説明

映像多重装置、映像分離装置、映像信号伝送システム及びプログラム

【課題】映像信号伝送システムにおいて、複数の送り返し映像を低遅延で伝送する。
【解決手段】基地局側における映像多重部34の選択部341は、オペレータにより設定された選択信号に基づいて、複数の送り返し映像#1〜#Mのうち4つの送り返し映像A,B,C,Dを選択する。パラメータ決定部343は、オペレータにより設定された優先順位信号に基づいて、メモリ342に格納されたパラメータを読み出し、送り返し映像A,B,C,Dのパラメータa,b,c,dを決定する。圧縮多重部344は、パラメータa,b,c,dに基づいて、送り返し映像A,B,C,Dの画素を水平方向にそれぞれ間引きし、圧縮した送り返し映像A,B,C,Dを生成し、圧縮した送り返し映像A,B,C,Dを1系統の多重送り返し映像に配置して多重し、1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを多重する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号伝送システムに関し、特に、複数の映像を低遅延で伝送する映像多重装置、映像分離装置、映像信号伝送システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ中継、音楽番組、ドラマ撮影等の撮影現場では、ケーブル付きカメラの代わりにワイヤレスカメラまたはFPU装置が用いられるようになってきている。ワイヤレスカメラは、ケーブル付きカメラに比べ、カメラワークの向上によりカメラアングル及び撮影位置の自由度が広くなるだけでなく、ケーブル敷設及び撤去の手間を省くことができ、設営準備の簡素化、撮影者自身を含む出演者及び観客に対する安全性の向上等の様々な効果を生み出すことができる。そこで、ハイビジョンテレビ信号を低遅延かつ高い回線信頼性で無線伝送するワイヤレスカメラの実現を目的として、映像信号伝送システムの開発が進められている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
このようなワイヤレスカメラまたはFPU装置を用いた映像信号伝送システムには、本線系の伝送と送り返し系の伝送とがある。本線系は、主に、カメラ(以下、「端末側」という。)により撮影されたハイビジョン映像等を、副調整室(以下、「基地局側」という。)へ伝送する系統であり、送り返し系は、主に、端末側のカメラ制御信号、タリー信号、ゲンロック信号(3値同期信号)等の制御情報、及びカメラマンが撮影の際に参照する送り返し映像を、基地局側から端末側へ伝送する系統である。このような映像信号伝送システムでは、これらの2系統の双方向無線伝送の実現が求められている。
【0004】
図18は、従来の映像信号伝送システムの全体構成を示すブロック図である。この映像信号伝送システム101は、端末側に設けられたN台(Nは1以上の整数)の端末装置102−1〜102−Nと、基地局側に設けられた1台の基地局装置103とを備えて構成される。N台の端末装置102−1〜102−Nのそれぞれには、カメラマンが本線映像を撮影するためのワイヤレスカメラが含まれる。N台の端末装置102−1〜102−Nと1台の基地局装置103との間は、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを用いるMIMO(Multiple Input Multiple Output:多入力多出力)伝送環境が構築されている。
【0005】
以下、本線系として2本の送信アンテナを有すると共に、送り返し系として1本の受信アンテナを有するN台の端末装置102−1〜102−Nと、本線系として4本の受信アンテナを有すると共に、送り返し系として4本の送信アンテナを有する基地局装置103との間で、双方向伝送を行うワイヤレスカメラによる映像信号伝送システム101を例にして説明する。また、制御情報とは、カメラ制御信号、ゲンロック信号、インカム信号等の、映像信号伝送システム101にて用いるハイビジョンカメラに関連する情報をいい、本線映像にはその音声信号も含まれるものとする。
【0006】
〔端末側〕
図18を参照して、端末側において、端末装置102−1は、カメラ(HDTVカメラ)、インカム、本線/送り返し伝送部(端末側伝送部)104−1及び送受信部105−1を備えている。カメラは、ワイヤレスカメラであり、当該カメラを操作するオペレータであるカメラマンの操作により被写体の映像が撮影される。インカムは、カメラを操作するカメラマンと基地局側のオペレータとの間で音声情報のやり取りを行うための機器である。
【0007】
(本線系の処理)
本線/送り返し伝送部104−1は、本線系の伝送部として機能する場合、カメラから本線映像#1及びカメラ制御信号を入力すると共に、インカムからインカム信号を入力し、本線映像#1及び制御情報(カメラ制御信号及びインカム信号等)に対し、所定の変調方式により多値変調する等の符号化処理を行い、OFDM信号を生成する。そして、本線/送り返し伝送部104−1は、2本の送信アンテナの系統毎に異なる2系統のOFDM信号を送受信部105−1に出力する。
【0008】
送受信部105−1は、本線系の伝送を行うための2本の送信アンテナを有し、本線系の送信部として機能する場合、本線/送り返し伝送部104−1から本線映像#1及び制御情報を含む2系統のOFDM信号を入力し、それぞれのOFDM信号をアナログ信号にD/A変換し、アナログ信号をRF帯の信号に周波数変換し、一定レベルになるように増幅した後、RF信号をフィルタ処理する。フィルタ処理後の信号は、送信信号として2本の送信アンテナを介し、電波となって放射される。
【0009】
(送り返し系の処理)
送受信部105−1は、送り返し系の伝送を行うための1本の受信アンテナを有し、送り返し系の受信部として機能する場合、基地局装置103から送信されたN台の端末装置102−1〜102−Nに対する送り返し映像及び制御情報を含む信号を1本の受信アンテナを介して受信する。そして、送受信部105−1は、その受信信号をフィルタ処理し、フィルタ処理後のRF信号を増幅した後、RF帯の信号を周波数変換し、周波数変換後のアナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、N台の端末装置102−1〜102−Nに対する送り返し映像及び制御情報を含むOFDM信号を本線/送り返し伝送部104−1に出力する。
【0010】
本線/送り返し伝送部104−1は、送り返し系の伝送部として機能する場合、送受信部105−1からOFDM信号を入力し、OFDM信号を復調してTS信号を生成し、送り返し映像及び制御情報に付加された、カメラ毎(端末装置102−1〜102−N毎)に割り当てられたシリアル番号を抽出し、シリアル番号に基づいて、当該端末装置102−1のTS信号を分離し、さらに、制御情報を、カメラ制御信号、インカム信号、ゲンロック信号及びタリー信号にそれぞれ分離し、送り返し映像及びカメラ制御信号等の各信号をカメラ及びインカムへ出力する。尚、シリアル番号は、基地局側において、送り返し映像及び制御情報に対する付属情報として付加された、カメラ(または端末装置102−1〜102−N)を識別するための識別情報である。尚、端末装置102−2〜102−Nの構成は、端末装置102−1と同じである。
【0011】
〔基地局側〕
図18を参照して、基地局側において、基地局装置103は、送受信部106−1〜106−4及び本線/送り返し伝送部(基地局側伝送部)107を備えている。
【0012】
(本線系の処理)
送受信部106−1〜106−4は、本線系の受信部として機能する場合、対応する1本の受信アンテナを介してそれぞれ受信したOFDM信号に対し、フィルタ処理、増幅処理、周波数変換処理を行い、それぞれのOFDM信号を本線/送り返し伝送部107に出力する。
【0013】
本線/送り返し伝送部107は、本線系の伝送部として機能する場合、送受信部106−1〜106−4から4系統のOFDM信号を入力し、A/D変換処理等及び各OFDM信号を復調した後に行うMIMO復調により、対応する端末装置102−1〜102−Nにおける本線映像及び制御情報を生成する。そして、本線/送り返し伝送部107は、対応するOFDM信号から本線映像を抽出し、復調処理、誤り訂正復号等の信号処理を施し、本線映像#1〜#Nを出力する。また、本線/送り返し伝送部107は、対応するOFDM信号から制御情報を抽出し、復調処理等の信号処理を施し、制御情報#1〜#Nを生成して端末側から基地局側への方向のカメラ制御信号及びインカム信号を抽出し、カメラ制御信号をカメラコントローラに出力し、インカム信号をインカムに出力する。
