説明

映像処理装置及び映像処理方法

【課題】簡略な構成でフレームレート変換後の中間フレームの映像が破綻することを抑制することができる映像処理装置及び映像処理方法を提供する。
【解決手段】動きベクトル検出部1は、入力された映像信号から画像の特徴量を検出し、補間位相算出部21は、入力フレーム周波数を出力フレーム周波数で除算した位相間隔から決定される補間位相から補間位相係数を生成し、補間位相マッピング部22は、生成された補間位相係数を補正し、投影処理部26、27及びマージ部28は、検出された動き量と補正された補間位相係数とを用いて、入力フレーム画像から補間位相と異なる位相の中間フレーム画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号のフレームレートを変換するフレームレート変換処理を行う映像処理装置及び映像処理方法に関し、特に、シネマ映像のデジャダ処理を行う映像処理装置及び映像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シネマ映像のような24Hzの映像を、60Hzの映像を表示する表示装置でそのまま表示することができないため、映画フィルムなど毎秒24コマで記録された映像を、テレビジョン放送などで用いられる毎秒30フレーム(60フィールド)の映像信号に変換するフレームレート変換処理が行われる。
【0003】
上記のようなフレームレート変換処理の一例として、例えば、特許文献1には、初めに、補間フレームを挟む2フレームの組み合わせのうちでフレーム間距離が最も狭いフレームn−1、nにより動きベクトルを検出して補間フレームの画素に対応付け、動きベクトルを対応付けることができない画素が残っている場合、先程の2フレームとは少なくとも一方が異なる2フレーム(例えば、フレーム間距離がより広いフレームn−2、n+1)により動きベクトルを検出して補間フレームの画素に対応付け、まだ動きベクトルを対応付けることができない画素が残っている場合、さらに先程の2フレームとは少なくとも一方が異なる2フレーム(例えば、フレーム間距離がより広いフレームn−3、n+2)により動きベクトルを検出して補間フレームの画素に対応付ける画像処理装置が開示されている。この画像処理装置では、補間フレームのできるだけ多くの画素に動きベクトルを対応付けて、補間フレームの画質劣化を抑止することができる。
【0004】
また、他のフレームレート変換処理の一例として、特許文献2に開示される映像信号の方式変換装置がある。特許文献2に代表される従来の映像処理装置は、動きベクトル検出部及び動きベクトル処理部を用いてフレームレート変換を行う。以下、この従来の映像処理装置が入力フレーム周波数24Hzの所謂シネマ映像を出力フレーム周波数60Hzの映像に変換する処理について具体的に説明する。
【0005】
図6は、フレームレート変換を行う従来の映像処理装置の構成を示すブロック図であり、図7は、図6に示す動きベクトル処理部の構成を示すブロック図である。
【0006】
図6に示す従来の映像処理装置では、動きベクトル検出部101及び動きベクトル処理部102を用いてフレームレート変換処理が実行される。具体的には、動きベクトル検出部101は、連続する入力フレームnの画像データ及び入力フレームn+1の画像データを用いて、これらのフレーム間の動き量を検出し、画素毎に又はブロック毎に動きベクトルVを検出する。動きベクトル処理部102は、動きベクトルV、入力フレームnの画像データ及び入力フレームn+1の画像データを用いて中間フレームn+K(ここで、Kは補間位相係数を表し、0≦K<1)の画像データを生成する。
【0007】
図7に示すように、動きベクトル処理部102は、補間位相算出部103、乗算器104、105、減算器106、投影処理部107、108、及びマージ部109を備える。まず、補間位相算出部103は、入力フレーム周波数/出力フレーム周波数(=24/60=0.4)を処理毎に加算し、その小数部を補間位相係数Kとして算出する。
【0008】
ここでは、初期値0.0から始めて0.4を順次加算し、加算結果が0.0、0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、…となり、小数部である補間位相係数Kは、0.0、0.4、0.8、0.2、0.6、0.0となり、この5パターンの繰り返しとなる。また、上記加算結果の整数部が変化するタイミングで、入力フレーム画像も順次切り替わるように制御される。
