説明

映像表示装置及び映像表示方法

【課題】視聴者視力に対応した調節機能を有する映像表示装置及び映像表示方法を提供する。
【解決手段】映像を表示する表示層と、この表示層へ背後またはエッジからバックライトを照射するバックライト層cと、前記表示層に表示される映像を凸または凹のレンズの特性様に収縮または拡散させて放射するレンズ層aとを備えた映像表示装置。また、映像表示装置における映像表示方法であって、背後またはエッジからバックライトを照射されて映像を表示し、この映像を凸または凹のレンズの特性様に収縮または拡散させて放射する映像表示方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、視聴者の視力を配慮した映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡側に視力適応機能を持たせた例、その他、視力調節に関連する工夫の例がある。
例えば特許文献1では、双眼視装置、及び表示ソースを備えた立体視表示システムなるものが記載され、概要として、 表示ソースを最適化する複数のソフトウェアを実行し、様々なパラメータを管理し、着用者の視覚生理機能に最もよく適合された状態で、双眼視装置を介して情報コンテンツを観賞させるとある。中に、双眼視装置を最適化する視力矯正パラメータの記述がある。(3D向け等)制御可能性のより容易と思われる眼鏡側での視力矯正・補正の例と言えよう。
【0003】
しかしながら、表示装置側での視力対応補正の要望がある。が、かかる要望を実現するための手段は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−506476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施の形態は、視聴者視力に対応した調節機能を有する映像表示装置及び映像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態によれば映像表示装置は、映像を表示する表示層と、この表示層へ背後またはエッジからバックライトを照射するバックライト層と、前記表示層に表示される映像を凸または凹のレンズの特性様に収縮または拡散させて放射するレンズ層とを備えた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態にかかるデジタルテレビジョンの一例を示す外観斜視図。
【図2】同実施形態のデジタルテレビジョンの信号処理系を示すブロック構成図。
【図3】同実施形態の効果を説明するために示す概略ブロック図。
【図4】人間の目の仕組みを示す説明図。
【図5】近視の目を示す説明図。
【図6】メガネによる近視補正を示す説明図。
【図7】メガネをかけた場合の光路図。
【図8】実施形態に用いられる装置実施例。
【図9】合成処理部の構成を示すブロック構成図。
【図10】立体視用眼鏡の構成を示すブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
本発明による第1の実施形態を図1乃至図8を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる映像出力装置であるデジタルテレビジョン1の一例を示す外観斜視図である。図1に示すように、デジタルテレビジョン1は、前方から見た正面視(前面に対する平面視)で、長方形状の外観を呈している。デジタルテレビジョン1は、筐体2と、LCD(Liquid Crystal Display)パネル3を備えている。LCDパネル3は、後述する映像処理部20(図2参照)から映像信号を受け取り、静止画や動画等の映像を表示する。また、筐体2は、支持部4に支持されている。なおLCDパネル3は外付け、別筐体といった構成のものでもよい。
【0009】
図2は、デジタルテレビジョン1の信号処理系を示すブロック図である。なお、このデジタルテレビジョン1は、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号に基づく映像表示を行なうだけでなく、立体視(3次元)表示用の映像信号に基づく映像表示も行なうことができるよう構成されていてもよい。
【0010】
図2に示すように、デジタルテレビジョン1は、アンテナ12で受信したデジタルテレビジョン放送信号を、入力端子13を介してチューナ部14に供給することにより、所望のチャンネルの放送信号を選局することが可能になっている。デジタルテレビジョン1は、チューナ部14で選局された放送信号を、復調復号部15に供給してデジタルの映像信号及び音声信号等に復元した後、信号処理部16に出力する。