【0014】
(送り返し系の処理)
本線/送り返し伝送部107は、送り返し系の伝送部として機能する場合、送り返し映像、ゲンロック信号及びタリー信号を入力すると共に、カメラコントローラからカメラ制御信号を入力し、さらに、インカムからインカム信号を入力する。そして、本線/送り返し伝送部107は、送り返し映像、並びに、端末装置102−1〜102−N毎のゲンロック信号、カメラ制御信号及びインカム信号に、付属情報としてカメラ毎(または端末装置102−1〜102−N)を識別するためのシリアル番号を付加し、これらの信号を多重し、多重したTS信号を所定の変調方式により多値変調して符号化し、OFDM信号を生成する。そして、本線/送り返し伝送部107は、OFDM信号を送受信部106−1〜106−4にそれぞれ出力する。
【0015】
送受信部106−1〜106−4は、送り返し系の送信部として機能する場合、本線/送り返し伝送部107から、N台の端末装置102−1〜102−Nに対する送り返し映像及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、入力したOFDM信号に対してD/A変換処理、周波数変換処理、増幅処理、フィルタ処理等を行う。フィルタ処理後の信号は、送信信号として複数の送信アンテナを介して、電波となって放射される。
【0016】
このように、図18に示した従来の映像信号伝送システム101では、本線系によって、カメラにて撮影された本線映像及び制御情報を端末側から基地局側へ伝送し、送り返し系によって、送り返し映像及び制御情報を基地局側から端末側へ双方向伝送することができ、かつ、複数の送信アンテナを用いることによって、途切れにくい無線伝送を実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】鈴木、中川、池田、“ミリ波モバイルカメラ用42GHz帯送り返し伝送システムの開発”、社団法人映像情報メディア学会、映像情報メディア学会技術報告、vol.35,no.10,p.35−38,BCT2011−38、2011年2月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述した従来の映像信号伝送システム101は、送り返し系において、送り返し映像として1系統の映像(例えば、オンエア映像)のみを基地局側から端末側へ伝送する。これは、送り返し系にて使用可能な伝送チャンネル及び伝送容量を考慮し、かつ、映像が途切れないように伝送されることを考慮すると、低伝送レート(約20Mbps)の1系統の映像に制限されるからである。また、送り返し映像は、カメラマンが本線映像を撮影する際に参照する映像であり、低遅延の性能が要求されるからである。これに対し、送り返し映像として複数系統の映像を伝送する場合を想定すると、コーデック(符号化及び復号処理)による画質劣化の影響が大きくなり、送り返し映像としての役割を果たさなくなるため、送り返し映像を参照して本線映像を撮影するカメラマンによって不都合だからである。しかしながら、送り返し映像として複数系統の映像を伝送する要求が高まっている。
【0019】
図19は、ゴルフ中継の場合に必要な送り返し映像を伝送する映像信号伝送システムを説明する図である。図19に示すように、各ホールの映像制作を担当するSW(スイッチャー:中継車)が予め決められており、SW1が9H(ホール)、12H及び15Hを担当し、SW2が10H、13H及び16Hを担当し、SW3が11H、14H及び17Hを担当し、メインSWが18H及び練習場を担当するものとする。また、メインSWは、SW1〜SW3によりそれぞれ選択された映像を入力し、入力した複数の映像のうち1つの映像をオンエア映像として出力するものとする。つまり、カメラマンにより撮影された各ホールまたは練習場の本線映像は、SW1〜SW3及びメインSWのいずれかのSWへ伝送され、SW1〜SW3がそれぞれ担当するホールの映像を入力し、SW1〜SW3により選択された映像が、メインSWへそれぞれ伝送され、メインSWにおいて、SW1〜SW3及びメインSWの映像からオンエア映像が選択され出力される。ワイヤレスカメラを操作するカメラマンは、プレーヤの移動に従って複数のホールを移動し、プレーヤ等の被写体を撮影する。カメラマンにより撮影された本線映像は、撮影したホール等に応じて、当該ホール等を担当するSW1〜SW3及びメインSWのいずれかのSWによって受信される。
【0020】
このようなゴルフ中継において、図19に示した従来の映像信号伝送システム101では、カメラマンは、送り返し映像としてオンエア映像のみを見ることができる。しかしながら、カメラマンが被写体を撮影する場合に、オンエア映像を参照するだけでは十分でないという問題があった。例えば、12Hで撮影しているカメラマン(図19において左側のカメラマン)は、12Hの映像がSW1へ伝送されることから、オンエア映像に加え、必要に応じてSW1にて選択されている映像を見ることにより、SW1の選択状況(SW1が選択している映像)に応じた撮影を行うことができる。同様に、17Hで撮影しているカメラマン(図19において右側のカメラマン)は、17Hの映像がSW3へ伝送されることから、オンエア映像に加えて、必要に応じてSW3にて選択されている映像を見ることにより、SW3の選択状況(SW3が選択している映像)に応じた撮影を行うことができる。
【0021】
このように、カメラマンが自分にとって必要な送り返し映像を選択することができれば、例えば、同じSWに属する他のカメラマンの撮影情報をもとに自分の撮影する映像を決定することができ、有用な本線映像を伝送することが可能となる。したがって、送り返し映像が1系統に制限される環境下で、複数系統の送り返し映像を基地局側から端末側へ低遅延で伝送し、端末側において、カメラマンが複数の送り返し映像から必要な送り返し映像を選択して見ることが可能な仕組みが所望されていた。
【0022】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の映像を低遅延で伝送可能な映像多重装置、映像分離装置、映像信号伝送システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記した課題を解決するため、本発明による請求項1の映像多重装置は、端末側から基地局側への本線伝送と、前記基地局側から前記端末側への送り返し伝送とを行う映像信号伝送システムにおける前記基地局側の映像多重装置であって、複数の送り返し映像から、所定数の送り返し映像を選択する選択部と、前記所定数の送り返し映像が圧縮される際の前記所定数の送り返し映像毎の圧縮率を含むパラメータを決定するパラメータ決定部と、前記パラメータ決定部により決定されたパラメータに含まれる圧縮率に基づいて、前記選択部により選択された所定数の送り返し映像を1つの映像に圧縮して多重する圧縮多重部とを備え、前記多重した1つの映像及びパラメータの送り返し伝送を行う、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明による請求項2の映像多重装置は、請求項1に記載の映像多重装置において、前記パラメータ決定部が、当該映像多重装置を扱うオペレータの操作に従って、前記所定数の送り返し映像毎に、前記圧縮率、前記所定数の送り返し映像が1つの映像に圧縮され多重される際の配置位置、及び、前記端末側において前記1つの映像に含まれる所定数の送り返し映像から所定の送り返し映像が分離されて元の送り返し映像が生成される際の拡大率を含むパラメータを決定する、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明による請求項3の映像多重装置は、請求項2に記載の映像多重装置において、前記圧縮多重部が、前記パラメータ決定部により決定されたパラメータに含まれる圧縮率に基づいて、前記選択部により選択された所定数の送り返し映像をそれぞれ圧縮し、前記パラメータに含まれる配置位置に基づいて、前記圧縮したそれぞれの送り返し映像を前記1つの映像に配置する、ことを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明による請求項4の映像分離装置は、請求項1から3までのいずれか一項の映像多重装置により多重された1つの映像及びパラメータを、前記基地局側から受信する端末側の映像分離装置であって、前記1つの映像に含まれる圧縮された所定数の送り返し映像から、所定の映像を分離する分離部と、前記分離部により分離された所定の映像に対するパラメータに基づいて、前記所定の映像を伸張し、元の送り返し映像に復元する伸張部と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