【0009】
動きベクトル検出部101により検出された動きベクトルVは、そのフレーム間距離が1.0である場合に相当するため、入力フレームnの画像データからの投影処理によって中間フレームn+Kの画像データを生成する際には、この動きベクトルVに補間位相係数Kを乗じてゲイン処理を行う必要がある。同様に、入力フレームn+1の画像データからの投影処理によって中間フレームn+Kの画像データを生成する際には、この動きベクトルVに−(1−K)=K−1を乗じてゲイン処理を行う必要がある。なお、この場合に符号が変わるのは、入力フレームn+1から時間を遡行する方向に投影するためである。
【0010】
上述したように、入力フレームnの画像データ及び入力フレームn+1の画像データを各々、投影処理部107、108にて投影処理し、各々の中間フレーム映像が生成される。これらの中間フレーム映像は、マージ部109にて適宜マージされ、最終的に中間フレームn+Kの画像データが出力される。
【0011】
具体的には、フレームレートを24Hzから60Hzへ変換する場合、入力されるフレーム画像の時間軸上のサンプル位相をフレーム順に0.0、1.0、2.0、3.0、…とすると、出力されるフレーム画像の時間軸上の位相である補間位相は、0.0、0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、…となる。この位相間隔は0.4であり、入力フレーム周波数/出力フレーム周波数で決定され、この例では、24/60である。動きベクトル処理部102は、動きベクトルVに補間位相の小数部(0.0、0.4、0.8、0.2、0.6、…)を補間位相係数Kとし、動きベクトルVに補間位相係数Kを乗じて入力フレームの各画素データを補間位相上に投影し、中間フレームの各画素データを生成する。
【0012】
上記のフレームレート変換処理は、所謂シネマスムース処理(シネマ映像のデジャダ処理)と称され、24Hzの映像(シネマ映像)の動きのカクカク感(ジャダ)を違和感の無い滑らかな動きに変換する効果があり、昨今のTV装置に搭載されはじめている。この従来のシネマスムース処理は、比較的ゆっくりとした動きの映像や、画面全体が同一方向に動く映像に対して効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−288681号公報
【特許文献2】特許第4083265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記の従来のシネマスムース処理では、画面上の複数の物体がそれぞれ別方向に比較的早く移動している映像に対しては、種々の原因により、生成した中間フレームの映像が破綻する場合がある。この映像破綻は、物体の境界付近での動きベクトルの検出エラー、高速で移動する物体の動きベクトルの検出エラーなどいくつかの動きベクトルの検出エラーが表面化したものである。これらの原因である動きベクトルの検出エラーを完全に取り除くことは極めて難しく、またリソースも消費する。
【0015】
本発明の目的は、簡略な構成でフレームレート変換後の中間フレームの映像が破綻することを抑制することができる映像処理装置及び映像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
映像信号のフレームレートを変換する映像処理装置であって、入力された映像信号のうち、少なくとも、映像信号がフィルム素材であるか否か、映像信号にOSDが表示されているかのいずれかの特徴を検出する特徴検出部と、前記特徴検出部により検出された特徴を用いて、前記入力フレーム画像の位相と異なる位相の中間フレーム画像を生成する画像生成部とを備え、前記画像生成部は、前記中間フレーム画像の位相を入力フレーム周波数と出力フレーム周波数とを基に決定される補間位相と異なる位相に移動させることを特徴とする映像処理装置である。
【0017】
この映像処理装置においては、入力された映像信号の特徴を検出し、検出した特徴を用いて、入力フレーム画像の位相と異なる位相の中間フレーム画像が生成される。このとき、中間フレーム画像の位相が入力フレーム周波数と出力フレーム周波数とを基に決定される補間位相と異なる位相に移動されるので、中間フレーム画像の位相を補間位相とは異なる整数に近い位相にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
