説明

時計および時計の誤差調整方法

【課題】特殊な部品を必要とせず、工場出荷時においても特に補正調整を行うことなく、使用者が自ら時刻の進み又は遅れを調整する際の履歴データを利用して時計合わせを効率的に高い精度で行える時計および時計の誤差調整方法を提供すること。
【解決手段】時間を計測するタイムカウンタ4と、時間合わせを操作する操作手段と、使用者が時間の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出する手段と、その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行う手段と、その後に2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行い、累積結果の数値の大きさに応じて、前記タイムカウンタのカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させる手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計および時計の誤差調整方法に係り、特に、電子機器に用いられる時計において、使用者が時間の進み又は遅れを修正する操作を行った場合に、その内容又は修正時刻データを用いて、個々の時計が有する進み遅れの時計誤差特性を効率的に補正できるようにした時計および時計の誤差調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器においては、時計機能部(以下、タイムカウンタという)及び表示駆動部をCPUで制御することによって計時及びその表示を行う時計が用いられている。時計に正確な時間を維持させるために、製造工場での出荷前の検査工程で1個1個の時計について精度の高い基準時間と比較することによって、時間ずれ(誤差)に対して補正値を設定するなどの対策をとるか、或いは、全く補正調整を行なわず、市場に出てから使用者が必要に応じて手動で時計の調整を行っていた。
【0003】
時計が進んだり遅れたりする主な原因は、発振周波数が理想の周波数に対してずれるために発生する。このずれの主な原因は、振動子や発振回路を構成する部品の特性のばらつき、発振ドライバの駆動能力のばらつき、及びそれら全てに対する電圧、温度変化による変動が考えられる。
【0004】
例えば特許文献1には、リアルタイムクロック(RTC)の発振器として用いられる水晶振動子が温度特性を有しており、この温度変化によって生ずる時間誤差を補正するために、RTCを備えた装置の電源が投入されている時には、装置内温度に基づいた第1の補正値にて時間誤差を補正し、装置電源切断中には、装置外温度に基づいた第2の補正値にて時間誤差を補正することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−365383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査工程で時計の調整を行う場合、専用の測定装置で時計精度を測定することが必要であり、かつ1個1個検査するために検査時間が増加し、コスト的にも不利であった。
【0006】
また、検査工程で調整を施し、ずれ分を補正したとしても、実際に使用している周辺環境の違いや経時変化による部品特性の変動により、時計精度が変化する可能性がある。
【0007】
一方、特許文献1のようにRTCの補正値を温度センサにより決定する方式では、補正のためにセンサ類のような特殊な部品を必要とし、低コスト化を図る際に不利であった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、センサ類のような特殊な部品を一切必要とせず、工場出荷時においても特に補正調整を行うことなく、使用者が自ら時間の進み又は遅れを修正する際の修正内容又は修正時刻データを用いて時計合わせを効率的に高い精度で行えるようにした時計および時計の誤差調整方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による時計は、時間を計測するタイムカウンタと、時間合わせを操作する操作手段と、使用者が時間の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出する手段と、その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行う手段と、その後に2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行い、累積結果の数値の大きさに応じて、前記タイムカウンタのカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させる手段と、を備えたものである。
【0010】
