曲げセンサー
【課題】空間分解能が高く、高精度な計測を可能にする曲げセンサーを提供する事。
【解決手段】曲げセンサーは、可撓性を有する基板に第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとを備え、基板は可撓領域と非可撓領域とを含み、第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとは差動トランジスター対をなし、第一薄膜トランジスターは可撓領域に形成され、第二薄膜トランジスターは非可撓領域に形成されている。薄膜トランジスターはマイクロメーター単位で形成できるため、空間分解能が数マイクロメーターと極めて高い曲げセンサーを実現できる。
【解決手段】曲げセンサーは、可撓性を有する基板に第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとを備え、基板は可撓領域と非可撓領域とを含み、第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとは差動トランジスター対をなし、第一薄膜トランジスターは可撓領域に形成され、第二薄膜トランジスターは非可撓領域に形成されている。薄膜トランジスターはマイクロメーター単位で形成できるため、空間分解能が数マイクロメーターと極めて高い曲げセンサーを実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体表面の曲がり具合(曲率)を計測し得る曲げセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の曲げセンサーは、例えば特許文献1に記載されている様に、棒状となっており、棒が曲がっているか否かを検出していた。具体的には、図16(a)に示す様に、二本の棒(金属棒11と金属棒12)を重ね、曲げられた際に二本の棒に生ずる歪みの差を検出していた。例えば、図16(b)に示す様に、曲げセンサーが左に凸状となる様に曲げられると、左側に位置する金属棒11は伸び、反対に、右側に位置する金属棒12は縮み、これらの歪みに応じた電気抵抗の変化を検出して、棒の曲がり具合を計測していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−18206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の曲げセンサーは、棒が曲がっているか否かとの単純な情報しか検出できないという課題があった。例えば、図16(c)と(d)に示す様に、棒ABが左に凸状となる様に曲げられる場合、棒の端Aに近い場所で曲げられている(図16(c))のか、棒の端Bに近い場所で曲げられている(図16(d))のか、を区別できなかった。又、図16(e)に示す様に、S字型に二ヶ所曲がると、歪みが相殺されるので、真っ直ぐであるとの間違った検出結果を出していた。この様に、従来の曲げセンサーは検出結果にも信頼感を抱けないという課題があった。換言すれば、従来の曲げセンサーは、曲がり具合に関する空間的な分解能が殆ど無く、その為に棒がどう曲がっているのかを定量できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決する為になされたものであり、以下の形態又は適用例として実現する事が可能である。
【0006】
(適用例1) 本適用例に係わる曲げセンサーは、可撓性を有する基板に第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとを備え、基板は可撓領域と非可撓領域とを含み、第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとは差動トランジスター対をなし、第一薄膜トランジスターは可撓領域に形成され、第二薄膜トランジスターは非可撓領域に形成される事を特徴とする。
薄膜トランジスターはマイクロメーター単位で形成できるため、この構成によれば、空間分解能が数マイクロメーターと極めて高い曲げセンサーを実現できる。
【0007】
(適用例2) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとを備え、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとはカレントミラー対をなし、第一薄膜トランジスターと第五薄膜トランジスターとが電気的に接続可能であり、第二薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとが電気的に接続可能である事が好ましい。
この構成によれば、薄膜トランジスター群がカレントミラー型差動増幅回路を構成するので、曲がり具合(曲率)を電位差として読み出し、それらを正確に計測できる。
【0008】
(適用例3) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第一電源と第二電源と第七薄膜トランジスターとを備え、第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとは第一電源に接続し、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとは第七薄膜トランジスターに接続し、第七薄膜トランジスターは第二電源に接続する事が好ましい。
この構成によれば、第七薄膜トランジスターが定電流源と成り得るので、曲がりに関する信号増幅が線型となり、曲げストレスに比例した電位を正確に計測できる。
【0009】
(適用例4) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第一の方向に沿って第一選択回路を備え、第一薄膜トランジスターは第一の方向に沿って複数個形成されると共に、第一選択回路によって、第一の方向で選択され得る事が好ましい。
この構成によれば、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第一の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第一の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第一の方向に沿って複数ヶ所であっても、曲がり具合を場所の関数として定量的に正確に計測できる。
【0010】
(適用例5) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第一の方向と交差する第二の方向に沿って第二選択回路を備え、第一薄膜トランジスターは第二の方向に沿って複数個形成されると共に、第二選択回路によって、第二の方向で選択され得る事が好ましい。
この構成によれば、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第二の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第二の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第二の方向に沿って複数ヶ所であっても、曲がり具合を場所の関数として定量的に正確に計測できる。
【0011】
(適用例6) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとを備え、第三薄膜トランジスターは第一薄膜トランジスターと第五薄膜トランジスターとの間に配置され、第四薄膜トランジスターは第二薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとの間に配置され、第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターは第二選択回路にて制御される事が好ましい。
この構成によれば、第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとが第二の方向での選択回路の一部として機能するので、第二の方向に於ける曲がり具合の情報が干渉する事を防げる。
【0012】
(適用例7) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第二薄膜トランジスターは基準トランジスターとして動作し、第一薄膜トランジスターの電気特性と第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を検出する事が好ましい。
この構成によれば、可撓領域に位置する第一薄膜トランジスターの電気特性と非可撓領域に位置する第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を計測するので、曲がり具合を正確に計測できる。
【0013】
(適用例8) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第五薄膜トランジスターのドレインと第六薄膜トランジスターのドレインとの間にイコライズ回路を備える事が好ましい。
この構成によれば、曲がり具合の計測を空間的及び時間的に順次繰り返して行う際に、各計測の間に出力電位をリセットできるので、迅速に正確な計測を実現できる。
【0014】
(適用例9) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターと第七薄膜トランジスターとがN型であり、第二電源が負電源である事が好ましい。
この構成によれば、N型の薄膜トランジスターで曲げセンサーを実現できる。
【0015】
(適用例10) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターと第七薄膜トランジスターとがP型であり、第二電源が正電源である事が好ましい。
この構成によれば、P型の薄膜トランジスターで曲げセンサーを実現できる。
【0016】
(適用例11) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、非可撓領域には、基板よりも硬質な固定板が、基板に貼り合わされている事が好ましい。
この構成によれば、柔軟な基板を用いて、容易に可撓領域と非可撓領域とを作り分ける事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係わる曲げセンサーを模式的に示す斜視外観図。
【図2】実施形態1に係わる曲げセンサーの計測原理を説明する図。
【図3】実施形態1に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図4】実施形態1に係わる曲げセンサーのタイミングチャートを説明する図。
【図5】実施形態1に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図。
【図6】実施形態1に係わる曲げセンサーの断面の一部を説明する図。
【図7】可撓領域に於ける固定板の厚みと距離との関係を説明する図。
【図8】可撓領域に於ける固定板のたわみと距離との関係を説明する図。
【図9】(a);比較例の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態を表す図、(b);実施形態1の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態を表す図。
【図10】実施形態2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図11】実施形態2に係わる曲げセンサーのタイミングチャートを説明する図。
【図12】変形例1に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図13】変形例2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図14】変形例3に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図。
【図15】変形例4に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図。
【図16】従来の曲げセンサーを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。尚、以下の図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとする為、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0019】
(実施形態1)
「曲げセンサーの概要」
図1は、本実施形態に係わる曲げセンサーを模式的に示す斜視外観図である。以下、図1を用いて、まず曲げセンサーの概要を説明する。
【0020】
本実施形態に係わる曲げセンサー1は、柔軟なプラスチックフィルムなどの可撓性を有する基板2に形成される。基板2には非可撓領域21と可撓領域22とが存在する。可撓領域22はその名が示す通り可撓性を有しており、可撓性を有する基板2がそのまま使用されている。非可撓領域21は可撓性を有さず、通常は形状が固定している。本実施形態では基板2の裏面の一部に硬い固定板7を固定し、その部位で基板2が曲がらぬ様にして非可撓領域21としている。可撓領域22にはN型の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)(図3参照)が行列状に複数個配置され、検出回路3をなしている。一方、非可撓領域21にはN型の第二薄膜トランジスターTN2(図3参照)が備えられ、出力回路4の一部を構成している。第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第二薄膜トランジスターTN2とは差動トランジスター対とされている。第二薄膜トランジスターTN2は基準トランジスターとして動作し、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の電気特性と第二薄膜トランジスターTN2の電気特性とを比較して、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が配置されている部位の曲がり具合を検出する。
【0021】
検出回路3に配置された複数の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)は、検出回路3の外周部に配置された第一選択回路51と第二選択回路61とにより、順次選択される。基板2の一辺を第一の方向(x軸に平行な方向で、行方向とする)とし、第一の方向と交差する(ほぼ直交する)別の方向を第二の方向(y軸に平行な方向で、列方向とする)とすると、第一選択回路51と第一処理回路52とは、検出回路3の外側で第一の方向に沿って形成され、第二選択回路61と第二処理回路62とは、検出回路3の外側で第二の方向に沿って形成される。第一薄膜トランジスターTN1(i,j)は第一の方向に沿って複数個形成されると共に、第一選択回路51によって、第一の方向で選択される。同様に、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)は第二の方向に沿って複数個形成されると共に、第二選択回路61によって、第二の方向で選択される。こうして行列状に配置された第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が順次選択され、その電気特性が第二薄膜トランジスターTN2の電気特性とその都度比較される事により、曲がり具合に関する面分布が計測される。
【0022】
「計測原理」
図2は、本実施形態に係わる曲げセンサーの計測原理を説明する図である。以下、図2を参照して、曲がり具合を計測する原理を説明する。
【0023】
図2は、プラスチックフィルムに形成された薄膜トランジスターが、フィルムの湾曲に応じて電気特性を変化させる様子を示している。薄膜トランジスターはフィルム表面に形成されている。薄膜トランジスターのソースドレイン方向に関してフィルム表面が凸型になる様に湾曲させると、薄膜トランジスターはソースドレイン方向に引っ張り応力を受けて、伸びる歪みを被る。反対にフィルム表面が凹型になる様に湾曲させると、薄膜トランジスターはソースドレイン方向に圧縮応力を受けて、縮む歪みを被る。被る歪みに応じてトランジスターのオン特性は変化する。図2では、x軸にトランジスターが被る歪みを示し、y軸にその際のオン電流の変化率を示している。三角の実線はN型薄膜トランジスターの特性変化を示し、四角の破線はP型薄膜トランジスターの特性変化を示している。
【0024】
N型薄膜トランジスターでは、薄膜トランジスターがソースドレイン方向に引っ張り応力を受けるとオン電流は増加し、圧縮応力を受けるとオン電流は減少する。反対にP型薄膜トランジスターでは、薄膜トランジスターがソースドレイン方向に引っ張り応力を受けるとオン電流は減少し、圧縮応力を受けるとオン電流は増加する。オン電流の増減量は歪み量に対して線型関係にある。従って、フィルムが湾曲された際にオン電流の変化量を検出すれば、その際に薄膜トランジスターが被っている歪み量εTが分かる。一方、薄膜トランジスターが被っている歪み量εTと湾曲したフィルムの曲率半径RFとの間には、次の関係式が成り立つ。
【0025】
【数1】
ここで、dTは薄膜トランジスター層の厚み、dFはフィルムの厚み、YTは薄膜トランジスター層のヤング率、YFはフィルムのヤング率である。数式1を用いると、歪み量εTが分かれば、その場に於けるフィルムの曲率半径RFが定まる。こうして面状に分布した第一薄膜トランジスターTN1(i,j)のオン電流を調べれば、曲がり具合の面分布を計測出来る事になる。具体的には第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が配置された各点に於ける曲率半径RFijが定まる事になる。
【0026】
図2に示す様に、オン電流の歪みに対する変化量は僅かであるので、本実施形態では曲げ応力を被らぬ基準トランジスター(第二薄膜トランジスターTN2)と第一薄膜トランジスターTN1(i,j)との相違を差動増幅して、曲がり量(曲率半径Rij)を計測する。
【0027】
「回路」
図3は、本実施形態に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。以下、図3を参照して、曲げセンサーの回路を説明する。
【0028】
図1に示した様に、曲げセンサー1は検出回路3と出力回路4、第一選択回路51、第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62とを有する。検出回路3には第一薄膜トランジスターTN1(i,j)がM行N列の行列状に配置されている。MとNは1以上の整数である(1≦i≦M、1≦j≦N)。第一選択回路51は第一の方向に関してM行の行線R(i)から特定の一本の行線を選択する。従って、第一選択回路51は行選択回路でもある。第一選択回路51にはシフトレジスターやデコーダーが使用される。第一処理回路52は第一選択回路51からの選択信号を計測に適する様に加工する。具体的には選択電位を変換するレベルシフターや、高速で安定的に行線を選択する様にバッファーを備える。第二選択回路61は第二の方向に関してN列の列線C(j)から特定の一本の列線を選択する。従って、第二選択回路61は列選択回路でもある。第二選択回路61にはシフトレジスターやデコーダーが使用される。第二処理回路62は第二選択回路61からの選択信号を計測に適する様に加工する。具体的には選択電位を変換するレベルシフターや、高速で安定的に列線を選択する様にバッファーを備える。
【0029】
図3に戻る。
第二処理回路62はこの他に列選択トランジスターTN3(j)とTN4(j)とを含む。出力回路4は第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の電気的状態を増幅してLDOUT及びXLDOUTとして出力する。これらの回路の内で、検出回路3と出力回路4、第二処理回路62内の列選択トランジスターTN3(j)とTN4(j)とが薄膜トランジスターで形成される。本実施形態では、これらの他に第一選択回路51と第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62もCMOS構成の(N型及びP型の)薄膜トランジスターで形成されたが、第一選択回路51と第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62の内の列選択トランジスターTN3(j)とTN4(j)以外の回路は外付けのシリコンICチップにて形成されても良い。
【0030】
i行j列に位置する第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と、第二薄膜トランジスターTN2とは差動トランジスター対をなし、互いに対称に配置される。即ち、両トランジスターのドレインを第一電源に接続し、電源に対して並列に配置されている。尚、第一電源は正電源Vddである。また、N型薄膜トランジスターのソースドレインは、両者を比較して電位の高い方がドレインになり、電位の低い方がソースとなる。図3では各薄膜トランジスターのソースドレインをそれぞれsとdとで記載してある。尚、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)のゲートはi行目の行線R(i)に接続し、選択信号乃至は非選択信号が供給される。第二薄膜トランジスターTN2のゲートには基準信号Vrefが供給される。