また、本発明による請求項5の映像分離装置は、請求項2または3の映像多重装置により多重された1つの映像及びパラメータを、前記基地局側から受信する端末側の映像分離装置であって、前記1つの映像に含まれる圧縮された所定数の送り返し映像から、所定の映像に対するパラメータに含まれる配置位置に基づいて、前記所定の映像を分離する分離部と、前記分離部により分離された所定の映像に対するパラメータに含まれる拡大率に基づいて、前記所定の映像を伸張し、元の送り返し映像に復元する伸張部と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
さらに、本発明による請求項6の映像信号伝送システムは、端末側から基地局側への本線伝送と、前記基地局側から前記端末側への送り返し伝送とを行う映像信号伝送システムにおいて、前記基地局側に設けられた映像多重装置が、複数の送り返し映像から、所定数の送り返し映像を選択する選択部と、前記所定数の送り返し映像が圧縮される際の前記所定数の送り返し映像毎の圧縮率を含むパラメータを決定するパラメータ決定部と、前記パラメータ決定部により決定されたパラメータに含まれる圧縮率に基づいて、前記選択部により選択された所定数の送り返し映像を1つの映像に圧縮して多重する圧縮多重部とを備え、前記多重した1つの映像及びパラメータの送り返し伝送を行い、前記端末側に設けられた映像分離装置が、前記送り返し伝送が行われた1つの映像に含まれる圧縮された所定数の送り返し映像から、所定の映像を分離する分離部と、前記分離部により分離された所定の映像に対するパラメータに基づいて、前記所定の映像を伸張し、元の送り返し映像に復元する伸張部とを備えたことを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明による請求項7の映像多重プログラムは、コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の映像多重装置として機能させることを特徴とする。
【0030】
また、本発明による請求項8の映像分離プログラムは、コンピュータを、請求項4または5に記載の映像分離装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、映像多重装置から映像分離装置へ複数の映像を低遅延で伝送することが可能となる。例えば、映像分離装置が設けられた端末側のカメラマンは、映像多重装置が設けられた基地局側から送信された複数の映像のうち、必要な映像を選択することで、状況に応じた撮影を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の概要を説明するための映像信号伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による映像多重部及び映像分離部を含む映像信号伝送システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】基地局側の本線/送り返し伝送部の構成を示すブロック図である。
【図4】映像多重部(映像多重装置)の構成を示すブロック図である。
【図5】映像多重部の処理を示すフローチャートである。
【図6】端末側の本線/送り返し伝送部の構成を示すブロック図である。
【図7】映像分離部(映像分離装置)の構成を示すブロック図である。
【図8】映像分離部の処理を示すフローチャートである。
【図9】映像多重部のメモリに格納されたパラメータの例を説明する図である。
【図10】多重送り返し映像の構成例を説明する図である。
【図11】HD−SDI信号の構成を示す図である。
【図12】サイドバイサイド方式、トップアンドボトム方式及び4分割マルチビュアー方式を説明する図である。
【図13】トップアンドボトム方式の処理を説明する図である。
【図14】4分割マルチビュアー方式の処理を説明する図である。
【図15】サイドバイサイド方式の処理を説明する図である。
【図16】サイドバイサイド方式の応用例を説明する図である。
【図17】サイドバイサイド方式の応用例において、映像画質に優位差をつけた場合の各映像の解像度を説明する図である。
【図18】従来の映像信号伝送システムの全体構成を示すブロック図である。
【図19】ゴルフ中継の場合に必要な送り返し映像を伝送する映像信号伝送システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔発明の概要〕
まず、発明の概要について説明する。例えば、本線系及び送り返し系の双方向の低遅延無線伝送を実現する映像信号伝送システムにおいては、送り返し系にて使用可能な伝送チャンネル及び伝送容量等を考慮すると、1系統のハイビジョン映像のみの伝送に制限される。そこで、本発明では、基地局側の映像多重装置が、複数の映像を水平方向に所定の比率で圧縮多重し、複数の映像を含む圧縮多重映像を出力し、端末側の映像分離装置が、映像多重装置により出力された圧縮多重映像から所定の映像を分離し、分離した映像に対し水平方向に所定の比率で伸張し、伸張した映像を出力することを特徴とする。
【0034】
一般に、複数の映像を多重伝送する手法として、圧縮符号化したTSパケット(MPEG2−TS)の複数のビデオストリームをTS多重するものがある。この手法は、地上デジタル放送等においても採用されており、1つの受信チャンネルに複数の映像信号を多重して伝送可能な規格に基づいたものである。しかし、TSパケットの切り替えを行った場合にショックレスに伝送帯域を変更したり、瞬時に他の映像に切り替えたりすることができない。異なる映像のTSパケットをデコードするための時間が必要になり、ある程度のTSパケットをバッファリングする必要があり、遅延が発生するだけでなくデコード作業中に切り替えると映像が破綻する。そこで、TS多重する手法を用いるのではなく、映像を水平または/及び垂直方向に圧縮して複数のタイル映像として扱い、1つの(1系統)の映像を生成して伝送する手法を用いる。
【0035】
異なる2つの映像を水平及び垂直方向に圧縮して伝送する手法は、3D(立体)映像伝送の手法として従来から使用されており、水平方向に圧縮する方式を「サイドバイサイド方式」といい、垂直方向に圧縮する方式を「トップアンドボトム方式」という。また、サイドバイサイド方式とトップアンドボトム方式とを組み合わせると、「4分割マルチビュアー方式」のタイル映像となる。
【0036】
図12は、サイドバイサイド方式、トップアンドボトム方式及び4分割マルチビュアー方式を説明する図である。図12(1)は、サイドバイサイド方式を説明する図であり、水平方向に分割された2つの映像A,Bにより1系統の映像が構成される。この映像を復元するためには、水平方向にピクセル(画素)を2倍すればよい。図12(2)は、トップアンドボトム方式を説明する図であり、垂直方向に分割された2つの映像A,Bにより1系統の映像が構成される。この映像を復元するためには、垂直方向にピクセルを2倍すればよい。図12(3)は、4分割マルチビュアー方式を説明する図であり、水平及び垂直方向に分割された4つの映像A,B,C,Dにより1系統の映像が構成される。この映像を復元するためには、水平及び垂直方向にピクセルを2倍すればよい。映像を復元するための伸張処理は、図12(1)〜(3)に示した映像毎のフィールド単位に行えばよい。また、ピクセルの伸張及び圧縮処理は、小さいハードウェア規模により実現することができる。
【0037】
