説明

更生パネル、それを用いた更生方法、および更生された構造物

【構成】更生パネルはパネル部材12およびキャップ部材を備える。複数のパネル部材12は連結されて、貫通孔40に取り付けられたパネル用固定具で既設構造物56の面に固定される。また、別の貫通孔40に支保工用固定具64が取り付けられ、これで支保工62がパネル部材12の表面上に固定され、パネル部材12が所定の高さに保持される。この状態でパネル部材12と既設構造物56の面との間に裏込め充填材が充填され、その後に支保工用固定具64および支保工62が取り除かれて、窪み部がキャップ部材で覆われ、更生された構造物が形成される。
【効果】裏込め充填材の充填によるパネル部材12の浮き上がりが支保工62により防止され、施工性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、更生パネル、それを用いた更生方法、および更生された構造物に関し、特にたとえば、既設構造物を取り壊すことなく、構造物の強度回復や表面補修を図る、更生パネル、それを用いた更生方法、および更生された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の更生パネルを用いた更生方法の一例が、特許文献1および2に開示されている。
【0003】
この特許文献1の水路内面のライニング工法では、既設の水路底面に固定部材を固定した後にモルタルを敷設し、その上にライニング板を載せて、ライニング板を固定部材にビス止めする。それから、水路側面に固定部材を介してライニング板を固定し、水路側面とライニング板との間にモルタルを注入し、ライニング板の突合せ部をシーリング材で止水している。
【0004】
また、特許文献2の水路内周面の更生工法では、ライニング板を水路内面にボルトで固定し、帯状止水パッキンを挟みながらライニング板どうしを重ね合わせて水路内面を覆う。そして、ライニング板と水路内面との間にモルタルを充填し、凹部に充填性接着剤を充填してから、凹部を蓋体で覆っている。
【特許文献1】特開2002−294665号公報[B02B 5/02、E03F 5/04]
【特許文献2】特開2005−290847号公報[B02B 5/02]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術では、ビスがライニング板を貫通しているため、このビスを伝って水が既設水路側に浸入する恐れがあり、侵入すれば、更生水路の耐久性が低下してしまう。
【0006】
また、特許文献2の従来技術では、ボルトが貫通する凹部を蓋体で覆うことにより、ボルト部の浸水を防止している。
【0007】
しかし、ライニング板どうしを重ね合わせているだけだと、固定している間にライニング板がずれ易いため、施工性が悪い。
【0008】
そして、水路内面全体をライニング板で覆ってからモルタルを充填すると、水路内面全体に均一にモルタルを充填するにはモルタルの注入力を高くする必要がある。このため、モルタルの注入力でライニング板が浮いてしまい、歩掛が高くなってしまう。
【0009】
このライニング板の浮き上がりを防止するために充填材の充填回数を複数回に分けて、段階的に充填材をライニング板と開水路との間に充填することも考えられるが、これでは工期が長くなってしまう。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、耐久性および施工性に優れる、更生パネル、それを用いた更生方法、および更生された構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、既設構造物の面を更生するための更生パネルであって、第1端および第2端を有するパネル部材、パネル部材に形成される、かつ第1面とそれに対向する第2面とを有する平面部、パネル部材に形成される、かつ第2面よりへこんだ窪み部、窪み部の底に形成される固定具取付部、窪み部に形成されるキャップ接合部、第1端に形成される第1連結部、第2端に形成される、かつ隣接するパネル部材の第1連結部に接続される第2連結部、第1連結部に隣接する第2連結部を接続しパネル部材どうしを連結した後に窪み部を覆うキャップ部材、およびキャップ部材に形成される、かつキャップ接合部に接合されるパネル接合部を備え、固定具取付部に、パネル部材を固定するためのパネル用固定具、およびパネル部材を所定高さに保持する支保工を固定するための支保工用固定具の少なくとも一方が取り付け可能である、更生パネルである。
【0012】
請求項1の発明では、更生パネル(10:実施例において相当する部分を例示する参照符号。以下同じ。)はパネル部材(12、100)およびキャップ部材(14)を備える。パネル部材は平面部(20)およびその第2面(26)よりへこんだ窪み部(22、76、84)を有し、パネル部材の第1端(16)には第1連結部(32、78、81a)が形成され、第2端(18)には第2連結部(34、80、81c)が形成される。窪み部は固定具取付部(40)およびキャップ接合部(36、38、86)を有し、また、キャップ部材(14、72、82)はパネル接合部(46、88)を有する。
【0013】
この更生パネルを形成する場合、たとえば、まず固定具取付部にパネル用固定具(58)を取り付けて、パネル用固定具でパネル部材を既設構造物(56)の面に固定する。このパネル部材の第1連結部に隣接するパネル部材の第2連結部を接続し、パネル部材どうしを連結する。そして、これを繰り返して、複数のパネル部材を連結していき、連結したパネル部材で既設構造物の面を覆う。
【0014】
次いで、隣接するパネル部材を跨ぐようにパネル部材上に支保工(62)を配置し、固定具取付部に支保工用固定具(64、92)を取り付けて、支保工用固定具で支保工を所定の高さに保持しながら既設構造物の面に固定する。この状態でパネル部材と既設構造物の面との間に裏込め充填材(68)を充填し、その後に支保工用固定具および支保工を取り外す。そして、キャップ接合部にパネル接合部を接合することにより、窪み部をキャップ部材で覆えば、既設構造物の面が更生パネルで更生される。
