説明

景品用容器

【課題】ICタグによる景品の真贋の区別や入出金管理を容易且つ明確とし、搬送手段と赤外線による搬送検知手段を備えた既存の景品換金装置において使用され、当該景品換金装置内での搬送速度を向上させる景品用容器の提供を、課題とする。
【解決手段】上面を開口する合成樹脂製の容器本体と該容器本体の開口を塞ぐ合成樹脂製の蓋体とを備え、容器本体は、景品を保持するための景品保持部と、ICタグを保持するためのICタグ保持部を備え、蓋体は、透明の蓋基体と、該蓋基体のうち前記景品保持部に重なる箇所を景品視認窓とし、該景品視認窓以外の蓋基体の上面に印刷層を備え、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において使用される景品用容器において、印刷層は、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層としたことを特徴とする景品用容器を解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてパチンコ店等の遊戯場において、換金等に用いることができる景品を収納する景品用容器のうち、特にICタグを備えた景品用容器に関する。尚、ICタグは、アンテナを入出力手段とし、受信した特定波長の電磁波を整流、変調して情報の記録、発信を行うことができる非接触の小型通信手段である。
【背景技術】
【0002】
パチンコ店等の遊戯場においては、勝利条件を満たして入手したパチンコ玉等の賞品を、場内で景品と交換し、更に入手した景品を戸外の景品交換所で、現金と交換することが一般的に行われている。
【0003】
パチンコ玉等の賞品を景品と交換する際には、景品発行機に前記賞品を投入することで、景品発行機から、景品用容器に封入された景品が払い出される。景品用容器には封入された景品の価値に見合う額(金種)が表示されてあり、前記パチンコ玉等の物品の投入量に応じて、複数の景品が景品発行機から払い出されることとなる。
【0004】
景品は、入手した客がそのまま持ち帰っても良いが、多くの場合、戸外の景品交換所へ持ち込まれ、該景品交換所に設置された景品換金装置へ投入され、換金される。景品の投入は、景品用容器に景品を封入した状態で行う。
【0005】
景品及びそれを封入した景品用容器は、換金対象物となることから、偽造の目的対象となりやすい。このため、遊戯場の経営管理者は、景品用容器と景品換金装置を用いることで、景品用容器の真贋の区別を行い、更には入出金管理を明確とする種々の手段を講じている。
【0006】
景品の真贋の区別や入出金管理を明確とする手段として、近年ICタグを用いる景品カードが開発されており、例えば、換金額を証明するための識別手段として景品カード内部に埋め込まれたICチップを用いるもの(例えば、特許文献1段落0003第5行乃至第6行参照。)や、
データ記憶ICチップ及びアンテナを備えたタグと、固体と、を備えた特殊景品であって、前記タグは前記特殊景品に固有な識別番号を含む固有識別データを記憶し、前記アンテナを介して外部とのデータ送受信を可能としたことを特徴とする特殊景品(例えば、特許文献2参照。)が公知である。
【0007】
景品換金装置内における景品用容器の処理速度を向上させる技術として、複数の景品をまとめて処理するものとしては、例えば、特殊景品読取装置で読取可能な所定の識別情報を格納した特殊景品であって、重ね合わせ可能な外形を有し、所定の識別情報を格納する記憶手段と、記憶手段に記憶された識別情報を無線送信する送信手段と、受信手段が照合結果情報を受信すると発光する発光手段とを備え、発光手段が、一又は二以上の特殊景品が重ねられた状態において、外部の全方位から発光の有無が視認可能な位置に配設されることを特徴とする特殊景品読取装置(景品換金装置)と、発光手段は特集景品の少なくとも二箇所に配設される特殊景品(例えば、特許文献3参照。)が公知である。
【0008】
また景品換金装置内での景品の搬送速度を向上させるものとしては、例えば、本出願人が先に出願したものとして、遊戯店等で換金用に用いられる景品等を容器基体と蓋体の間に収納し、外部から景品等を目視確認できる透視部を具備した換金用カードにおいて、周縁部に額縁を形成し、内側に前記透視部の内側周囲に当接するリブを形成する容器基体に、蓋体を嵌装して、該容器基体と蓋体の境界部分に前記額縁が蓋体の表面より突出する段差を形成し、蓋の最も内側の層にカーボンを含んだ黒色の塗料を塗布した換金用カード(例えば、特許文献4参照。)が公知である。
