説明

映像再配信システム、映像再配信方法、および、映像再配信プログラム

【課題】多数の装置に映像を配信する際に、配信処理にかかるサーバの負荷およびネットワークのトラフィック負荷を低減させる。
【解決手段】映像再配信システムであって、放送局101が放送する番組を蓄積する番組蓄積手段104と、蓄積された番組を放送開始後に一定の時間間隔で複数回、マルチキャスト配信する番組再配信手段105と、再生装置111から番組の配信要求を受け付けて、当該配信要求を受け付けた配信要求時刻以降で最も近い配信開始時刻を決定し、決定した配信開始時刻に番組を配信するためのマルチキャストアドレスを再生装置111に送信する配信制御手段108とを有し、番組再配信手段105は、マルチキャストアドレスを用いて接続された再生装置111に対して決定した配信開始時刻に番組をマルチキャスト配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信されるテレビ番組の映像を再配信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テレビ放送映像をリアルタイムで視聴できない視聴者のために、HDDレコーダなどの録画装置が普及している。HDDレコーダによる録画では、ユーザがあらかじめ所定の時刻に開始する番組を録画予約することで、所定の時刻にHDDレコーダが番組の放送波を受信して記憶装置に番組の映像を録画する。これによりユーザは、開始時刻から視聴することができなかった番組を視聴することができる。
【0003】
この方式では、ユーザがあらかじめ録画予約しておいた番組のみが視聴の対象となるため、ユーザが録画予約をせずに放送途中から視聴し始めた番組については、放送開始までさかのぼって視聴することはできない。
【0004】
このような問題を解決するために、テレビ放送映像をネットワーク上のサーバで常に蓄積しておき、ユーザの要求に応じて蓄積した映像を配信することで、ユーザが録画予約をすることなく番組を視聴することができる映像再配信サーバがある(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のような映像再配信サーバはVOD(Video On Demand)サーバと呼ばれる。一般的に、VODサーバは配信方式としてユニキャスト方式を採用している。ユニキャスト方式では、サーバが視聴端末ごとに異なるセッションを生成し、サーバから視聴端末に直接映像を配信する(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3730849号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「IPマルチキャスト放送の転送技術と技術課題」、NTT技術ジャーナル、Vol.18、No.10、p.8−p.10、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の映像再配信サーバでは、ユーザの視聴要求ごとに新たなセッションを生成して映像をユニキャスト方式で配信するため、以下のような問題が発生する可能性がある。
【0009】
すなわち、多数のユーザの視聴要求によりユーザ数分のVOD配信のセッションが必要となり、映像再配信サーバの配信処理にかかる負荷が増大する。
【0010】
また、多数のユーザが、ユニキャスト方式でサーバと接続して映像を受信することにより、ネットワークのトラフィック負荷が増大する。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、多数の装置に映像を配信する際に、配信処理にかかるサーバの負荷およびネットワークのトラフィック負荷を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、放送局が放送する番組の映像を再配信する映像再配信システムであって、前記放送局が放送する番組を蓄積する番組蓄積手段と、前記番組蓄積手段に蓄積された番組を、当該番組の放送開始後に一定の時間間隔で複数回、マルチキャスト配信する番組再配信手段と、再生装置から前記番組の配信要求を受け付けて、当該配信要求を受け付けた配信要求時刻以降で、最も配信要求時刻に近い配信開始時刻を決定し、決定した配信開始時刻に前記番組を配信するためのマルチキャストアドレスを、前記再生装置に送信する配信制御手段と、を有し、前記番組再配信手段は、前記マルチキャストアドレスを用いて接続された再生装置に対して、前記決定した配信開始時刻に前記番組をマルチキャスト配信する。