【0011】
信号処理部16は、復調復号部15から供給されたデジタルの映像信号及び音声信号に対してそれぞれ所定のデジタル信号処理を施す。なお、信号処理部16が行なう所定のデジタル信号処理には、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号を立体視(3次元)表示用の映像信号に変換する処理や、立体視表示用の映像信号を平面視表示用の映像信号に変換する処理等も含まれている。
【0012】
また、信号処理部16は、デジタルの映像信号を合成処理部17に出力し、デジタルの音声信号を音声処理部18に出力している。このうち、合成処理部17は、信号処理部16から供給されるデジタルの映像信号に、OSD(On Screen Display)信号生成部19で生成される字幕、GUI(Graphical User Interface)、OSDなどの重畳用映像信号であるOSD信号を重畳して出力している。この場合、合成処理部17は、信号処理部16から供給される映像信号が通常の平面視表示用の映像信号であれば、その映像信号にOSD信号生成部19から供給されたOSD信号をそのまま重畳して出力している。また、合成処理部17は、信号処理部16から供給される映像信号が立体視表示用の映像信号である場合、OSD信号生成部19から供給されたOSD信号に対して、入力された立体視表示用の映像信号に対応した立体視表示用の信号処理を施した後、そのOSD信号を入力映像信号に重畳して出力している。
【0013】
デジタルテレビジョン1は、合成処理部17から出力したデジタルの映像信号を、映像処理部20に供給する。映像処理部20は、入力されたデジタルの映像信号を、LCDパネル3で表示可能なフォーマットのアナログ映像信号に変換している。デジタルテレビジョン1は、映像処理部20から出力されたアナログ映像信号を、LCDパネル3に供給して映像表示に供する。
【0014】
LCDパネル3は、図2に示すように、映像表示部として機能するLCD3aと、LCD3aを背面またはエッジから照射するバックライト3bと、バックライト3bを駆動するバックライト駆動部3cとを有している。バックライト3bは、光源に多数のLED(発光ダイオード)が採用されており、バックライト駆動部3cによってエリアごとの発光制御が可能となっている。バックライト部は、バックライト3bとバックライト駆動部3cとで構成される。
【0015】
音声処理部18は、入力されたデジタルの音声信号を、スピーカ22で再生可能なフォーマットのアナログ音声信号に変換している。そして、この音声処理部18から出力されたアナログ音声信号が、スピーカ22に供給されることにより音声再生に供される。
【0016】
ここで、デジタルテレビジョン1は、上記した各種の受信動作を含むその全ての動作を制御部23によって統括的に制御している。この制御部23は、CPU(Central Processing Unit)23aを内蔵しており、デジタルテレビジョン1の本体に設置された操作部24からの操作情報を受けて、または、リモートコントローラ25から送出され受信部
【0017】
26で受信した操作情報を受けて、その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
制御部23は、メモリ部23bを利用している。メモリ部23bは、主として、CPU23aが実行する制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、該CPU23aに作業エリアを提供するためのRAM(Random Access Memory)と、各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを有している。また、制御部23には、ディスクドライブ部27が接続されている。ディスクドライブ部27は、例えばDVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスク28を着脱自在とするもので、装着された光ディスク28に対してデジタルデータの記録再生を行なう機能を有している。
【0018】
制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、復調復号部15から得られるデジタルの映像信号及び音声信号を、記録再生処理部29によって暗号化し所定の記録フォーマットに変換した後、ディスクドライブ部27に供給して光ディスク28に記録させるように制御することができる。
