説明

映像編集装置

【課題】映像データを構成する多数の静止画像のそれぞれに対して煩雑な設定をすることなく、モザイクやぼかし等の抽象化処理を適切に施すことができる映像編集プログラムを提供すること。
【解決手段】モザイクやぼかし等の抽象化を施す編集処理では、予め基準領域Nに対するモザイクのブロックサイズやぼかし量の比率である基準抽象化BBsを設定することにより、始点フレームFsから終点フレームFeとの間にある多数の任意のフレームFiにおけるブロックサイズやぼかし量の設定とそのブロックサイズやぼかし量で抽象化処理を施す効果付加領域Niの設定とを自動的に補完するので、それぞれの効果付加領域Niに適したブロックサイズやぼかし量で抽象化処理を施すことができる。よって、映像データを構成する多数のフレームのそれぞれに対して煩雑な設定をすることなく、モザイクやぼかし等の抽象化処理を適切に施すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像編集プログラムに関し、特に、映像データを構成する多数の静止画像のそれぞれに対して煩雑な設定をすることなく、モザイクやぼかし等の抽象化処理を適切に施すことができる映像編集プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2001−86407号公報に開示されているように、自動的に映像データにモザイク処理を施す編集装置が知られている。これは、予めモザイク処理を施すべき映像データをテンプレート映像データとして記憶しておくと共に、そのテンプレート映像データに施すモザイクのブロックサイズを設定しておき、モザイク処理の対象となる映像データとテンプレート映像データとのマッチング度を算出し、そのマッチング度が所定の閾値以上であれば、テンプレート画像データに対応した画像を含む領域に対して設定されたブロックサイズでモザイク処理を施すものである(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−86407号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した編集装置では、モザイクを施す映像データ内の対象画像の大きさに対応して、モザイクのブロックサイズを設定することができない。よって、対象画像が小さくなると、モザイクのブロックサイズが相対的に大きくなるので、モザイク処理を施した対象画像が何であるのか全く判別できなくなったり、逆に、対象画像が大きくなると、モザイクのブロックサイズが相対的に小さくなるので、モザイク処理を施したにも拘わらず、対象画像が何であるか判別できてしまうという問題点があった。これに対して、対象画像の大きさの変化に対応してモザイクのブロックサイズを変更することが考えられるが、かかる場合には、映像データを構成する多数の静止画像(フレーム)毎に、対象画像の大きさに応じたモザイクのブロックサイズをそれぞれ設定しなければならず、極めて煩雑な設定が必要となるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、映像データを構成する多数の静止画像のそれぞれに対して煩雑な設定をすることなく、モザイクやぼかし等の抽象化処理を適切に施すことができる映像編集プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の映像編集プログラムは、映像データに抽象化を施すものであり、前記映像データの抽象化を施す所定領域の大きさに対する抽象化量の比率である抽象化パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、前記映像データに抽象化を施す領域を指定する領域指定ステップと、その領域指定ステップにより指定された領域に対して前記パラメータ設定ステップにより設定された抽象化パラメータに応じた抽象化量を算出する抽象化量算出ステップと、その抽象化量算出ステップにより算出された抽象化量に基づいて前記領域設定ステップにより指定された領域に抽象化処理を施す抽象化処理ステップとを備えている。
【0007】
この請求項1記載の映像編集プログラムによれば、パラメータ設定ステップにより、映像データの抽象化を施す所定領域の大きさに対する抽象化量の比率である抽象化パラメータが設定されると共に、領域指定ステップにより、映像データに抽象化を施す領域が指定される。この領域指定ステップにより指定された領域に対して、パラメータ設定ステップにより設定された抽象化パラメータに応じた抽象化量が抽象化量算出ステップによって算出され、その算出された抽象化量に基づいて、抽象化処理ステップによって、領域指定ステップにより指定された領域に抽象化処理が施される。