ここで、映像遅延について説明する。図13は、図12(2)に示したトップアンドボトム方式の処理を説明する図であり、図14は、図12(3)に示した4分割マルチビュアー方式の処理を説明する図である。図13に示すように、トップアンドボトム方式では、映像A,Bの伸張処理は、垂直方向にピクセルを拡大することで行われる。また、図14に示すように、4分割マルチビュアー方式では、映像A〜Dの伸張処理は、水平及び垂直方向にピクセルを拡大することで行われる。また、インターレスの表示方式の場合、図13に示した映像Bの処理を行うタイミング及び図14に示した映像Cの処理を行うタイミングは、1/2フィールドの時点となる。これは、映像が上部の第1ラインから順次伝送されてくるからである。ビデオバッファの構成にもよるが、通常は1フィールドの映像を蓄えてからパイプライン処理を行うため、トップアンドボトム方式及び4分割マルチビュアー方式では、最低1/2フィールド、最長1フィールドの映像遅延が発生する。この遅延は、映像を圧縮多重する基地局側、及び映像を伸張復元する端末側にてそれぞれ発生するから、合計で最低1フィールド(16.6ms)、最長2フィールド(33.2ms)の遅延が発生する。
【0038】
図15は、図12(1)に示したサイドバイサイド方式の処理を説明する図である。映像A,Bの伸張処理は、水平方向にピクセルを拡大することで行われる。サイドバイサイド方式では、映像Bの処理を行うタイミングは、1/2ラインの時点となる。ラインバッファを用いてパイプライン処理を行うことを考慮すると、最長でも1ラインの遅延となる。したがって、最低1/2ライン(14.8μs)、最長1ライン(29.6μs)の映像遅延が発生する。この遅延は、映像を圧縮多重する基地局側、及び映像を伸張復元する端末側にてそれぞれ発生するから、合計で最低1ライン(29.6μs)、最長2ライン(59.2μs)の遅延で済むことになる。
【0039】
このように、映像遅延を考慮すると、フィールド処理よりもライン処理の方が、コーディック等を含めた処理時間が1/1000倍程度短縮することができる。そこで、本発明では、サイドバイサイド方式を改良した方式を採用し、遅延時間を増やすことなく、映像の多重化数を増やし、また、ショックレスに映像選択及び画質を変更するようにした。
【0040】
図16は、図12(1)に示したサイドバイサイド方式の応用例を説明する図である。この応用例の映像は、水平方向に分割された4つの映像A,B,C,Dにより1系統の映像が構成される。この映像を復元するためには、水平方向にピクセルを4倍すればよい。これらの映像A,B,C,Dは、水平方向にのみ画素の圧縮処理が行われ、垂直方向には圧縮処理が行われていないから、これらの伸張処理は、水平方向に1ライン分のデータを取得し、水平方向にピクセルを拡大することにより行われ、元のハイビジョンサイズに復元することができる。処理に必要な時間は1ライン分である。映像はフィールド単位で扱われるから、伸張を開始するピクセルの初期値をフィールドの先頭にて変更することにより、ショックレスに映像を選択することができる。
【0041】
図16に示したように、映像A,B,C,Dを均等に分割した場合は、1映像あたり1/4ラインの時間タイミングとなり、その解像度は480×1080ピクセルとなる。4つの映像A,B,C,Dからなる1系統の映像の解像度は、1920×1080ピクセルだからである。カメラマンがファインダーで映像A,B,C,Dのうちのいずれかを確認する場合には、このような解像度でも許容することができる。この場合、映像A,B,C,Dの解像度(ライン方向の各映像に割り当てるライン長の割合)を可変にすることにより、映像画質に優位差をつけることができる。
【0042】
図17は、サイドバイサイド方式の応用例において、映像画質に優位差をつけた場合の各映像の解像度を説明する図である。図17に示すように、映像Aの解像度は720×1080ピクセルであり、映像B,C,Dよりも高い。映像B,C,Dの解像度はそれぞれ400×1080ピクセルであり、映像Aよりも低い。したがって、映像Aは、解像度が元の1920×1080ピクセルから720×1080ピクセルになるように、元の映像に対して圧縮処理が行われることで生成される。また、映像B,C,Dは、解像度が元の1920×1080ピクセルから400×1080ピクセルになるように、元の映像に対して圧縮処理が行われることで生成される。
【0043】
このように、圧縮率を可変にすることにより、より重要な映像は解像度を上げて伝送することができ、カメラマンは必要に応じて画質の高い映像を見ることができる。また、映像毎に圧縮率を可変にしたとしても、全体の遅延時間は一定で変わることがなく、さらに、この操作をフィールド単位に行うことにより、ショックレスに映像を切り替えることができる。
【0044】
このようなサイドバイサイド方式は、MPEG等の圧縮符号化による帯域制限をするものではないから、絵柄によることなく常に一定の画質となる。このため、静止画であっても解像度は低いが、動きの早い映像についてはMPEG特有のブロックノイズが発生しない。例えば、SDTV(DVD)の解像度は720×480ピクセルであり、S−VHSの水平解像度は400ピクセル程度である。したがって、サイドバイサイド方式では、解像度はある程度低くなるが、カメラマンがファインダーで映像を確認する程度のレベルであれば、十分に活用することができる。
【0045】
尚、本出願人である日本放送協会により開発された映像信号伝送システムでは、その遅延時間は1フレーム以内(約30ms程度)であり、この遅延時間は、MPEG2によるコーディック及び伝送における時間インタリーブ等の処理時間を含んでいる。図15に示したサイドバイサイド方式の処理にて説明したとおり、映像Bの遅延時間は最長59.2μsである。したがって、本発明の実施形態による映像信号伝送システムとして合計のシステム遅延時間は約30.059msとなり、サイドバイサイド方式による映像Bの遅延時間59.2μsはシステム遅延時間に対して微量であることがわかる。
【0046】
図1は、本発明の概要を説明するための映像信号伝送システムの構成を示すブロック図である。この映像信号伝送システム1は、図17に示したサイドバイサイド方式を用いて映像を圧縮及び伸張するシステムであり、端末装置2及び基地局装置3を備えて構成される。端末装置2は、デコーダ6及び映像分離部(映像分離装置)7を備えている。基地局装置3は、映像多重部(映像多重装置)4及びエンコーダ5を備えている。
【0047】
基地局装置3の映像多重部4は、送り返し映像A,B,C,Dを入力し、これらの送り返し映像A,B,C,Dに対し、所定のパラメータが示す圧縮率にて水平方向にそれぞれ圧縮し、図17に示したように、圧縮した送り返し映像A,B,C,Dを生成し、所定のパラメータが示す位置にそれぞれ配置し、1系統の多重送り返し映像を生成し、1系統の多重送り返し映像及びパラメータを多重し、エンコーダ5に出力する。エンコーダ5は、映像多重部4から、多重送り返し映像及びパラメータを含む信号を入力し、符号化処理を施す。エンコーダにより符号化処理された信号は、送信信号として端末装置2へ伝送される。尚、圧縮の種類として画素の間引きの方法も含まれ、圧縮率には間引き率である場合もあり得る。
【0048】
端末装置2が基地局装置3から伝送された信号を受信すると、デコーダ6は、この受信信号に対し復号処理を施し、多重送り返し映像及びパラメータを含む信号を映像分離部7に出力する。映像分離部7は、デコーダ6から多重送り返し映像及びパラメータを含む信号を入力すると共に、端末装置2を操作するオペレータの設定により選択信号を入力し、カメラマン(オペレータ)により設定された選択信号を入力し、パラメータが示す位置に基づいて、多重送り返し映像に含まれる4つの圧縮された送り返し映像A,B,C,Dのうち、選択信号が示す1つの圧縮された送り返し映像を分離し、パラメータが示す拡大率にてこの1つの圧縮された送り返し映像を水平方向に伸張し、選択送り返し映像を生成して出力する。
【0049】
このように、図1に示した映像信号伝送システム1によれば、図17に示したサイドバイサイド方式を用いて映像を圧縮及び伸張するようにしたから、映像多重部4を備えた基地局装置3から映像分離部7を備えた端末装置2へ、複数の送り返し映像A,B,C,Dを低遅延で伝送することが可能となる。
【0050】
〔映像信号伝送システムの全体構成〕
