説明

時計および機器

【課題】非導電性の外装ケースを備え、簡略な構成で静電気によるショートを防止できる時計および機器を提供すること。
【解決手段】非導電性材料により形成された外装ケースと、外装ケースに設けられる金属製の裏蓋6と、外装ケースに収容される回路基板52と、外装ケース内における回路基板52の裏蓋6とは反対側に設けられ、金属製の基材41を有する太陽電池パネル4と、を備え、回路基板52には、太陽電池パネル4のプラスおよびマイナスの端子401,402にそれぞれ導通されるプラスおよびマイナスの導通ばね521,522が設けられ、これらの導通ばね521,522のいずれか一方が、基材41と導通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を備える時計および機器における静電気対策に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池パネルで発電した電力により駆動し、電池交換の煩雑さから解放される太陽電池搭載電子時計が開発されている。このような電子時計において、時計の外装ケースが樹脂製で裏蓋が金属製の場合に、裏蓋側からの静電気放電電流が外装ケース内部の回路基板を経由して太陽電池パネルに流れ、これによって薄膜シリコン層を挟む電極間がショートして光発電セルが破壊されるおそれがあった。太陽電池パネルでは複数の光発電セルが通常直列に接続されており、ひとつの光発電セルでも破壊(ショート)されると、太陽電池パネル全体の発電電圧が低下してしまう。
なお、カバーガラス側では静電気が放電しないため、静電気によって光発電セルがショートするおそれはない。また、外装ケースが金属製の場合は、主に外装ケースに放電電流が流れ、外装ケース内部には流れないため、実用上十分な耐静電気性がある。
【0003】
ここで、太陽電池パネルにおける透明電極と外装ケースとを導通ばねを介して導通させることが知られている(特許文献1)。特許文献1によれば、静電気が光発電セルの一部に気中放電により印加される前に、導通ばねを介して透明電極に流れ、外装ケースに抜ける。このような静電気バイパス効果により、太陽電池パネルを静電気衝撃から守るものとなっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−107469号公報(段落「0029」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構成では、外装ケースが導電体でなくてはならないから、非導電性である樹脂製の外装ケースを採用できない。
そのうえ、太陽電池パネルと外装ケースとを介在する導通ばねが必要となるため、部品コストが高くなり、時計の小型化が阻害され、そのうえ組立も難しくなる。
【0006】
本発明の目的は、非導電性の外装ケースを備え、簡略な構成で静電気対策を実現できる時計および機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の時計は、非導電性材料により形成された外装ケースと、前記外装ケースに設けられる金属製の裏蓋と、前記外装ケースに収容される回路基板と、前記外装ケース内における前記回路基板の前記裏蓋側とは反対側に設けられ、金属製の基材を有する太陽電池と、を備え、前記回路基板は、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ導通されるプラスの導通部材およびマイナスの導通部材を有し、前記プラスの導通部材および前記マイナスの導通部材のいずれか一方が、前記基材と導通されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、裏蓋側から放電された電荷が裏蓋および回路基板を経由し、プラスの導通部材およびマイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材を通じて太陽電池の金属製の基材に拡散される。すなわち、裏蓋側から放電された電荷が太陽電池の光発電セルに印加される前に基材に拡散されるので、光発電セルにおけるショートを防止できる。
本発明によれば、太陽電池単体によって静電気耐圧の向上を図ることができる。すなわち、前記のように太陽電池の基材自体に電荷が拡散されることにより、太陽電池に他の部材を付加せずに静電気対策をすることが可能となる。このため、静電気対策用の部品コストや組立コストが発生せず、しかも組立を簡単に行うことができる。
また、太陽電池と外装ケース等とを導通するばね部材等が不要となるため、時計の小型化が阻害されない。
さらに、太陽電池への他部材の付加が不要であって外装ケースの構造を問わないから、本発明は種々の時計モデルに汎用に適用できる。
なお、太陽電池の基材は、光発電セルの半導体層や電極などが設けられる部材のことをいう。
【0009】
ここで、本発明におけるプラスおよびマイナスの導通部材の導通態様は2種類に大別される。すなわち、プラスの導通部材が基材に導通され、かつマイナスの導通部材が基材に導通されていない第1の態様と、プラスの導通部材が基材に導通されておらず、かつマイナスの導通部材が基材に導通されている第2の態様との2種類である。
