説明

映像表示装置、映像表示方法及びプログラム

【課題】ユーザーによる外部装置の遅延設定を容易にし得るようにする。
【解決手段】音声情報出力は外部装置で行い、映像情報を表示するに際してその映像情報の表示に対する処理方法が選択可能である。映像情報の表示に対する処理方法に応じて表示までの遅延量を得る手段110と、遅延量を通知する手段111とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声情報出力は外部装置で行う映像情報を表示する映像表示装置等に関し、映像の表示と音声の出力との時間ずれを一致させるためのものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭等でもDVD(Digital Versatile Disc)やハイビジョンデジタル放送等により高品位な映画やスポーツなど様々なコンテンツを視聴することが容易になり、それに伴いホームシアター等のシステムも一般的になってきている。そういった視聴環境では、映像の品質だけでなく、音声の品質に対する要求も高く、映像表示装置とは別にAV(Audio Visual)アンプ等の外部機器を利用して音声を出力させる場合が多い。
【0003】
映像表示装置において、特にデジタル圧縮された映像情報を表示する場合、映像情報の伸張処理と、ユーザーによる設定及び表示装置の特性に合わせたフレーム間補間・同期処理・輪郭補正・画像補間・αブレンド等様々な画像処理が行われる。それら処理のために、映像情報の入力から表示までに多くの時間遅延が生じてしまう。
【0004】
例えば、PDP(プラズマディスプレイパネル)の場合、30〜120msecが表示回路の遅延時間として生じている。従って、映像の表示と音声の出力を別々の機器で行う場合、映像情報の処理方法によっては、映像の表示タイミングと音声の出力タイミングの同期、所謂リップシンクがずれてしまい、視聴者は強い違和感を感じることとなる。
【0005】
音声の出力の遅延時間を調整する機能を持たせ、ユーザーが映像の表示タイミングと音声の出力タイミングの同期を取らせるための手段を提供しているAVアンプも存在する。特許文献1では、映像表示にかかる固定の遅延量を、ネットワークを介してAVアンプに送る方法が考案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−344898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、映像情報やユーザーの設定変更などによって、映像情報の入力から映像表示までの処理方法が異なってくる。例えば映像情報としてはアナログ信号、MPEG2(Motion Picture Experts Group 2)データ、H.264(MPEG4 Patr10)データなどがあり、伸張の有無から伸張方法まで、映像情報によって様々に異なる。
【0008】
また、画像処理では特にフレームの前後を参照するフレーム間補間などは、1フレーム以上の遅延を生じている。ユーザーの設定としては輪郭補正の設定、画質の設定、映像入力出力系の切り換えなどがある。即ち、映像情報とユーザーの設定により映像の表示までの処理方法が異なる。
【0009】
応答性が要求されるゲームなどでは、ゲームモードのように遅延する処理をバイパスすることが選択できるものもある。それぞれの処理にかかる時間も異なるので、映像情報の入力から表示までの遅延量も処理方法ごとに異なってくるのである。従ってその都度、映像の表示タイミングを見ながら、外部装置の音声出力の遅延を適切に設定するのは不可能である。
【0010】
また近年、映像音声コンテンツの多チャンネル化・マルチソース化が進行している。それに伴い映像情報の入力から映像表示までの処理方法も多様化しており、且つ処理方法の切り替わりの度合いが増している。即ち、遅延量の変化する度合いが増しているため、外部装置の音声出力の遅延を適切に設定することがより大きな問題となっている。
【0011】
本発明はかかる実情に鑑み、ユーザーによる外部装置の遅延設定を容易にし得る映像表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、音声情報出力は外部装置で行い、映像情報を表示するに際してその映像情報の表示に対する処理方法が選択可能な映像表示装置であって、前記映像情報の表示に対する処理方法に応じて表示までの遅延量を得る手段と、前記遅延量を通知する手段とを備えることを特徴とする映像表示装置等を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザーによる外部装置の遅延設定を容易にすることができる。従って、映像音声コンテンツの多チャンネル化・マルチソース化が進行し、映像表示の遅延量が様々に変化しても、容易にかつ適切に映像表示タイミングと音声出力タイミングの同期を取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を用いて、本発明における好適な実施の形態を説明する。
