時計用文字盤及び時計
【課題】利用者の視認性の自由度を高めるなど、新規な機能を付加した複合表示式の時計と、これの構成部品となる時計用文字盤とを提供する。
【解決手段】時刻を表すための文字部70の表示機能を有する表示パネル5を備えた時計用文字盤である。表示機能は、表示パネル5における文字部70の表示位置を、時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能を有する。また、時計は、この時計用文字盤と、指針部22、23とを有してなる。
【解決手段】時刻を表すための文字部70の表示機能を有する表示パネル5を備えた時計用文字盤である。表示機能は、表示パネル5における文字部70の表示位置を、時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能を有する。また、時計は、この時計用文字盤と、指針部22、23とを有してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用文字盤とこの時計用文字盤を備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル表示式(液晶表示式)の表示パネル上でアナログ指針を運針させる複合表示式の腕時計が知られている。この種の腕時計には、表示パネルにキャラクタ又は時字等を表示し、この表示を変化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ベゼル(外周に目盛を持たせ回転させることにより設定を変更)や、文字盤の一部を回転部材にすることにより、指針の背景となる文字盤の表示位置を可変にできる時計も知られている(例えば、特許文献2、3、4参照)。
【特許文献1】特開昭63− 66486号公報
【特許文献2】特表2005−521890号公報
【特許文献3】特開2004−53315号公報
【特許文献4】特開平9−230061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来の複合表示式の腕時計では、指針の背景となる文字盤の表示位置が一定であることから、利用者が視認し易い角度でこれを見ようとした場合に、腕の位置(角度)等を適宜に変える必要がある。ところが、自動車を運転しているときや、サービス業に従事しているときなどでは、姿勢が固定されていて腕の位置(角度)を自由にできないことがあり、そのような利用形態にある人達にとっては、より視認し易い時計の提供が望まれている。
また、前記の、指針の背景となる文字盤の表示位置を可変にした時計では、機構が複雑になったり、表示が2重になるといった課題があり、実用には難があった。
また、文字盤の表示位置を簡易的にシール等で表示することも考えられるが、剥離してしまったり、シールにより針が見にくくなるといった課題があり、やはり実用には難があった。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、利用者の視認性の自由度を高めるなど、新規な機能を付加した複合表示式の時計と、これの構成部品となる時計用文字盤とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明の時計用文字盤は、時刻を表すための文字部の表示機能を有する表示パネルを備えた時計用文字盤であって、前記表示機能は、前記表示パネルにおける前記文字部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能を有することを特徴とする。
この時計用文字盤によれば、文字部の表示位置を、時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能が設けられているので、文字部の表示位置を所望の角度変えて移動させることにより、例えば腕の位置(角度)を変えることなく、利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部の表示位置を角度調整することが可能になる。
【0006】
また、前記時計用文字盤においては、前記表示機能に、前記文字部とは別の付属部を表示する第2の表示機能が備えられているのが好ましい。
このようにすれば、例えば「日にち」や「曜日」などの暦情報を付属部として表示することが可能になる。
【0007】
なお、この時計用文字盤においては、前記第2の表示機能には、前記付属部の表示位置を前記文字部の表示位置の移動とともに前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第3の表示機能を有するのが好ましい。
このようにすれば、暦情報などの付属部についても、文字部と同様に視認し易い角度に調整することが可能になる。
【0008】
また、前記時計用文字盤においては、前記第1の表示機能及び前記第3の表示機能は、前記文字部又は前記付属部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に、30度毎に変更できるように構成されているのが好ましい。
このように、時刻を表す「1〜12」等の文字(数字)で表される文字部の表示位置を、30度毎に変更させることにより、例えば腕時計のベルトで位置決めされた表示パネルを種々の角度で見ることができるようになり、したがって固定された姿勢でより視認し易く調整することが可能になる。また、30度毎に変更させることにより、腕時計の一般的な使用形態から1時間ずつずれた表示にすることができ、したがって海外(外国)の現地時間を表示させようとした場合に、時間単位で異なる海外時間を容易に表示することが可能になる。
【0009】
また、前記時計用文字盤においては、前記第1の表示機能及び第2の表示機能は、予め設定したデータに基づき、前記文字部又は前記付属部の表示位置を所定角度変更して表示する機能を有するのが好ましい。
このようにすれば、例えば日本時間と海外(外国)の現地時間との間の時差を予めデータとして入力し、メモリ部に記憶させておくことにより、記憶させた時差に対応させて前記文字部の表示位置を所定角度変更させることができる。したがって、海外(外国)の現地時間を容易にかつ瞬時に表示させることが可能になる。
【0010】
また、前記時計用文字盤においては、前記表示パネルが、電気泳動表示パネルであるのが好ましい。
電気泳動表示パネルを構成する電気泳動素子は、表示の保持性(メモリ性)を有していることから、時刻を表すための文字部を一旦表示した後には、表示パネルへの電圧印加を停止しても表示が電圧印加時の状態に保持される。したがって、消費電力の低減化が可能になる。
【0011】
本発明の時計は、時刻を表すための文字部を表示する表示パネルを備えた時計用文字盤と、指針部とを有してなり、前記時計用文字盤が、前記の時計用文字盤からなることを特徴としている。
この時計によれば、前述したように、例えば腕の位置(角度)を変えることなく、利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部の表示位置を角度調整することが可能な時計用文字盤を有してなるので、視認性についての自由度が高まることにより、使い勝手が極めて良好になる。また、時差のある海外の現地時間の表示なども可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明における時計の一実施形態としての腕時計1の正面図であり、図2は、この腕時計1の要部側断面図である。この腕時計1は、図1に示すように時計ケース2と、この時計ケース2に連結された一対のバンド3とを備えて構成されたものである。時計ケース2は、ステンレス等の金属材又はプラスチック樹脂等の樹脂材で形成されたもので、その内部には、図2に示すように、ムーブメント4と表示パネル5とからなる時計用文字盤10が収容されている。
【0013】
なお、時計ケース2内には、時計用文字盤6の表示パネル5側(時計表側)に、樹脂製又は金属製の圧入リング(図示せず)を介して、ガラス製又は樹脂製の透明カバー(図示せず)が圧入固定されている。また、ムーブメント4側(時計裏側)には、パッキン(図示せず)を介して裏蓋(図示せず)が螺合され、この裏蓋及び透明カバーによって時計ケース2の内部の密封性が確保されている。
【0014】
また、前記時計ケース2には、図1に示すように、操作子としての竜頭10と二つの操作ボタン11a、11bとが設けられている。竜頭10は、後述するようにムーブメント4の巻真31に連結され、この巻真31と一体となって多段階(本例では2段階)で押し引き自在、かつ、回転自在に設けられたものである。
【0015】
ムーブメント4は、図3に示すように、秒針21、分針22及び時針23からなるアナログ指針が連結された運針機構20を備えたもので、この運針機構20が前記アナログ指針21〜23を回転駆動することにより、設定された時刻(通常は現在時刻)を表示する時刻表示部として機能するものとなっている。
詳述すると、この運針機構20は、秒車24、2番車25及び筒車26が互いに連動するように、中間車27、28を介して連結された歯車輪列29を有し、秒車24の回転軸には、秒針21の一端が取り付けられ、2番車25の回転軸には、分針22の一端が取り付けられ、また、筒車26の回転軸には、時針23の一端が取り付けられる。そして、秒車24には、駆動モータ30の駆動歯車30Aが噛み合い、この駆動モータ30の回転によって秒車24が回転駆動され、この回転が2番車25及び筒車26に伝達されて、秒針21、分針22及び時針23の各々が回転駆動され、これら針21〜 23によって時刻が表示されるようになっている。
