映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラム
【課題】複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減する。
【解決手段】映像再生制御装置は、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部12と、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出部14と、映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得部15と、映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択部19と、線形軌跡方式が選択されている場合はカーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から粗い時間粒度で映像をシークし、円形軌跡方式が選択されている場合はカーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から細かい時間粒度で映像をシークするシーク部18とを備える。
【解決手段】映像再生制御装置は、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部12と、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出部14と、映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得部15と、映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択部19と、線形軌跡方式が選択されている場合はカーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から粗い時間粒度で映像をシークし、円形軌跡方式が選択されている場合はカーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から細かい時間粒度で映像をシークするシーク部18とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像を再生制御する映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ上で映像から必要な情報を探したり、目的の位置から再生したりするためには、映像をシークする必要がある。シークとは、再生スピードの変更(フレーム単位→スローモーション→等速再生→2倍速再生→・・・)や、再生方向の変更(再生⇔逆再生)を行うことである。以下、映像に対して再生スピードの変更や再生方向の変更を行うことをシーク操作と記す。このような映像に対するシーク操作方法として、GUIを用いた方法がある。従来の映像ソフトウェアでは、GUIによるシーク操作として、マウスを利用したものが多く存在する。例えば、タイムスライダの再生ヘッドをドラッグする方法、早送りや巻き戻しなどあらかじめ用意された再生制御ボタンをクリックする方法、などである。
【0003】
そして、ユーザが映像から目的位置を探すシーク操作には2つのプロセスが存在する。1つは、目的位置周辺にヘッド位置を大きく移動するというプロセスであり、もう1つは、目的位置へ正確にヘッド位置を小さく移動するというプロセスである。このように、シーク操作では、ユーザが必要とする時間粒度に応じてヘッド位置を変更できる必要がある。従来は、このような操作プロセスそれぞれに別の操作方法を割り当てることでシーク操作を実現してきた。例えば、ヘッド位置を大きく移動するプロセスにはタイムスライダを用い、ヘッド位置を小さく移動するプロセスには制御ボタンやキーボード入力を用いる方法が知られている。
【0004】
また、特許文献1には、マウスの軌跡に着目したシーク操作が開示されている。タイムスライダのドラックや制御ボタンを利用する代わりに、映像上でマウスを動かすと、そのマウスの軌跡に対応した再生ヘッド位置の変更が行われ、シーク操作を可能にしている。このように、ユーザが対話的かつ直感的に映像をシークできることは、映像の視聴において重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−231431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1では、操作対象となる映像が単体の場合を想定している。図11に示すように、操作対象となる映像が単体ならば、その映像表示領域51とシーク操作領域52が近いため、シーク操作は煩雑ではない。しかし、操作対象となる映像やシーンが複数になると、複数の映像やシーンの中から操作対象となる映像やシーンを選択する操作が必要になる。なお、以下では、1つの映像の複数のシーンも含めて「複数の映像」と記す。
【0007】
特に、複数の映像が一覧で表示され、操作対象となる映像とシーク操作領域とが離れている場合は、シーク操作が煩雑になる。すなわち、図12に示すように、操作対象となる映像の表示領域51とシーク操作領域52とが離れている場合は、映像を選択してからシーク操作領域へカーソルを大きく動かす必要がある。
【0008】
このような操作の煩雑さを解決するためには、複数の映像が一覧で表示されている際に、操作対象となる映像の選択から連続的にシーク操作ができることが望ましい。また、映像選択からシーク操作に移る際に、複数の映像の関係性を視覚的に保ったままシーク操作が可能であることも重要な要件となる。つまり、映像選択からシーク操作が連続的であっても、選択された映像のみがフォーカスされると、他の映像との比較が困難になり、関係性が把握できなくなるという一覧性の制約が生じる。
【0009】
