説明

曝気槽を用いた有機排水処理方法

【課題】小スペースでの曝気処理が可能な有機排水処理方法を提供する。
【解決手段】壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成され、かつ、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板12を底面に配置することにより形成された流路14を備える曝気槽10に有機排水を被処理水として導入する。導入口15を通じて導入された被処理水を流路14に流通させ、流路14において散気管13を用いて被処理水に曝気処理を行い、かつ、被処理水を仕切り板12の表面の光触媒と接触させることにより光触媒処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機排水処理方法に関し、とりわけ曝気槽を用いた有機排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭排水、家畜排水、工場排水、下水等の有機物を含む排水(以下、「有機排水」を処理する方法として様々な方法が提案されている。その方法の一つとして、有機排水に空気を供給することによって有機排水中の溶存酸素を増大させて水質の浄化を行う曝気処理がある。
【0003】
曝気処理方法としては、有機排水を効率よく浄化するために、曝気槽を下部から取水した処理水を曝気槽上部から再度流入し、処理水を曝気槽内で循環させる方法(例えば、特許文献1)、曝気槽内に迂回流路を形成し、その迂回流路内にろ材を配置する方法(例えば、特許文献2)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、従来の一般的な曝気槽は容量が大きく、曝気処理を用いて有機排水を処理する場合、多大なスペースが必要となるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−587号公報
【特許文献2】特開2000−246282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、小スペースでの曝気処理が可能な有機排水処理方法及び曝気槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機排水処理方法は、底面に流路を備える曝気槽に有機排水を被処理水として導入すること、及び、前記被処理水を前記流路に流通させ、前記流路において被処理水に光触媒処理及び曝気処理を行うことを含み、前記曝気槽は、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成され、かつ、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板を底面に配置することにより形成された前記流路を備える曝気槽である、有機排水処理方法である。
【0007】
本発明の曝気槽は、被処理水に光触媒処理及び曝気処理を行うための曝気槽であり、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板によって底面に形成された流路と、前記流路に配置された散気手段とを有し、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成されている、曝気槽である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小スペースでの曝気処理が可能な有機排水処理方法及び曝気槽を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[被処理水]
本発明において被処理水とは、曝気槽における曝気処理及び光触媒処理の処理対象となる液体のことをいい、例えば、有機排水のみならず、曝気処理及び光触媒処理を行い再度曝気槽に導入する有機排水等を含む。有機排水としては、例えば、有機物を含む排水が挙げられる。有機物を含む排水としては、例えば、し尿、生活雑排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水、食品加工工場等の工場排水、大型水槽、緩衝池、プール、風呂、スーパー銭湯及び温泉等の循環水(湯)等が挙げられる。中でも、本発明の有機排水処理方法及び曝気槽は、食品加工工場等の工場排水、プール、風呂、スーパー銭湯及び温泉等の循環水(湯)に適している。
【0010】
[曝気処理]
本発明において曝気処理とは、被処理水中に空気(酸素)を注入することをいい、好適には微生物、とりわけ好気性微生物を活性化させ、好気性微生物により被処理水中の有機物の酸化、分解及び吸着等を行うこと、より好適には被処理水の有機物の濃度、生物化学的酸素要求量(BOD)及び/又は化学的酸素要求量(COD)等を低減させることをいう。なお、一般的には、曝気処理は、曝気槽に配置された散気手段を通じて被処理水に空気を供給することにより行われる。
【0011】
[光触媒処理]