次に、本発明の実施形態による映像多重部及び映像分離部を含む映像信号伝送システムの全体構成について説明する。図2は、その映像信号伝送システムの全体構成を示すブロック図である。この映像信号伝送システム1は、図1に示した映像信号伝送システム1を具体的に示したものであり、端末側に設けられたN台(Nは1以上の整数)の端末装置2−1〜2−Nと、基地局側に設けられた1台の基地局装置3とを備えて構成される。N台の端末装置2−1〜2−Nと1台の基地局装置3との間は、図18に示した映像信号伝送システム101と同様に、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを用いるMIMO伝送環境が構築されている。また、送信アンテナ及び受信アンテナの本数も、図18に示した映像信号伝送システム101と同様である。端末装置2−1〜2−Nは、本線/送り返し伝送部(端末側伝送部)20−1〜20−N及び送受信部105−1〜105−Nをそれぞれ備え、基地局装置3は、送受信部106−1〜106−4及び本線/送り返し伝送部(基地局側伝送部)30を備えている。
【0051】
尚、以下に説明する映像信号伝送システム1は、MIMO伝送環境を例にして示すが、本発明は、MIMO伝送環境に限定されるものではない。また、映像信号伝送システム1は、カメラ等を備えた端末装置2−1〜2−Nと基地局装置3との間で各種データを無線伝送するシステムとして示すが、本線映像等の伝送を中継する複数のFPU装置により構成されるシステムであってもよい。また、制御情報とは、カメラ制御信号、ゲンロック信号、インカム信号等の、映像信号伝送システム1にて用いる本線映像に関連する情報をいい、本線映像にはその音声信号も含まれるものとする。
【0052】
図18に示した従来の映像信号伝送システム101と図2に示す映像信号伝送システム1とを比較すると、端末側において、映像信号伝送システム1の端末装置2−1〜2−N
は、従来の映像信号伝送システム101の端末装置102−1〜102−Nにおける本線/送り返し伝送部104−1〜104−Nとは異なる本線/送り返し伝送部20−1〜20−Nを備えている点で相違する。また、端末装置2−1〜2−Nの本線/送り返し伝送部20−1〜20−Nは、複数の送り返し映像のうちの1つの送り返し映像を選択するための選択信号を入力する点で従来の映像信号伝送システム101と相違する。一方、基地局側において、映像信号伝送システム1の基地局装置3は、従来の映像信号伝送システム101の基地局装置103における本線/送り返し伝送部107とは異なる本線/送り返し伝送部30を備えている点で相違する。また、基地局装置3の本線/送り返し伝送部30は、複数の送り返し映像#1〜#M、複数の送り返し映像#1〜#Mから所定数の送り返し映像を選択するための選択信号、及び所定数の送り返し映像のそれぞれに対して圧縮率(間引き率)等を決めるための優先順位信号を入力する点で従来の映像信号伝送システム101と相違する。図2において、図18と共通する部分には図18と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0053】
〔基地局側〕
図2に示した映像信号伝送システム1について、基地局側の基地局装置3に備えた本線/送り返し伝送部30について説明する。図3は、本線/送り返し伝送部30の構成を示すブロック図である。この本線/送り返し伝送部30は、信号多重分離部31,32、復調部33、映像多重部(映像多重装置)34、多重分離部35及び送り返し送信処理部36を備えている。図18に示した従来の本線/送り返し伝送部107は、図2における信号多重分離部31,32、復調部33、多重分離部35及び送り返し送信処理部36を備えているが、本線/送り返し伝送部30は、従来の本線/送り返し伝送部107の構成に加え、映像多重部34を備えていることを特徴とする。
【0054】
信号多重分離部31は、本線系として機能する場合、送受信部106−1〜106−4から、本線映像#1〜#N及び制御情報を含む4系統のOFDM信号を入力し、信号多重分離部32に出力する。一方、信号多重分離部31は、送り返し系として機能する場合、信号多重分離部32から、多重送り返し映像、パラメータ及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、OFDM信号を4系統に分離して送受信部106−1〜106−4にそれぞれ出力する。
【0055】
信号多重分離部32は、本線系として機能する場合、信号多重分離部31から、本線映像#1〜#N及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、4系統のOFDM信号を復調部33に出力する。一方、信号多重分離部32は、送り返し系として機能する場合、送り返し送信処理部36から、多重送り返し映像、パラメータ及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、信号多重分離部31に出力する。
【0056】
復調部33は、信号多重分離部32から4系統のOFDM信号を入力し、A/D変換処理等及び各OFDM信号を復調した後に行うMIMO復調により、本線映像及び制御情報を抽出する。そして、復調部33は、復調処理、誤り訂正復号等の信号処理を施し、本線映像#1〜#N及び制御情報を抽出し、本線映像#1〜#Nを外部へ出力し、制御情報を多重分離部35に出力する。
【0057】
多重分離部35は、本線系として機能する場合、復調部33から制御情報を入力し、多重された制御情報からカメラ制御信号#1〜#N及びインカム信号#1〜#Nを抽出し、カメラ制御信号#1〜#Nを対応するカメラコントローラ(図示せず)へ出力し、インカム信号#1〜#Nを対応するインカム(図示せず)へ出力する。一方、多重分離部35は、送り返し系として機能する場合、カメラコントローラ(図示せず)からカメラ制御信号#1〜#Nを、インカム(図示せず)からインカム信号#1〜#Nをそれぞれ入力し、ゲンロック信号及びタリー信号を入力し、さらに、映像多重部34から多重送り返し映像及びパラメータを入力する。そして、多重分離部35は、これらの信号に、付属情報としてカメラ(または端末装置2−1〜2−N)を識別するためのシリアル番号を付加し、これらの信号を多重し、多重したTS信号を送り返し送信処理部36に出力する。
【0058】
送り返し送信処理部36は、多重分離部35からTS信号を入力し、TS信号に対して所定の変調方式により多値変調し、OFDM信号を生成して信号多重分離部32に出力する。
【0059】
(映像多重部)
映像多重部34は、図1に示した映像多重部4に対応しており、外部から送り返し映像#1〜#Mを入力すると共に、オペレータにより設定された選択信号及び優先順位信号を入力し、選択信号に基づいて、複数の送り返し映像#1〜#Mから所定数(例えば4つ)の送り返し映像A,B,C,Dを選択し、優先順位信号に基づいて、選択した4つの送り返し映像A,B,C,Dのそれぞれに対する間引き率等のパラメータa,b,c,dを決定し、パラメータa,b,c,dに基づいて、4つの送り返し映像A,B,C,Dをそれぞれ圧縮して1系統の多重送り返し映像に多重し、さらに多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを多重し、多重した多重送り返し映像及びパラメータを多重分離部35に出力する。ここで、1番目の送り返し映像#1はオンエア映像とし、選択信号は、複数の送り返し映像#1〜#Mから所定数(例えば4つ)の送り返し映像A,B,C,Dを選択するための信号であり、優先順位信号は、所定数の送り返し映像A,B,C,Dのそれぞれに対して間引き率等のパラメータa,b,c,dを決めるための信号である。
【0060】
図4は、映像多重部34の構成を示すブロック図であり、図5は、映像多重部34の処理を示すフローチャートである。この映像多重部34は、選択部341、メモリ342、パラメータ決定部343及び圧縮多重部344を備えている。選択部341は、外部から複数の送り返し映像#1〜#Mを入力すると共に(ステップS501)、オペレータにより設定された選択信号を入力し、送り返し映像#1〜#Mのうち、選択信号が示す4つの送り返し映像A,B,C,Dを選択し(ステップS502)、送り返し映像A,B,C,Dを圧縮多重部344に出力する。
【0061】
