説明

映像伝送システム

【課題】 高解像度の映像や3D映像を伝送、蓄積、再生することを可能にする。
【解決手段】 本発明は、映像送信側のシステムにおいて、映像信号源から入力された映像信号をエンコードした伝送対象のフレームデータを映像受信側のシステムに送信し、映像受信側のシステムは、受信したフレームデータをデコードし、同期信号発生源から入力された同期信号に基づいてデコードし、伝送対象のフレームデータを識別できる情報を該フレームデータに重畳させ、重畳された情報に基づいてタイミングを合わせてフレームデータを再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像伝送システムに係り、特に、複数の映像伝送装置を同期させ、複数の映像情報を同時にかつ同期して伝送する映像伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
3D映像は、左右眼のステレオ映像を2つの独立した映像として扱い、これらの映像の処理を同期させることで録画保存、再生、伝送が可能になる。また、超高解像度の映像を扱う場合にも、その映像を領域分割し、複数の同期した映像として扱うことで、録画保存、再生、伝送が可能になる。
【0003】
一つの映像伝送装置で伝送可能な映像よりも大きい解像度を持つ映像を伝送するには、一つの映像伝送装置で伝送可能な映像解像度になるように伝送対象の映像を領域分割し、複数の映像伝送装置を用いて並列に伝送することで対応可能になる。ただし、それぞれの映像伝送装置で映像処理を同時に行う必要があり、特に映像受信装置は伸張した映像をすべての装置で同期して出力することが必須である。
【0004】
また、通信網としてIP網のような非同期伝送路を用いる場合には、各映像伝送装置間の伝送遅延時間が異なるため、映像送信装置の入力の段階での映像の同期状態を映像受信装置の出力で再現しなければならない。しかし、従来の映像伝送装置を複数台用意して伝送する場合、通信路上での伝送遅延の差や、それぞれの伝送装置内のクロック精度の差などから、出力映像は同期がずれてしまう。そのため、複数の映像受信装置の映像出力の時点で、こうした同期ずれを補正する必要がある。
【0005】
このための方法として、複数装置間の同期をシステムクロック精度で同期をとる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、映像情報,すなわち映像フレームデータの中にフレーム番号などの同期情報を重畳して同期を図る技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−174632号広報
【特許文献2】特開2003−299046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のフレーム番号情報を映像信号に置き換える方法(特許文献1)は、画質が劣化したり、適用システムが制限されるなどの課題がある。
【0009】
特許文献1の技術では、複数装置間の同期をシステムクロック精度で同期をとることを目的としている。このため、装置間は専用同期線で接続する必要があり、各スレーブ装置内にはクロック補正のためのPLL回路が必要である。
【0010】
また、特許文献2の技術は、映像フレームデータの中にフレーム番号などの同期情報を重畳して同期を図るものであり、これは伝送する映像そのものが変化しており、純粋な映像伝送を行うことができない。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、高解像度の映像や3D映像を伝送、蓄積、再生することが可能な伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題を解決するため、本発明(請求項1)は、1つの映像を分割して、複数の映像伝送装置を用いて並列に伝送、蓄積、再生を行う映像伝送システムであって、
映像送信側のシステムは、
同期した映像信号を出力する複数の映像信号源と、
前記映像信号源から入力された前記映像信号について、エンコードし、伝送対象のフレームデータを識別できる情報を該フレームデータに重畳し、伝送対象のフレームデータを映像受信側のシステムに送信する複数の映像送信装置と、
を有し、
前記映像受信側のシステムは、