本発明において光触媒処理とは、光触媒を活性化できる光の照射下で、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板に被処理水を接触させることをいう。上記光照射下で、光触媒と被処理水を接触させることにより、例えば、被処理水中の有機物や汚泥等を光触媒により酸化・分解することができ、より好ましくは被処理水中の有機物の濃度、生物化学的酸素要求量(BOD)及び/又は化学的酸素要求量(COD)、臭気等を低減させることができる。光触媒を活性化できる光としては、例えば、太陽光及び紫外光等が挙げられ、中でも、エネルギーコストの点から、太陽光が好ましい。
【0012】
[有機排水処理方法]
本発明の有機排水処理方法は、底面に流路を備える曝気槽に有機排水を被処理水として導入すること、及び、被処理水を前記流路に流通させ、前記流路において被処理水に光触媒処理及び曝気処理を行うことを含み、前記曝気槽は、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成され、かつ、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板を底面に配置することにより形成された前記流路を備える、有機排水処理方法である。本発明の有機排水処理方法によれば、仕切り板により形成された流路を底面に備える曝気槽を使用するため、小スペースで曝気処理を行うことができる。また、流路を流通させる被処理水に曝気処理及び光触媒処理を行うことから、例えば、有機排水の脱色や、生物化学的酸素要求量(BOD)及び/又は化学的酸素要求量(COD)等を低減することができる。
【0013】
本発明の有機排水処理方法によれば、流路の仕切り板が少なくとも一方の表面に光触媒を有することから、例えば、曝気槽内における余剰汚泥の発生を抑制でき、また、被処理水中の有機物と光触媒との接触面を増加させることができる。さらに、流路を流通する被処理水に曝気処理を行うことから、例えば、被処理水に均一に空気を供給することができ、かつ、光触媒と被処理水(被処理水中の有機物)との接触面をさらに増加させることができる。このため、本発明の有機排水処理方法によれば、例えば、被処理水中の有機物と光触媒との反応効率を向上させることができ、有機排水の浄化効率を向上できる。
【0014】
本発明の有機排水処理方法において、浄化効率の向上の点から、曝気は、流路に配置された散気手段により行うことが好ましい。流路に流通させる被処理水の水位は、被処理水と接触する仕切り板表面の光触媒が太陽光を効率よく受光できる点から、例えば、8〜50cmであり、20〜35cmが好ましい。
【0015】
本発明の有機排水処理方法に使用する曝気槽は、被処理水の曝気処理及び光触媒処理を行うための槽であって、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板を底面に配置することにより形成された流路を備え、かつ、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂により形成されている。本発明の有機排水処理方法は、後述する本発明の曝気槽及び/又は多段曝気槽を使用して行うことができる。
【0016】
使用する曝気槽は1つであっても良いし、複数であっても良い。処理効率の向上の点から、上記流路を備える曝気槽を複数使用することが好ましく、小スペース化の点から、複数の上記曝気槽を多段に積層して使用することが好ましく、浄化効率のさらなる向上及び小スペース化の点から、積層された曝気槽の流路を直列に接続して使用することがより好ましい。このように多段に積層された曝気槽を使用することにより、光触媒の受光及び光触媒処理に適当な上記範囲の水位であっても、十分な処理量を確保することができる。したがって、本発明の有機排水処理方法において、複数の前記曝気槽が多段に積層され、積層された曝気槽の流路が直列に接続された多段曝気槽に被処理水を導入し、被処理水に光触媒処理及び曝気処理を連続して行うことが好ましい。本発明において「流路が直列に接続」とは、一本の流路を形成するように複数の曝気槽の流路が接続されていることをいい、好適には、最上段に位置する曝気槽に導入された被処理水が、一本の連続した流路を通じて最下段に位置する曝気槽から排出されるように複数の曝気槽の流路が接続されていることをいう。
【0017】
本発明の有機排水処理方法において、曝気槽から排出される被処理水を同一又は異なる曝気槽に導入し、被処理水を循環させながら曝気処理及び光触媒処理を繰り返し行っても良い。
【0018】
本発明の有機排水処理方法は、さらに、被処理水の水質を測定することを含んでいても良い。曝気槽から排出される被処理水の水質に応じて、例えば、曝気処理及び光触媒処理を行う時間を適宜決定できるからである。水質の指標としては、例えば、浮遊物質(SS)、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、全有機炭素(TOC)及び全窒素(T−N)等が挙げられ、中でも生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)が好ましい。
【0019】
[曝気槽]