メモリ342には、優先順位毎に間引き率等のパラメータa,b,c,dが格納されている。図9は、メモリ342に格納されたパラメータの例を説明する図である。優先順位に対応するパラメータは、間引き率及び拡大パラメータからなり、拡大パラメータは、開始点、終了点及び拡大率からなる。間引き率は、送り返し映像#1〜#Mにおける1920×1080ピクセルの画素を水平方向に間引くことにより、送り返し映像A,B,C,Dを生成する際の比率を示す。拡大パラメータの開始点は、所定の間引き率により圧縮(間引き)された送り返し映像A,B,C,Dを、1920×1080ピクセルの1系統の多重送り返し映像に配置する際の水平方向における最初の位置を示す。拡大パラメータの終了点は、所定の間引き率により圧縮された送り返し映像A,B,C,Dを、1920×1080ピクセルの1系統の多重送り返し映像に配置する際の水平方向における最後の位置を示す。また、拡大率は、端末側の端末装置2−1〜2−Nにおいて、圧縮された映像A,B,C,Dの画素を水平方向に伸張することにより、元の送り返し映像#1〜#Nを生成する際の比率を示す。
【0062】
パラメータ決定部343は、オペレータにより設定された優先順位信号を入力し、優先順位信号が示す優先順位のパラメータをメモリ342から読み出し(ステップS503)、送り返し映像A,B,C,Dのパラメータa,b,c,dを決定し(ステップS504)、パラメータa,b,c,dを圧縮多重部344に出力する。例えば、パラメータ決定部343は、優先順位信号として、1番目の映像である送り返し映像Aの優先順位を1、2番目の映像である送り返し映像Bの優先順位を2、3番目の映像である送り返し映像Cの優先順位を3、4番目の映像である送り返し映像Dの優先順位を4とする信号を入力し、メモリ342から図9に示したパラメータを読み出したとする。この場合、パラメータ決定部343は、優先順位1のパラメータはa、優先順位2のパラメータはb、優先順位3のパラメータはc、優先順位3のパラメータはdであるから、送り返し映像A,B,C,Dのパラメータをそれぞれa,b,c,dに決定し、パラメータa,b,c,dを圧縮多重部344に出力する。
【0063】
圧縮多重部344は、選択部341から送り返し映像A,B,C,Dを入力すると共に、パラメータ決定部343から送り返し映像A,B,C,Dのパラメータa,b,c,dを入力し、送り返し映像A,B,C,Dに対し、パラメータa,b,c,dが示す間引き率にて水平方向に画素をそれぞれ間引きし、送り返し映像A,B,C,Dを圧縮する(ステップS505)。そして、圧縮多重部344は、パラメータa,b,c,dが示す拡大パラメータの開始点及び終了点に従って、圧縮した送り返し映像A,B,C,Dを1系統の映像(1920×1080ピクセルの映像)にそれぞれ配置して多重し、1系統の多重送り返し映像を生成し、1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを多重し、多重分離部35に出力する(ステップS506)。尚、映像信号にはブランキングと呼ばれる期間があり、このブランキングの期間に対応するアンシェラリ領域にユーザーデータを多重することができる。ARIB規格には、ユーザーデータを扱う規定(デジタルハイビジョン素材伝送補助データ運用規定:ARIB TR−B22)があり、このような規格を用いて、1系統の多重送り返し映像にパラメータa,b,c,dを多重し、伝送することができる。また、送り返し映像A,B,C,Dの解像度は、それぞれ1920×1080ピクセルであり、1系統の多重送り返し映像の解像度も1920×1080ピクセルである。さらに、送り返し映像A,B,C,D及び多重送り返し映像は、後述するように、HD−SDI信号により構成されるものとする。
【0064】
図10は、多重送り返し映像の構成例を説明する図であり、図9に示したパラメータa,b,c,dに基づいて圧縮された送り返し映像A,B,C,Dにより構成される。圧縮多重部344は、送り返し映像Aに対し、パラメータaが示す間引き率37.5%に従って水平方向に間引き処理を行って圧縮し、720×1080ピクセルの映像を生成し、パラメータaが示す拡大パラメータの開始点1及び終了点720に従って、圧縮した720×1080ピクセルの送り返し映像Aを、図10に示す「A」の位置に配置する。同様に、圧縮多重部344は、送り返し映像Bに対し、パラメータbが示す間引き率20.8%に従って水平方向に間引き処理を行って圧縮し、400×1080ピクセルの映像を生成し、パラメータbが示す拡大パラメータの開始点721及び終了点1120に従って、圧縮した400×1080ピクセルの送り返し映像Bを、図10に示す「B」の位置に配置する。送り返し映像C,Dについても同様にして、図10に示す「C」「D」の位置に配置する。このようにして、圧縮された送り返し映像A,B,C,Dが多重され、1920×1080ピクセルの1系統の多重送り返し映像が生成される。
【0065】
図11は、HD−SDI信号の構成を示す図である。送り返し映像A,B,C,D及び多重送り返し映像は、このHD−SDI信号により構成される。HD−SDI信号は、SMPTEの292Mに規格化されている、非圧縮のHDTV映像と音声信号を多重して伝送するシリアルデジタルインターフェース規格の信号である。図11に示すように、HD−SDI信号は、EAV(End of Active Video)、LN(Line Number)、CRCC(Cyclic Redundancy Check Code)、補助データ、SAV(Start of Active Video)及び映像データ(デジタルアクティブライン)により構成される。圧縮多重部344は、生成した1系統の多重送り返し映像を映像データの領域に格納し、パラメータa,b,c,dを補助データの領域(アンシェラリ領域)に格納してHD−SDI信号を生成し、多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを含む多重信号として出力する。
【0066】
以上のように、本発明による映像多重部34によれば、選択部341が、オペレータにより設定された選択信号に基づいて、複数の送り返し映像#1〜#Mのうち4つの送り返し映像A,B,C,Dを選択し、パラメータ決定部343が、オペレータにより設定された優先順位信号に基づいて、送り返し映像A,B,C,Dのパラメータa,b,c,d(間引き率、開始点、終了点及び拡大率)を決定するようにした。また、圧縮多重部344が、パラメータa,b,c,dに基づいて、送り返し映像A,B,C,Dの画素を水平方向にそれぞれ間引きして圧縮し、圧縮した送り返し映像A,B,C,Dを1系統の多重送り返し映像(1920×1080ピクセルの映像)にそれぞれ配置して1系統の送り返し映像に多重し、さらに、1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを多重するようにした。そして、このように多重された1系統の多重送り返し映像及びパラメータは、所定の制御情報と共に、基地局側の基地局装置3から端末側の端末装置2−1〜2−Nへ伝送され、端末装置2−1〜2−Nにおいて、パラメータa,b,c,dに基づいて、1系統の多重送り返し映像に含まれる4つの送り返し映像A,B,C,Dのうち、カメラマンにより選択された送り返し映像が伸張され復元される。これにより、映像多重部34にて複数の送り返し映像A,B,C,Dが水平方向に圧縮され、1系統の多重送り返し映像の容量にて伝送されるから、低遅延の伝送(1ライン程度の遅延)を実現することができる。そして、カメラマンは、複数の送り返し映像A,B,C,Dのうち必要な映像を選択することで、状況に応じた撮影を実現することができる。
【0067】
また、1系統の多重送り返し映像に対してコーディックの処理がなされるから、コーディックの処理負荷は高くなることがなく、遅延のない円滑な処理が可能となる。また、映像信号伝送システム1の基地局装置3において、送受信部106−1〜106−4、並びに本線/送り返し伝送部30の信号多重分離部31、信号多重分離部32、復調部33、多重分離部35及び送り返し送信処理部36として既存の構成部をそのまま使用することができる。したがって、既存の装置を大規模に改造する必要がないから、低コストにて映像信号伝送システム1の基地局装置3を構成することができる。
【0068】
