説明

映像表示装置

【課題】ばらつき現象及び輝度低下を良好に抑制して高画質な映像を表示することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本発明にかかる映像表示装置は、複数の走査線(51)と、複数の走査線の一端に接続され、該複数の走査線に対し査電圧を順次印加する走査線制御回路(5)と、複数の信号線(41)と、該複数の信号線と接続され、該複数の信号線に対し、入力された映像信号に応じた信号電圧を印加する信号線制御回路(4)と、前記複数の走査線と前記複数の信号線との各交点部に配置され、前記走査線制御回路からの走査電圧と前記信号線制御回路からの信号電圧が印加される表示素子(60)とを備える。そして信号線制御回路は、複数の信号ドライバ(43a〜43f)を含んでおり、各信号ドライバに与えられる、前記信号電圧を生成するための基準電圧を個別に設定可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子をマトリクス状に配列して構成された、例えばField Emission Display (以下、FEDと略す)、有機EL(electroluminescence)等を用いたマトリクス型の映像表示装置における画質補正技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マトリクス型の映像表示装置に用いられる表示パネルの一つであるFEDは、マトリクス状に配置された複数の電子源を備えており、この電子源は、映像信号に応じた信号電圧が印加されることにより電子を放出する。これによりFEDの表示面上に映像が形成される。このような構成のFEDにおいて、その製造工程等に依存して、電子源個々の電気的特性が互いに異なる場合がある。つまり、各電子源からの電子放出量が表示面内においてばらつきが生じ、これにより、各画素に同一レベルの映像信号を与えても画素間の輝度が不均一となり、いわゆる輝度ばらつきが生じる。また、電子源に上記信号電圧や電子源を選択するための走査電圧が印加される配線(信号線、走査線)の配線抵抗に起因して電圧降下が生じ、この電圧降下によっても上述の輝度の不均一が発生する。
【0003】
このような輝度ばらつきを補正するために、該画素毎の補正データを予め記憶し、この補正データによって映像信号(映像データ)を補正する技術が、例えば下記特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−4118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、補正データを映像信号に加えることにより上記輝度ばらつきを補正している。すなわち特許文献1では、信号階調(ダイナミックレンジ)の一部を輝度補正のために使用することとなるため、実質的な映像表示に用いる有効階調が減少し精細な映像表示が困難になる。例えば映像信号が10bitで1024階調を表現可能である場合、上記の輝度補正のために例えば100階調を使用すると、924階調分しか映像表示のための階調として利用できなくなる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、映像表示に用いる有効階調を確保しつつも輝度ばらつきを良好に補正し、高画質な映像を表示することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係る映像表示装置は、改良された信号線制御回路と走査線制御回路とを備える。
【0008】
すなわち、本発明の第1の特徴は、映像信号に基づき信号電圧を生成する信号線制御回路が複数の信号ドライバを含み、前記信号電圧を生成するための基準電圧を、複数の信号ドライバ毎に個別に設定可能としたことにある。
【0009】
また本発明の第2の特徴は、表示素子(電子源など)を選択するための走査電圧を生成する走査線制御回路が複数の走査ドライバを含み、前記走査電圧を生成するための基準電圧を、複数の走査ドライバ毎に個別に設定可能としたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、映像表示に用いる有効階調を確保しつつも輝度ばらつきを良好に補正することが可能となり高画質な映像表示が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態では、電子源としてMIM(Metal- Insulator- Metal)型の電子源を有するパッシブマトリクス駆動方式の電子放出素子型映像表示装置を例にして説明する。しかしながら、本実施形態は、MIM以外の電子源、例えばSCE(Surface Conduction Electron Emitter)型やカーボンナノチューブ型、BSD(Ballistic electron Surface-emitting Device)型、スピント(Spindt)型でも同様に適用できる。更にまた、有機EL素子を用いた表示装置についても同様に適用できる。