【0013】
本発明は、映像再配信システムが行う、放送局が放送する番組の映像を再配信する映像再配信方法であって、前記映像再配信システムは、前記放送局が放送する番組を番組蓄積部に蓄積する蓄積ステップと、前記番組蓄積部に蓄積された番組を、当該番組の放送開始後に一定の時間間隔で複数回、マルチキャスト配信する番組再配信ステップと、再生装置から前記番組の配信要求を受け付けて、当該配信要求を受け付けた配信要求時刻以降で、最も配信要求時刻に近い配信開始時刻を決定し、決定した配信開始時刻に前記番組を配信するためのマルチキャストアドレスを、前記再生装置に送信する送信ステップと、を行い、前記番組再配信ステップは、前記マルチキャストアドレスを用いて接続された再生装置に対して、前記決定した配信開始時刻に前記番組をマルチキャスト配信する。
【0014】
本発明は、前記映像再配信方法をコンピュータに実行させるための映像再配信プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多数の装置に映像を配信する際に、配信処理にかかるサーバの負荷およびネットワークのトラフィック負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る映像再配信システムの全体構成図である。
【図2】本実施形態の映像再配信処理を示すシーケンスである。
【図3】配信応答の生成処理のフローチャートである。
【図4】放送局から放送される番組の時間帯と、番組再配信サーバで配信される番組の時間帯の一例を表した模式図である。
【図5】ある配信要求時刻に対応する番組再配信と、番組再配信が開始するまでに再生される補助映像再生リストとを表した模式図である。
【図6】他の配信要求時刻に対応する番組再配信と、番組再配信が開始するまでに再生される補助映像再生リストとを表した模式図である。
【図7】放送局から放送されるテレビ番組の時間帯と、番組再配信サーバで配信される補助映像を付加した番組の時間帯の一例を表した模式図である。
【図8】本実施形態のスキップ処理を示すシーケンスである。
【図9】放送局から放送される番組の時間帯と、番組再配信サーバで配信される番組の時間帯の一例と、スキップ制御操作時の視聴先の遷移とを表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る映像再配信システムの全体構成図である。本実施形態の映像再配信システム102は、放送局101が放送する番組の映像を再配信するシステムである。放送局101は、テレビ番組を放送する放送局であって、映像再配信システム102の外にあるものとする。
【0019】
図示する映像再配信システム102は、サーバ側の装置として、番組録画サーバ103と、録画番組蓄積部104と、番組再配信サーバ105と、補助映像配信サーバ106と、補助映像蓄積部107と、配信制御サーバ108と、過去番組表サーバ109と、番組情報蓄積部110とを備え、また、視聴者(ユーザ)が使用する再生装置111を備える。
【0020】
番組録画サーバ103は、放送局101と有線ケーブル放送または無線放送を介して接続され、放送局101が放送するテレビ番組の映像(映像データ)を受信して録画し、録画番組蓄積部104に蓄積する。
【0021】
録画番組蓄積部104は、番組録画サーバ103と直接またはネットワークを介して接続され、番組録画サーバ103が録画した番組映像を蓄積する。
【0022】
番組再配信サーバ105は、録画番組蓄積部104と直接またはネットワークを介して接続され、録画番組蓄積部104に蓄積された番組映像を、一定の時間間隔ごとに複数回ネットワークを介してマルチキャスト配信する。なお、番組再配信サーバ105は、放送局101がテレビ番組の放送を開始してから一定時間が経過した後、録画番組蓄積部104に蓄積された該当番組映像のマルチキャスト配信を開始する。
【0023】
このとき、番組再配信サーバ105は、配信するテレビ番組の先頭や途中に補助映像蓄積部107に蓄積された補助映像を付加してマルチキャスト配信してもよい。この場合、番組再配信サーバ105は、補助映像蓄積部107と直接またはネットワークを介して接続されているものとする。
【0024】