【0019】
また、制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、ディスクドライブ部27により光ディスク28からデジタルの映像信号及び音声信号を読み出させ、上記記録再生処理部29によって復号化した後、信号処理部16に供給することによって、以後、上記した映像表示及び音声再生に供させるように制御することができる。
【0020】
制御部23には、HDD(Hard Disk Drive)30が接続されている。制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、復調復号部15から得られるデジタルの映像信号及び音声信号を、記録再生処理部29によって暗号化し所定の記録フォーマットに変換した後、HDD30に供給してハードディスク30aに記録させるように制御することができる。
【0021】
また、制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、HDD30によりハードディスク30aからデジタルの映像信号及び音声信号を読み出させ、記録再生処理部29によって復号化した後、信号処理部16に供給することによって、以後、上記した映像表示及び音声再生に供させるように制御することができる。
【0022】
さらに、デジタルテレビジョン1には、入力端子31が接続されている。入力端子31は、デジタルテレビジョン1の外部からデジタルの映像信号及び音声信号を直接入力するためのものである。この入力端子31を介して入力されたデジタルの映像信号及び音声信号は、制御部23の制御に基づいて、記録再生処理部29を介した後、信号処理部16に供給されて、以後、上記した映像表示及び音声再生に供される。
【0023】
また、入力端子31を介して入力されたデジタルの映像信号及び音声信号は、制御部23の制御に基づいて、記録再生処理部29を介した後、ディスクドライブ部27による光ディスク28に対しての記録再生や、HDD30によるハードディスク30aに対しての記録再生に供される。
【0024】
なお、制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、ディスクドライブ部27とHDD30との間で、光ディスク28に記録されているデジタルの映像信号及び音声信号をハードディスク30aに記録したり、ハードディスク30aに記録されているデジタルの映像信号及び音声信号を光ディスク28に記録したりすることも制御している。
【0025】
また、制御部23には、ネットワークインターフェース32が接続されている。このネットワークインターフェース32は、入出力端子33を介して外部のネットワーク34に接続されている。そして、このネットワーク34には、当該ネットワーク34を介した通信機能を利用して各種のサービスを提供するための複数(図示の場合は2つ)のネットワークサーバ35,36が接続されている。このため、制御部23は、ネットワークインターフェース32、入出力端子33及びネットワーク34を介して、所望のネットワークサーバ35,36にアクセスして情報通信を行なうことにより、そこで提供しているサービスを利用することができるようになっている。
【0026】
デジタルテレビジョン1は、ディスクドライブ部27やHDD30から取得した映像や音声等の情報に対しては、リモートコントローラ25の再生停止キーや再生/一時停止キーを操作することにより、再生、停止、一時停止を行なうことが可能となる。また、デジタルテレビジョン1は、リモートコントローラ25の逆方向スキップキーや順方向スキップキーを操作することにより、ディスクドライブ部27やHDD30で再生している映像や音声等の情報を、その再生方向に対して逆方向や順方向に一定量ずつスキップさせる、いわゆる、逆方向スキップや順方向スキップを行なうことができる。さらに、デジタルテレビジョン1は、リモートコントローラ25の早戻しキーや早送りキー等を操作することにより、ディスクドライブ部27やHDD30で再生している映像や音声等の情報を、その再生方向に対して逆方向や順方向に連続的に高速で再生させる、いわゆる、早戻し再生や早送り再生を行なうことができる。
【0027】
またデジタルテレビジョン1は、視聴者を写し、制御部23を中心として各種の認識や調節をするための図示せぬカメラを備えている。
さて、本実施形態は視聴者の視力を配慮した表示装置を提供する。図3は、実施形態を示すブロック構成図である。