この解決案の一つとして、映像が一覧で表示されている場合、図13に示すように、各映像に対してシーク操作領域52を配置することが考えられる。しかし、この方法によると、映像一つ一つのシーク操作領域52が小さくなってしまい、ヘッド位置の小さな変更が難しく、操作性の制約が生じる。また、一つ一つの映像にシーク操作領域52を設置することで、画面に一覧で表示できる映像数が減ってしまうという画面の制約が生じる。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減することができる映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、第1の態様に係る発明は、複数の映像を再生制御する映像再生制御装置であって、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部と、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出部と、前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得部と、前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択部と、前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシーク部とを備えることを要旨とする。
【0012】
また、前記目的を達成するため、第2の態様に係る発明は、複数の映像を再生制御する映像再生制御方法であって、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択ステップと、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップとを備えることを要旨とする。
【0013】
また、前記目的を達成するため、第3の態様に係る発明は、複数の映像を再生制御するための映像再生制御プログラムであって、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択ステップと、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップとをコンピュータに実行させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減することができる映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における映像再生制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態における軌跡取得部の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態におけるシーク対象選択部の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における中心点座標とヘッド位置の説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるシーク部の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるカーソル位置によるヘッド位置の変化量を示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるカーソル座標の取得例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態におけるヘッド位置の変化量の計算例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における線形軌跡方式を選択した場合の表示例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態における円形軌跡方式を選択した場合の表示例を示す図である。
【図11】操作対象となる映像が単体の場合の説明図である。
【図12】操作対象となる映像が複数の場合の説明図である。
【図13】各映像に対してシーク操作領域を配置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における映像再生制御装置の構成図である。この映像再生制御装置は、サムネイル画像を表示し複数の映像を再生制御するPC等であって、図1に示すように、サムネイル情報記憶部11と、シーク対象選択部12と、ヘッド位置記憶部13と、ヘッド位置読出部14と、軌跡取得部15と、座標記憶部16と、シーク部18と、操作方式選択部19とを備えている。入力部20は、ユーザの操作を映像再生制御装置に入力する。入力部20には、マウスやスタイラス、タブレットペン、タッチパネルなどを採用することができる。軌跡取得部15は、入力部20からの情報に基づいてカーソルの座標等を取得し、座標記憶部16に記憶する。サムネイル情報記憶部11は、サムネイル番号とともにそのサムネイル領域の中心点座標をあらかじめ記憶している。シーク対象選択部12は、サムネイル情報記憶部11に記憶された情報に基づいて、選択されたサムネイル領域を読み出し、そのサムネイル番号をヘッド位置読出部14に与える。ヘッド位置記憶部13は、表示されているサムネイルの再生ヘッド位置(以下、単に「ヘッド位置」という。)、映像のID、サムネイルが担当する映像区間の開始時間と区間終了時間をサムネイル番号とともに記憶する。なお、複数の映像の再生ヘッド位置を記憶する場合には、映像のIDと各映像の先頭からの経過時間を記憶するか、複数の映像を1つにまとめその先頭からの経過時間を記憶することが考えられる。ヘッド位置読出部14は、シーク対象選択部12からのサムネイル番号に対応するヘッド位置をヘッド位置記憶部13から読み込み、このヘッド位置をシーク部18に与える。操作方式選択部19は、映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択し、その選択結果をシーク部18に与える。シーク部18は、線形軌跡方式が選択されている場合は、カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から粗い時間粒度で映像をシークする。一方、円形軌跡方式が選択されている場合は、カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から細かい時間粒度で映像をシークする。表示部30は、シーク部18や操作方式選択部19からの情報を表示するディスプレイである。
【0018】
図2は、軌跡取得部15の動作を示すフローチャートである。以下、図2を用いて、軌跡取得部15の動作を詳細に説明する。まず、軌跡取得部15は、選択されたサムネイル領域内でカーソルが動いているかどうかを判断する(ステップS1→S2)。そして、カーソルが動き始めた座標を動作開始点として取得し、その動作開始点の座標と動作開始時刻を座標記憶部16に記憶する(ステップS3)。また、カーソルが止まると、その座標を動作終了点として取得し、その動作終了点の座標と動作終了時刻を座標記憶部16に記憶する(ステップS4→S6)。もし、選択されたサムネイル領域からカーソルが外れてしまった場合は、サムネイル領域から外れる直前の座標を動作終了点として取得する(ステップS5→S6)。