本発明の曝気槽は、被処理水に光触媒処理及び曝気処理を行うための曝気槽であり、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板によって底面に形成された流路と、前記流路に配置された散気手段とを有し、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成されている曝気槽である。本発明の曝気槽は、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板によって流路が形成されていることから、小型化が可能である。また、本発明の曝気槽によれば、曝気処理と光触媒処理との双方を行うことができるため、例えば、曝気槽内における余剰汚泥の発生を抑制することができる。さらに、本発明の曝気槽によれば、被処理水を仕切り板によって形成された流路を流通させるため、例えば、被処理中の有機物と光触媒及び/又は曝気した空気との接触面を増加させることができる。このため、本発明の曝気槽によれば、例えば、高い浄化効率で有機排水の処理を行うことができる。
【0020】
流路は、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板によって曝気槽の底面に形成されている。被処理水との接触時間を長くできることから、曝気槽の導入口から排出口まで至るように流路が仕切り板によって形成されていることが好ましい。流路の形状は、特に制限されず、例えば、蛇行流路、屈曲流路等が挙げられる。
【0021】
仕切り板の配置は、形成する流路の形状に応じて適宜設定すればよく、例えば、千鳥状に仕切り板を配置することにより蛇行流路を形成することができる。
【0022】
仕切り板は、底面に対して傾けて配置しても良く、光触媒を有する表面が太陽光の入射角に正対するように配置することが好ましい。これにより、より多くの光を仕切り板に受光させることができる。仕切り板の面と曝気槽の底面とのなす角が、例えば、45〜90度であり、より多くの光を受光できることから、50〜80度が好ましく、太陽光の入射角の点から、略60度がより好ましい。
【0023】
仕切り板の大きさは、曝気槽の大きさ及び形成する流路の深さ等に応じて適宜決定できる。幅は、例えば、50〜500cmである。高さは、例えば、8〜70cmであり、好ましくは20〜50cmである。仕切り板の数は、曝気槽の大きさ及び形成する流路の幅に応じて適宜決定でき、例えば、2、3、2、3、4、5、6、7、8、9又は10程度であり、好ましくは4、5、6、7、8又は9である。
【0024】
仕切り板は、少なくとも一方の表面に光触媒を有していれば良く、光触媒処理効率の点から、両方の表面に光触媒を有することが好ましい。また、上述のように、仕切り板を傾けて配置する場合は、より多くの光を受光できる側の表面、すなわち、曝気槽の上面側の表面に光触媒を有することが好ましい。仕切り板としては、例えば、支持体と光触媒層とを含み、支持体の少なくとも一方の表面に光触媒層を形成したもの、及び、光触媒材料と支持体材料とを混合し一体化して形成したもの等が挙げられる。光触媒層は、光触媒材料を、例えば、練りこみ、吹き付け、焼き付け、溶射、塗布等することにより形成することができる。光触媒としては、例えば、酸化チタン等が挙げられる。酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナタース型酸化チタン及びブルッカイト型酸化チタン等が挙げられ、中でも、触媒反応効率の点からアナタース型酸化チタンが好ましい。支持体の材質としては、例えば、アクリル樹脂及びウレタン樹脂等の樹脂、セラミック及び金属等が挙げられ、中でも、アクリル樹脂及びウレタン樹脂等の樹脂が好ましい。また、支持体の材質は、光触媒作用向上の点から、光透過性樹脂であることが好ましい。
【0025】
散気手段は、公知の散気手段を使用することができ、例えば、散気管及び散気板等が挙げられる。散気手段は、例えば、複数の微細孔を備えていても良い。
【0026】
曝気槽は、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成されている。光透過性樹脂を使用する部分は、光触媒(仕切り板)への光照射を考慮して適宜設定でき、光触媒反応効率の点から、壁面及び底面の双方が光透過性樹脂で形成されていることが好ましい。光透過性樹脂としては、例えば、光透過性を有する強化繊維プラスチック(FRP)等が挙げられ、中でも、強度の点から光透過性を有するFRPが好ましい。FRPとしては、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ボロン繊維強化プラスチック(BFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP,KFRP)及びガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等が挙げられる。本発明において光透過性樹脂は、紫外光(例えば、波長:380nm)における透過率が、例えば、50%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
【0027】
曝気槽の上面は、開放されていても良いし、光透過性の蓋によって被蓋されていても良く、効率よく太陽光を受光できる点から、開放されていることが好ましい。
【0028】