これらはLCDパネル3に形成されており、図3の表示装置本体c、および表示面bの上に、発光方向を制御する装置aを設けている。装置aは表示面bからの光を調整し、適度に発散させてから、視聴者の目に届くようにしている。
【0028】
表示装置cの内部に、視聴者の目の特性に合うように、装置aを制御する装置dがある。視聴者は装置dに対し、自分の目の特性を認識させることで、最適は画面表示を得ることができる。適切に調整された画面を、視聴者は裸眼でも快適に視聴できる。これにより、視聴者の視聴負担が減らされる。
【0029】
この目の特性を認識させる手段は、幾つかある。例えば、順に制御パラメータを変化させ目の特性に合ったタイミングをユーザに指示させればよい。あるいは画面上で並列に異なる制御パラメータを施し、その中で選択させてもよい。また、網膜をカメラで捉え、発する画像が焦点を結ぶように制御パラメータを自動調節するような機構を構成してもよい。
【0030】
図4と図5は、人間の目の仕組みおよび近視の状態を説明している。人間の目には水晶体と呼ばれる組織があり、凸レンズの役割を果たしている。図4と図5では凸レンズEで水晶体を示す。図4では、物体Aからの光線a,bそれぞれが水晶体を通り、面Mに実像を結ぶ。本来は、物体Aから無数の光線が射出されるが、ここでは代表的な光線a,bのみで説明を行う。光線aは、レンズの軸と平行して入射するため、レンズの反対側にある焦点fを通るように射出される。光線bはレンズの中心を通るため、進行方向が変わらない。光線a,bは物体Aから射出されてから、レンズを通って、レンズの反対側にある面Mに再び交差する形になる。物体Aのほかの点からの光線も同じように水晶体を通り、最終的に面MにAの像(実像)Bが上下逆の形で結ばれる。この時、光センサーの役割を果たす網膜が面Mと重なる位置にあれば、物体Aの像を正しく感知し、脳に伝えることができる。この場合、物体Aとレンズの距離OA、像Bとレンズの距離OBとレンズの焦点距離fの関係は式1のようになる。
【0031】
【数1】

【0032】
近視には大まかに「軸性近視」(水晶体と網膜の距離が長すぎる)と「屈折性近視」(水晶体は何らかの原因で、曲率が強くなり、焦点が短過ぎる)の2種類に分類できる。いずれの場合も図5に示したように、像Bが結ばれる面Mは網膜の面Nより手前の位置にある。この場合、光線aと光線bは網膜に交差するのではなく、発散した形で網膜に感知されてしまう。つまり、物体Aにある一点は、網膜に複数の点によって構成された「エリア」として認識され、ぼやけて見える。光線aと光線bは網膜に届いた時点の発散量xは、物体Aの位置が遠いほど大きく、近い物体なら比較的はっきり見える。また、近視が進行すればするほど、面Mと面Nが離れることになり、物体Aは裸眼でますます見えにくくなる。
【0033】
近視の矯正手段として、メガネやコンタクトレンズは広く知られている。これらの方法では、凹レンズが使用される。光を集束させる特性を持つ凸レンズに対して、凹レンズは光を発散させる特徴がある。近視になった目は集束特性が強すぎる凸レンズと考えれば、手前に凹レンズOLを配置することによって、水晶体の凸レンズ機能を適切に相殺させ、像を網膜に正しく結ばせることが可能である(図6)。メガネをかけたときの光路は図7に示す。
【0034】
図7では、水晶体レンズEの左側にメガネを表す凹レンズGを配置している。凹レンズGが挿入される前の光路は破線で表示され、凹レンズGが配置された後の光路は実線で描かれている。物体Aから射出された光はレンズGによっていったん発散され、再びレンズEで集束した結果、本来の像Bが結ばれず、網膜のある面Nに像B’が結ばれる。見た目では、像Bが面Nに平行移動された形になる。
【0035】
本実施形態では、図7のレンズGの役割を果たす装置(図1装置a)を表示装置内部に配置することにより、視聴者がメガネをかけなくても画面がはっきり見えるようにする。装置aの実施例として、流体レンズ(液体レンズ)の使用が考えられる。流体レンズは、液体が封入された装置で、その液体を使ってレンズの役割を果たす。また、電極が埋め込まれており、電圧をかけることで、レンズの形を変え、特性の違うレンズ(凸レンズ、凹レンズ、あるいは焦点距離だけが異なるレンズ)を作りだすことが可能である。流体レンズを使用する例は図8に示す。
【0036】