図1は、映像表示装置の概略構成を示す図である。本発明の映像表示装置は、音声情報出力は外部装置で行い、映像情報を表示するに際してその映像情報の表示に対する処理方法が選択可能なである。図1において、101は本発明の映像表示装置である。映像表示装置101には映像音声情報の入力経路として、デジタル放送を受信するデジタル受信機インターフェース114がある。そして更に、アナログ放送を受信するアナログ受信機インターフェース115、DVDプレーヤーなどのコンテンツ再生機との再生機インターフェース116、ネットワークインターフェース117の4つがある。
【0015】
102は、4つの入力のうちどれを表示するかを切り換える入力切替部である。103は、映像音声情報を映像情報と音声情報に分離するAV分離部である。アナログの場合はもともと分離しているので、スイッチの役割である。104は、映像情報を伸張するデコード部であり、複数の圧縮形式に対応するため3つのデコードがある。
【0016】
105、106、107は、映像情報に対して画像処理を行う画像処理部1、画像処理部2、画像処理部3である。108は、画像を表示するモニタである。109は、デコーダ及び画像処理における遅延量を算出するために参照する遅延量テーブル記憶部である。110は、本発明の構成要件である遅延量を得る手段である遅延量算出部である。111は、本発明の構成要件である遅延量を通知する手段である遅延量通知部である。112は、遅延量をAVアンプへ送信する遅延情報送信インターフェースである。
【0017】
通信手段は、特に限定していない。例えばRS-232C、同期シリアル、IEEE1394やイーサネット(登録商標)を用いたネットワークなどの有線手段、またはIrDA、Bluetooth、IEEE802.11(無線LAN)などのような無線手段でも良い。次の音声情報と重畳して送っても良い。
【0018】
113は、AV分離による音声情報をAVアンプへ伝送する音声情報送信インターフェースである。通信手段は、デジタル信号の場合、光や同軸で、フォーマットとして、PCM、ADPCM、AC3、ACCなどがある。アナログの場合は、RCAケーブルで、アナログ信号である。118は、チャンネルや入力切替そして画質設定などを行うユーザー設定であり、この設定により処理方法が選択可能となっている。
【0019】
映像表示装置101は、デジタル受信IF114、アナログ受信IF115、再生機IF116、ネットワークIF117の4つの入力経路を持つ。ユーザー設定118によるどの入力経路及びどのチャンネルを表示するのかの設定により、表示する映像情報が確定する。次に、表示する映像情報とユーザーによる画質設定が確定すると、デコータ部104及び画像処理部105、106、107でどのような処理を行うのかの処理方法が選択されて確定する。その処理方法に従って映像情報の処理を行い、モニタ108で表示する。
【0020】
例えば、デコーダ部1はMPEG2のコーデック、デコーダ部2はH.264のコーデック、デコーダ部3はMPEG1のコーデックであり、選択された伸張する映像情報がMPEG2の形式であった場合、デコータとしてデコーダ部1を用いることが確定する。また、映像情報とユーザーの画質に関する設定により、画像処理部105、106、107での各画像処理におけるON・OFFもしくはONの場合のパラメータが一意に決定する。
【0021】
画像処理には、フレーム間補間、同期処理、輪郭補正、画像補間、αブレンドなど数多くの処理が存在する。ユーザーが、チャンネル選択・入力ソース切替・画質設定を様々に切り換えたとしても、入力された映像情報とユーザー設定によりのデコーダ部105,106,107の画像処理部における処理方法、その都度一意に決まる。
【0022】
本発明の遅延量を得る手段である遅延量算出部110は、デコーダ及び画像処理における遅延量を予め記録した遅延量テーブル記憶部109を持ち、確定した映像情報の表示に対する処理方法と遅延量テーブルから遅延量を得る。
【0023】
図2を用いて、本発明の実施形態における映像情報表示装置が記憶する遅延量テーブル、及び遅延量算出例を説明する。
図2は、本発明の実施形態における映像表示装置が持つ遅延量テーブルを示す図である。図において、列201は、映像表示装置101が持つ処理部を登録する。デコーダ部1、デコーダ部2、デコーダ部3、画像処理部1、画像処理部2、画像処理部3の6つが登録されている。列202は、各処理部が持つ処理モードを登録する。例えばデコード部1には、デコードを行うか行わないかのONとOFFがある。
【0024】
画像処理部1には、処理モード1、処理モード2と処理を行わないOFFがある。各処理における入力から出力までにかかる遅延量203を登録する。例えば、画像処理部2においてモード2で処理した場合、入力から出力までの遅延量として、40msecかかることが分かる。