【0019】
図3は、シーク対象選択部12の動作を示すフローチャートである。以下、図3を用いて、シーク対象選択部12の動作を詳細に説明する。まず、シーク対象選択部12は、選択されたサムネイルの中心点座標をサムネイル情報記憶部11から読み込む(ステップS11→S12)。そして、サムネイル領域の中心点座標とあらかじめ設定されたサムネイルの幅と高さから、サムネイル領域が画面上のどの位置に存在しているかを決定する(ステップS13)。前述の軌跡取得部15は、このサムネイル領域の位置情報に基づいて、サムネイル領域内でカーソルが動いているかどうかを判定するようになっている。
【0020】
図4は、サムネイル領域の中心点座標とヘッド位置の説明図である。すなわち、図4(a)に示すように、サムネイル領域の中心点座標は、表示部30の画面上におけるX座標及びY座標で表される。このような中心点座標は、図4(b)に示すように、あらかじめサムネイル番号とともにサムネイル情報記憶部11が記憶している。また、表示されているサムネイルのヘッド位置H1、H2、H3、・・・、サムネイルが生成された映像のID、サムネイルが担当する映像の区間開始時間St1、St2、St3、・・・、サムネイルが担当する映像の区間終了時間Et1、Et2、Et3、・・・は、図4(c)に示すように、サムネイル番号とともにヘッド位置記憶部13に記憶される。
【0021】
図5は、シーク部18の動作を示すフローチャートである。以下、図5を用いて、シーク部18の動作を詳細に説明する。まず、シーク部18は、操作方式選択部19からの情報に基づいて、選択されている操作方式を判定する(ステップS21)。次いで、ヘッド位置読出部14と座標記憶部16からの情報に基づいてヘッド位置の変化量を決定し、その変化量に基づいてヘッド位置を変更する(ステップS22→S24、ステップS23→S24)。以下、ヘッド位置の変化量を決定する動作をさらに詳しく説明する。
【0022】
まず、線形軌跡方式が選択されている場合は、サムネイル領域上で基準となる軸(基準軸)にカーソルの軌跡を射影して変化量を決定する。すなわち、基準軸に沿って直線的にカーソルの軌跡を描いた時の移動距離や移動速度、移動方向に対応してヘッド位置を変化させる。例えば、移動距離に対応してヘッド位置を変化させる場合、カーソルを基準軸に沿って直線的に大きく動かすと、大きくヘッド位置が変化する。逆に、カーソルを基準軸に対して斜めに動かすと、その移動距離に応じた変化量にはならず、基準軸方向の移動距離に応じた変化量となる。また、移動速度に対応してヘッド位置を変化させる場合、カーソルを素早く動かすとヘッド位置が大きく変化する。さらに、移動方向を考えた場合、カーソルを右に動かすと正再生方向にヘッド位置が変化し、カーソルを左に動かすと逆再生方向にヘッド位置が変化する。
【0023】
一方、円形軌跡方式が選択されている場合は、サムネイル領域上で円形に動かされるカーソルの角速度、移動距離、回転数、回転方向に対応してヘッド位置を変化させる。例えば、角速度に対応してヘッド位置を変化させる場合、カーソルを素早く動かすとヘッド位置は大きく変化し、ゆっくり動かすとヘッド位置は小さく変化する。移動距離に対応してヘッド位置を変化させる場合、弧の長さを元にしてヘッド位置を変化させる。すなわち、同じ角度変化量ならば、カーソルで小さく円を描けばヘッド位置の変化は小さく、大きく円を描けばヘッド位置の変化は大きい。回転数に対応してヘッド位置を変化させる場合、回転数が多いほどヘッド位置の変化は大きく、回転数が少ないほどヘッド位置の変化は小さくなる。さらに、回転方向を考えた場合、カーソルを時計回りに動かすと正再生方向にヘッド位置が変化し、カーソルを反時計回りに動かすと逆再生方向にヘッド位置が変化する。
【0024】
図6は、カーソル位置によるヘッド位置の変化量を示す図である。(a)(b)は線形軌跡方式が選択されている場合、(c)(d)は円形軌跡方式が選択されている場合を示している。(a)(c)では、カーソルの軌跡がサムネイル上で完結している。一方、(b)(d)では、カーソルの軌跡がサムネイル外に出てしまっている。カーソル軌跡がサムネイル外に出た時点で、カーソルの移動は終了と判定される。そのため、カーソルの移動距離や移動速度が同じ場合でもヘッド位置の変化量に差が出ることを示している。
【0025】
図7は、カーソル座標の取得例を示す図である。ここでは、線形軌跡方式でカーソルがサムネイル上で動く場合とサムネイル外まで出てしまう場合を例示している。図7(a)では、カーソルの移動がサムネイル上で完結しているため、開始点座標には点pの座標(x1,y1)が記憶され、終了点座標には点qの座標(x2,y2)が記憶される。また、同時にカーソルが点pにあった時間t1、点qにあった時間t2も記憶される。一方、図7(b)では、カーソルの移動がサムネイル外に出ているため、開始点座標には点pの座標(x1,y1)が記憶されるが、終了点座標には点s(x4,y4)ではなく点rの座標(x3,y3)が記憶される。また、同時にカーソルが点pにあった時間t1、点rにあった時間t3も記憶される。
【0026】
図8は、ヘッド位置の変化量の計算例を示す図である。
【0027】
まず、線形軌跡方式の計算例を説明する。ここでは、ヘッド位置の変化量を左右方向の移動距離で決定するものとする。すなわち、図8(a)に示すように、カーソルを直線的に動かした場合、カーソルの左右方向の移動距離lは、点p(x1,y1)と点q(x2,y2)のx座標を用いると次式のようになる。
【数1】
【0028】
ヘッド位置の変化量Hは、H=αlとなる。αは、移動距離当たりのヘッド位置の変化量の比例係数である。よって、変更されたヘッド位置Hafterは、Hafter=H2+Hとなる。
【0029】
次に、円形軌跡方式の計算例を説明する。ここでは、ヘッド位置の変化量を角速度で決定するものとする。すなわち、図8(b)に示すように、カーソルを円形に動かした場合の角速度ωを求めるには、中心点o(tx3,ty3)と点p(x1,y1)と点q(x2,y2)が作る角度θを求める必要があり、θは以下のように求められる。
【数2】
【0030】
これにより、角速度ωは次のように求められる。
【数3】
【0031】
ヘッド位置の変化量Hは、H=βωとなる。βは、角速度当たりのヘッド位置の変化量の比例係数である。よって、変更されたヘッド位置Hafterは、Hafter=H3+Hとなる。
【0032】