なお、図3においては、説明の便宜上、秒車24、2番車25及び筒車26を離しているが、実際には、図1及び図2に示すように、これらは同軸上に配列されている。
【0016】
また、前記竜頭10は、図4に示すように、ムーブメント4の巻真31と連結され、この巻真31には、おしどり32が係合している。このおしどり32は、かんぬき33と係合し、巻真31の引き出し位置を決めると共に、スイッチレバー34の一端34Aと連結したものである。このスイッチレバー34は、地板100に回動軸34Rを支点にして回動自在に設けられ、巻真31の押し引きに応じておしどり32により回動させられ、巻真31の引き出し位置に応じて回動位置が位置決めされるものである。
【0017】
このスイッチレバー34の他端34Bには、接点部34Xが設けられ、この接点部34Xが、巻真1段目では回路基板に形成されたパターンP1と導通し、巻真2段目ではパターンP2と導通する。これらパターンP1、P2の導通/非導通は、後述する竜頭操作検出部58により検出され、この竜頭操作検出部58によって、竜頭10が0段引きの位置(最も時計ケース2側に押し込んだ位置(図1に示す位置))か、1段引きの位置か、2段引きの位置かが検出されるようになっている。
【0018】
さらに、前記巻真31には、つづみ車31Aが連結されており、このつづみ車31Aは、かんぬき33の作動によって巻真2段目では、時刻修正車101に噛み合うようになっている。これにより、巻真2段目では竜頭10の回転に応じて時刻修正車101が回転し、この時刻修正車101の回転によって分針22及び時針23が回転することにより、時刻が修正されるようになっている。
【0019】
また、ムーブメント4内には、巻真31の回転量を検出する回転検出器(ロータリーエンコーダ)110が設けられており、この回転検出器110には、図5に示すように、巻真31の周面に沿って略半円弧状に設けられた検出電極111Aと、検出電極111Aに向けて付勢された板ばね状のスイッチ電極112Aとからなる第1スイッチSW1が設けられている。この第1スイッチSW1は、スイッチ電極112Aが検出電極111Aに接触しているとき、オンとなるスイッチである。また、回転検出器110には、第1スイッチSW1とは別に、検出電極111Bとスイッチ電極112Bとからなる第2スイッチSW2が設けられている。この第2スイッチSW2も、前記第1スイッチSW1と同様に、スイッチ電極112Bが検出電極111Bに接触しているとき、オンとなるスイッチである。
【0020】
また、検出電極111A、111Bは、図6に示すようにそれぞれ、巻真31の中心Oを基準にして、約90度ずらして配設されている。したがって、竜頭1100が回転された際、その回転方向が時計方向である場合には、図7に示すように、第1スイッチSW1が第2スイッチSW2よりも先行してオン状態(High状態)となり、これとは逆に、反時計方向である場合には、第2スイッチSW2が第1スイッチSW1よりも先にオン状態(High状態)となる。
【0021】
前記各スイッチSW1、SW2のオンオフは、竜頭操作検出部58によって検出され、この竜頭操作検出部58は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2のどちらか先行してオンになったか否かを検出することにより、竜頭10の回転方向を検出し、かつ、各スイッチSW1、SW2がオンになった回数をカウントすることで、竜頭10の回転量を検出している。
【0022】
表示パネル5は、図2に示すように、前記ムーブメント4の時計正面側に配設されたもので、時計用文字盤6の表示部を形成するものである。また、この表示パネル5は、本実施形態ではアクティブマトリクス駆動の電気泳動表示パネルからなっており、後述するように円形状の表示面を有したものである。なお、この表示パネル5には、その中央に貫通孔5Aが形成されており、この貫通孔5Aから、前記ムーブメント4の秒車24、2番車25及び筒車26の各軸が突出し、この軸の先端に秒針21、分針22及び時針23が取り付けられている。
【0023】
また、この表示パネル5は、図8に示すように、電気泳動層35を挟んで対向配置された実装基板36と透明基板37とを備えている。実装基板36には、その内面(透明基板37側の面)に画素電極DAが配設され、透明基板37には、その内面(実装基板36側の面)に、ITO(Indium-Tin Oxide)蒸着等で形成された透明の共通電極DBが形成されている。これら各電極DA、DBには、図2に示すフレキシブルプリント基板7に設けられた表示駆動回路(図示せず)が接続されている。
【0024】
また、図8に示すように前記電気泳動層35は、複数のマイクロカプセル38から構成され、これらマイクロカプセル38には、電気泳動粒子39を含有してなる電気泳動分散液41が封入されている。この電気泳動分散液41は、例えば白色に着色された分散液(図示せず)中に、プラス極性に帯電した青色の電気泳動粒子39を分散させたもので、いわゆる1粒子系の電気泳動層を構成するものである。
【0025】
このような構成のもとに前記表示パネル5は、図9のブロック図に示すように、前記表示駆動回路9によって例えば共通電極DBが0V電位(アース電位)にされ、設定された画素電極DAにプラス電圧の駆動電圧が印加されてプラス電位とされると、該画素電極DAから共通電極DBに向かう電界が発生する。すると、電気泳動層35では、マイクロカプセル38内のプラスに帯電した電気泳動粒子(青色粒子)39が共通電極DB側に移動し、これに伴って白色の分散液が画素電極DA側に移動する。その結果、透明基板37側から視認されるマイクロカプセル38が青色を呈することにより、駆動電圧が印加された画素電極DAからなるパターン形状が青色で表示される。
【0026】
また、これとは逆に、表示駆動回路9によって共通電極DBがプラス電位とされ、設定された画素電極DAが0V電位に保持されると、プラスに帯電した電気泳動粒子(青色粒子)39が前記画素電極DA側に移動し、これに伴って白色の分散液が共通電極DB側に移動する。これにより、透明基板37側から視認されるマイクロカプセル38が白色を呈し、したがって駆動電圧が印加されない画素電極DAからなるパターン形状は白色となる。
【0027】
また、共通電極DBとセグメント電極DAとの間に電位差を生じない場合には、電気泳動粒子(青色粒子)39の移動が生じないため、画素電極DAによって形成されるパターンの表示色は変化せず、それ以前の状態がそのままに維持される。すなわち、表示のメモリ性が発揮される。
なお、本実施形態では、表示駆動回路9が昇圧回路を内蔵し、ボタン電池等の電源50から供給される電圧(例えば3Vや1.5V)を昇圧して+12Vの電圧を生成して、この+12Vの電圧、あるいは、0Vの電圧を駆動電圧としてセグメント電極DA及び共通電極DBに印加している。
【0028】
ここで、この表示パネル5は、多数の画素電極DAを有してアクティブマトリクス駆動をなす構成となっており、したがって、前記したように電圧を印加した画素電極DAに応じた各種のパターンを表示するようになっている。本実施形態では、図10(a)に示すようにその表示面(表示領域)の外周部に、時刻を表すための1〜12の数字(図10では簡略化して3、6、9、12のみを記載し、他の数字は省略している)、すなわち時刻を表すための文字部70を表示するようになっている。また、本実施形態では、この文字部70とは別に、表示パネル5の中央側に付属部71を表示するようになっている。この付属部71は、本実施形態では「日にち」と「曜日」からなる暦情報を表示するようになっている。
なお、図10(a)〜(d)では、見やすくするため、分針22及び時針23のみを記載し、秒針21を省略している。
【0029】
前記の図9は、腕時計1のブロック図である。
前記制御部8は、腕時計1全体を中枢的に制御するもので、CPU、ROM、RAM等を有し、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することによって腕時計1の各部を制御するように構成されたものである。すなわち、この制御部8は、電源50に接続されたもので、時計制御回路51と、メモリー(メモリ部)52と、本発明における第1の表示機能となる表示書換え回路53とを備えて構成されたものである。
【0030】
時計制御回路51は、振動子を発振させて例えば32kHzの基準クロック信号を出力する発振回路と、前記の基準クロック信号を例えば1Hzまで分周し、1Hzのクロック信号を出力する分周回路とを備え、さらに、前記駆動モータ30を制御するモータ駆動回路を備えたもので、駆動モータ30に駆動信号を供給することにより、前記ムーブメント4の運針機構20を駆動させ、秒針21、分針22及び時針23を回転駆動させるものである。
【0031】
メモリー52は、予め設定された表示(画像)パターン、例えば「1〜12」の時刻を表す文字部70のパターンや、「1〜31」の「日にち」を表す付属部71のパターン、さらには「Sun〜Sat」の「曜日」を表す付属部71のパターンを記憶し、前記表示書換え回路を53を介して表示駆動回路9に記憶したデータを送るものである。
【0032】
表示書換え回路53は、前記したように本発明における第1の表示機能となるもので、前記操作ボタン11aによって入力された設定に基づき、前記文字部70の表示位置、さらには前記付属部71の表示位置を、表示パネル5(時計用文字盤6)の周方向に角度を変えて移動させるものである。また、本実施形態では、後述するように前記文字部70及び付属部71の表示位置は共に、前記表示パネル5(時計用文字盤6)の周方向に、30度毎に変更させられるようになっている。