【0025】
映像情報の表示に対する処理方法が、下記ように確定した場合、図2の遅延量テーブルを参照することで、
0 + 33 + 0 +20 + 33 +3 = 89msec
遅延量は、89msecであることが分かる。
デコード部1:OFF
デコード部2:ON
デコード部3:OFF
画像処理部1:モード2
画像処理部2:モード1
画像処理部3:OFF
【0026】
次に、本発明の遅延量を通知する手段である遅延量通知部111は、遅延量算出部110が得た遅延量を外部機器であるAVアンプに112遅延情報送信インターフェースを介して、送信する。
【0027】
図3を用いて、本発明の実施形態における映像表示装置における遅延量の処理の流れを示す。
図3は、本発明の実施形態における映像表示装置における遅延量の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップ301:遅延量算出部は、映像情報の切り替わり、ユーザーによるチャンネル切替・入力切替・画像設定切替を待つ。
ステップ302:遅延量算出部は、切り替わった映像情報及びユーザー設定による確定した映像情報の処理方法を得る。
ステップ303:遅延量算出部は、映像情報の処理方法と遅延テーブルから遅延量を得る。
ステップ304:遅延量通知部は、遅延量を外部機器であるAVアンプに送信し、ステッ301に戻る。
【0028】
以上説明したように、ユーザーが、チャンネル選択・入力ソース切替・画質設定を様々に切り換えたとしても、入力された映像情報とユーザー設定により映像情報の表示に対する処理方法はその都度一意に決まる。よって、遅延量テーブル記憶部を持つ遅延量算出部と遅延量通知部により、逐次適切な遅延量をAVアンプに通知することが出来る。
【0029】
また、上記実施形態では、音声情報に対する出力を行う外部装置であるAVアンプに遅延情報を受け取るためのインターフェースを持つ事を前提として、本発明である映像表示装置の遅延情報送信インターフェースから遅延量を送信している。しかしながら、AVアンプ側に遅延情報を受け取るためのインターフェースが常にあるとも限らない。従って、映像表示装置の遅延量を通知する手段として、遅延量をユーザーに分かるように表示しても良い。一例としては、映像表示装置の情報ディスプレイもしくはモニタの隅に表示する。ユーザーは、その遅延量をAVアンプに設定することで、適切な遅延を設定できる。
【0030】
また、映像表示装置とAVアンプとの接続方法には、いくつか考えられる。図4、図5、図6を用いて映像表示装置とAVアンプの構成例を示す。
図4は、映像音声情報を映像表示装置が受け取る構成例である。この構成は、上記実施形態で説明した構成例になる。401は映像表示装置、402はAVアンプ、403は映像音声情報である。
【0031】
映像表示装置401内に、映像音声情報から映像情報と音声情報に分離するAV分離部を持ち、AVアンプ402に対して音声情報と遅延情報を送る。映像表示装置401には、遅延量を得る手段である遅延量算出部と遅延量を通知する手段である遅延量通知部がある。AVアンプ402には、遅延情報に従って、音声出力の遅延を制御する音声遅延部がある。
【0032】
図5は、映像音声情報をAVアンプが受け取る構成例である。501は映像表示装置、502はAVアンプ、503は映像音声情報である。
AVアンプ502内に、映像音声情報から映像情報と音声情報に分離するAV分離部を持ち、映像表示装置501に対して映像情報を送る。また、映像表示装置501は、AVアンプ502に対して遅延情報を送る。映像表示装置501には、遅延量を得る手段である遅延量算出部と遅延量を通知する手段である遅延量通知部がある。AVアンプ502には、遅延情報に従って、音声出力の遅延を制御する音声遅延部がある。
【0033】
図6は、映像情報と音声情報が別々に分かれている構成例である。601は映像表示装置、602はAVアンプ、603は映像情報、604は音声情報である。
映像表示装置601は、AVアンプ602に対して遅延情報を送る。映像表示装置601には、遅延量を得る手段である遅延量算出部と遅延量を通知する手段である遅延量通知部がある。AVアンプ602には、遅延情報に従って、音声出力の遅延を制御する音声遅延部がある。
【0034】
ここで、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム等のコンピュータが記憶媒体からプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。
【0035】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0036】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0037】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0038】
