説明

時間的に補間された投影を生成するための方法及び装置

【課題】心臓(106)のような活動的な物体についての取得された投影データ集合(120)の時間的補間(134)のための技術を提供する。
【解決手段】ゆっくりと回転するガントリ(54)及び分布型X線源(12)を使用して投影データ集合(120)を取得する。投影データ集合(120)を、各ビュー位置において心臓時相に対するような選択された時点へ補間する(134)。その結果の補間後の投影データ(136)は各ビュー位置における投影データ(120)を任意の時点に特徴付ける。次いで、補間後の投影データ(136)の集合を再構成(138)して、時間的分解能を改善した画像及び/又はボリューム(140)を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には医用イメージング(imaging ;画像化)の分野に関し、より詳しくは、コンピュータ断層撮影法によって心臓組織のような活動的な内部組織をイメージングする分野に関する。具体的には、本発明は時間的に補間された投影データの生成及び再構成に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)イメージング・システムは多数の角度から患者を通り抜けたX線ビームの減弱度を測定する。これらの測定値に基づいて、コンピュータにより放射線の減弱を生じさせた患者の身体部分の画像を再構成することが可能である。当業者に理解されるように、これらの画像は透過X線ビームの一連の角度をずらした像の別々の検査に基づいている。CTシステムはX線強度データを処理して、「投影データ」として表される多数のビュー角度位置における被走査物体の線形減弱係数の線積分の2Dマップを生成する。これらのデータは次いで画像を生成するように再構成され、該画像は典型的にはモニタ上に表示され、またフィルム上に印刷又は再生することができる。仮想の3D画像もまたCT検査によって生成することが可能である。
【0003】
CTスキャナは動作のためにX線源から扇形又は円錐形X線ビームを投射する。X線ビームは、ビームの形状及び広がりを制御するためにコリメートすることができる。X線ビームは、患者のようなイメージングすべき物体を通り抜けるときに減弱する。減弱したビームは一組の検出器素子によって検出される。各々の検出器素子はX線ビームの減弱度によって左右される信号を発生し、そのデータは処理されて、X線通路に沿った物体の減弱係数の線積分を表す信号を発生する。これらの信号は典型的には「投影データ」又は単に「投影」と呼ばれる。フィルタ補正逆投影法のような再構成技術を使用することによって、これらの投影から有用な画像を形成することができる。これらの画像は次いで関心のある領域のボリューム・レンダリングを生成するように関連させることができる。次いで、病状のような関心のある領域の場所を、コンピュータ支援検出(CAD)アルゴリズム等によって自動的に、或いは熟練した放射線技師等によるより伝統的なやり方で識別することができる。CT走査は、病気を診断する際に、特にそれが身体についての正確な解剖学的情報を示すので、他の種類の技術に対して或る特定の利点を与える。更に、CT走査は、医師が異常の種類の間での区別をより正確に行えるようにするのに役立つことができる。
【0004】
しかしながら、CTイメージング技術には、心臓のような活動的な内部組織をイメージングするとき特定の課題が存在することがある。例えば、心臓のイメージングでは、心臓の運動が原因で投影データに一貫性が無くなり、これは再構成後にぼやけ、ストリーキング又は不連続のような様々な運動に関連した画像アーティファクトを生じさせることがある。このような運動関連画像アーティファクトを低減するために、イメージング・システムの時間的分解能を改善して、運動する組織の影響を低減するような様々な技術を用いることができる。時間的分解能は一般にCTガントリの回転時間を減少することによって改善することができる。このような方法で、投影データ集合の取得に関連した時間的窓内に生じる運動の量が最小にされる。
【0005】
時間的分解能は再構成アルゴリズムの選択によって更に改善することができる。例えば、半走査再構成アルゴリズムのようなセグメント再構成アルゴリズムを再構成プロセスに用いることができる。セグメント再構成アルゴリズムは典型的には、180°とX線ビームのファン角度(α)との和に等しい角度範囲にわたって収集された投影データを使用して、画像を再構成する。180°+αのガントリ回転中の投影データの取得は、360°のガントリ回転中の取得に比べて所要時間が短いので、再構成画像における時間的分解能が改善される。