【0012】
本発明の実施例を説明する前に、上述した輝度ばらつきについて図1を参照しつつ説明する。後述する走査線と信号線とに接続された電子源は、走査電圧と信号電圧との差である駆動電圧が印加されると電子源の電極間に電流が流れる。駆動電圧が閾値以上の場合、電流量は、駆動電圧に対しほぼ線形に増加する。ここでは駆動電圧によって流れる電流を駆動電流、駆動電圧と駆動電流との関係を駆動電流特性、と呼ぶこととする。この駆動電流特性は電子源の動作特性を示すものであり、典型的には図1の実線に示されるような特性を持つ。しかしながらパネルを構成する各電子源は製造プロセスや経時変化等に起因して駆動電流特性にばらつきが生じる。その結果、パネル内には図1の実線で示される駆動電流特性の他に、例えば図1の破線や一点鎖線で示される駆動電流特性を持つ電子源等が混在する。図1において駆動電圧V0を加えた場合各電子源の駆動電流は、破線、実線、一点鎖線の順に大きくなる。表示される画面の輝度は駆動電流と略比例するため、破線、実線、一点鎖線の順に輝度が高くなり輝度むらが発生する。
【0013】
更にまた、走査線及び信号線は非常に細い金属薄膜で形成されるため、比較的大きな内部抵抗(配線抵抗を有する)この配線抵抗によって、電子源の位置に応じた電圧効果が生じる。従って、駆動電流の流れる経路が比較的長い位置にある電子源は、比較的短い位置にある電子源に比べて電圧降下が大きくなり、これらの電子源に同じ走査電圧及び信号電圧を加えても、前者の電子源に印加される駆動電圧は、上記電圧降下の影響により後者の電子源に印加される駆動電圧よりも低くなる。これにより、一画面に与える映像信号のレベルを等しくしても、画面の水平方向及び/または垂直方向にわたって輝度むら(輝度傾斜)が形成される。
【0014】
本発明は、上記駆動電流特性ばらつきや配線抵抗に起因する輝度むらを鑑みて構成されたものであり、その実施例について以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
図2は、本発明に係る映像表示装置の第1実施例を示すものである。映像信号は映像信号入力端子3に入力され、信号処理回路7に供給される。信号処理回路7では、デジタル的に映像信号を処理するものであり、例えば映像信号の精細度を表示パネル20の解像度に合わせる解像度変換が行われる。ここで、表示パネル20は、背面基板6と前面基板30とを有するものとし、その詳細については後述する。
【0016】
また信号処理回路7は、上記解像度変換処理の他、コントラストやブライトネス、ガンマ補正、などの画質調整が行われる。この画質調整は、ユーザによる手動操作に応答させるようにしてもよい。ここで、信号処理回路7からは、10bitのデジタル映像信号が出力されるものとする。よって、このデジタル映像信号によって1024階調の映像表現が可能となる。
【0017】
前記映像信号に対応する同期信号は同期信号入力端子1から入力され、タイミングコントローラ2に供給される。タイミングコントローラ2では、同期信号に同期したタイミングパルスを生成し、走査線制御回路5、信号線制御回路4、及び信号処理回路7に供給する。
【0018】
一方、表示パネル20は、ガラス基板で構成された背面基板6と、同じくガラス基板で構成された前面基板30とを有している。背面基板6には、画面水平方向に延びる複数の走査線51が画面垂直方向に並んで配置され、更に画面垂直方向に延びる複数の信号線41が画面水平方向に並んで配置されている。これら走査線51と信号線41は互いに直交しており、これらの各交点部には、走査線及び信号線とに接続される電子源60が配置されている。
【0019】
信号線41の上端には、駆動電圧供給部である信号線制御回路4が接続されている。信号線制御回路4は、後述するように複数の信号ドライバ43a〜43fと、各信号ドライバにそれぞれ基準電圧を与えるための信号ドライバ基準電圧生成回路42とを有している。信号線制御回路4は、信号処理回路7で処理された映像信号と信号ドライバ基準電圧生成回路42が生成する基準電圧とに基づいて、信号電圧を生成しこれを各信号線41に供給する。
【0020】