つまり、静電気耐圧の試験等を行った際にプラス端子が設けられた光発電セルやその近傍の光発電セルがショートした場合には第1の態様を選択し、他方、マイナス端子が設けられた光発電セルやその近傍の光発電セルがショートした場合には第2の態様を選択することが好ましい。
【0010】
本発明の時計では、前記基材に導通されるいずれか一方の導通部材は、前記太陽電池のプラス端子に導通されていることが好ましい。
この発明によれば、太陽電池が有する複数の光発電セルのうちプラス端子が設けられた光発電セルやその近傍の光発電セルのショートを防止できる。
【0011】
本発明の時計では、前記基材に導通されるいずれか一方の導通部材は、前記太陽電池のマイナス端子に導通されていることが好ましい。
この発明によれば、太陽電池が有する複数の光発電セルのうちマイナス端子が設けられた光発電セルやその近傍の光発電セルのショートを防止できる。
【0012】
本発明の時計では、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子のそれぞれは、前記基材の前記回路基板側に設けられる端子本体と、前記基材を貫通して前記端子本体と前記基材の前記回路基板とは反対側とを導通するスルーホールと、前記端子本体と前記基材との間に介在してこれら端子本体と基材とを絶縁する絶縁部材と、を有し、前記一方の導通部材に導通される前記端子の前記端子本体は、前記スルーホールの前記回路基板側の端部に前記絶縁部材により前記基材と絶縁された状態で設けられる絶縁端子部と、前記基材に接触する接触端子部と、を含むことが好ましい。
【0013】
この発明では、プラスの導通部材およびマイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材に導通される端子の端子本体の接触端子部が基材に接触しているため、この端子本体に前記一方の導通部材が導通されることにより、前記一方の導通部材が基材に導通されることになる。本発明によれば、端子本体と基材とが絶縁部材によって絶縁される通常の端子構造とは異なり、端子本体の一部(接触端子部)を基材に敢えて接触させるだけで、他に何の方策を採ることなく、太陽電池の静電気対策を実施できる。
ここで、絶縁端子部と接触端子部とは、一体でも別体でもよい。
【0014】
本発明の時計では、前記一方の導通部材に導通される前記太陽電池の一方の端子は、前記基材の前記回路基板側に設けられ、前記基材と接触する端子本体と、前記基材を貫通して前記端子本体と前記基材の前記回路基板とは反対側とを導通するスルーホールと、を有し、前記太陽電池の他方の端子は、前記基材の前記回路基板側に設けられる端子本体と、前記基材を貫通して前記端子本体と前記基材の前記回路基板とは反対側とを導通するスルーホールと、前記端子本体と前記基材との間に介在してこれら端子本体と基材とを絶縁する絶縁部材と、を有することが好ましい。
【0015】
この発明では、プラスの導通部材およびマイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材に導通される端子の端子本体が基材に接触しているため、この端子本体に前記一方の導通部材が導通されることにより、前記一方の導通部材が基材に導通されることになる。本発明によれば、端子本体と基材とが絶縁部材によって絶縁される通常の端子構造とは異なり、端子本体を基材に敢えて接触させるだけで、他に何の方策を採ることなく、太陽電池の静電気対策を実施できる。
【0016】
本発明の時計は、非導電性材料により形成された外装ケースと、前記外装ケースに設けられる金属製の裏蓋と、前記外装ケースに収容される回路基板と、前記外装ケース内における前記回路基板の前記裏蓋側とは反対側に設けられ、金属製の基材を有する太陽電池と、を備え、前記回路基板は、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ導通されるプラスの導通部材およびマイナスの導通部材を有し、前記プラスの導通部材および前記マイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材が設けられる前記回路基板のパターンには、前記基材に導通される他の導通部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前述した発明と略同様に、裏蓋側から放電された電荷が裏蓋および回路基板を経由し、プラスの導通部材およびマイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材と同じ回路基板上のパターンに設けられた他の導通部材を通じて太陽電池の金属製の基材に拡散されるので、簡略な構成により静電気対策を実現できる。
本発明では他の導通部材が設けられるものの、太陽電池と外装ケース等とが導通されることなく静電気対策が実現するので、前述と略同様の効果が得られる。
