説明

曝気用エジェクター

第1図に示された曝気用エジェクターは、所要長さの管体の中途部が絞られるように形成された所要長さの小径管部(11)内にコンプレッサーと連絡するコンプレッサー接続部(15)が設けられている。また、管体の一端部に設けられた接続口(16)に、水中ポンプの吐き出し口が接続される。前記した水中ポンプから圧送された水に前記コンプレッサーから圧送された空気を噴射して前記水に酸素を多量に溶解させた水を生成し、該水を前記管体の他端部に設けられた放出口(17)から放出させる。 この前記した放出口側の前記小径管部縁部から前記放出口までの距離(A)と、前記した水中ポンプの吐き出し口側の前記小径管部縁部から前記接続口までの距離(B)との比であるA/B比を0.40〜0.84程度にすることで、効率よく多量の酸素を水に溶解させた水を生成する曝気用エジェクターが提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、沼、池等に設置される溶存酸素増加装置に主に用いられる曝気用エジェクターに関する。
【背景技術】
湖沼や池等においては、有機物等による水質汚染によって溶存酸素量が低下し、嫌気性有害微生物の増殖等さらなる水質汚染を招いている。また、好気性の微生物を利用し、前記汚染の防除が図られている。そのような方法としては、例えば、本発明者による放線菌と溶存酸素増加水流発生装置を用いた養殖池の水質汚濁防除方法等が挙げられ、効果が得られている(特許2047353号公報参照)。前記溶存酸素増加水流発生装置は、コンプレッサーと筒状管体の曝気用エジェクターとを備えており、コンプレッサーから圧送された空気が該エジェクターの中央部に設けられた接続部からエジェクターに取り込まれ、酸素が水に溶解する構成となっている。
一般的なエジェクターは、エジェクター本体である筒状管体の中央部に外界(空気)と連結する接続部が設けられた形状を呈している。そして、内部を流れる水の流速に応じて生じる負圧のみによって該接続部を介して酸素が引き込まれ、水中に取り込まれる構成となっている。それに対し、本発明者による前記公報記載の溶存酸素増加水流発生装置においては、コンプレッサーからエジェクターに空気を圧送しているので、負圧によってのみ酸素の取り込みがなされる前述した一般的なエジェクターよりも多量かつ効率的に酸素を取り込むことができる効果が得られている。
より効率的に水質汚染の防除を行うためには、水中の溶存酸素量をさらに増大させることが求められる。
本発明は、より大量の酸素を効率よく水に取り込むことでき、水の汚染防除をより効率的に行うことが可能な曝気用エジェクターを提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記課題を解決するために、本発明にかかる曝気用エジェクターは、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明にかかる曝気用エジェクターは、所要長さの管体の中途部が絞られるように形成された所要長さの小径管部内にコンプレッサーと連絡するコンプレッサー接続部が設けられてなり、前記管体の一端部に設けられた接続口に水中ポンプの吐き出し口が接続され、前記水中ポンプから圧送された水に前記コンプレッサーから圧送された空気を噴射して前記水に酸素を溶解させた水を生成し、該水を前記管体の他端部に設けられた放出口から放出させる曝気用エジェクターであって、前記放出口側の前記小径管部縁部から前記放出口までの距離Aと、前記水中ポンプの吐き出し口側の前記小径管部縁部から前記接続口までの距離Bとの比であるA/B比が0.40〜0.84程度であることを特徴とする。
請求の範囲第2項記載の曝気用エジェクターは、請求の範囲第1項において、前記A/B比0.40〜0.84程度に替えて前記A/B比0.50〜0.63程度であることを特徴とする。
請求の範囲第3項記載の曝気用エジェクターは、請求の範囲第1項または第2項において、前記管体の内面に、前記放出口側の前記小径管部縁部から前記放出口に続くテーパ構造と、前記水中ポンプの吐き出し口側の前記小径管部縁部から前記接続口に続くテーパ構造とが設けられていることを特徴とする。
請求の範囲第4項記載の曝気用エジェクターは、請求の範囲第1項〜3項のいずれかにおいて、前記小径管部と前記コンプレッサー接続部とが、水の噴射方向に対して60°〜120°程度の角度で接続されてなることを特徴とする。