【0006】
マルチセクタ再構成技術もまた、多スライス検出器アレイによってガントリの多回転中に取得された投影データを使用することにより、再構成画像の時間的分解能を改善することができる。再構成のために使用される投影データ集合は、異なる心臓サイクルから取得される2つ以上のセクタ(sector)の投影データで構成される。セクタは短い範囲のガントリ回転中に、典型的には半回転未満の回転中に取得されたデータを有する。従って、セクタは、高速で回転するガントリによって取得された場合には良好な時間的分解能を持ち、もって、再構成に使用される総投影データ集合について良好な効果的な時間的分解能を与える。
【0007】
上述の技術を使用すると、第3及び第4世代のCTシステムでは、セグメント再構成技術を使用して約300msの時間的分解能を達成することが可能である。不動の検出器リングと、X線を発生するために不動のターゲット・リングにわたって電子ビームを掃引する電子銃とを利用する第5世代のCTシステムでは、約50msの時間的分解能を達成することが可能である。しかしながら、心臓の運動を「凍結」して、再構成画像における運動関連アーティファクトを最小にするためには、約20msの時間的分解能が望ましい。第3世代のCTシステムの場合、上記の技術によって時間的分解能を改善することは、典型的には、ガントリの回転速度を更に増大させることに重点を置いていた。
【特許文献1】国際公開WO01/80184号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ガントリの回転速度が増大すると、ガントリ部品にかかる向心力も増大する。従って、増大する向心力及びガントリ部品の公差により、ガントリ角速度の増大に対して機械的制約が生じることがある。更に、信号対ノイズ比で表して一貫した画像品質を得るためには、走査期間の間、イメージング対象の物体又は患者に一定のX線束を送り出すべきである。しかしながら、一定のX線束を達成するには、X線管、特に管出力についての要求、及びX線管を冷却する部品についての要求が増大する。従って、機械的な面とX線束とを考慮すると、CT再構成において20ms又はそれよりも良好な時間的分解能を達成するのに充分な速度までガントリ回転速度を増大させることはできない。従って、ガントリ回転速度を増大させることなく時間的分解能を達成するための技術が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明技術はCTイメージング・システムの時間的分解能を改善するための新規な方法及び装置を提供する。本技術はゆっくり回転する分布型X線源を用い、これを物体又は患者の各ビュー位置で投影データを取得するために使用する。心臓の時相データ及び投影データの周波数成分に基づいて、投影データをフィルタリングし時間的に補間することにより、心臓サイクル内の特定の時点に対応する補間後の投影データを生成することができる。高い時間的分解能のCT画像を補間後の投影データから再構成することができる。
【0010】
本発明の上記及び他の利点及び特徴は、以下の詳細な説明を読み且つ図面を参照することにより明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、画像データを取得し処理するためのイメージング・システム10の概要を例示している。この例示の実施形態では、システム10は、X線投影データを取得し、本発明技術に従った表示及び解析のために該投影データを処理するように設計されているコンピュータ断層撮影(CT)システムである。図1に例示した実施形態では、イメージング・システム10は、コリメータ14に隣接して配置された分布型X線放射線源12を含んでいる。この模範的な実施形態では、分布型X線放射線源12は1つ以上のアドレス可能なX線焦点スポットを含んでいる。
【0012】
コリメータ14は、患者18のような被検体が位置決めされる領域の中へ放射線16の流れを通過させる。放射線16の流れは、以下に述べる検出器アレイの構成と所望のデータ取得方法とに依存するが、一般的に円錐形にすることができる。一部の放射線20が被検体の中及び周りを通過して、全体的に参照数字22で表した検出器アレイに衝突する。このアレイの検出器素子が、入射したX線ビームの強度を表す電気信号を発生する。これらの信号は取得されて、被検体内の特徴の画像を再構成するように処理される。