前記映像送信装置から前記フレームデータを受信してデコードし、伝送対象のフレームデータを識別できる情報を該フレームデータから検知する複数の映像受信装置と、
前記映像受信装置でデコードされた前記フレームデータに重畳された前記情報と外部から入力される同期信号に基づいて該フレームデータを再生する映像再生装置と、
を有する。
【0013】
また、本発明(請求項2)は、前記映像送信側のシステムから前記映像受信側のシステムに同期リアルタイム映像伝送を行う際に、
前記複数の映像送信装置のうち、マスタホストAとなる映像送信装置は、
前記映像信号源から入力された前記映像信号のフレーム番号を、該マスタホストA以外の映像送信装置(スレーブホストA)に通知すると共に該映像信号をエンコードする手段と、を含み、
前記スレーブホストAは、
前記マスタホストAから受信したフレーム番号と、自身が受信した映像信号のフレーム番号を比較し、同期がとれていることを確認し、該映像信号をエンコードする手段を含み、
前記複数の映像受信装置のうち、マスタホストBとなる映像受信装置は、
前記映像送信装置から受信したデコード対象のフレームデータのフレーム番号を、当該マスタホストB以外の映像受信装置(スレーブホストB)に通知する手段と、
前記スレーブホストBからフレームデータ受信完了の通知を取得すると、デコード開始要求を該フレーブホストBに通知し、デコードを行う手段と、
を含み、
前記スレーブホストBは、
前記マスタホストBから通知されたデコード対象のフレームデータのフレーム番号と、現在受信しているフレームデータのフレーム番号を比較し、同期が取れているかを判定し、該フレームデータの受信が完了した場合には、該マスタホストBに通知する手段と、
前記マスタホストBから前記デコード開始要求を受信すると、デコードを開始し、前記外部からの同期信号に基づいてデコードされたフレームデータを出力する手段と、を含む。
【0014】
また、本発明(請求項3)は、前記映像送信装置において、
前記映像受信装置に送信する前記映像信号のパケットに、
フレーム番号認識のためのタイムコード、現在のフレームを構成するパケットの総数、自身のパケット番号をヘッダに設定して送信する手段を含む。
【0015】
また、本発明(請求項4)は、同期録画ファイルを保存する際に、
前記映像送信側のシステムは、
エンコードされた映像データを格納する映像蓄積サーバを更に有し、
前記複数の映像送信装置のうち、マスタホストとなる映像送信装置は、
録画開始要求が入力されると、対象映像フレームを受信し、該マスタホストA以外の映像送信装置(スレーブホストA)に対してフレーム番号を通知する手段と、
対象映像フレームの受信が完了したらエンコードを行い、同期映像同士を識別するための映像識別番号を付与して前記映像蓄積サーバにファイルを書き出す手段と、
を含み、
前記スレーブホストAは、
前記マスタホストAから前記フレーム番号を受信すると、自身が受信している映像信号のフレーム番号と比較して、通知された前記フレーム番号との同期を確認し、該映像信号のエンコードを行い、同期映像同士を識別するための映像識別番号を付与して、前記映像蓄積サーバにファイルを書き出す手段を含む。
【0016】
また、本発明(請求項5)は、同期録画ファイルの配信及び再生を行う際に、
前記映像送信側のシステムは、
エンコードされた映像データを格納する映像蓄積サーバを更に有し、
前記複数の映像送信装置のうち、マスタホストAとなる映像送信装置は、
前記映像蓄積サーバに格納されている対象映像フレームの伝送指示が入力されると、指定された映像フレームの番号を、マスタホストA以外の映像送信装置(スレーブホストA)に対象フレーム番号を通知する手段と、
前記対象映像フレームを前記映像蓄積サーバから読み出して前記映像受信装置に送信する手段と、
を含み、
前記スレーブホストAは、
前記マスタホストAから通知された前記対象フレーム番号に基づいて、前記映像蓄積サーバから対象映像フレームを読み出して前記映像受信装置に送信する手段を含み、
前記映像受信装置のうち、マスタホストBとなる映像受信装置は、
受信したデコード対象のフレームデータのフレーム番号をマスタホストB以外の映像受信装置に通知する手段と、
前記マスタホストB以外の映像受信装置(スレーブホストB)からフレームデータ受信完了の通知を取得すると、デコード開始要求を該フレーブホストBに通知し、デコードを行う手段と、
を含み、
前記スレーブホストBは、