【0018】
ここで、前述の各時計において、前記基材には、ステンレス鋼を好適に使用できる。これにより、太陽電池の強度および耐食性を十分に確保できる。
【0019】
本発明の機器は、非導電性材料により形成された外装ケースと、前記外装ケースに設けられる金属製の蓋部材と、前記外装ケースに収容される回路基板と、前記外装ケース内における回路基板の前記蓋部材とは反対側に設けられ、金属製の基材を有する太陽電池と、を備え、前記回路基板は、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ導通されるプラスの導通部材およびマイナスの導通部材を有し、前記プラスの導通部材および前記マイナスの導通部材のいずれか一方が、前記基材と導通されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、前述した時計と略同様に、蓋部材側から放電された電荷が蓋部材および回路基板を経由し、プラスの導通部材およびマイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材を通じて太陽電池の金属製の基材に拡散されるので、太陽電池単体での静電気対策を実現できる。このように太陽電池の基材自体に静電気が拡散されることにより、太陽電池に他の部材を付加せずに静電気対策をすることが可能となる。このため、静電気対策用の部品コストや組立コストが発生せず、組立を簡単に行うことができる。
また、太陽電池と外装ケース等とを導通するばね部材等が不要となるため、機器の小型化が阻害されない。
さらに、太陽電池への他部材の付加が不要であって外装ケースの構造を問わないから、本発明は種々の機器に適用できる。
【発明の効果】
【0021】
以上の本発明によれば、非導電性の外装ケースを備える構成において、静電気により太陽電池パネルの光発電セルがショートすることを簡略な構成によって防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以降の説明において、既に説明した構成と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略または簡略にする。
〔第1実施形態〕
本実施形態は、前述した第1の態様(プラスの導通部材が基材に導通され、かつマイナスの導通部材が基材に導通されていない構成)に対応する。
図1は、本実施形態に係るデジタル表示の電子時計1の外観を示す。図2は、時計1の側断面図である。時計1は、プラスチック製の外装ケース2と、カバーガラス3(図2)と、太陽電池パネル(ソーラーパネル)4と、デジタルクォーツムーブメント5(図2)と、ステンレス鋼製の裏蓋6(図2)とを備えている。なお、時計1には複数の操作ボタン23が設けられている。
【0023】
ムーブメント5は、図2に示すように、液晶パネル、有機ELパネル、電気泳動パネル等である表示パネル51と、回路基板52と、太陽電池パネル4により発電した電力を蓄えるコイン型二次電池53を収納する電池収納部54とを有している。電池収納部54には、電池53を押さえるばね541が設けられている。このばね541により、電池53の正極531が裏蓋6に接地されている。
【0024】
太陽電池パネル4は、図1に示すように角丸矩形の環状に形成され、図2に示すように、外装ケース2内で、ムーブメント5の裏蓋6側とは反対側に設けられている。この環状の太陽電池パネル4の内側に、表示パネル51の表示領域が納まっている。
また、太陽電池パネル4は、図2に示すように、外装ケース2に形成された支持部21に配置され、太陽電池パネル4の外周部には環状部材40が配置されている。環状部材40は、外装ケース2の開口部22に沿って配置されている。この環状部材40に向かって開口部22からカバーガラス3が挿入されることにより、環状部材40と支持部21との間に太陽電池パネル4が固定されている。
【0025】
図3は、太陽電池パネル4を受光面側から見た平面図である。太陽電池パネル4は、5つの光発電セル4A〜4Eを有している。これらの光発電セル4A〜4Eは、各接続パターン49において直列に接続されている。また、太陽電池パネル4の裏面において、光発電セル4Eにプラス端子401が設けられ、光発電セル4Aにマイナス端子402が設けられている。
これらのプラス端子401およびマイナス端子402は、太陽電池パネル4の左右に略線対称に、かつ太陽電池パネル4の対角線にほぼ沿って放射状に設けられている。
【0026】
プラス端子401には、図2に示した導通ばね(金属性コイルばね)521が当接される。この図2の導通ばね521は、ムーブメント5のプラスチック製ケース55に設けられ、回路基板52上に形成された太陽電池パネル4のプラス端子401に対応するパターン(図示省略)に導通されている。