一方、走査線51の左端には走査線制御回路5が接続されている。この走査線制御回路5は、後述するように複数の走査ドライバ53a〜53dと、各走査ドライバにそれぞれ基準電圧を与えるための走査ドライバ基準電圧生成回路52とを有している。走査線制御回路5は、タイミングコントローラ2からの水平周期の信号に同期して、走査線51を1本もしくは2本ずつ選択するための走査電圧を、走査ドライバ基準電圧生成回路52からの基準電圧に基づき生成して走査線51に対し供給する。即ち、走査線制御回路5は、水平周期で1行または2行の電子源を上から順に選択して垂直走査を行う。この信号線制御回路4および走査線制御回路5の詳細は後述する。
【0021】
尚、本実施例では、走査電圧が信号電圧に対して同極性とする。すなわち、信号電圧及び走査電圧はいずれも負もしくは正極性とする。しかしながら、走査電圧と信号電圧とが互いに逆極性、例えば駆動電圧が正極性で、走査電圧が負極性であってもよい。
【0022】
走査電圧によって選択された走査線に接続される各電子源60に対し、信号線制御回路4からの信号電圧が供給されると、各電子源60には走査電圧と信号電圧との電位差が生じる。この電位差が前記駆動電圧となり、電子源を介して走査線から信号線へ駆動電流が流れる。電子源に駆動電流が流れると、電子源は電子を放出する。この放出される電子電流を放出電流と呼び、該放出電流は駆動電流に略比例する。
【0023】
また、背面基板6と対向して前面基板30が配置されており、この前面基板30の背面基板6と対向する面の、各電子源60と対向する位置には、蛍光体31が配置されている。更に前面基板30には、図示しない加速電極が設けられ、この加速電極には、高電圧制御回路9からの高圧が供給されるように該高電圧制御回路9と接続されている。また背面基板6と前面基板30との間の空間は真空雰囲気とされる。そして電子源60から放出された電子は、高電圧制御回路10から加速電極に供給された高圧によって加速され、真空内を進行して蛍光体を励起する。これにより蛍光体が発光し、その光は前面基板30を構成する透明ガラス基板を通して外部に放出され、表示パネル20上に映像が形成される。
【0024】
次に本実施例の最も特徴的な部分である信号線制御回路4の詳細について述べる。
【0025】
図3は、信号線制御回路4の一構成例を示すブロック図である。本実施例に係る信号線制御回路4は、複数の(本例では6個の)信号ドライバ43a〜43fと、これら信号ドライバ43a〜43fに基準電圧を供給するための信号ドライバ基準電圧発生回路42とを備えている。信号ドライバ43の個数は、当該信号ドライバの出力端子数と表示パネル20の水平方向の解像度に応じて適宜定められる。ここで、信号ドライバ43a〜43fは、それぞれ、入力されたデジタル形式の映像信号をアナログ形式の信号電圧に変換するためのデジタル−アナログ変換用のIC(D/A変換器)で構成されるものとし、その一構成例は図7に示される。
【0026】
図7に示されるように信号ドライバ43は、それぞれ、信号処理回路7からのデジタル映像信号(映像データ)が入力されるデジタル信号入力端子71と、信号電圧としてのアナログ信号を出力する複数のアナログ信号出力端子72と、信号ドライバ43を動作させるための電源が入力されるVcc端子73と、設定された複数の階調(D1〜D5)に対応した複数の基準電圧が入力される基準電圧入力端子74a〜74eを備えている。
【0027】
ここで、基準電圧は、所定の階調に対応する信号電圧を設定するものであり、例えば階調D1に対応する基準電圧をVr1と設定すると、D1の映像信号が入力されたとき信号ドライバはアナログの信号電圧としてVr1を出力する。一般的に基準電圧で設定できる階調数は複数であり、本実施例ではD1(低階調)〜D5(高階調)の5点の階調についてそれぞれ基準電圧Vr1〜Vr5を設定できるとし、DnとDn+1との間の階調の信号電圧については、VnとVn+1とを線形補間して生成するものとする。
【0028】
例えば、基準電圧入力端子74aには0階調(階調D1)に対応する基準電圧Vr1が、74bには256階調(階調D2)に対応する基準電圧Vr2が、74cには512階調(階調D3)に対応する基準電圧Vr3が、74dには768階調(階調D4)に対応する基準電圧Vr4が、74fには1023階調(階調D5)に対応する基準電圧Vr5が信号ドライバ基準電圧発生回路42から供給される。そして信号ドライバ43は、上記のように基準電圧入力端子74a〜74fに入力された複数の基準電圧を基準にして、デジタル信号入力端子71に入力されたデジタル映像信号からアナログ信号電圧を生成し出力する。例えば、デジタル映像信号の階調が768の場合はVr4のアナログ信号電圧を出力し、デジタル映像信号の階調が512の場合はVr3のアナログ信号電圧を出力する。またデジタル映像信号の階調が512から768の間の場合は、Vr3とVr4との間のアナログ信号電圧を線形補間により求めて出力する。