【0033】
すなわち、図10(a)に示したような標準の状態から、図10(b)に示したように文字部70及び付属部71の表示位置を時計回り方向に30度移動させ、あるいは図10(c)に示したように文字部70及び付属部71の表示位置を反時計回り方向に30度(時計回り方向に330度)移動させ、さらには、図10(d)に示したように文字部70及び付属部71の表示位置を反時計回り方向に90度(時計回り方向に270度)移動させることができるようになっているのである。
なお、付属部71については、文字部70と共に角度移動させることから、特に本実施形態では、前記文字部70の表示のセンターライン、すなわち時刻を表す数字の「12」と「6」とを結ぶ直線上を中心にして、前記付属部71を表示させるようになっている。
【0034】
ここで、前記制御部8には、ソフトウェア処理あるいはハードウェア(カウンタ等)により、前記分周回路から出力された所定周波数の信号を計数して暦(時刻を計時してもよい)を計時する計時手段が備えられている。そして、この計時手段で計数した暦のデータを表示駆動回路9に送ることにより、表示駆動回路9によって付属部71の表示を表示パネル5になさせるようになっている。
【0035】
表示駆動回路9は、前記文字部70を表示する表示機能72と、この表示機能72に備えられた前記付属部71を表示する付属表示機能(第2の表示機能)73とを有したもので、前記制御部8の表示書換え回路53から送られてきた信号(データ)を基に、文字部70及び付属部70の表示を表示パネル5になさせるように構成されたものである。すなわち、予めメモリー52に設定された表示(画像)パターンに対応するようにして、前記画素電極DAに選択的に電圧を印加し、青色のパターン形状を文字部70及び付属部71として表示させるものである。なお、前記付属部71を表示する付属表示機能(第2の表示機能)73には、前記付属部71の表示位置を前記文字部70の表示位置とともに、前記表示パネル5(時計用文字盤6)の周方向に、角度を変えて移動させる第3の表示機能が備えられている。
【0036】
前記操作ボタン11a、11bには、該操作ボタン11a、11bの操作を検出して制御部8に通知する操作検出部57が接続されており、前記竜頭10には、該竜頭10の押し込み操作及び回転操作を検出し、検出結果を制御部8に通知する竜頭操作検出部58が接続されている。
操作ボタン11aは、例えばこれを一回押圧すると、前記操作検出部57がこれを認識し、前記制御部8にデータとして信号を送る。すると、制御部8では、操作検出部57から信号が送られてくると、例えばその一回ごとに、前記文字部70及び付属部71の表示位置を、時計回り方向に30度変えて移動させるように表示書換え回路53を制御する。したがって、例えば図10(a)に示した標準の状態から、図10(b)に示した状態に変更したい場合には、操作ボタン11aを1回押圧すればよく、また、図10(d)に示した状態に変更したい場合には、操作ボタン11aを9回押圧すればよく、さらに、図10(c)に示した状態に変更したい場合には、操作ボタン11aを11回押圧すればよいことになる。
なお、移動させる方向を、時計回り方向でなく、反時計回り方向となるように設定しておいてもよく、さらには、移動させる方向を操作ボタン11aまたは操作ボタン11bの操作によって切り換えられるように設定しておいてもよい。
【0037】
また、竜頭10については、例えばこれが0段引きの位置(最も時計ケース2側に押し込んだ位置(図1に示す位置))にあると、該竜頭10が空回りするようになっている。そして、これが1段引きの位置にあると、その位置での竜頭10の回転量が竜頭操作検出部58を介して制御部8に通知され、制御部8が、この回転量に応じて付属部71の表示となる「暦」を修正する。なお、竜頭10の回転量検出は、前記のような回転検出器110を用いる方法に代えて、竜頭10の回転を光学的或いは電気的に検知する方法(無接点方式、接点方式)を用いてもよい。
【0038】
また、竜頭10が2段引きの位置では、竜頭10の回転操作によってムーブメント4の運針機構20の歯車輪列29が駆動され、回転量に応じて時刻が修正される。この場合、竜頭10により歯車輪列29を直接駆動する手動方式に代えて、制御部8が、竜頭操作検出部58から竜頭10の回転量を取得し、この回転量に対応する分だけモータ駆動回路54により駆動モータ30を回転駆動させる電子修正方式を用いてもよい。
【0039】
また、この腕時計1には、秒針21、分針22及び時針23の位置を検出する針位置検出部59が備えられており、この針位置検出部59により、各アナログ指針21〜23の回転位置が制御部8に通知されるようになっている。ここで、この針位置検出部59の回転量検出は、回転検出器(ロータリーエンコーダ)110を用いる方法(相対方式、絶対方式(時針23の回転を86400又は43200分割、時針23を24分割又は12分割、分針22を60分割、秒針21を60分割して回転位置を得る)、あるいは、アナログ指針21〜23の回転位置を光学的あるいは電気的に検知する方法(無接点方式、接点方式)が用いられる。
【0040】
なお、針位置検出部59は、回転検出器110等を用いる構成に限らず、アナログ指針によって表示される時刻と同一の時刻を、内部カウンタを用いて計時(計数)し、この内部カウンタの値からアナログ指針の位置を検出する構成を採用してもよい。より具体的には、内部カウンタの時刻をアナログ指針によって表示される時刻と同一に設定するため、例えば竜頭1段目の状態で操作ボタン11bの操作(電子時刻修正操作)により、アナログ指針の位置を初期位置(例えば24時)及び内部カウンタの値を前記初期位置に対応する初期値に設定する。その後、例えば竜頭2段目の状態で操作ボタン11の操作(電子時刻修正操作)により、アナログ指針の位置を現在時刻の位置に設定し、この設定操作に従って内部カウンタの値をカウントアップ又はカウントダウンして現在時刻に対応する値にする。そして、竜頭0段目とされた時点から、内部カウンタのカウントアップと同期してアナログ指針を進めることにより、内部カウンタの時刻がアナログ指針の表示時刻と同一にすることができる。この構成によれば、回転検出器110が不要となり、その分、部品点数の削減や腕時計1の小型化、薄型化等を図ることができる。
【0041】
このような構成の腕時計1にあっては、図10(a)に示した標準の状態では、通常の腕時計と同様に機能させることができる。また、自動車を運転しているときや、サービス業に従事しているときなど、特に姿勢が固定されていて腕の位置(角度)を自由にできない場合には、予め、操作ボタンン11aを操作して、文字部70及び付属部71の表示位置を、前記した固定された姿勢での腕の位置(角度)においてより視認し易い角度に移動させておく。そして、その状態で竜頭10を調整し、アナログ指針21〜23を文字部70による時刻表示に対応した現在時刻に修正する。例えば、図10(a)に示した標準の状態から、図10(b)に示したように時計回り方向に30度移動させた場合には、アナログ指針である分針22及び時針23を1時間進めることにより、文字部70によって示される時刻表示を現在時刻に修正する。
【0042】
その際、分針22と時針23との相対的位置関係は、本来の位置関係とはずれてしまう。例えば、本来12時では分針22と時針23とが「12」を示す位置で重なり合うが、図10(b)に示した状態では、「12」を示す位置で重なり合うことはなく、「11」(図示せず)を示す位置で重なり合うようになる。しかし、腕時計1の利用者は、自らその設定を変更していることから、このようなずれは予め認識していることであり、特に支障は生じない。
【0043】
したがって、このような腕時計1によれば、その時計用文字盤6に表示書換え回路53(第1の表示機能)が設けられており、文字部70及び付属部71の表示位置を所望の角度変えて移動させることができるようになっているので、腕の位置(角度)を変えることなく、利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部70及び付属部71の表示位置を角度調整することができる。よって、視認性についての自由度が高まることにより、使い勝手が極めて良好なものとなる。
【0044】
図11は、本発明における時計の他の実施形態としての、腕時計60を示す図である。この腕時計が先に示した腕時計1と異なるところは、前記した表示書換え回路53(第1の表示機能)によって文字部70の表示位置を角度調整することにより、時差がある海外での現地時間を表示できるようにした点である。
【0045】
すなわち、この実施形態の腕時計60では、図9のブロック図に示したように、制御部8に表示書換え回路53にが設けられ、さらにこの制御部8にメモリー52が設けられている。メモリー52には、前記した文字部70や付属部71についての表示(画像)パターンとは別に、時差がある海外の主な都市名(あるいは国名)と、その都市(国)の時差とが予めデータとして記憶されている。そして、制御部8は、例えば操作ボタン11bによって「World Watch」(世界時間)に設定され、さらに図11に示すように都市名が選択されると、メモリー52に記憶した時差に基づき、表示書換え回路53(第1の表示機能)に文字部70の表示位置を所定角度変更させるよう、制御するようになっている。
【0046】
なお、操作ボタン11bによって「World Watch」(世界時間)に設定されると、表示書換え回路53は、付属部71の表示を、「日にち」及び「曜日」から、メモリー52に記憶した都市名(あるいは国名)に切り換えるよう、表示駆動回路9に信号を送るようになっている。