【0009】
【特許文献1】特開平10−249052号公報
【特許文献2】特開2002−320761号公報
【特許文献3】特開2004−290452号公報
【特許文献4】登録実用新案第3069614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の景品を封入した景品用カード及び特許文献2に開示したカード状の特殊景品は、ICタグの特徴である非接触での情報の読み取りを利用することで、換金額の識別情報や固有の識別データをICタグに書き込んだICタグから、これらを読み取ることによって、景品の真贋の区別や入出金管理を明確とすることができる。
【0011】
一方、景品を封入した景品用容器は、上記したように、景品換金装置へ投入されるが、景品換金装置内で複数の景品用容器の投入搬送を赤外線センサーで検知し全ての処理を完了するまで、景品の換金ができない。その間、客は待たされるため、速やかに複数の景品用容器を処理する必要がある。
【0012】
ところが、上記特許文献1の景品用カード及び特許文献2の特殊景品は、景品換金装置内における景品用容器の投入搬送において、一定の搬送速度に抑える必要があった。一定の搬送速度を超えると、赤外線センサーの検知が不安定となり、景品用容器の通過の検知漏れを生じ、却って円滑な処理を阻害するからである。
【0013】
景品換金装置内における景品用容器の処理速度を向上させる技術としては、上記した特許文献3に係る発明がある。上記特許文献3に係る特殊景品読取装置に、対応する発光手段を有する特殊景品を用いることによって、景品の搬送を行う必要性がなくなるため、(景品用容器ではなく)特殊景品読取装置としては、搬送に要する時間を解消するものである。
【0014】
しかしながら、現時点において、当該特殊景品読取装置を新たに導入するには多額の費用を要し、既存の景品換金装置で使用できる景品用容器は、依然として、投入搬送での搬送速度の向上に応じた、赤外線センサーによる検知が可能な景品用容器が求められている。そして、上記特許文献3に係る特殊景品読取装置に使用される特殊景品自体は、その構成から、現時点の景品換金装置に投入しても、結局、特許文献1の景品用カード及び特許文献2の特殊景品と同様に、一定の搬送速度に抑えなければ、赤外線センサーの検知を確実とすることができなかった。
【0015】
次に、上記特許文献4に開示された換金用カードは、蓋の最も内側の層にカーボンを主成分とした黒色塗料を塗布したことによって、赤外線の吸収性能を大きく向上させたものであり、当該構成によって景品換金装置内での搬送速度を大幅に向上させることができるものであった。
【0016】
しかしながら、当該特許文献4に係る換金用カードの構成に示した、蓋の最も内側の層にカーボンを主成分とした黒色塗料を塗布する構成を、前記特許文献1の景品用カード、特許文献2及び特許文献3の特殊景品のICタグを備えた構成を適用すると、カーボンによって、ICタグを発電使用させるための電磁波自体が遮断され、本質的にICタグを使用できないものとなる。
【0017】
更に、特許文献4に開示された換金用カードのように、景品が小片であると、景品用カード内の全体には大きな空間が形成され、当該空間があることで、蓋体及び容器本体自体の強度が不十分な場合には、当該換金用カードを不用意に落下させたり、当該換金用カードの蓋体の表面及び容器本体の底面を指で強く挟み持つことで、蓋体が割れやすい傾向にあり、長期に亘る耐久性に問題があった。
【0018】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、ICタグによる景品の真贋の区別や入出金管理を容易且つ明確とし、搬送手段と赤外線による搬送検知手段を備えた既存の景品換金装置において使用され、当該景品換金装置内での搬送速度を向上させることのできる、優れた景品用容器を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【0019】