【0029】
また、信号ドライバ基準電圧発生回路42は、例えばデジタル−アナログ電圧変換器から構成され、信号ドライバ43a〜43fに、各階調D1〜D5に対応する基準電圧Vr1〜Vr5を供給する。
【0030】
ここで、上述の特許文献1のように、デジタル映像信号に輝度ばらつきを補正するための補正データを加える場合について説明する。信号ドライバ43a〜43fは上述したようにD/A変換器で構成されており、D/A変換器の対応可能なビット数は予め設定されている。例えば、D/A変換器が10ビットのデジタル信号に対応可能であり、かつある電子源の駆動電流の特性が他のものよりも低く、該電子源に対応する映像信号に補正データとして100階調分の補正データが加算されるものとする。この場合、信号ドライバ43a〜43fが対応可能な最大階調数は1023であるため、923階調(最大階調から補正データの階調を引いた分)以上の入力デジタル映像信号を表現することができない。つまり、当該電子源は入力デジタル映像信号が923階調で飽和することになり、補正データ100階調分のダイナミックレンジを有効に利用することができない。一方、表示映像の階調は、駆動電圧を定めるアナログ信号電圧のレベルによりほぼ決定され、入力デジタル映像信号の各階調に対応する信号電圧のレベルは、各信号ドライバ43a〜43fの各基準電圧Vr1〜Vr5に依存する。
【0031】
そこで本実施例では、図3に示されるように、各信号ドライバ43a〜43fの各基準電圧V1〜V5をそれぞれ独立に設定可能にし、これによって各信号ドライバ43a〜43fから出力可能な、各階調に対応するアナログ信号電圧のレベルを個別に変更可能にしたものである。各信号ドライバ43a〜43fの各基準電圧Vr1〜Vr5の設定は、信号ドライバ基準電圧発生回路42によって行われる。
【0032】
上述のように、表示される映像の階調は信号ドライバ43a〜43fからのアナログ信号電圧によって決定され、このアナログ信号電圧は、信号ドライバ基準電圧発生回路42によって与えられる基準電圧に依存する。従って、この基準電圧を変更すれば、入力デジタル映像信号の階調が同じであっても異なる階調を表現することができる。例えば、輝度ばらつきの補正の必要がない(すなわち補正データを加える必要がない)電子源に対応する信号ドライバが信号ドライバ43a、輝度ばらつきの補正の必要がある(すなわち所定の補正データを加える必要がある)電子源に対応する信号ドライバが信号ドライバ43bであるとする。このとき、信号ドライバ43bの基準電圧を信号ドライバ43aの基準電圧よりも高くすれば、信号ドライバ43a、43bに入力されるデジタル映像信号の階調が同じであっても、信号ドライバ43bから出力されるアナログ信号電圧、すなわち表示映像の階調を高くすることができる。
【0033】
従って、本実施例によれば、デジタル映像信号に補正データを加えることなしに輝度ばらつきを補正することができる。本実施例では、信号ドライバ43に供給される基準電圧D1〜D5は5つとしていおるが、その全ての基準電圧の値を変えてもよいし、そのうちの一つのみ、例えばD5の値のみを変えてもよいし、2つまたは3つの値を変えてもよい。更にまた、駆動電圧特性の立ち上がりが低い電子源に対応する信号ドライバ43に対しては、基準電圧D1の値のみを高くするようにしてもよい。
【0034】
また、本実施例では、信号ドライバ基準電圧発生回路42からの出力電圧を個別に変更して各信号ドライバ43の基準電圧D1〜D5を設定するようにしたが、各信号ドライバ43の基準電圧入力端子74a〜74fにそれぞれレギュレータを設け、このレギュレータにより信号ドライバ基準電圧発生回路42からの出力電圧の値を個別に変換するようにしてもよい。
【0035】
本実施例では、信号ドライバ43が6つの場合を例にして説明したが、これに限られるものではなく、信号ドライバ43の出力端子数と表示パネル20の水平方向の解像度に応じて任意の個数としてもよい。
【0036】