【0013】
分布型X線源12はシステム制御装置24によって制御されており、システム制御装置24はCT検査シーケンスのために電力、焦点位置及び制御信号を供給する。更に、検出器22がシステム制御装置24に結合されており、システム制御装置24は検出器22内で発生される信号の取得を指令する。システム制御装置24はまた、ダイナミックレンジの初期調節、ディジタル画像データの間挿などのための様々な信号処理及びフィルタ機能を実行することができる。一般に、システム制御装置24は、検査プロトコルを実行し且つ取得データを処理するようにイメージング・システムの動作を指令する。本例では、システム制御装置24はまた、典型的には汎用又は特定用途向けディジタル・コンピュータをベースとした信号処理回路、該コンピュータによって実行されるプログラム及びルーチンを構成パラメータ及び画像と共に記憶する関連メモリ回路、インターフェース回路などを含んでいる。
【0014】
図1に例示した実施形態では、システム制御装置24は線形位置決めサブシステム26及び回転サブシステム28に結合されている。回転サブシステム28は、分布型X線源12、コリメータ14及び検出器22が患者18の周りを1回又は複数回だけ回転するようにすることができる。ここで、回転サブシステム28がガントリを含んでいてよいことに留意されたい。そのような場合、システム制御装置24はガントリを動作させるために利用することができる。線形位置決めサブシステム26は、患者18、更に詳しく述べると患者テーブルを直線的に変位させることができる。従って、患者テーブルは、患者18の特定の区域の画像を生成するためにガントリ内を直線的に移動させることができる。上述のシステムの実施形態は分布型線源12及び検出器22の両方が回転する修正第3世代CTスキャナであるが、本書で説明する心臓の運動を表す信号を発生するための方法は全ての最新世代のCTシステムに適用される。
【0015】
当業者に理解されるように、分布型放射線源はシステム制御装置24内のX線制御装置30によって制御することができる。具体的に述べると、X線制御装置30は、電力、焦点位置及びタイミング信号を分布型X線源12に供給するように構成されている。モータ制御装置32を利用して、回転サブシステム28及び線形位置決めサブシステム26の動きを制御することができる。
【0016】
更に、システム制御装置24はまたデータ取得システム34を有するものとして例示されている。この模範的な実施形態では、検出器22はシステム制御装置24に、より具体的にはデータ取得システム34に結合されている。データ取得システム34は、検出器22内の読出し電子回路によって収集されたデータを受け取る。データ取得システム34は典型的には、検出器22からサンプリングされたアナログ信号を受け取って、コンピュータ36によるその後の処理のためにデータをディジタル信号に変換する。
【0017】
コンピュータ36は典型的にはシステム制御装置24に結合されている。データ取得システム34によって収集されたデータは、その後の処理及び再構成のためにコンピュータ36に伝送することができる。コンピュータ36はメモリ38を含むか又はメモリ38と通信することができ、メモリ38はコンピュータ36によって処理されたデータ又はコンピュータ36によって処理すべきデータを記憶することができる。ここで、所望量のデータ及び/又はコードを記憶する能力を持つ任意の種類のコンピュータ呼出し可能なメモリ装置をこのような模範的なシステム10によって利用できることは勿論である。更に、メモリ38は同様な又は異なる種類の磁気又は光学装置のような1つ又は複数のメモリ装置を含んでいてよく、それらのメモリ装置はシステム10と同じ場所に及び/又はシステム10とは遠隔の場所に位置していてよい。メモリ38は、データ、処理パラメータ、及び/又は本書で述べるプロセスを実行するための1つ又は複数のルーチンを含むコンピュータ・プログラムを含むことができる。
【0018】