【0008】
請求項2記載の映像編集プログラムによれば、請求項1記載の映像編集プログラムにおいて、前記抽象化処理は、前記領域指定ステップにより指定された領域にモザイクを施すモザイク処理であり、前記抽象化パラメータは、前記映像データのモザイクを施す所定領域の大きさに対するモザイクのブロックサイズの比率である。
【0009】
請求項3記載の映像編集プログラムによれば、請求項1記載の映像編集プログラムにおいて、前記抽象化処理は、前記領域指定ステップにより指定された領域にぼかしを施すぼかし処理であり、前記抽象化パラメータは、前記映像データのぼかしを施す所定領域の大きさに対するぼかし量の比率である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の映像編集プログラムによれば、抽象化量の比率である抽象化パラメータの設定と、抽象化を施す映像データの領域の指定とにより、該指定領域に対する抽象化量が抽象化パラメータに基づいて算出され、その算出された抽象化量に基づいて、該指定領域に抽象化処理が施される。よって、抽象化を施す領域を、手操作で指定する場合だけでなく、該領域が映像データを構成する多数の静止画像毎に自動補完されて指定される場合にも、指定領域の大きさに応じた抽象化量に基づいて、各静止画像毎にそれぞれ抽象化処理を施すことができる。従って、映像データを構成する多数の静止画像のそれぞれに対して、煩雑な設定をすることなく、抽象化処理を適切に施すことができるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の映像編集プログラムによれば、請求項1記載の映像編集プログラムの奏する効果に加え、抽象化パラメータとしてのモザイクのブロックサイズの比率を設定することにより、映像データを構成する多数の静止画像に対してモザイクのブロックサイズをそれぞれ設定することなく、抽象化処理としてのモザイク処理を、それぞれの領域に適したブロックサイズで施すことができるという効果がある。
【0012】
請求項3記載の映像編集プログラムによれば、請求項1記載の映像編集プログラムの奏する効果に加え、抽象化パラメータとしてのぼかし量の比率を設定することにより、映像データを構成する多数の静止画像に対してぼかし量をそれぞれ設定することなく、抽象化処理としてのぼかし処理を、それぞれの領域に適したぼかし量で施すことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例における映像編集装置1の電気的な構成を概略的に示したブロック図である。
【0014】
この映像編集装置1は、映像編集装置1全体の動作を制御する中央演算処理装置としてのCPU11と、このCPU11が実行する制御プログラムや各種データテーブルなどを記憶する読み出し専用のメモリであるROM13と、CPU11で実行される制御プログラムに必要な各種レジスタ群などが設定されたワーキングエリアおよび処理中のデータを一時的に格納するテンポラリエリアなどを有しランダムにアクセスできるメモリであるRAM12と、ユーザーがモザイク若しくはぼかしを映像データに付加する場合に操作する各種操作群などからなる操作子14と、ハードディスク(HD)等で構成され映像データを記憶する映像記憶装置15と、映像データを図示しない外部機器と入出力する映像信号インターフェース(I/F)16と、映像データの表示や映像データの編集画面が表示される液晶モニタなどの大型表示器の表示器17と、表示器17に各種の表示をさせるために運転される表示回路18と、これら各構成間を接続してデータのやり取りをするための経路としてのバス10とを主に備えている。
【0015】
I/F16は、図示しない外部機器から出力される符号化された映像データとしてのビデオ信号を入力する入力インターフェースと、映像編集装置1で編集され符号化された映像データなどをビデオ信号として出力する出力インターフェースとを備えている。なお、出力インターフェースの一部には、ビデオ信号出力端子が備えられており、このビデオ信号出力端子にはビデオモニターなどが接続され、映像データの編集状態を随時確認しながら編集することができるよう構成されている。
【0016】
次に、図2のフローチャートを参照して、上記のように構成された映像編集装置1で実行される処理について説明する。図2は、CPU11により実行されるメイン処理を示したフローチャートであり、映像編集装置1の電源が投入されている間、CPU11によって繰り返し実行される。