補助映像配信サーバ106は、補助映像蓄積部107と直接またはネットワークを介して接続され、再生装置111からの配信要求に応じて補助映像蓄積部107に蓄積された補助映像を再生装置111にユニキャスト配信する。すなわち、補助映像配信サーバ106は、番組再配信サーバ105がマルチキャスト方式で番組映像の配信を開始するまでの時間に、ユニキャスト方式で補助映像を配信する。
【0025】
補助映像蓄積部107には、複数の補助映像があらかじめ蓄積されている。補助映像としては、例えばテレビ番組のCM区間で放送されるCM映像や、映画の予告編などのプロモーションビデオなどが挙げられる。補助映像は、あらかじめ補助映像配信サーバ106で配信するために作成された映像でもよいし、録画番組蓄積部104に蓄積されたテレビ番組に対して人手または自動で映像編集を行うことで切り出されたCM映像などでもよい。
【0026】
配信制御サーバ108は、再生装置111から番組映像の配信要求を受け付け、配信要求を受けた時刻以降でかつ最も配信開始時刻が近い、配信要求で指定された番組の配信マルチキャストアドレスを決定する。また、配信制御サーバ108は、配信要求を受け付けた時刻から当該番組の配信開始時刻までの時間区間に配信する補助映像の補助映像再生リストを生成する。そして、配信制御サーバ108は、生成した補助映再生リストと、配信マルチキャストアドレスとを配信要求の応答として再生装置111に送信する。
【0027】
配信マルチキャストアドレスは、番組再配信サーバ105がマルチキャスト配信する番組映像(コンテンツ)のマルチキャストアドレスを指す。補助映像再生リストは、補助映像配信サーバ106が配信する少なくとも1つの補助映像のURLのリストからなる。
【0028】
また、配信制御サーバ108は、マルチキャスト配信による番組を再生中の再生装置111から、スキップ制御要求を受け付けた場合、再生中のマルチキャストアドレス以外の他の配信開始時刻のマルチキャストアドレスまたは放送局の識別情報を再生装置111に送信し、再生装置111で再生される番組の配信先を切替えさせる。また、配信制御サーバ108は、放送局101が放送する番組を再生中の再生装置111から、スキップ制御要求を受け付けた場合、番組再配信サーバ105がマルチキャスト配信する番組映像のマルチキャストアドレスを再生装置111に送信し、再生装置111で再生される番組の配信先を番組再配信サーバ105に切替えさせることとしてもよい。ここでいうスキップ制御とは、動画の再生位置を現在の再生位置から一定時間前または後ろの再生位置に切り替えることを指す。
【0029】
過去番組表サーバ109は、番組情報蓄積部110と直接またはネットワークを介して接続され、放送局101から放送される放送波から番組情報を取得し、過去に放送された番組の番組情報の一覧となる過去番組表を生成し、番組情報蓄積部110に蓄積する。放送波に含まれる番組情報とは、例えば日本の地上デジタル放送におけるSI情報が挙げられる。
【0030】
番組情報蓄積部110は、過去番組表サーバ109によって生成された過去番組表を蓄積する。
【0031】
再生装置111は、視聴者の操作に応じて番組映像を再生する装置であって、放送局101から放送される番組映像を有線ケーブル放送あるいは無線放送で受信し、再生する。また、本実施形態の再生装置111は、過去番組表サーバ109とネットワークを介して接続し、過去番組表サーバ109から過去番組表を取得し、表示する。また、再生装置111は、配信制御サーバ108とネットワークを介して接続され、視聴者の操作に従って過去番組表の中にあるテレビ番組の配信要求およびスキップ制御要求を送信し、配信制御サーバ108から応答を受信する。
【0032】
また、再生装置111は、補助映像配信サーバ106とネットワークを介して接続され、配信制御サーバ108から送信された配信要求の応答から取得した補助映像再生リストを用いて補助映像配信サーバ106に接続し、補助映像を受信し再生する。補助映像再生リストのすべての補助映像の再生が完了した後、再生装置111は、配信要求の応答から取得した配信マルチキャストアドレスに接続し、番組再配信サーバ105からマルチキャスト方式で配信される番組映像を受信し再生する。
【0033】