また、マイナス端子402には、回路基板52上のマイナス端子(図示省略)に設けられた導通ばねが当接される。この導通ばねも、ムーブメント5のケース55に設けられている。図1に、プラス端子401に当接される導通ばね521と、マイナス端子402に当接される導通ばね522とを破線で示す。
【0027】
[プラス端子の構造]
図4は、太陽電池パネル4の裏面側から見たプラス端子401を示す。また、図5は、図4のV−V´線断面図である。
太陽電池パネル4は、図5に示すように、ステンレス鋼により形成された薄板状の基材41と、基材41のカバーガラス3側に設けられる発電部43とを有している。
【0028】
発電部43は、基材41のカバーガラス3側の表面に順に積層される絶縁層431と、金属電極(マイナス電極)432と、アモルファスシリコン半導体層433と、透明電極(プラス電極)434と、保護膜435とを有している。
【0029】
プラス端子401は、基材41の発電部43とは反対側の面に導電性塗料により形成された端子本体421と、基材41を貫通するスルーホール422と、端子本体421および基材41の間に介在する絶縁部材としての絶縁層423とを有している。
スルーホール422は、端子本体421と透明電極434とを導通している。スルーホール422の周りは絶縁部422Aとなっている。
絶縁層423および端子本体421は、基材41に絶縁層423、端子本体421の順でそれぞれ塗布されている。
【0030】
図4および図5に示すように、端子本体421は、絶縁層423よりも平面的に大きく設けられ、部分的に基材41に接触している。すなわち、端子本体421は、スルーホール422の端部に絶縁層423により基材41と絶縁された状態で設けられる絶縁端子部421Aと、基材41に接触する接触端子部421Bとを含んでいる。これにより、本実施形態ではプラス端子について静電気対策がなされている。
【0031】
[マイナス端子の構造]
図6は、太陽電池パネル4の裏面側から見たマイナス端子402を示す。また、図7は、図6のVII−VII´線断面図である。
【0032】
マイナス端子402は、導電性塗料により形成された端子本体425と、基材41を貫通するスルーホール426と、端子本体421および基材41の間に介在する絶縁部材としての絶縁層427とを有している。
スルーホール426は、端子本体425と金属電極432とを導通している。
図6に示すように、端子本体425は、絶縁層427が基材41に塗布された領域内に塗布されており、基材41とは絶縁されている。
【0033】
図8は、静電気耐圧試験装置に時計1をセットした状態を示す模式図である。図8中、61は試験装置が有する絶縁性フィルム、62は試験装置が有する導電体(グランド・プレーン)である。
このようにセットされた時計1の裏蓋6側から、高電圧の静電気を放電させて試験を行う。なお、図8において、裏蓋6と回路基板52との間に配置された電池53やばね541(図2)等の図示は省略した(図9、図12〜図14においても同様)。
【0034】
ここで、図9に、本実施形態の静電気試験との比較例として、静電気対策無しの構成による試験例を示す。この図9におけるプラス端子409は、本実施形態のマイナス端子402(図7)と同様に構成されている。
【0035】
比較例としての図9の構成において、時計内部への静電気の侵入経路は次の通りとなる。この侵入経路を図9に破線で示す。
1.裏蓋6に放電
2.電池53(図2)の正極531と裏蓋6とを接続するばね541を通じて、回路基板
52上のVDDへ
3.回路基板52上の回路を通って、太陽電池パネル4のプラス端子401に対応する回
路基板52上のパターン(図示省略)へ
4.導通ばね521
5.太陽電池パネル4の端子本体421
6.スルーホール422
7.透明電極434
8.半導体層433
9.金属電極432
このように、裏蓋6側からの放電電流がスルーホール422に流れることにより、スルーホール422に直結している光発電セル4Eの透明電極434および金属電極432間がショートし、太陽電池パネル4の光発電セル4Eが破壊されることがある。
【0036】
これに対して、図8の本実施形態の試験例では、上記4.導通ばね521までの経路は同様であるが、端子本体421に当接された導通ばね521が接触端子部421Bによって基材41に導通されているため、導通ばね521から基材41へと電荷が拡散される。このため、プラス端子401のスルーホール422に直結する光発電セル4Eのショートが未然に防止される。本実施形態の静電気試験により、図9の構成と比べて静電気耐圧が約2倍になることが確認された。すなわち、静電気耐圧を十分に確保できる。
【0037】
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)裏蓋6側から放電された電荷が一方の導通ばね521および端子本体421を通じて太陽電池パネル4の金属製の基材41に拡散されるので、太陽電池パネル4単体によって静電気耐圧の向上を図ることができる。このため、静電気対策用の部品コストや組立コストが発生せず、組立を簡単に行うことができる。