また、本発明による時計の誤差調整方法は、使用者が時間の進み又は遅れを修正する操作を行ったときの時計の誤差調整方法であって、使用者が時間の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出し、その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行い、その後に2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行い、累積結果の数値の大きさに応じて、前記タイムカウンタのカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させる。
【0011】
これらの発明の時計及びその誤差調整方法によれば、使用者が時間の進み又は遅れを操作することによって修正する場合に、1回目の時計合わせでは、時間を進めた時は、計時動作の速度を速め、遅らせた時は、計時動作の速度を遅らせるように自動的に調整する。2回目以降の時計合わせでは、進み又は遅れの修正操作の過去の累積結果に応じて自動的に進み量又は遅れ量の調整度合いを変える。すなわち、時計が進んだり遅れたりしたことによって、使用者が時計の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出し、その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行う。調整後、さらに時間を変更する動作が入った場合は、時計の調整内容(進ませたか遅らせたか)の累積を行い、調整内容の累積結果の数値の大きさに応じ、タイムカウンタのカウンタ値の速める又は遅らせる度合いを変化させる。
【0012】
更に、本発明による時計は、時間を計測するタイムカウンタと、時間合わせを操作する操作手段と、前回、時間合わせをした直後の時刻を記憶する手段と、今回、時間を合わせる直前の計時時刻を記憶する手段と、今回、時間合わせをした直後の時刻を記憶する手段と、これらの3つの時間値から単位時間当たりの進み量又は遅れ量を演算する手段と、この単位時間当たりの進み量又は遅れ量を用いて前記タイムカウンタのカウンタ値を調整する手段と、を備えたものである。
【0013】
また、本発明による時計の誤差調整方法は、使用者が時間の進み又は遅れを修正する操作を行ったときの時計の誤差調整方法であって、前回、時間合わせをした直後の時刻を記憶し、今回、時間を合わせる直前の計時時刻を記憶し、今回、時間合わせをした直後の時刻を記憶し、これらの3つの時間値から単位時間当たりの進み量又は遅れ量を演算し、この単位時間当たりの進み量又は遅れ量を用いて前記タイムカウンタのカウンタ値を調整する。
【0014】
これらの発明の時計及びその誤差調整方法によれば、前回時計合わせしたときの正しい時刻と、今回時計合わせをする直前の誤差を含んだ計時時刻と、今回時計合わせをした直後の正しい時刻との3つの値から単位時間当たりの進み量又は遅れ量を演算し、この演算結果を用いてタイムカウンタのカウンタ値を調整することによってその時計の有する時計誤差特性に基づく誤差を補正できるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1の時計の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、時計は、CPU1と、入出力手段(以下、I/O)2と、バスライン3と、タイムカウンタ4と、不揮発性メモリ5と、LCDコントローラ6と、ドライバ7と、液晶(以下、LCD)8と、を備えている。
【0018】
CPU1は、制御プログラムに基づいて時計の各部を制御する。I/O2は、CPU1に接続され、時計の時刻を進める遅らせるためのスイッチ等の操作部を含んで構成される。タイムカウンタ4は、CPU1の制御の下、時刻データを生成する。
【0019】
不揮発性メモリ5は、EEPROMやフラッシュメモリなどで構成される。不揮発性メモリ5は、バスライン3に接続され、CPU1がI/O2による使用者の時刻変更の操作を検出した場合に、2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容を記憶し、その操作内容つを累積する演算を行い、その累積結果を記憶しておく機能を有する。LCDコントローラ6は、CPU1の制御の下、LCDドライバ7を制御するものである。
【0020】
CPU1は、I/O2からのスイッチ操作信号を受ける一方、バスライン3を介してタイムカウンタ4,フラッシュメモリ5,LCDコントローラ6に必要なデータを供給し且つこれらにそれぞれを制御する制御信号を供給する。
【0021】
CPU1は、使用者が時間の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出する機能と、その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行う機能と、その後に2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行い、累積結果の数値の大きさに応じて、前記タイムカウンタのカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させる機能と、を備えている。