また、本実施形態では、付属部71の表示位置は、文字部70の表示位置とともに角度変更せず、標準状態におけるセンターラインを中心にした位置に固定されているものとする。
【0047】
このような構成の腕時計60により、所望の都市の現地時間を見たい場合には、図13のフローチャートに示すように、まず、竜頭10を操作してを現状の時刻表示にする(ステップ1:ST1と記す。以下同様)。続いて、腕時計60の文字部70の表示状態を、図1に示したような標準の状態に戻す(ステップ2)。なお、一回の操作で標準の状態に戻らない場合には、標準の状態に戻るまで、操作を繰り返し行う。
【0048】
そして、標準状態にあることを確認したら、操作ボタン11bを押圧して「標準状態」(日本においては日本時間)から「World Watch」(世界時間)に設定し直す(ステップ3)。すると、前記したように付属部71では、予めメモリー52に記憶された都市名(国名)のうちの、設定された順番における最初の表示を行う(ステップ4)。
【0049】
腕時計60の利用者は、付属部71として表示された都市名(国名)を見て、希望する都市名(国名)と異なる場合には、例えば操作ボタン11aを押圧し続けることで、選択した都市名(国名)を順次切り換えていく(ステップ5)。そして、所望する都市名(国名)が表示されたら、例えば操作ボタン11aへの押圧を解除することにより、表示されている都市名(国名)を選択したことを決定する(ステップ6)。すると、前記制御部8は、メモリー52に記憶した時差に基づき、表示書換え回路53(第1の表示機能)に文字部70の表示位置を所定角度変更させるよう、制御する(ステップ7)。なお、このとき、文字部70の色調や濃淡を変えることにより、AM(午前)とPM(午後)とが容易に見分けられるよう、表示させるようにしてもよい。
その後、必要に応じて竜頭10を操作し、分針22、さらには時針23を動かすことで、より正確な海外時間に合わせる。
【0050】
このように、操作ボタン11a、11bによって所望する都市名(国名)を設定することにより、利用者は通常の時計と同様に、角度変更された文字部70にアナログ指針21〜23を対応させることで、設定した都市(国)の現地時間を容易にかつ瞬時に視認することが可能になる。また、アナログ指針(分針22、時針23)を動かす必要がある場合にも、先に文字部70を角度変更しているので、これらアナログ指針の移動を最小限に抑えることができる。
【0051】
したがって、この腕時計60によれば、前述したように利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部70及び付属部71の表示位置を角度調整することができ、これによって視認性についての自由度が高まり、使い勝手が極めて良好なものとなるのに加え、時差のある海外での現地時間の表示も可能なものとなる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では表示パネル5として電気泳動表示パネルを採用したが、これ以外にも、液晶表示パネルや有機EL表示パネル、さらにはツイストボール方式の表示パネル等を採用することもできる。
また、前記電気泳動表示パネルでは、1種類の電気泳動粒子39を分散させた電気泳動分散液41を用いて電気泳動層35を構成したが、例えば黒色粒子と白色粒子とを分散させてなる2粒子系の電気泳動分散液を用いて、電気泳動層35を構成するようにしてもよい。
【0053】
また、先の実施形態では、表示書換え回路53(第1の表示機能)によって文字部70と共に、付属部71の表示位置も変更するようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、後の実施形態のように、文字部70の表示位置のみを変更するように構成してもよい。また、後の実施形態について、文字部70と共に、付属部71の表示位置も変更するように構成してもよい。
さらに、前記実施形態の時計では、指針部としてアナログ指針21〜23を採用しているが、これに代えてデジタル指針を採用することもできる。
また、前記実施形態では、本発明の時計を腕時計に適用した例を示したが、置時計や壁掛時計、柱時計、懐中時計などにも適用できるのはもちろんである。
【0054】
また、前記実施形態では、時刻を表すための文字部70として、「1〜12」のアラビア数字を用いているが、他に例えば、「I〜XII」のローマ数字を用いることもできる。
また、前記実施形態では、付属部71の表示として、「日にち」及び「曜日」からなる暦や、「都市名(国名)」を表示する例について述べたが、本発明はこれに限定されることなく、年、月等の他の暦情報、アナログ指針21〜23が指し示す目盛り(時字を含む)、タイマー機能を具備する場合のタイマー設定値やカウント値、ストップウォッチ機能を具備する場合のスプリット値と計時値(値は数字や文字の場合と、針の形状を絵で描画する場合の両方を含む)、アラーム機能を具備する場合のアラーム設定時刻、仮想24時針、月齢表示、バッテリー残量、方位、高度、水深、位置、温度、湿度、気圧、背景(キャラクタ表示も含む)や模様等の画像を表示するようにしてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、前記腕時計が一次電池であるボタン電池等を電源とし、その電力によって駆動させる場合について例示したが、これに限定されることなく、二次電池又は商用電源で駆動可能に構成することもできる。また、二次電池を使用する場合には、発電装置を設け、この発電装置の発電電力により二次電池を充電可能に構成してもよい。この発電装置には、例えば、時計内に回転錘を設け、この回転錘を、ユーザの腕振り等の運動エネルギーで旋回させて発電する自動巻式発電装置、前記回転錘を竜頭等で巻上可能なゼンマイの力で旋回させて発電するゼンマイ式発電装置、ある部位と他の部位との温度差(熱エネルギー)で発電する熱発電装置、又は、ソーラ発電装置等の発電装置を広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る腕時計の正面図である。
【図2】腕時計の側断面図である。
【図3】腕時計の運針機構を示す図である。
【図4】腕時計のムーブメントの竜頭に関わる構成を示す図である。
【図5】竜頭の回転検出器の説明に供する図である。
【図6】竜頭の回転検出器の説明に供する図である。
【図7】回転検出器の説明に供する図である。
【図8】腕時計の表示パネルの構成を説明するための断面図である。
【図9】腕時計の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】(a)〜(d)は表示位置変更の動作を説明するための図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る腕時計の説明図である。
【図12】図11に示した腕時計の変更処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1、60…腕時計、2…時計ケース、3…バンド、4…ムーブメント、5…表示パネル(電気泳動表示パネル)、6…時計用文字盤、7…フレキシブル基板、8…制御部、表示駆動回路、9…表示駆動回路、10…竜頭、11a、11b…操作ボタン、20……運針機構、21…秒針(指針部)、22…分針(指針部)、23…時針(指針部)、35…電気泳動層、36…実装基板、37…透明基板、38…マイクロカプセル、50…電源、51…時計制御回路、52…メモリー、57…操作検出部、58…竜頭操作検出部、59……針位置検出部、70…文字部、71…付属部、DA…画素電極、DB…共通電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用文字盤とこの時計用文字盤を備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル表示式(液晶表示式)の表示パネル上でアナログ指針を運針させる複合表示式の腕時計が知られている。この種の腕時計には、表示パネルにキャラクタ又は時字等を表示し、この表示を変化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ベゼル(外周に目盛を持たせ回転させることにより設定を変更)や、文字盤の一部を回転部材にすることにより、指針の背景となる文字盤の表示位置を可変にできる時計も知られている(例えば、特許文献2、3、4参照)。
【特許文献1】特開昭63− 66486号公報
【特許文献2】特表2005−521890号公報
【特許文献3】特開2004−53315号公報
【特許文献4】特開平9−230061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来の複合表示式の腕時計では、指針の背景となる文字盤の表示位置が一定であることから、利用者が視認し易い角度でこれを見ようとした場合に、腕の位置(角度)等を適宜に変える必要がある。ところが、自動車を運転しているときや、サービス業に従事しているときなどでは、姿勢が固定されていて腕の位置(角度)を自由にできないことがあり、そのような利用形態にある人達にとっては、より視認し易い時計の提供が望まれている。
また、前記の、指針の背景となる文字盤の表示位置を可変にした時計では、機構が複雑になったり、表示が2重になるといった課題があり、実用には難があった。