【0031】
曲げセンサー1は、更に第五薄膜トランジスターTN5と第六薄膜トランジスターTN6とを備え、第五薄膜トランジスターTN5と第六薄膜トランジスターTN6とはカレントミラー対をなしている。カレントミラー対とは、両トランジスターのソースが共通に接続され、ゲートに同電位を印可する事で、飽和動作時(Vds>Vgs−Vth>0)に、両トランジスターのドレイン電位が多少異なっていても、同じ電流を通すトランジスター対である。
【0032】
曲げセンサー1は、更に第七薄膜トランジスターTN7を備える。第七薄膜トランジスターTN7は電流源トランジスターである。電流源トランジスターとは、飽和動作し、ドレイン電位が多少変動しても常に一定電流を供給するトランジスターである。第五薄膜トランジスターTN5のソースと第六薄膜トランジスターTN6のソースとは、第七薄膜トランジスターTN7のドレインに接続し、第七薄膜トランジスターTN7のソースは第二電源に接続する。第二電源は負電源Vssである。第七薄膜トランジスターTN7のゲートには第一制御信号Cnt1が供給される。第五薄膜トランジスターTN5と第六薄膜トランジスターTN6とが常に等しい電流を通し、第七薄膜トランジスターTN7が一定電流を供給するので、第五薄膜トランジスターTN5も第六薄膜トランジスターTN6も常に同一電流(第七薄膜トランジスターTN7を通る電流の半分)を通す。
【0033】
j列目に位置する第三薄膜トランジスターTN3(j)と第四薄膜トランジスターTN4(j)とは列選択トランジスターである。即ち、第三薄膜トランジスターTN3(j)は第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5との間に配置され、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5とを電気的に接続可能としている。第三薄膜トランジスターTN3(j)のソースは第五薄膜トランジスターTN5のドレインに接続し、第三薄膜トランジスターTN3(j)のドレインは第一薄膜トランジスターTN1(i,j)のソースに接続する。その結果、j列目の列線C(j)に選択信号(高電位信号)が入ると、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5とは電気的に接続される。反対に列線C(j)に非選択信号(低電位信号)が入ると、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5とは電気的に絶縁される。同様に、第四薄膜トランジスターTN4(j)は第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6との間に配置され、第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6とを電気的に接続可能としている。第四薄膜トランジスターTN4(j)のソースは第六薄膜トランジスターTN6のドレインに接続し、第四薄膜トランジスターTN4(j)のドレインは第二薄膜トランジスターTN2のソースに接続する。その結果、列線C(j)に選択信号(高電位信号)が入ると、第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6とは電気的に接続される。又、列線C(j)に非選択信号(低電位信号)が入ると、第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6とは電気的に絶縁される。列線C(j)に供給される選択信号乃至は非選択信号は第二選択回路61からの出力を、必要に応じてレベルシフトし、レベルシフターからの出力はバッファーで補強されている。即ち、第三薄膜トランジスターTN3と第四薄膜トランジスターTN4とは第二選択回路61にて制御される。
【0034】
出力回路4からの検出結果は、第六薄膜トランジスターTN6のドレイン電位V6がLDOUTとして出力され、第五薄膜トランジスターTN5のドレイン電位V5がXLDOUTとして出力される。
【0035】
「計測方法」
図4は、本実施形態に係わる曲げセンサーにて曲がり具合を計測する際に、回路を駆動させるタイミングチャートを説明する図である。以下、図4を参照して、曲げセンサーを用いた計測方法を説明する。
【0036】
まず、計測に先立ち、計測時のVrefの電位値を定める。上述の如く、曲げセンサー1は、非可撓部に位置し基準トランジスターである第二薄膜トランジスターTN2の電気特性と、可撓部に位置する複数の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の電気特性とがそれぞれ比較される事で、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の位置する部位の曲がり具合を検出する。一方で、薄膜トランジスターはトランジスター毎に電気特性が僅かに異なるのが一般である。これを補正する為に、検出回路3に配置された各トランジスターの変動を相殺すべく、Vrefの値を定める。具体的には曲げセンサー1を平らな面に設置し、検出回路3が平面となる様にする。この状態で各第一薄膜トランジスターTN1(i,j)を選択し(行線R(i)を選択信号電位H1とし、列線C(j)を選択信号電位H2とする)、LDOUT出力とXLDOUT出力とが等しくなる様に(V5=V6となる様に)第一薄膜トランジスターTN1(i,j)毎のVrefの値を定める。Vrefは行線R(i)に供給される選択信号電位H1の近い値となる。第一薄膜トランジスターTN1(i,j)を選択する際にVrefが取るべき選択電位をHrijとすると、これは、次式で表記される。
【0037】
【数2】
検出回路3が平坦時に、総ての第一薄膜トランジスターTN1(i,j)に対してV5=V6となる様にHrij(又はθij)を定め、まずこれを外部コントローラーに設けられて居る不揮発メモリーに記憶する。その後に検出回路3を対象物の表面に合わせ、表面の曲がり具合を計測する。
【0038】
計測時には、外部コントローラーが第一選択回路51や第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62などに適当な信号や電源を供給する。その結果、各行線や列線、出力回路4には、図4に示す、以下の様な信号が供給される。
【0039】
行線R(1)からR(M)は一本ずつ交替に選択される。通常は1行目の行線R(1)から最終行のM行目の行線R(M)へと順番に選択して行く。行線には、選択持に選択信号電位(高電位)H1が供給され、非選択時には非選択信号電位(低電位)Lが供給される。非選択信号電位Lは負電源電位Vss乃至はVssに近い電位で、明らかに高電位よりも低い。例えばL=Vss=0V(接地電位)である。選択信号電位は、例えばH1=5.4Vである。
【0040】
一本の行線が選択されている期間に、列線(C(1)からC(N))が一本ずつ交替に選択される。通常は1列目の列線C(1)から最終列のN列目の列線C(N)へと順番に選択されて行く。列線には、選択持に選択信号電位(高電位)H2が供給され、非選択時には非選択信号電位(低電位)Lが供給される。非選択信号電位Lは負電源電位Vss乃至はVssに近い電位で、明らかに高電位よりも低い。例えばL=Vss=0V(接地電位)である。選択信号電位は、例えばH2=7.0Vである。
【0041】
この様にして複数の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)から特定の一つが選択される。その際には、その選択された第一薄膜トランジスターTN1(i,j)に適する選択電位Hrijを不揮発メモリーより読み出して、Vrefとする。選択電位Hrijは第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が平坦ならば出力電圧がV5=V6となる様に設定されているので、V5乃至はV6の値を読むと、選択された第一薄膜トランジスターTN1(i,j)部の曲がり具合が分かる。例えば、選択された部位が凸型に曲がっていると、LDOUT(V6)の電位は低くなり、XLDOUT(V5)の電位は高くなるので、V5−V6の値は正になる。反対に、選択された部位が凹型に曲がっていると、LDOUT(V6)の電位は高くなり、XLDOUT(V5)の電位は低くなるので、V5−V6の値は負になる。
【0042】
「使用方法」
曲げセンサーを使用する際には、準備期間と計測期間とを設けても良い。準備期間とは計測期間に備えて低頻度で計測を繰り返している期間で有る。計測期間には、曲げセンサーは高頻度で計測を繰り返している。例えば、曲げセンサーを服に着け、特定の動作(例えば野球のスウィング)を解析するモーションキャプチャーとして使用する場合、解析対象の動作(スウィング)が始まる直前までは準備期間とし、解析対象の動作が行われている期間を計測期間とする。或いは、曲げセンサーを、画像記憶性を有する表示装置(例えば電気泳動ディスプレイやコレステリック型液晶ディスプレイなどを備えた電子書籍)に適応する場合、画像記憶期間を準備期間とし、画像書き換え期間の直前を計測期間とする。
【0043】
準備期間にも計測期間にも、上述の「計測方法」の章に記載した方法で曲げセンサーは計測動作を行っているが、その計測頻度が異なる。準備期間では単位時間内に行われる計測回数が少なく、計測期間ではこれが多い。M行N列に配置された計測セル(i行j列の計測セルにはTN1(i,j)が配置されている)の総てを選択して計測する期間をフレーム期間とし、一つのフレーム期間から次のフレーム期間までの時間をスタンバイ期間とすると、計測頻度はフレーム期間とスタンバイ期間との和の逆数(1/(フレーム期間+スタンバイ期間))となる。即ち、計測期間に於ける計測頻度を、準備期間に於ける計測頻度よりも大きくする。一例としては、計測期間ではスタンバイ期間をゼロとし、フレーム周波数(フレーム期間の逆数)と計測頻度とを一致させる。一方で、準備期間に於けるスタンバイ期間は数ミリ秒以上の比較的長時間とし(例えば1秒)、準備期間に於ける計測頻度をスタンバイ期間の逆数にほぼ一致させる。
【0044】
この様な準備期間と計測期間とを設ける事に依り、準備期間に於いては消費電力を低減でき、計測期間に於いては時間分解能を最大にする事ができる。尚、ここでは準備期間でも計測期間でもフレーム期間を同一とし、スタンバイ期間を変えたが、これに限らず、フレーム期間を準備期間と計測期間とで変えても構わない。即ち、計測期間に於けるクロック周波数の方を準備期間のクロック周波数よりも高くして、計測期間に於ける計測頻度を高くしても良い。
【0045】
「トランジスターサイズ及び駆動条件」
次に図3を参照して、高感度で高性能な計測を実現する為の条件を示す。以下、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)をTN1と略称する。第二薄膜トランジスターTN2から第七薄膜トランジスターTN7も同様に略す。又、HrijやθijもHrやθと略す。尚、TN3のドレイン電位をV3で表し、TN4のドレイン電位をV4、TN7のドレイン電位をV7、で表す。
【0046】
TN1とTN2とは差動入力対であるので、飽和動作などの非線型動作が望ましい。TN3とTN4は列選択トランジスターで、出力電位範囲を広くする視点から、線型動作が望ましい。従って、TN3とTN4とに関しては、Vdsは出来る限り小さく、V3?V5やV4?V6となるのが望ましい。TN5とTN6とはカレントミラー対で飽和動作でなければならない。又、TN7は電流源トランジスターなので、矢張り飽和動作でなければならない。
【0047】
まず、トランジスターの電流式を表現するのに数式3の記号を用いる。
【0048】
【数3】
ここでWはトランジスターチャンネル形成領域の幅、Lはトランジスターチャンネル形成領域の長さ、Coxは単位面積当たりのゲート絶縁膜容量、μは移動度である。すると、飽和特性の近似式は数式4で表される。
【0049】
【数4】
又、線型特性の近似式は数式5で表される。
【0050】
【数5】
本実施形態では薄膜トランジスターのしきい値電圧をVthで表し、薄膜トランジスター間のVth変動は僅かであると近似する。即ち、TN1からTN7のVthは総て等しいと近似する。又、Vthは正であるとし、全体の電流(TN7の電流)を2Iとする。まず、TN1からTN7のZをZ1からZ7で表し、これらを数式6の関係とする。
【0051】
【数6】
数式6が満たされていると、曲げによるTN1の電流変化をゲート電位の変化と見なした際に、TN1の見なしゲート電位とVrefとの差は線型増幅されて出力される。以下、各トランジスターに求められる駆動条件を検討する。
【0052】
(1)TN1は飽和動作が望ましい。従って、数式7と数式8で表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0053】
【数7】
【0054】
【数8】
その結果、TN1のドレイン電流は次式となる。
【0055】
【数9】
【0056】
(2)TN2は飽和動作が望ましい。従って、数式10と数式11とで表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0057】
【数10】
【0058】
【数11】
その結果、TN2のドレイン電流は次式となる。
【0059】
【数12】
【0060】
(3)TN3は線型動作が好ましい。従って、数式13で表される線型条件が満たされるのが望ましい。
【0061】
【数13】
その結果、TN3のドレイン電流は次式となる。
【0062】
【数14】
【0063】
(4)TN4は線型動作が好ましい。従って、数式15で表される線型条件が満たされるのが望ましい。
【0064】
【数15】
その結果、TN4のドレイン電流は次式となる。
【0065】
【数16】
【0066】
(5)TN5は飽和動作するのが望ましい。従って、数式17で表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0067】
【数17】
その結果、TN5のドレイン電流は次式となる。
【0068】
【数18】
【0069】
(6)TN6は飽和動作するのが望ましい。従って、数式19と数式20とで表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0070】
【数19】
【0071】
【数20】
その結果、TN6のドレイン電流は次式となる。
【0072】
【数21】
【0073】
(7)TN7は飽和動作するのが望ましい従って、数式22で表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0074】
【数22】
その結果、TN7のドレイン電流は次式となる。
【0075】
【数23】
ここで、数式22を満たす為に、数式24とする。
【0076】
【数24】
δは例えば0.1V程度で、容易に飽和条件を満たすには1V程度未満が理想である。
【0077】
次に数式13と数式15を満たす為に、数式25とする。
【0078】
【数25】
これにより、少なくとも数式26と数式27とが満たされる様になる。
【0079】
【数26】
【0080】
【数27】
【0081】
TN7に関する数式23と、TN4に関する数式16とから、次式が得られる。
【0082】
【数28】
この数式28に数式24と数式25とを適応すると、次の様になる。
【0083】
【数29】
数式29の右辺に関しては、数式30を考慮する。
【0084】
【数30】
ここで数式31とする。
【0085】
【数31】
こうすれば、数式32が得られる。
【0086】
【数32】
即ち、TN4はゲート電圧がVth+1V以上ならば、線型動作する。更に、TN4での電位降下を確実に0.1V未満と小さくし、TN4を線型動作させる為には、概ね次式が満たされれば良い。
【0087】
【数33】
数式33は数式34と変形される。
【0088】
【数34】
この場合、数式35の関係が得られる。
【0089】
【数35】
即ち、明らかに線型条件(数式15)は満たされる。
【0090】
次に、総ての望ましい条件を満たす様に構成を定める。TN7に関する数式23とTN6に関する数式21に対して、数式36とする。
【0091】
【数36】
こうすると、数式21と数式23とから数式37が得られる。
【0092】
【数37】
【0093】
次にTN1に関する数式9とTN5に関する数式18とに対して、数式38とする。
【0094】
【数38】
こうすると、数式39が得られる。
【0095】
【数39】
TN7とTN4の議論(数式28から数式35までの議論)により、数式40と数式41で表される関係になっている。
【0096】
【数40】
【0097】
【数41】
数式39に数式41を代入し、数式37と連立させると、数式42と数式43の解が得られる。
【0098】
【数42】
【0099】
【数43】
【0100】
TN2に関する数式12とTN6に関する数式21とからは、数式44が得られる。
【0101】
【数44】
数式44に数式37と数式40とを代入すると、数式45が得られる。
【0102】
【数45】
【0103】
以下、高感度で高性能な測定を実現する為に、満たされる事が望ましい各条件を如何に満たすかを示す。
【0104】
好適条件としての数式7: 数式41と数式42とから数式7は、数式46が得られる。
【0105】
【数46】
【0106】
好適条件としての数式10: 数式40と数式44とから数式10は数式46となる。
【0107】
好適条件としての数式8: 数式8は、Vthが正なので、数式47が成り立てば、確実に満たされる。
【0108】
【数47】
【0109】
好適条件としての数式11: 数式11は、Vthが正なので、数式48が成り立てば、確実に満たされる。
【0110】
【数48】
【0111】
好適条件としての数式13と数式15: 数式13と数式15とは、数式24と数式34とで満たされる。
【0112】
好適条件としての数式17: 数式17は、数式42と数式43とから、数式46となる。
【0113】
好適条件としての数式19: 数式19は、数式42と数式45とから、数式49となる。
【0114】
【数49】
ここで、数式50とする。
【0115】
【数50】
こうすると、好適条件としての数式19は、数式51と記載し直される。
【0116】
【数51】
【0117】
好適条件としての数式22: 数式24から数式22は、数式52となる。
【0118】
【数52】
これに数式43を適応すると、数式22は、数式53となる。
【0119】
【数53】
数式24により、これは、数式54を意味する。
【0120】
【数54】
【0121】
今、数式55の関係とする。
【0122】
【数55】
すると、数式43と数式42とから、数式56が得られる。
【0123】
【数56】
即ち、TN1とTN5、TN7にはほぼ均等なドレイン電圧が印可される。同様にTN2、TN6、TN7にもほぼ均等なドレイン電圧が掛かる。尚、この際に数式24と数式55とにより、数式57の関係となる。
【0124】
【数57】
【0125】
纏めると、電位関係としては、数式55と、数式24,数式25、数式57、数式50、数式51とを満たす様にする。一例としては、Vth=1.5Vとして、δ=0.3V、γ=0.1Vとし、Vdd=5.4V、H1=5.4V、H2=7V、H3=1.8V、Hr=5.4±θV、0≦θ<1.5Vとする。
【0126】
トランジスターサイズに関しては、数式6と数式34、数式36、数式38から数式58とする。
【0127】
【数58】
この様な電気関係とトランジスターサイズとを採用する事で、高感度で正確な計測が実現する。
【0128】
「平面レイアウト」
図5は、本実施形態に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図である。以下、図5を参照して、検出回路の平面レイアウトを説明する。
【0129】
検出回路3ではTN1(i,j)が行列状に並んでいる。i行j列に位置するTN1(i,j)のソースsはj列目の第一列線CL(j)に接続し、ドレインdはj列目の第二列線CR(j)に接続し、ゲートGはi行目の行線R(i)に接続している。j列目の第一列線CL(j)と第二列線CR(j)とは第一の方向に平行に配線され、検出回路3の外側でそれぞれTN3(j)(図3参照)のドレインとVdd(図3参照)とに接続する。i行目の行線R(i)は第二の方向に平行に配線され、検出回路3の外側で第一処理回路52(図1参照)に接続する。
【0130】
TN1(i,j)のチャンネル形成領域は、第一列線CL(j)と第二列線CR(j)とに平行に配置される。即ち、TN1(i,j)のソースドレイン方向は、第一列線CL(j)と第二列線CR(j)とに平行である。第二の方向(y軸方向)に隣接する第一薄膜トランジスター間には、第一の方向(x軸方向)に沿う線状の切れ目31が基板2に入っている。換言すれば、切れ目31とTN1(i,j)のソースドレイン方向とは平行である。この曲げセンサー1は第一の方向に関して曲がり具合を検出する。薄膜トランジスターの電気特性は、ソースドレイン方向に平行に湾曲された場合にも、ソースドレイン方向に垂直に湾曲された場合にも、影響を被る。図5では、第一の方向に沿って線状の切れ目31が設けられて居るので、第一薄膜トランジスターは第二の方向からの曲げ応力を受けず、第一の方向からの曲げ応力を主として受ける。この為に第二の方向からの曲げ応力干渉がなくなり、高精度な測定を可能としている。