次に、円形軌跡方式の別の計算例を説明する。ここでは、ヘッド位置の変化量を回転数で決定するものとする。すなわち、図8(c)に示すように、点pを始点にして、カーソルが描く軌跡の回転数を計算する。カーソルが描く軌跡の回転数を計算するために、点pが始点となったときの基準の角度φを求める。この基準角度から±2πとなる毎にヘッド位置を変更する。中心点Oと点pによる角度φは次のように求められる。
【数4】
【0033】
そして、カーソルが動いている間の中心点Oと点qによる角度ψは次のように求められる。
【数5】
【0034】
ここから、φとψの差が2πの倍数のとき、カーソルの軌跡は回転していると言える。そのため、回転数nは次のように計算することができる。
【数6】
【0035】
そして、nが0以外の整数であるとき、つまり時計回り、反時計回りのどちらかに一回転以上したときに、ヘッド位置変化量Hは、H=βωと求めることができる。βは、角速度当たりのヘッド位置の変化量の比例係数である。よって、変更されたヘッド位置Hafterは、Hafter=H4+Hとなる。
【0036】
ここで、適切な比例係数α、βを設定することで、ユーザが求める時間粒度に応じてヘッド位置を変更することができる。例えば、比例係数αを秒単位、比例係数βを2フレーム単位とする。これにより、線形軌跡方式では、粗い時間粒度でシークを実現することができ、円形軌跡方式では、細かい時間粒度でシークを実現することができるため、直感的なシーク操作が可能となる。すなわち、カーソルを移動させる領域が制限されている状況では、時間粒度が大きく求められる場合がある。この場合、短い距離のカーソル移動で大きくシーク可能であると、おおまかにヘッド位置を調整することができる。逆に、カーソルの移動領域が制限されているため、時間粒度が小さく求められる場合もある。この場合、長い距離のカーソル移動でも小さくシーク可能であると、細かくヘッド位置を調整することができる。このように、時間粒度に応じて適切な比例係数α、βを設定することで、ユーザの直感的なシーク操作を支援する。
【0037】
また、サムネイルの担当する映像区間は区間開始時間Stと区間終了時間Etで計算が可能である。そのため、映像中のサムネイルが切り替わる付近でのシーク操作時に、ヘッド位置を区間終了時間Etまでシークするか、次のサムネイルが担当する区間を考慮して求めたヘッド位置変化量Hの分だけシークすることも考えられる。これにより,ユーザの求める挙動に応じて、切り替わり点付近でのシーク方法を変更できる。
【0038】
また、マウスやタブレットペンなど、ボタン操作をしながら軌跡を描くことが可能な機器を入力部20として採用した場合は、移動終了をクリックボタンのon/offで判定する方法も考えられる。つまり、サムネイル領域の外にカーソルが出てしまった場合でも、クリックボタンがonの間はシーク操作を続けるということである。これにより、さらに直感的なシーク操作が可能になる。
【0039】
図9は、線形軌跡方式が選択されている場合の表示例であり、図10は、円形軌跡方式が選択されている場合の表示例である。これらの図に示すように、表示部30は、操作対象となるサムネイル31の一覧、タイムスライダ32、再生ヘッド33、カーソルの軌跡などを表示している。ユーザは、ラジオボタン36を使うことで所望の操作方式を選択することができる。どちらの方式でも、カーソル操作の目安として、選択された操作方式のガイドラインがサムネイル上に表示される。すなわち、線形軌跡方式が選択されている場合は、図9に示すように、サムネイル上に直線のガイドライン35が表示される。一方、円形軌跡方式が選択されている場合は、図10に示すように、サムネイル上に円形のガイドライン35が表示される。このガイドライン35上を沿わせるようにカーソルの軌跡を描くことで、サムネイル領域が狭い場合でも、直感的にスムーズな再生位置の変更を可能にする。また、現在選択されている操作方式をユーザへ視覚的に提示することができるので、操作ミスを防ぐ効果もある。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態における映像再生制御装置によれば、複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減することが可能である。すなわち、複数の映像の各表示領域上のカーソルの軌跡に基づいて、その表示領域に表示される映像を送る速度を変更するようにしている。これにより、複数の映像を並行してシークする場合でも操作が煩雑になることを防止することができる。また、早い速度で再生の制御を行う線形軌跡方式と遅い速度で再生の制御行う円形軌跡方式の両方を備えている。これにより、2つの操作方式をユーザが切り替えることができるので、操作効率がよく、直感的なシーク操作が可能となる。
【符号の説明】
【0041】
11…サムネイル情報記憶部
12…シーク対象選択部
13…ヘッド位置記憶部
14…ヘッド位置読出部
15…軌跡取得部
16…座標記憶部
18…シーク部
19…操作方式選択部
20…入力部
30…表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像を再生制御する映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ上で映像から必要な情報を探したり、目的の位置から再生したりするためには、映像をシークする必要がある。シークとは、再生スピードの変更(フレーム単位→スローモーション→等速再生→2倍速再生→・・・)や、再生方向の変更(再生⇔逆再生)を行うことである。以下、映像に対して再生スピードの変更や再生方向の変更を行うことをシーク操作と記す。このような映像に対するシーク操作方法として、GUIを用いた方法がある。従来の映像ソフトウェアでは、GUIによるシーク操作として、マウスを利用したものが多く存在する。例えば、タイムスライダの再生ヘッドをドラッグする方法、早送りや巻き戻しなどあらかじめ用意された再生制御ボタンをクリックする方法、などである。
【0003】
そして、ユーザが映像から目的位置を探すシーク操作には2つのプロセスが存在する。1つは、目的位置周辺にヘッド位置を大きく移動するというプロセスであり、もう1つは、目的位置へ正確にヘッド位置を小さく移動するというプロセスである。このように、シーク操作では、ユーザが必要とする時間粒度に応じてヘッド位置を変更できる必要がある。従来は、このような操作プロセスそれぞれに別の操作方法を割り当てることでシーク操作を実現してきた。例えば、ヘッド位置を大きく移動するプロセスにはタイムスライダを用い、ヘッド位置を小さく移動するプロセスには制御ボタンやキーボード入力を用いる方法が知られている。
【0004】