また、文字盤の表示位置を簡易的にシール等で表示することも考えられるが、剥離してしまったり、シールにより針が見にくくなるといった課題があり、やはり実用には難があった。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、利用者の視認性の自由度を高めるなど、新規な機能を付加した複合表示式の時計と、これの構成部品となる時計用文字盤とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明の時計用文字盤は、時刻を表すための文字部の表示機能を有する表示パネルを備えた時計用文字盤であって、前記表示機能は、前記表示パネルにおける前記文字部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能を有することを特徴とする。
この時計用文字盤によれば、文字部の表示位置を、時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能が設けられているので、文字部の表示位置を所望の角度変えて移動させることにより、例えば腕の位置(角度)を変えることなく、利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部の表示位置を角度調整することが可能になる。
【0006】
また、前記時計用文字盤においては、前記表示機能に、前記文字部とは別の付属部を表示する第2の表示機能が備えられているのが好ましい。
このようにすれば、例えば「日にち」や「曜日」などの暦情報を付属部として表示することが可能になる。
【0007】
なお、この時計用文字盤においては、前記第2の表示機能には、前記付属部の表示位置を前記文字部の表示位置の移動とともに前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第3の表示機能を有するのが好ましい。
このようにすれば、暦情報などの付属部についても、文字部と同様に視認し易い角度に調整することが可能になる。
【0008】
また、前記時計用文字盤においては、前記第1の表示機能及び前記第3の表示機能は、前記文字部又は前記付属部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に、30度毎に変更できるように構成されているのが好ましい。
このように、時刻を表す「1〜12」等の文字(数字)で表される文字部の表示位置を、30度毎に変更させることにより、例えば腕時計のベルトで位置決めされた表示パネルを種々の角度で見ることができるようになり、したがって固定された姿勢でより視認し易く調整することが可能になる。また、30度毎に変更させることにより、腕時計の一般的な使用形態から1時間ずつずれた表示にすることができ、したがって海外(外国)の現地時間を表示させようとした場合に、時間単位で異なる海外時間を容易に表示することが可能になる。
【0009】
また、前記時計用文字盤においては、前記第1の表示機能及び第2の表示機能は、予め設定したデータに基づき、前記文字部又は前記付属部の表示位置を所定角度変更して表示する機能を有するのが好ましい。
このようにすれば、例えば日本時間と海外(外国)の現地時間との間の時差を予めデータとして入力し、メモリ部に記憶させておくことにより、記憶させた時差に対応させて前記文字部の表示位置を所定角度変更させることができる。したがって、海外(外国)の現地時間を容易にかつ瞬時に表示させることが可能になる。
【0010】
また、前記時計用文字盤においては、前記表示パネルが、電気泳動表示パネルであるのが好ましい。
電気泳動表示パネルを構成する電気泳動素子は、表示の保持性(メモリ性)を有していることから、時刻を表すための文字部を一旦表示した後には、表示パネルへの電圧印加を停止しても表示が電圧印加時の状態に保持される。したがって、消費電力の低減化が可能になる。
【0011】
本発明の時計は、時刻を表すための文字部を表示する表示パネルを備えた時計用文字盤と、指針部とを有してなり、前記時計用文字盤が、前記の時計用文字盤からなることを特徴としている。
この時計によれば、前述したように、例えば腕の位置(角度)を変えることなく、利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部の表示位置を角度調整することが可能な時計用文字盤を有してなるので、視認性についての自由度が高まることにより、使い勝手が極めて良好になる。また、時差のある海外の現地時間の表示なども可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明における時計の一実施形態としての腕時計1の正面図であり、図2は、この腕時計1の要部側断面図である。この腕時計1は、図1に示すように時計ケース2と、この時計ケース2に連結された一対のバンド3とを備えて構成されたものである。時計ケース2は、ステンレス等の金属材又はプラスチック樹脂等の樹脂材で形成されたもので、その内部には、図2に示すように、ムーブメント4と表示パネル5とからなる時計用文字盤10が収容されている。
【0013】
なお、時計ケース2内には、時計用文字盤6の表示パネル5側(時計表側)に、樹脂製又は金属製の圧入リング(図示せず)を介して、ガラス製又は樹脂製の透明カバー(図示せず)が圧入固定されている。また、ムーブメント4側(時計裏側)には、パッキン(図示せず)を介して裏蓋(図示せず)が螺合され、この裏蓋及び透明カバーによって時計ケース2の内部の密封性が確保されている。
【0014】
また、前記時計ケース2には、図1に示すように、操作子としての竜頭10と二つの操作ボタン11a、11bとが設けられている。竜頭10は、後述するようにムーブメント4の巻真31に連結され、この巻真31と一体となって多段階(本例では2段階)で押し引き自在、かつ、回転自在に設けられたものである。
【0015】
ムーブメント4は、図3に示すように、秒針21、分針22及び時針23からなるアナログ指針が連結された運針機構20を備えたもので、この運針機構20が前記アナログ指針21〜23を回転駆動することにより、設定された時刻(通常は現在時刻)を表示する時刻表示部として機能するものとなっている。
詳述すると、この運針機構20は、秒車24、2番車25及び筒車26が互いに連動するように、中間車27、28を介して連結された歯車輪列29を有し、秒車24の回転軸には、秒針21の一端が取り付けられ、2番車25の回転軸には、分針22の一端が取り付けられ、また、筒車26の回転軸には、時針23の一端が取り付けられる。そして、秒車24には、駆動モータ30の駆動歯車30Aが噛み合い、この駆動モータ30の回転によって秒車24が回転駆動され、この回転が2番車25及び筒車26に伝達されて、秒針21、分針22及び時針23の各々が回転駆動され、これら針21〜 23によって時刻が表示されるようになっている。
なお、図3においては、説明の便宜上、秒車24、2番車25及び筒車26を離しているが、実際には、図1及び図2に示すように、これらは同軸上に配列されている。
【0016】
また、前記竜頭10は、図4に示すように、ムーブメント4の巻真31と連結され、この巻真31には、おしどり32が係合している。このおしどり32は、かんぬき33と係合し、巻真31の引き出し位置を決めると共に、スイッチレバー34の一端34Aと連結したものである。このスイッチレバー34は、地板100に回動軸34Rを支点にして回動自在に設けられ、巻真31の押し引きに応じておしどり32により回動させられ、巻真31の引き出し位置に応じて回動位置が位置決めされるものである。
【0017】
このスイッチレバー34の他端34Bには、接点部34Xが設けられ、この接点部34Xが、巻真1段目では回路基板に形成されたパターンP1と導通し、巻真2段目ではパターンP2と導通する。これらパターンP1、P2の導通/非導通は、後述する竜頭操作検出部58により検出され、この竜頭操作検出部58によって、竜頭10が0段引きの位置(最も時計ケース2側に押し込んだ位置(図1に示す位置))か、1段引きの位置か、2段引きの位置かが検出されるようになっている。
【0018】
さらに、前記巻真31には、つづみ車31Aが連結されており、このつづみ車31Aは、かんぬき33の作動によって巻真2段目では、時刻修正車101に噛み合うようになっている。これにより、巻真2段目では竜頭10の回転に応じて時刻修正車101が回転し、この時刻修正車101の回転によって分針22及び時針23が回転することにより、時刻が修正されるようになっている。
【0019】
また、ムーブメント4内には、巻真31の回転量を検出する回転検出器(ロータリーエンコーダ)110が設けられており、この回転検出器110には、図5に示すように、巻真31の周面に沿って略半円弧状に設けられた検出電極111Aと、検出電極111Aに向けて付勢された板ばね状のスイッチ電極112Aとからなる第1スイッチSW1が設けられている。この第1スイッチSW1は、スイッチ電極112Aが検出電極111Aに接触しているとき、オンとなるスイッチである。また、回転検出器110には、第1スイッチSW1とは別に、検出電極111Bとスイッチ電極112Bとからなる第2スイッチSW2が設けられている。この第2スイッチSW2も、前記第1スイッチSW1と同様に、スイッチ電極112Bが検出電極111Bに接触しているとき、オンとなるスイッチである。
【0020】
また、検出電極111A、111Bは、図6に示すようにそれぞれ、巻真31の中心Oを基準にして、約90度ずらして配設されている。したがって、竜頭1100が回転された際、その回転方向が時計方向である場合には、図7に示すように、第1スイッチSW1が第2スイッチSW2よりも先行してオン状態(High状態)となり、これとは逆に、反時計方向である場合には、第2スイッチSW2が第1スイッチSW1よりも先にオン状態(High状態)となる。