また上記の例では、信号線制御回路4の信号ドライバ43a〜23f毎に基準電圧を変更する例を示したが、走査線制御回路5の走査ドライバの基準電圧を変更するようにしてもよい。図4は、本実施例に係る走査線制御回路5の一構成例を示すブロック図である。基準電圧発生回路52は、例えばデジタル−アナログ電圧変換器で構成され、走査ドライバ53a〜53dに走査電圧を生成するための基準電圧を供給する。走査ドライバ53の個数は、当該走査ドライバの出力端子数と表示パネル20の垂直方向の解像度に応じて適宜定められる。ここで、各走査ドライバ53a〜53dは、それぞれスイッチング素子を含んでおり、入力同期信号に応じて、1行の電子源群を選択する選択期間において選択電圧としての走査電圧を、非選択期間においては非選択電圧を走査線51に供給する。非選択電圧は、基準電圧発生回路52もしくは別の電圧源から走査ドライバ53a〜53dに供給される。すなわち走査ドライバ53a〜53dは、選択期間においては基準電圧発生回路52からの基準電圧を選択して走査電圧として出力し、非選択期間においては非選択電圧を選択して出力するようにスイッチング動作を行う。
【0037】
そして本実施例では、各走査ドライバ53a〜53dに供給される基準電圧を、走査ドライバ53毎に個別に設定できるように構成したものである。この基準電圧の設定は、基準電圧発生回路52により行われる。このようにすれば、走査ドライバごとに異なる走査電圧が出力可能となる。また図4は走査ドライバが4つの場合を示したが当然ながら走査ドライバの数は任意の数でもよい。
【0038】
次に前述の構成において、例えば図5aに示されるように表示パネル20の左上が暗く右下が明るいような輝度むらが発生している場合の、好適な基準電圧の設定の一例について説明する。
【0039】
表示パネル20の左部の電子源群に対しては信号ドライバ43aが、表示パネル20の右部の電子源群に対しては信号ドライバ43fが信号電圧を供給しているものとする。このときに、信号ドライバ43aの信号電圧が低く、信号ドライバ43fの信号電圧が高くなるように、各信号ドライバに供給される基準電圧を信号ドライバ基準電圧発生回路42により設定する。
【0040】
一方、表示パネル20の上部の電子源群に対しては走査ドライバ53aが、表示パネル20の下部の電子源群に対しては走査ドライバ53dが選択電位を供給するので、走査ドライバ53aの走査電圧が高く、走査ドライバ53dの走査電圧が低くなるように、各走査ドライバに供給される基準電圧を走査ドライバ基準電圧発生回路52により設定する。このように各基準電圧を設定することにより、表示パネル20の左上部の駆動電圧が高く右下部の駆動電圧が低くなり、図5bに示されるよう、輝度むらが補正されて画面全体にわたって輝度が略均一化された映像を表示することが出来る。このように本実施例によれば、電子源の駆動電流特性の低下や走査線及び信号線の配線抵抗などの影響により相対的に出力輝度が低くなる電子源群に対し、その表示階調を、補正データにより映像信号を補正することなく、信号ドライバや走査ドライバなどのICを駆動するための電圧を変更することで補正することができる。
【0041】
また信号処理回路7は、基準電圧つまり各ドライバの境界で発生する輝度段差を補正するような映像信号処理、例えばガウシアンフィルタや低域強調フィルタ処理などを行ってもよい。さらにまた、特許文献1に記載されるように、補正データを映像信号に加えるような補正を併用しても構わない。この場合、特許文献1に記載されるような映像信号の補正を単独で行うより、輝度ばらつきの補正のために必要な、すなわち補正データ用の階調が少なくて済むため高精細な映像表示が可能となる。
【0042】
このように各ドライバの駆動電圧を設定することで、電子源の駆動電流特性のばらつきや走査線及び信号線の配線抵抗などの影響による輝度ばらつき(輝度の不均一性)を、映像の表示に用いられる表示階調を確保しつつ補正することが可能となる。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明に係る映像表示装置の第2実施例について図6を参照しつつ説明する。本実施例は、実施例1の装置にばらつき補正回路8およびメモリ10が追加され、各基準電圧がばらつき補正回路8によって制御される点で実施例1と異なる。他の要素で、実施例1と同じ符号が付されている要素は同一機能を有するものであるので、ここではその説明を省略する。以下、ばらつき補正回路8及びメモリ10の詳細について説明する。
【0044】