コンピュータ36はまた、システム制御装置24によって作動可能にされる機能、すなわち、走査動作及びデータ取得を制御するように適合させることができる。更に、コンピュータ36は、典型的にはキーボード及び他の入力装置(図示せず)を備えているオペレータ・ワークステーション40を介して、オペレータから指令及び走査パラメータを受け取るように構成することができる。これにより、オペレータは入力装置を介してシステム10を制御することができる。このようにして、オペレータはコンピュータ36からの再構成画像とシステムに関する他のデータとを観察し、イメージングを開始することなどを行うことができる。
【0019】
オペレータ・ワークステーション40に結合された表示装置42を利用することにより、再構成画像を観察することができる。その上、走査される画像はまた、プリンタ44によって印刷することができ、プリンタ44はオペレータ・ワークステーション40に結合することができる。表示装置42及びプリンタ44はまた、コンピュータ36に直接に又はオペレータ・ワークステーション40を介して接続することができる。更に、オペレータ・ワークステーション40はまた、ピクチャ記録保管及び通信システム(PACS)46に結合することができる。ここで、PACS46は、異なる場所にいる他人が画像データにアクセスすることができるように、遠隔のシステム48、放射線科情報システム(RIS)、病院情報システム(HIS)、或いは内部又は外部ネットワークに結合することができることに留意されたい。
【0020】
更に、コンピュータ36及びオペレータ・ワークステーション40は他の出力装置に結合することができ、これらの他の出力装置は標準的な又は特殊目的のコンピュータ・モニタ及び関連処理回路を含むことができることに留意されたい。また、システム・パラメータを出力し、検査を要求し、画像を観察することなどのためにシステム内に1つ以上のオペレータ・ワークステーション40を更に連結することができる。一般に、システム内に設けられる表示装置、プリンタ、ワークステーション及び同様な装置は、データ取得部品と同じ場所に置くことができ、或いはこれらの部品から遠隔の場所、例えば、インターネット、仮想プライベート・ネットワークなどの1つ以上の構成設定可能なネットワークを介して画像取得システムに連結された、研究所又は病院内の他の場所、或いは全く異なる場所に置くことができる。
【0021】
図2について一般的に説明すると、本発明の実施形態で利用される模範的なイメージング・システムはCT走査システム50とすることができる。CT走査システム50は、内部器官全体のようなボリュームのイメージングを可能にするために円錐ビーム形状及び面積型検出器を利用する容積測定CT(VCT)システムであってよい。更に、前に述べたように、CT走査システム50は図示のような修正第3世代CTであってよく、或いはその後の世代のCTイメージング・システムであってよい。
【0022】
CT走査システム50はフレーム52及びガントリ54を備えたものとして例示されており、ガントリ54はその中に患者18を移動させることのできる開口56を有する。患者テーブル58をフレーム52及びガントリ54の開口56の中に配置して、例えば線形位置決めサブシステム26(図1参照)によってテーブル58を直線的に変位させることにより、患者18の移動を容易にすることができる。ガントリ54は、分布型放射線源12(典型的には、1つ以上の焦点62からX線放射線を放出する1つ以上のX線源)を備えているものとして例示されている。分布型X線源12は焦点62の位置をガントリ54の縦方向に又は円弧に沿って瞬時に変更することができる。心臓のイメージングの場合、放射線の流れ16は、心臓を含む患者18の断面の方へ差し向けられる。
【0023】
典型的な動作では、分布型X線源12が1つ以上の焦点62から検出器アレイ22へ向けてX線を投射する。鉛又はタングステンのようなコリメータ14(図1参照)が典型的には、分布型X線源12からの投射されたX線の大きさ及び形状を規定する。VCTシステムの場合の面積型検出器のような検出器22は一般に複数の検出器素子によって形成され、これらの検出器素子は心臓又は胸部のような関心のある被検体の中及び周りを通るX線を検出する。各検出器素子は、X線ビームが検出器に衝突している時間中に該素子の位置におけるX線ビームの強度を表す電気信号を生成する。ガントリ54は、複数の放射線撮影ビューをコンピュータ36によって収集することができるように、関心のある被検体の周りを回転する。
【0024】