【0131】
尚、図5で、切れ目31は緩やかな曲線を描いているが、隣接する第一薄膜トランジスター間を、力学的に分離すればその形状は問われず、直線でも構わない。或いは切れ目31は、複数の穴を第一の方向に沿って開口してあっても良い。
【0132】
「固定板の断面形状」
図6は、本実施形態に係わる曲げセンサーの断面の一部を説明する図である。又、図7は可撓領域に於ける固定板の厚みと距離との関係を説明する図である。更に、図8は可撓領域に於ける固定板のたわみと距離との関係を説明する図である。ここでは可撓領域に於ける固定板の断面形状を、図6と図7と図8とを用いて、説明する。
【0133】
図6は、図1のA−A’の断面図である。曲げセンサー1は非可撓領域21にて、基板2の背面を固定板7で固定されている。固定板7はABS樹脂(アクリロニトリルとブタジエン、及びスチレンの共重合合成樹脂)などの外観性が良く、靱性に優れた強固なプラスチックから構成され、殆ど曲がらない。一方、基板2は厚さ100マイクロメーターのポリエステルフィルムで、柔軟性に富んでいる。基板2の表面には薄膜トランジスターで回路や配線が形成されているが、これらが可撓領域22と非可撓領域21との境界で破壊される恐れが僅かにある。これを完全に(ほぼ100%)回避する為に、固定板7は可撓領域22にもはみ出して形成され、その厚みを可撓領域22では徐々に減じている。こうする事で、回路や配線の信頼性が著しく増す事になる。以下では固定板7の形状をどうすれば、信頼性の高い曲げセンサー1を実現できるかを論ずる。
【0134】
図6に示す様に、可撓領域22に於ける固定板7は、その断面幅が下側から上側に向かうに従って広がっており、固定板7の上面にてその幅を最大にしている。即ち、x軸方向に対しては、可撓領域22に於ける固定板7の厚みは、原点O(可撓領域22と非可撓領域21との境界で、固定板7が厚みを減じ始める位置)から離れるに従って、薄くなっている。以下では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)を原点Oからの距離xの関数で表した際に、どう云った関数としたら好ましいかを示す。即ち、好適例として、厚さが距離の一次式で表現される形態と、平方根で表現される形態、立方根で表現される形態、が示される。可撓領域22に於ける固定板7の幅WHが同じ場合、最も強い荷重に耐えられ、最も柔軟性に富むのは一次式の形態である事や、応力を可撓領域22に於ける固定板7全体で均一に受け止めるのが平方根の形態である事、曲率半径が可撓領域22に於ける固定板7全体で同一になるのが立方根の形態である事、等が示される。
【0135】
(好適例1)厚さが距離の一次式で表現される形態
第一の具体例では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)が距離xに対して線型関係にあり、数式59にて記述される。
【0136】
【数59】
ここでWHは可撓領域22に於ける固定板7の幅であり、αは傾斜パラメーター、可撓領域22に於ける固定板7の厚さは原点O(x=0)にてt0であり、先端(エッジ、x=WH)にてtE=αt0である。図7には実線Lにて数式59にて表される距離(x/WH)と厚み(t(x)/t0)との関係を、α=0.2として描いてある。可撓領域22に於いて、固定板7の厚みが距離の一次関数で表され、原点から離れるに従って線型に薄くなっているのが分かる。
【0137】
可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、数式60である。
【0138】
【数60】
尚、ここでRは可撓領域22に於ける固定板7がたわんだ際の曲率半径、zは可撓領域22に於ける固定板7のz方向へのたわみ量、Eは固定板7のヤング率、LHは固定板7の長さである。数式60に対する境界条件は、数式61である。
【0139】
【数61】
数式60を数式61の元に解くと、数式62の解が得られる。
【0140】
【数62】
これが可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係である。図8にこの関係を、α=0.2として、縦軸を規格化されたたわみ量(z(x)/(FWH3/(ELHt03)))で、横軸を規格化された距離(x/WH)として、実線Lにて描いてある。荷重Fに対し、可撓領域22に於ける固定板7が優れた柔軟性を有している事が判る。可撓領域22に於ける固定板7の端部に於けるたわみzEは、数式62でx=WHと置いて、数式63となる。
【0141】
【数63】
又、可撓領域22に於ける固定板7の上での曲げ応力σは、固定板7の歪みをεとして、数式64で表される。
【0142】
【数64】
この式から曲げ応力が最大となるのは、x=(1−2α)/(1−α)・WHで、0≦α<0.5の時に、数式65となる。
【0143】
【数65】
可撓領域22に於ける固定板7をなす材料の曲げ強さ(国際標準化機構のISO178が定め、三点曲げ試験から得られる曲げ強さ)をσbとすると、σMaxがσbよりも小さくなる条件(数式66)を満たしている限り、可撓領域22に於ける固定板7は破断しない。
【0144】
【数66】
従って、可撓領域22に於ける固定板7は、使用時に想定される荷重の線密度(F/LH)と可撓領域22に於ける固定板7の曲げ強さσbとを元に、数式66を満たす様に幅WHや原点Oに於ける厚みt0、傾斜パラメーターαを定める。或いは、使用時に想定される最もきつい曲率半径をR(M)inとし、それが曲げ応力の最大になる場所での曲率半径に一致しても可撓領域22に於ける固定板7が破断しない条件とする。曲げ応力が最大になる場所での可撓領域22に於ける固定板7の厚みをtMとして、σMaxがσbよりも小さくなる条件は、数式67である。
【0145】
【数67】
従って、数式67を満たす様に厚みt0と傾斜パラメーターαとを定める。即ち、可撓領域22に於ける固定板7の先端での厚みtE=αt0を、数式67を満たす様にすると、使用時に可撓領域22に於ける固定板7が破断することはない。本実施形態では、可撓領域22に於ける固定板7はABS樹脂からなり、そのヤング率はE=2000MPで、曲げ強さはσb=50MPaである。使用時に想定される最もきつい曲率半径は10mmであるので、先端での厚みは、数式67に従って、0.25mm未満でなければならない。実際には、t0=1mmでα=0.2、先端部の厚みは0.2mm、WH=5mmであったので、数式9を満たしているにのみならず、曲率半径を8mmに小さくされるまで可撓領域22に於ける固定板7は破断しない様にされている。尚、可撓領域22を強く屈曲させて、その結果として可撓領域22に於ける固定板7がたわみ、可撓領域22に於ける固定板7での最小曲率半径が8mm未満になった際に破断が生ずる恐れのある位置はおおよそ、x=0.889WHである。
【0146】
尚、0.5≦α<1の場合には、曲げ応力が最大に成るのはx=0で、その値σMaxと曲率半径R0とは、それぞれ数式68で表される。
【0147】
【数68】
使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/LH)や最もきつい曲率半径をR(M)inに対して、数式69を満たす様にWHやt0を定める。
【0148】
【数69】
例えば先と同じABS樹脂で可撓領域22に於ける固定板7を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式11に則り、t0<0.5mmとする。
【0149】
(好適例2)厚さが距離の平方根で表現される形態
第二の具体例では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)が距離xに対して平方根の関係にあり、数式70と記述される。
【0150】
【数70】
図7には点線SRにて数式12にて表される距離(x/WH)と厚み(t(x)/t0)との関係を描いてある。固定板7の厚みが距離の平方根に比例して薄くなり、取り分け、先端(x=WH)付近で急にではあるが、なめらかに薄くなっているのが分かる。
【0151】
可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、数式71である。
【0152】
【数71】
境界条件は具体例1と同じで、数式61にて与えられる。数式71を数式61の元に解くと、数式72の解が得られる。
【0153】
【数72】
これが可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図8にこの関係を点線SRにて描いてある。荷重Fに対し、可撓領域22に於ける固定板7が柔軟性を有している事が判る。可撓領域22に於ける固定板7の端部に於けるたわみzEは、数式73で表される。
【0154】
【数73】
又、可撓領域22に於ける固定板7の上での曲げ応力σは数式74となる。
【0155】
【数74】
曲げ応力は可撓領域22に於ける固定板7の幅方向で均一となる。即ち、幅方向の特定の位置で破断し易い様な事はなくなる。曲げセンサー1の使用時に可撓領域22を屈曲させると、可撓領域22の屈曲に伴う応力が発生し、その応力の一部を可撓領域22に於ける固定板7が曲げ応力として受け持つことになるが、それが可撓領域22に於ける固定板7上で均一になる。換言すれば、可撓領域22に於ける固定板7の特定箇所に応力が集中する事がなくなるので、その意味から曲げセンサー1の機械的耐久性が向上することになる。可撓領域22に於ける固定板7が曲げ応力で破断されない条件は、数式75である。
【0156】
【数75】
使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/LH)に対して、数式75を満たす様にt0やWHを定める。厚みが距離に対して平方根の関係にある場合、最も曲がりにくい点はx=0であるから、x=0に於ける曲率半径R0を用いて、R0=R(M)inとされた時に、x=0に於ける曲げ応力σ0が曲げ強さσbよりも小さく、数式76を満たせば、曲げセンサー1が屈曲されても可撓領域22に於ける固定板7は破断しない。
【0157】
【数76】
即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R(M)inに対して、数式76を満たす様にt0を定める。例えば先と同じABS樹脂で可撓領域22に於ける固定板7を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式76に則り、t0<0.5mmとすれば、使用時に可撓領域22に於ける固定板7が破断する恐れはない。この場合、非可撓領域21に於ける固定板7は1mm以上の厚みを持たせ、原点Oで階段状に厚みを減じてt0とし、非可撓領域21では固定板7の厚みをt0から距離の平方根に比例して薄くして行く。
【0158】
尚、プラスチックにて可撓領域22に於ける固定板7を作製する際に、厚みを正確に数式70にて表される平方根の関係に加工するのは大変である。この場合は好適例1で示した線型関係で近似させる事ができる。即ち、数式77とする。
【0159】
【数77】
一例として、α=0.395とした際のたわみを図8の実線L2にて描く。実線L2と点線SRとが良く一致している事が判る。この線型近似で、曲げ応力は可撓領域22に於ける固定板7の幅方向でほぼ均一となり、厚みが線型関係の時の効果に加え、平方根の時と同様な効果が期待でき、更に製造加工も容易になる。
【0160】
(好適例3)厚さが距離の立方根で表現される形態
第三の具体例では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)が距離xに対して立方根の関係にあり、数式78と記述される。
【0161】
【数78】
図7には一点鎖線CRにて数式78にて表される距離(x/WH)と厚み(t(x)/t0)との関係を描いてある。固定板7の厚みが距離の立方根に比例して薄くなり、取り分け、先端(x=WH)付近で急にではあるが、なめらかに薄くなっているのが分かる。
【0162】
可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、数式79である。
【0163】
【数79】
この場合、曲率半径は距離xに依存せず、一定となる。即ち可撓領域22に於ける固定板7の何処も同じ曲率半径を有しながら均一に変形する。可撓領域22の固定板7を屈曲させた際に、固定板7は可撓領域22内で同一の曲率半径で綺麗に曲がる事になる。即ち、可撓領域22の曲げに対する耐久性を向上させる事ができる。境界条件は具体例1と同じで、数式61にて与えられる。数式79を数式61の元に解くと、数式80の解が得られる。
【0164】
【数80】
これが可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図8にこの関係を一点鎖線CRにて描いてある。荷重Fに対し、可撓領域22に於ける固定板7が柔軟性を有している事が判る。可撓領域22に於ける固定板7の端部に於けるたわみzEは、数式81である。
【0165】
【数81】
又、可撓領域22に於ける固定板7の上での曲げ応力σは数式82となる。
【0166】
【数82】
即ち、x=0にて歪みも曲げ応力も最大となる。可撓領域22に於ける固定板7が曲げ応力で破断されない条件は、数式83である。
【0167】
【数83】
使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/LH)に対して、数式83を満たす様にt0やWHを定める。厚みが距離に対して立方根の関係にある場合、屈曲時に最も破断しやすい点はx=0であるから、R0=R(M)inとされた時に、x=0に於ける曲げ応力σ0が曲げ強さσbよりも小さく、数式84を満たせば、曲げセンサー1が屈曲されても可撓領域22に於ける固定板7は破断しない。
【0168】
【数84】
即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R(M)inに対して、数式84を満たす様にt0を定める。例えば先と同じABS樹脂で可撓領域22に於ける固定板7を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式84に則り、t0<0.5mmとすれば、使用時に可撓領域22に於ける固定板7が破断する恐れはない。この場合、非可撓領域21に於ける固定板7は1mm以上の厚みを持たせ、原点Oで階段状に厚みを減じてt0とし、非可撓領域21では固定板7の厚みを距離の立方根に比例して薄くして行く。
【0169】
尚、プラスチックにて可撓領域22に於ける固定板7を作製する際に、厚みを正確に数式78にて表される立方根の関係に加工するのは大変である。この場合は好適例1で示した線型関係で近似させる事ができる。即ち、数式85とする。
【0170】
【数85】
一例として、α=0.58とした際のたわみを図8の実線L3にて描く。実線L3と一点鎖線CRとが良く一致している事が判る。この線型近似で、可撓領域22に於ける固定板7の曲率半径はほぼ均一となり、厚みが線型関係の時の効果に加え、立方根の時と同様な効果が期待でき、更に製造加工も容易になる。
【0171】
図9は、本実施形態の効果を説明する断面図であり、(a)は比較例の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態で、(b)は本実施形態の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態を表す。
【0172】
図9(a)に示す比較例の曲げセンサー1では、非可撓領域21だけに固定板7が設けられている。この比較例に対し、図9(b)に示す本実施形態の曲げセンサー1には、可撓領域22に原点からの距離に対して次第に薄くなる固定板7が設けられている。比較例の曲げセンサー1では、図9(a)に示す様に、可撓領域22が凸型に屈曲された際に、固定板7の角が可撓領域22にくい込み、局所的に極めて強いくい込み圧力Pを基板2に及ぼす。図9では、くい込み圧力Pの強さを矢印の長短で表現し、くい込み圧力Pの及ぶ範囲を矢印の幅の広さで表現してある(従って数学的には矢印の長さと幅との積がくい込み力になり、図9(a)と図9(b)とでこの積の値は一致する)。これに対して、本実施形態の曲げセンサー1では、図9(b)に示す様に、可撓領域22が凸型に屈曲されても、可撓領域22に於ける固定板7が面で幅広く、弱いくい込み圧力Pを基板2に及ぼす。この為に、比較例の曲げセンサー1に於いては、くい込み圧力Pによって、基板2上の回路や配線が影響を受けたり、特性が変化したりする恐れが僅かに残るが、本実施形態の曲げセンサー1に於いては、くい込み圧力Pによって、こうした事態が発生する可能性は殆どゼロになる。更に、可撓領域22の幅方向においては、固定板7は原点Oから離れるに従い厚みを減じているので、固定板7の先端(エッジ)では殆どくい込み圧力Pは発生せず、端部への応力集中に伴う回路や配線の悪影響を完全に(ほぼ100%)防止する事ができる。強いくい込み圧力は、回路や配線を破壊する恐れ(回路や配線にクラックが入って配線が断線する恐れ)があるので、これを弱くする事は曲げセンサー1の製造時における破損を抑制して生産性を高めると共に、使用時における機械的信頼性を高める事になる。
【0173】
「曲げセンサーの製造方法」
曲げセンサー1では、柔軟性を有するプラスチックフィルムの基板2に薄膜回路を形成してあるが、ここでは曲げセンサー1の製造方法を述べる。具体的には、最初にガラス基板に形成された薄膜回路を剥離して、プラスチックフィルムに転写する方法で曲げセンサー1を製造する。
【0174】
第一工程として、製造元基板となるガラス基板上に剥離層を設ける。剥離層は厚みが50nm程の水素化非晶質シリコン膜である。この剥離層上に下地絶縁膜となる酸化硅素膜を成膜した後に、薄膜トランジスターなどからなる薄膜回路を製造する。薄膜回路は、公知の低温工程多結晶シリコン薄膜トランジスターの製造方法を適応する。具体的には、下地絶縁膜上にレーザー結晶化された多結晶シリコン半導体層を設け、その後に、酸化硅素膜を用いたゲート絶縁層と、アルミニウム又はアルミニウムに添加物を加えた金属を用いたゲート電極とを作成する。更に、酸化硅素膜を用いた第一層間絶縁層、アルミニウム又はアルミニウムに添加物を加えた金属を用いたソースコンタクト及びドレインコンタクト、ポリイミド系の樹脂を用いた第二層間絶縁層(保護膜)、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)を用いた電極端子(実装端子)を作成する。
【0175】
次に第二工程として、仮接着剤を薄膜回路表面に塗布し、製造元基板を仮転写基板に貼り付ける。仮接着剤としては、アクリル系の樹脂に水溶性を与えるべくポリビニルピロリドン樹脂を混合したものを用いる。仮転写基板は平滑なガラス基板である。
【0176】
次に第三工程として、製造元基板を取り外し、薄膜回路を仮転写基板に移す。製造元基板を取り外す方法としては、製造元基板裏面からレーザー光を照射して剥離層の内部又は界面に於ける密着力を弱め、次いで製造元基板と仮転写基板とを引き剥がす。こうする事で薄膜回路は仮転写基板に移される。
【0177】
次に第四工程して、薄膜回路裏面に残る剥離層を除去し、例えばイオナイザーを用いて薄膜回路裏面に存在する電荷を除去する。此により剥離帯電や乾燥時の空気との摩擦帯電を或る程度除去できる。
【0178】
次に第五工程として、例えばアクリル系の樹脂からなる永久接着剤を用いてプラスチックフィルムの第一面側に薄膜回路裏面を貼り付ける。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などのポリエステルフィルムを用いることができる。
【0179】
プラスチックフィルムを貼り付けた後、第六工程として、プラスチックフィルム第二面側(第一面側と反対の面)の非可撓領域21となるべき場所に永久接着剤を用いて固定板7を接着する。この永久接着剤は第五工程で用いた永久接着剤と同じであっても構わないし、異なっていても構わないが、仮接着剤を溶解する溶媒には溶けない材質である。固定板7の接着に前後して、レーザー加工などを利用して、切れ目31をいれる。こうした作業は仮転写基板が付いた状態で行われるので、基板2が柔軟性を有していても取り扱いが容易で、曲げセンサー1の製造も困難なく行われる。
【0180】
次に第七工程として、仮接着剤を溶解する溶媒(この場合には水)を用いて仮転写基板を外す。その後、仮接着剤を洗浄して除去する。
【0181】
次に第八工程として、実装作業を行う。まず、非可撓領域21に設けられた実装端子にテープ配線を実装する。この際には異方性導電ペーストや異方性導電フィルム(これらを併せて異方性導電接着剤と呼ぶ)を実装端子とテープ配線との間に配置して両者を接着する。テープ配線は曲げセンサー1外に設けられた外部コントローラーに接続される。こうして、曲げセンサー1が完成する。
【0182】
尚、基板2は上述のプラスチックフィルムの他に、厚みが50マイクロメーターから500マイクロメーター程度の薄い金属箔や、厚みが10マイクロメーターから200マイクロメーター程度の薄いガラスであっても良い。又、製造方法も厚いガラスに薄膜回路を形成した後にガラスを薄く削る方法や、プラスチックフィルムや金属箔に直接薄膜回路を形成する方法であっても良い。直接形成する場合には非晶質シリコン薄膜トランジスターや、亜鉛又は錫を含む酸化物を半導体層に利用した酸化物薄膜トランジスター等を利用することが出来る。
【0183】
上述した通り、本実施形態に係わる曲げセンサー1によれば、以下の効果を得る事ができる。