また、太陽電池パネル4と外装ケース2等とを導通するばね部材等が不要となるため、時計1の小型化が阻害されない。
さらに、太陽電池パネル4への他部材の付加が不要であって外装ケース2の構造を問わないから、種々の時計モデルに汎用に適用可能となる。
【0038】
(2)プラスの導通ばね521が基材41に導通されているので、プラス端子401のスルーホール422が設けられた光発電セル4Eやその近傍の光発電セル4Dなどのショートを防止できる。
【0039】
(3)マイナス端子402の端子構造とは異なり、プラスの端子本体421の一部である接触端子部421Bを基材41に敢えて接触させている。すなわち、通常は端子本体421と基材41とを絶縁するために端子本体421よりも大きく設けられる絶縁層423を端子本体421よりも小さく設けるだけで、太陽電池パネル4の静電気対策を容易に実施できる。
【0040】
(4)端子本体421が導電性塗料により形成されているため、太陽電池の端子を薄くできる。なお、導電性塗料は、カーボンや、金、銀、銅、ニッケル等の導電性粒子を媒質と共に含有するものであればよい。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図10〜図12を参照して説明する。
本実施形態は、前述した第2の態様(プラスの導通部材が基材に導通されておらず、かつマイナスの導通部材が基材に導通されている構成)に対応する。
本実施形態に示す太陽電池パネル7では、第1実施形態とは逆に、マイナス端子について静電気対策がなされている。
【0042】
[プラス端子の構造]
図10は、プラス端子701の位置における太陽電池パネル7の断面図である。端子本体425は、絶縁層427が基材41に塗布された範囲内に塗布されており、絶縁層427によって基材41と絶縁されている。
【0043】
[マイナス端子の構造]
図11は、マイナス端子702の位置における太陽電池パネル7の断面図である。端子本体421は、絶縁端子部421Aと接触端子部421Bとを含んでいる。
【0044】
図12は、静電気耐圧試験装置に時計をセットした状態を示す模式図である。このようにセットされた時計の裏蓋6側から、高電圧の静電気を放電させて試験を行う。時計内部への静電気の侵入経路を図12に破線で示す。
本実施形態では、端子本体421に当接された導通ばね522が接触端子部421Bによって基材41に導通されているため、導通ばね522から基材41へと電荷が拡散される。このため、マイナス端子702のスルーホール426に直結する光発電セル4Aのショートが未然に防止される。
このように、太陽電池パネル7の光発電セルが保護されることから、静電気対策無しの場合と比べて静電気耐圧を約2倍にできる。
【0045】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態では、マイナスの導通ばね522が基材41に導通されているので、マイナス端子702のスルーホール426が設けられた光発電セル4Aやその近傍の光発電セル4Bなどのショートを防止できる。
【0046】
〔第3実施形態〕
図13は、本発明の第3実施形態を示す。本実施形態における太陽電池パネル8のプラス端子801は、端子本体821と、スルーホール422と、絶縁層427とを有している。
ここで、端子本体821は、絶縁層427により基材41と絶縁される絶縁端子部821Aと、基材41と接触する接触端子部821Bとを含んでいる。
絶縁端子部821Aは、導電性塗料Pおよび銅箔Fにより形成され、接触端子部821Bは、銅箔Fにより形成されている。本実施形態では、絶縁端子部821Aおよび接触端子部821Bに跨って銅箔Fが配置されている。
なお、接触端子部821Bには、銅箔F以外に、アルミニウム箔などの金属箔や、導電性のシート部材等を使用できる。
【0047】
本実施形態においても、時計の裏蓋6側から、高電圧の静電気を放電させて試験を行う。時計内部への静電気の侵入経路を図13に破線で示す。
本実施形態では、端子本体821に当接された導通ばね521が接触端子部821Bによって基材41に導通されているため、導通ばね521から基材41へと電荷が拡散される。このため、プラス端子801のスルーホール422に直結する光発電セル4Eのショートが未然に防止される。
このように、太陽電池パネル8の光発電セルが保護されることから、静電気対策無しの場合と比べて静電気耐圧を約2倍にできる。
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
〔第4実施形態〕
図14は、本発明の第4実施形態を示す。本実施形態における太陽電池パネル9は、基材41に当接される他の導通ばねとしての導通ばね920を有している。
この導通ばね920は、回路基板52上に形成された太陽電池パネル9のプラス端子901に対応するパターン524に導通ばね521と共に設けられている。
本実施形態においても、時計の裏蓋6側から、高電圧の静電気を放電させて試験を行う。静電気の侵入経路を図14に破線で示す。