このようにして、分布型X線源12及び検出器22が回転するとき、検出器22が減弱したX線ビームのデータを収集する。検出器22から収集されたデータは、走査される物体の減弱係数の線積分を表すようにデータを調整するための前処理及び較正を受ける。処理後のデータ(通常、「投影」と呼ばれる)はフィルタリング及び逆投影されて、走査された区域の画像を生成する。生成される画像には、特定のモードでは、360度未満の又は360度を超えるガントリの角度方向回転の間に取得された投影データを取り入れることができる。
【0025】
一旦再構成されると、図1及び図2のシステムによって生成された心臓の画像は、患者18の心臓を顕示する。図2に概略して例示されているように、画像64は、図2に参照数字66で表すような患者の特徴を示すように表示することができる。病状のような医学的状態の診断、より一般的には医学的状態又は事象の診断のための従来の方策では、放射線技師又は医師が再構成された画像64を考察して、関心のある特有の特徴を識別する。このような特徴66は、関心のある冠状動脈又は狭窄障害、並びに個々の実施者の熟練度及び知識に基づいて画像内で識別可能である他の特徴を含む。様々なCADアルゴリズムの能力に基づいた他の分析を行うことができる。
【0026】
当業者に理解されるように、画像64の再構成は様々な因子によって複雑になることがある。例えば、活動的な組織の再構成画像64は運動(モーション)に関連した画像アーティファクトを含むことがあり、このアーティファクトはイメージング中の組織の運動に起因する。運動に関連したアーティファクトを低減するために、一般的にCT再構成プロセスの時間的分解能を改善することが望ましい。
【0027】
この問題に対処するために、本発明技術では、投影データ集合と、該投影データ集合に関連した周波数成分及び位相情報とを使用して、時間的に補間された投影の集合を生成する。これらの時間的に補間された投影を再構成することにより、高い時間的分解能、典型的には50ms未満の分解能を持つ画像を形成することができる。本発明技術の一方策はCTガントリ54を利用して、図3に示すように、ガントリ54の走査経路をN個の一様な大きさの円弧80に分割する。例えば、図3に示すように、N=18とする。分布型X線源12は2つの円弧長82を覆う寸法とすることができる。この代わりに、放射線像の取得中に別のサンプリング方式が用いられる場合には、分布型X線源12は2つの円弧長82よりも短く又は長くすることができる。
【0028】
本発明技術では、図4の段階90に示すように、分布型X線源12は放射線像を生成するために被検体の周りをゆっくり回転させる。放射線像はその後に処理して、補間された投影データを生成することができる。例えば、分布型X線源12は被検体の周りを1回転させることができ、その間に複数の心臓サイクルが生じることができる。分布型X線源12(及び適当に修正した第3世代CTシステムでの検出器22)の回転速度(rotation rate) は8秒よりも大きくすることができ、一実施形態では10秒〜30秒にすることができる。具体的に述べると、回転速度は、被検体の1心臓サイクルに必要な時間と円弧長の数Nとの積に等しくすることができる。
【0029】
段階92に示すように、投影データは、分布型線源12が各円弧58に沿って通過するときに繰返し取得される。分布型線源12の回転速度が1心臓サイクルに必要な時間とNとの積に等しい場合、新しい心臓サイクルの開始は次の円弧80に沿った投影取得の開始と一致するはずである。分布型X線源12上の焦点62の位置はガントリ54が回転するにつれて連続的に調節されて、走査している対象物に対する各々のサンプリングされるビュー位置が同じになるようにすることができる。
【0030】
例えば、図5を参照すると、2つの相次ぐ円弧80における回転及び取得プロセスを描いてある。説明を簡単にするために、心臓サイクルを1秒と仮定する。始めに、すなわち、T=0秒において、分布型X線源12の前縁100が第1の円弧102と第2の円弧104との間の境界と一致して、第1の円弧102が分布型X線源12の半部によって覆われるようになる。第1の円弧102と一致する分布型X線源12の部分は、該円弧に沿った焦点(複数)を予め定められた順序でトリガすることによって、被検体の心臓106を含む胸部の容積内を通るようにX線16を放出する。未だ第1の円弧102に入っていない分布型X線源12の部分は、X線16を放出しない。
【0031】