曲げセンサー1が、可撓領域22に形成された第一薄膜トランジスターや、非可撓領域21に形成された第二薄膜トランジスター等の薄膜トランジスターから構成されるので、空間分解能が極めて高くする事ができる。
【0184】
又、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとを備え、これらがカレントミラー対をなして、第一薄膜トランジスターや第二薄膜トランジスターと接続可能であるので、曲がり具合(曲率)を正確に計測できる。
【0185】
又、第一電源と第二電源と第七薄膜トランジスターとを備え、第七薄膜トランジスターが定電流源と成り得るので、曲がりに関する信号増幅が線型となり、曲げストレスに比例した電位を正確に計測できる。
【0186】
又、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第一の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第一の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第一の方向に沿って複数ヶ所であっても、正確に曲がり具合を計測できる。
【0187】
又、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第二の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第二の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第二の方向に沿って複数ヶ所であっても、正確に曲がり具合を計測できる。
【0188】
又、第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとが第二の方向での選択回路の一部として機能するので、第二の方向に於ける曲がり具合の情報が干渉する事を防げる。
【0189】
又、可撓領域22に位置する第一薄膜トランジスターの電気特性と非可撓領域21に位置する第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を計測するので、曲がり具合を正確に計測できる。
又、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターと第七薄膜トランジスターとがN型であり、第二電源が負電源であるので、P型の薄膜トランジスターを用いずにN型の薄膜トランジスターで曲げセンサー1を実現できる。
【0190】
(実施形態2)
「イコライズ回路が配置されている形態」
図10は、実施形態2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。又、図11は、実施形態2に係わる曲げセンサーにて曲がり具合を計測する際に、回路を駆動させるタイミングチャートを説明する図である。以下、本実施形態に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0191】
本実施形態(図10)は実施形態1(図3)と比べて、第五薄膜トランジスターTN5のドレインと第六薄膜トランジスターTN6のドレインとの間にイコライズ回路を備える点が異なっている。それに伴って、タイミングチャート(図11)でも実施形態1のタイミングチャート(図4)と比べて、選択期間内にプリチャージ期間が設けられる様になる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0192】
図10に示す様に、本実施形態ではイコライズ回路として第八薄膜トランジスターTN8が出力回路4に設けられて居る。TN8のソースドレインの一方はTN5のドレインに接続してXLDOUTとなり、他方はTN6のドレインに接続してLDOUTとなる。TN8のゲートには第二制御信号Cnt2が供給される。尚、プリチャージ期間(選択期間の前半)を短くするには、TN8のオン電流は大きい事が望まれ、それ故、TN8のトランジスターサイズはTN3やTN4のトランジスターサイズと同じにする事(Z3=Z4=Z8)が好ましい。
【0193】
次に図11を参照して、曲げセンサー1の回路駆動方法を説明する。行列状に配置された複数の第一薄膜トランジスターから特定の一つが選択されると、その選択期間の前半はXLDOUTの電位V5とLDOUTの電位V6とをVddへとプリチャージし、選択期間の後半で曲がり具合を計測する。第一制御信号Cnt1は、選択期間の前半に低電位L(Vss)となり、選択期間の後半に高電位H3となる。H3の電位値は実施形態1で論じた通りである。第二制御信号Cnt2は、第一制御信号Cnt1に対して相補的で、電位振幅が異なる信号となる。即ち、第二制御信号Cnt2は、選択期間の前半に高電位H4となり、選択期間の後半に低電位L(Vss)となる。高速測定を実現する為に、H4の電位値は高い方が好ましく、例えば実施形態1で論じたH2とする事が望ましい。こうすると、選択期間の前半ではTN7がオフ状態になり、TN8がオン状態になるので、XLDOUTの電位V5とLDOUTの電位V6とをVddへと等しくできる。出力が等しくなった後に、選択期間の後半で曲がり具合を計測するので、一つの計測と次の計測(例えばTN1(i,j)の計測と次のTN1(i,j+1)の計測)とで、前の計測結果(TN1(i,j)の計測結果)が後の計測結果(TN1(i,j+1)の計測結果)に干渉する事がなくなり(これらが干渉すると干渉を排除する為に計測時間は長くなる)、正確な計測を迅速に実施できる様になる。
【0194】
上述した通り、本実施形態に係わる曲げセンサー1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
イコライズ回路を備えているので、曲がり具合の計測を空間的及び時間的に順次繰り返して行う際に、各計測の間に出力電位をリセットできる。その結果、迅速に正確な計測を実現できる。
【0195】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
【0196】
(変形例1)
「回路がPMOSにて形成されている形態」
図12は、変形例1に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図12)は実施形態1(図3)と比べて、曲げセンサー1の回路を構成する薄膜トランジスターの伝導型が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0197】
実施形態1ではN型の薄膜トランジスターを用いて曲げセンサー1の回路(検出回路3と出力回路4、及び第二処理回路62の列選択トランジスター)を構成していたが、本変形例ではP型の薄膜トランジスターTP1(i,j)からTP7を用いてこれらの回路を構成する。この場合、第一電源が負電源Vssとなり、第二電源が正電源Vddとなる。又、P型薄膜トランジスターのソースドレインは電位の高い方がソースとなり、電位の低い方がドレインになる。図12には参考の為にソースとドレインとをsとdとで示してある。P型薄膜トランジスターとしては、半導体層にポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コージチオフェン)(F8T2)や、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[5,5’−ビス(3−ドデシル−2チニル)−2,2’−ビチオフェン](PQT−12)、PBTTT、ペンタセン等の有機物を使用した有機物薄膜トランジスターを使用することができる。
【0198】
トランジスターサイズに関しては、実施形態1と同じである。駆動方法は実施形態1の図4と同じだが、H1やH2、H3、Hrなどの所謂高電位は低電位Lに対する負の絶対値が大きくなる様に変える。尚、P型薄膜トランジスターのしきい値電圧Vthは負である。具体的には数式57を数式86へと変える。
【0199】
【数86】
TP1(i,j)のゲートに接続するi行目の行線XR(i)は、非選択期間にVddとし、選択期間には、数式87とする。
【0200】
【数87】
j列目の列線XC(j)は、非選択期間にVddとし、選択期間には数式88とする。
【0201】
【数88】
電流源トランジスターTP7のゲートに入る第一制御信号XCnt1は、非計測期間にVddとし、計測期間には数式89とする。
【0202】
【数89】
第二薄膜トランジスターTP2のゲートに入力するXVrefは、非計測期間にVddとし、計測期間には数式90とする。
【0203】
【数90】
従って、例えば、Vth=−1.5Vとして、δ=−0.3V、γ=−0.1Vとし、Vdd=5.4V、H1=0V、H2=−1.6V、H3=3.6V、Hr=0±θV、−1.5V<θ≦0Vとする。ここでのH2やHrの様に、負電圧を準備するのが困難な場合、総ての電位が正になる様にVddとVssを一定量ずらしても良い。例えば、上記例で全体を1.6Vずらして、Vdd=7.0V、Vss=H1=1.6V、H2=0V、H3=5.2V、Hr=1.6±θV、−1.5V<θ≦0Vとしても良い。
【0204】
上述した通り、本変形例に係わる曲げセンサー1によれば、N型の薄膜トランジスターを使用せずに、P型の薄膜トランジスターで曲げセンサー1を実現できる。
【0205】
(変形例2)
「回路がPMOSで形成され、イコライズ回路が配置されている形態」
図13は、変形例2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1乃至2と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図13)は実施形態2(図10)と比べて、曲げセンサー1の回路を構成する薄膜トランジスターの伝導型が異なっている。それ以外の構成は、実施形態2とほぼ同様である。
【0206】
実施形態1ではN型の薄膜トランジスターを用いて曲げセンサー1の回路(検出回路3と出力回路4、及び第二処理回路62の列選択トランジスター)を構成していたが、本変形例ではP型の薄膜トランジスターTP1(i,j)からTP8を用いてこれらの回路を構成する。即ち、変形例1にP型の第八薄膜トランジスターTP8を付加した形態となる。TP8は、第五薄膜トランジスターTP5のドレインと第六薄膜トランジスターTP6のドレインとの間にイコライズ回路として配置される。尚、変形例1と同様、第一電源が負電源Vssとなり、第二電源が正電源Vddとなり、八種類のP型薄膜トランジスターのしきい値電圧Vthは負である。
【0207】
トランジスターサイズに関しては、実施形態1や実施形態2と同じである。駆動方法は実施形態1の図11と同じだが、変形例1と同様にH1やH2、H3、H4、Hrなどの所謂高電位は低電位Lに対する負の絶対値が大きくなる様に変える。VddやVss、H1、H2、H3、Hrは変形例1と同じで、数式86から数式90を満たす様に決められる。TP8のゲートに入力する第二制御信号XCnt2は、第一制御信号XCnt1に相補的で、電位振幅が異なる信号となる。即ち、第二制御信号XCnt2は、TP1の選択期間の前半にH4となり、選択期間の後半にVddとなる。高速測定を実現する為に、Vddに対するH4の絶対値(|H4−Vdd|)は高い方が好ましく、例えば変形例1のH2とする事が望ましい。
【0208】
上述した通り、本変形例に係わる曲げセンサー1によれば、P型の薄膜トランジスターで曲げセンサー1を実現できると共に、イコライズ回路を備えているので、曲がり具合の計測を空間的及び時間的に順次繰り返して行う際に、各計測の間に出力電位をリセットできる。従って、迅速に正確な計測を実現できる。
【0209】
(変形例3)
「切れ目が第一薄膜トランジスターの近傍に形成される形態」
図14は、変形例3に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図14)は実施形態1(図5)と比べて、切れ目の大きさや位置が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0210】
図5に示す実施形態1では、切れ目31は比較的大きく、第二列線CR(j)と隣の第一トランジスターに接続する第一列線CL(j+1)との間(j列目の計測セルとj+1列目の計測セルとの間)に設けられて居た。これに対して本変形例では、図14に示す様に、比較的小さな切れ目31が第一薄膜トランジスターの近傍に(計測セル内に)設けられている。切れ目31の目的は横方向からの応力干渉を防ぐ事だが、これが大きいと曲げセンサー1の強度が不足する恐れがある。従って、微細加工が可能であるならば、本変形例が示す様に、第一薄膜トランジスターの近傍(各計測セル内)に設けるのが望ましい。こうする事で曲げセンサー1の強度を保ちつつ、正確な曲げ測定が実現する。計測セル内には測定方向(この場合、第一の方向、x軸方向)に沿った細長い切れ目31を一本設ければ、他方向(この場合、第二の方向、y軸方向)からの干渉を防げる。確実に、干渉を防ぐ為に、図14に示す様に、測定方向に沿った二本の細長い切れ目31を設け、それらの間に第一薄膜トランジスターを形成するのが理想的である。
【0211】
(変形例4)
「切れ目が第二の方向に沿って形成される形態」
図15は、変形例4に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図15)は実施形態1(図5)と比べて、曲げの測定方向が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0212】
図5に示す実施形態1では、第一薄膜トランジスターTN1のソースドレイン方向と細長い切れ目31の方向が第一の方向(x軸方向)に平行で、第一の方向に関する曲げを計測していた。本変形例では、第一薄膜トランジスターTN1のソースドレイン方向と細長い切れ目31の方向は第二の方向(y軸方向)に平行で、第二の方向に関する曲げを計測する。実施形態1(図5)では、ソースドレイン方向が第一列線CLや第二列線CRと平行であった為に、半導体膜は二ヶ所で90°折れ曲がらねばならず、各計測セルは比較的大きな面積を必要とした。これに対して、本変形例では、ソースドレイン方向が第一列線CLや第二列線CRと垂直である為に、半導体膜は直線となり、各計測セルは比較的小さくされる。即ち、空間分解能を高められる。又、切れ目31によってx軸方向からの応力干渉を排除するので、高精度計測を可能としている。
【0213】
(変形例5)
「計測頻度を可変とする形態1」
変形例5では、計測頻度を状況に応じ、可変としている。以下、本変形例に係わる曲げセンサー使用方法について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例は実施形態1に記載した「使用方法」と比べて、計測頻度を可変にしている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0214】
実施形態1では、計測頻度が準備期間と計測期間とで其々固定値が定められて居た。これに対して本変形例では、準備期間乃至は計測期間に於ける計測頻度を状況に応じて増減させている。一例としては、準備期間の計測頻度を計測期間に入ってもその初期段階では継続し、曲げを検知した時点で計測頻度を増大させる。例えば、柔軟性を有する電子書籍に曲げセンサーを適応させた場合、使用者がページめくりの動作を開始する迄は低頻度で計測し、動作の始まりに伴って曲げセンサーが曲げを検知すると、高頻度で曲げを計測し、実際に使用者がどういう行為を為そうとしているのかを検出する。或いは曲げの時間変化が激しい場合には計測頻度を高め、曲げの時間変化が小さい場合には計測頻度を下げる。例えば、曲げセンサーをモーションキャプチュアーとして使用する場合、解析対象の動作速度に応じて計測頻度を増減させる。野球のスウィングを例に取ると、バットを立てて構えている段階からテイクバックまでは動作速度が遅いので、計測期間に於ける計測頻度を10Hz程度と遅くし、テイクバックから振り終わり迄は動作速度が速いので、計測期間に於ける計測頻度を100Hz程度と速くする。
【0215】
この様に計測頻度を可変にする事で、省電力が実現すると共に、無駄な情報が減り、且つ時間分解能の高い計測が可能になる。
(変形例6)
「計測頻度を可変とする形態2」
変形例6では、計測頻度を目的に応じ、可変としている。以下、本変形例に係わる曲げセンサー使用方法について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例は実施形態1に記載した「使用方法」と比べて、計測頻度を目的に応じて可変としている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0216】
実施形態1では、計測頻度が準備期間と計測期間とで其々固定値が定められて居た。これに対して本変形例では、準備期間乃至は計測期間に於ける計測頻度を計測対象物や計測目的に応じて増減させている。即ち、計測対象物の曲げに関する時間変化が緩やかと予測される時には計測頻度を落とし、時間変化が激しいと予測される時には計測頻度を高めている。例えば、曲げセンサーをモーションキャプチュアーとして使用する場合、野球のスウィングの様に短時間に曲げ変化が激しい場合には、計測期間に於ける計測頻度を100Hz程度と速くする。一方、日本舞踊の動作解析の様に長時間でゆっくりと変化する場合には、計測頻度を1Hz程度と遅くする。
【0217】
この様に、曲げセンサーの計測頻度を用途に合わせて調整する事で、時間追従性が広がり、一つの曲げセンサーで様々な動作や変化を計測できる様になる。
【0218】
尚、これ迄の説明では準備期間と計測期間とを設けてきたが、準備期間は必須ではなく、これを省く事も可能である。
【符号の説明】
【0219】
1…曲げセンサー、2…基板、3…検出回路、4…出力回路、7…固定板、21…非可撓領域、22…可撓領域、31…切れ目、51…第一選択回路、52…第一処理回路、61…第二選択回路、62…第二処理回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体表面の曲がり具合(曲率)を計測し得る曲げセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の曲げセンサーは、例えば特許文献1に記載されている様に、棒状となっており、棒が曲がっているか否かを検出していた。具体的には、図16(a)に示す様に、二本の棒(金属棒11と金属棒12)を重ね、曲げられた際に二本の棒に生ずる歪みの差を検出していた。例えば、図16(b)に示す様に、曲げセンサーが左に凸状となる様に曲げられると、左側に位置する金属棒11は伸び、反対に、右側に位置する金属棒12は縮み、これらの歪みに応じた電気抵抗の変化を検出して、棒の曲がり具合を計測していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−18206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の曲げセンサーは、棒が曲がっているか否かとの単純な情報しか検出できないという課題があった。例えば、図16(c)と(d)に示す様に、棒ABが左に凸状となる様に曲げられる場合、棒の端Aに近い場所で曲げられている(図16(c))のか、棒の端Bに近い場所で曲げられている(図16(d))のか、を区別できなかった。又、図16(e)に示す様に、S字型に二ヶ所曲がると、歪みが相殺されるので、真っ直ぐであるとの間違った検出結果を出していた。この様に、従来の曲げセンサーは検出結果にも信頼感を抱けないという課題があった。換言すれば、従来の曲げセンサーは、曲がり具合に関する空間的な分解能が殆ど無く、その為に棒がどう曲がっているのかを定量できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決する為になされたものであり、以下の形態又は適用例として実現する事が可能である。
【0006】
(適用例1) 本適用例に係わる曲げセンサーは、可撓性を有する基板に第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとを備え、基板は可撓領域と非可撓領域とを含み、第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとは差動トランジスター対をなし、第一薄膜トランジスターは可撓領域に形成され、第二薄膜トランジスターは非可撓領域に形成される事を特徴とする。
薄膜トランジスターはマイクロメーター単位で形成できるため、この構成によれば、空間分解能が数マイクロメーターと極めて高い曲げセンサーを実現できる。
【0007】
(適用例2) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとを備え、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとはカレントミラー対をなし、第一薄膜トランジスターと第五薄膜トランジスターとが電気的に接続可能であり、第二薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとが電気的に接続可能である事が好ましい。
この構成によれば、薄膜トランジスター群がカレントミラー型差動増幅回路を構成するので、曲がり具合(曲率)を電位差として読み出し、それらを正確に計測できる。
【0008】