また、1系統の多重送り返し映像にて伝送される複数の送り返し映像の数は、オペレータにより設定される選択信号及びメモリ342に格納されるパラメータによって変更することができるから、撮影対象、撮影体制または撮影状況に応じた柔軟な映像信号伝送システム1を構築することができる。例えば、図19に示したゴルフ中継の場合には、各ホールの映像制作を担当するSW(中継車)の数が予め決められている。したがって、オペレータは、1系統の多重送り返し映像に含まれる送り返し映像の数を、ゴルフ中継におけるSWの数に応じて自由に決定することができ、撮影対象及び撮影体制に応じて柔軟に対応することができる。図19の例では、オンエア映像とSW1〜SW3及びメインSWにより選択される映像との合計5つの送り返し映像を、1系統の多重送り返し映像に多重する。同様に、オペレータは、カメラの台数に応じて送り返し映像の数を決定することもできる。また、ゴルフ中継の場合、最終プレーヤが最終の18Hへ移動するに従って使用するSWの数が減少する。したがって、オペレータは、1系統の多重送り返し映像に含まれる送り返し映像の数を、ゴルフ中継の進行に伴うSWの数の減少に合わせて決定することができ、撮影状況に応じて柔軟に対応することができる。尚、映像多重部34は、SW1〜SW3により選択される映像の代わりに、選手のスコア、順位等の情報を送り返し映像として選択するようにしてもよい。
【0069】
また、メモリ342に格納されるパラメータは、送り返し映像A,B,C,D毎に個別に設定することができるから、オペレータが個別に間引き率等を設定することで、映像に応じた画質の優先順位を付けることができる。したがって、送り返し映像の数が増えて画質が劣化する場合であっても、特に必要なオンエア映像の送り返し映像については、間引き率を低く設定することにより、その画質劣化を最小限に抑えることができる。この間引き率は、パラメータa,b,c,dを変化させることにより、撮影中においても基地局側で自由に設定することができる。
【0070】
〔端末側〕
次に、図2に示した映像信号伝送システム1について、端末側の端末装置2−1〜2−Nに備えた本線/送り返し伝送部20−1〜20−N(以下、総称して本線/送り返し伝送部20という。)について説明する。図6は、本線/送り返し伝送部20の構成を示すブロック図である。この本線/送り返し伝送部20は、OFDM信号生成部21、多重部22、復調部23、分離部24及び映像分離部(映像分離装置)25を備えている。図18に示した従来の本線/送り返し伝送部104−1〜104−Nは、図6におけるOFDM信号生成部21、多重部22、復調部23及び分離部24を備えているが、本線/送り返し伝送部20は、従来の本線/送り返し伝送部104−1〜104−Nの構成に加え、映像分離部25を備えていることを特徴とする。
【0071】
OFDM信号生成部21は、カメラから本線映像を入力すると共に、多重部22から制御情報を入力し、本線映像及び制御情報に対し、誤り訂正符号化等により圧縮等の信号処理を施し、所定の変調方式により多値変調し、OFDM信号を生成し、2本の送信アンテナの系統毎にOFDM信号に分離し、2系統のOFDM信号を出力する。多重部22は、カメラからカメラ制御信号を入力すると共に、インカムからインカム信号を入力し、これらの信号をTS多重し、制御情報としてOFDM信号生成部21に出力する。
【0072】
復調部23は、多重送り返し映像、パラメータ及び制御情報を含むOFDM信号を入力し、OFDM信号を復調してTS信号を生成し、TS信号を分離部24に出力する。分離部24は、復調部23からTS信号を入力し、TS信号に付加された付属情報(カメラまたは端末装置2−1〜2−N)を識別するためのシリアル番号を抽出し、シリアル番号に基づいて、自らの端末装置2−1〜2−Nに対する制御情報を分離し、さらに、制御情報から、カメラ制御信号、インカム信号、ゲンロック信号及びタリー信号をそれぞれ分離し、カメラ制御信号をカメラに出力し、インカム信号をインカムに出力し、ゲンロック信号及びタリー信号も出力する。また、分離部24は、TS信号から1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを分離し、映像分離部25に出力する。
【0073】
(映像分離部)
映像分離部25は、図1に示した映像分離部7に対応しており、分離部24から1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを入力すると共に、カメラマン(オペレータ)により設定された選択信号を入力し、選択信号及びパラメータa,b,c,dに基づいて、1系統の多重送り返し映像に含まれる4つの圧縮された送り返し映像A,B,C,Dのうち、選択信号が示す1つの圧縮された送り返し映像を分離し、この1つの圧縮された送り返し映像を伸張し、選択送り返し映像を生成して出力する。ここで、選択信号は、1系統の多重送り返し映像に含まれる4つの圧縮された送り返し映像A,B,C,Dのうち、カメラマンにより選択された1つの映像を選択するための信号である。
【0074】
図7は、映像分離部25の構成を示すブロック図であり、図8は、映像分離部25の処理を示すフローチャートである。この映像分離部25は、パラメータ抽出部251、分離部252及び伸張部253を備えている。パラメータ抽出部251は、分離部24から1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを入力し(ステップS801)、パラメータa,b,c,dを抽出し(ステップS802)、多重送り返し映像とパラメータa,b,c,dとを区別し、分離部252に出力する。具体的には、パラメータ抽出部251は、HD-SDI信号の補助データの領域からパラメータa,b,c,dを抽出し、映像データの領域から多重送り返し映像を抽出する。
【0075】
分離部252は、パラメータ抽出部251から1系統の多重送り返し映像及びパラメータa,b,c,dを入力すると共に、カメラマンにより設定された選択信号を入力し、選択信号に基づいて、パラメータa,b,c,dのうち、選択信号が示す1つの送り返し映像に対応する1つのパラメータを選定し、1系統の多重送り返し映像に含まれる圧縮された送り返し映像A,B,C,Dのうち、選定したパラメータに含まれる開始点及び終了点が示す位置から、1つの圧縮された送り返し映像を選択映像として分離する(ステップS803)。そして、分離部252は、選択映像を伸張部253に出力すると共に、選定したパラメータに含まれる拡大率を抽出し伸張部253に出力する。例えば、選択信号が、2番目の送り返し映像Bを選択することを示す信号であり、送り返し映像Bのパラメータbが、図9に示したように、間引き率20.8%、拡大パラメータの開始点721、終了点1120及び拡大率480%であるとする。この場合、分離部252は、2番目の送り返し映像Bを選択することを示す選択信号からパラメータbを選定し、1系統の多重送り返し映像に対し、このパラメータbに含まれる開始点721及び終了点1120が示す位置から、圧縮された400×1080ピクセルの送り返し映像Bを選択映像として分離する。また、分離部252は、パラメータbから拡大率480%を抽出する。
【0076】
伸張部253は、分離部252から選択映像及び拡大率を入力し、選択映像の画素を、入力した拡大率にて水平方向に補間することで選択映像を伸張し(ステップS804)、選択送り返し映像を生成して出力する(ステップS805)。前述の例では、伸張部253は、圧縮された400×1080ピクセルの送り返し映像B(400×1080ピクセルの映像)及び拡大率480%を入力し、圧縮された送り返し映像Bの画素を拡大率480%にて水平方向に補間し、1920×1080ピクセルの元の選択送り返し映像Bに伸張し、カメラのビューファインダへ出力する。
【0077】
尚、分離部252は、パラメータbから間引き率20.8%を抽出し、伸張部253は、分離部252により抽出された間引き率20.8%から拡大率480%を求め((100/20.8)×100=480)、圧縮された送り返し映像Bの画素を、求めた拡大率480%にて水平方向に補間するようにしてもよい。この場合、パラメータには拡大率が含まれず、拡大率を伝送しなくて済む。
【0078】
また、端末装置2−1〜2−Nの本線/送り返し伝送部20−1〜20−Nは、カメラマンの設定入力に従って、カメラマンが所望する送り返し映像を伝送するように、その送り返し映像を識別するための情報を多重部22により多重し、OFDM信号生成部21によりOFDM信号を生成するようにしてもよい。これにより、カメラマンが所望する送り返し映像を識別するための情報が基地局側の基地局装置3へ伝送され、基地局装置3は、その送り返し映像を含む多重送り返し映像を端末装置2−1〜2−Nへ伝送する。これにより、カメラマンは、所望する送り返し映像が多重送り返し映像に含まれない場合であっても、前述の設定入力を行うことで基地局側から所望する送り返し映像を追加及び変更することが可能となり、所望する送り返し映像を選択して見ることができる。
【0079】