曝気槽の形状は、例えば、箱形、円筒形等が挙げられる。曝気槽の大きさは、箱形の場合、幅及び/又は奥行きは、例えば、50〜500cmであって、高さは、例えば、10〜70cmであり、好ましくは30〜55cmである。流路の幅は、例えば、2〜20cmである。流路の深さは、曝気槽の高さに応じて適宜決定でき、例えば、8〜50cmであり、好ましくは20〜35cmであり、より好ましくは曝気槽の高さの3/5程度の深さとすることである。
【0029】
曝気槽の壁面にはパイプが接続可能な導入口及び排出口が形成されていることが好ましい。排出口の位置(高さ)は、特に制限されないが、排出口の位置によって曝気槽内の流路に流通する被処理水の液面を調節する点から、例えば、曝気処理及び光触媒処理を効率よく行うことができる十分な流路の深さ(被処理水の量)を確保できる位置であることが好ましい。
【0030】
曝気槽内において導入口から排出口へむかう被処理水の流れが生じるように、曝気槽の底面が水平面に対して傾斜していても良い。
【0031】
曝気槽は、光触媒処理効率を向上させる点から、光源を備えていても良い。光源は、紫外光を含む光を照射可能な光源であれば良く、中でも、400nm以下の波長の光を照射可能な光源が好ましい。
【0032】
[多段曝気槽]
本発明は、さらにその他の態様として、複数の曝気槽を備える多段曝気槽であって、前記曝気槽は、本発明の曝気槽であり、前記複数の曝気槽は、多段に積層して配置され、かつ、パイプによって流路が直列に接続されている、多段曝気槽に関する。本発明の多段曝気槽によれば、上記流路が形成された曝気槽が複数、多段に積層して配置されていることから、例えば、小型化が可能である。また、本発明の多段曝気槽によれば、流路を流通する被処理水の水位を光触媒処理効率の点から低水位とした場合であっても、十分な処理量を確保することができる。
【0033】
下段に積層された曝気槽内への光の流入の点から、隣接する2つの曝気槽は、離間して配置されていることが好ましい。曝気槽と曝気槽との間隔は、例えば、50〜100cmであり、好ましくは70〜80cmである。曝気槽は、略均等な間隔で配置されていることが好ましい。
【0034】
パイプは、公知のパイプが使用できるが、光透過性のパイプであることが好ましい。
【0035】
積層する曝気槽の数は、設置場所のスペース及び被処理水等に応じて適宜決定でき、例えば、2以上であり、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9又は10程度であり、より好ましくは4、5、6、7又は8である。
【0036】
本発明は、さらにその他の態様として、本発明の有機排水曝気槽又は本発明の多段曝気槽を備える、有機排水処理装置を含む。本発明の有機排水処理装置によれば、本発明の曝気槽又は本発明の多段曝気槽を備えるため、小型化が可能である。
【0037】
つぎに、本発明の有機排水処理方法及び曝気槽の例について図面を用いて説明する。但し、本発明は以下の例に制限されない。
【0038】
図1〜3は、本発明の有機排水処理方法に使用する曝気槽の構成の一例を概略的に示す図面であって、図1が斜視図、図2が側面断面図、図3が上面図である。
【0039】
図1に示す多段曝気槽1は、4つの曝気槽10が垂直方向に略均等な間隔で4段に積層されている。積層された曝気槽10は、曝気槽から排出された被処理水がその曝気槽の真下の曝気槽に導入可能なように各曝気槽10の排出口16と導入口15とがパイプ11によって接続されている。すなわち、1段目の曝気槽10の排出口16と2段目の曝気槽0の導入口15とがパイプによって接続され、2段目の曝気槽10の排出口16と3段目の曝気槽0の導入口15とがパイプによって接続され、3段目の曝気槽10の排出口16と4段目の曝気槽0の導入口15とがパイプによって接続されている。隣接する曝気槽10は支持体を介して離間した状態で配置され、曝気槽10の底面とその曝気槽10の真下に位置する曝気槽10の上面との間には空間が設けられている。
【0040】
曝気槽10は、図1から3に示すように、壁面と底面とを備え、上面が開放した箱形の容器、仕切り板12及び散気管13を含み、曝気槽10の壁面には導入口15と排出口16とが形成されており、それぞれにはパイプ11が接続されている。曝気槽10の底面には、5枚の仕切り板12が、曝気槽10の対向する壁面から互い違い(千鳥状)となるように略均等な間隔で配置され、容器内に蛇行状(ジグザグ)の流路14を形成している。また、仕切り板12は、曝気槽10の底面と仕切り板12の面とのなす角は略60度となるように配置されている。散気管13は、仕切り板12によって形成された流路14に配置されている。散気管13はブロア(図示せず)が接続可能である。
【0041】
図1に示す多段曝気槽1を用いた有機排水の処理方法の一例について説明する。
【0042】
まず、最上段の曝気槽10に、導入口15を通じて被処理水を導入する。導入された被処理水は、流路14を流通する。流路14を流通する間に、被処理水に曝気処理及び光触媒処理が行われる。曝気処理は、ブロア(図示せず)から散気管13を通じて被処理水内に空気(酸素)を供給することによって行うことができる。光触媒処理は、仕切り板12表面の光触媒に光が照射された状態で、被処理水と光触媒とを接触させることによって行うことができる。照射する光は、紫外光(波長400nm以下)を含んでいれば良く、例えば、太陽光であっても良いし、別途設けた光源であっても良い。
