送線路が親機に接続されてなる映像伝送システムであって、
端末器は、撮像手段と、撮像手段で撮像した映像を変調する変調手段と、変調手段で変調された映像信号を伝送線路を介して送信する送信手段と、親機から送信される映像信号と異なる別の制御信号を伝送線路を介して受信する受信手段とを有し、
親機は、複数の伝送線路を介して伝送される映像信号を受信する受信手段と、受信手段で受信した映像信号を復調する復調手段と、復調された映像を表示する表示手段と、複数の伝送路を介して前記別の信号を送信する送信手段と、受信手段並びに送信手段を制御する制御手段とを有し、
親機の受信手段は、一端が互いに異なる伝送線路にそれぞれ接続され且つ映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを持った複数のインピーダンス素子と、当該複数のインピーダンス素子の他端が反転入力端子に並列接続されるとともに非反転入力端子がグランドに接地されてなる反転増幅器とを備えて構成された加算回路からなり、
親機の送信手段は、反転増幅器の反転入力端子と前記複数のインピーダンス素子との接続点に出力端子が接続されてなり、
親機の制御手段は、前記別の信号を送信するときは送信手段の増幅器を動作させるとともに受信手段の反転増幅器を停止させ、映像信号を受信するときは受信手段の反転増幅器を動作させるとともに送信手段の増幅器を停止させることを特徴とする映像伝送システム。
【請求項2】
親機は、複数の伝送線路と反転増幅器との間に挿入される平衡−不平衡変換用の結合トランスを有し、結合トランスと各伝送線路との間に前記インピーダンス素子が挿入されていることを特徴とする請求項1記載の映像伝送システム。
【請求項3】
親機は、結合トランスと反転増幅器及び増幅器との間に映像信号と前記別の信号とを周波数多重し且つ周波数分離する多重分離部が挿入され、多重分離部のインピーダンスは、映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスよりも低く設定されることを特徴とする請求項2記載の映像伝送システム。
【請求項4】
請求項1〜3記載の映像伝送システムにおいて、親機の受信手段は、加算回路に代えて、一端が伝送線路に接続されるとともに映像信号の伝送周波数帯域において伝送線路の特性インピーダンスと同等のインピーダンスを持ったインピーダンス素子と、バイポーラトランジスタのエミッタにインピーダンス素子の他端が接続されるとともに当該バイポーラトランジスタのベースがグランドに接地されてなるベース接地型の増幅回路とを有することを特徴とする映像伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−303054(P2009−303054A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156959(P2008−156959)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】