メモリ10には、パネルを任意の数に分割したときの各ブロックの駆動電流特性が保持されている。ブロックの分割数は例えば垂直方向には走査ドライバの数、水平方向には信号ドライバの数としてもよい。前記メモリ10に保持される各ブロックの駆動電流特性は、例えば各ブロックを構成する複数の電子源の駆動電流特性の平均値でもよい。また、実測した駆動電流特性だけでなく、理想的な駆動電流特性や輝度特性を保持してもよい。さらにまた前記保持される駆動電流特性は、パネル製造時に測定してもよいし、映像表示装置に駆動電流特性を測定する機能とメモリ10の保持内容を更新する機能とを持たせ、任意のタイミングでデータ更新を行ってもよい。さらにまた、メモリ10は駆動電流特性でなく、電子源の放出電流の特性を保持してもよい。さらにまたメモリ10は、駆動電流特性を、任意の駆動電圧に対応する各ブロックの駆動電流として保持してもよい。この任意の駆動電圧は、例えば信号ドライバに設定される基準電圧に対応した階調数(D1〜D5)としてもよい。
【0045】
表1はメモリ10に保持される駆動電流特性の一例を示すもので、表1−1から表1−5は、それぞれ駆動電圧V1からV5における各ブロックの駆動電流を示す。ここで、駆動電圧V1〜V5は、上述した信号の階調D1〜D5と等しいものとする。表1−1から表1−5の各表は、走査ドライバが走査ドライバ53a〜53dの5つ、信号ドライバが信号ドライバ43a〜43fの6つ設けられており、表示パネル20を各ドライバ個数分、つまり垂直方向に4つ、水平方向に6つの計24個のブロックに分割した例を示している。すなわち、各表の24個の数値は、それぞれ24の分割ブロックのそれぞれに対応して保持された駆動電流の値を示している。また表2は、信号の階調D1〜D5に対応する各駆動電圧V1〜V5における理想的な駆動電流の一例を示している。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

表1−1では、左から右(信号ドライバ43aから43fの方向)に向かって駆動電流が大きくなっており、また上から下(走査ドライバ53aから53dの方向)にも駆動電流が大きくなっている。また表2では駆動電圧V1における理想の駆動電流が5.00なので左上は理想より暗く右上は理想より明るい輝度となる、例えば図5aのような輝度むらがあることを示す。
【0048】
一方ばらつき補正回路8は、表1−1〜1−5に示されるような前記メモリ10の保持データに基づき、輝度むらを低減させるように信号ドライバ43a〜43fの各基準電圧および走査ドライバ53a〜53dの各基準電圧を算出する。
【0049】
次に基準電圧算出の一例について説明する。まず表1−1と表2を用いて、駆動電圧V1つまり階調D1における輝度むらを補正する方法について説明する。
【0050】
信号ドライバ43a〜43fのそれぞれの基準電圧は、各信号ドライバに対応するブロック(水平方向に分割されたブロック)の平均電流が、補正電流Idc分だけ増加もしくは減少するように設定する。この補正電流Icは、理想駆動電流をIi、そのブロックの平均電流をIdaとしたとき、例えば下記数1のようにして求められる。
(数1) Idc=(Ii−Ida)/2
例えば信号ドライバ43aの階調D1に対応する基準電圧は、次のようにして求められる。表2から階調D1に対応する理想電流Iiが5.00、階調D1における信号ドライバ43aに対応するブロックの平均電流が表1−1の左端の列から4.64(4.40、4.55、4.72、4.89の平均)なので、数1から、補正電流Idcは次のように求められる。
Idc=(5.00−4.64)/2=0.18
よって、信号ドライバ43aの階調D1に対応する基準電圧Vr1は、階調D1の映像信号が入力された場合に、表2の理想電流に数1から求められた補正電流Idcを加えた値、つまり5.18の駆動電流が流れるような値に、ばらつき補正回路8によって補正されて設定される。この基準電圧を算出するには、例えば駆動電圧V1とV2における駆動電流値を線形補完して算出してもよい。
【0051】
また、走査ドライバ53a〜53dのそれぞれの基準電圧は、各走査ドライバに対応するブロック(垂直向に分割されたブロック)の平均電流が、補正電流Isa分だけ増加もしくは減少するように設定する。この補正電流Iscは、理想駆動電流をIi、そのブロックの平均電流をIsaとしたとき、例えば下記数2のようにして求められる。
(数2) Isc=(Ii−Isa)/2
例えば走査ドライバ53aの基準電圧は、次のようにして求められる。表2から階調D1に対応する理想電流Iiが5.00、階調D1における走査ドライバ53aに対応するブロックの平均電流が表1−1の上端から4.94(4.40、4.59、4.80、5.03、5.28、5.56の平均)なので、数2から、補正電流Iscは次のように求められる。
Isc=(5.00−4.94)/2=0.03