【0017】
映像編集装置1の電源が投入されると、メイン処理が実行されると共に各種のレジスタをクリアするなどの初期設定の処理が実行され、その初期設定の処理が終了するとモード設定の処理が実行される(S101)。モード設定の処理は、映像データを再生するプレビュー(映像再生)モードと映像データにモザイクやぼかしを自動で付加する編集モードとのどちらが選択されているかを確認する処理であり、編集モードが選択されていると確認された場合には、モザイク処理が選択されているかぼかし処理が選択されているかも確認される。なお、これらのモードの選択は、予め操作子14の操作により選択される。
【0018】
モードの設定が確認されると、そのモード設定が編集モードであるか否かが確認され(S102)、編集モードが選択されていると確認されると(S102:Yes)、後述するモザイク処理やぼかし処理が実行され(S103)、一方、編集モードが選択されていないと確認されると(S102:No)、その他の処理を実行する(S104)。
【0019】
S104において実行されるその他の処理としては、映像再生モードで行われる映像データを表示器17で再生する処理やユーザーによって人為的に設定される処理などがあり、どの処理が実行されるかは操作子14の操作状態により決められる。映像再生モードで実行される処理は、CPU11の指示により映像記憶装置15に記憶された任意の映像データが読み出され、その映像データが表示回路18を介して表示器17で再生される。また、ユーザーによって設定される処理は、基準領域Nに対するモザイクのブロックサイズの比率やぼかしの程度であるぼかし量の比率の設定と、モザイクやぼかしを付加するキーフレームの設定やそのキーフレームに対する処理対象となる効果付加領域の座標の設定をする処理であり、設定されたブロックサイズの比率やぼかし量の比率はRAM12に格納され、キーフレームは映像記憶装置15のキーフレーム記憶領域に格納される。なお、モザイクのブロックサイズの比率やぼかし量の比率の設定とキーフレームの設定や効果付加領域との設定については後述する。
【0020】
編集処理(S103)又はその他の処理(S104)の実行が指示されると、S101に戻りメイン処理を繰り返し実行する。
【0021】
ここで、編集処理モードにモザイク処理が選択されている場合について以下に説明する。
【0022】
S104において実行されるユーザーにより設定されるモザイクのブロックサイズの比率の設定と、キーフレームの設定および効果付加領域の設定とについて図3を参照して説明する。図3は、操作子14の操作により映像データにモザイクを付加する操作手順を示した説明図であり、図3(a)〜図3(c)は、モザイクのブロックサイズの比率を設定する操作手順を示し、図3(d)〜図3(f)は、キーフレームのモザイクを付加する領域を設定する操作手順を示している。なお、図3で示した操作手順は、表示器17の液晶モニタ上において映像データを見ながらユーザーにより設定される。
【0023】
図3(a)の状態は、一連の映像データの中で基準となるフレームの1つを選択した状態であり、本実施例では、モザイクを付加しようとする対象画像Xが映っているフレームの内で、できるだけ対象画像Xが大きく映っているフレームを選択し、これを基準フレームFとしている。
【0024】
図3(b)の状態では、選択された基準フレームF上の領域でモザイクを付加する領域を設定している。本実施例では、基準フレームF全体をモザイクを付加する基準領域Nとして設定しており、その領域の大きさは、基準領域Nの幅SWと高さSHとで表される。なお、基準フレームF上でモザイクを付加する領域の設定は、対象画像Xの種類や大きさなどに応じてその領域の大きさは種々変更して設定される。
【0025】
図3(c)の状態は、付加するモザイクのブロックサイズを設定しており、このブロックサイズの設定は、例えば、画像Xが何であるか判別がつかない程度のブロックサイズで最小となるブロックサイズを設定する。これは、ブロックサイズが大きすぎると画像Xが何であるか全く判別できなくなり、逆に、ブロックサイズが小さすぎると画像Xが何であるか判別できてしまうので、判別がつかない程度のブロックサイズで最小となるブロックサイズを設定している。なお、ブロックサイズの大きさは、ブロックサイズの幅Bと高さBとで表される。本実施例では、ブロックサイズを一辺の長さをBとする正方形で構成するものとした。
【0026】