【0021】
前記各スイッチSW1、SW2のオンオフは、竜頭操作検出部58によって検出され、この竜頭操作検出部58は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2のどちらか先行してオンになったか否かを検出することにより、竜頭10の回転方向を検出し、かつ、各スイッチSW1、SW2がオンになった回数をカウントすることで、竜頭10の回転量を検出している。
【0022】
表示パネル5は、図2に示すように、前記ムーブメント4の時計正面側に配設されたもので、時計用文字盤6の表示部を形成するものである。また、この表示パネル5は、本実施形態ではアクティブマトリクス駆動の電気泳動表示パネルからなっており、後述するように円形状の表示面を有したものである。なお、この表示パネル5には、その中央に貫通孔5Aが形成されており、この貫通孔5Aから、前記ムーブメント4の秒車24、2番車25及び筒車26の各軸が突出し、この軸の先端に秒針21、分針22及び時針23が取り付けられている。
【0023】
また、この表示パネル5は、図8に示すように、電気泳動層35を挟んで対向配置された実装基板36と透明基板37とを備えている。実装基板36には、その内面(透明基板37側の面)に画素電極DAが配設され、透明基板37には、その内面(実装基板36側の面)に、ITO(Indium-Tin Oxide)蒸着等で形成された透明の共通電極DBが形成されている。これら各電極DA、DBには、図2に示すフレキシブルプリント基板7に設けられた表示駆動回路(図示せず)が接続されている。
【0024】
また、図8に示すように前記電気泳動層35は、複数のマイクロカプセル38から構成され、これらマイクロカプセル38には、電気泳動粒子39を含有してなる電気泳動分散液41が封入されている。この電気泳動分散液41は、例えば白色に着色された分散液(図示せず)中に、プラス極性に帯電した青色の電気泳動粒子39を分散させたもので、いわゆる1粒子系の電気泳動層を構成するものである。
【0025】
このような構成のもとに前記表示パネル5は、図9のブロック図に示すように、前記表示駆動回路9によって例えば共通電極DBが0V電位(アース電位)にされ、設定された画素電極DAにプラス電圧の駆動電圧が印加されてプラス電位とされると、該画素電極DAから共通電極DBに向かう電界が発生する。すると、電気泳動層35では、マイクロカプセル38内のプラスに帯電した電気泳動粒子(青色粒子)39が共通電極DB側に移動し、これに伴って白色の分散液が画素電極DA側に移動する。その結果、透明基板37側から視認されるマイクロカプセル38が青色を呈することにより、駆動電圧が印加された画素電極DAからなるパターン形状が青色で表示される。
【0026】
また、これとは逆に、表示駆動回路9によって共通電極DBがプラス電位とされ、設定された画素電極DAが0V電位に保持されると、プラスに帯電した電気泳動粒子(青色粒子)39が前記画素電極DA側に移動し、これに伴って白色の分散液が共通電極DB側に移動する。これにより、透明基板37側から視認されるマイクロカプセル38が白色を呈し、したがって駆動電圧が印加されない画素電極DAからなるパターン形状は白色となる。
【0027】
また、共通電極DBとセグメント電極DAとの間に電位差を生じない場合には、電気泳動粒子(青色粒子)39の移動が生じないため、画素電極DAによって形成されるパターンの表示色は変化せず、それ以前の状態がそのままに維持される。すなわち、表示のメモリ性が発揮される。
なお、本実施形態では、表示駆動回路9が昇圧回路を内蔵し、ボタン電池等の電源50から供給される電圧(例えば3Vや1.5V)を昇圧して+12Vの電圧を生成して、この+12Vの電圧、あるいは、0Vの電圧を駆動電圧としてセグメント電極DA及び共通電極DBに印加している。
【0028】
ここで、この表示パネル5は、多数の画素電極DAを有してアクティブマトリクス駆動をなす構成となっており、したがって、前記したように電圧を印加した画素電極DAに応じた各種のパターンを表示するようになっている。本実施形態では、図10(a)に示すようにその表示面(表示領域)の外周部に、時刻を表すための1〜12の数字(図10では簡略化して3、6、9、12のみを記載し、他の数字は省略している)、すなわち時刻を表すための文字部70を表示するようになっている。また、本実施形態では、この文字部70とは別に、表示パネル5の中央側に付属部71を表示するようになっている。この付属部71は、本実施形態では「日にち」と「曜日」からなる暦情報を表示するようになっている。
なお、図10(a)〜(d)では、見やすくするため、分針22及び時針23のみを記載し、秒針21を省略している。
【0029】
前記の図9は、腕時計1のブロック図である。
前記制御部8は、腕時計1全体を中枢的に制御するもので、CPU、ROM、RAM等を有し、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することによって腕時計1の各部を制御するように構成されたものである。すなわち、この制御部8は、電源50に接続されたもので、時計制御回路51と、メモリー(メモリ部)52と、本発明における第1の表示機能となる表示書換え回路53とを備えて構成されたものである。
【0030】
時計制御回路51は、振動子を発振させて例えば32kHzの基準クロック信号を出力する発振回路と、前記の基準クロック信号を例えば1Hzまで分周し、1Hzのクロック信号を出力する分周回路とを備え、さらに、前記駆動モータ30を制御するモータ駆動回路を備えたもので、駆動モータ30に駆動信号を供給することにより、前記ムーブメント4の運針機構20を駆動させ、秒針21、分針22及び時針23を回転駆動させるものである。
【0031】
メモリー52は、予め設定された表示(画像)パターン、例えば「1〜12」の時刻を表す文字部70のパターンや、「1〜31」の「日にち」を表す付属部71のパターン、さらには「Sun〜Sat」の「曜日」を表す付属部71のパターンを記憶し、前記表示書換え回路を53を介して表示駆動回路9に記憶したデータを送るものである。
【0032】
表示書換え回路53は、前記したように本発明における第1の表示機能となるもので、前記操作ボタン11aによって入力された設定に基づき、前記文字部70の表示位置、さらには前記付属部71の表示位置を、表示パネル5(時計用文字盤6)の周方向に角度を変えて移動させるものである。また、本実施形態では、後述するように前記文字部70及び付属部71の表示位置は共に、前記表示パネル5(時計用文字盤6)の周方向に、30度毎に変更させられるようになっている。
【0033】
すなわち、図10(a)に示したような標準の状態から、図10(b)に示したように文字部70及び付属部71の表示位置を時計回り方向に30度移動させ、あるいは図10(c)に示したように文字部70及び付属部71の表示位置を反時計回り方向に30度(時計回り方向に330度)移動させ、さらには、図10(d)に示したように文字部70及び付属部71の表示位置を反時計回り方向に90度(時計回り方向に270度)移動させることができるようになっているのである。
なお、付属部71については、文字部70と共に角度移動させることから、特に本実施形態では、前記文字部70の表示のセンターライン、すなわち時刻を表す数字の「12」と「6」とを結ぶ直線上を中心にして、前記付属部71を表示させるようになっている。
【0034】
ここで、前記制御部8には、ソフトウェア処理あるいはハードウェア(カウンタ等)により、前記分周回路から出力された所定周波数の信号を計数して暦(時刻を計時してもよい)を計時する計時手段が備えられている。そして、この計時手段で計数した暦のデータを表示駆動回路9に送ることにより、表示駆動回路9によって付属部71の表示を表示パネル5になさせるようになっている。
【0035】
表示駆動回路9は、前記文字部70を表示する表示機能72と、この表示機能72に備えられた前記付属部71を表示する付属表示機能(第2の表示機能)73とを有したもので、前記制御部8の表示書換え回路53から送られてきた信号(データ)を基に、文字部70及び付属部70の表示を表示パネル5になさせるように構成されたものである。すなわち、予めメモリー52に設定された表示(画像)パターンに対応するようにして、前記画素電極DAに選択的に電圧を印加し、青色のパターン形状を文字部70及び付属部71として表示させるものである。なお、前記付属部71を表示する付属表示機能(第2の表示機能)73には、前記付属部71の表示位置を前記文字部70の表示位置とともに、前記表示パネル5(時計用文字盤6)の周方向に、角度を変えて移動させる第3の表示機能が備えられている。
【0036】
前記操作ボタン11a、11bには、該操作ボタン11a、11bの操作を検出して制御部8に通知する操作検出部57が接続されており、前記竜頭10には、該竜頭10の押し込み操作及び回転操作を検出し、検出結果を制御部8に通知する竜頭操作検出部58が接続されている。