(適用例3) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第一電源と第二電源と第七薄膜トランジスターとを備え、第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとは第一電源に接続し、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとは第七薄膜トランジスターに接続し、第七薄膜トランジスターは第二電源に接続する事が好ましい。
この構成によれば、第七薄膜トランジスターが定電流源と成り得るので、曲がりに関する信号増幅が線型となり、曲げストレスに比例した電位を正確に計測できる。
【0009】
(適用例4) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第一の方向に沿って第一選択回路を備え、第一薄膜トランジスターは第一の方向に沿って複数個形成されると共に、第一選択回路によって、第一の方向で選択され得る事が好ましい。
この構成によれば、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第一の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第一の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第一の方向に沿って複数ヶ所であっても、曲がり具合を場所の関数として定量的に正確に計測できる。
【0010】
(適用例5) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第一の方向と交差する第二の方向に沿って第二選択回路を備え、第一薄膜トランジスターは第二の方向に沿って複数個形成されると共に、第二選択回路によって、第二の方向で選択され得る事が好ましい。
この構成によれば、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第二の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第二の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第二の方向に沿って複数ヶ所であっても、曲がり具合を場所の関数として定量的に正確に計測できる。
【0011】
(適用例6) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、更に第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとを備え、第三薄膜トランジスターは第一薄膜トランジスターと第五薄膜トランジスターとの間に配置され、第四薄膜トランジスターは第二薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとの間に配置され、第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターは第二選択回路にて制御される事が好ましい。
この構成によれば、第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとが第二の方向での選択回路の一部として機能するので、第二の方向に於ける曲がり具合の情報が干渉する事を防げる。
【0012】
(適用例7) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第二薄膜トランジスターは基準トランジスターとして動作し、第一薄膜トランジスターの電気特性と第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を検出する事が好ましい。
この構成によれば、可撓領域に位置する第一薄膜トランジスターの電気特性と非可撓領域に位置する第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を計測するので、曲がり具合を正確に計測できる。
【0013】
(適用例8) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第五薄膜トランジスターのドレインと第六薄膜トランジスターのドレインとの間にイコライズ回路を備える事が好ましい。
この構成によれば、曲がり具合の計測を空間的及び時間的に順次繰り返して行う際に、各計測の間に出力電位をリセットできるので、迅速に正確な計測を実現できる。
【0014】
(適用例9) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターと第七薄膜トランジスターとがN型であり、第二電源が負電源である事が好ましい。
この構成によれば、N型の薄膜トランジスターで曲げセンサーを実現できる。
【0015】
(適用例10) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターと第七薄膜トランジスターとがP型であり、第二電源が正電源である事が好ましい。
この構成によれば、P型の薄膜トランジスターで曲げセンサーを実現できる。
【0016】
(適用例11) 上記適用例に係わる曲げセンサーにおいて、非可撓領域には、基板よりも硬質な固定板が、基板に貼り合わされている事が好ましい。
この構成によれば、柔軟な基板を用いて、容易に可撓領域と非可撓領域とを作り分ける事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係わる曲げセンサーを模式的に示す斜視外観図。
【図2】実施形態1に係わる曲げセンサーの計測原理を説明する図。
【図3】実施形態1に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図4】実施形態1に係わる曲げセンサーのタイミングチャートを説明する図。
【図5】実施形態1に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図。
【図6】実施形態1に係わる曲げセンサーの断面の一部を説明する図。
【図7】可撓領域に於ける固定板の厚みと距離との関係を説明する図。
【図8】可撓領域に於ける固定板のたわみと距離との関係を説明する図。
【図9】(a);比較例の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態を表す図、(b);実施形態1の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態を表す図。
【図10】実施形態2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図11】実施形態2に係わる曲げセンサーのタイミングチャートを説明する図。
【図12】変形例1に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図13】変形例2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図。
【図14】変形例3に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図。
【図15】変形例4に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図。
【図16】従来の曲げセンサーを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。尚、以下の図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとする為、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0019】
(実施形態1)
「曲げセンサーの概要」
図1は、本実施形態に係わる曲げセンサーを模式的に示す斜視外観図である。以下、図1を用いて、まず曲げセンサーの概要を説明する。
【0020】
本実施形態に係わる曲げセンサー1は、柔軟なプラスチックフィルムなどの可撓性を有する基板2に形成される。基板2には非可撓領域21と可撓領域22とが存在する。可撓領域22はその名が示す通り可撓性を有しており、可撓性を有する基板2がそのまま使用されている。非可撓領域21は可撓性を有さず、通常は形状が固定している。本実施形態では基板2の裏面の一部に硬い固定板7を固定し、その部位で基板2が曲がらぬ様にして非可撓領域21としている。可撓領域22にはN型の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)(図3参照)が行列状に複数個配置され、検出回路3をなしている。一方、非可撓領域21にはN型の第二薄膜トランジスターTN2(図3参照)が備えられ、出力回路4の一部を構成している。第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第二薄膜トランジスターTN2とは差動トランジスター対とされている。第二薄膜トランジスターTN2は基準トランジスターとして動作し、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の電気特性と第二薄膜トランジスターTN2の電気特性とを比較して、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が配置されている部位の曲がり具合を検出する。
【0021】
検出回路3に配置された複数の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)は、検出回路3の外周部に配置された第一選択回路51と第二選択回路61とにより、順次選択される。基板2の一辺を第一の方向(x軸に平行な方向で、行方向とする)とし、第一の方向と交差する(ほぼ直交する)別の方向を第二の方向(y軸に平行な方向で、列方向とする)とすると、第一選択回路51と第一処理回路52とは、検出回路3の外側で第一の方向に沿って形成され、第二選択回路61と第二処理回路62とは、検出回路3の外側で第二の方向に沿って形成される。第一薄膜トランジスターTN1(i,j)は第一の方向に沿って複数個形成されると共に、第一選択回路51によって、第一の方向で選択される。同様に、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)は第二の方向に沿って複数個形成されると共に、第二選択回路61によって、第二の方向で選択される。こうして行列状に配置された第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が順次選択され、その電気特性が第二薄膜トランジスターTN2の電気特性とその都度比較される事により、曲がり具合に関する面分布が計測される。
【0022】
「計測原理」
図2は、本実施形態に係わる曲げセンサーの計測原理を説明する図である。以下、図2を参照して、曲がり具合を計測する原理を説明する。
【0023】
図2は、プラスチックフィルムに形成された薄膜トランジスターが、フィルムの湾曲に応じて電気特性を変化させる様子を示している。薄膜トランジスターはフィルム表面に形成されている。薄膜トランジスターのソースドレイン方向に関してフィルム表面が凸型になる様に湾曲させると、薄膜トランジスターはソースドレイン方向に引っ張り応力を受けて、伸びる歪みを被る。反対にフィルム表面が凹型になる様に湾曲させると、薄膜トランジスターはソースドレイン方向に圧縮応力を受けて、縮む歪みを被る。被る歪みに応じてトランジスターのオン特性は変化する。図2では、x軸にトランジスターが被る歪みを示し、y軸にその際のオン電流の変化率を示している。三角の実線はN型薄膜トランジスターの特性変化を示し、四角の破線はP型薄膜トランジスターの特性変化を示している。
【0024】
N型薄膜トランジスターでは、薄膜トランジスターがソースドレイン方向に引っ張り応力を受けるとオン電流は増加し、圧縮応力を受けるとオン電流は減少する。反対にP型薄膜トランジスターでは、薄膜トランジスターがソースドレイン方向に引っ張り応力を受けるとオン電流は減少し、圧縮応力を受けるとオン電流は増加する。オン電流の増減量は歪み量に対して線型関係にある。従って、フィルムが湾曲された際にオン電流の変化量を検出すれば、その際に薄膜トランジスターが被っている歪み量εTが分かる。一方、薄膜トランジスターが被っている歪み量εTと湾曲したフィルムの曲率半径RFとの間には、次の関係式が成り立つ。
【0025】
【数1】
ここで、dTは薄膜トランジスター層の厚み、dFはフィルムの厚み、YTは薄膜トランジスター層のヤング率、YFはフィルムのヤング率である。数式1を用いると、歪み量εTが分かれば、その場に於けるフィルムの曲率半径RFが定まる。こうして面状に分布した第一薄膜トランジスターTN1(i,j)のオン電流を調べれば、曲がり具合の面分布を計測出来る事になる。具体的には第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が配置された各点に於ける曲率半径RFijが定まる事になる。
【0026】
図2に示す様に、オン電流の歪みに対する変化量は僅かであるので、本実施形態では曲げ応力を被らぬ基準トランジスター(第二薄膜トランジスターTN2)と第一薄膜トランジスターTN1(i,j)との相違を差動増幅して、曲がり量(曲率半径Rij)を計測する。
【0027】
「回路」
図3は、本実施形態に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。以下、図3を参照して、曲げセンサーの回路を説明する。
【0028】
図1に示した様に、曲げセンサー1は検出回路3と出力回路4、第一選択回路51、第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62とを有する。検出回路3には第一薄膜トランジスターTN1(i,j)がM行N列の行列状に配置されている。MとNは1以上の整数である(1≦i≦M、1≦j≦N)。第一選択回路51は第一の方向に関してM行の行線R(i)から特定の一本の行線を選択する。従って、第一選択回路51は行選択回路でもある。第一選択回路51にはシフトレジスターやデコーダーが使用される。第一処理回路52は第一選択回路51からの選択信号を計測に適する様に加工する。具体的には選択電位を変換するレベルシフターや、高速で安定的に行線を選択する様にバッファーを備える。第二選択回路61は第二の方向に関してN列の列線C(j)から特定の一本の列線を選択する。従って、第二選択回路61は列選択回路でもある。第二選択回路61にはシフトレジスターやデコーダーが使用される。第二処理回路62は第二選択回路61からの選択信号を計測に適する様に加工する。具体的には選択電位を変換するレベルシフターや、高速で安定的に列線を選択する様にバッファーを備える。
【0029】
図3に戻る。
第二処理回路62はこの他に列選択トランジスターTN3(j)とTN4(j)とを含む。出力回路4は第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の電気的状態を増幅してLDOUT及びXLDOUTとして出力する。これらの回路の内で、検出回路3と出力回路4、第二処理回路62内の列選択トランジスターTN3(j)とTN4(j)とが薄膜トランジスターで形成される。本実施形態では、これらの他に第一選択回路51と第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62もCMOS構成の(N型及びP型の)薄膜トランジスターで形成されたが、第一選択回路51と第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62の内の列選択トランジスターTN3(j)とTN4(j)以外の回路は外付けのシリコンICチップにて形成されても良い。
【0030】
i行j列に位置する第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と、第二薄膜トランジスターTN2とは差動トランジスター対をなし、互いに対称に配置される。即ち、両トランジスターのドレインを第一電源に接続し、電源に対して並列に配置されている。尚、第一電源は正電源Vddである。また、N型薄膜トランジスターのソースドレインは、両者を比較して電位の高い方がドレインになり、電位の低い方がソースとなる。図3では各薄膜トランジスターのソースドレインをそれぞれsとdとで記載してある。尚、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)のゲートはi行目の行線R(i)に接続し、選択信号乃至は非選択信号が供給される。第二薄膜トランジスターTN2のゲートには基準信号Vrefが供給される。
【0031】
曲げセンサー1は、更に第五薄膜トランジスターTN5と第六薄膜トランジスターTN6とを備え、第五薄膜トランジスターTN5と第六薄膜トランジスターTN6とはカレントミラー対をなしている。カレントミラー対とは、両トランジスターのソースが共通に接続され、ゲートに同電位を印可する事で、飽和動作時(Vds>Vgs−Vth>0)に、両トランジスターのドレイン電位が多少異なっていても、同じ電流を通すトランジスター対である。
【0032】
曲げセンサー1は、更に第七薄膜トランジスターTN7を備える。第七薄膜トランジスターTN7は電流源トランジスターである。電流源トランジスターとは、飽和動作し、ドレイン電位が多少変動しても常に一定電流を供給するトランジスターである。第五薄膜トランジスターTN5のソースと第六薄膜トランジスターTN6のソースとは、第七薄膜トランジスターTN7のドレインに接続し、第七薄膜トランジスターTN7のソースは第二電源に接続する。第二電源は負電源Vssである。第七薄膜トランジスターTN7のゲートには第一制御信号Cnt1が供給される。第五薄膜トランジスターTN5と第六薄膜トランジスターTN6とが常に等しい電流を通し、第七薄膜トランジスターTN7が一定電流を供給するので、第五薄膜トランジスターTN5も第六薄膜トランジスターTN6も常に同一電流(第七薄膜トランジスターTN7を通る電流の半分)を通す。
【0033】
j列目に位置する第三薄膜トランジスターTN3(j)と第四薄膜トランジスターTN4(j)とは列選択トランジスターである。即ち、第三薄膜トランジスターTN3(j)は第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5との間に配置され、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5とを電気的に接続可能としている。第三薄膜トランジスターTN3(j)のソースは第五薄膜トランジスターTN5のドレインに接続し、第三薄膜トランジスターTN3(j)のドレインは第一薄膜トランジスターTN1(i,j)のソースに接続する。その結果、j列目の列線C(j)に選択信号(高電位信号)が入ると、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5とは電気的に接続される。反対に列線C(j)に非選択信号(低電位信号)が入ると、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)と第五薄膜トランジスターTN5とは電気的に絶縁される。同様に、第四薄膜トランジスターTN4(j)は第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6との間に配置され、第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6とを電気的に接続可能としている。第四薄膜トランジスターTN4(j)のソースは第六薄膜トランジスターTN6のドレインに接続し、第四薄膜トランジスターTN4(j)のドレインは第二薄膜トランジスターTN2のソースに接続する。その結果、列線C(j)に選択信号(高電位信号)が入ると、第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6とは電気的に接続される。又、列線C(j)に非選択信号(低電位信号)が入ると、第二薄膜トランジスターTN2と第六薄膜トランジスターTN6とは電気的に絶縁される。列線C(j)に供給される選択信号乃至は非選択信号は第二選択回路61からの出力を、必要に応じてレベルシフトし、レベルシフターからの出力はバッファーで補強されている。即ち、第三薄膜トランジスターTN3と第四薄膜トランジスターTN4とは第二選択回路61にて制御される。
【0034】
出力回路4からの検出結果は、第六薄膜トランジスターTN6のドレイン電位V6がLDOUTとして出力され、第五薄膜トランジスターTN5のドレイン電位V5がXLDOUTとして出力される。
【0035】
「計測方法」
図4は、本実施形態に係わる曲げセンサーにて曲がり具合を計測する際に、回路を駆動させるタイミングチャートを説明する図である。以下、図4を参照して、曲げセンサーを用いた計測方法を説明する。
【0036】