図8は液晶表示装置における実施例を示している。他の種類の表示装置でも同じような方法で本実施形態が実施できる。図8では、液晶表示装置を流体レンズ層a、液晶層b、およびバックライト層cの3層に分けて示している。バックライトcの光は液晶層bにある各画素を通り、流体レンズ層aに到達する。流体レンズ層aは複数の流体レンズによって構成される。図3にある装置dの制御により、レンズ層の各レンズに異なる制御信号が与えられる。一枚の流体レンズは隣接する流体レンズと少しずつ形が異なり、全体的に一枚の大きなレンズを作りだす。視聴者は近視の場合、図8に示したように、画面中心のレンズは凹み、周辺が盛り上がる形を作り、全体で一枚の凹レンズを形成し、ユーザの視力に合わせて、補正を行う。
【0037】
また、図3の装置dはHW、SWによって、レンズの制御を行うほか、ユーザの設定に合わせ、レンズの制御パラメータを変えることができる。これにより、進行した近視、または複数ユーザへの対応が可能になる。
【0038】
装置aを制御する装置dの機構としては、例えば電界または磁界内の電磁流体または電気流体により集光作用をなす流体レンズが存在しこの作用を利用すればよい。またポンプなどでの吸引・加圧、あるいは拡張として固体に圧力をかけ変形させるなどの力学的な方法や、水と油といった2液の混合体における帯電と静電界を用いるなどの原理を応用してもよい。
【0039】
上記実施例では、凹レンズを利用して、近視の補正を行う例で説明したが、実際に凸レンズを作り、老眼鏡の役割を果たすことも可能である。つまり、本実施形態ではユーザはどんな視力を持っていても同じ実装で対応することが可能である。レンズに関しては、一枚のレンズのみならず、複数のレンズで構成される可変焦点レンズユニットも用いられうる。
【0040】
(第2の実施形態)
また、現行の3D技術と合わせて利用することにより、両目に対して異なる補正をかけることもできる。乱視への対応、そしてカメラなどによる両目の追跡により、違う角度からの視聴も可能である。第2の実施形態を図1乃至図10を参照して説明する。実施形態1と共通する部分は説明を省略する。
【0041】
図9は、合成処理部17の構成を示すブロック図である。図3に示すように、合成処理部17は、信号処理部16から出力されるデジタルの映像信号を、入力端子37を介して映像生成部として機能する映像変換部38に供給する。
【0042】
映像変換部38は、入力された映像信号が立体視(3次元)表示用の映像信号である場合、その映像信号を特定の映像フォーマットに変換して、画質制御部39及び視差量抽出部40に出力している。すなわち、立体視表示用の映像信号には、1フレーム同期期間内で左目用映像フレーム後に右目用映像フレームを送出するフレームパッキング(トップアンドボトム)方式や、1水平期間内で左目用映像ライン後に右目用映像ラインを送出するサイドバイサイド方式、インターリーブ方式等、様々な映像フォーマットが存在する。さらに、各映像フォーマットの中でも、映像のサイズや走査方式(インターレース/プログレッシブ)等が種々存在する。このため、第1の実施形態にかかるデジタルテレビジョン1においては、映像変換部38が、入力された立体視表示用の映像信号に対して、スケーリング処理やIP(Interlace/Progressive)変換処理等の適切な処理を施すことにより、水平方向1920画素×垂直方向1080ラインの映像サイズのフレームシーケンシャル方式の映像フォーマットに変換し、画質制御部39及び視差量抽出部40に出力するものとする。フレームシーケンシャル方式は、フレーム毎にL(左目用映像)とR(右目用映像)とを時分割で出力してLCDパネル3上において交互に表示させるものである。
【0043】
すなわち、第2の実施形態にかかるデジタルテレビジョン1においては、フレームシーケンシャル方式の映像フォーマット以外の立体視表示用の様々な映像フォーマットにも対応可能である。
【0044】
また、映像変換部38は、超解像処理を実行する。超解像処理とは、アップコンバートした仮の高解像度画像をダウンコンバートした仮の低解像度画像とオリジナルの入力画像にアンシャープマスクをかけて強調化した画像とを比較し、オリジナルの入力画像が本来持っているはずの画像信号を復元する技術である。なお、比較と復元の処理を繰り返すほ
【0045】
どに、超解像処理の精度は向上する。従って、比較と復元の処理を1回だけ行う処理も超解像処理であるし、比較と復元の処理を複数回繰り返す処理も超解像処理である。時間に余裕がある場合、例えば録画した画像を後で視聴する場合や、超解像処理に生じるタイムラグが許容され得る場合には、比較と復元の処理を複数回繰り返す超解像処理を利用することができる。
【0046】