以上、図3(a)〜図3(c)までの操作手順は、モザイクを付加する基準領域Nの大きさに対するブロックサイズの比率を設定するための操作手順であり、この比率は、ブロックサイズの幅Bを基準領域Nの幅SWで除算して算出され、その算出された値は基準抽象化量BBsとしてRAM12に記憶される。また、処理対象となる対象画像Xが大きく映っている基準フレームF上でブロックサイズを設定するので、対象画像Xを見ながら微妙な大きさのブロックサイズを設定することができる。
【0027】
図3(d)の状態は、一連の映像データの中で実際にモザイクを付加するフレームを選択した状態であり、この選択されたフレームをキーフレームとする。キーフレームとは、連続した一連の映像データの中の任意のフレームで区切り、その区切りとなるフレームである。一連の映像データには、その先頭のフレームから番号が付されており、選択されたキーフレームは、編集処理の目印として利用される。
【0028】
図3(e)の状態では、選択されたキーフレーム上の領域でモザイクの効果を付加する効果付加領域を設定している。本実施例では、図3(b)で設定した対象画像Xのモザイクを付加する基準領域Nと略同等の大きさとなるよう効果付加領域を設定しており、その効果付加領域の大きさは、効果付加領域の幅EWと高さEHとで表される。
【0029】
図3(f)の状態は、図3(e)で設定された効果付加領域の大きさに対応してモザイクのブロックサイズが自動的に設定されている状態である。これは、図3(a)〜図3(c)で設定された基準抽象化量BBsに基づいて、効果付加領域の幅EWと高さEHとからなる領域の大きさと対応させてモザイクのブロックサイズを設定している。このモザイクのブロックサイズの設定は、基準抽象化量BBsと効果付加領域の大きさに対するブロックサイズとを対応させてROM13に記憶させたテーブルを読み出し、そのテーブル上において基準抽象化量BBsからブロックサイズを設定する。なお、ブロックサイズの大きさは、効果付加領域のブロックサイズの幅BWと高さBHとで表される。
【0030】
以上、図3(d)〜図3(f)までの操作手順は、キーフレームにおけるモザイクの効果を付加する効果付加領域を設定する操作手順であり、設定された効果付加領域のモザイクのブロックサイズは自動的に設定される。なお、従来のモザイクの効果を付加する場合には、図3(d)〜図3(e)での操作と同様に効果付加領域を設定する操作と、その後に、図3(c)での操作と同様に効果付加領域内の対象画像Xが何であるか判別がつかない程度のブロックサイズで最小となるブロックサイズに設定するという操作とを行っていた。また、実際には、映像データはキーフレームの前後にもフレームが連続して構成されているため、膨大なフレーム数に対して効果付加領域の設定とブロックサイズの設定とを繰り返し行う必要があり、作業量が膨大であった。本実施例では、図3(a)〜図3(c)の操作手順において基準となるブロックサイズの比率を予め設定すると、キーフレームにおける効果付加領域のブロックサイズが自動的に決まりモザイクが付加される。そのため、従来のモザイクを付加する操作手順と比較して煩雑な設定をすることなくそれぞれの効果付加領域に適したブロックサイズでモザイクを施すことができる。
【0031】
なお、キーフレームの設定は、一連の映像データ内でモザイクを付加しようとする対象画像Xが含まれるフレームを任意に選択することができ、モザイクを付加するフレームの始点となるフレームを第1キーフレームとし、終点となるフレームを第2キーフレームとしてキーフレーム記憶領域に格納される。
【0032】
さらに、第1キーフレームと第2キーフレームとは複数設定される場合があり、その場合には、第1キーフレームから第2キーフレームまでの間毎に基準抽象化量BBsが設定される。
【0033】
ここで、図4を参照して上述したようにモザイクが付加される場合のモザイクの明度の設定方法について説明する。図4は、モザイクの明度の設定方法を示した説明図である。
【0034】
図4(a)に図示するように、モザイクを付加する効果付加領域内は、設定されたブロックサイズで区切られており、そのブロックサイズを各画素単位で区切られた状態が図4(b)に図示する状態である。本実施例では、モザイクの1ブロックサイズを9画素で構成されるブロックサイズとなっている。モザイクの明度の設定は、図示した左上の位置にある画素Aの値をその他の全ての画素に反映させ、ブロックサイズ内の画素を全て画素Aの値としてモザイクの明度を設定する。例えば、画素Aの値が「64」であれば、そのブロック内の全画素を64の値としてモザイクの明度を設定する。この値「64」は、その画素の明度を表しており、「最小値0〜最大値127」までの間で設定できるよう構成されている。また、画像がモノクロの場合には輝度となり、カラーの場合にはRGB各色の明度となる。なお、本実施例では、左上の画素Aを基準としてモザイクの明度を設定しているが、中央の画素を基準とするものとしても良いし、各ブロック毎にランダムに基準を設定するものとしても良い。