また、本発明は、ICタグによる景品の真贋の区別や入出金管理を容易且つ明確とし、搬送手段と赤外線による搬送検知手段を備えた既存の景品換金装置において使用され、当該景品換金装置内での搬送速度を向上させることのでき、且つ、蓋体及び容器本体自体の強度が不十分な場合であっても、十分な耐久強度を有する景品用容器を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上面を開口する合成樹脂製の容器本体と該容器本体の開口を塞ぐ合成樹脂製の蓋体とを備え、容器本体は、景品を保持するための景品保持部と、ICタグを保持するためのICタグ保持部を備え、蓋体は、透明の蓋基体と、該蓋基体のうち前記景品保持部に重なる箇所を景品視認窓とし、該景品視認窓以外の蓋基体の上面に印刷層を備え、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において使用される景品用容器において、印刷層は、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層としたことを特徴とする景品用容器を、課題を解決するための手段とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明について、ICタグ保持部は、フィルム上にICタグを密着してなるICタグフィルムを保持する空間を有し、マスキング層は、酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料を含有し、且つカーボンの含有率を実質的に含まないインク基剤からなることを特徴とする景品用容器を、課題を解決するための手段とする。尚、インク基材につき、「カーボンを実質的に含有しないインク基剤」とは、カーボンの含有率が概ね0.8重量%以下であり、カーボンを事実上全く含有しないことが望ましいものの、カーボンのICタグへの電磁波遮断能の影響が実用上認められない範囲では、カーボンの若干の混在を許容する趣旨である。
【0022】
更に、本発明は、上記発明の構成を備えた上で、蓋基体の上面に、下側印刷層、上側印刷層を順次積層し、前記蓋基体の下面にスペーサを一体に形成したことを特徴とする景品用容器、又は、蓋基体の上面に上側印刷層を形成し、該蓋基体の下面に下側印刷層を形成し、下側印刷層の下面にスペーサを取着したことを特徴とする景品用容器を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、上面を開口する合成樹脂製の容器本体と該容器本体の開口を塞ぐ合成樹脂製の蓋体とを備え、容器本体は、景品を保持するための景品保持部と、ICタグを保持するためのICタグ保持部を備え、蓋体は、透明の蓋基体と、該蓋基体のうち前記景品保持部に重なる箇所を景品視認窓とし、該景品視認窓以外の蓋基体の上面に印刷層を備え、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において使用される景品用容器において、印刷層は、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層としたから、ICタグで利用する電磁波を透過させ、且つ、顔料としての機能を確保しながら顔料密度を高めることで、赤外線の透過を減少させ、従来の多量のカーボンブラックによって赤外線吸収性能を得ていた景品用容器と同等の赤外線吸収性能を発揮でき、下側印刷層がICタグへの電磁波を透過させることで、ICタグによる容易な景品の真贋の区別や入出金管理機能が阻害されることがなく、また、該下側印刷層が赤外線を吸収することで、景品換金装置内での景品容器の検知性能を向上させ、搬送速度を向上させることができる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に係る発明の構成において、特に、マスキング層は、酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料を含有し、且つカーボンの含有率を0.8重量%以下としたインク基剤からなることとしたから、実質的に殆どカーボンを含有しない状態で、十分な赤外線吸収能を発揮し、搬送速度を従来の20%程度向上させる結果を得ることができる。
【0025】
また、請求項3に係る発明によれば、上記請求項1若しくは請求項2に係る発明の作用効果を発揮することに加え、蓋基体の上面に、下側印刷層、上側印刷層を順次積層し、前記蓋基体の下面にスペーサを一体に形成したことによって、スペーサを加えた厚みによって蓋自体の強度が確保されることのみならず、スペーサが、当該景品用容器の内部の空間に充填されることで、意図しない蓋に対して加わる応力を分散することができ、優れた耐久性を発揮することができる。また、下側印刷層が、上側印刷層と蓋基体との間に配置されるから、繰り返しの使用による下側印刷層の磨耗が上側印刷層に保護されることで抑制され、高い赤外線吸収性能を長期に亘って発揮することができる。