T=0.5秒において、分布型X線源12は、分布型X線源12の中央部分が第1の円弧102と一致するように、第1の円弧102の半分まで回転している。第1の円弧102と一致している分布型X線源12の部分は、被検体の心臓106を含む胸部の容積内を通るようにX線16を放出し続ける。未だ第1の円弧102に入っていない又は第2の円弧104の中へ入った分布型X線源12の部分は、X線16を放出しない。
【0032】
T=1.0−秒において、すなわち、1.0秒直前で次の心臓サイクルの開始時に、分布型X線源12の後縁108が第1の円弧102とその前の円弧110との間の境界と一致する。第1の円弧102と一致する分布型X線源12の部分が、被検体の心臓106を含む胸部の容積内を通るようにX線16を放出し続ける。第2の円弧104の中へ入った分布型X線源12の部分は、X線16を放出しない。
【0033】
X線源12が分布型であるので、T=1.0秒における円弧位置の切換えは瞬時に生じる。結果として、T=1.0+秒において、すなわち、1.0秒直後に、分布型X線源12の前縁100が第2の円弧104とその次の円弧112との間の境界と一致する。その後、T=1.5秒及びT=2.0−秒の所に描いているように、第2の円弧104に沿った投影の取得が第1の円弧102に関して述べたのと同様にして行われる。このようにして、投影データが、図4に段階92で示すように、それぞれの心臓サイクル中に各円弧80に沿って繰返し取得される。完全な回転(1回転又は複数回転)でない場合、段階116で増分されるように、次の円弧80及び心臓サイクルについて投影データを取得し、これを判定ブロック118で決定されるように完全な回転(1回転又は複数回転)になるまで行うことができる。その結果、各ビュー位置において心臓サイクルに関して異なる時点で取得された投影を有する投影データ集合120が得られる。
【0034】
図3及び図5では分布型X線源12が2つの円弧80を覆うように示しているが、分布型X線源12は、データ取得プロセス中の心臓サイクルの変動を考慮するために、これよりも僅かに大きくすることができる。この代わりに、分布型X線源12は、データ取得中の心臓サイクルの変動を考慮するために、1つの円弧80を覆うか又は1つの円弧80よりも僅かに大きくなる寸法にすることができ、且つ同じ有効なサンプリング・データ集合を得るために代替のサンプリング・ルーチンと共に使用することができる。
【0035】
投影データの周波数成分130、すなわち、検出器22の素子によって測定された信号で表されるような心臓における運動特性についての先験的情報と、心臓時相データ132、すなわち、投影データ120の取得中の心臓時相のタイミングとを、図6に示されるように、投影データ120を補間するために使用することができる。時相データ132は、放出像と同時に取得されるECG信号で構成することができる。この代わりに、時相データ132は、投影データ120を分析し及び/又は投影データ120のモーメントを比較するために一貫性の条件を用いる手法などにより、投影データ120から導き出すことができる。
【0036】
時相データ132と投影データ内の周波数成分130についての情報とを使用して、投影は、それらが心臓サイクル内で対応する時点と、それらが対応するガントリ54の角度位置とに相関させる。次いで、段階134に示すように、投影データ120は補間されて、補間後の投影136を生成する。2次元投影は各検出器素子で取得された信号内の周波数成分130を適切に捕捉しているので、補間後の投影136の各々はそれぞれのビュー位置における投影データを心臓サイクルに関する任意の時点に正しく特徴付ける。このようにして、離散的な時点で取得された投影を連続的な時間表現に変換することができ、またその連続的な時間表現から、心臓サイクルに関する特定の時点へ投影データを補間することができる。
【0037】
離散的な点の連続的な時間表現への変換は、当該分野で既知の様々な方法で達成することができる。同様に、適当な補間アルゴリズムを使用しての連続的な時間表現からの値の補間は、様々な方法で達成することができる。例えば、ナイキストの定理により、或る波形についての離散的なサンプルが充分に高いレートで得られる場合、離散的時間サンプルを使用して連続的な時間表現を生成することができる。また、ナイキストの定理により、連続的な時間表現に沿った任意のサンプルの値は、その時点に対応する連続的な時間表現上のサンプル値を選択することによって、任意の時点で補間することができる。例えば、運動が周期的であれば、フーリエ時間級数がこの目的のために適当な連続的な時間関数である。