前記マスタホストBから通知されたデコード対象のフレームデータのフレーム番号と、現在受信しているフレームデータのフレーム番号を比較し、同期が取れているかを判定し、該フレームデータの受信が完了した場合には、該マスタホストBに通知する手段と、
前記マスタホストBから前記でコード開始要求を受信すると、デコードを開始し、前記外部からの同期信号に基づいてデコードされたフレームデータを出力する手段と、を含む。
【0017】
また、本発明(請求項6)は、前記映像送信装置において、
前記映像受信装置に送信する前記対象映像フレームに、
録画対象の映像の解像度やフレームレートの情報を含む映像プロパティヘッダ、同期する映像同士を識別するための映像識別番号を先頭に設定して送信する手段を含む。
【0018】
また、本発明(請求項7)は、同期リアルタイム映像伝送及び録画ファイル保存を行う際に、前記映像送信装置及び前記映像受信装置は、請求項2及び請求項3の手段を含む。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明によれば、画素の置き換えを行わないため、従来の映像伝送装置にも適用でき、また、1台の映像伝送装置(マスタ)にタイミングを合わせることで、複数の映像伝送装置において高解像度の映像や3D映像を伝送、蓄積、再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態におけるシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態における同期リアルタイム伝送時のシステム構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態における同期リアルタイム映像伝送時の像送信装置の動作シーケンスである。
【図4】本発明の一実施の形態における伝送パケットのペイロード構成である。
【図5】本発明の一実施の形態における映像伝送装置の同期リアルタイム映像伝送時の動作シーケンスである。
【図6】本発明の一実施の形態における同期録画ファイル保存時のシステム構成図である。
【図7】本発明の一実施の形態における映像送信装置の同期録画ファイル保存時のシーケンスである。
【図8】本発明の一実施の形態におけるファイル書き出しのファイルフォーマットである。
【図9】本発明の一実施の形態における同期映像識別番号の例である。
【図10】本発明の一実施の形態における同期録画ファイル配信再生時のシステム構成図である。
【図11】本発明の一実施の形態における同期録画ファイル配信再生時の映像送信装置の動作シーケンスである。
【図12】本発明の一実施の形態における同期録画ファイルローカル再生時のシステム構成図である。
【図13】本発明の一実施の形態における同期録画ファイルローカル再生時の映像受信装置のシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態におけるシステム構成を示す。
【0023】
同図に示すシステムは、IP通信網(イーサネット(登録商標))300を介して映像送信側100と映像受信側200のシステムが接続されている。
【0024】
映像送信側のシステム100には、カメラ110などの複数の映像信号源、複数の映像蓄積サーバ120、複数の映像送信装置130があり、映像送信装置130はハブスイッチ140を介してイーサネット(登録商標)で接続されている。ここで、複数の映像信号源は外部のGenlock発生装置150からのGenlock信号等を用いて映像送信装置130の入力段階で同期が取れているものとする。複数の映像送信装置130は、1台のマスタホスト130と、それ以外のスレーブホスト130〜130Nに分かれて動作する。なお、Genlock信号とは、2つ以上の映像機器が互いに同期を取るための基準とする信号である。
【0025】
一方の映像受信側200には、複数のディスプレイ230、複数の映像蓄積サーバ220、複数の映像受信装置210、があり、映像受信装置210はハブスイッチ240を介してイーサネット(登録商標)で接続されている。また、映像受信装置210は、外部からGenlock信号等を用いて出力タイミングの同期が取れるようになっている。複数の映像受信装置210は、1台のマスタホスト220と、それ以外のスレーブホスト220〜220Nに分かれて動作する。
【0026】