本実施形態では、導通ばね920が基材41に導通されているため、導通ばね920から基材41へと電荷が拡散される。このため、プラス端子901のスルーホール422に直結する光発電セル4Eのショートが未然に防止される。
このように、太陽電池パネル9の光発電セルが保護されることから、静電気対策無しの場合と比べて静電気耐圧を約2倍にできる。
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
〔本発明の変形例〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良、変形等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1〜第3実施形態の太陽電池の端子は、端子本体と基材との間に介在する絶縁層423や絶縁層427を有していたが、基材と導通される一方の導通端子に導通される太陽電池の端子に関しては、これらの絶縁層を無くすことが可能である。すなわち、当該端子の端子本体と基材との間に絶縁層が介在配置されず、端子本体が基材に接触導通した状態となる。このようにしても第1〜第3実施形態と同様の効果が得られ、また、絶縁材料を節約できる。
【0050】
太陽電池の端子本体を構成する部材は、第1実施形態や第2実施形態等で示した導電性塗料に限られない。太陽電池の端子本体は、銅箔、アルミニウム箔などの箔部材などで構成されていてもよい。
また、太陽電池の端子が有するスルーホールの構造は、基材を貫通し、端子本体と、基材の端子本体が設けられた側と反対側とを導通する限り、特に限定されない。なお、スルーホールと端子本体とが一体化されていてもよい。
前記各実施形態で示した回路基板に設けられる導通部材の構成は、金属製コイルばねには限定されず、例えば、金属製ねじ、鋼線などであってよい。
【0051】
また、第3実施形態において、基材に接触する接触端子部821Bは銅箔により形成されていたが、これに限らず、ワイヤやリード線などによって接触端子部が形成されていてもよい。
さらに、第4実施形態では、2つの導通ばねにそれぞれ、太陽電池の端子への導通と、太陽電池の基材への導通とを分担させていたが、この応用例として、例えば、二股状の導通部材のいずれか一方の枝を端子に当接させ、他方の枝を基材に当接させることも考えられる。
本発明は、要するに、回路基板に設けられ太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ対応する導通部材のうち、いずれか一方の導通部材が基材に導通されるものであればよい。例えば、前記各実施形態で示した導通ばね521等よりも大径の導通ばねが、太陽電池の端子と基材との両方に当接される構成も本発明に含まれる。
【0052】
前記各実施形態ではデジタルクォーツとしての電子時計1を例示したが、これに限らず、本発明は、輪列を駆動して指針により時刻を表示するアナログクォーツにも適用できる。また、本発明は、電子時計(クォーツ)に限らず、ぜんまいを動力源とし、ぜんまいで発電された電力によって回路基板を駆動し計時を行う電子制御式機械時計にも適用できる。
さらに、本発明は、外装ケース、裏蓋、回路基板、および太陽電池を備える各種機器への適用が可能であり、これらの各機器においても、前述の時計と同様の効果を奏する。
これらの機器としては、例えば情報通信機器やディジタルカメラ、計測器などがある。
【0053】
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池パネル搭載電子時計の外観を示す図。
【図2】前記時計の側断面図。
【図3】前記太陽電池パネルを表側(受光面側)から見た平面図。
【図4】前記太陽電池パネルの裏面側から見たプラス端子を示す部分拡大図。
【図5】図4のV−V´線断面図。
【図6】前記太陽電池パネルの裏面側から見たマイナス端子を示す部分拡大図。
【図7】図6のVII−VII´線断面図。
【図8】前記実施形態における静電気耐圧試験を示す図。
【図9】比較例における静電気耐圧試験を示す図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る太陽電池パネルのプラス端子の位置における断面図。
【図11】前記太陽電池パネルのマイナス端子の位置における断面図。
【図12】前記実施形態における静電気耐圧試験を示す図。
【図13】本発明の第3実施形態における静電気耐圧試験を示す図。
【図14】本発明の第4実施形態における静電気耐圧試験を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1・・・時計、2・・・外装ケース、4・・・太陽電池パネル、6・・・裏蓋、7〜9・・・太陽電池パネル、41・・・基材、52・・・回路基板、401・・・プラス端子、402・・・マイナス端子、421,425・・・端子本体、421A・・・絶縁端子部、421B・・・接触端子部、422,426・・・スルーホール、423,427・・・絶縁層(絶縁部材)、521・・・導通ばね(プラスの導通部材)、522・・・導通ばね(マイナスの導通部材)、524・・・パターン、701・・・プラス端子、702・・・マイナス端子、801・・・プラス端子、821・・・端子本体、821A・・・絶縁端子部、821B・・・接触端子部、901・・・プラス端子、920・・・導通ばね(他の導通部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料により形成された外装ケースと、