【0038】
前に述べたように、補間後の投影136の各々はそれぞれのビュー角度において心臓サイクルの特定の時点に対応する。従って、段階138に示すように、心臓サイクルの所望の時点に対応する補間後の投影136は再構成して、心臓サイクルの所望の時点での心臓画像を生成することができる。再構成された画像は、所望なら、空間的及び/又は時間的に関連させて、時間にわたる画像、一時点におけるボリューム140、又は時間にわたるボリューム140を生成することができる。更に、補間後の投影136は同じ時点に対して補間されているので、再構成された画像及び/又はボリュームは時間的分解能が高い、典型的には50ms未満である。従って、再構成された画像及び/又はボリュームは実質的に運動による欠陥及びアーティファクトが無く、実効的に各時点において心臓の運動を「凍結」させている。
【0039】
更に、補間プロセスは投影データ内の量子ノイズを低減する機構を提供する。例えば、投影データ120の周波数成分についての先験的情報を使用することにより、投影データ120内の周波数成分を帯域制限することができる。周波数成分を帯域制限することは、再構成された画像内のノイズを低減するのに役立つことがあり、また再構成された画像の品質を適当に達成しながら患者照射線量を低減させることができる。
【0040】
本発明技術を心臓のイメージングと関連させて説明したが、該技術は他の活動的な物体のイメージングに適用することができる。心臓イメージングについての議論は本発明技術の説明を解りやすくするために提示したに過ぎない。実際、本発明は様々な修正及び代替形態が可能であるが、特定の実施形態を図面に例として示し且つ本書で詳しく説明した。しかしながら、本発明が開示した特定の形態に限定されるものでないことを理解されたい。むしろ、本発明は、特許請求の範囲によって定められる本発明の精神及び範囲内に入る全ての修正、等価物及び代替物を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明技術の一面に従った、処理後の画像を生成する際に使用するためのCTイメージング・システムの形態の模範的なイメージング・システムの概略図である。
【図2】本発明技術の一面に従った、図1のCTシステムの物理的具現例の別の概略図である。
【図3】本発明技術の一面に従った、模範的なCTガントリの概略図である。
【図4】本発明技術の一面に従った、投影データ集合の取得を示す流れ図である。
【図5】本発明技術の一面に従った、2つの心臓サイクルの間の分布型X線源の一連の動作を表す略図である。
【図6】本発明技術の一面に従った、補間後の投影データ集合の生成及び再構成を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0042】
10 イメージング・システム
12 分布型放射線源
14 コリメータ
16 放射線の流れ
18 患者
20 放射線
22 検出器
24 システム制御装置
26 線形位置決めサブシステム
28 回転サブシステム
50 CT走査システム
52 フレーム
54 ガントリ
56 開口
58 テーブル
62 焦点
64 画像
66 再構成された画像
80 円弧
82 円弧長
100 前縁
102 第1の円弧
104 第2の円弧
106 被検体の心臓
108 後縁
110 前の円弧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影データ集合(120)を取得する方法であって、
分布型X線源(12)を含むガントリ(54)を、関心のあるボリュームの周りをゆっくりと回転させる段階(90)であって、前記ガントリ(54)の経路が複数の円弧(80)を含んでいる、当該段階(90)と、
有効な円弧の上に延在する前記分布型X線源(12)の部分からX線(16)を放出する段階と、
前記分布型X線源(12)の後縁(108)が前記有効な円弧とその前の円弧との間の境界と一致したときに回転方向の次の順序の円弧を有効な円弧として指定し(116)、これを各円弧が、少なくとも一度、有効な円弧になるまで(118)続ける段階と、
前記放出されたX線(16)から生成された複数の投影を含む投影データ集合(120)を取得する段階(92)と、
を有する方法。