これら映像送信装置130および映像受信装置は210ハブスイッチおよびルータ等を介してIP通信網300で接続されている。複数の映像は、対応する映像送信装置130と映像受信装置210の組み合わせで伝送される。
【0027】
本発明では、利用場面として、
1. 同期リアルタイム映像伝送
2. 同期録画ファイル保存
3. 同期録画ファイル配信再生
4. 同期録画ファイルローカル再生
5. 同期リアルタイム映像伝送および録画ファイル保存
の5種類が考えられる。以下、これら利用場面毎の動作について説明する。
【0028】
[1. 同期リアルタイム映像伝送]
同期リアルタイム映像伝送では、複数の映像送信装置130で、それぞれの入力信号を逐次的にエンコードした後、IP通信網300を介して映像受信装置210に伝送し、即時に映像受信装置210でデコードしてディスプレイ230等に映像信号を出力する。ここで、映像受信装置210の出力映像は同期が取れている必要がある。
【0029】
図2に、同期リアルタイム映像伝送時のシステム構成を示す。
【0030】
映像送信側のシステムでは、複数の映像信号源(カメラ)110からそれに対応する複数の映像送信装置130へ入力される。なお、ここでは、複数の映像信号は同期しているものとする。
【0031】
一方の受信側では、複数の映像送信装置130に対応した映像受信装置210が、対応する数のディスプレイ230〜230N等の映像出力装置に接続されている。また、それぞれの映像受信装置210〜210Nは、Genlock発生装置250等の外部同期信号源からの入力を受け、これによって同期した映像出力のタイミングを認識する。
【0032】
図3に、同期リアルタイム映像伝送時の映像送信装置の動作シーケンスを示す。
【0033】
送信側100では、複数の映像送信装置130〜130Nがそれぞれカメラ110〜110N等の映像信号源からの入力を得る(ステップ101)。この時、タイムコード等のフレーム番号が認識できる情報が映像信号にない場合、映像送信装置130のマスタホスト130は、自身で決めたフレーム番号を適切に割り当て、そのフレーム番号をすべてのスレーブホスト130〜130Nに通知する(ステップ102)。もし、タイムコード等のフレーム番号が認識できる情報が映像信号にある場合には、マスタホスト130はそのフレーム番号情報をすべてのスレーブホスト130〜130Nに通知する。スレーブホスト130〜130Nは、マスタホスト130からのフレーム番号情報を受信した後、自身が受信した映像信号のフレーム番号と比較して、フレーム番号の同期が取れているかを確認する。本実施の形態では、これらの通知処理をイーサネット(登録商標)を用いたUDP(User Datagram Protocol)ユニキャストで通信を行う。
【0034】
それぞれの映像送信装置で対象映像フレームの入力が終了した後、エンコードを行い、対象映像フレームデータのフレーム番号が認識できる情報を重畳する(ステップ103)。本実施の形態では、入力映像をフレーム単位でJPEG2000方式を用いて圧縮するものとする。エンコード処理および重畳処理が完了した後、対応する映像受信装置210へIP伝送を行う(ステップ104)。このIP伝送は、UDPを用いて伝送を行いる。
【0035】
図4にUDPペイロード構成を示す。同図に示すように、映像受信装置210に送信される各パケットにはフレーム番号認識のためにタイムコード、現在のフレームを構成するパケットの総数、自身のパケット番号をヘッダとして付加して、断片化されたJPEG2000圧縮の断片データを伝送する。ここで、タイムコードには、SMPTEタイムコードを用いる。
【0036】
図5に映像受信装置の同期リアルタイム映像伝送時の動作シーケンスを示す。
【0037】