ただし、映像変換部38における超解像処理の手法は、上記に限定されるものではなく、低解像度または中解像度の画像信号から本来の画素値を推定して画素を増やすことにより、高解像度の画像信号を復元する処理を一例として、あらゆる手法を適用することができる。超解像処理には、映像そのものの解像度ヒストグラムを分析し、その解像度に応じて最適な高画質処理を行うことも含む。例えば、HD解像度(1920×1080)で受信した映像信号の、映像そのものの解像度ヒストグラムを分析し、その解像度(例えば、1920×1080の解像度)に応じた鮮鋭化処理を含む。この場合は、超解像処理による解像度の変更はないが、画像が視聴者にもたらす解像感を向上させることができる。
【0047】
このように映像変換部38において、超解像処理を実行することにより、より解像度の高い立体映像を実現することができる。特に、フレームパッキング方式、サイドバイサイド方式、インターリーブ方式は、元映像の1/2の解像度で入力されるため、超解像により元映像の解像度に近い立体映像が得られる。
【0048】
さらに、映像変換部38は、フレームを内挿又は外挿することによるフレームレートのアップコンバータ機能を有している。これにより、低フレームレートの映像をアップコンバートすることができる。特に、フレームシーケンシャル方式の映像データは、低フレームレートであることが多いので、アップコンバートでより高いフレームレートの立体映像を実現することができる。
【0049】
画質制御部39は、入力された映像信号に対して、制御部23の制御に基づいた明るさ調整、コントラスト調整及び色相調整等の画質調整処理を施し、垂直同期信号に同期させて合成部41に出力する。
【0050】
視差量抽出部40は、映像変換部38により、フレームシーケンシャル方式の映像フォーマットに変換された立体視表示用の映像信号に対して、その左目用映像フレームと右目用映像フレームとの間の映像の比較を行ない、視差量を抽出する。視差量抽出部40による視差量の抽出処理は、左目用映像フレームに表示されている物体の位置を基準として、右目用映像フレームに表示されている同じ物体の左右方向の位置ずれを、画素数で示すことによって行なわれる。この視差量抽出処理は、連続するフレームで表示される同じ物体の動き位置を検出するための動きベクトルの技術を利用することで容易に実現することができる。
【0051】
具体的には、画面上で水平方向に1920個配列された画素に1〜1920の番号を振り、左目用映像フレームに表示されている物体の所定位置の画素の番号から、右目用映像フレームに表示されている物体の同じ所定位置の画素の番号を減算することにより、視差量を画素数で示すことができる。
【0052】
この場合、視差量が負値のときは、左目用映像より右目用映像が右側に存在することになり、物体は画面よりも奥側で結像される映像となる。また、視差量が正値のときは、左目用映像より右目用映像が左側に存在することになり、物体は画面よりも手前で結像される映像となる。
【0053】
そして、視差量抽出部40によって抽出された視差量は、映像生成部として機能するOSD位置算出部42に供給される。OSD位置算出部42は、入力された視差量に基づいて、OSDを立体視表示させる際の表示位置を補正する計算を行ない、その計算結果を示す視差制御信号を出力する。
【0054】
なお、OSD位置算出部42は、視差量抽出部40で抽出した視差量が時間軸方向の変動がない状態、または、視差量が時間軸方向に緩やかに変動している映像表示状態のときに、OSDを立体視表示させる際の表示位置を補正する計算を実行する。すなわち、視差量が時間軸方向に激しく変動している場合は、映像が奥行き方向に激しく動いている状態であり、この状態では視聴者は映像に意識が向いているため、重畳するOSDも奥行き方向に激しく動くと見苦しくなるからである。このため、OSD位置算出部42は、視差量が激しく変動している状態では、視差量の変動がすくないときに算出した結果を示す視差制御信号を出力している。
【0055】
OSD位置算出部42から出力される視差制御信号は、OSD立体変換部43に供給される。このOSD立体変換部43には、OSD信号生成部19から出力されるOSD信号が、入力端子44を介して供給されている。OSD立体変換部43は、視差制御信号に基づいて、入力されたOSD信号から、左目用映像フレームに重畳する左目用OSD信号と、右目用映像フレームに重畳する右目用OSD信号とを生成し、OSDバッファ45に出力し記憶させている。
【0056】
具体的に言えば、OSD立体変換部43は、OSD信号生成部19から明るさ調整用のOSD信号が供給された場合、映像変換部38によって形成される水平方向1920画素×垂直方向1080ラインの映像サイズのフレームシーケンシャル方式の映像フォーマット上において、その左目用映像フレームと右目用映像フレームとに、視差制御信号に基づ