【0026】
また、請求項4に係る発明によれば、上記請求項1若しくは請求項2に係る発明の作用効果を発揮することに加え、蓋基体の下面に下側印刷層を備え、更にその下面にスペーサを設けたことによって、蓋体を容器本体から外さない限り、下側印刷層の磨耗が生じることがなく、下側印刷層を十分に保護することができる。
【0027】
更に、請求項5に係る発明によれば、上記請求項1若しくは請求項2に係る発明の作用効果を発揮することに加え、蓋基体の上面に上側印刷層を形成し、該蓋基体の下面に下側印刷層を形成し、容器本体の内底面に凹部を形成し、蓋体の下面と容器本体の凹部を除く内底面との間に高さ0.5mm程度の内部空間を形成することで、スペーサを備えない分だけ軽量で安価な景品用容器を提供することができる。そして、0.5mm程度の空隙内には、容器本体及び蓋体からの強い圧迫を受けない状態で基板フィルムを配置でき、基板フィルムの性能を損なう虞がない利点を有する。更に、0.5mm程度の空隙は、基板フィルム等を配置することによって事実上中実状態とすることができるため、実施例1及び実施例2と比較しても、強度が大きく低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は上面を開口する合成樹脂製の容器本体と該容器本体の開口を塞ぐ合成樹脂製の蓋体とを備え、容器本体は、景品を保持するための景品保持部と、ICタグを保持するためのICタグ保持部を備え、蓋体は、透明の蓋基体と、該蓋基体のうち前記景品保持部に重なる箇所を景品視認窓とし、該景品視認窓以外の蓋基体の上面に印刷層を備え、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において使用される景品用容器において、印刷層は、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層とし、マスキング層は、酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料を含有し、且つカーボンの含有率を実質的に含まないインク基剤からなることとし、蓋基体の上面に、下側印刷層、上側印刷層を順次積層し、前記蓋基体の下面にスペーサを一体に形成した景品用容器としたことで、下側印刷層であるマスキング層の酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料によって、ICタグで利用する電磁波を透過させ、且つ、顔料としての機能を確保しながら顔料密度を高めることで、赤外線の透過を減少させ、従来の多量のカーボンブラックによって赤外線吸収性能を得ていた景品用容器と同等の赤外線吸収性能を発揮でき、下側印刷層がICタグへの電磁波を透過させることで、ICタグによる容易な景品の真贋の区別や入出金管理機能が阻害されることがなく、また、該下側印刷層が赤外線を吸収することで、景品換金装置内での景品容器の検知性能を向上させ、搬送速度を向上でき、蓋基体の上面に、下側印刷層、上側印刷層を順次積層し、前記蓋基体の下面にスペーサを一体に形成したことによって、スペーサを加えた厚みによって蓋自体の強度が確保されることのみならず、スペーサが、当該景品用容器の内部の空間に充填されることで、意図しない蓋に対して加わる応力を分散することができ、耐久性を発揮できる優れた景品用容器を実現した。
【0029】
また、本発明は、上面を開口する合成樹脂製の容器本体と該容器本体の開口を塞ぐ合成樹脂製の蓋体とを備え、容器本体は、景品を保持するための景品保持部と、ICタグを保持するためのICタグ保持部を備え、蓋体は、透明の蓋基体と、該蓋基体のうち前記景品保持部に重なる箇所を景品視認窓とし、該景品視認窓以外の蓋基体の上面に印刷層を備え、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において使用される景品用容器において、印刷層は、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層とし、マスキング層は、酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料を含有し、且つカーボンの含有率を0.8重量%以下としたインク基剤からなることとし、蓋基体の下面に下側印刷