【請求項2】
更に、一組の同時に取得された時相データ(132)及び投影データ集合(120)の周波数成分(130)を使用して、投影データ集合(120)を補間すること(134)によって、補間後の投影(136)の集合を生成する段階であって、各補間後の投影が、ガントリ(54)のビュー位置における投影データ集合(120)を特定の時点に特徴付けている、当該段階と、
前記補間後の投影(136)の集合を再構成して、1つ以上の画像を生成する段階(138)と、
を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項3】
更に、2つ以上の画像を関連させてボリューム・レンダリング(140)を生成する段階を含んでいる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記関心のあるボリュームは、一心臓周期を持つ心臓(106)を含んでいる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
心臓(106)の周りの前記分布型X線源(12)及び前記ガントリ(54)の回転周期が心臓周期に円弧(80)の数を乗算した値にほぼ等しい、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ガントリ(54)の回転周期が8秒よりも長い、請求項1記載の方法。
【請求項7】
関心のあるボリュームの周りをゆっくりと回転させるように構成された分布型X線源(12)を含むガントリ(54)であって、当該ガントリ(54)の経路が複数の円弧(80)を含んでおり、前記分布型X線源(12)が有効な円弧の上に延在する前記X線源(12)の部分から放射線の流れ(16)を放出するように構成されている、当該ガントリ(54)と、
前記放射線の流れ(16、20)を検出し且つ前記放射線の流れ(16、20)に応答して1つ以上の信号を発生するように構成されている検出器(22)であって、複数の検出器素子を含んでいる当該検出器(22)と、
前記X線源(12)を制御し、且つ活動的な物体の周りを前記X線源(12)がゆっくりと1回転以上回転している間に1つ以上の検出器素子からデータ取得システム(34)を介して投影データの集合(120)を取得するように構成されているシステム制御装置(24)と、
前記投影データの集合(120)を受け取り、且つ前記分布型X線源(12)の後縁(108)が前記有効な円弧とその前の円弧との間の境界と一致したときに回転方向の次の順序の円弧(112)を有効な円弧として指定し(116)、これを前記分布型X線源(12)が前記ガントリの少なくとも1回転を完了するまで続けるように構成されているコンピュータ・システム(36)と、
を有するCT画像分析システム(50)。
【請求項8】
前記コンピュータ・システム(36)は、一組の同時に取得された時相データ(132)及び前記投影データの集合(120)の周波数成分(130)を使用して、前記投影データの集合(120)を補間すること(134)によって、補間後の投影の集合(136)を生成するように構成されており、各補間後の投影が、前記ガントリ(54)のビュー位置における投影データ集合(120)を特定の時点に特徴付けており、また前記コンピュータ・システム(36)は、前記補間後の投影の集合(136)を再構成して、1つ以上の画像を生成するように構成されている、請求項7記載のCT画像分析システム(50)。
【請求項9】
補間後の投影の集合(136)を生成することにより、前記投影データの集合(120)内の統計的ノイズが低減される、請求項8記載のCT画像分析システム(50)。
【請求項10】
前記ガントリ(54)の回転周期が8秒よりも長い、請求項7記載のCT画像分析システム(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−524422(P2007−524422A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507944(P2005−507944)
【出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/041593
【国際公開番号】WO2005/017838
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】