【0022】
次に、図2を参照して図1の動作を説明する。図2は、図1の時計における時間合わせ時の動作を示すフローチャートである。図2において、(a)は初めての時間合わせ時の動作を示し、(b)は2回目以降の時間合わせ時の動作を示している。
【0023】
使用者が時間合わせ操作を行うと、CPU1ではこの操作を検出して、図2(a)に示すように時計の時間合わせ処理(時間変更モード)に入り(ステップS1)、時間合わせ操作で時計を進めたか、遅らせたかを判断し(ステップS2)、時間合わせ操作で時間合わせを進めた場合は、タイムカウンタ4の計時動作を速め、時間合わせを遅らせた場合は、タイムカウンタ4の計時動作を遅らせる調整を行う(ステップS3)。
【0024】
その後、図2(b)に示すように2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行う(ステップS5)。前回の累積結果に対し、時間合わせを進めた場合1を加算し、遅らせた場合1を減算する。例えば、3回、時間合わせを進めた場合、累積結果=1+1+1=3であり、1回目時間合わせを進め、2回目遅らせた場合、累積結果=1−1=0である。
【0025】
そして、累積結果の数値の大きさに応じて、タイムカウンタ4のカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させる(ステップS6)。
【0026】
次に、タイムカウンタ4の計時動作を速める又は遅らせる方法の具体例について説明する。
【0027】
例1.タイムカウンタ4による、カウント値の補正(補正周期は一定とし補正量を変える)
例えば1時間ごとといった、任意の一定時間ごとにCPU1がタイムカウンタ4に含まれる1/10秒カウンタから1/10秒カウント値を読み出し、該カウント値に加減算補正を加えた後、その補正値をタイムカウンタ4に書き込んでタイムカウンタ値の更新を行う。なお、タイムカウンタ4では、水晶振動子の32.768kHzを順次桁上りしていくように分周動作する複数段のカウンタ(1/10秒カウンタ、秒カウンタ、分カウンタ、時カウンタ及び日カウンタなど)のうち、1/10秒カウンタを補正対象としているが、補正対象とするカウンタを補正精度に応じて変更してもよい。
【0028】
<動作例>
・時間を速める場合:カウンタ値を増加させる。加算する値は、時間合わせ累積結果が大きい程、大きい。
【0029】
累積結果 カウンタ値 補正後カウンタ値
+1 0.5 → 0.6(秒)
+2 0.5 → 0.7(秒)
+3 0.5 → 0.8(秒)
・時間を遅らせる場合:カウンタ値を減少させる。減少する値は、時間合わせ累積結果がマイナスに大きい程多く減算させる。
【0030】
累積結果 カウンタ値 補正後カウンタ値
−1 0.5 → 0.4 (秒)
−2 0.5 → 0.3(秒)
−3 0.5 → 0.2(秒)
例2.CPU1による、カウント値の補正(補正量は一定とし補正周期を変更する) 1回のカウンタ補正動作で補正する補正値は、任意の固定値とし、累積結果がプラスかマイナスかに応じ、加算もしくは減算動作を行う。
【0031】
CPU1がタイムカウンタ4の例えば1/10秒カウンタのカウンタ値を読み出して補正を行い、カウンタ値を更新する手順は例1と同じである。
【0032】
そして、累積結果の絶対値が大きい程、カウンタ補正を行う周期を短くする。これにより、累積結果の絶対値が大きい場合は、補正周期が短くなるので、一定時間内にカウントする値が多くなり一定時間内の補正量を大きくでき、累積結果の絶対値が小さい場合は、、補正周期が長くなるので、一定時間内にカウントする値が少なくなり一定時間内の補正量を小さくできる。
【0033】
例3.タイムカウンタ4による、カウント値の補正
CPU1が累積結果の内容に応じ、タイムカウンタ4に対しカウントアップ動作を変化させる設定を行う。
【0034】
例)累積結果に応じ例えば1時間に1回、1/10秒カウンタのカウントアップ動作を変更する。
【0035】
累積結果がプラスに大きい程、時計が遅れる度合いが大きいと判断し、よりカウントアップを速める。即ち、カウントアップ動作量を多くする。逆に累積結果がマイナスに大きい程、時針が進む度合いが大きいと判断し、カウントアップを遅らせる。即ち、カウントアップ動作量を少なくする。
【0036】
この補正を加える頻度とカウントアップ動作の制御は、任意に変更可能である。
【0037】
累積結果 1/10秒カウンタの動作
+1 0.0→0.2→0.3→0.4→0.5 …
+2 0.0→0.4→0.5→0.6→0.7 …
+3 0.0→0.6→0.7→0.8→0.9 …
0 0.0→0.1→0.2→0.3→0.4 …
−1 0.0→0.0→0.1→0.2→0.3 …
−2 0.0→0.0→0.0→0.1→0.2 …
−3 0.0→0.0→0.0→0.0→0.1 …