まず、計測に先立ち、計測時のVrefの電位値を定める。上述の如く、曲げセンサー1は、非可撓部に位置し基準トランジスターである第二薄膜トランジスターTN2の電気特性と、可撓部に位置する複数の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の電気特性とがそれぞれ比較される事で、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)の位置する部位の曲がり具合を検出する。一方で、薄膜トランジスターはトランジスター毎に電気特性が僅かに異なるのが一般である。これを補正する為に、検出回路3に配置された各トランジスターの変動を相殺すべく、Vrefの値を定める。具体的には曲げセンサー1を平らな面に設置し、検出回路3が平面となる様にする。この状態で各第一薄膜トランジスターTN1(i,j)を選択し(行線R(i)を選択信号電位H1とし、列線C(j)を選択信号電位H2とする)、LDOUT出力とXLDOUT出力とが等しくなる様に(V5=V6となる様に)第一薄膜トランジスターTN1(i,j)毎のVrefの値を定める。Vrefは行線R(i)に供給される選択信号電位H1の近い値となる。第一薄膜トランジスターTN1(i,j)を選択する際にVrefが取るべき選択電位をHrijとすると、これは、次式で表記される。
【0037】
【数2】
検出回路3が平坦時に、総ての第一薄膜トランジスターTN1(i,j)に対してV5=V6となる様にHrij(又はθij)を定め、まずこれを外部コントローラーに設けられて居る不揮発メモリーに記憶する。その後に検出回路3を対象物の表面に合わせ、表面の曲がり具合を計測する。
【0038】
計測時には、外部コントローラーが第一選択回路51や第一処理回路52、第二選択回路61、第二処理回路62などに適当な信号や電源を供給する。その結果、各行線や列線、出力回路4には、図4に示す、以下の様な信号が供給される。
【0039】
行線R(1)からR(M)は一本ずつ交替に選択される。通常は1行目の行線R(1)から最終行のM行目の行線R(M)へと順番に選択して行く。行線には、選択持に選択信号電位(高電位)H1が供給され、非選択時には非選択信号電位(低電位)Lが供給される。非選択信号電位Lは負電源電位Vss乃至はVssに近い電位で、明らかに高電位よりも低い。例えばL=Vss=0V(接地電位)である。選択信号電位は、例えばH1=5.4Vである。
【0040】
一本の行線が選択されている期間に、列線(C(1)からC(N))が一本ずつ交替に選択される。通常は1列目の列線C(1)から最終列のN列目の列線C(N)へと順番に選択されて行く。列線には、選択持に選択信号電位(高電位)H2が供給され、非選択時には非選択信号電位(低電位)Lが供給される。非選択信号電位Lは負電源電位Vss乃至はVssに近い電位で、明らかに高電位よりも低い。例えばL=Vss=0V(接地電位)である。選択信号電位は、例えばH2=7.0Vである。
【0041】
この様にして複数の第一薄膜トランジスターTN1(i,j)から特定の一つが選択される。その際には、その選択された第一薄膜トランジスターTN1(i,j)に適する選択電位Hrijを不揮発メモリーより読み出して、Vrefとする。選択電位Hrijは第一薄膜トランジスターTN1(i,j)が平坦ならば出力電圧がV5=V6となる様に設定されているので、V5乃至はV6の値を読むと、選択された第一薄膜トランジスターTN1(i,j)部の曲がり具合が分かる。例えば、選択された部位が凸型に曲がっていると、LDOUT(V6)の電位は低くなり、XLDOUT(V5)の電位は高くなるので、V5−V6の値は正になる。反対に、選択された部位が凹型に曲がっていると、LDOUT(V6)の電位は高くなり、XLDOUT(V5)の電位は低くなるので、V5−V6の値は負になる。
【0042】
「使用方法」
曲げセンサーを使用する際には、準備期間と計測期間とを設けても良い。準備期間とは計測期間に備えて低頻度で計測を繰り返している期間で有る。計測期間には、曲げセンサーは高頻度で計測を繰り返している。例えば、曲げセンサーを服に着け、特定の動作(例えば野球のスウィング)を解析するモーションキャプチャーとして使用する場合、解析対象の動作(スウィング)が始まる直前までは準備期間とし、解析対象の動作が行われている期間を計測期間とする。或いは、曲げセンサーを、画像記憶性を有する表示装置(例えば電気泳動ディスプレイやコレステリック型液晶ディスプレイなどを備えた電子書籍)に適応する場合、画像記憶期間を準備期間とし、画像書き換え期間の直前を計測期間とする。
【0043】
準備期間にも計測期間にも、上述の「計測方法」の章に記載した方法で曲げセンサーは計測動作を行っているが、その計測頻度が異なる。準備期間では単位時間内に行われる計測回数が少なく、計測期間ではこれが多い。M行N列に配置された計測セル(i行j列の計測セルにはTN1(i,j)が配置されている)の総てを選択して計測する期間をフレーム期間とし、一つのフレーム期間から次のフレーム期間までの時間をスタンバイ期間とすると、計測頻度はフレーム期間とスタンバイ期間との和の逆数(1/(フレーム期間+スタンバイ期間))となる。即ち、計測期間に於ける計測頻度を、準備期間に於ける計測頻度よりも大きくする。一例としては、計測期間ではスタンバイ期間をゼロとし、フレーム周波数(フレーム期間の逆数)と計測頻度とを一致させる。一方で、準備期間に於けるスタンバイ期間は数ミリ秒以上の比較的長時間とし(例えば1秒)、準備期間に於ける計測頻度をスタンバイ期間の逆数にほぼ一致させる。
【0044】
この様な準備期間と計測期間とを設ける事に依り、準備期間に於いては消費電力を低減でき、計測期間に於いては時間分解能を最大にする事ができる。尚、ここでは準備期間でも計測期間でもフレーム期間を同一とし、スタンバイ期間を変えたが、これに限らず、フレーム期間を準備期間と計測期間とで変えても構わない。即ち、計測期間に於けるクロック周波数の方を準備期間のクロック周波数よりも高くして、計測期間に於ける計測頻度を高くしても良い。
【0045】
「トランジスターサイズ及び駆動条件」
次に図3を参照して、高感度で高性能な計測を実現する為の条件を示す。以下、第一薄膜トランジスターTN1(i,j)をTN1と略称する。第二薄膜トランジスターTN2から第七薄膜トランジスターTN7も同様に略す。又、HrijやθijもHrやθと略す。尚、TN3のドレイン電位をV3で表し、TN4のドレイン電位をV4、TN7のドレイン電位をV7、で表す。
【0046】
TN1とTN2とは差動入力対であるので、飽和動作などの非線型動作が望ましい。TN3とTN4は列選択トランジスターで、出力電位範囲を広くする視点から、線型動作が望ましい。従って、TN3とTN4とに関しては、Vdsは出来る限り小さく、V3?V5やV4?V6となるのが望ましい。TN5とTN6とはカレントミラー対で飽和動作でなければならない。又、TN7は電流源トランジスターなので、矢張り飽和動作でなければならない。
【0047】
まず、トランジスターの電流式を表現するのに数式3の記号を用いる。
【0048】
【数3】
ここでWはトランジスターチャンネル形成領域の幅、Lはトランジスターチャンネル形成領域の長さ、Coxは単位面積当たりのゲート絶縁膜容量、μは移動度である。すると、飽和特性の近似式は数式4で表される。
【0049】
【数4】
又、線型特性の近似式は数式5で表される。
【0050】
【数5】
本実施形態では薄膜トランジスターのしきい値電圧をVthで表し、薄膜トランジスター間のVth変動は僅かであると近似する。即ち、TN1からTN7のVthは総て等しいと近似する。又、Vthは正であるとし、全体の電流(TN7の電流)を2Iとする。まず、TN1からTN7のZをZ1からZ7で表し、これらを数式6の関係とする。
【0051】
【数6】
数式6が満たされていると、曲げによるTN1の電流変化をゲート電位の変化と見なした際に、TN1の見なしゲート電位とVrefとの差は線型増幅されて出力される。以下、各トランジスターに求められる駆動条件を検討する。
【0052】
(1)TN1は飽和動作が望ましい。従って、数式7と数式8で表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0053】
【数7】
【0054】
【数8】
その結果、TN1のドレイン電流は次式となる。
【0055】
【数9】
【0056】
(2)TN2は飽和動作が望ましい。従って、数式10と数式11とで表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0057】
【数10】
【0058】
【数11】
その結果、TN2のドレイン電流は次式となる。
【0059】
【数12】
【0060】
(3)TN3は線型動作が好ましい。従って、数式13で表される線型条件が満たされるのが望ましい。
【0061】
【数13】
その結果、TN3のドレイン電流は次式となる。
【0062】
【数14】
【0063】
(4)TN4は線型動作が好ましい。従って、数式15で表される線型条件が満たされるのが望ましい。
【0064】
【数15】
その結果、TN4のドレイン電流は次式となる。
【0065】
【数16】
【0066】
(5)TN5は飽和動作するのが望ましい。従って、数式17で表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0067】
【数17】
その結果、TN5のドレイン電流は次式となる。
【0068】
【数18】
【0069】
(6)TN6は飽和動作するのが望ましい。従って、数式19と数式20とで表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0070】
【数19】
【0071】
【数20】
その結果、TN6のドレイン電流は次式となる。
【0072】
【数21】
【0073】
(7)TN7は飽和動作するのが望ましい従って、数式22で表される飽和条件が満たされるのが望ましい。
【0074】
【数22】
その結果、TN7のドレイン電流は次式となる。
【0075】
【数23】
ここで、数式22を満たす為に、数式24とする。
【0076】
【数24】
δは例えば0.1V程度で、容易に飽和条件を満たすには1V程度未満が理想である。
【0077】
次に数式13と数式15を満たす為に、数式25とする。
【0078】
【数25】
これにより、少なくとも数式26と数式27とが満たされる様になる。
【0079】
【数26】
【0080】
【数27】
【0081】
TN7に関する数式23と、TN4に関する数式16とから、次式が得られる。
【0082】
【数28】
この数式28に数式24と数式25とを適応すると、次の様になる。
【0083】
【数29】
数式29の右辺に関しては、数式30を考慮する。
【0084】
【数30】
ここで数式31とする。
【0085】
【数31】
こうすれば、数式32が得られる。
【0086】
【数32】
即ち、TN4はゲート電圧がVth+1V以上ならば、線型動作する。更に、TN4での電位降下を確実に0.1V未満と小さくし、TN4を線型動作させる為には、概ね次式が満たされれば良い。
【0087】
【数33】
数式33は数式34と変形される。
【0088】
【数34】
この場合、数式35の関係が得られる。
【0089】
【数35】
即ち、明らかに線型条件(数式15)は満たされる。
【0090】
次に、総ての望ましい条件を満たす様に構成を定める。TN7に関する数式23とTN6に関する数式21に対して、数式36とする。
【0091】
【数36】
こうすると、数式21と数式23とから数式37が得られる。
【0092】
【数37】
【0093】
次にTN1に関する数式9とTN5に関する数式18とに対して、数式38とする。
【0094】
【数38】
こうすると、数式39が得られる。
【0095】
【数39】
TN7とTN4の議論(数式28から数式35までの議論)により、数式40と数式41で表される関係になっている。
【0096】
【数40】
【0097】
【数41】
数式39に数式41を代入し、数式37と連立させると、数式42と数式43の解が得られる。
【0098】
【数42】
【0099】
【数43】
【0100】
TN2に関する数式12とTN6に関する数式21とからは、数式44が得られる。
【0101】
【数44】
数式44に数式37と数式40とを代入すると、数式45が得られる。
【0102】
【数45】
【0103】
以下、高感度で高性能な測定を実現する為に、満たされる事が望ましい各条件を如何に満たすかを示す。
【0104】
好適条件としての数式7: 数式41と数式42とから数式7は、数式46が得られる。
【0105】
【数46】
【0106】
好適条件としての数式10: 数式40と数式44とから数式10は数式46となる。
【0107】
好適条件としての数式8: 数式8は、Vthが正なので、数式47が成り立てば、確実に満たされる。
【0108】
【数47】
【0109】
好適条件としての数式11: 数式11は、Vthが正なので、数式48が成り立てば、確実に満たされる。
【0110】
【数48】
【0111】
好適条件としての数式13と数式15: 数式13と数式15とは、数式24と数式34とで満たされる。
【0112】
好適条件としての数式17: 数式17は、数式42と数式43とから、数式46となる。
【0113】
好適条件としての数式19: 数式19は、数式42と数式45とから、数式49となる。
【0114】
【数49】
ここで、数式50とする。
【0115】
【数50】
こうすると、好適条件としての数式19は、数式51と記載し直される。
【0116】
【数51】
【0117】
好適条件としての数式22: 数式24から数式22は、数式52となる。
【0118】
【数52】
これに数式43を適応すると、数式22は、数式53となる。
【0119】
【数53】
数式24により、これは、数式54を意味する。
【0120】
【数54】
【0121】
今、数式55の関係とする。
【0122】
【数55】
すると、数式43と数式42とから、数式56が得られる。
【0123】
【数56】
即ち、TN1とTN5、TN7にはほぼ均等なドレイン電圧が印可される。同様にTN2、TN6、TN7にもほぼ均等なドレイン電圧が掛かる。尚、この際に数式24と数式55とにより、数式57の関係となる。
【0124】
【数57】
【0125】
纏めると、電位関係としては、数式55と、数式24,数式25、数式57、数式50、数式51とを満たす様にする。一例としては、Vth=1.5Vとして、δ=0.3V、γ=0.1Vとし、Vdd=5.4V、H1=5.4V、H2=7V、H3=1.8V、Hr=5.4±θV、0≦θ<1.5Vとする。
【0126】
トランジスターサイズに関しては、数式6と数式34、数式36、数式38から数式58とする。
【0127】
【数58】
この様な電気関係とトランジスターサイズとを採用する事で、高感度で正確な計測が実現する。
【0128】
「平面レイアウト」
図5は、本実施形態に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図である。以下、図5を参照して、検出回路の平面レイアウトを説明する。
【0129】
検出回路3ではTN1(i,j)が行列状に並んでいる。i行j列に位置するTN1(i,j)のソースsはj列目の第一列線CL(j)に接続し、ドレインdはj列目の第二列線CR(j)に接続し、ゲートGはi行目の行線R(i)に接続している。j列目の第一列線CL(j)と第二列線CR(j)とは第一の方向に平行に配線され、検出回路3の外側でそれぞれTN3(j)(図3参照)のドレインとVdd(図3参照)とに接続する。i行目の行線R(i)は第二の方向に平行に配線され、検出回路3の外側で第一処理回路52(図1参照)に接続する。
【0130】
TN1(i,j)のチャンネル形成領域は、第一列線CL(j)と第二列線CR(j)とに平行に配置される。即ち、TN1(i,j)のソースドレイン方向は、第一列線CL(j)と第二列線CR(j)とに平行である。第二の方向(y軸方向)に隣接する第一薄膜トランジスター間には、第一の方向(x軸方向)に沿う線状の切れ目31が基板2に入っている。換言すれば、切れ目31とTN1(i,j)のソースドレイン方向とは平行である。この曲げセンサー1は第一の方向に関して曲がり具合を検出する。薄膜トランジスターの電気特性は、ソースドレイン方向に平行に湾曲された場合にも、ソースドレイン方向に垂直に湾曲された場合にも、影響を被る。図5では、第一の方向に沿って線状の切れ目31が設けられて居るので、第一薄膜トランジスターは第二の方向からの曲げ応力を受けず、第一の方向からの曲げ応力を主として受ける。この為に第二の方向からの曲げ応力干渉がなくなり、高精度な測定を可能としている。
【0131】
尚、図5で、切れ目31は緩やかな曲線を描いているが、隣接する第一薄膜トランジスター間を、力学的に分離すればその形状は問われず、直線でも構わない。或いは切れ目31は、複数の穴を第一の方向に沿って開口してあっても良い。
【0132】
「固定板の断面形状」
図6は、本実施形態に係わる曲げセンサーの断面の一部を説明する図である。又、図7は可撓領域に於ける固定板の厚みと距離との関係を説明する図である。更に、図8は可撓領域に於ける固定板のたわみと距離との関係を説明する図である。ここでは可撓領域に於ける固定板の断面形状を、図6と図7と図8とを用いて、説明する。
【0133】
図6は、図1のA−A’の断面図である。曲げセンサー1は非可撓領域21にて、基板2の背面を固定板7で固定されている。固定板7はABS樹脂(アクリロニトリルとブタジエン、及びスチレンの共重合合成樹脂)などの外観性が良く、靱性に優れた強固なプラスチックから構成され、殆ど曲がらない。一方、基板2は厚さ100マイクロメーターのポリエステルフィルムで、柔軟性に富んでいる。基板2の表面には薄膜トランジスターで回路や配線が形成されているが、これらが可撓領域22と非可撓領域21との境界で破壊される恐れが僅かにある。これを完全に(ほぼ100%)回避する為に、固定板7は可撓領域22にもはみ出して形成され、その厚みを可撓領域22では徐々に減じている。こうする事で、回路や配線の信頼性が著しく増す事になる。以下では固定板7の形状をどうすれば、信頼性の高い曲げセンサー1を実現できるかを論ずる。
【0134】
図6に示す様に、可撓領域22に於ける固定板7は、その断面幅が下側から上側に向かうに従って広がっており、固定板7の上面にてその幅を最大にしている。即ち、x軸方向に対しては、可撓領域22に於ける固定板7の厚みは、原点O(可撓領域22と非可撓領域21との境界で、固定板7が厚みを減じ始める位置)から離れるに従って、薄くなっている。以下では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)を原点Oからの距離xの関数で表した際に、どう云った関数としたら好ましいかを示す。即ち、好適例として、厚さが距離の一次式で表現される形態と、平方根で表現される形態、立方根で表現される形態、が示される。可撓領域22に於ける固定板7の幅WHが同じ場合、最も強い荷重に耐えられ、最も柔軟性に富むのは一次式の形態である事や、応力を可撓領域22に於ける固定板7全体で均一に受け止めるのが平方根の形態である事、曲率半径が可撓領域22に於ける固定板7全体で同一になるのが立方根の形態である事、等が示される。
【0135】
(好適例1)厚さが距離の一次式で表現される形態
第一の具体例では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)が距離xに対して線型関係にあり、数式59にて記述される。
【0136】
【数59】
ここでWHは可撓領域22に於ける固定板7の幅であり、αは傾斜パラメーター、可撓領域22に於ける固定板7の厚さは原点O(x=0)にてt0であり、先端(エッジ、x=WH)にてtE=αt0である。図7には実線Lにて数式59にて表される距離(x/WH)と厚み(t(x)/t0)との関係を、α=0.2として描いてある。可撓領域22に於いて、固定板7の厚みが距離の一次関数で表され、原点から離れるに従って線型に薄くなっているのが分かる。
【0137】
可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、数式60である。
【0138】
【数60】
尚、ここでRは可撓領域22に於ける固定板7がたわんだ際の曲率半径、zは可撓領域22に於ける固定板7のz方向へのたわみ量、Eは固定板7のヤング率、LHは固定板7の長さである。数式60に対する境界条件は、数式61である。
【0139】
【数61】
数式60を数式61の元に解くと、数式62の解が得られる。
【0140】
【数62】
これが可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係である。図8にこの関係を、α=0.2として、縦軸を規格化されたたわみ量(z(x)/(FWH3/(ELHt03)))で、横軸を規格化された距離(x/WH)として、実線Lにて描いてある。荷重Fに対し、可撓領域22に於ける固定板7が優れた柔軟性を有している事が判る。可撓領域22に於ける固定板7の端部に於けるたわみzEは、数式62でx=WHと置いて、数式63となる。
【0141】
【数63】
又、可撓領域22に於ける固定板7の上での曲げ応力σは、固定板7の歪みをεとして、数式64で表される。
【0142】
【数64】
この式から曲げ応力が最大となるのは、x=(1−2α)/(1−α)・WHで、0≦α<0.5の時に、数式65となる。
【0143】
【数65】
可撓領域22に於ける固定板7をなす材料の曲げ強さ(国際標準化機構のISO178が定め、三点曲げ試験から得られる曲げ強さ)をσbとすると、σMaxがσbよりも小さくなる条件(数式66)を満たしている限り、可撓領域22に於ける固定板7は破断しない。
【0144】
【数66】