それぞれの映像受信装置210〜210Nは、デコード対象の映像フレームデータを受信する(ステップ201)。このとき、マスタホスト210では、受信開始直後に現在受信しているフレームデータのフレーム番号を取得し、これを次のデコード対象フレームとし、このフレーム番号をすべてのスレーブホスト210〜210Nに通知する(ステップ202)。各スレーブホスト210〜210Nは、マスタホスト210から通知された次のデコード対象のフレーム番号と、現在受信しているフレームデータのフレーム番号を比較し、フレーム番号の同期がとれているかを判断する。各スレーブホストで、フレームデータの受信が完了した後、これをマスタホストに通知する(ステップ203)。マスタホストは、すべてのスレーブホスト210〜210Nでデコード対象のフレームの受信完了通知を受けた後、デコード開始要求をすべてのスレーブホスト210〜210Nに通知する(ステップ204)。すべてのスレーブホスト210〜210Nはこれにしたがって、デコード処理を開始する(ステップ205)。本実施の形態では、これらの通知処理をイーサネット(登録商標)を用いたUDPユニキャストで通信を行う。その後、すべての映像受信装置210〜210NはGenlock等の外部同期信号により、HD-SDI出力のタイミングを認識し、映像出力を行う。また、ユーザーの指定により、HD-SDIに出力する映像信号のタイムコードをアンシラリーデータとして重畳する(ステップ206)。
【0038】
[2.同期録画ファイル保存]
同期録画ファイル保存では、複数の映像伝送装置のそれぞれの入力信号をタイムコード等のフレーム番号を保持しながら映像蓄積サーバ220にファイルとして保存する。ここでは、映像送信装置130のエンコード機能を使い、JPEG2000圧縮された映像データを映像蓄積サーバ120に保存する。
【0039】
同期録画ファイル保存時のシステム構成を図6に示す。複数の映像送信装置130と、それに対応するカメラ110等の映像信号源と、映像蓄積サーバ120で構成される。すべての映像送信装置130は、ハブスイッチ140を介してイーサネット(登録商標)で接続されている。映像蓄積サーバ120と映像送信装置130はシリアルATA、または、イーサネット(登録商標)で接続されている。カメラ110等の映像信号源は、Genlock発生装置150からのGenlock等の同期信号源によって、それぞれ同期しているものとする。
【0040】
図7に、同期録画ファイル保存時の映像送信装置の動作シーケンスを示す。
【0041】
それぞれの映像送信装置130はユーザから録画開始要求を受け(ステップ301)、対象映像フレームの受信を開始する。この時、タイムコード等のフレーム番号が認識できる情報が映像信号にない場合、映像送信装置のマスタホスト130は、自身で決めたフレーム番号を適切に割り当て、そのフレーム番号をすべてのスレーブホスト130〜130Nに通知する。もし、タイムコード等のフレーム番号が認識できる情報が映像信号にある場合には、マスタホスト130はそのフレーム番号情報をすべてのスレーブホスト130〜130Nに通知する(ステップ302)。スレーブホスト130〜130Nはマスタホスト130からのフレーム番号情報を受信した後、自身が受信した映像信号のフレーム番号と比較して、フレーム番号の同期が取れているかを確認する。本実施の形態では、これらの通知処理をイーサネット(登録商標)を用いたUDPユニキャストで通信を行う。
【0042】
それぞれの映像送信装置130〜130Nにおいて、対象映像フレームの受信を完了した後、エンコード処理を開始しJPEG2000圧縮を行う(ステップ303)。そして、エンコード処理が完了した後、映像蓄積サーバ120へファイルの書出しを行う(ステップ304)。
【0043】
この時のファイルフォーマットを図8に示す。ファイルフォーマットは、録画対象の映像の解像度やフレームレートなどの情報を含む映像プロパティヘッダ、および、同期映像同士を識別するための映像識別番号を先頭に配置する。例えば、同期映像識別番号は、図9に示すような解像度3840画素x2160画素の映像(4K映像)を4分割して、解像度1920画素x1080画素の映像(HD映像)として同期録画保存する場合に、それぞれの分割映像の位置を識別する目的として使用される。この場合、それぞれの同期録画ファイルの同期識別番号として、図9に示される配置関係の番号が割り当てられる。
【0044】
同期録画のファイルフォーマットでは、先頭の映像プロパティヘッダ、映像識別番号に続いて、入力映像のJPEG2000圧縮データがフレーム単位で配置される。このとき、それぞれのフレームデータの先頭にタイムコードを付加する。この時のタイムコードはSMPTEタイムコードを用いる。
【0045】
[3.同期録画ファイル配信再生]
同期録画ファイル配信再生では、映像送信装置側にある複数の映像蓄積サーバ120に保存された同期映像ファイルをIP通信網300を介して複数の映像受信装置210に伝送し、映像受信装置210でデコードしてディスプレイ230等に映像信号を出力する。ここで、映像受信装置210の出力映像は保存ファイルのタイムコード情報に基づいた同期が取れている必要がある。