以上述べた実施例1によれば、使用者が行った進ませる遅らせるの時間合わせ結果に基づき、タイムカウンタのデータの補正を行うため、出荷時に計時補正の調整を行う必要が無く、また発振回路を構成する部品の精度を高くする必要も無いため、低コストにタイムカウンタの補正を行うことが可能となる。
【0038】
また、発振特性の経時変化や、使用環境の変化にも柔軟に対応することができる。
【実施例2】
【0039】
本発明の実施例2の時計の構成は、図1と同様である。
【0040】
図3は本発明の実施例2の時計における、タイムカウンタ(図1の符号4)の構成を示すブロック図であり、図4はタイムカウンタ4の動作を説明するフローチャートである。
【0041】
図3において、タイムカウンタ4は、図示しない水晶振動子からの発振周波数32.768kHzの信号を入力し、1/512に分周して64kHzの信号を生成する1/512分周回路11と、分周回路11からの64kHzの信号とCPU1からの各種の補正制御信号と1分クロックとを入力し、1秒クロック(1sクロックと略記する)を生成する補正機能付き秒クロック生成回路12と、1sクロックを入力し1分クロック(1mクロックと略記する)を生成する秒カウンタ13と、1mクロックを入力し1時間クロック(1hクロックと略記する)を生成する分カウンタ14と、1hクロックを入力し1日クロックを生成する時カウンタ15と、1日クロックをカウントする日カウンタ16と、備えている。
【0042】
タイムカウンタ4では、水晶振動子の32.768kHzを順次分周する複数段のカウンタ(秒クロック生成回路、秒カウンタ、分カウンタ、時カウンタ及び日カウンタ)のうち、秒クロック生成回路12をカウント値の補正対象としている。秒クロック生成回路12は、例えば0.1秒を10回カウントして1sクロックを生成する1/10秒カウンタである。
【0043】
次に、図3の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
秒クロック生成回路12では1/10秒カウンタが動作し、0.1秒ずつカウントアップし10回カウントすると1sクロックを生成する。ステップS11では、1/10秒カウンタのカウント値と設定値との比較が行われる。1/10秒カウンタの設定値10はCPU1から設定され、カウント値がこの設定値より小さい間はインクリメント(+1)を続ける(ステップS12)。カウント値が設定値と等しくなったら、カウント値をゼロにして(ステップS13)、また1からカウントしていく。なお、カウント値をゼロにすると同時に次カウンタのカウント値をアップする。1/10秒カウンタの設定値をCPU1の制御にて増やしたり減らしたりすると、カウント回数が変わってくる。例えば、設定値10を11にすると11までカウントして桁上がりするのでカウントアップを遅らすことができ、9にすると9までカウントして桁上がりするのでカウントアップを速めることができる。
【0045】
図5は図3の補正機能付き秒クロック生成回路12の構成を示す回路図、図6は図5のカウンタ動作制御ブロック21の構成を示す回路図、図7は図5及び図6の動作説明用フローチャートである。
【0046】
図5において、補正機能付き秒クロック生成回路12は、1分クロックと補正要求フルカウント値設定信号と補正頻度設定値と時間補正カウント値とを入力し、時間補正カウンタリセット信号を出力するカウンタ動作制御ブロック21と、時間補正カウント値をインクリメント(+1)したカウント値と前記時間補正カウンタリセット信号と論理信号‘0’とが入力される、アンド回路とオア回路で構成される論理回路22と、論理回路22の出力信号をD入力とし、64Hzクロックをクロック入力として時間補正カウント値を出力する、7bitフリップフロップで構成される時間補正カウンタ23と、前記時間補正カウンタリセット信号をD入力とし、64Hzクロックをクロック入力として1sクロックを出力するフリップフロップで構成されるクロック波形整形用回路24と、を備えて構成されている。
【0047】
図6において、カウンタ動作制御ブロック21は、論理回路32の出力信号をD入力とし1分クロックをクロック入力とする、フリップフロップで構成される補正期間決定用カウンタ31と、補正期間決定用カウンタ31からの出力信号をインクリメント(+1)した信号とコンパレータ33からのフルカウント値セレクト信号と論理信号‘0’とが入力される、アンド回路とオア回路で構成される論理回路32と、補正期間決定用カウンタ31からの出力信号と補正頻度設定値とが入力として供給されるコンパレータ33と、補正用フルカウント値と通常フルカウント値のいずれかをフルカウント値セレクト信号を用いて選択するセレクタ34と、セレクタ34からのフルカウント値と時間補正カウント値とが入力として供給されるコンパレータ35と、を備えて構成されている。図5及び図6の動作について説明する。コンパレータ33で補正時間決定用カウンタ31のカウント値と補正頻度設定値の比較を行い結果が一致した時、コンパレータ33の出力であるフルカウント値セレクト信号が‘1’を出力する。