【0043】
そして、流路14を流通させることによって曝気処理及び光触媒処理された被処理水は、排出口16から曝気槽10の外部に排出される。曝気槽10の外部に排出された被処理水は、パイプ11を通じて真下の曝気槽10に、導入口15を通じて導入され、上述の曝気処理及び光触媒処理が行われる。被処理水の排出は、例えば、排出口1からのオーバーフローにより行うことができる。
【0044】
このようにして、最上段の曝気槽10に導入された被処理水は、最下段の曝気槽10の排出口16から排出されるまでに、各曝気槽において曝気処理及び光触媒処理を繰り返し行われることによって、被処理水の有機物が酸化及び/又は分解等されることによって被処理水(有機排水)を浄化することができる。
【0045】
また、最下段の曝気槽10の排出口16に接続されたパイプと最上段の曝気槽10の導入口15に接続されたパイプとをそれぞれ分岐管とし、最下段の曝気槽10の排出口16から排出された被処理水を最上段の曝気槽10の導入口15に導入可能なように連結して多段曝気槽1内に循環経路を形成しても良い。この循環経路を通じてポンプ等を用いて被処理水を循環させることにより、例えば、浄化効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の有機排水処理方法及び曝気槽は、例えば、し尿、生活雑排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水、食品加工工場等の工場排水、大型水槽、緩衝池、プール、風呂、スーパー銭湯及び温泉等から排出される有機排水の浄化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明に使用する曝気槽の一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明に使用する曝気槽の一例を示す側面断面図である。
【図3】図3は、本発明に使用する曝気槽の一例を示す上面断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・多段曝気槽
10・・曝気槽
11・・パイプ
12・・仕切り板
13・・散気管
14・・流路
15・・導入口
16・・排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機排水の処理方法であって、
底面に流路を備える曝気槽に有機排水を被処理水として導入すること、及び、前記被処理水を前記流路に流通させ、前記流路において被処理水に光触媒処理及び曝気処理を行うことを含み、
前記曝気槽は、壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成され、かつ、少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板を底面に配置することにより形成された前記流路を備える曝気槽である、有機排水処理方法。
【請求項2】
複数の前記曝気槽が多段に積層され、積層された曝気槽の流路が直列に接続された多段曝気槽に被処理水を導入し、前記被処理水に光触媒処理及び曝気処理を連続して行うことを含む、請求項1記載の有機排水処理方法。
【請求項3】
前記曝気を、前記流路に配置された散気手段により行う、請求項1又は2に記載の有機排水処理方法。
【請求項4】
前記光触媒が、酸化チタンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の有機排水処理方法。
【請求項5】
被処理水に光触媒処理及び曝気処理を行うための曝気槽であり、
少なくとも一方の表面に光触媒を有する仕切り板によって底面に形成された流路と、
前記流路に配置された散気手段とを有し、
壁面及び/又は底面の少なくとも一部が光透過性樹脂で形成されている、曝気槽。
【請求項6】
前記仕切り板が千鳥状に配置されることにより蛇行流路が形成されている、請求項5記載の曝気槽。
【請求項7】
前記仕切り板の面と曝気槽の底面とのなす角が、45〜90度である、請求項5又は6記載の曝気槽。
【請求項8】
前記仕切り板は、支持体と前記支持体の少なくとも一方の表面に形成された光触媒層とを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の曝気槽。
【請求項9】
複数の曝気槽を備える多段曝気槽であって、
前記曝気槽は、請求項5から8のいずれか一項に記載の曝気槽であり、
前記複数の曝気槽は、多段に積層して配置され、かつ、パイプによって流路が直列に接続されている、多段曝気槽。
【請求項10】
隣接する2つの曝気槽は、離間して配置されている、請求項9記載の多段曝気槽。
【請求項11】
請求項5から8のいずれか一項に記載の曝気槽、又は請求項9若しくは10記載の多段曝気槽を備える、有機排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−279543(P2009−279543A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135772(P2008−135772)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】