前記外装ケースに設けられる金属製の裏蓋と、
前記外装ケースに収容される回路基板と、
前記外装ケース内における前記回路基板の前記裏蓋側とは反対側に設けられ、金属製の基材を有する太陽電池と、を備え、
前記回路基板は、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ導通されるプラスの導通部材およびマイナスの導通部材を有し、
前記プラスの導通部材および前記マイナスの導通部材のいずれか一方が、前記基材と導通されている
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計において、
前記基材に導通されるいずれか一方の導通部材は、前記太陽電池のプラス端子に導通されている
ことを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項1に記載の時計において、
前記基材に導通されるいずれか一方の導通部材は、前記太陽電池のマイナス端子に導通されている
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の時計において、
前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子のそれぞれは、前記基材の前記回路基板側に設けられる端子本体と、前記基材を貫通して前記端子本体と前記基材の前記回路基板とは反対側とを導通するスルーホールと、前記端子本体と前記基材との間に介在してこれら端子本体と基材とを絶縁する絶縁部材と、を有し、
前記一方の導通部材に導通される前記端子の前記端子本体は、前記スルーホールの前記回路基板側の端部に前記絶縁部材により前記基材と絶縁された状態で設けられる絶縁端子部と、前記基材に接触する接触端子部と、を含む
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の時計において、
前記一方の導通部材に導通される前記太陽電池の一方の端子は、前記基材の前記回路基板側に設けられ、前記基材と接触する端子本体と、前記基材を貫通して前記端子本体と前記基材の前記回路基板とは反対側とを導通するスルーホールと、を有し、
前記太陽電池の他方の端子は、前記基材の前記回路基板側に設けられる端子本体と、前記基材を貫通して前記端子本体と前記基材の前記回路基板とは反対側とを導通するスルーホールと、前記端子本体と前記基材との間に介在してこれら端子本体と基材とを絶縁する絶縁部材と、を有する
ことを特徴とする時計。
【請求項6】
非導電性材料により形成された外装ケースと、
前記外装ケースに設けられる金属製の裏蓋と、
前記外装ケースに収容される回路基板と、
前記外装ケース内における前記回路基板の前記裏蓋側とは反対側に設けられ、金属製の基材を有する太陽電池と、を備え、
前記回路基板は、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ導通されるプラスの導通部材およびマイナスの導通部材を有し、
前記プラスの導通部材および前記マイナスの導通部材のいずれか一方の導通部材が設けられる前記回路基板のパターンには、前記基材に導通される他の導通部材が設けられている
ことを特徴とする時計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の時計において、
前記基材は、ステンレス鋼により形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項8】
非導電性材料により形成された外装ケースと、
前記外装ケースに設けられる金属製の蓋部材と、
前記外装ケースに収容される回路基板と、
前記外装ケース内における回路基板の前記蓋部材とは反対側に設けられ、金属製の基材を有する太陽電池と、を備え、
前記回路基板は、前記太陽電池のプラスおよびマイナスの端子にそれぞれ導通されるプラスの導通部材およびマイナスの導通部材を有し、
前記プラスの導通部材および前記マイナスの導通部材のいずれか一方が、前記基材と導通されている
ことを特徴とする機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−31162(P2009−31162A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196549(P2007−196549)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】