よって、走査ドライバ53aの階調D1に対応する基準電圧は、階調D1の映像信号が入力された場合に、表2の理想電流に数2から求められた補正電流Iscを加えた値、つまり5.03の駆動電流が流れるような値に、ばらつき補正回路8によって補正されて設定される。この基準電圧を算出するには、例えば駆動電圧V1とV2における駆動電流値を線形補完して算出してもよい。
【0052】
上記の基準電圧の算出を全てのブロックについて行うことにより、各信号ドライバと走査ドライバの基準電圧が設定される。これによって、映像信号D1が入力されたとき、各ブロックの駆動電圧はV1周辺の値となり、各ブロックの輝度差は低減され、さらに全ブロックの平均駆動電流は理想値とほぼ一致する。
【0053】
基準電圧Vr2については、表1−2と表2のデータを、基準電圧Vr3については表1−3と表2のデータを用いて上記と同様に算出する。走査ドライバの基準電圧は一つのみで上記のように既に算出されているので、信号ドライバの基準電圧Vr2〜Vr5を求める場合は、走査ドライバの基準電圧を求める必要は無い。
【0054】
このようにばらつき補正回路8は、各階調D1〜D5において輝度むらを補正するための補正電流を算出し、この補正電流(Idc、Ids)を用いて基準電圧を補正するよう信号ドライバ基準電圧発生回路42および走査ドライバ基準電圧発生回路53を制御する。この結果、輝度むらが低減され各階調における平均輝度が理想値とほぼ一致し図5bのような輝度むらが低減された画像表示が可能となる。
【0055】
本実施例においても、実施例1と同様に、信号処理回路7によって分割境界で発生する輝度段差を補正するようなガウシアンフィルタや低域強調フィルタ処理などを行ってもよい。さらにまた、特許文献1に記載されるように、補正データを映像信号に加えるような補正を併用しても構わない。この場合、特許文献1に記載されるような映像信号の補正を単独で行うより、輝度ばらつきの補正のために必要な、すなわち補正データ用の階調が少なくて済むため高精細な映像表示が可能となる。さらにまた上記の補正は、製造時に行ってもよく、駆動電流特性を測定するための要素を映像表示装置が持っている場合は、任意のタイミングで行っても構わない。
【0056】
また上記実施例では、信号ドライバ43がD/A変換器の場合を例にして説明したが、D/A変換器以外のドライバにも適用可能である。例えば、信号電圧としていってパルス高さのパルス信号を出力し、そのパルス幅を映像信号のレベルに応じて制御する、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)回路にも適用できる。すなわち、映像信号のレベルに対応するパルス幅を定めるための基準電圧を、PWM回路毎に変更するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】駆動電流特性のばらつきを説明する図
【図2】本発明に係る第1の実施例を示す図
【図3】本発明に係る信号線制御回路の一例を示す図
【図4】本発明に係る走査線制御回路の一例を示す図
【図5】輝度むらおよび輝度むら補正後の表示例を説明する図
【図6】本発明に係る第2の実施例を示す図
【図7】信号ドライバの一例を示す図
【符号の説明】
【0058】
1…同期信号入力端子、2…タイミングコントローラ、3…映像信号入力端子、4…信号線制御回路、5…走査線制御回路、6…背面基板、7…信号処理回路、8…ばらつき補正回路、9…高電圧制御回路、10…メモリ、20…表示パネル、30…前面基板、31…蛍光体、41…信号線、42…信号ドライバ基準電圧発生回路、43a〜43f…信号ドライバ、51…走査線、52…走査ドライバ基準電圧発生回路、53a〜53d…走査ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示装置において、
複数の走査線と、
該複数の走査線の少なくとも左右のいずれか一端に接続され、該複数の走査線に対し、走査電圧を順次印加する走査線制御回路と、
複数の信号線と、
該複数の信号線と接続され、該複数の信号線に対し、入力された映像信号に応じた信号電圧を印加する信号線制御回路と、
前記複数の走査線と前記複数の信号線との各交点部に配置され、前記走査線制御回路からの走査電圧と前記信号線制御回路からの信号電圧が印加される表示素子と、を備え、