【0046】
図10に、同期録画ファイル配信再生時のシステム構成を示す。送信側には、複数の映像送信装置130とそれに対応する映像蓄積サーバ120が配置されている。それぞれの映像送信装置130はハブスイッチ140を介してイーサネット(登録商標)で接続されている。複数の映像送信装置130と、それに対応する映像蓄積サーバ120はシリアルATAまたはイーサネット(登録商標)で接続されている。一方の受信側の構成は、同期リアルタイム映像伝送時の構成と同様である。
【0047】
図11に、同期録画ファイル配信再生時の映像送信装置の動作シーケンスを示す。
【0048】
はじめに、ユーザーの指示により、すべての映像送信装置130〜130Nに対象映像フレームの伝送指示が通知される(ステップ501)。各映像送信装置130〜130Nは、指定された映像フレームを映像蓄積サーバ120〜120から読み出し、および、対応するそれぞれの映像受信装置210〜210NへのIP伝送を行う(ステップ502)。この時の伝送はUDP通信で行われ、そのパケット構造は図4に示す同期リアルタイム映像伝送の場合と同様のものを使う。
【0049】
一方、複数の映像受信装置210では、対応する映像送信装置からのIP伝送データを受信するが、その場合の処理方法は図5に示す同期リアルタイム映像伝送の場合と同様である。
【0050】
[4.同期録画ファイルローカル再生]
同期録画ファイルローカル再生では、映像受信装置210のデコーダ機能を用いて、複数の映像受信装置210に接続された映像蓄積サーバ220にある同期録画ファイルを同期再生する。
【0051】
図12に、同期録画ファイルローカル再生時のシステム構成を示す。
【0052】
複数の映像受信装置210とそれに対応する映像蓄積サーバ220がシリアルATA、または、イーサネット(登録商標)で接続されている。映像受信装置210では、Genlock等の外部同期信号源を用いて映像出力同期を取る。
【0053】
図13に映像受信装置の動作シーケンスを示す。
【0054】
ユーザー指定により、映像受信装置210のマスタホスト210は再生対象の映像フレームの通知を受ける(ステップ601)。その後、マスタホスト210はすべてのスレーブホスト210〜210Nに対象映像フレーム番号を通知する(ステップ602)。この通知により、すべての映像受信装置210は対応する映像蓄積サーバ220から対象フレームの映像データを読み込む(ステップ603)。この時、スレーブホスト210〜210Nは自身の読み込み処理が完了した段階でマスタホスト210に読み込み完了の通知を行う(ステップ604)。マスタホスト210では、すべてのスレーブホスト210〜210Nからの読み込み完了の通知を確認した後に、デコード開始要求をすべてのスレーブホスト210〜210Nに要求する(ステップ605)。すべての映像受信装置210がデコード処理を行い(ステップ606)、Genlock等の外部同期信号のタイミングで映像をHD-SDI信号で出力する。また、ユーザーの指定により、HD-SDIに出力する映像信号のタイムコードをアンシラリーデータとして重畳する(ステップ607)。
【0055】
[5.同期リアルタイム映像伝送および録画ファイル保存]
同期リアルタイム映像伝送および録画ファイル保存では、同期リアルタイム伝送の機能と同期録画ファイル保存の機能を同時に行う。この場合のシステム構成は図1と同じであり、それぞれの機能を並列動作させることで実現される。
【0056】
以下に、本発明の具体的な効果を示す。
【0057】
(1)正確な映像画素の伝送:
特許文献1の技術のフレーム番号抽出回路では、フレーム情報を埋め込む位置(特定の走査ライン)を「無効画像領域」または、「走査ラインの有向画像領域の上端か下端」としている。しかし、走査ラインの無効画像領域まで含めたフレームを処理して伝送する装置が多数である。また、「走査ラインの有向画像領域の上端か下端」にフレーム情報を埋め込む場合、有効走査領域の端の画素が失われる(フレーム情報で置き換わってしまう)。
【0058】
特許文献1の技術では、4分割画像を取り上げてその4つ端に目立たないように配置する例を示しているが、この使い方では9分割などで適用する場合、合成映像の中央の分割点に埋め込みフレーム情報が現れるので、画質の劣化が顕著となる。