操作ボタン11aは、例えばこれを一回押圧すると、前記操作検出部57がこれを認識し、前記制御部8にデータとして信号を送る。すると、制御部8では、操作検出部57から信号が送られてくると、例えばその一回ごとに、前記文字部70及び付属部71の表示位置を、時計回り方向に30度変えて移動させるように表示書換え回路53を制御する。したがって、例えば図10(a)に示した標準の状態から、図10(b)に示した状態に変更したい場合には、操作ボタン11aを1回押圧すればよく、また、図10(d)に示した状態に変更したい場合には、操作ボタン11aを9回押圧すればよく、さらに、図10(c)に示した状態に変更したい場合には、操作ボタン11aを11回押圧すればよいことになる。
なお、移動させる方向を、時計回り方向でなく、反時計回り方向となるように設定しておいてもよく、さらには、移動させる方向を操作ボタン11aまたは操作ボタン11bの操作によって切り換えられるように設定しておいてもよい。
【0037】
また、竜頭10については、例えばこれが0段引きの位置(最も時計ケース2側に押し込んだ位置(図1に示す位置))にあると、該竜頭10が空回りするようになっている。そして、これが1段引きの位置にあると、その位置での竜頭10の回転量が竜頭操作検出部58を介して制御部8に通知され、制御部8が、この回転量に応じて付属部71の表示となる「暦」を修正する。なお、竜頭10の回転量検出は、前記のような回転検出器110を用いる方法に代えて、竜頭10の回転を光学的或いは電気的に検知する方法(無接点方式、接点方式)を用いてもよい。
【0038】
また、竜頭10が2段引きの位置では、竜頭10の回転操作によってムーブメント4の運針機構20の歯車輪列29が駆動され、回転量に応じて時刻が修正される。この場合、竜頭10により歯車輪列29を直接駆動する手動方式に代えて、制御部8が、竜頭操作検出部58から竜頭10の回転量を取得し、この回転量に対応する分だけモータ駆動回路54により駆動モータ30を回転駆動させる電子修正方式を用いてもよい。
【0039】
また、この腕時計1には、秒針21、分針22及び時針23の位置を検出する針位置検出部59が備えられており、この針位置検出部59により、各アナログ指針21〜23の回転位置が制御部8に通知されるようになっている。ここで、この針位置検出部59の回転量検出は、回転検出器(ロータリーエンコーダ)110を用いる方法(相対方式、絶対方式(時針23の回転を86400又は43200分割、時針23を24分割又は12分割、分針22を60分割、秒針21を60分割して回転位置を得る)、あるいは、アナログ指針21〜23の回転位置を光学的あるいは電気的に検知する方法(無接点方式、接点方式)が用いられる。
【0040】
なお、針位置検出部59は、回転検出器110等を用いる構成に限らず、アナログ指針によって表示される時刻と同一の時刻を、内部カウンタを用いて計時(計数)し、この内部カウンタの値からアナログ指針の位置を検出する構成を採用してもよい。より具体的には、内部カウンタの時刻をアナログ指針によって表示される時刻と同一に設定するため、例えば竜頭1段目の状態で操作ボタン11bの操作(電子時刻修正操作)により、アナログ指針の位置を初期位置(例えば24時)及び内部カウンタの値を前記初期位置に対応する初期値に設定する。その後、例えば竜頭2段目の状態で操作ボタン11の操作(電子時刻修正操作)により、アナログ指針の位置を現在時刻の位置に設定し、この設定操作に従って内部カウンタの値をカウントアップ又はカウントダウンして現在時刻に対応する値にする。そして、竜頭0段目とされた時点から、内部カウンタのカウントアップと同期してアナログ指針を進めることにより、内部カウンタの時刻がアナログ指針の表示時刻と同一にすることができる。この構成によれば、回転検出器110が不要となり、その分、部品点数の削減や腕時計1の小型化、薄型化等を図ることができる。
【0041】
このような構成の腕時計1にあっては、図10(a)に示した標準の状態では、通常の腕時計と同様に機能させることができる。また、自動車を運転しているときや、サービス業に従事しているときなど、特に姿勢が固定されていて腕の位置(角度)を自由にできない場合には、予め、操作ボタンン11aを操作して、文字部70及び付属部71の表示位置を、前記した固定された姿勢での腕の位置(角度)においてより視認し易い角度に移動させておく。そして、その状態で竜頭10を調整し、アナログ指針21〜23を文字部70による時刻表示に対応した現在時刻に修正する。例えば、図10(a)に示した標準の状態から、図10(b)に示したように時計回り方向に30度移動させた場合には、アナログ指針である分針22及び時針23を1時間進めることにより、文字部70によって示される時刻表示を現在時刻に修正する。
【0042】
その際、分針22と時針23との相対的位置関係は、本来の位置関係とはずれてしまう。例えば、本来12時では分針22と時針23とが「12」を示す位置で重なり合うが、図10(b)に示した状態では、「12」を示す位置で重なり合うことはなく、「11」(図示せず)を示す位置で重なり合うようになる。しかし、腕時計1の利用者は、自らその設定を変更していることから、このようなずれは予め認識していることであり、特に支障は生じない。
【0043】
したがって、このような腕時計1によれば、その時計用文字盤6に表示書換え回路53(第1の表示機能)が設けられており、文字部70及び付属部71の表示位置を所望の角度変えて移動させることができるようになっているので、腕の位置(角度)を変えることなく、利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部70及び付属部71の表示位置を角度調整することができる。よって、視認性についての自由度が高まることにより、使い勝手が極めて良好なものとなる。
【0044】
図11は、本発明における時計の他の実施形態としての、腕時計60を示す図である。この腕時計が先に示した腕時計1と異なるところは、前記した表示書換え回路53(第1の表示機能)によって文字部70の表示位置を角度調整することにより、時差がある海外での現地時間を表示できるようにした点である。
【0045】
すなわち、この実施形態の腕時計60では、図9のブロック図に示したように、制御部8に表示書換え回路53にが設けられ、さらにこの制御部8にメモリー52が設けられている。メモリー52には、前記した文字部70や付属部71についての表示(画像)パターンとは別に、時差がある海外の主な都市名(あるいは国名)と、その都市(国)の時差とが予めデータとして記憶されている。そして、制御部8は、例えば操作ボタン11bによって「World Watch」(世界時間)に設定され、さらに図11に示すように都市名が選択されると、メモリー52に記憶した時差に基づき、表示書換え回路53(第1の表示機能)に文字部70の表示位置を所定角度変更させるよう、制御するようになっている。
【0046】
なお、操作ボタン11bによって「World Watch」(世界時間)に設定されると、表示書換え回路53は、付属部71の表示を、「日にち」及び「曜日」から、メモリー52に記憶した都市名(あるいは国名)に切り換えるよう、表示駆動回路9に信号を送るようになっている。
また、本実施形態では、付属部71の表示位置は、文字部70の表示位置とともに角度変更せず、標準状態におけるセンターラインを中心にした位置に固定されているものとする。
【0047】
このような構成の腕時計60により、所望の都市の現地時間を見たい場合には、図13のフローチャートに示すように、まず、竜頭10を操作してを現状の時刻表示にする(ステップ1:ST1と記す。以下同様)。続いて、腕時計60の文字部70の表示状態を、図1に示したような標準の状態に戻す(ステップ2)。なお、一回の操作で標準の状態に戻らない場合には、標準の状態に戻るまで、操作を繰り返し行う。
【0048】
そして、標準状態にあることを確認したら、操作ボタン11bを押圧して「標準状態」(日本においては日本時間)から「World Watch」(世界時間)に設定し直す(ステップ3)。すると、前記したように付属部71では、予めメモリー52に記憶された都市名(国名)のうちの、設定された順番における最初の表示を行う(ステップ4)。
【0049】
腕時計60の利用者は、付属部71として表示された都市名(国名)を見て、希望する都市名(国名)と異なる場合には、例えば操作ボタン11aを押圧し続けることで、選択した都市名(国名)を順次切り換えていく(ステップ5)。そして、所望する都市名(国名)が表示されたら、例えば操作ボタン11aへの押圧を解除することにより、表示されている都市名(国名)を選択したことを決定する(ステップ6)。すると、前記制御部8は、メモリー52に記憶した時差に基づき、表示書換え回路53(第1の表示機能)に文字部70の表示位置を所定角度変更させるよう、制御する(ステップ7)。なお、このとき、文字部70の色調や濃淡を変えることにより、AM(午前)とPM(午後)とが容易に見分けられるよう、表示させるようにしてもよい。
その後、必要に応じて竜頭10を操作し、分針22、さらには時針23を動かすことで、より正確な海外時間に合わせる。
【0050】
このように、操作ボタン11a、11bによって所望する都市名(国名)を設定することにより、利用者は通常の時計と同様に、角度変更された文字部70にアナログ指針21〜23を対応させることで、設定した都市(国)の現地時間を容易にかつ瞬時に視認することが可能になる。また、アナログ指針(分針22、時針23)を動かす必要がある場合にも、先に文字部70を角度変更しているので、これらアナログ指針の移動を最小限に抑えることができる。
【0051】