前記信号線制御回路は、複数の信号ドライバを備え、各信号ドライバに与えられる前記信号電圧を生成するための基準電圧が個別に設定可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像表示装置において、前記走査線制御回路は、複数の走査ドライバを備え、各走査ドライバに与えられる前記走査電圧を生成するための基準電圧が個別に設定可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像表示装置において、前記信号線制御回路は、前記各信号ドライバへ前記基準電圧を分配するための基準電圧発生回路を備え、該基準電圧発生回路によって前記各信号ドライバへ前記基準電圧のレベルを設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の映像表示装置において、前記複数の信号ドライバは、デジタルの映像信号をアナログ信号に変換して前記駆動信号を生成するためのD/A変換器であり、前記基準電圧は、該デジタル映像信号をアナログ信号に変換する際の基準となる基準電圧であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の映像表示装置において、画面水平方向において一定のレベルを持つ映像信号を入力した場合に、相対的に輝度が低くなる部位に対応する前記信号ドライバの前記基準電圧を、他の信号ドライバの前記基準電圧よりも高くなるように設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の映像表示装置において、前記基準電圧は、所定の複数階調毎に設定されていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の映像表示装置において、前記各信号ドライバに供給される基準電圧を補正するためのデータを記憶するメモリと、該メモリに記憶された補正データを用いて前記基準電圧を補正して設定するための補正回路と、を更に備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
映像表示装置において、
複数の走査線と、
該複数の走査線の少なくとも左右のいずれか一端に接続され、該複数の走査線に対し、走査電圧を順次印加する走査線制御回路と、
複数の信号線と、
該複数の信号線と接続され、該複数の信号線に対し、入力された映像信号に応じた信号電圧を印加する信号線制御回路と、
前記複数の走査線と前記複数の信号線との各交点部に配置され、前記走査線制御回路からの走査電圧と前記信号線制御回路からの信号電圧が印加される表示素子と、を備え、
前記走査線制御回路は、複数の走査ドライバを備え、各走査ドライバに与えられる前記走査電圧を生成するための基準電圧が個別に設定可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の映像表示装置において、前記信号線制御回路は、複数の信号ドライバを備え、各信号ドライバに与えられる前記信号電圧を生成するための基準電圧が個別に設定可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の映像表示装置において、前記走査線制御回路は、前記各走査ドライバへ前記基準電圧を分配するための基準電圧発生回路を備え、該基準電圧発生回路によって前記各走査ドライバへ前記基準電圧のレベルを設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項11】
請求項8に記載の映像表示装置において、画面垂直方向において一定のレベルを持つ映像信号を入力した場合に、相対的に輝度が低くなる部位に対応する前記走査ドライバの前記基準電圧を、他の走査ドライバの前記基準電圧よりも高くなるように設定することを特徴とする映像表示装置。
【請求項12】
請求項8に記載の映像表示装置において、前記各信号ドライバに供給される基準電圧を補正するためのデータを記憶するメモリと、該メモリに記憶された補正データを用いて前記基準電圧を補正して設定するための補正回路と、を更に備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項13】
請求項1または8に記載の映像表示装置において、前記表示素子は、有機ELにより構成されることを特徴とする映像表示装置。
【請求項14】
請求項1または8に記載の映像表示装置において、前記表示素子は、電界もしくは電子放出素子により構成されることを特徴とする映像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−281798(P2008−281798A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126217(P2007−126217)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】