【0059】
これに対し、本発明によれば、画素の置き換えを一切行わないため、上記のような問題は発生しない。
【0060】
(2)映像伝送システムへの適用性:
特許文献1の技術では、映像信号を忠実に再現できないため、非圧縮やロスレス映像の処理を伴う映像伝送システムには適用できない。また、受信者が受信解像度を選択できるスケーラブルビデオコーディック(SVC)では、埋め込みのビット自体が潰れるので、適用できない。
【0061】
これに対し、本発明では、伝送する映像画素に対して、信号の置き換えをしないため、上記のような伝送システムでも適用可能である。
【0062】
(3)伝送可能なフレームの情報サイズ:
特許文献1の技術では、1ビットにつき、4ビットの冗長表現を用いるので、これだけの情報を埋め込むことは難しい(多くの情報を埋め込むと、映像がより侵食される)。
【0063】
これに対し、業界標準であるSMPTEタイムコードをフレーム情報として利用する。これによって、受信側でSMPTEタイムコードを含む映像情報が利用可能になる。この情報には8バイト=64ビットの情報量が必要である。
【0064】
(4)システムの拡張性:
特許文献1の技術では、映像送信装置の前段に「映像分割回路」、映像受信装置後段に「映像再生回路」が必要になる。この回路は映像の全信号を入力するだけの可用性が求められるため、16分割映像の場合には16入力処理するだけの回路を用意する必要があり、システム拡張のためのコストがかかる(システムの拡張性が高くない)。
【0065】
本発明では、LANで接続された伝送装置とそれに対応する数の外部同期信号を用意すれば、何台でも同期が可能である。同期信号は簡単に分岐生成できるので、システム拡張のためのコストがかからない。
【0066】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0067】
100 映像送信側
110 カメラ
120 映像蓄積サーバ
130 映像送信装置
140 ハブスイッチ
150 Genlock発生装置
200 映像受信側
210 映像受信装置
220 映像蓄積サーバ
230 ディスプレイ
240 ハブスイッチ
250 Genlock発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの映像を分割して、複数の映像伝送装置を用いて並列に伝送、蓄積、再生を行う映像伝送システムであって、
映像送信側のシステムは、
同期した映像信号を出力する複数の映像信号源と、
前記映像信号源から入力された前記映像信号について、エンコードし、伝送対象のフレームデータを識別できる情報を該フレームデータに重畳し、伝送対象のフレームデータを映像受信側のシステムに送信する複数の映像送信装置と、
を有し、
前記映像受信側のシステムは、
前記映像送信装置から前記フレームデータを受信してデコードし、伝送対象のフレームデータを識別できる情報を該フレームデータから検知する複数の映像受信装置と、
前記映像受信装置でデコードされた前記フレームデータに重畳された前記情報と外部から入力される同期信号に基づいて該フレームデータを再生する映像再生装置と、
を有することを特徴とする映像伝送システム。
【請求項2】
前記映像送信側のシステムから前記映像受信側のシステムに同期リアルタイム映像伝送を行う際に、
前記複数の映像送信装置のうち、マスタホストAとなる映像送信装置は、
前記映像信号源から入力された前記映像信号のフレーム番号を、該マスタホストA以外の映像送信装置(スレーブホストA)に通知すると共に該映像信号をエンコードする手段と、を含み、
前記スレーブホストAは、
前記マスタホストAから受信したフレーム番号と、自身が受信した映像信号のフレーム番号を比較し、同期がとれていることを確認し、該映像信号をエンコードする手段を含み、
前記複数の映像受信装置のうち、マスタホストBとなる映像受信装置は、
前記映像送信装置から受信したデコード対象のフレームデータのフレーム番号を、当該マスタホストB以外の映像受信装置(スレーブホストB)に通知する手段と、
前記スレーブホストBからフレームデータ受信完了の通知を取得すると、デコード開始要求を該フレーブホストBに通知し、デコードを行う手段と、
を含み、
前記スレーブホストBは、