【0057】
いた画素数分の水平方向の視差量(位置ずれ)を有する、左目用の明るさ調整用OSDと右目用の明るさ調整用OSDとをそれぞれ表示させるように、OSDバッファ45上に左目用OSD信号と右目用OSD信号とを記憶させている。そして、このOSDバッファ45に記憶された左目用OSD信号と右目用OSD信号とは、垂直同期信号に同期して合成部41に出力される。
【0058】
このため、合成部41は、画質制御部39から出力される映像信号と、OSDバッファ45から出力される映像信号とを合成する。この場合、画質制御部39から出力される左目用映像フレームの映像信号にOSDバッファ45から出力される左目用OSD信号が重畳され、画質制御部39から出力される右目用映像フレームの映像信号にOSDバッファ45から出力される右目用OSD信号が重畳される。
【0059】
そして、合成部41で合成された映像信号は、フレーム変換部46に供給されて、垂直同期周波数を2倍に変換されて、つまり、フレーム周波数を倍速化された後、出力端子47から上記映像処理部20を介してLCDパネル3のLCD3aに出力される。これにより、LCDパネル3のLCD3aでは、左目用OSD信号が重畳された左目用映像フレームと、右目用OSD信号が重畳された右目用映像フレームとが交互に表示される。すなわち、映像表示部として機能するLCD3aは、左目用映像フレームと右目用映像フレームとを時分割で出力する機能を有している。
【0060】
また、フレーム変換部46で生成されるフレーム同期信号は、眼鏡制御部48に供給される。眼鏡制御部48は、フレーム変換部46から供給されたフレーム同期信号に基づいて左目用及び右目用のシャッタ制御信号を生成し、出力端子49を介して視聴者の掛けている立体視用眼鏡50に出力している。
【0061】
図4は、立体視用眼鏡50の構成を示すブロック図である。図4に示すように、立体視用眼鏡50は、液晶シャッタ眼鏡51と、液晶シャッタ眼鏡制御装置52と、を備えている。
【0062】
液晶シャッタ眼鏡51は、左眼の視界を開放または遮蔽するための左眼液晶シャッタ(Lシャッタ)511と、右眼の視界を開放または遮蔽するための右眼液晶シャッタ(Rシャッタ)512とを有しており、視聴者は、この液晶シャッタ眼鏡51を装着して、交互に表示される左眼用の画像と右眼用の画像とを左眼と右眼とで交互に鑑賞することにより、立体視を体感する。
【0063】
図4に示すように、液晶シャッタ眼鏡制御装置52は、デジタルテレビジョン1に対して左眼用の画像と右眼用の画像とを交互に表示させるためのフレームデータを出力する合成処理部17が、当該フレームデータと共に出力するフレーム同期信号を入力し、このフレーム同期信号に基づき、Lシャッタ511およびRシャッタ512を開閉させるためのシャッタ制御信号Lおよびシャッタ制御信号Rを生成して液晶シャッタ眼鏡51に供給する。そして、液晶シャッタ眼鏡制御装置52は、このシャッタ制御信号Lおよびシャッタ制御信号Rを自動調整するための自動調整部521を備えている。
【0064】
合成処理部17の眼鏡制御部48は、左目用映像が表示されているとき立体視用眼鏡50の右目のRシャッタ512を閉じ、右目用映像が表示されているとき立体視用眼鏡50の左目のLシャッタ511を閉じるように制御しており、これにより、視聴者に立体視映像を認識させるようにしている。
【0065】
なお、信号処理部16から出力されるデジタルの映像信号が、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号である場合、映像変換部38からフレームパッキング方式の映像フォーマットで出力される左目用映像フレームと右目用映像フレームとは、全く同じ映像となる。このため、視差量抽出部40で抽出される視差量は0となり、OSD立体変換部43は
【0066】
、OSD信号生成部19から供給されたOSD信号を、フレームシーケンシャル方式の映像フォーマットの左目用映像フレームと右目用映像フレームとで同じ位置に表示させるように、OSDバッファ45に記憶させる。これにより、合成部41からは、OSD信号の重畳された平面視(2次元)表示用の映像信号が出力されることとなり、その映像信号がフレーム変換部46でフレーム周波数を倍速変換された後、出力端子47から映像処理部20を介してLCDパネル3のLCD3aに出力され、通常の2次元表示用の映像として表示されることになる。
【0067】