【0035】
次に、上述したS103において実行される編集処理について図5および図6を参照して説明する。図5は、CPU11により実行される編集処理を示したフローチャートである。また、図6は、編集処理で実行される補間処理を示した説明図であり、図6(a)は補間処理前の状態を示し、図6(b)は補間処理後の状態を示している。
【0036】
なお、編集処理で用いられている基準抽象化量BBsと第1キーフレーム及び第2キーフレームとを含む必要となるデータは、予め図3で説明した操作により設定して格納されたデータを随時読み出して処理される。
【0037】
メイン処理のS103において編集処理の実行が指示されると、キーフレーム記憶領域に記憶された第1キーフレームと第2キーフレームとを読み出し、第1キーフレームのフレーム番号を始点フレームFsとし、第2キーフレームのフレーム番号を終点フレームFeと設定する(S111)。図6では、図6(a)の(i)が始点フレームFsであり、図6(a)の(iv)が終点フレームFeである。始点フレームFsと終点フレームFeとの間には、複数のフレームがありその中の任意のフレームが図6(a)の(ii)と(iii)とに該当する。
【0038】
キーフレーム記憶領域から始点フレームFsと終点フレームFeとを読み出したら、その終点フレームFeから始点フレームFsを減算して始点フレームFsから終点フレームFeの間のフレーム数Sfを算出する(S112)。
【0039】
次に、始点フレームFsのモザイクを付加する領域である始点効果付加領域Nsから終点フレームFeのモザイクを付加する領域である終点効果付加領域Neへの移動量を算出する(S113)。この始点効果付加領域Nsと終点効果付加領域Neとは、各領域の左上の座標と右下の座標との2座標で表され、移動量の算出は、左上の座標と右下の座標の2点の変化量から求められる。始点フレームFsの効果付加領域Nsの各座標を、左上x座標Fsl、左上y座標Fst、右下x座標Fsr、右下y座標Fsbとし、終点フレームFeの効果付加領域Neの各座標を、左上x座標Fel、左上y座標Fet、右下x座標Fer、右下y座標Febとして、移動量を各座標毎に減算して求められる。算出された各座標に対応する移動量は、左上x座標移動量STL、左上y座標移動量STT、右下x座標移動量STR、右下y座標移動量STBとする。
【0040】
S113において各座標の移動量が算出されると、処理する任意のフレームをフレームFiとした場合のそのフレームFiに対する全体のフレーム数Sfの割合TCoを算出する(S114)。任意のフレームFiとは、始点フレームFsから終点フレームFeまでの間で始点フレームFsから順番に選択されるフレームであって、S114の処理が終了する毎に次のフレームへ移行される。また、この割合TCoの算出は、任意のフレームFiから始点フレームFsを減算した値をフレーム数Sfで除算して求められる。即ち、始点フレームFsから任意のフレームFiが何番目のフレームかを割合として算出している。
【0041】
S113〜S114において算出された各座標の移動量(STL、STT、STR、STB)と割合TCoとから任意のフレームFiのモザイクの効果を付加する領域である効果付加領域Niを算出する(S115)。効果付加領域Niは、左上x座標Fil及び左上y座標Fitからなる左上の座標と、右下x座標Fir及び右下y座標Fibからなる右下の座標との2座標で表され、その各座標の算出は、移動量(STL、STT、STR、STB)に割合TCoを乗算した値にそれぞれ始点フレームFsの効果付加領域Nsの座標(Fsl、Fst、Fsr、Fsb)を加算して求められる。この算出された効果付加領域Niは、図6(b)の(ii)及び(iii)に示すように、始点キーフレームFsから終点キーフレームFeに状態が移行するに伴って大きくなるよう補間されている。
【0042】
S111〜S115の処理は、始点フレームFsから終点フレームFeの間にある任意のフレームFiの効果付加領域Niを設定する処理であったが、S115以降の処理は、モザイクのブロックサイズを設定する処理である。その処理について以下に説明する。
【0043】