前記マスタホストBから通知されたデコード対象のフレームデータのフレーム番号と、現在受信しているフレームデータのフレーム番号を比較し、同期が取れているかを判定し、該フレームデータの受信が完了した場合には、該マスタホストBに通知する手段と、
前記マスタホストBから前記デコード開始要求を受信すると、デコードを開始し、前記外部からの同期信号に基づいてデコードされたフレームデータを出力する手段と、
を含む請求項1記載の伝送システム。
【請求項3】
前記映像送信装置は、
前記映像受信装置に送信する前記映像信号のパケットに、
フレーム番号認識のためのタイムコード、現在のフレームを構成するパケットの総数、自身のパケット番号をヘッダに設定して送信する手段を含む
請求項2記載の伝送システム。
【請求項4】
同期録画ファイルを保存する際に、
前記映像送信側のシステムは、
エンコードされた映像データを格納する映像蓄積サーバを更に有し、
前記複数の映像送信装置のうち、マスタホストとなる映像送信装置は、
録画開始要求が入力されると、対象映像フレームを受信し、該マスタホストA以外の映像送信装置(スレーブホストA)に対してフレーム番号を通知する手段と、
対象映像フレームの受信が完了したらエンコードを行い、同期映像同士を識別するための映像識別番号を付与して前記映像蓄積サーバにファイルを書き出す手段と、
を含み、
前記スレーブホストAは、
前記マスタホストAから前記フレーム番号を受信すると、自身が受信している映像信号のフレーム番号と比較して、通知された前記フレーム番号との同期を確認し、該映像信号のエンコードを行い、同期映像同士を識別するための映像識別番号を付与して、前記映像蓄積サーバにファイルを書き出す手段を含む
請求項1記載の伝送システム。
【請求項5】
同期録画ファイルの配信及び再生を行う際に、
前記映像送信側のシステムは、
エンコードされた映像データを格納する映像蓄積サーバを更に有し、
前記複数の映像送信装置のうち、マスタホストAとなる映像送信装置は、
前記映像蓄積サーバに格納されている対象映像フレームの伝送指示が入力されると、指定された映像フレームの番号を、マスタホストA以外の映像送信装置(スレーブホストA)に対象フレーム番号を通知する手段と、
前記対象映像フレームを前記映像蓄積サーバから読み出して前記映像受信装置に送信する手段と、
を含み、
前記スレーブホストAは、
前記マスタホストAから通知された前記対象フレーム番号に基づいて、前記映像蓄積サーバから対象映像フレームを読み出して前記映像受信装置に送信する手段を含み、
前記映像受信装置のうち、マスタホストBとなる映像受信装置は、
受信したデコード対象のフレームデータのフレーム番号をマスタホストB以外の映像受信装置に通知する手段と、
前記マスタホストB以外の映像受信装置(スレーブホストB)からフレームデータ受信完了の通知を取得すると、デコード開始要求を該フレーブホストBに通知し、デコードを行う手段と、
を含み、
前記スレーブホストBは、
前記マスタホストBから通知されたデコード対象のフレームデータのフレーム番号と、現在受信しているフレームデータのフレーム番号を比較し、同期が取れているかを判定し、該フレームデータの受信が完了した場合には、該マスタホストBに通知する手段と、
前記マスタホストBから前記でコード開始要求を受信すると、デコードを開始し、前記外部からの同期信号に基づいてデコードされたフレームデータを出力する手段と、
を含む請求項1記載の伝送システム。
【請求項6】
前記映像送信装置は、
前記映像受信装置に送信する前記対象映像フレームに、
録画対象の映像の解像度やフレームレートの情報を含む映像プロパティヘッダ、同期する映像同士を識別するための映像識別番号を先頭に設定して送信する手段を含む
請求項5記載の伝送システム。
【請求項7】
同期リアルタイム映像伝送及び録画ファイル保存を行う際に、
前記映像送信装置及び前記映像受信装置は、
請求項2及び請求項3の手段を含む
請求項1記載の伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−26804(P2013−26804A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159358(P2011−159358)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】