また、特許文献1には、マウスの軌跡に着目したシーク操作が開示されている。タイムスライダのドラックや制御ボタンを利用する代わりに、映像上でマウスを動かすと、そのマウスの軌跡に対応した再生ヘッド位置の変更が行われ、シーク操作を可能にしている。このように、ユーザが対話的かつ直感的に映像をシークできることは、映像の視聴において重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−231431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1では、操作対象となる映像が単体の場合を想定している。図11に示すように、操作対象となる映像が単体ならば、その映像表示領域51とシーク操作領域52が近いため、シーク操作は煩雑ではない。しかし、操作対象となる映像やシーンが複数になると、複数の映像やシーンの中から操作対象となる映像やシーンを選択する操作が必要になる。なお、以下では、1つの映像の複数のシーンも含めて「複数の映像」と記す。
【0007】
特に、複数の映像が一覧で表示され、操作対象となる映像とシーク操作領域とが離れている場合は、シーク操作が煩雑になる。すなわち、図12に示すように、操作対象となる映像の表示領域51とシーク操作領域52とが離れている場合は、映像を選択してからシーク操作領域へカーソルを大きく動かす必要がある。
【0008】
このような操作の煩雑さを解決するためには、複数の映像が一覧で表示されている際に、操作対象となる映像の選択から連続的にシーク操作ができることが望ましい。また、映像選択からシーク操作に移る際に、複数の映像の関係性を視覚的に保ったままシーク操作が可能であることも重要な要件となる。つまり、映像選択からシーク操作が連続的であっても、選択された映像のみがフォーカスされると、他の映像との比較が困難になり、関係性が把握できなくなるという一覧性の制約が生じる。
【0009】
この解決案の一つとして、映像が一覧で表示されている場合、図13に示すように、各映像に対してシーク操作領域52を配置することが考えられる。しかし、この方法によると、映像一つ一つのシーク操作領域52が小さくなってしまい、ヘッド位置の小さな変更が難しく、操作性の制約が生じる。また、一つ一つの映像にシーク操作領域52を設置することで、画面に一覧で表示できる映像数が減ってしまうという画面の制約が生じる。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減することができる映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、第1の態様に係る発明は、複数の映像を再生制御する映像再生制御装置であって、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部と、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出部と、前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得部と、前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択部と、前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシーク部とを備えることを要旨とする。
【0012】
また、前記目的を達成するため、第2の態様に係る発明は、複数の映像を再生制御する映像再生制御方法であって、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択ステップと、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップとを備えることを要旨とする。
【0013】
また、前記目的を達成するため、第3の態様に係る発明は、複数の映像を再生制御するための映像再生制御プログラムであって、サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択ステップと、操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップとをコンピュータに実行させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減することができる映像再生制御装置、映像再生制御方法、及び映像再生制御プログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における映像再生制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態における軌跡取得部の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態におけるシーク対象選択部の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における中心点座標とヘッド位置の説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるシーク部の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるカーソル位置によるヘッド位置の変化量を示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるカーソル座標の取得例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態におけるヘッド位置の変化量の計算例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における線形軌跡方式を選択した場合の表示例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態における円形軌跡方式を選択した場合の表示例を示す図である。
【図11】操作対象となる映像が単体の場合の説明図である。
【図12】操作対象となる映像が複数の場合の説明図である。