任意のフレームFiの効果付加領域Niが算出されると、その効果付加領域Niと基準領域Nとの比率を算出する(S116)。この比率の算出は、x軸に対する比率をx軸比率ABXとし、y軸に対する比率をy軸比率ABYとし、そのx軸比率ABXは、効果付加領域Niの座標を示す右下x座標Firから左上x座標Filを減算した値を整数720で除算して求められ、y軸比率ABYは、右下y座標Fibから左上y座標Fitを減算した値を整数480で除算して求められる。なお、本実施例では、基準領域Nは、水平方向の画素数が720あり垂直方向の画素数が480ある領域としているために整数720と整数480とで除算しているが、図3(b)の操作で設定する領域の大きさに対応して数値は変更されて算出される。また、画面の左上隅の画素の座標を(0.0)としたために、xy座標とも右下の座標から左下の座標を減算している。
【0044】
S116においてx軸比率ABXとy軸比率ABYとが算出されると、そのx軸比率ABXとy軸比率ABYとに基準領域Nに対する抽象化量である基準抽象化量BBsを乗算して効果付加領域Niの大きさに対応した変換抽象化量BSXおよびBSYを算出する(S117)。なお、本実施例では、モザイクのブロックを正方形とするので、実際に採用する変換抽象化量をx軸変換抽象化量BSXの値がy軸変換抽象化量BSYの値以上である場合には、x軸変換抽象化量BSXを採用して以降の処理を実行し、それ以外である場合には、y軸変換抽象化量BSYを採用して以降の処理を実行する。
【0045】
S111〜S115の処理において設定された効果付加領域Niに対してS116〜S117の処理において設定された変換抽象化量を用いてモザイクのブロックサイズが設定されモザイクが効果付加領域Niに付加される(S118)。その状態が図6(b)に図示されており、(i)〜(iv)になる程モザイクのブロックサイズが大きくなるようモザイクが付加されている。モザイクが付加されたフレームは、映像記憶装置15に記憶されているそのフレームに対応した原画像と合成され、その合成後のフレームは映像記憶装置15の処理後フレーム記憶領域に格納される。
【0046】
モザイクの付加が終了すると、任意のフレームFiが終点フレームFeに達したか否かが確認され(S119)、終点フレームFeに達していなければ(S119:No)、始点フレームFsから終点フレームFeの間にあるフレーム全てに対して補間処理がされてないので、S114へ戻りそれ以降の処理を繰り返し実行する。
【0047】
一方、S119において確認した結果、終点フレームFeであれば(S119:Yes)、これ以上補間処理をするフレームが無いことになるので、本処理ルーチンを終了してメイン処理ルーチンの処理へ戻る。
【0048】
以上、説明したようにモザイクを施す編集処理では、予め基準抽象化BBsを設定することにより、始点フレームFsから終点フレームFeとの間にある多数の任意のフレームFiに対して、モザイクのブロックサイズと効果付加領域Niとを自動的に補完するので、それぞれの効果付加領域Niに適したブロックサイズでモザイク処理を施すことができる。
【0049】
次に、編集処理モードにぼかし処理が選択されている場合について以下に説明する。
【0050】
編集処理モードにぼかし処理が選択されていると、S105の処理では、ユーザーにより設定される基準領域Nに対するぼかしの程度の比率と、ぼかし処理を付加するキーフレームの設定やそのキーフレームに対する処理対象となる効果付加領域の座標とが設定される。この設定は、図3(a)〜図3(c)で説明した操作と同様に、ぼかしを付加しようとする対象画像Xができるだけ大きく映っている基準フレームFを選択し、この基準フレームF全体を基準領域Nとして、対象画像Xが何であるか判別がつかない程度のぼかし量となるよう設定する。この基準領域Nに対するぼかし量の比率は、基準抽象化量BBsとしてRAM12に記憶される。また、処理対象となる対象画像Xが大きく映っている基準フレームF上でぼかし量を設定するので、対象画像Xを見ながら微妙なぼかし量を設定することができる。
【0051】
基準抽象化量BBsが設定されると、図3(d)〜図3(f)で説明した操作と同様に、一連の映像データの中で実際にぼかしを付加するキーフレームが選択され、そのキーフレーム上の効果付加領域が設定されると、基準抽象化量BBsに基づいてぼかし量が設定されてぼかしが付加される。このぼかし量の設定は、基準抽象化量BBsと効果付加領域の大きさに対するぼかし量とを対応させてROM13に記憶させたテーブルを読み出し、そのテーブル上において基準抽象化量BBsからぼかし量を設定する。なお、モザイク処理の場合と同様に、第1キーフレームと第2キーフレームとはキーフレーム記憶領域に格納される。