以上のように、本発明による映像分離部25によれば、パラメータ抽出部251が、多重送り返し映像が格納されたHD−SDI信号からパラメータa,b,c,dを抽出し、分離部252が、オペレータにより設定された選択信号に基づいて、パラメータa,b,c,dのうち、選択信号が示す1つの送り返し映像に対応する1つのパラメータを選定し、多重送り返し映像に含まれる圧縮された送り返し映像A,B,C,Dのうち、選定したパラメータに含まれる開始点及び終了点が示す位置から、1つの圧縮された送り返し映像を選択映像として分離するようにした。また、伸張部253が、選択映像の画素を、パラメータに含まれる拡大率にて水平方向に補間することで選択映像を伸張し、選択送り返し映像を生成して出力するようにした。これにより、カメラマンは、複数の送り返し映像A,B,C,Dの中から、必要とする映像を選択して見ることができる。したがって、基地局側の映像多重部34において複数の送り返し映像A,B,C,Dが水平方向に圧縮され、1系統の多重送り返し映像の容量にて伝送され、端末側の映像分離部25において、1系統の多重送り返し映像に含まれる送り返し映像A,B,C,Dのうち、カメラマンが必要とする映像が水平方向に伸張されるから、低遅延の伝送(1ライン程度の遅延)を実現することができる。そして、カメラマンは、自らが必要とする映像を見ることができるから、状況に応じた撮影を実現することができる。
【0080】
また、1系統の多重送り返し映像に対してコーディックの処理がなされるから、コーディックの処理負荷は高くなることがなく、遅延のない円滑な処理が可能となる。また、映像信号伝送システム1の端末装置2−1〜2−Nにおいて、送受信部105−1〜105−N、並びに本線/送り返し伝送部20−1〜20−NのOFDM信号生成部21、多重部22、復調部23及び分離部24として既存の構成部をそのまま使用することができる。したがって、既存の装置を大規模に改造する必要がないから、低コストにて映像信号伝送システム1の端末装置2−1〜2−Nを構成することができる。
【0081】
尚、本発明の実施形態による映像多重部34及び映像分離部25のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。映像多重部34及び映像分離部25は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによってそれぞれ構成される。映像多重部34に備えた選択部341、メモリ342、パラメータ決定部343及び圧縮多重部344の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、映像分離部25に備えたパラメータ抽出部251、分離部252及び伸張部253の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【符号の説明】
【0082】
1,101 映像信号伝送システム
2,102 端末装置
3,103 基地局装置
4,34 映像多重部
5 エンコーダ
6 デコーダ
7,25 映像分離部
20,30,104,107 本線/送り返し伝送部
21 OFDM信号生成部
22 多重部
23 復調部
24 分離部
31,32 信号多重分離部
33 復調部
35 多重分離部
36 送り返し送信処理部
105,106 送受信部
251 パラメータ抽出部
252 分離部
253 伸張部
341 選択部
342 メモリ
343 パラメータ決定部
344 圧縮多重部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末側から基地局側への本線伝送と、前記基地局側から前記端末側への送り返し伝送とを行う映像信号伝送システムにおける前記基地局側の映像多重装置であって、
複数の送り返し映像から、所定数の送り返し映像を選択する選択部と、
前記所定数の送り返し映像が圧縮される際の前記所定数の送り返し映像毎の圧縮率を含むパラメータを決定するパラメータ決定部と、
前記パラメータ決定部により決定されたパラメータに含まれる圧縮率に基づいて、前記選択部により選択された所定数の送り返し映像を1つの映像に圧縮して多重する圧縮多重部とを備え、
前記多重した1つの映像及びパラメータの送り返し伝送を行う、ことを特徴とする映像多重装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像多重装置において、
前記パラメータ決定部は、
当該映像多重装置を扱うオペレータの操作に従って、前記所定数の送り返し映像毎に、前記圧縮率、前記所定数の送り返し映像が1つの映像に圧縮され多重される際の配置位置、及び、前記端末側において前記1つの映像に含まれる所定数の送り返し映像から所定の送り返し映像が分離されて元の送り返し映像が生成される際の拡大率を含むパラメータを決定する、ことを特徴とする映像多重装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像多重装置において、
前記圧縮多重部は、
前記パラメータ決定部により決定されたパラメータに含まれる圧縮率に基づいて、前記選択部により選択された所定数の送り返し映像をそれぞれ圧縮し、前記パラメータに含まれる配置位置に基づいて、前記圧縮したそれぞれの送り返し映像を前記1つの映像に配置する、ことを特徴とする映像多重装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項の映像多重装置により多重された1つの映像及びパラメータを、前記基地局側から受信する端末側の映像分離装置であって、
前記1つの映像に含まれる圧縮された所定数の送り返し映像から、所定の映像を分離する分離部と、
前記分離部により分離された所定の映像に対するパラメータに基づいて、前記所定の映像を伸張し、元の送り返し映像に復元する伸張部と、
を備えたことを特徴とする映像分離装置。
【請求項5】
請求項2または3の映像多重装置により多重された1つの映像及びパラメータを、前記基地局側から受信する端末側の映像分離装置であって、
前記1つの映像に含まれる圧縮された所定数の送り返し映像から、所定の映像に対するパラメータに含まれる配置位置に基づいて、前記所定の映像を分離する分離部と、
前記分離部により分離された所定の映像に対するパラメータに含まれる拡大率に基づいて、前記所定の映像を伸張し、元の送り返し映像に復元する伸張部と、
を備えたことを特徴とする映像分離装置。
【請求項6】
端末側から基地局側への本線伝送と、前記基地局側から前記端末側への送り返し伝送とを行う映像信号伝送システムにおいて、
前記基地局側に設けられた映像多重装置は、
複数の送り返し映像から、所定数の送り返し映像を選択する選択部と、
前記所定数の送り返し映像が圧縮される際の前記所定数の送り返し映像毎の圧縮率を含むパラメータを決定するパラメータ決定部と、
前記パラメータ決定部により決定されたパラメータに含まれる圧縮率に基づいて、前記選択部により選択された所定数の送り返し映像を1つの映像に圧縮して多重する圧縮多重部とを備え、前記多重した1つの映像及びパラメータの送り返し伝送を行い、
前記端末側に設けられた映像分離装置は、
前記送り返し伝送が行われた1つの映像に含まれる圧縮された所定数の送り返し映像から、所定の映像を分離する分離部と、
前記分離部により分離された所定の映像に対するパラメータに基づいて、前記所定の映像を伸張し、元の送り返し映像に復元する伸張部とを備えたことを特徴とする映像信号伝送システム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の映像多重装置として機能させるための映像多重プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項4または5に記載の映像分離装置として機能させるための映像分離プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−85128(P2013−85128A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223815(P2011−223815)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(594044646)株式会社エヌエイチケイメディアテクノロジー (20)
【Fターム(参考)】