デジタルテレビジョン1によれば、OSDを表示する際、立体視表示する左目用映像フレームと右目用映像フレームとの視差量に基づいて、左目用OSD信号と右目用OSD信号との視差量を決定し、左目用及び右目用映像フレームの映像信号と左目用及び右目用OSD信号とを合成するようにしている。このため、OSDを立体視映像上に違和感なく表示させることが可能となり、視聴者が立体視映像の視聴中に表示されたOSDの判読や、立体視映像の視聴中にOSDを表示させて各種の調整及び設定等の操作を行なうことが容易にできるようになり、視聴者にとっての取り扱いを便利にすることができるようになる。
【0068】
なお、第2の実施形態にかかるデジタルテレビジョン1では、立体視映像の表示中にOSDを表示させることについて説明したが、表示させる情報としてはOSDに限るものではなく、例えば、放送や、光ディスク28、ハードディスク30aまたはネットワークサーバ35,36等から取得した映像信号に基づく表示映像とは別個に、デジタルテレビジョン1が独自に発生して表示可能な画面表示信号に広く適用可能である。
【0069】
このようなOSDなどを用いた対話的なユーザインタフェースにより、視聴者が誰であるか(家族であれば、父、母などのヴァリエーションがある)アカウントを入力させてテーラーリングを行うのも好適である。また近年用いられてきている顔画像の認識の技術を用いてもよい。
【0070】
以上の実施形態では、次のような視聴者の視力を配慮した表示装置を説明した。
(1)メガネがなくても画面の内容が裸眼で認識できるようになる。
(2)近視ユーザがメガネ型3Dを視聴時に、3Dメガネと近視用メガネを同時にかけなくても視聴できる。
(3)パソコンの場合は、視聴距離が近く、通常用のメガネを利用すると補正が強く、逆に目に負担にかけ、近視を進行させることがある。表示機器で補正をかけることで、視聴者の目にかかる負担を軽減し、近視の進行を防ぐことが期待できる。
【0071】
(4)同じ実装で、視力の異なる視聴者に対応できる。
(5)実装次第で、両目に異なる補正をかけることができ、両目の近視進行が異なるユーザでも対応できる。
(6)乱視への対応も可能である。
(7)カメラなどによって、視聴者の両目を追跡すれば、違う角度、位置からの視聴も可能である。
基本的には表示装置画面側に視聴者視力対応の調節機能を持たせ、視聴者の視力に対応して、表示面からの光方向を調節する、視聴者の近視の度合いに応じて、表示面からの光を発散させる、視聴者の遠視の度合いに応じて、表示面からの光を収束させる、ことで、視力に最適とする技術とした。
【0072】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係わる構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【符号の説明】
【0073】
1 映像出力装置
3a 映像表示部
3b、3c バックライト部
401 調光値生成部
403 調光値補正部
405 分割制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示層と、
この表示層へ背後またはエッジからバックライトを照射するバックライト層と、
前記表示層に表示される映像を凸または凹のレンズの特性様に収縮または拡散させて放射するレンズ層とを
備えた映像表示装置。
【請求項2】
前記レンズ層は流体レンズより成る請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記レンズ層は複数のレンズで構成されて成る請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記レンズ層は視聴者の目の特性に合わせ収縮または拡散の度合いを調節する請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項5】
映像表示装置における映像表示方法であって、
背後またはエッジからバックライトを照射されて映像を表示し、
この映像を凸または凹のレンズの特性様に収縮または拡散させて放射する映像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−20095(P2013−20095A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153364(P2011−153364)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】