上述した構成により、本映像処理装置においては、出力フレーム画像として生成される中間フレーム画像の破綻がユーザに検知されにくくなるので、簡略な構成でフレームレート変換後の中間フレームの映像が破綻することを抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態による映像処理装置の構成を示すブロック図
【図2】図1に示す動きベクトル処理部の構成を示すブロック図
【図3】図1に示す動きベクトル処理部の構成を示すブロック図
【図4】α=0.625の場合における補間位相対比図
【図5】入力フレームnの画像データ又は入力フレームn+1の画像データアから中間フレームn+Kの画像データを生成する投影処理を模式的に示す図。
【図6】フレームレート変換を行う従来の映像処理装置の構成を示すブロック図
【図7】図6に示す動きベクトル処理部の構成を示すブロック図
【図8】フィルム検出結果と、α値との関係を示す図
【図9】図1に示す動きベクトル処理部の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1)以下、本発明の一実施の形態による映像処理装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態による映像処理装置の構成を示すブロック図であり、図2は、図1に示す動きベクトル処理部の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の映像処理装置は、動きベクトル検出部11及び動きベクトル処理部12を備え、図2に示すように、動きベクトル処理部12は、補間位相算出部21、補間位相マッピング部22、乗算器23、24、減算器25、投影処理部26、27、マージ部28、および映像特徴検出部29を備える。
【0022】
図1に示す映像処理装置は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置等の種々の画像表示装置、VTR、DVDレコーダ、ブルーレイディスクレコーダ等の映像記録/再生装置等に使用され、例えば、60Hzの入力映像信号を、動きベクトル情報を用いたフレーム内装処理により、120Hzの映像信号に変換して出力するフレームレート変換処理、あるいはもともとはフレーム周波数24Hzの所謂シネマ映像を、60Hzの映像信号にプルダウンした映像信号を入力とし、動きベクトル情報を用いたフレーム内装処理により出力フレーム周波数120Hz、あるいは60Hzの映像に変換するシネマ映像のデジャダ処理を行う。
【0023】
動きベクトル検出部11には、外部又は内部の所定の回路から、時間的に連続する2つの入力フレーム画像、例えば、入力フレームnの画像データ及び入力フレームn+1の画像データが入力され、これらのフレーム間の動き量を検出し、画素毎に又はブロック毎に動きベクトルVを検出する。この動きベクトル検出方法としては、公知の動きベクトル検出方法が用いられ、例えば、ブロック毎のマッチング処理による検出方法が用いられる。なお、本発明に用いられる画像の動き量は、上記の動きベクトルに特に限定されず、時間的に前後する少なくとも2つ以上の入力フレーム画像を用いて検出された画像の動き量であれば、種々の動き量を用いることができ、画面全体のパン方向の移動量等を用いてもよい。
【0024】
動きベクトル処理部12は、動きベクトルV、入力フレームnの画像データ及び入力フレームn+1の画像データを用いて、入力フレーム周波数を出力フレーム周波数で除算した位相間隔から決定される論理補間位相とは異なる位相の中間フレームn+K(ここで、Kは補間位相係数を表し、0≦K<1)の画像データを生成する。
ここで、中間フレームn+Kの位相は、整数に近い位相である場合、ベクトル情報の検出エラー等に起因する映像の破綻がユーザの目には検知されにくいことが本願発明者の実験結果により判明した。すなわち、中間フレームの位相が整数に近い位相である場合、換言すれば、補間位相係数K(0≦K<1)が0.5からなるべく遠ければ、中間フレーム映像の破綻が検知されにくい。
【0025】
補間位相算出部21は、入力フレーム周波数を出力フレーム周波数で除算した位相間隔から決定される補間位相の小数部を論理補間位相係数Kとして生成する。補間位相マッピング部22は、補間位相を整数位相に近づけるようにマッピング演算を行い、中間フレームn+Kの位相が入力フレームn又は入力フレームn+1のいずれかの位相に近づくように、映像特徴検出部29が検出する入力映像の特徴に応じて、補間位相算出部21により生成された論理補間位相係数Kを補正し、補正後の補間位相係数Kmを生成する。