また、再生装置111は、放送局101が放送する番組映像、または配信マルチキャストアドレスから受信中の番組映像に対するユーザのスキップ制御要求を受け付け、配信制御サーバ108にスキップ制御要求を送信する。配信制御サーバ108から送信されたスキップ制御要求の応答が配信マルチキャストアドレスである場合、当該配信マルチキャストアドレスに接続し、マルチキャスト方式で配信される番組映像を受信し再生する。一方、配信制御サーバ108から送信されたスキップ制御要求の応答が放送波の受信再開を促す信号である場合、マルチキャスト方式で配信される番組映像の受信から放送波で配信される番組映像の受信に切り替えて、放送波の映像を再生する。
【0034】
映像再配信システム102の各サーバ103、105、106、108、109、および再生装置111は、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置と、入力装置と、出力装置とを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、各装置の各機能が実現される。例えば、各サーバおよび再生装置111の各機能は、各サーバ1用のプログラムの場合は各サーバ1のCPUが、そして、再生装置111用のプログラムの場合は再生装置111のCPUが、それぞれ実行することにより実現される。
【0035】
また、各サーバ用のプログラムおよび再生装置111用のプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD−ROMなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0036】
なお、図1に示す映像再配信システムでは、複数のサーバを用いることとしたが、これらの複数のサーバを統合した1つのサーバで番組映像を再生装置111に再配信することとしてもよい。
【0037】
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0038】
図2は、視聴者(ユーザ)の番組再配信操作を受け付け、再生装置111が再配信された番組映像の再生を行うまでのシーケンスを示したものである。視聴者は、再生装置111に対して所望の番組の再視聴操作を行う者である。
【0039】
再生装置111は、放送局101から放送波を受信し(S201)、テレビ番組映像を再生して、視聴者に提供する(S202)。
【0040】
また、再生装置111は、過去番組表サーバ109から過去番組表データを取得する(S203)。過去番組表サーバ109への過去番組表データの取得は、例えば1日1回定期的に行うものとする。
【0041】
また、再生装置111は、視聴者の操作に応じて過去番組表データを表示する(S204)。視聴者の操作としては、例えば番組視聴中の番組詳細の表示操作や、番組表の表示操作などが挙げられる。
【0042】
視聴者は、再生装置111に表示された過去番組表の中から再視聴したい番組を選択し、再視聴操作を行う(S205)。番組の選択方法としては、例えば再生装置111の操作リモコンを用いて、番組詳細画面に表示されたメニューおよびボタンを選択して決定することなどが挙げられる。
【0043】
視聴者の再視聴操作を受け付けて、再生装置111は、配信要求を生成する(S206)。配信要求の内容には、例えば番組タイトル、放送局(チャンネル)、放送開始時間、放送終了時間などが含まれる。再生装置111は、生成した配信要求を配信制御サーバ108に送信する(S207)。
【0044】
配信制御サーバ108は、受信した配信要求から、配信応答を生成する(S208)。配信応答の生成処理の詳細については、図3で説明する。
【0045】
配信制御サーバ108は、生成した配信応答を再生装置111に送信する(S209)。配信応答には、配信要求で要求した番組が再配信されるまでに再生する補助映像の補助映像再生リストと、配信要求で要求した過去の番組が配信される予定の配信マルチキャストアドレスとが含まれる。
【0046】
再生装置111は、受信した配信応答に含まれる補助映像再生リストの各URLを用いて補助映像配信サーバ106に接続し、補助映像を順次、受信し再生する(S210)。補助映像配信サーバ106は、補助映像蓄積部107に蓄積され、各URLで指定された補助映像を、ユニキャスト方式で再生装置111に順次、送信する。視聴者は、再生装置111が再生する補助映像を、補助再生リストの順に視聴する(S211)。
【0047】
再生装置111は、補助映像再生リストのすべての補助映像の再生が完了したことを検知し、次の処理に移る(S212)。