【0052】
ここで、図7を参照して上述したようにぼかしが付加される場合のぼかしの明度の設定方法について説明する。図7は、ぼかしの明度の設定方法を示した説明図である。
【0053】
図7(a)に示すように、ぼかしを付加する効果付加領域は、画素単位で区切られており、その各画素は、画素Aの座標を(1.0)、画素Bの座標を(0.1)、画素Cの座標を(1.1)、画素Dの座標を(2.1)、画素Eの座標を(1.2)として表される。ぼかしの設定方法は、本実施例では、3×3画素の中心画素である画素Cを中心として上下左右の画素(画素A、画素B、画素D、画素E)の5つの画素の平均化した値を画素Cの値として設定し、映像記憶装置15に記憶されている原画像とは別の領域にぼかしが付加された画素Cが記憶される。このぼかし処理は、効果付加領域の全ての画素に対して実行され、その状態が図7(b)に示されている。
【0054】
図7(b)は、画素Dにぼかし処理をする場合であり、画素Dの上側に座標(2.0)となる画素Fと、右側に座標(3.1)となる画素G、下側に座標(2.2)となる画素Hが表されており、画素Dのぼかしの設定は、5つの画素(画素C、画素D、画素F、画素G、画素H)の平均値を画素Dの値として設定する。このように、全画素について順次ぼかし処理が実行される。なお、効果付加領域の境界となる画素については、4画素の平均値から算出するものとし、角となる画素については3画素の平均値から算出するものとする。また、ぼかしの明度は、モザイクの明度と同様に「最小値0〜最大値127」までの間で設定できるよう構成され、画像がモノクロの場合には輝度となり、カラーの場合にはRGB各色の明度となる。
【0055】
また、図7(c)には、5×5画素の範囲でぼかし処理を行う場合について示してあるが、これは、中心画素に対して上下左右に2画素づつ分の画素から平均値を設定している。なお、このようにぼかし処理を設定する画素の範囲を広くして平均化したり、上下左右の画素だけでなく斜め方向の画素も含めて平均化することで、ぼかしをより平坦化することができる。
【0056】
次に、上述したS103において実行される編集処理について説明する。ぼかし処理の編集処理は、上述したS111〜S117までの処理はモザイク処理と同様に効果付加領域Niの設定をするので説明は省略する。
【0057】
S118において、S111〜S115の処理において設定された効果付加領域Niに対してS116〜S117の処理において設定された変換抽象化量を用いてぼかしが付加される(S118)。ぼかし処理は、変換抽象化量とぼかしの程度を設定する画素の領域と繰り返し回数とを対応させてROM13に記憶させたテーブルを読み出し、S117で設定された変換抽象化量をそのテーブルに対応させて画素の領域と繰り返し回数とを決定して、効果付加領域Niにぼかしを付加する。ぼかしが付加されたフレームは、映像記憶装置15に記憶されているそのフレームに対応した原画像と合成され、その合成後のフレームが映像記憶装置15の処理後フレーム記憶領域に格納される。なお、ぼかしの画素の領域は、効果付加領域Niが大きくなる程、例えば、3×3画素、5×5画素、7×7画素となるようテーブルを設定する。繰り返し回数は、一旦全画素に対してぼかし処理がされた画素に対して、再度ぼかし処理をする処理であり、この場合も効果付加領域Niが大きくなるほど繰り返し回数を増やすようテーブルを設定する。また、ぼかし処理は、画素の領域を変更してぼかしを付加する場合や繰り返し回数を変更してぼかしを付加する場合、若しくは画素の領域と繰り返し回数とを組み合わせてぼかしを付加する場合など、ぼかしを付加する対象画像Xやその大きさに合わせて変更することができる。
【0058】
S119以降の処理は、上述したモザイク処理と同様であるため、その説明は省略する。
【0059】
以上、説明したようにぼかしを施す編集処理では、予め基準抽象化BBsを設定することにより、始点フレームFsから終点フレームFeとの間にある多数の任意のフレームFiに対して、ぼかし量と効果付加領域Niとを自動的に補完するので、それぞれの効果付加領域Niに適したぼかし量でぼかし処理を施すことができる。
【0060】
なお、各フローチャートにおいて、請求項1記載の領域指定ステップとしてはS115の処理が、抽象化量算出ステップとしてはS117が、抽象化処理ステップとしてはS118が、それぞれ該当する。また、請求項1記載のパラメータ設定ステップとしては図3(c)の操作が該当する。さらに、請求項1記載の抽象化量としては、フレームFiにモザイクを付加する場合のブロックサイズであり、ぼかしを付加する場合のぼかし処理をする画素の領域や繰り返し回数などである。