【0026】
乗算器23は、動きベクトルVと補正後の補間位相係数Kmとを乗算し、投影処理部26は、V×Kmを用いて入力フレームnの画像データを投影処理して中間フレームの画像データを生成する。また、減算器25は、補正後の補間位相係数Kmから1を減算し、乗算器24は、動きベクトルVと(Km−1)とを乗算し、投影処理部27は、V×(Km−1)を用いてフレームn+1の画像データを投影処理して中間フレームの画像データを生成する。マージ部28は、これらの中間フレームの画像データを適宜マージし、最終的に中間フレームn+Kの画像データを出力する。
【0027】
中間フレームn+Kの位相を整数値に完全に整数位相に丸めてしまうと、中間フレーム映像の破綻は全く無いが、フレームレート変換に伴う動きの滑らかさの改善効果や、シネマスムースの効果もなくなってしまう。このため、中間フレームn+Kの位相をどの程度整数位相に近づけるかは、表示している映像の特性に適応して制御することが好ましい。
映像の特徴としては、(1)映像がフィルム素材であるか否か、(2)OSDが表示されているか否か、といった情報が考えられる。
【0028】
なお、ここで、OSDは、本発明の文字情報が表示されているか否かにおける一例であって、文字情報としては、この映像処理装置内において合成されるOSD情報(例えば、ユーザーメニュー等)の他、映像処理装置に接続された接続機器において生成されたOSD情報(例えば、録画機器のユーザーメニュー、録画した番組一覧、録画予約情報等)、映像信号に予め重畳されている文字情報(例えば、スポーツ番組における得点情報、歌番組の歌詞、映画の字幕)、放送局のロゴ、記録媒体に記録されたメニュー表示(例えば、DVDに記録されたチャプター選択情報、音声切換情報等)、緊急情報(例えば、地震情報、臨時ニュース等)であっても良い。つまり、文字情報とは、画面において、動きのある人物や物体以外に表示される、静止した文字情報であり、ある程度の大きさ(面積)を有しているもの全般をいうものである。
【0029】
なお、静止した文字情報を対象とした場合には、本発明の位相制御により、より文字のぼけがなく、表示が明確にすることが可能になるが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、一定方向に移動するテロップ等においても適用することは可能である。
こうした特徴に適応して補正後の補間位相係数Kmを定め、補正後の補間位相係数Kmを動きベクトルVに乗じ、その算出した乗算値を用いて入力フレーム画像の該当画素を投影して中間フレーム画像を生成する。
【0030】
具体的に(1)映像がフィルム素材であるか否か、の判定に基づく制御について述べる。
図3は、図2の映像特徴検出部29を、フィルム検出部39とした場合のベクトル処理部の構成を示すブロック図である。
従来、もともと24Hzのフィルム映像が60Hz、50Hzのテレビ用映像信号となる場合、3、2プルダウン、2、2プルダウンという処理により、同じコマが重複されて使用される。また昨今、フィルム素材の忠実な再生を行うために、再生機からの映像出力が24Hzそのまま場合がある。いずれにしても、通常の映像信号とは異なり、単位時間当たりのコマ数が少なく、これに伴い動きベクトル情報の精度が悪くなるとともに、少ないコマから多くのフレームを生成する必要があり、動きベクトルの検出エラーに伴う中間フレームの映像破綻が顕著になる。
よって、入力画像がフィルム素材である場合、そうでない場合と比較して、補間位相を整数位相に近づけることにより、破綻を目立たなくすることが見た目の違和感を低減することになる。
図3のフィルム検出部39は、入力フレームn、n+1の映像信号を入力し、二つの映像信号のフレーム周波数、および二つの映像信号の差分が発生する周期から、入力映像信号がフィルム素材か否かを判定する。このフィルム判定処理自体は公知の技術であるので、詳細は割愛する。
例えば、入力フレーム周波数が24Hz、出力フレーム周波数が60Hzの場合には、動きベクトル処理部2において、先ず、補間位相算出部21は、補間位相算出を行い、具体的には、入力フレーム周波数/出力フレーム周波数(=24/60=0.4)を処理毎に加算し、その小数部を論理補間位相係数Kとして算出する。
【0031】