【0048】
このとき、番組再配信サーバ105は、自身のスケジュールに従って所定の時刻にマルチキャスト方式による番組再配信を開始する(S213)。
【0049】
再生装置111は、S209で受信した配信応答に含まれる配信マルチキャストアドレスを用いて番組再配信サーバ105に接続し、番組再配信サーバ105が配信する番組映像を受信し再生する(S214、S215)。視聴者は、再生装置111が再生する番組映像を視聴する。
【0050】
図3は、図2のS208の配信応答の生成フローを表したものである。
【0051】
配信制御サーバ108は、再生装置111から配信要求を受け付けた配信要求時刻以降でかつ直近の、配信要求で指定された番組の配信開始時刻を特定するとともに、当該配信開始時刻に前記番組を配信する配信マルチキャストアドレスを特定する(S301)。配信開始時刻と対応する配信マルチキャストアドレスは、事前に番組再配信サーバ105から取得していてもよいし、番組再配信サーバ105に逐次問い合わせてもよい。
【0052】
番組再配信サーバ105は、録画番組蓄積部104に蓄積された各番組を、一定の時間間隔で複数回再配信するために、各番組毎に、配信開始時刻と、当該配信開始時刻に番組を配信する配信マルチキャストアドレスとを対応付けて録画番組蓄積部104に記憶しているものとする。なお、配信マルチキャストアドレスは、マルチキャスト用に割り当てられたアドレスであって、例えば、IPv4の場合は、224.0.0.0〜239.255.255.255の範囲であり、IPv6の場合は、FFで始まるアドレスである。
【0053】
そして、配信制御サーバ108は、配信要求時刻(現在時刻)からS301で特定した配信開始時刻までの時間区間(時間)を算出する(S302)。
【0054】
そして、配信制御サーバ108は、S302で算出した時間に収まるように1つ以上の補助映像を抽出し、抽出した各補助映像の格納場所を示すURLのリストを含む補助映像再生リストを生成する(S303)。補助映像蓄積部107には、複数種類の時間長からなる複数種類の補助映像が蓄積されている。ここでは、補助映像としてCM映像を用いるものとし、例えば、補助映像蓄積部107には5秒、10秒、15秒、30秒、1分、2分、4分の長さのCM映像を蓄積しているものとする。これらのCM映像を組み合わせることで、補助映像再生リスト全体の再生時間長を5秒刻みで調整することができる。配信制御サーバ108は、各補助映像のURLと、当該補助映像の時間長との対応表を、あらかじめ補助映像配信サーバ109から取得し、図示しない記憶部に記憶しているものとする。
【0055】
なお、補助映像再生リストは、S302で算出した時間区間に応じて、毎回作成してもよいし、代表的な時間区間(例えば、1分から5分まで1分刻みで5種類の時間区間)について、あらかじめ補助映像再生リストを作成しておき、記憶部に記憶していてもよい。この場合、S302で算出した時間区間が、あらかじめ作成しておいた補助映像再生リストの時間区間に合致したとき、補助映像再生リストを作成する処理時間を削減することができる。
【0056】
そして、配信制御サーバ108は、S301で取得した配信マルチキャストアドレスと、S303で生成した補助映像再生リストとを含む配信応答を生成し、再生装置111への応答とする(S304)。
【0057】
図4は、ある番組において、放送局101から放送される時間帯と、番組再配信サーバ105で配信される時間帯の一例を表した模式図である。
【0058】
401は、放送局101から放送される番組の時間帯を表す。402、403、404は、401で放送される番組を、番組再配信サーバ105が再配信する番組の時間帯を表す。番組再配信サーバ105は、同じ番組を一定間隔でマルチキャスト配信する。図4に示す例では、番組再配信サーバ105は10分ごとにマルチキャスト配信を行っている。なお、図4には示していないが、番組終了後も、10分ごとに当該番組のマルチキャスト配信が行われていてもよい。
【0059】
図5は、ある配信要求の配信要求時刻に対応する番組再配信と、番組再配信が開始するまでに再生される補助映像再生リストとを模式的に表したものである。図示する例では、配信要求時刻が19:07:15で、当該時刻以降で直近の配信開始時刻は19:10:00であり、配信開始時刻までは2分45秒ある。配信制御サーバ108は、2分45秒以内の長さになるように補助映像(CM A〜CM E)を抽出し、抽出した補助映像のURLを設定した補助映像再生リストを生成する。