したがって、この腕時計60によれば、前述したように利用形態によって固定された姿勢のままで視認し易くなるように、文字部70及び付属部71の表示位置を角度調整することができ、これによって視認性についての自由度が高まり、使い勝手が極めて良好なものとなるのに加え、時差のある海外での現地時間の表示も可能なものとなる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では表示パネル5として電気泳動表示パネルを採用したが、これ以外にも、液晶表示パネルや有機EL表示パネル、さらにはツイストボール方式の表示パネル等を採用することもできる。
また、前記電気泳動表示パネルでは、1種類の電気泳動粒子39を分散させた電気泳動分散液41を用いて電気泳動層35を構成したが、例えば黒色粒子と白色粒子とを分散させてなる2粒子系の電気泳動分散液を用いて、電気泳動層35を構成するようにしてもよい。
【0053】
また、先の実施形態では、表示書換え回路53(第1の表示機能)によって文字部70と共に、付属部71の表示位置も変更するようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、後の実施形態のように、文字部70の表示位置のみを変更するように構成してもよい。また、後の実施形態について、文字部70と共に、付属部71の表示位置も変更するように構成してもよい。
さらに、前記実施形態の時計では、指針部としてアナログ指針21〜23を採用しているが、これに代えてデジタル指針を採用することもできる。
また、前記実施形態では、本発明の時計を腕時計に適用した例を示したが、置時計や壁掛時計、柱時計、懐中時計などにも適用できるのはもちろんである。
【0054】
また、前記実施形態では、時刻を表すための文字部70として、「1〜12」のアラビア数字を用いているが、他に例えば、「I〜XII」のローマ数字を用いることもできる。
また、前記実施形態では、付属部71の表示として、「日にち」及び「曜日」からなる暦や、「都市名(国名)」を表示する例について述べたが、本発明はこれに限定されることなく、年、月等の他の暦情報、アナログ指針21〜23が指し示す目盛り(時字を含む)、タイマー機能を具備する場合のタイマー設定値やカウント値、ストップウォッチ機能を具備する場合のスプリット値と計時値(値は数字や文字の場合と、針の形状を絵で描画する場合の両方を含む)、アラーム機能を具備する場合のアラーム設定時刻、仮想24時針、月齢表示、バッテリー残量、方位、高度、水深、位置、温度、湿度、気圧、背景(キャラクタ表示も含む)や模様等の画像を表示するようにしてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、前記腕時計が一次電池であるボタン電池等を電源とし、その電力によって駆動させる場合について例示したが、これに限定されることなく、二次電池又は商用電源で駆動可能に構成することもできる。また、二次電池を使用する場合には、発電装置を設け、この発電装置の発電電力により二次電池を充電可能に構成してもよい。この発電装置には、例えば、時計内に回転錘を設け、この回転錘を、ユーザの腕振り等の運動エネルギーで旋回させて発電する自動巻式発電装置、前記回転錘を竜頭等で巻上可能なゼンマイの力で旋回させて発電するゼンマイ式発電装置、ある部位と他の部位との温度差(熱エネルギー)で発電する熱発電装置、又は、ソーラ発電装置等の発電装置を広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る腕時計の正面図である。
【図2】腕時計の側断面図である。
【図3】腕時計の運針機構を示す図である。
【図4】腕時計のムーブメントの竜頭に関わる構成を示す図である。
【図5】竜頭の回転検出器の説明に供する図である。
【図6】竜頭の回転検出器の説明に供する図である。
【図7】回転検出器の説明に供する図である。
【図8】腕時計の表示パネルの構成を説明するための断面図である。
【図9】腕時計の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】(a)〜(d)は表示位置変更の動作を説明するための図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る腕時計の説明図である。
【図12】図11に示した腕時計の変更処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1、60…腕時計、2…時計ケース、3…バンド、4…ムーブメント、5…表示パネル(電気泳動表示パネル)、6…時計用文字盤、7…フレキシブル基板、8…制御部、表示駆動回路、9…表示駆動回路、10…竜頭、11a、11b…操作ボタン、20……運針機構、21…秒針(指針部)、22…分針(指針部)、23…時針(指針部)、35…電気泳動層、36…実装基板、37…透明基板、38…マイクロカプセル、50…電源、51…時計制御回路、52…メモリー、57…操作検出部、58…竜頭操作検出部、59……針位置検出部、70…文字部、71…付属部、DA…画素電極、DB…共通電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を表すための文字部の表示機能を有する表示パネルを備えた時計用文字盤であって、
前記表示機能は、前記表示パネルにおける前記文字部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能を有することを特徴とする時計用文字盤。
【請求項2】
前記表示機能には、前記文字部とは別の付属部を表示する第2の表示機能が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の時計用文字盤。
【請求項3】
前記第2の表示機能には、前記付属部の表示位置を前記文字部の表示位置の移動とともに前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第3の表示機能を有することを特徴とする、請求項2に記載の時計用文字盤。
【請求項4】
前記第1の表示機能及び前記第3の表示機能は、前記文字部又は前記付属部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に、30度毎に変更できるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の時計用文字盤。
【請求項5】
前記第1の表示機能及び第2の表示機能は、予め設定したデータに基づき、前記文字部又は前記付属部の表示位置を所定角度変更して表示する機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の時計用文字盤。
【請求項6】
前記表示パネルは、電気泳動表示パネルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の時計用文字盤。
【請求項7】
時刻を表すための文字部を表示する表示パネルを備えた時計用文字盤と、指針部とを有してなり、
前記時計用文字盤が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の時計用文字盤からなることを特徴とする時計。
【請求項1】
時刻を表すための文字部の表示機能を有する表示パネルを備えた時計用文字盤であって、
前記表示機能は、前記表示パネルにおける前記文字部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第1の表示機能を有することを特徴とする時計用文字盤。
【請求項2】
前記表示機能には、前記文字部とは別の付属部を表示する第2の表示機能が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の時計用文字盤。
【請求項3】
前記第2の表示機能には、前記付属部の表示位置を前記文字部の表示位置の移動とともに前記時計用文字盤の周方向に角度を変えて移動させる第3の表示機能を有することを特徴とする、請求項2に記載の時計用文字盤。
【請求項4】
前記第1の表示機能及び前記第3の表示機能は、前記文字部又は前記付属部の表示位置を、前記時計用文字盤の周方向に、30度毎に変更できるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の時計用文字盤。
【請求項5】
前記第1の表示機能及び第2の表示機能は、予め設定したデータに基づき、前記文字部又は前記付属部の表示位置を所定角度変更して表示する機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の時計用文字盤。
【請求項6】
前記表示パネルは、電気泳動表示パネルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の時計用文字盤。
【請求項7】
時刻を表すための文字部を表示する表示パネルを備えた時計用文字盤と、指針部とを有してなり、
前記時計用文字盤が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の時計用文字盤からなることを特徴とする時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−122124(P2008−122124A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303690(P2006−303690)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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