【図13】各映像に対してシーク操作領域を配置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における映像再生制御装置の構成図である。この映像再生制御装置は、サムネイル画像を表示し複数の映像を再生制御するPC等であって、図1に示すように、サムネイル情報記憶部11と、シーク対象選択部12と、ヘッド位置記憶部13と、ヘッド位置読出部14と、軌跡取得部15と、座標記憶部16と、シーク部18と、操作方式選択部19とを備えている。入力部20は、ユーザの操作を映像再生制御装置に入力する。入力部20には、マウスやスタイラス、タブレットペン、タッチパネルなどを採用することができる。軌跡取得部15は、入力部20からの情報に基づいてカーソルの座標等を取得し、座標記憶部16に記憶する。サムネイル情報記憶部11は、サムネイル番号とともにそのサムネイル領域の中心点座標をあらかじめ記憶している。シーク対象選択部12は、サムネイル情報記憶部11に記憶された情報に基づいて、選択されたサムネイル領域を読み出し、そのサムネイル番号をヘッド位置読出部14に与える。ヘッド位置記憶部13は、表示されているサムネイルの再生ヘッド位置(以下、単に「ヘッド位置」という。)、映像のID、サムネイルが担当する映像区間の開始時間と区間終了時間をサムネイル番号とともに記憶する。なお、複数の映像の再生ヘッド位置を記憶する場合には、映像のIDと各映像の先頭からの経過時間を記憶するか、複数の映像を1つにまとめその先頭からの経過時間を記憶することが考えられる。ヘッド位置読出部14は、シーク対象選択部12からのサムネイル番号に対応するヘッド位置をヘッド位置記憶部13から読み込み、このヘッド位置をシーク部18に与える。操作方式選択部19は、映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択し、その選択結果をシーク部18に与える。シーク部18は、線形軌跡方式が選択されている場合は、カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から粗い時間粒度で映像をシークする。一方、円形軌跡方式が選択されている場合は、カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量でヘッド位置から細かい時間粒度で映像をシークする。表示部30は、シーク部18や操作方式選択部19からの情報を表示するディスプレイである。
【0018】
図2は、軌跡取得部15の動作を示すフローチャートである。以下、図2を用いて、軌跡取得部15の動作を詳細に説明する。まず、軌跡取得部15は、選択されたサムネイル領域内でカーソルが動いているかどうかを判断する(ステップS1→S2)。そして、カーソルが動き始めた座標を動作開始点として取得し、その動作開始点の座標と動作開始時刻を座標記憶部16に記憶する(ステップS3)。また、カーソルが止まると、その座標を動作終了点として取得し、その動作終了点の座標と動作終了時刻を座標記憶部16に記憶する(ステップS4→S6)。もし、選択されたサムネイル領域からカーソルが外れてしまった場合は、サムネイル領域から外れる直前の座標を動作終了点として取得する(ステップS5→S6)。
【0019】
図3は、シーク対象選択部12の動作を示すフローチャートである。以下、図3を用いて、シーク対象選択部12の動作を詳細に説明する。まず、シーク対象選択部12は、選択されたサムネイルの中心点座標をサムネイル情報記憶部11から読み込む(ステップS11→S12)。そして、サムネイル領域の中心点座標とあらかじめ設定されたサムネイルの幅と高さから、サムネイル領域が画面上のどの位置に存在しているかを決定する(ステップS13)。前述の軌跡取得部15は、このサムネイル領域の位置情報に基づいて、サムネイル領域内でカーソルが動いているかどうかを判定するようになっている。
【0020】
図4は、サムネイル領域の中心点座標とヘッド位置の説明図である。すなわち、図4(a)に示すように、サムネイル領域の中心点座標は、表示部30の画面上におけるX座標及びY座標で表される。このような中心点座標は、図4(b)に示すように、あらかじめサムネイル番号とともにサムネイル情報記憶部11が記憶している。また、表示されているサムネイルのヘッド位置H1、H2、H3、・・・、サムネイルが生成された映像のID、サムネイルが担当する映像の区間開始時間St1、St2、St3、・・・、サムネイルが担当する映像の区間終了時間Et1、Et2、Et3、・・・は、図4(c)に示すように、サムネイル番号とともにヘッド位置記憶部13に記憶される。
【0021】
図5は、シーク部18の動作を示すフローチャートである。以下、図5を用いて、シーク部18の動作を詳細に説明する。まず、シーク部18は、操作方式選択部19からの情報に基づいて、選択されている操作方式を判定する(ステップS21)。次いで、ヘッド位置読出部14と座標記憶部16からの情報に基づいてヘッド位置の変化量を決定し、その変化量に基づいてヘッド位置を変更する(ステップS22→S24、ステップS23→S24)。以下、ヘッド位置の変化量を決定する動作をさらに詳しく説明する。
【0022】
まず、線形軌跡方式が選択されている場合は、サムネイル領域上で基準となる軸(基準軸)にカーソルの軌跡を射影して変化量を決定する。すなわち、基準軸に沿って直線的にカーソルの軌跡を描いた時の移動距離や移動速度、移動方向に対応してヘッド位置を変化させる。例えば、移動距離に対応してヘッド位置を変化させる場合、カーソルを基準軸に沿って直線的に大きく動かすと、大きくヘッド位置が変化する。逆に、カーソルを基準軸に対して斜めに動かすと、その移動距離に応じた変化量にはならず、基準軸方向の移動距離に応じた変化量となる。また、移動速度に対応してヘッド位置を変化させる場合、カーソルを素早く動かすとヘッド位置が大きく変化する。さらに、移動方向を考えた場合、カーソルを右に動かすと正再生方向にヘッド位置が変化し、カーソルを左に動かすと逆再生方向にヘッド位置が変化する。
【0023】
一方、円形軌跡方式が選択されている場合は、サムネイル領域上で円形に動かされるカーソルの角速度、移動距離、回転数、回転方向に対応してヘッド位置を変化させる。例えば、角速度に対応してヘッド位置を変化させる場合、カーソルを素早く動かすとヘッド位置は大きく変化し、ゆっくり動かすとヘッド位置は小さく変化する。移動距離に対応してヘッド位置を変化させる場合、弧の長さを元にしてヘッド位置を変化させる。すなわち、同じ角度変化量ならば、カーソルで小さく円を描けばヘッド位置の変化は小さく、大きく円を描けばヘッド位置の変化は大きい。回転数に対応してヘッド位置を変化させる場合、回転数が多いほどヘッド位置の変化は大きく、回転数が少ないほどヘッド位置の変化は小さくなる。さらに、回転方向を考えた場合、カーソルを時計回りに動かすと正再生方向にヘッド位置が変化し、カーソルを反時計回りに動かすと逆再生方向にヘッド位置が変化する。
【0024】