【0060】
図6は、図5とは異なる配信要求の配信要求時刻に対応する番組再配信と、番組再配信が開始するまでに再生される補助映像再生リストとを模式的に表したものである。図示する例では、配信要求時刻が19:15:30で、当該時刻以降で直近の配信開始時刻は19:20:00であり、配信開始時刻までは4分30秒ある。配信制御サーバ108は、4分30秒以内の長さになるように補助映像(映画予告編CMとCM F)を抽出し、抽出した補助映像のURLを設定した補助映像再生リストを生成する。
【0061】
図5および図6では、配信要求時刻に応じて、マルチキャスト配信される番組の配信開始時刻が異なり、再生される補助映像も変わることを表している。
【0062】
図4から図6に示すように、同一番組のマルチキャストを一定間隔で複数回配信することで、視聴者は各マルチキャスト配信の間隔以下(図示する例では、10分以下)の待ち時間で再配信された番組を視聴することができる。また、配信が開始されるまでは補助映像群が再生され、まったく映像が再生されない時間を極力短くすることで、視聴者を飽きさせずに再配信される番組に誘導することができる。
【0063】
図7は、番組再配信サーバ105が配信する番組映像701〜703の先頭に補助映像蓄積部107に蓄積された所定の時間(図示する例では1分)の補助映像704を付与した場合の、放送局から放送されるテレビ番組の時間帯と、番組再配信サーバ105で配信される番組映像の時間帯の一例を表した模式図である。
【0064】
図示するように、番組再配信サーバ105がマルチキャスト配信する番組映像の先頭に所定の補助映像を付与することで、視聴者が再視聴要求を開始した時刻によっては1つも補助映像を視聴せずに番組再配信を視聴するということがなくなり、補助映像を提供する事業者にとって視聴機会の不公平を是正することができる。
【0065】
図8は、番組再配信サーバ105が配信する番組映像の視聴中に、視聴者が映像のスキップ制御操作を行った場合のシーケンスを示したものである。
【0066】
番組再配信サーバ105は、一定間隔で番組映像をマルチキャスト配信している。具体的には、番組再配信サーバ105は、放送局101によるテレビ番組放送開始から一定時間経過後に当該番組映像のマルチキャスト配信を開始し(S801)、引き続き一定時間経過後に当該番組映像のマルチキャスト配信を開始する(S802、S803)。
【0067】
視聴者は、S801でマルチキャスト配信されている番組映像を視聴中であり(S804、S805)、ここで、再生装置111に対して番組のスキップ制御操作を行うものとする(S806)。図示する例では、スキップ制御としてチャプター戻しを行うものとする。
【0068】
再生装置111は、スキップ制御操作を受け付けて、スキップ後の映像視聴先を問い合わせる配信要求を生成し(S807)、配信制御サーバ108に送信する(S808)。配信要求には、例えば現在視聴中の番組名、放送局、配信マルチキャストアドレスなどが含まれる。
【0069】
再生装置111から配信要求を受信した配信制御サーバ108は、配信要求に含まれる現在視聴中の番組の配信マルチキャストアドレスに基づいて、当該視聴中の配信マルチキャストアドレス以外の他の配信開始時刻のマルチキャストアドレスまたは放送局の識別情報をスキップ後の映像視聴先とする配信応答を生成する。例えば、配信制御サーバ108は、当該視聴中の配信マルチキャストアドレスと配信開始時刻が隣接している別の配信マルチキャストアドレスもしくは放送局のチャンネルを、スキップ後の映像視聴先とする配信応答を生成し(S809)、再生装置111に送信する(S810)。
【0070】
例えば、スキップ制御がチャプター戻しの場合は、現在視聴中のマルチキャスト配信の1つ後に番組配信を開始したマルチキャスト配信に対応する配信マルチキャストアドレスがスキップ後の映像視聴先となる。
【0071】
一方、スキップ制御がチャプター送りの場合は、現在視聴中のマルチキャスト配信の1つ前に番組配信を開始したマルチキャスト配信に対応する配信マルチキャストアドレスがスキップ後の映像視聴先となる。また、スキップ制御がチャプター送りのときに、現在視聴中のマルチキャスト配信よりも前に開始したマルチキャスト配信がない場合、スキップ後の視聴先はマルチキャスト配信ではなく放送局となる。配信開始時刻と配信マルチキャストアドレスは、事前に番組再配信サーバ105から取得していてもよいし、番組再配信サーバ105に逐次問い合わせてもよい。