請求の範囲第5項記載の曝気用エジェクターは、請求の範囲第1〜4項のいずれかにおいて、前記小径管部を挟んで前記放出口側と前記接続口側との両側に連設される2つの大径管部が、それぞれ着脱可能に設けられたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明にかかる曝気用エジェクターの縦断正面図である。
第2図は、本発明にかかる曝気用エジェクターの他の態様を示した部分縦断正面図である。
第3図は、A/B比をパラメータにした酸素溶解速度の実験結果を示す線図である。
第4図は、酸素溶解速度の経時的な増加曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明をより詳細に説明するために、添付図面を参照してこれを説明する。
本実施形態にかかる曝気用エジェクター1は、第1図に示すように、所要長さの管状の小径管部11と、その小径管部を挟んで両側に配設された大径管部12とが、テーパー面14を介して一体的に連続形成されている。
また、小径管部11の中間部には、圧搾空気を生成するコンプレッサー(図示せず)と連絡させるコンプレッサー接続部15が突設されると共に、大径管部12の一端(図において右側)の外周面には、水中ポンプ(図示せず)と接続するためのネジ山(図示せず)が螺刻されている。なお、この一端側の開口部分が水中ポンプとの接続口16であり、他端側の開口部分(図において左側)が放出口17となる。
本実施形態においては、前記小径管部11とコンプレッサー接続部15とは、第1図に示したように、それらのなす角αが水の噴射方向Xに対して略60°で接続されている。
本発明の要部である、放出口17側の小径管部縁部11aから放出口17までの距離Aと、水中ポンプの吐き出し口側の小径管部縁部11bから接続口16までの距離Bとの比、すなわちA/B比は後述する。
以上のように構成された本実施形態にかかる曝気用エジェクター1は、まず、接続口16を水中ポンプに接続すると共に、ホースを介してコンプレッサー接続部15とコンプレッサーとを接続する。
そして、本実施形態にかかるエジェクター1を接続した水中ポンプを水中に設置し、水中ポンプとコンプレッサーを駆動させる。
水中ポンプから圧送された水は、小径管部11を通過し始めるとほぼ同時に、コンプレッサーから圧送された空気とぶつかり合って、圧送された水に酸素が溶解し、放出口17から溶存酸素量が増大された水が放出される。
なお、本明細書においてエジェクターの酸素溶解能力、すなわち水の溶存酸素量を増大させる能力を表す指標としては、酸素溶解速度を用いた。この酸素溶解速度の定義について、第4図のグラフを参照して説明する。溶存酸素濃度測定器は、電気化学計器株式会社製HDO−110型DO計を使用した。
ある温度における飽和酸素量に対する酸素飽和度〔飽和酸素量に対する溶存酸素量の割合(%)〕の増加を経時的に求めると、第4図に示されるように、酸素飽和度が40%から70%に増加する区間では、酸素飽和度は時間に対して一次的に比例して増加することがわかった。このことから、酸素飽和度が40%から70%までの範囲において1時間あたりに増加する酸素飽和度の値を酸素溶解速度(%/hr)と定義し、エジェクターの酸素溶解能力を表す指標とした。
ここで、上述したA/B比をパラメータにした酸素溶解速度の計測結果を第3図に示す。なお、この計測は、コンプレッサーの空気の吐出量が約70リットル/分、ポンプの水吐出量が約280リットル/分で行い、また、放出口17側の小径管部縁部11aと放出口17までの距離Aの値が大径管部12の内径(放出口17の内径)Rに対して約0.42〜1.50である範囲で行った。なお、前記内径Rに対し小径管部11の内径Rは約0.29、コンプレッサー接続部15の内径Rは約0.2であった。
図3に示されるように、A/B比が0.4〜0.84付近の場合が、酸素溶解速度の向上が顕著に認められ、特に0.5〜0.63の場合がさらに効果が顕著であり、0.6の時に最高値が計測された。なお、前述の公報記載の装置においてはA/B比は略1.0であったので、それと比較すると、約2倍近い酸素溶解能が得られた。
例えば、本実施態様において、前記内径Rが約70ミリメートル、前記内径Rが20ミリメートル、前記内径Rが14ミリメートルとし、放出口側の小径管部縁部11aから放出口17までの距離Aを60ミリメートル、水中ポンプの吐き出し口側の小径管部縁部11bから接続口16までの距離Bを100ミリメートルとしたとき、すなわち、A/B比を0.6とした場合に、酸素溶解速度が19.9(%/hr)となり、最高値が得られている。