従って、可撓領域22に於ける固定板7は、使用時に想定される荷重の線密度(F/LH)と可撓領域22に於ける固定板7の曲げ強さσbとを元に、数式66を満たす様に幅WHや原点Oに於ける厚みt0、傾斜パラメーターαを定める。或いは、使用時に想定される最もきつい曲率半径をR(M)inとし、それが曲げ応力の最大になる場所での曲率半径に一致しても可撓領域22に於ける固定板7が破断しない条件とする。曲げ応力が最大になる場所での可撓領域22に於ける固定板7の厚みをtMとして、σMaxがσbよりも小さくなる条件は、数式67である。
【0145】
【数67】
従って、数式67を満たす様に厚みt0と傾斜パラメーターαとを定める。即ち、可撓領域22に於ける固定板7の先端での厚みtE=αt0を、数式67を満たす様にすると、使用時に可撓領域22に於ける固定板7が破断することはない。本実施形態では、可撓領域22に於ける固定板7はABS樹脂からなり、そのヤング率はE=2000MPで、曲げ強さはσb=50MPaである。使用時に想定される最もきつい曲率半径は10mmであるので、先端での厚みは、数式67に従って、0.25mm未満でなければならない。実際には、t0=1mmでα=0.2、先端部の厚みは0.2mm、WH=5mmであったので、数式9を満たしているにのみならず、曲率半径を8mmに小さくされるまで可撓領域22に於ける固定板7は破断しない様にされている。尚、可撓領域22を強く屈曲させて、その結果として可撓領域22に於ける固定板7がたわみ、可撓領域22に於ける固定板7での最小曲率半径が8mm未満になった際に破断が生ずる恐れのある位置はおおよそ、x=0.889WHである。
【0146】
尚、0.5≦α<1の場合には、曲げ応力が最大に成るのはx=0で、その値σMaxと曲率半径R0とは、それぞれ数式68で表される。
【0147】
【数68】
使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/LH)や最もきつい曲率半径をR(M)inに対して、数式69を満たす様にWHやt0を定める。
【0148】
【数69】
例えば先と同じABS樹脂で可撓領域22に於ける固定板7を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式11に則り、t0<0.5mmとする。
【0149】
(好適例2)厚さが距離の平方根で表現される形態
第二の具体例では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)が距離xに対して平方根の関係にあり、数式70と記述される。
【0150】
【数70】
図7には点線SRにて数式12にて表される距離(x/WH)と厚み(t(x)/t0)との関係を描いてある。固定板7の厚みが距離の平方根に比例して薄くなり、取り分け、先端(x=WH)付近で急にではあるが、なめらかに薄くなっているのが分かる。
【0151】
可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、数式71である。
【0152】
【数71】
境界条件は具体例1と同じで、数式61にて与えられる。数式71を数式61の元に解くと、数式72の解が得られる。
【0153】
【数72】
これが可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図8にこの関係を点線SRにて描いてある。荷重Fに対し、可撓領域22に於ける固定板7が柔軟性を有している事が判る。可撓領域22に於ける固定板7の端部に於けるたわみzEは、数式73で表される。
【0154】
【数73】
又、可撓領域22に於ける固定板7の上での曲げ応力σは数式74となる。
【0155】
【数74】
曲げ応力は可撓領域22に於ける固定板7の幅方向で均一となる。即ち、幅方向の特定の位置で破断し易い様な事はなくなる。曲げセンサー1の使用時に可撓領域22を屈曲させると、可撓領域22の屈曲に伴う応力が発生し、その応力の一部を可撓領域22に於ける固定板7が曲げ応力として受け持つことになるが、それが可撓領域22に於ける固定板7上で均一になる。換言すれば、可撓領域22に於ける固定板7の特定箇所に応力が集中する事がなくなるので、その意味から曲げセンサー1の機械的耐久性が向上することになる。可撓領域22に於ける固定板7が曲げ応力で破断されない条件は、数式75である。
【0156】
【数75】
使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/LH)に対して、数式75を満たす様にt0やWHを定める。厚みが距離に対して平方根の関係にある場合、最も曲がりにくい点はx=0であるから、x=0に於ける曲率半径R0を用いて、R0=R(M)inとされた時に、x=0に於ける曲げ応力σ0が曲げ強さσbよりも小さく、数式76を満たせば、曲げセンサー1が屈曲されても可撓領域22に於ける固定板7は破断しない。
【0157】
【数76】
即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R(M)inに対して、数式76を満たす様にt0を定める。例えば先と同じABS樹脂で可撓領域22に於ける固定板7を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式76に則り、t0<0.5mmとすれば、使用時に可撓領域22に於ける固定板7が破断する恐れはない。この場合、非可撓領域21に於ける固定板7は1mm以上の厚みを持たせ、原点Oで階段状に厚みを減じてt0とし、非可撓領域21では固定板7の厚みをt0から距離の平方根に比例して薄くして行く。
【0158】
尚、プラスチックにて可撓領域22に於ける固定板7を作製する際に、厚みを正確に数式70にて表される平方根の関係に加工するのは大変である。この場合は好適例1で示した線型関係で近似させる事ができる。即ち、数式77とする。
【0159】
【数77】
一例として、α=0.395とした際のたわみを図8の実線L2にて描く。実線L2と点線SRとが良く一致している事が判る。この線型近似で、曲げ応力は可撓領域22に於ける固定板7の幅方向でほぼ均一となり、厚みが線型関係の時の効果に加え、平方根の時と同様な効果が期待でき、更に製造加工も容易になる。
【0160】
(好適例3)厚さが距離の立方根で表現される形態
第三の具体例では、可撓領域22に於ける固定板7の厚さt(x)が距離xに対して立方根の関係にあり、数式78と記述される。
【0161】
【数78】
図7には一点鎖線CRにて数式78にて表される距離(x/WH)と厚み(t(x)/t0)との関係を描いてある。固定板7の厚みが距離の立方根に比例して薄くなり、取り分け、先端(x=WH)付近で急にではあるが、なめらかに薄くなっているのが分かる。
【0162】
可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に(z軸に平行に)加えられた際に、荷重が先端部に集中しているとの近似で、モーメントの釣り合いから導かれる基本方程式は、数式79である。
【0163】
【数79】
この場合、曲率半径は距離xに依存せず、一定となる。即ち可撓領域22に於ける固定板7の何処も同じ曲率半径を有しながら均一に変形する。可撓領域22の固定板7を屈曲させた際に、固定板7は可撓領域22内で同一の曲率半径で綺麗に曲がる事になる。即ち、可撓領域22の曲げに対する耐久性を向上させる事ができる。境界条件は具体例1と同じで、数式61にて与えられる。数式79を数式61の元に解くと、数式80の解が得られる。
【0164】
【数80】
これが可撓領域22に於ける固定板7に荷重Fが垂直に加えられた際の、距離(x)とたわみ(z(x))との関係で、図8にこの関係を一点鎖線CRにて描いてある。荷重Fに対し、可撓領域22に於ける固定板7が柔軟性を有している事が判る。可撓領域22に於ける固定板7の端部に於けるたわみzEは、数式81である。
【0165】
【数81】
又、可撓領域22に於ける固定板7の上での曲げ応力σは数式82となる。
【0166】
【数82】
即ち、x=0にて歪みも曲げ応力も最大となる。可撓領域22に於ける固定板7が曲げ応力で破断されない条件は、数式83である。
【0167】
【数83】
使用時に想定される最も厳しい荷重線密度(F/LH)に対して、数式83を満たす様にt0やWHを定める。厚みが距離に対して立方根の関係にある場合、屈曲時に最も破断しやすい点はx=0であるから、R0=R(M)inとされた時に、x=0に於ける曲げ応力σ0が曲げ強さσbよりも小さく、数式84を満たせば、曲げセンサー1が屈曲されても可撓領域22に於ける固定板7は破断しない。
【0168】
【数84】
即ち、使用時に想定される最もきつい曲率半径R(M)inに対して、数式84を満たす様にt0を定める。例えば先と同じABS樹脂で可撓領域22に於ける固定板7を作成し、同じ最小曲率半径を想定すると、数式84に則り、t0<0.5mmとすれば、使用時に可撓領域22に於ける固定板7が破断する恐れはない。この場合、非可撓領域21に於ける固定板7は1mm以上の厚みを持たせ、原点Oで階段状に厚みを減じてt0とし、非可撓領域21では固定板7の厚みを距離の立方根に比例して薄くして行く。
【0169】
尚、プラスチックにて可撓領域22に於ける固定板7を作製する際に、厚みを正確に数式78にて表される立方根の関係に加工するのは大変である。この場合は好適例1で示した線型関係で近似させる事ができる。即ち、数式85とする。
【0170】
【数85】
一例として、α=0.58とした際のたわみを図8の実線L3にて描く。実線L3と一点鎖線CRとが良く一致している事が判る。この線型近似で、可撓領域22に於ける固定板7の曲率半径はほぼ均一となり、厚みが線型関係の時の効果に加え、立方根の時と同様な効果が期待でき、更に製造加工も容易になる。
【0171】
図9は、本実施形態の効果を説明する断面図であり、(a)は比較例の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態で、(b)は本実施形態の曲げセンサーに下向きの荷重を加えた状態を表す。
【0172】
図9(a)に示す比較例の曲げセンサー1では、非可撓領域21だけに固定板7が設けられている。この比較例に対し、図9(b)に示す本実施形態の曲げセンサー1には、可撓領域22に原点からの距離に対して次第に薄くなる固定板7が設けられている。比較例の曲げセンサー1では、図9(a)に示す様に、可撓領域22が凸型に屈曲された際に、固定板7の角が可撓領域22にくい込み、局所的に極めて強いくい込み圧力Pを基板2に及ぼす。図9では、くい込み圧力Pの強さを矢印の長短で表現し、くい込み圧力Pの及ぶ範囲を矢印の幅の広さで表現してある(従って数学的には矢印の長さと幅との積がくい込み力になり、図9(a)と図9(b)とでこの積の値は一致する)。これに対して、本実施形態の曲げセンサー1では、図9(b)に示す様に、可撓領域22が凸型に屈曲されても、可撓領域22に於ける固定板7が面で幅広く、弱いくい込み圧力Pを基板2に及ぼす。この為に、比較例の曲げセンサー1に於いては、くい込み圧力Pによって、基板2上の回路や配線が影響を受けたり、特性が変化したりする恐れが僅かに残るが、本実施形態の曲げセンサー1に於いては、くい込み圧力Pによって、こうした事態が発生する可能性は殆どゼロになる。更に、可撓領域22の幅方向においては、固定板7は原点Oから離れるに従い厚みを減じているので、固定板7の先端(エッジ)では殆どくい込み圧力Pは発生せず、端部への応力集中に伴う回路や配線の悪影響を完全に(ほぼ100%)防止する事ができる。強いくい込み圧力は、回路や配線を破壊する恐れ(回路や配線にクラックが入って配線が断線する恐れ)があるので、これを弱くする事は曲げセンサー1の製造時における破損を抑制して生産性を高めると共に、使用時における機械的信頼性を高める事になる。
【0173】
「曲げセンサーの製造方法」
曲げセンサー1では、柔軟性を有するプラスチックフィルムの基板2に薄膜回路を形成してあるが、ここでは曲げセンサー1の製造方法を述べる。具体的には、最初にガラス基板に形成された薄膜回路を剥離して、プラスチックフィルムに転写する方法で曲げセンサー1を製造する。
【0174】
第一工程として、製造元基板となるガラス基板上に剥離層を設ける。剥離層は厚みが50nm程の水素化非晶質シリコン膜である。この剥離層上に下地絶縁膜となる酸化硅素膜を成膜した後に、薄膜トランジスターなどからなる薄膜回路を製造する。薄膜回路は、公知の低温工程多結晶シリコン薄膜トランジスターの製造方法を適応する。具体的には、下地絶縁膜上にレーザー結晶化された多結晶シリコン半導体層を設け、その後に、酸化硅素膜を用いたゲート絶縁層と、アルミニウム又はアルミニウムに添加物を加えた金属を用いたゲート電極とを作成する。更に、酸化硅素膜を用いた第一層間絶縁層、アルミニウム又はアルミニウムに添加物を加えた金属を用いたソースコンタクト及びドレインコンタクト、ポリイミド系の樹脂を用いた第二層間絶縁層(保護膜)、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)を用いた電極端子(実装端子)を作成する。
【0175】
次に第二工程として、仮接着剤を薄膜回路表面に塗布し、製造元基板を仮転写基板に貼り付ける。仮接着剤としては、アクリル系の樹脂に水溶性を与えるべくポリビニルピロリドン樹脂を混合したものを用いる。仮転写基板は平滑なガラス基板である。
【0176】
次に第三工程として、製造元基板を取り外し、薄膜回路を仮転写基板に移す。製造元基板を取り外す方法としては、製造元基板裏面からレーザー光を照射して剥離層の内部又は界面に於ける密着力を弱め、次いで製造元基板と仮転写基板とを引き剥がす。こうする事で薄膜回路は仮転写基板に移される。
【0177】
次に第四工程して、薄膜回路裏面に残る剥離層を除去し、例えばイオナイザーを用いて薄膜回路裏面に存在する電荷を除去する。此により剥離帯電や乾燥時の空気との摩擦帯電を或る程度除去できる。
【0178】
次に第五工程として、例えばアクリル系の樹脂からなる永久接着剤を用いてプラスチックフィルムの第一面側に薄膜回路裏面を貼り付ける。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などのポリエステルフィルムを用いることができる。
【0179】
プラスチックフィルムを貼り付けた後、第六工程として、プラスチックフィルム第二面側(第一面側と反対の面)の非可撓領域21となるべき場所に永久接着剤を用いて固定板7を接着する。この永久接着剤は第五工程で用いた永久接着剤と同じであっても構わないし、異なっていても構わないが、仮接着剤を溶解する溶媒には溶けない材質である。固定板7の接着に前後して、レーザー加工などを利用して、切れ目31をいれる。こうした作業は仮転写基板が付いた状態で行われるので、基板2が柔軟性を有していても取り扱いが容易で、曲げセンサー1の製造も困難なく行われる。
【0180】
次に第七工程として、仮接着剤を溶解する溶媒(この場合には水)を用いて仮転写基板を外す。その後、仮接着剤を洗浄して除去する。
【0181】
次に第八工程として、実装作業を行う。まず、非可撓領域21に設けられた実装端子にテープ配線を実装する。この際には異方性導電ペーストや異方性導電フィルム(これらを併せて異方性導電接着剤と呼ぶ)を実装端子とテープ配線との間に配置して両者を接着する。テープ配線は曲げセンサー1外に設けられた外部コントローラーに接続される。こうして、曲げセンサー1が完成する。
【0182】
尚、基板2は上述のプラスチックフィルムの他に、厚みが50マイクロメーターから500マイクロメーター程度の薄い金属箔や、厚みが10マイクロメーターから200マイクロメーター程度の薄いガラスであっても良い。又、製造方法も厚いガラスに薄膜回路を形成した後にガラスを薄く削る方法や、プラスチックフィルムや金属箔に直接薄膜回路を形成する方法であっても良い。直接形成する場合には非晶質シリコン薄膜トランジスターや、亜鉛又は錫を含む酸化物を半導体層に利用した酸化物薄膜トランジスター等を利用することが出来る。
【0183】
上述した通り、本実施形態に係わる曲げセンサー1によれば、以下の効果を得る事ができる。
曲げセンサー1が、可撓領域22に形成された第一薄膜トランジスターや、非可撓領域21に形成された第二薄膜トランジスター等の薄膜トランジスターから構成されるので、空間分解能が極めて高くする事ができる。
【0184】
又、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとを備え、これらがカレントミラー対をなして、第一薄膜トランジスターや第二薄膜トランジスターと接続可能であるので、曲がり具合(曲率)を正確に計測できる。
【0185】
又、第一電源と第二電源と第七薄膜トランジスターとを備え、第七薄膜トランジスターが定電流源と成り得るので、曲がりに関する信号増幅が線型となり、曲げストレスに比例した電位を正確に計測できる。
【0186】
又、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第一の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第一の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第一の方向に沿って複数ヶ所であっても、正確に曲がり具合を計測できる。
【0187】
又、曲げを検出する第一薄膜トランジスターを第二の方向に複数個配置して、個別に選択するので、第二の方向に関する曲がりの空間分布を計測できる。従って、曲がり具合が第二の方向に沿って複数ヶ所であっても、正確に曲がり具合を計測できる。
【0188】
又、第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとが第二の方向での選択回路の一部として機能するので、第二の方向に於ける曲がり具合の情報が干渉する事を防げる。
【0189】
又、可撓領域22に位置する第一薄膜トランジスターの電気特性と非可撓領域21に位置する第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を計測するので、曲がり具合を正確に計測できる。
又、第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターと第七薄膜トランジスターとがN型であり、第二電源が負電源であるので、P型の薄膜トランジスターを用いずにN型の薄膜トランジスターで曲げセンサー1を実現できる。
【0190】
(実施形態2)
「イコライズ回路が配置されている形態」
図10は、実施形態2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。又、図11は、実施形態2に係わる曲げセンサーにて曲がり具合を計測する際に、回路を駆動させるタイミングチャートを説明する図である。以下、本実施形態に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
【0191】
本実施形態(図10)は実施形態1(図3)と比べて、第五薄膜トランジスターTN5のドレインと第六薄膜トランジスターTN6のドレインとの間にイコライズ回路を備える点が異なっている。それに伴って、タイミングチャート(図11)でも実施形態1のタイミングチャート(図4)と比べて、選択期間内にプリチャージ期間が設けられる様になる。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0192】
図10に示す様に、本実施形態ではイコライズ回路として第八薄膜トランジスターTN8が出力回路4に設けられて居る。TN8のソースドレインの一方はTN5のドレインに接続してXLDOUTとなり、他方はTN6のドレインに接続してLDOUTとなる。TN8のゲートには第二制御信号Cnt2が供給される。尚、プリチャージ期間(選択期間の前半)を短くするには、TN8のオン電流は大きい事が望まれ、それ故、TN8のトランジスターサイズはTN3やTN4のトランジスターサイズと同じにする事(Z3=Z4=Z8)が好ましい。
【0193】
次に図11を参照して、曲げセンサー1の回路駆動方法を説明する。行列状に配置された複数の第一薄膜トランジスターから特定の一つが選択されると、その選択期間の前半はXLDOUTの電位V5とLDOUTの電位V6とをVddへとプリチャージし、選択期間の後半で曲がり具合を計測する。第一制御信号Cnt1は、選択期間の前半に低電位L(Vss)となり、選択期間の後半に高電位H3となる。H3の電位値は実施形態1で論じた通りである。第二制御信号Cnt2は、第一制御信号Cnt1に対して相補的で、電位振幅が異なる信号となる。即ち、第二制御信号Cnt2は、選択期間の前半に高電位H4となり、選択期間の後半に低電位L(Vss)となる。高速測定を実現する為に、H4の電位値は高い方が好ましく、例えば実施形態1で論じたH2とする事が望ましい。こうすると、選択期間の前半ではTN7がオフ状態になり、TN8がオン状態になるので、XLDOUTの電位V5とLDOUTの電位V6とをVddへと等しくできる。出力が等しくなった後に、選択期間の後半で曲がり具合を計測するので、一つの計測と次の計測(例えばTN1(i,j)の計測と次のTN1(i,j+1)の計測)とで、前の計測結果(TN1(i,j)の計測結果)が後の計測結果(TN1(i,j+1)の計測結果)に干渉する事がなくなり(これらが干渉すると干渉を排除する為に計測時間は長くなる)、正確な計測を迅速に実施できる様になる。
【0194】