層を備え、更にその下面にスペーサを設けた景品用容器としたことで、下側印刷層であるマスキング層の酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料によって、ICタグで利用する電磁波を透過させ、且つ、顔料としての機能を確保しながら顔料密度を高めることで、赤外線の透過を減少させ、従来の多量のカーボンブラックによって赤外線吸収性能を得ていた景品用容器と同等の赤外線吸収性能を発揮でき、下側印刷層がICタグへの電磁波を透過させることで、ICタグによる容易な景品の真贋の区別や入出金管理機能が阻害されることがなく、また、該下側印刷層が赤外線を吸収することで、景品換金装置内での景品容器の検知性能を向上させ、搬送速度を向上でき、蓋体を容器本体から外さない限り、下側印刷層の磨耗が生じることがなく、下側印刷層を十分に保護できる、優れた耐久性を発揮できる景品用容器を実現した。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1に係る景品用容器を示す斜視図、図2は同実施例1に係る景品用容器の分解状態を示す斜視図、図3は同実施例1に係る景品用容器に景品を封入する状態を示す斜視図、図4は同実施例1に係る景品用容器の(1)平面図、(2)正面図及びその一部拡大説明図(背面図は正面図と対称に付き省略。)、(3)右側面図(左側面図は右側面図と同一につき省略。)、(4)底面図、図5は同実施例1に係る景品用容器の(1)A−A拡大断面図及びその一部拡大図、(2)分解状態を示す拡大説明断面、図6は同実施例1に係る景品用容器の蓋体を示す(1)平面図、(2)正面図(背面図は正面図と同一につき省略)、(3)右側面図(左側面図は右側面図と同一につき省略)、(4)底面図、図7は同実施例1に係る景品用容器の容器本体1を示す(1)平面図、(2)正面図(背面図は正面図と同一につき省略)、(3)右側面図(左側面図は右側面図と同一につき省略)、(4)底面図である。
【0031】
本発明の実施例1に係る景品用容器Zは、図1、図4、図5に示すように、厚さ3mm、幅86mm、奥行54mm程度の大きさを有するカード形状を有する景品用容器Zであり、合成樹脂製の容器本体1、合成樹脂製の蓋体2、基板フィルム3を主要構成とする。
【0032】
蓋体2に形成された透明の景品視認窓200からは内部に格納された景品6が当該蓋体2を透過して目視でき、前記蓋体2に形成された透明のホログラム視認窓201からは内部に設けられたホログラム5が当該蓋体2を透過して視認できる。また、景品用容器Zは、内蔵された基板フィルムに設けられたICタグによって非接触で情報の送受信を行うことができる。即ち、視覚的にはホログラム、景品を目視でき、電子的にはICタグに書き込まれた情報を用いて、真贋いずれであるかを識別でき、併せて、景品用容易の管理を可能とする。
【0033】
そして、本発明の実施例1に係る景品用容器Zは、ICタグを有する基板フィルムを保持した状態で、蓋体の下部に設けたスペーサが当該景品用容器Zの内部の空間に嵌り込む構成を有する。
当該構成によって、景品6を収納した景品用容器Zが、落下等による予期しない衝撃を受けることがあっても、景品用容器Zに対する負荷を分散緩和し、景品6やICタグの破損等を防止する。
以下に、本実施例1に係る景品用容器Zの各部の構成及び組立状態について、説明する。
【0034】
本実施例1に係る容器本体1は、ABS樹脂からなり、底板17の上面(即ち、容器本体1の内底面10)の周縁から上方に周壁11を形成した構成である。図2、図3、図5、図7に示すように、容器本体1の内底面10には、景品6を保持するための凹状の景品保持部12、ホログラム5を貼着するためのホログラム貼着面15、スペーサ22のズレを防止するスペーサ位置決め凸部13、基板フィルム3を位置決めするフィルム位置決め部14、当該内底面10と基板フィルム3とを接着する両面テープ40を配置するためのテープ設置部16を設けてある。ホログラム貼着面15には、その縁部となる一部に、位置決め用目印150を設けてある。
【0035】
景品保持部12は容器本体1の内底面10の略中央位置とし、景品保持部12を挟んで相互に平行する一対のスペーサ位置決め凸部13を配置してある。スペーサ位置決め凸部13は、スペーサの位置決めのみならず、容器本体側から蓋体2に当接することで、蓋体2の強度を補完する役割を果たす。