図6は、カーソル位置によるヘッド位置の変化量を示す図である。(a)(b)は線形軌跡方式が選択されている場合、(c)(d)は円形軌跡方式が選択されている場合を示している。(a)(c)では、カーソルの軌跡がサムネイル上で完結している。一方、(b)(d)では、カーソルの軌跡がサムネイル外に出てしまっている。カーソル軌跡がサムネイル外に出た時点で、カーソルの移動は終了と判定される。そのため、カーソルの移動距離や移動速度が同じ場合でもヘッド位置の変化量に差が出ることを示している。
【0025】
図7は、カーソル座標の取得例を示す図である。ここでは、線形軌跡方式でカーソルがサムネイル上で動く場合とサムネイル外まで出てしまう場合を例示している。図7(a)では、カーソルの移動がサムネイル上で完結しているため、開始点座標には点pの座標(x1,y1)が記憶され、終了点座標には点qの座標(x2,y2)が記憶される。また、同時にカーソルが点pにあった時間t1、点qにあった時間t2も記憶される。一方、図7(b)では、カーソルの移動がサムネイル外に出ているため、開始点座標には点pの座標(x1,y1)が記憶されるが、終了点座標には点s(x4,y4)ではなく点rの座標(x3,y3)が記憶される。また、同時にカーソルが点pにあった時間t1、点rにあった時間t3も記憶される。
【0026】
図8は、ヘッド位置の変化量の計算例を示す図である。
【0027】
まず、線形軌跡方式の計算例を説明する。ここでは、ヘッド位置の変化量を左右方向の移動距離で決定するものとする。すなわち、図8(a)に示すように、カーソルを直線的に動かした場合、カーソルの左右方向の移動距離lは、点p(x1,y1)と点q(x2,y2)のx座標を用いると次式のようになる。
【数1】
【0028】
ヘッド位置の変化量Hは、H=αlとなる。αは、移動距離当たりのヘッド位置の変化量の比例係数である。よって、変更されたヘッド位置Hafterは、Hafter=H2+Hとなる。
【0029】
次に、円形軌跡方式の計算例を説明する。ここでは、ヘッド位置の変化量を角速度で決定するものとする。すなわち、図8(b)に示すように、カーソルを円形に動かした場合の角速度ωを求めるには、中心点o(tx3,ty3)と点p(x1,y1)と点q(x2,y2)が作る角度θを求める必要があり、θは以下のように求められる。
【数2】
【0030】
これにより、角速度ωは次のように求められる。
【数3】
【0031】
ヘッド位置の変化量Hは、H=βωとなる。βは、角速度当たりのヘッド位置の変化量の比例係数である。よって、変更されたヘッド位置Hafterは、Hafter=H3+Hとなる。
【0032】
次に、円形軌跡方式の別の計算例を説明する。ここでは、ヘッド位置の変化量を回転数で決定するものとする。すなわち、図8(c)に示すように、点pを始点にして、カーソルが描く軌跡の回転数を計算する。カーソルが描く軌跡の回転数を計算するために、点pが始点となったときの基準の角度φを求める。この基準角度から±2πとなる毎にヘッド位置を変更する。中心点Oと点pによる角度φは次のように求められる。
【数4】
【0033】
そして、カーソルが動いている間の中心点Oと点qによる角度ψは次のように求められる。
【数5】
【0034】
ここから、φとψの差が2πの倍数のとき、カーソルの軌跡は回転していると言える。そのため、回転数nは次のように計算することができる。
【数6】
【0035】
そして、nが0以外の整数であるとき、つまり時計回り、反時計回りのどちらかに一回転以上したときに、ヘッド位置変化量Hは、H=βωと求めることができる。βは、角速度当たりのヘッド位置の変化量の比例係数である。よって、変更されたヘッド位置Hafterは、Hafter=H4+Hとなる。
【0036】
ここで、適切な比例係数α、βを設定することで、ユーザが求める時間粒度に応じてヘッド位置を変更することができる。例えば、比例係数αを秒単位、比例係数βを2フレーム単位とする。これにより、線形軌跡方式では、粗い時間粒度でシークを実現することができ、円形軌跡方式では、細かい時間粒度でシークを実現することができるため、直感的なシーク操作が可能となる。すなわち、カーソルを移動させる領域が制限されている状況では、時間粒度が大きく求められる場合がある。この場合、短い距離のカーソル移動で大きくシーク可能であると、おおまかにヘッド位置を調整することができる。逆に、カーソルの移動領域が制限されているため、時間粒度が小さく求められる場合もある。この場合、長い距離のカーソル移動でも小さくシーク可能であると、細かくヘッド位置を調整することができる。このように、時間粒度に応じて適切な比例係数α、βを設定することで、ユーザの直感的なシーク操作を支援する。
【0037】
また、サムネイルの担当する映像区間は区間開始時間Stと区間終了時間Etで計算が可能である。そのため、映像中のサムネイルが切り替わる付近でのシーク操作時に、ヘッド位置を区間終了時間Etまでシークするか、次のサムネイルが担当する区間を考慮して求めたヘッド位置変化量Hの分だけシークすることも考えられる。これにより,ユーザの求める挙動に応じて、切り替わり点付近でのシーク方法を変更できる。
【0038】
また、マウスやタブレットペンなど、ボタン操作をしながら軌跡を描くことが可能な機器を入力部20として採用した場合は、移動終了をクリックボタンのon/offで判定する方法も考えられる。つまり、サムネイル領域の外にカーソルが出てしまった場合でも、クリックボタンがonの間はシーク操作を続けるということである。これにより、さらに直感的なシーク操作が可能になる。
【0039】
図9は、線形軌跡方式が選択されている場合の表示例であり、図10は、円形軌跡方式が選択されている場合の表示例である。これらの図に示すように、表示部30は、操作対象となるサムネイル31の一覧、タイムスライダ32、再生ヘッド33、カーソルの軌跡などを表示している。ユーザは、ラジオボタン36を使うことで所望の操作方式を選択することができる。どちらの方式でも、カーソル操作の目安として、選択された操作方式のガイドラインがサムネイル上に表示される。すなわち、線形軌跡方式が選択されている場合は、図9に示すように、サムネイル上に直線のガイドライン35が表示される。一方、円形軌跡方式が選択されている場合は、図10に示すように、サムネイル上に円形のガイドライン35が表示される。このガイドライン35上を沿わせるようにカーソルの軌跡を描くことで、サムネイル領域が狭い場合でも、直感的にスムーズな再生位置の変更を可能にする。また、現在選択されている操作方式をユーザへ視覚的に提示することができるので、操作ミスを防ぐ効果もある。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態における映像再生制御装置によれば、複数の映像をシーク操作する場合の負荷を軽減することが可能である。すなわち、複数の映像の各表示領域上のカーソルの軌跡に基づいて、その表示領域に表示される映像を送る速度を変更するようにしている。これにより、複数の映像を並行してシークする場合でも操作が煩雑になることを防止することができる。また、早い速度で再生の制御を行う線形軌跡方式と遅い速度で再生の制御行う円形軌跡方式の両方を備えている。これにより、2つの操作方式をユーザが切り替えることができるので、操作効率がよく、直感的なシーク操作が可能となる。