また、この実施態様において、テーパ面14を放出口側の小径管部縁部11aから放出口17まで、および水中ポンプの吐き出し口側の小径管部縁部11bから接続口16まで達する長いテーパ構造とした場合、すなわち、第2図(a)(b)に例示したようなテーパ面141でも、酸素溶解速度は19.1(%/hr)であり良好であった。
なお、A/B比を上記の範囲に設定した場合の効果は、上述のように、距離Aの値が大径管部12の内径Rに対して小さい場合でも大きい場合でも同様の傾向を示した。
以上、本実施形態にかかる曝気用エジェクターを説明したが、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
上記実施態様においては、小径管部11と大径管部12とを着脱可能に形成している。これにより、部品の交換、例えば必要に応じて距離Aまたは距離Bの異なった大径管部12と交換すること等が容易な構成とすることができる。
また、小径管部11と大径管部12とが一体に形成されていても溶存酸素量の増加という本発明の効果を得ることができるのは言うまでもない。
なお上記実施形態においては、小径管部11とコンプレッサー接続部15とのなす角αを、第1図に示したように、水の噴射方向Xに対して略60°としているが、αを略90°、略120°として酸素溶解速度の違いを検討した。その結果、αを60°とした時は19.9(%/hr)、αを90°とした時は16.6(%/hr)、αを120°とした時は15.9(%/hr)、という実験結果が得られ、αが小さいほど酸素溶解速度が増加する傾向が認められ、上記したように、αを略60°とした時が最高であった。
さらに、本発明の曝気用エジェクターの材質は、その内部に生じる圧力に十分絶え得るものであれば特に限定されず、プラスチック、ステンレス等の金属等適宜選択して使用することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、圧送された水に圧送された空気を噴射し、かつ、酸素溶解に最適な管の長さ比を得たことで、効率よく酸素を高濃度で水に溶解させた水を生成することができる曝気用エジェクターが提供できる。本発明は、効率的な水質汚染の防除と養殖場に好適に用いられる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要長さの管体の中途部が絞られるように形成された所要長さの小径管部内にコンプレッサーと連絡するコンプレッサー接続部が設けられてなり、前記管体の一端部に設けられた接続口に水中ポンプの吐き出し口が接続され、前記水中ポンプから圧送された水に前記コンプレッサーから圧送された空気を噴射して前記水に酸素を溶解させた水を生成し、該水を前記管体の他端部に設けられた放出口から放出させる曝気用エジェクターであって、前記放出口側の前記小径管部縁部から前記放出口までの距離Aと、前記水中ポンプの吐き出し口側の前記小径管部縁部から前記接続口までの距離Bとの比であるA/B比が0.40〜0.84程度であることを特徴とする曝気用エジェクター。
【請求項2】
前記A/B比0.40〜0.84程度に替えて前記A/B比0.50〜0.63程度であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の曝気用エジェクター。
【請求項3】
前記管体の内面に、前記放出口側の前記小径管部縁部から前記放出口に続くテーパ構造と、前記水中ポンプの吐き出し口側の前記小径管部縁部から前記接続口に続くテーパ構造とが設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載の曝気用エジェクター。
【請求項4】
前記小径管部と前記コンプレッサー接続部とが、水の噴射方向に対して60°〜120°程度の角度で接続されてなることを特徴とする請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の曝気用エジェクター。
【請求項5】
前記小径管部を挟んで前記放出口側と前記接続口側との両側に連設される2つの大径管部が、それぞれ着脱可能に設けられたことを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の曝気用エジェクター。

【国際公開番号】WO2005/003043
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503384(P2005−503384)
【国際出願番号】PCT/JP2003/008530
【国際出願日】平成15年7月4日(2003.7.4)
【出願人】(595175301)株式会社応微研 (28)
【Fターム(参考)】