また、テープ設置部16は、内底面10に凹部形状として設ける。凹部形状とすることによって、接着手段4である両面接着テープ40の設置位置を明瞭とするだけでなく、両面接着テープ40の厚みが景品用容器Z全体の厚みの増加となることを低減する効果を得ることができる。
【0036】
基板フィルム3は透明の合成樹脂製シートの片面にエッチング、剥離、ICタグ等のボンディング工程等を経て製造される一般的な製造方法によって製造される。当該基板フィルム3は、景品収納容器に収納される景品6とホログラム5の視認性を向上させるべく、景品6及びホログラム5を被覆しないために、フィルム抜き穴32を形成してある。また基板フィルム3の一端には、前記フィルム位置決め部14の形状に応じた位置決め用切欠部31を設けてある。本実施例における基板フィルム3の配置では、回路30を形成した面を下面側とする。回路30に含まれる記憶装置内には、電子情報として、景品用容器Zの蓋体2に記載される金額(金種)の情報、店舗の所在する地域情報、店名情報、景品用容器の固有番号が格納されている。
【0037】
本実施例1に係る蓋体2は、図6に示すように、透明樹脂板からなる蓋基体20と、該蓋基体20の上面に形成される印刷層とからなる。印刷層は、上側印刷層23及び下側印刷層24からなる。また、前記印刷層は、いずれも容器本体1の内底面10に形成した保持部とホログラム貼着面15に対応する位置には、形成しない。このため蓋体2における前記保持部とホログラム貼着面15に対応する位置には、透明樹脂板のみが矩形輪郭状の窓として表れる、景品視認窓200、ホログラム視認窓201として形成される。また、本実施例1においてスペーサは蓋基体20の下面に一体に形成されている。
【0038】
本実施例1における下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層である。ICタグへの電磁波を通過させるために、酸化チタン及びフタロシアニンを顔料として、マスキング層中、約38重量%としており、これらの顔料密度を高めることにより、赤外線吸収性能を得るものである。本実施例では、株式会社セイコーアドバンス製の顔料を使用している。
【0039】
図3に示すように、以上の構成からなる容器本体1の内底面10のホログラム貼着面15にホログラム5を貼着し、景品保持部12に景品6を嵌め込み、テープ設置部16に接着手段4として両面接着テープ40の片面を貼着する。
【0040】
次に上方から位置決め用切欠部31とフィルム位置決め部14とを一致させて、回路30を下面側とした基板フィルム3を載置し、両面接着テープ40によって、該基板フィルム3と容器本体1の内底面10とを固着する。景品6、ホログラム5及び一対のスペーサ位置決め凹部13は、基板フィルム3のフィルム抜き穴32内に位置するため、基板フィルム3に被覆されない。
【0041】
更に、容器本体1の上方から、蓋体2を載置する。この際に、容器本体1のスペーサ位置決め凸部13がスペーサ22(スペーサ部22a)間に僅かに嵌り込み、スペーサ位置決め凸部13とスペーサ22(スペーサ部22a)とが当接することで、スペーサ22(スペーサ部22a)及び該スペーサ22(スペーサ部22a)に一体に形成された蓋体2が、容器本体1と確実に固定される。そして、景品用容器Zの内部の空間にスペーサ22(スペーサ部22a)が入ることで容器全体の強度が高くなり、景品用容器Zの耐久性が向上する。
【0042】
配置された容器本体1と蓋体2を、高周波溶着手段によって溶着し、景品用容器Z内への景品の封入が完了する。
【0043】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2に係る景品用容器Zについて説明する。本実施例2に係る景品用容器Zは、容器本体1及びフィルム基板3は実施例1と共通し、図8に示すように、蓋体2の構成の一部が相違するものである。
【0044】
本実施例2に係る景品用容器Zにおける蓋体2は、蓋基体20とスペーサ22(スペーサ部22b)とが別体となっており、蓋基体20の上面側に上側印刷層23、蓋基体20の下面側に下側印刷層24を形成してある。更に、下側印刷層24の下にスペーサ22を設けてある。
【0045】
また、実施例2に係る景品用容器Zにおける蓋体2は、下側印刷層24が蓋基体20の下面側に配置されることから、蓋体2を容器本体1から外さない限り、下側印刷層24の磨耗が生じることがなく、当該下側印刷層24を十分に保護することができる。
【0046】