ここでは、初期値0から始めて0.4を順次加算し、加算結果が0.0、0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、…となり、小数部である論理補間位相係数Kは、0.0、0.4、0.8、0.2、0.6、0.0となり、この5パターンの繰り返しとなる。
【0032】
次に、補間位相マッピング部22は、論理補間位相係数Kが0.5からより遠くなるように、マッピング後の補間位相係数Kmを生成する。例えば、マッピング後の補間位相係数Kmの算出方法としては、変換係数をαとすると、K≦0.5のとき、Km=K×α、K>0.5のとき、Km=1−(1−K)×α=1−α+K×αが演算される。これらの式から明らかなように、αの値をパラメータとして0.5からの距離を可変することができる。
【0033】
ここで、変換係数αは、前記フィルム検出部39が検出する結果によって決定されるパラメータであり、例えば、入力映像信号がフィルム素材の場合に、フィルム素材でない場合と比較して小さい値とし、補間位相が原画位相に近くなるようにする。テレビ放送においては、映像信号がフィルム素材である状態と、フィルム素材でない状態が頻繁に切り替わることも珍しくないので、前記αの値は、2値しかとりえないものではなく、状態の変化時に、多段階で遷移する特性を持たせることが望ましい。
図8に、フィルム検出結果と、αとの関係の一例を示す。図8の時刻t1以前、t3以降がともにフィルム素材の映像信号の入力期間とする。一般にフィルム検出処理では、検出の遅れが伴うが、簡単のため、ここではその検出おくれは考慮しない。
【0034】
時刻t1以前のα値であるα1は相対的に小さい値とし、それによってK≦0.5のときのKmの値は小さく、K>0.5のときのKmの値は大きくなる。このKmを用いて生成される中間フレーム画像は、相対的に原画位相に近い位置に生成されることになる。時刻t1において、入力映像信号がフィルム映像から非フィルム映像に変化するが、時刻t1において、非フィルム映像の場合に使用されるα値であるα2(α1<α2)に切り替えると、生成される中間フレームの画質や位相に急峻な変化が生じるために、見た目の違和感が大きくなる。よって、所定の時間、図8においては、t1からt2、をかけて緩やかにα値をα1からα2に変化されるのが望ましい。同様に、入力信号が非フィルム映像からフィルム映像に変化する時刻t3に関しても、t3からt4までに時間をおいて、α値をα2からα1に緩やかに変化されるのが望ましい。ここで、t1からt2の時間と、t3からt4の時間を必ずしも同じ値にする必要はない。また、α2の値を必ずしも1にする必要もない。
α=0.625の場合の例を図4に示す。図4は、α=0.625の場合における補間位相対比図である。前述したように、補間位相が2.0以上となる場合、繰り返しとなるため、図4では割愛している。また、視覚的な理解の助けのため、破綻が検知されやすい中間距離の補間位相(0.5付近の位相範囲)をハッチングで示している。
【0035】
図4に示す○は入力フレームの位相を示し、△は従来の出力フレーム(中間フレーム)の位相を示し、□は本実施の形態の出力フレーム(中間フレーム)の位相を示し、図4の横軸には論理的な補間位相(入力フレーム周波数を出力フレーム周波数で除算した位相間隔から決定される論理補間位相)の小数部=Kの間隔を示し、縦軸には本実施の形態の補正された補間位相の小数部=Kmの間隔を示している。
【0036】
図に示す出力フレームの論理的な補間位相係数Kは、0.4の幅の等間隔にあり、本実施の形態のマッピング後の補間位相係数Kmは、等間隔ではなく、0.25、0.625、0.25、0.625、0.25の間隔になっており、順に出力フレームの位相を挙げると、0.0、0.25、0.875、1.125、1.75、2.0、…となり、本来の補間位相である0.0、0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、…と比して、何れも整数値に近づいていることがわかる。このように、補間位相係数Kmを整数値に近づけることによって、生成する中間フレームの時間軸の位相を入力フレームの時間軸の位相に近づけることができる。
【0037】
また、図に示すハッチング領域は、中間フレーム映像の破綻が検知されやすい領域であり、従来の出力フレーム(中間フレーム)の位相△は、このハッチング領域内に位置しているが、本実施の形態の出力フレーム(中間フレーム)の位相□はすべてハッチング領域外にあり、本実施の形態では、中間フレーム映像の破綻が検知されにくいことがわかる。