【0072】
再生装置111は、受信した配信応答が配信マルチキャストアドレスの場合、当該配信マルチキャストアドレスに接続し、番組再配信サーバ105が配信する番組映像を受信し再生する(S811、S812)。再生装置111が受信した配信応答が、配信マルチキャストアドレスではなく放送局の場合、再生装置111は、映像の受信先をマルチキャスト配信から対応する番組の放送波に切り替え、該当する放送局から放送波を受信し、再生する。視聴者は、再生装置111が再生する番組映像を視聴する。
【0073】
なお、配信制御サーバ108は、放送局101が放送する番組を再生中の再生装置111から、スキップ制御操作の配信要求を受け付け、番組再配信サーバ105がマルチキャスト配信する番組映像のいずれかの配信マルチキャストアドレスを再生装置111に送信し、再生装置111で再生される番組の配信先を番組再配信サーバ105に切替ることとしてもよい。
【0074】
図9は、ある番組において、放送局101から放送される時間帯と、番組再配信サーバ105で配信される時間帯の一例と、スキップ制御操作時の視聴先の遷移を表した模式図である。
【0075】
図示する例では、視聴者は、番組再配信1(902)で配信されている番組Aを再生装置111で再生し、視聴しているものとする。番組再配信1(902)において、番組Aが開始して15分が経過したタイミング(905)で、視聴者がスキップ制御操作としてチャプター送りを行った場合、スキップ後の視聴先は放送局101が放送する本放送(901)になり、視聴者は番組Aが開始して25分が経過した状態(906)から視聴を継続する。つまり10分の早送りをしたことになる。一方、視聴者がスキップ制御操作としてチャプター戻しを行った場合、スキップ後の視聴先は番組再配信2(903)になり、視聴者は番組Aが開始して5分が経過した状態(907)から視聴を継続する。つまり10分の巻き戻しをしたことになる。
【0076】
このように映像配信先を切り替えることによって、視聴者に疑似的に映像のスキップ制御操作を提供することができる。
【0077】
以上説明した本実施形態では、番組再配信サーバは、録画番組蓄積部に蓄積された番組映像を、一定の時間間隔ごとに複数回マルチキャスト配信する。これにより、本実施形態では、視聴者の視聴要求数や視聴要求時刻に関わらず一定の容量をマルチキャスト配信することができ、サーバの配信処理にかかる負荷を一定に保つことができる。また、マルチキャスト方式で配信することから、多数のユーザが再配信映像を視聴しても、ユニキャスト方式で再配信する方式に比べて、ネットワークのトラフィック負荷を抑えることができる。
【0078】
すなわち、本実施形態では、番組再配信サーバの配信処理にかかる負荷を予測可能かつ一定に抑えることができ、また、ユニキャスト配信をマルチキャスト配信にまとめることで多数の視聴者の再配信番組の視聴によるトラフィック負荷の増大を抑えることができる。
【0079】
また、本実施形態では、一定間隔で複数のマルチキャストを配信することで、視聴者はマルチキャスト配信の間隔以下の待ち時間で、番組再配信を視聴することができる。
【0080】
また、本実施形態では、番組再配信が開始されるまでは補助映像を再生することで、映像が再生されない時間を極力短くし、視聴者を飽きさせずに番組再配信に誘導することができる。すなわち、本実施形態では、過去に放送された、もしくは現在放送中のテレビ番組の再配信において、ユーザごとの視聴要求の時刻のばらつきを複数の補助映像の組み合わせによって調整し、マルチキャスト方式で番組を配信することができる。
【0081】
また、本実施形態では、マルチキャスト配信を一定間隔で複数回行い、複数のマルチキャスト配信または放送波を番組映像配信先として切り替えることで、放送波や単一のマルチキャストを受信するだけでは不可能な、擬似的なチャプタースキップ操作を視聴者に提供することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0083】
101:放送局
102:映像再配信システム
103:番組録画サーバ
104:録画番組蓄積部
105:番組再配信サーバ
106:補助映像配信サーバ