しかしながら、本発明は、印刷層が、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層である構成を有していれば、必ずしも実施例1及び実施例2に示す手段によって強度を確保する必要はない。
【0047】
即ち、容器本体1及び蓋体2において十分な強度が得られるのであれば、例えば、他の実施例として図9に示すように、実施例1及び実施例2におけるスペーサ22(スペーサ部22a、22b)を不要とし、内部に高さ0.5mm程度の空隙を形成することもできる。尚、当該他の実施例に係る景品用容器Zは、実施例1と外形に関しては同サイズであり、厚さ3mm、幅86mm、奥行54mm程度の大きさを有する。
【0048】
また、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、例えば、上側印刷層23の上に無色透明の保護膜の層を形成して、印刷層を保護するコーティング層を設けることができる。但し、コーティング層は、ICタグの動作に必要な電磁波に影響を与えないものとする必要がある。
【0049】
更に景品6についても、ICタグの動作に必要な電磁波に影響を与えない材質のものであればよい。また、本発明は、従来の種々の公知技術の構成を適宜付加することができる。例えば、所謂ブラックライト(濃青色の近紫外線を放射するライト)によって発光される蛍光塗料を蓋体若しくは容器本体1に設けることもできる。また、蓋体の上面において、上側印刷層23上に蛍光塗料を塗布してなる蛍光塗料層を設けることもできる。当該構成を用いることによって、ブラックライト(濃青色の近紫外線を放射して、蛍光塗料を発光させるライト)を景品用容器Zに当てることで、蛍光塗料が発光し、景品用容器Zの真贋を確認することができる。
【0050】
以上に各実施例として示した景品用容器Zは、ICタグを内蔵しながら、ICタグの読取不良を起こすことなく、従来より普及した、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において、使用することができる。
【0051】
本実施例に係る景品用容器は、以下の方法によって使用する。本発明に係る景品用容器は、景品が封入された状態で、景品発行機内に格納されている。景品用容器の蓋体表面には、換金額に対応した額面を金種として表示してある。また、景品用容器に内蔵されたICタグには、電子情報として、金種、遊戯場の所在地域、店名、景品用容器の固有番号が記録されている。
【0052】
パチンコ玉等の賞品を、前記景品発行機へ投入すると、景品発行機が投入した賞品の数量をカウントし、換金額に応じた金種の景品用容器を所定枚数払い出す。
このときに景品発行機は、店内のホストコンピュータと接続されてあり、ホストコンピュータのCPUは、景品発行機で発行した景品用容器の前記電子情報を、景品発行機から受取り、景品交換所に設置された景品換金装置へ送信する。
【0053】
景品の封入された景品用容器を、景品交換所の景品換金装置が読み取り、ホストコンピュータから送信された前記電子情報と、景品換金装置で読み取られた電子情報との一致を確認して、真贋を識別し、併せて景品用容器の管理を行う。
景品換金装置での読み取りは、以下の手順によって行われる。
【0054】
景品換金装置投入口から搬送手段によって景品が封入された景品用容器が搬送され、赤外線センサーによって、搬送されたことが検知される。本実施例に係る景品用容器は、下側印刷層によって赤外線吸収能が向上しているため、従来よりも20%程度搬送速度が速い状態でも、検知が可能となる。
【0055】
検知後、景品用容器に内蔵されたICタグの読み取り工程において、前記した電子情報の読み取りを行う。本実施例に係る景品用容器は、前記下側印刷層は、酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料を含有し、且つカーボンを実質的に含まないインク基材を用いることによって、ICタグとの送受信を良好に保つことができる。
【0056】
読み取った電子情報は、ホストコンピュータのCPUが送信した電子情報と対比し、景品用容器の固有番号の一致、不一致を識別することで、真贋の識別が可能となる。また、電子情報のうち、景品用容器の固有番号のみならず、電子情報における金種、遊戯場の所在地、店名のデータは、景品用容器の流通経路等を管理する手段とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1に係る景品用容器を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る景品用容器の分解状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係る景品用容器に景品を封入する状態を示す組立説明図である。