【0038】
なお、上記の説明では、α値の特性は直線としているが、このような線形特性に特に限定されず、前述したように、官能的な調査に基づいて予め設定されるものであり、2次関数、3次以上の関数、指数関数、多変数関数、これらの組み合わせ等の複雑な特性を用いてもよい。また、本実施の形態では、入力映像信号がもともとフィルム素材か否かに応じて変換係数αの大きさを変化させたが、これに拠らず、例えば、入力映像信号にOSD表示が含まれているか否か、テロップ表示が含まれているか否か、といった別の特徴に依存して変換後の補間位相係数Kmを算出してもよく、この場合も、相応の効果が得られる。さらに、補間位相マッピング部22における算術式も、上述のような線形計算に特に限定されず、種々の算術式を用いることができる。
【0039】
図5は、入力フレームnの画像データ又は入力フレームn+1の画像データから中間フレームn+Kの画像データを生成する投影処理を模式的に示す図である。図5に示すように、動きベクトル検出部1で検出された動きベクトルVは、そのフレーム間距離が1.0である場合に相当するため、入力フレームnの画像データからの投影処理によって中間フレームn+Kの画像データを生成する際には、この動きベクトルVに補正後の補間位相係数Kmを乗じてゲイン処理を行う必要がある。同様に、入力フレームn+1の画像データからの投影処理によって中間フレームn+Kの画像データを生成する際には、この動きベクトルVに−(1−Km)=Km−1を乗じてゲイン処理を行う必要がある。なお、この場合に符号が変わるのは、入力フレームn+1から時間を遡行する方向に投影するためである。
【0040】
上記のように、投影処理部26は、V×Kmを用いて入力フレームnの画像データを投影処理して中間フレームの画像データを生成し、投影処理部27は、V×(Km−1)を用いて入力フレームn+1の画像データを投影処理して中間フレームの画像データを生成する。マージ部28は、これらの中間フレームの画像データを適宜マージし、最終的に中間フレームn+Kの画像データを出力フレームの画像データとして出力フレーム周波数60Hzで出力する。なお、投影処理部26、27及びマージ部28による中間フレーム画像の作成方法としては、公知の種々の方法を用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【0041】
上記のように構成された映像処理装置を用いて、中間フレームの位相を中間位相(0.5)からどの程度整数位相に近づけると、フィルム素材の映像信号に対するシネマスムースの効果が感じられなくなるのかを評価した。画像の動きの大きさや画像の鮮明さなどの種々の要因により評価値は変化するが、中間位相(0.5)を0.25以下又は0.75以上に整数位相に近づけると、シネマスムースの効果はほとんど感じられなかった。このため、前述した変換係数αの値は0.5以上であることが好ましい。
【0042】
なお、別の映像の特徴として、図9に示すように、OSD検出部49を備え、(2)OSDが表示されているか否か、という情報が考えられる。(2)のOSDが表示されている状態においては、静止画として表示されているOSD表示部分が動きベクトル情報の影響で破綻し、視認性が低下するのを回避するために、α値を相対的に大きな値にすることが望ましい。
【0043】
上記のように、本実施の形態では、60Hzの入力映像信号を、120Hzの映像信号に変換して出力するフレームレート変換処理を行う際、あるいはもともとはフレーム周波数24Hzの所謂シネマ映像を、60Hzの映像信号にプルダウンした映像信号を入力とし、出力フレーム周波数120Hz、あるいは60Hzの映像に変換するシネマ映像のデジャダ処理を行う際、時間的に連続する2つの入力フレーム画像を用いて動きベクトルが検出され、入力フレーム周波数を出力フレーム周波数で除算した位相間隔から決定される論理補間位相から論理補間位相係数Kが生成され、生成された補間位相係数Kが入力映像信号の特徴に応じて決定される変換係数αを用いて補間位相係数Kmに変換され、検出された動きベクトルVと変換後の補間位相係数Kmとを用いて、入力フレーム画像を投影処理して中間フレーム画像が生成される。この結果、中間フレーム画像の位相を補間位相とは異なる整数に近い位相にすることができるので、出力フレーム画像として生成される中間フレーム画像の破綻がユーザに検知されにくくなり、簡略な構成でフレームレート変換後の中間フレームの映像が破綻することを防止することができる。