107:補助映像蓄積部
108:配信制御サーバ
109:過去番組表サーバ
110:番組情報蓄積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局が放送する番組の映像を再配信する映像再配信システムであって、
前記放送局が放送する番組を蓄積する番組蓄積手段と、
前記番組蓄積手段に蓄積された番組を、当該番組の放送開始後に一定の時間間隔で複数回、マルチキャスト配信する番組再配信手段と、
再生装置から前記番組の配信要求を受け付けて、当該配信要求を受け付けた配信要求時刻以降で、最も配信要求時刻に近い配信開始時刻を決定し、決定した配信開始時刻に前記番組を配信するためのマルチキャストアドレスを、前記再生装置に送信する配信制御手段と、を有し、
前記番組再配信手段は、前記マルチキャストアドレスを用いて接続された再生装置に対して、前記決定した配信開始時刻に前記番組をマルチキャスト配信すること
を特徴とする映像再配信システム。
【請求項2】
請求項1記載の映像再配信システムであって、
前記配信制御手段は、前記配信要求時刻から前記決定した配信開始時刻までの間に、前記再生装置に配信する補助映像の再生リストを生成し、前記マルチキャストアドレスとともに前記再生装置に送信し、
前記再生リストの補助映像を前記再生装置に配信する補助映像配信手段を、さらに有すること
を特徴とする映像再配信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の映像再配信システムであって、
前記配信制御手段は、マルチキャスト配信による番組を再生中の前記再生装置から、スキップ制御要求を受け付けた場合、前記再生中のマルチキャストアドレス以外の他の配信開始時刻のマルチキャストアドレスまたは放送局の識別情報を前記再生装置に送信し、前記再生装置で再生される番組の配信先を切替えさせること
を特徴とする映像再配信システム。
【請求項4】
映像再配信システムが行う、放送局が放送する番組の映像を再配信する映像再配信方法であって、
前記映像再配信システムは、前記放送局が放送する番組を番組蓄積部に蓄積する蓄積ステップと、
前記番組蓄積部に蓄積された番組を、当該番組の放送開始後に一定の時間間隔で複数回、マルチキャスト配信する番組再配信ステップと、
再生装置から前記番組の配信要求を受け付けて、当該配信要求を受け付けた配信要求時刻以降で、最も配信要求時刻に近い配信開始時刻を決定し、決定した配信開始時刻に前記番組を配信するためのマルチキャストアドレスを、前記再生装置に送信する送信ステップと、を行い、
前記番組再配信ステップは、前記マルチキャストアドレスを用いて接続された再生装置に対して、前記決定した配信開始時刻に前記番組をマルチキャスト配信すること
を特徴とする映像再配信方法。
【請求項5】
請求項4記載の映像再配信方法であって、
前記配信要求時刻から前記決定した配信開始時刻までの間に、前記再生装置に配信する補助映像の再生リストを生成する補助映像再生リスト生成ステップと、
前記再生リストの補助映像を前記再生装置に配信する補助映像配信ステップと、をさらに行い、
前記送信ステップは、前記補助映像の再生リストを、前記マルチキャストアドレスとともに前記再生装置に送信すること
を特徴とする映像再配信方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の映像再配信方法であって、
マルチキャスト配信による番組を再生中の前記再生装置から、スキップ制御要求を受け付けた場合、前記再生中のマルチキャストアドレス以外の他の配信開始時刻のマルチキャストアドレスまたは放送局の識別情報を前記再生装置に送信し、前記再生装置で再生される番組の配信先を切替えさせること
を特徴とする映像再配信方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の映像再配信方法をコンピュータに実行させるための映像再配信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253410(P2012−253410A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122202(P2011−122202)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】