そしてその信号を受け補正時間決定用カウンタ値は‘0’に戻り、再びカウントアップ動作を行う。つまり補正時間決定用カウンタは、補正頻度設定値をフルカウント値としてカウント動作を繰り返し、フルカウント値セレクト信号は補正頻度設定値で設定された周期で、‘1’を出力する。このフルカウント値セレクト信号は、セレクタ34の制御信号でもあり、時間補正カウンタのフルカウント値として、通常フルカウント値と補正用フルカウント値のどちらを選択するかを制御している。フルカウント値セレクト信号が‘1’の期間は補正用フルカウント値が選択される。そして選択されたフルカウント値と時間補正カウンタ23のカウント値の比較をコンパレータ35が行い、その結果が時間補正カウンタリセット信号となる。両者が一致した時、時間補正カウンタリセット信号は‘1’となり、時間補正カウンタ23のカウンタ値は‘0’に戻る。つまり、時間補正カウンタは時間補正の期間は補正用フルカウント値で動作し、それ以外の通常動作期間は通常フルカウント値で動作する。時間補正を行わない場合は、補正用フルカウント値を通常フルカウント値に設定することで対応することも出来る。クロック波形整形用回路24は、コンパレータ35出力のハザードを含んだ波形から、ハザードを除去し秒カウンタ13の安定動作を実現するものである。
【0048】
図7のタイミングチャートを説明する。ここでは一例として、4分間隔で時間補正カウンタ23のフルカウント値を63から66に変更し、計測時間を遅らせる動作について説明している。4分間隔に補正を行うために、補正頻度設定値として3を設定する。これは、補正期間決定カウント値に‘0’が含まれるため必要な時間に対し‘−1’した値を設定値とするためである。補正期間決定用カウンタ31はカウント値が3になると0に戻る動作を繰り返し、コンパレータ33の出力であるフルカウント値セレクト信号は、補正期間決定用カウンタ31のカウント値が3の期間だけ‘1’を出力する。補正用フルカウント値が66に設定されているため、時間補正カウンタは通常カウント時より4クロック多くカウントしてから‘0’に戻る。つまり、4クロック分遅れて1sクロックを出力することになる。
【0049】
次に、時間補正設定方法について説明する。
【0050】
(1)必要な補正時間の算出方法
図8で、t1は前回、時間を変更した時の基準時間に基づいた時刻データ、t2は時間変更モードに入った時の時刻データ、t3は時間変更後の基準時間に基づいた時刻データである。なお、時間変更モードに入った時も、タイムカウンタ4は動作しているものとする。
【0051】
従って、時刻t1は基準時間に基づいた正しい時間であり、時刻t2は時刻t3で変更を終了する直前のタイムカウンタ4が計時している誤差を含んでいる時間であり、時刻t3は基準時間に基づいた変更直後の正しい時間である。時間変更は瞬時に切り換えて行われるので、実際の時間軸上での時刻t2,t3はほぼ同じ時刻となる。
【0052】
単位時間当たりの補正時間=(t3−t2)/(t2−t1) …(1)
変更する計時時間t2が変更時の時刻t3より進んでいる場合:時計を遅らせる
変更する計時時間t2が変更時の時刻t3より遅れている場合:時計を進める
ここでは、前回時計合わせしたときの正しい時刻t1と、今回時計合わせをする直前の誤差を含んだ計時時刻t2と、今回時計合わせをした直後の正しい時刻t3との3つの値から上式(1)を用いて単位時間当たりの補正時間(進み量又は遅れ量)を演算し、この演算結果を用いてタイムカウンタ4のカウンタ値(設定値)を調整することによって、時計の進み遅れ具合を遅らせたり速めたりすることができ、個々の時計が有する時計誤差特性によって生じる時間誤差を補正することが可能となる。
【0053】
本実施例では、時刻合わせの時もタイムカウンタ4は動作しているので、時刻を切換えた(即ち調整終了した)瞬間にカウンタ値が変わる。これに対して、タイムカウンタを止めて時間合わせ作業を行う場合は、作業開始から作業終了までの作業時間を考慮した(即ち作業時間を加算した)時間合わせを行う必要があり正確な時間調整ができない。本実施例では、時間合わせ時(即ち時間変更時)にほぼ同じタイミングで変更前の誤差を含んだ時間データと変更後の正しい時間データを取得できるので、時間合わせに要する作業時間は考えなくてもよい。
【0054】
(2)具体的な補正時間の設定方法
i)1分に1回補正を行った場合、1日当たりの最小補正時間は、時間補正カウンタのフルカウント値を63±nにすることで、22.5×n秒/1日の補正が可能である。
【0055】
24h×60m×(1/64Hz)=22.5秒 となる。
【0056】
ii)10分に1回補正を行った場合の1日当たりの補正時間は、時間補正カウンタのフルカウント値を63±nにすることで、2.25×n秒/1日の補正が可能。
【0057】
24h×(60m/10m)×(1/64Hz)=2.25秒 となる。
【0058】