【符号の説明】
【0041】
11…サムネイル情報記憶部
12…シーク対象選択部
13…ヘッド位置記憶部
14…ヘッド位置読出部
15…軌跡取得部
16…座標記憶部
18…シーク部
19…操作方式選択部
20…入力部
30…表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像を再生制御する映像再生制御装置であって、
サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部と、
操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出部と、
前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得部と、
前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択部と、
前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシーク部と、
を備えることを特徴とする映像再生制御装置。
【請求項2】
複数の映像を再生制御する映像再生制御方法であって、
サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択ステップと、
操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、
前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、
前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、
前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップと、
を備えることを特徴とする映像再生制御方法。
【請求項3】
複数の映像を再生制御するための映像再生制御プログラムであって、
サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部ステップと、
操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、
前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、
前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、
前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップと、
をコンピュータに実行させるための映像再生制御プログラム。
【請求項1】
複数の映像を再生制御する映像再生制御装置であって、
サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部と、
操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出部と、
前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得部と、
前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択部と、
前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシーク部と、
を備えることを特徴とする映像再生制御装置。
【請求項2】
複数の映像を再生制御する映像再生制御方法であって、
サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択ステップと、
操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、
前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、
前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、
前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップと、
を備えることを特徴とする映像再生制御方法。
【請求項3】
複数の映像を再生制御するための映像再生制御プログラムであって、
サムネイルの選択により、シーク操作の対象となる映像を選択するシーク対象選択部ステップと、
操作対象となる映像のヘッド位置を読み出すヘッド位置読出ステップと、
前記映像の表示領域におけるカーソルの移動開始と終了の座標と時間を取得する軌跡取得ステップと、
前記映像の操作方式として線形軌跡方式または円形軌跡方式を選択する操作方式選択ステップと、
前記線形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの線形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から粗い時間粒度で前記映像をシークし、前記円形軌跡方式が選択されている場合は前記カーソルの円形の軌跡に基づいて算出したシーク量で前記ヘッド位置から細かい時間粒度で前記映像をシークするシークステップと、
をコンピュータに実行させるための映像再生制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−12036(P2013−12036A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144272(P2011−144272)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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