【0044】
なお、昨今の液晶TV等においては、表示周波数が60Hzではなく、120Hz、240Hzなど多種のものが登場してきているが、これらの表示周波数においても、本発明を適用できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る映像処理装置は、簡略な構成でフレームレート変換後の中間フレームの映像が破綻することを抑制することができるので、シネマ映像のデジャダ処理を行う映像処理装置等として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 動きベクトル検出部
2 動きベクトル処理部
21 補間位相算出部
22 補間位相マッピング部
23、24 乗算器
25 減算器
26、27 投影処理部
28 マージ部
29 特徴検出部
39 フィルム検出部
49 OSD検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号のフレームレートを変換する映像処理装置であって、
入力された映像信号のうち、少なくとも、映像信号がフィルム素材であるか否か、映像信号に文字情報が表示されているかのいずれかの特徴を検出する特徴検出部と、
前記特徴検出部により検出された特徴を用いて、前記入力フレーム画像の位相と異なる位相の中間フレーム画像を生成する画像生成部とを備え、
前記画像生成部は、前記中間フレーム画像の位相を入力フレーム周波数と出力フレーム周波数とを基に決定される補間位相と異なる位相に移動させることを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、
入力フレーム周波数を出力フレーム周波数で除算した位相間隔から決定される補間位相から補間位相係数を生成する係数生成部と、
前記係数生成部により生成された補間位相係数を補正する係数補正部と、
前記特徴検出部により検出された特徴と、前記係数補正部により補正された補間位相係数とを用いて、前記入力フレーム画像から前記補間位相と異なる位相の中間フレーム画像を生成する画像生成部とを備えることを特徴とする請求項1記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記係数補正部は、前記中間フレーム画像の位相が前記入力フレーム画像の位相に近づくように、前記特徴検出部に検出された特徴に応じて前記補間位相係数を補正することを特徴とする請求項2記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記係数補正部は、前記特徴検出部において映像信号がフィルム素材である場合、又は、文字情報の表示がなされている場合に、前記中間フレーム画像の位相が前記入力フレーム画像の位相に近づくように、前記補間位相係数を補正することを特徴とする請求項3記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記特徴量検出部は、前記映像信号がフィルム素材から非フィルム素材への切り替わり及び切り替わり後の時間を検出し、
前記係数補正部は、切り替わり時間の経過にともなって、前記中間フレーム画像の位相が前記入力フレーム画像の位相に近づくように、前記補間位相係数を補正することを特徴とする請求項2記載の映像処理装置。
【請求項6】
映像信号のフレームレートを変換する映像処理方法であって、
入力された映像信号のうち、少なくとも、映像信号がフィルム素材であるか否か、映像信号に文字情報が表示されているかのいずれかの特徴を検出する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて検出された特徴を用いて、前記入力フレーム画像の位相と異なる位相の中間フレーム画像を生成する第2のステップとを含み、
前記第2のステップは、前記中間フレーム画像の位相を入力フレーム周波数と出力フレーム周波数とを基に決定される補間位相と異なる位相に移動させることを特徴とする映像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138646(P2012−138646A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104958(P2009−104958)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】