このように、補正頻度の設定と時間補正カウンタのフルカウント値の調整により自由に時間補正を行うことができる。
【0059】
例)ここで、t2=t1=5日、t3−t2=1分(遅れ誤差)である場合の補正量を求める。また、補正頻度を10分に1回とした場合の補正用フルカウント値を求める。
【0060】
10分ごとの補正時間=(n/64)秒
5日を10分単位に換算すると、5×24×60÷10=720unit
1回の補正量=(60/720)÷(1/64)=5.3
よって、補正用フルカウント値=63+5=68
以上述べた実施例2によれば、前回時計合わせしたときの正しい時刻と、今回時計合わせをする直前の誤差を含んだ計時時刻と、今回時計合わせをした直後の正しい時刻との3つの値から単位時間当たりの進み量又は遅れ量を演算し、この演算結果をタイムカウンタのカウンタ設定値に反映させることによって、タイムカウンタのカウンタ値を調整し、その時計の有する時計誤差特性に基づく誤差を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、時計、時計を内蔵する各種の電子機器、例えば、電子手帳や携帯電話などの携帯機器、VTRやDVDなどの家庭電化機器は勿論、パソコンやファックスなどを含むビジネス用情報機器にも広く利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1の時計の構成を示すブロック図。
【図2】図1の時計における時間合わせ時の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施例2の時計における、タイムカウンタの構成を示すブロック図。
【図4】タイムカウンタの動作を説明するフローチャート。
【図5】図3の補正機能付き秒クロック生成回路の構成を示す回路図。
【図6】図5のカウンタ動作制御ブロックの構成を示す回路図。
【図7】図5及び図6の動作説明用フローチャート。
【図8】補正時間の算出方法を説明する図。
【符号の説明】
【0063】
1…CPU、2…I/O、4…タイムカウンタ、5…不揮発性メモリ、6…LCDコントローラ、8…LCD。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間を計測するタイムカウンタと、
時間合わせを操作する操作手段と、
使用者が時間の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出する手段と、
その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行う手段と、
その後に2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行い、累積結果の数値の大きさに応じて、前記タイムカウンタのカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させる手段と、
を備えたことを特徴とする時計。
【請求項2】
時間を計測するタイムカウンタと、
時間合わせを操作する操作手段と、
前回、時間合わせをした直後の時刻を記憶する手段と、
今回、時間を合わせる直前の計時時刻を記憶する手段と、
今回、時間合わせをした直後の時刻を記憶する手段と、
これらの3つの時間値から単位時間当たりの進み量又は遅れ量を演算する手段と、
この単位時間当たりの進み量又は遅れ量を用いて前記タイムカウンタのカウンタ値を調整する手段と、
を備えたことを特徴とする時計。
【請求項3】
使用者が時間の進み又は遅れを修正する操作を行ったときの時計の誤差調整方法であって、
使用者が時間の変更を行う場合、その変更が時間を進めたのか、遅らせたのかを検出し、
その検出内容に応じて前記タイムカウンタの計時動作を、速める又は遅らせるの調整を行い、
その後に2回目以降の時間合わせ操作を行った際に、1回目からの回ごとに、進み操作を行ったか遅れ操作を行ったかの操作内容の累積を行い、
累積結果の数値の大きさに応じて、前記タイムカウンタのカウンタ値の進み量又は遅れ量の調整の度合いを変化させることを特徴とする時計の誤差調整方法。
【請求項4】
使用者が時間の進み又は遅れを修正する操作を行ったときの時計の誤差調整方法であって、
前回、時間合わせをした直後の時刻を記憶し、
今回、時間を合わせる直前の計時時刻を記憶し、
今回、時間合わせをした直後の時刻を記憶し、
これらの3つの時間値から単位時間当たりの進み量又は遅れ量を演算し、
この単位時間当たりの進み量又は遅れ量を用いて前記タイムカウンタのカウンタ値を調整することを特徴とする時計の誤差調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−53008(P2006−53008A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234131(P2004−234131)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】