更に記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに接続された機能拡張ユニット等に備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づきCPU等が実際の処理を行い、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0039】
更にプログラムコードをインターネット等の通信媒体を介してコンピュータに供給される構成も本発明の範疇に含まれる。
以上の本実施形態は、コンピュータのプログラムによっても実現できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態における映像表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における映像表示装置が持つ遅延量テーブルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態における映像表示装置における遅延量の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における映像表示装置とAVアンプの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における映像表示装置とAVアンプの他の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における映像表示装置とAVアンプの他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
101:本発明の映像表示装置、102:映像音声情報の入力切替部、103:AV分離部、104:圧縮された映像情報を伸張するデコーダ部、105:映像情報に対する画像処理部1、106:映像情報に対する画像処理部2、107:映像情報に対する画像処理部3、108:映像を表示するモニタ、109:遅延量テーブル記憶部、110:遅延量を得る手段である遅延量算出部
111:遅延量を通知する手段である遅延量通知部、112:AVアンプへの遅延情報送信インターフェース、113:AVアンプへの音声情報送信インターフェース、114:デジタル放送を受信するデジタル受信インターフェース、115:アナログ放送を受信するアナログ受信インターフェース、116:コンテンツを再生する再生機との再生機インターフェース
117:ネットワークインターフェース、118:ユーザー設定、201:遅延量テーブルにおける処理部項目、202:遅延量テーブルにおける処理モード項目、203:遅延量テーブルにおける遅延量項目、401:映像表示装置、402:AVアンプ、403:映像音声情報、501:映像表示装置、502:AVアンプ、503:映像音声情報、601:映像表示装置、602:AVアンプ、603:映像情報、604:音声情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声情報出力は外部装置で行い、映像情報を表示するに際してその映像情報の表示に対する処理方法が選択可能な映像表示装置であって、
前記映像情報の表示に対する処理方法に応じて表示までの遅延量を得る手段と、
前記遅延量を通知する手段とを備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記遅延量を通知する手段として、前記音声情報出力を行う前記外部装置に伝送することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記遅延量を通知する手段として、その遅延量を表示することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
音声情報出力は外部装置で行い、映像情報を表示するに際してその映像情報の表示に対する処理方法が選択可能な映像表示方法であって、
前記映像情報の表示に対する処理方法に応じて表示までの遅延量を得る工程と、
前記遅延量を通知する工程とを備えることを特徴とする映像表示方法。
【請求項5】
請求項4に記載の映像表示方法の各工程をコンピュータにて実施させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141581(P2010−141581A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315856(P2008−315856)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】