【図4】本発明の実施例1に係る景品用容器を示す(1)平面図、(2)正面図、(3)右側面図(左側面図は右側面図と同一につき省略。)、(4)底面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る景品用容器の(1)A−A拡大断面図、(2)分解状態を示す拡大説明断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る景品用容器の蓋体を示す(1)平面図、(2)正面図及びその一部拡大図、(3)右側面図、(4)底面図である。
【図7】本発明の実施例1に係る景品用容器の容器本体を示す(1)平面図、(2)正面図(背面図は正面図と同一につき省略。)、(3)右側面図(左側面図は右側面図と同一につき省略。)、(4)底面図である。
【図8】本発明の実施例2に係る景品用容器の蓋部を示す(1)拡大縦断面図、(2)分解状態を示す拡大説明断面図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る景品用容器の分解状態を示す説明拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 容器本体
10 内底面
11 周壁
12 景品保持部
13 スペーサ位置決め凸部
14 フィルム位置決め部
15 ホログラム貼着面
150 位置決め用目印
16 テープ設置部
2 蓋体
20 蓋基体
200 景品視認窓
201 ホログラム視認窓
22 スペーサ
22a スペーサ部
22b スペーサ部
23 上側印刷層
24 下側印刷層(マスキング層)
3 基板フィルム
30 回路
31 位置決め用切欠部
32 フィルム抜き穴
4 接着手段
40 両面接着テープ
5 ホログラム
6 景品
Z 景品用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口する合成樹脂製の容器本体と該容器本体の開口を塞ぐ合成樹脂製の蓋体とを備え、容器本体は、景品を保持するための景品保持部と、ICタグを保持するためのICタグ保持部を備え、蓋体は、透明の蓋基体と、該蓋基体のうち前記景品保持部に重なる箇所を景品視認窓とし、該景品視認窓以外の蓋基体の上面に印刷層を備え、搬送手段と赤外線を用いた搬送検知手段を備えた景品換金装置において使用される景品用容器において、印刷層は、上側印刷層と下側印刷層を備え、下側印刷層は、赤外線を吸収し、且つICタグへの電磁波を通過させるマスキング層としたことを特徴とする景品用容器。
【請求項2】
マスキング層は、酸化チタン及びフタロシアニンを含有する電磁波透過性の顔料を含有し、且つカーボンを実質的に含有しないインク基剤からなることを特徴とする請求項1記載の景品用容器。
【請求項3】
蓋基体の上面に、下側印刷層、上側印刷層を順次積層し、前記蓋基体の下面にスペーサを一体に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の景品用容器。
【請求項4】
蓋基体の上面に上側印刷層を形成し、該蓋基体の下面に下側印刷層を形成し、下側印刷層の下面にスペーサを取着したことを特徴とする請求項1又は2記載の景品用容器。
【請求項5】
蓋基体の上面に上側印刷層を形成し、該蓋基体の下面に下側印刷層を形成し、容器本体の内底面に凹部を形成し、蓋体の下面と容器本体の凹部を除く内底面との間に高さ0.5mm程度の内部空間を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の景品用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−183385(P2009−183385A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24787(P2008−24787)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(390034304)株式会社トーア (1)
【Fターム(参考)】