【0061】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0062】
例えば、上記実施例では、映像記憶装置15はHDで構成されるものとしたが、PCカードやMO、CD−ROM、DVDなどの記録装置により構成するものとしても良い。
【0063】
また、上記実施例では、基準フレームF上で予めモザイクのブロックサイズやぼかし量の比率を設定した後に、キーフレームの効果付加領域を設定するものとしたが、まず先に、キーフレームの効果付加領域を設定した後に、基準フレームF上でモザイクのブロックサイズ若しくはぼかし量の比率を設定するものとしても良い。
【0064】
また、上記実施例では、モザイク処理とぼかし処理とは、別々の編集処理としたが、同時に実行するものとしても良い。これは、予め実験などで対象画像Xが判断できるかできないかとなるようモザイクのブロックサイズとぼかし量とを関連づけたテーブルを作成してROM13に記憶しておき、このテーブルを用いてモザイクとぼかしとを施すものとしても良い。
【0065】
また、上記実施例では、効果付加領域の内側にモザイクやぼかしを付加するものとしたが、効果付加領域の外側にモザイクやぼかしを付加するものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】映像編集装置の電気的な構成を概略的に示したブロック図である。
【図2】CPUにより実行されるメイン処理を示したフローチャートである。
【図3】操作子の操作により映像データにモザイクを付加する操作手順を示した説明図である。
【図4】モザイクの明度の設定方法を示した説明図である。
【図5】CPUにより実行される編集処理を示したフローチャートである。
【図6】編集処理で実行される補間処理を示した説明図である。
【図7】ぼかしの明度の設定方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0067】
10 バス
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 操作子
15 映像記憶装置
16 映像信号インターフェース(I/F)
17 表示器
18 表示回路
X 対象画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データに抽象化を施す映像編集プログラムにおいて、
前記映像データの抽象化を施す所定領域の大きさに対する抽象化量の比率である抽象化パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、
前記映像データに抽象化を施す領域を指定する領域指定ステップと、
その領域指定ステップにより指定された領域に対して前記パラメータ設定ステップにより設定された抽象化パラメータに応じた抽象化量を算出する抽象化量算出ステップと、
その抽象化量算出ステップにより算出された抽象化量に基づいて前記領域設定ステップにより指定された領域に抽象化処理を施す抽象化処理ステップとを備えていることを特徴とする映像編集プログラム。
【請求項2】
前記抽象化処理は、前記領域指定ステップにより指定された領域にモザイクを施すモザイク処理であり、前記抽象化パラメータは、前記映像データのモザイクを施す所定領域の大きさに対するモザイクのブロックサイズの比率であることを特徴とする請求項1に記載の映像編集プログラム。
【請求項3】
前記抽象化処理は、前記領域指定ステップにより指定された領域にぼかしを施すぼかし処理であり、前記抽象化パラメータは、前記映像データのぼかしを施す所定領域の大きさに対するぼかし量の比率であることを特徴とする請求項1に記載の映像編集プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−55634(P2009−55634A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280990(P2008−280990)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2003−40628(P2003−40628)の分割
【原出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】