上述した通り、本実施形態に係わる曲げセンサー1によれば、実施形態1での効果に加え、以下の効果を得る事ができる。
イコライズ回路を備えているので、曲がり具合の計測を空間的及び時間的に順次繰り返して行う際に、各計測の間に出力電位をリセットできる。その結果、迅速に正確な計測を実現できる。
【0195】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加える事が可能である。変形例を以下に述べる。
【0196】
(変形例1)
「回路がPMOSにて形成されている形態」
図12は、変形例1に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図12)は実施形態1(図3)と比べて、曲げセンサー1の回路を構成する薄膜トランジスターの伝導型が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0197】
実施形態1ではN型の薄膜トランジスターを用いて曲げセンサー1の回路(検出回路3と出力回路4、及び第二処理回路62の列選択トランジスター)を構成していたが、本変形例ではP型の薄膜トランジスターTP1(i,j)からTP7を用いてこれらの回路を構成する。この場合、第一電源が負電源Vssとなり、第二電源が正電源Vddとなる。又、P型薄膜トランジスターのソースドレインは電位の高い方がソースとなり、電位の低い方がドレインになる。図12には参考の為にソースとドレインとをsとdとで示してある。P型薄膜トランジスターとしては、半導体層にポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コージチオフェン)(F8T2)や、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[5,5’−ビス(3−ドデシル−2チニル)−2,2’−ビチオフェン](PQT−12)、PBTTT、ペンタセン等の有機物を使用した有機物薄膜トランジスターを使用することができる。
【0198】
トランジスターサイズに関しては、実施形態1と同じである。駆動方法は実施形態1の図4と同じだが、H1やH2、H3、Hrなどの所謂高電位は低電位Lに対する負の絶対値が大きくなる様に変える。尚、P型薄膜トランジスターのしきい値電圧Vthは負である。具体的には数式57を数式86へと変える。
【0199】
【数86】
TP1(i,j)のゲートに接続するi行目の行線XR(i)は、非選択期間にVddとし、選択期間には、数式87とする。
【0200】
【数87】
j列目の列線XC(j)は、非選択期間にVddとし、選択期間には数式88とする。
【0201】
【数88】
電流源トランジスターTP7のゲートに入る第一制御信号XCnt1は、非計測期間にVddとし、計測期間には数式89とする。
【0202】
【数89】
第二薄膜トランジスターTP2のゲートに入力するXVrefは、非計測期間にVddとし、計測期間には数式90とする。
【0203】
【数90】
従って、例えば、Vth=−1.5Vとして、δ=−0.3V、γ=−0.1Vとし、Vdd=5.4V、H1=0V、H2=−1.6V、H3=3.6V、Hr=0±θV、−1.5V<θ≦0Vとする。ここでのH2やHrの様に、負電圧を準備するのが困難な場合、総ての電位が正になる様にVddとVssを一定量ずらしても良い。例えば、上記例で全体を1.6Vずらして、Vdd=7.0V、Vss=H1=1.6V、H2=0V、H3=5.2V、Hr=1.6±θV、−1.5V<θ≦0Vとしても良い。
【0204】
上述した通り、本変形例に係わる曲げセンサー1によれば、N型の薄膜トランジスターを使用せずに、P型の薄膜トランジスターで曲げセンサー1を実現できる。
【0205】
(変形例2)
「回路がPMOSで形成され、イコライズ回路が配置されている形態」
図13は、変形例2に係わる曲げセンサーの回路を説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1乃至2と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図13)は実施形態2(図10)と比べて、曲げセンサー1の回路を構成する薄膜トランジスターの伝導型が異なっている。それ以外の構成は、実施形態2とほぼ同様である。
【0206】
実施形態1ではN型の薄膜トランジスターを用いて曲げセンサー1の回路(検出回路3と出力回路4、及び第二処理回路62の列選択トランジスター)を構成していたが、本変形例ではP型の薄膜トランジスターTP1(i,j)からTP8を用いてこれらの回路を構成する。即ち、変形例1にP型の第八薄膜トランジスターTP8を付加した形態となる。TP8は、第五薄膜トランジスターTP5のドレインと第六薄膜トランジスターTP6のドレインとの間にイコライズ回路として配置される。尚、変形例1と同様、第一電源が負電源Vssとなり、第二電源が正電源Vddとなり、八種類のP型薄膜トランジスターのしきい値電圧Vthは負である。
【0207】
トランジスターサイズに関しては、実施形態1や実施形態2と同じである。駆動方法は実施形態1の図11と同じだが、変形例1と同様にH1やH2、H3、H4、Hrなどの所謂高電位は低電位Lに対する負の絶対値が大きくなる様に変える。VddやVss、H1、H2、H3、Hrは変形例1と同じで、数式86から数式90を満たす様に決められる。TP8のゲートに入力する第二制御信号XCnt2は、第一制御信号XCnt1に相補的で、電位振幅が異なる信号となる。即ち、第二制御信号XCnt2は、TP1の選択期間の前半にH4となり、選択期間の後半にVddとなる。高速測定を実現する為に、Vddに対するH4の絶対値(|H4−Vdd|)は高い方が好ましく、例えば変形例1のH2とする事が望ましい。
【0208】
上述した通り、本変形例に係わる曲げセンサー1によれば、P型の薄膜トランジスターで曲げセンサー1を実現できると共に、イコライズ回路を備えているので、曲がり具合の計測を空間的及び時間的に順次繰り返して行う際に、各計測の間に出力電位をリセットできる。従って、迅速に正確な計測を実現できる。
【0209】
(変形例3)
「切れ目が第一薄膜トランジスターの近傍に形成される形態」
図14は、変形例3に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図14)は実施形態1(図5)と比べて、切れ目の大きさや位置が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0210】
図5に示す実施形態1では、切れ目31は比較的大きく、第二列線CR(j)と隣の第一トランジスターに接続する第一列線CL(j+1)との間(j列目の計測セルとj+1列目の計測セルとの間)に設けられて居た。これに対して本変形例では、図14に示す様に、比較的小さな切れ目31が第一薄膜トランジスターの近傍に(計測セル内に)設けられている。切れ目31の目的は横方向からの応力干渉を防ぐ事だが、これが大きいと曲げセンサー1の強度が不足する恐れがある。従って、微細加工が可能であるならば、本変形例が示す様に、第一薄膜トランジスターの近傍(各計測セル内)に設けるのが望ましい。こうする事で曲げセンサー1の強度を保ちつつ、正確な曲げ測定が実現する。計測セル内には測定方向(この場合、第一の方向、x軸方向)に沿った細長い切れ目31を一本設ければ、他方向(この場合、第二の方向、y軸方向)からの干渉を防げる。確実に、干渉を防ぐ為に、図14に示す様に、測定方向に沿った二本の細長い切れ目31を設け、それらの間に第一薄膜トランジスターを形成するのが理想的である。
【0211】
(変形例4)
「切れ目が第二の方向に沿って形成される形態」
図15は、変形例4に係わる曲げセンサーの検出回路の平面レイアウトを説明する図である。以下、本変形例に係わる曲げセンサーについて説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例(図15)は実施形態1(図5)と比べて、曲げの測定方向が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0212】
図5に示す実施形態1では、第一薄膜トランジスターTN1のソースドレイン方向と細長い切れ目31の方向が第一の方向(x軸方向)に平行で、第一の方向に関する曲げを計測していた。本変形例では、第一薄膜トランジスターTN1のソースドレイン方向と細長い切れ目31の方向は第二の方向(y軸方向)に平行で、第二の方向に関する曲げを計測する。実施形態1(図5)では、ソースドレイン方向が第一列線CLや第二列線CRと平行であった為に、半導体膜は二ヶ所で90°折れ曲がらねばならず、各計測セルは比較的大きな面積を必要とした。これに対して、本変形例では、ソースドレイン方向が第一列線CLや第二列線CRと垂直である為に、半導体膜は直線となり、各計測セルは比較的小さくされる。即ち、空間分解能を高められる。又、切れ目31によってx軸方向からの応力干渉を排除するので、高精度計測を可能としている。
【0213】
(変形例5)
「計測頻度を可変とする形態1」
変形例5では、計測頻度を状況に応じ、可変としている。以下、本変形例に係わる曲げセンサー使用方法について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例は実施形態1に記載した「使用方法」と比べて、計測頻度を可変にしている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0214】
実施形態1では、計測頻度が準備期間と計測期間とで其々固定値が定められて居た。これに対して本変形例では、準備期間乃至は計測期間に於ける計測頻度を状況に応じて増減させている。一例としては、準備期間の計測頻度を計測期間に入ってもその初期段階では継続し、曲げを検知した時点で計測頻度を増大させる。例えば、柔軟性を有する電子書籍に曲げセンサーを適応させた場合、使用者がページめくりの動作を開始する迄は低頻度で計測し、動作の始まりに伴って曲げセンサーが曲げを検知すると、高頻度で曲げを計測し、実際に使用者がどういう行為を為そうとしているのかを検出する。或いは曲げの時間変化が激しい場合には計測頻度を高め、曲げの時間変化が小さい場合には計測頻度を下げる。例えば、曲げセンサーをモーションキャプチュアーとして使用する場合、解析対象の動作速度に応じて計測頻度を増減させる。野球のスウィングを例に取ると、バットを立てて構えている段階からテイクバックまでは動作速度が遅いので、計測期間に於ける計測頻度を10Hz程度と遅くし、テイクバックから振り終わり迄は動作速度が速いので、計測期間に於ける計測頻度を100Hz程度と速くする。
【0215】
この様に計測頻度を可変にする事で、省電力が実現すると共に、無駄な情報が減り、且つ時間分解能の高い計測が可能になる。
(変形例6)
「計測頻度を可変とする形態2」
変形例6では、計測頻度を目的に応じ、可変としている。以下、本変形例に係わる曲げセンサー使用方法について説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本変形例は実施形態1に記載した「使用方法」と比べて、計測頻度を目的に応じて可変としている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。
【0216】
実施形態1では、計測頻度が準備期間と計測期間とで其々固定値が定められて居た。これに対して本変形例では、準備期間乃至は計測期間に於ける計測頻度を計測対象物や計測目的に応じて増減させている。即ち、計測対象物の曲げに関する時間変化が緩やかと予測される時には計測頻度を落とし、時間変化が激しいと予測される時には計測頻度を高めている。例えば、曲げセンサーをモーションキャプチュアーとして使用する場合、野球のスウィングの様に短時間に曲げ変化が激しい場合には、計測期間に於ける計測頻度を100Hz程度と速くする。一方、日本舞踊の動作解析の様に長時間でゆっくりと変化する場合には、計測頻度を1Hz程度と遅くする。
【0217】
この様に、曲げセンサーの計測頻度を用途に合わせて調整する事で、時間追従性が広がり、一つの曲げセンサーで様々な動作や変化を計測できる様になる。
【0218】
尚、これ迄の説明では準備期間と計測期間とを設けてきたが、準備期間は必須ではなく、これを省く事も可能である。
【符号の説明】
【0219】
1…曲げセンサー、2…基板、3…検出回路、4…出力回路、7…固定板、21…非可撓領域、22…可撓領域、31…切れ目、51…第一選択回路、52…第一処理回路、61…第二選択回路、62…第二処理回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板に第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとを備え、
前記基板は可撓領域と非可撓領域とを含み、
前記第一薄膜トランジスターと前記第二薄膜トランジスターとは差動トランジスター対をなし、
前記第一薄膜トランジスターは前記可撓領域に形成され、前記第二薄膜トランジスターは前記非可撓領域に形成される事を特徴とする曲げセンサー。
【請求項2】
更に第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとを備え、
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとはカレントミラー対をなし、
前記第一薄膜トランジスターと前記第五薄膜トランジスターとが電気的に接続可能であり、
前記第二薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとが電気的に接続可能である事を特徴とする請求項1に記載の曲げセンサー。
【請求項3】
更に第一電源と第二電源と第七薄膜トランジスターとを備え、
前記第一薄膜トランジスターと前記第二薄膜トランジスターとは前記第一電源に接続し、
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとは前記第七薄膜トランジスターに接続し、
前記第七薄膜トランジスターは前記第二電源に接続する事を特徴とする請求項2に記載の曲げセンサー。
【請求項4】
更に第一の方向に沿って第一選択回路を備え、
前記第一薄膜トランジスターは第一の方向に沿って複数個形成されると共に、前記第一選択回路によって、前記第一の方向で選択され得る事を特徴とする請求項2又は3に記載の曲げセンサー。
【請求項5】
更に前記第一の方向と交差する第二の方向に沿って第二選択回路を備え、
前記第一薄膜トランジスターは第二の方向に沿って複数個形成されると共に、前記第二選択回路によって、前記第二の方向で選択され得る事を特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項6】
更に第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとを備え、
前記第三薄膜トランジスターは前記第一薄膜トランジスターと前記第五薄膜トランジスターとの間に配置され、
前記第四薄膜トランジスターは前記第二薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとの間に配置され、
前記第三薄膜トランジスターと前記第四薄膜トランジスターは前記第二選択回路にて制御される事を特徴とする請求項5に記載の曲げセンサー。
【請求項7】
前記第二薄膜トランジスターは基準トランジスターとして動作し、
前記第一薄膜トランジスターの電気特性と前記第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を検出する事を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項8】
前記第五薄膜トランジスターのドレインと前記第六薄膜トランジスターのドレインとの間にイコライズ回路を備える事を特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項9】
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターと前記第七薄膜トランジスターとがN型であり、
前記第二電源が負電源である事を特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項10】
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターと前記第七薄膜トランジスターとがP型であり、
前記第二電源が正電源である事を特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項11】
前記非可撓領域には、前記基板よりも硬質な固定板が、前記基板に貼り合わされている事を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項1】
可撓性を有する基板に第一薄膜トランジスターと第二薄膜トランジスターとを備え、
前記基板は可撓領域と非可撓領域とを含み、
前記第一薄膜トランジスターと前記第二薄膜トランジスターとは差動トランジスター対をなし、
前記第一薄膜トランジスターは前記可撓領域に形成され、前記第二薄膜トランジスターは前記非可撓領域に形成される事を特徴とする曲げセンサー。
【請求項2】
更に第五薄膜トランジスターと第六薄膜トランジスターとを備え、
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとはカレントミラー対をなし、
前記第一薄膜トランジスターと前記第五薄膜トランジスターとが電気的に接続可能であり、
前記第二薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとが電気的に接続可能である事を特徴とする請求項1に記載の曲げセンサー。
【請求項3】
更に第一電源と第二電源と第七薄膜トランジスターとを備え、
前記第一薄膜トランジスターと前記第二薄膜トランジスターとは前記第一電源に接続し、
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとは前記第七薄膜トランジスターに接続し、
前記第七薄膜トランジスターは前記第二電源に接続する事を特徴とする請求項2に記載の曲げセンサー。
【請求項4】
更に第一の方向に沿って第一選択回路を備え、
前記第一薄膜トランジスターは第一の方向に沿って複数個形成されると共に、前記第一選択回路によって、前記第一の方向で選択され得る事を特徴とする請求項2又は3に記載の曲げセンサー。
【請求項5】
更に前記第一の方向と交差する第二の方向に沿って第二選択回路を備え、
前記第一薄膜トランジスターは第二の方向に沿って複数個形成されると共に、前記第二選択回路によって、前記第二の方向で選択され得る事を特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項6】
更に第三薄膜トランジスターと第四薄膜トランジスターとを備え、
前記第三薄膜トランジスターは前記第一薄膜トランジスターと前記第五薄膜トランジスターとの間に配置され、
前記第四薄膜トランジスターは前記第二薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターとの間に配置され、
前記第三薄膜トランジスターと前記第四薄膜トランジスターは前記第二選択回路にて制御される事を特徴とする請求項5に記載の曲げセンサー。
【請求項7】
前記第二薄膜トランジスターは基準トランジスターとして動作し、
前記第一薄膜トランジスターの電気特性と前記第二薄膜トランジスターの電気特性とを比較して、曲がり具合を検出する事を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項8】
前記第五薄膜トランジスターのドレインと前記第六薄膜トランジスターのドレインとの間にイコライズ回路を備える事を特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項9】
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターと前記第七薄膜トランジスターとがN型であり、
前記第二電源が負電源である事を特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項10】
前記第五薄膜トランジスターと前記第六薄膜トランジスターと前記第七薄膜トランジスターとがP型であり、
前記第二電源が正電源である事を特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【請求項11】
前記非可撓領域には、前記基板よりも硬質な固定板が、前記基板に貼り合わされている事を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の曲げセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−173141(P2012−173141A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35503(P2011−35503)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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