【0015】
このように、第1連結部およびそれに接続される第2連結部をパネル部材に形成すること、パネル部材どうしが容易に連結される上、これでパネル部材を固定している間にパネル部材がずれにくいため、施工性に優れる。
【0016】
また、窪み部に固定具取付部を設けることにより、固定具取付部に取り付けた支保工用固定具で複数のパネル部材を跨ぐ支保工を固定すれば、パネル部材が所定の高さより高くならないように保持されながら既設構造物の面に強固に固定されて、パネル部材は浮きにくくなる。このため、裏込め充填材を段階的に充填する必要がなく、工期の短縮化が図れる。その上、裏込め充填材を段階的でなく一度に充填しても、その充填圧による浮力に対してパネル部材の高さは変わらないため、歩掛の低減化が図れる。
【0017】
さらに、窪み部にキャップ接合部を設け、かつキャップ部材にパネル接合部を設けると、これらを接合して、窪み部内のパネル用固定具がキャップ部材で覆われるため、パネル用固定具を伝って水が浸入することを防止でき、更生された構造物の耐久性を維持できる。しかも、これによりパネル用固定具が更生パネルの表面に出ず、更生パネルの表面が面一になるため、このような更生パネルで既設構造物の面が覆われて、構造物の面が補修される。
【0018】
請求項2の発明は、キャップ部材は、窪み部を開閉可能にパネル部材と一体的に連結される、請求項1記載の更生パネルである。
【0019】
請求項2の発明では、たとえばキャップ部材をパネル部材に対して折り曲げできるようにして、キャップ部材をパネル部材と一体的に連結すると、キャップ部材が窪み部を開閉可能になる。この結果、キャップ部材を折り曲げて窪み部を開けば、パネル用固定具および支保工用固定具の取り付け、取り外しができ、一方、キャップ部材を延ばして窪み部を閉めれば、パネル用固定具などを覆って更生パネルの表面を面一にできる。このため、キャップ部材の脱着が容易になる。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2の更生パネルを用いた既設構造物の面の更生方法であって、(a) 固定具取付部に取り付けられるパネル用固定具でパネル部材を既設構造物の面と間隔を隔てて固定するステップ、および(b) パネル部材の第1連結部に隣接するパネル部材の第2連結部を接続し、既設構造物の面と間隔を隔ててパネル部材どうしを連結するステップを含み、ステップ(a)および(b)を繰り返して、さらに(c) 隣接するパネル部材をまたいで支保工を渡し、固定具取付部に取り付けられる支保工用固定具で支保工を固定するステップ、(d) 既設構造物の面とパネル部材との間に裏込め充填材を充填するステップ、(e) 支保工および支保工用固定具を取り外すステップ、および(f) キャップ接合部にパネル接合部を接合し、窪み部をキャップ部材で覆い、更生パネルを形成するステップを含む、既設構造物の面の更生方法である。
【0021】
請求項3の発明では、請求項1の発明と同様に、第1連結部を隣接する第2連結部で接続することにより、連結作業の省力化などが図れる。また、複数のパネル部材を跨ぐ支保工を支保工用固定具で固定すると、パネル部材は既設構造物の面に強固に固定されるため、工期の短縮化および歩掛の低減化が図れ、また、パネル用固定具の取り付ける数および手間が減らせる。さらに、窪み部をキャップ部材で覆えば、表面が面一になった更生パネルで構造物の表面が補修される。また、既設構造物の面とパネル部材との間に裏込め充填材を充填することにより、これらが一体となり、構造物の強度が回復する。
【0022】
請求項4の発明は、ステップ(f)の前に、窪み部内に空隙充填材を充填するステップをさらに含む、請求項3記載の既設構造物の面の更生方法である。
【0023】
請求項4の発明では、固定具取付部に取り付けた支保工用固定具で支保工を固定することにより、パネル部材を既設構造物の面に強固に固定した状態で、既設構造物の面とパネル部材との間に裏込め充填材を充填し、その後、支保工および支保工用固定具を取り外す。そして、窪み部内に空隙充填材(48)を充填してから、窪み部をキャップ部材で覆い、更生パネルを形成する。
【0024】
この支保工などを取り外した後そのままキャップ部で窪み部を覆うと、窪み部の内部に空隙が形成されるため、空隙によってキャップ部材およびパネル部材が変形し易くなり、これらが割れやすくなる。このため、キャップ部材で窪み部を覆う前に、窪み部の内部に空隙充填材を充填すれば、上記問題が生じにくくなるため、更生パネルの信頼性が向上する。
【0025】
請求項5の発明は、請求項3または4の既設構造物の面の更生方法で更生された構造物である。
【0026】
請求項5の発明では、既設構造物の面が更生パネルで覆われ、それらの間に裏込め充填材が充填されて、これらが一体となるため、強度が回復された構造物(70)が形成される。
【0027】
また、裏込め充填材が充填された後のパネル部材の高さは所定高さに保持されている上、窪み部がキャップ部材で覆われていることにより、更生パネルの表面が面一に形成され、その更生パネルで既設構造物の面が覆われるため、表面が補修された構造物が形成される。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、第1連結部およびそれに接続される第2連結部をパネル部材に設け、また窪み部に固定具取付部を設けて、その窪み部をキャップ部材で覆えるようにすることにより、耐久性および施工性に優れる。
【0029】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明の一実施例である更生パネル10は、図1〜6に示すパネル部材12および図7および8に示すキャップ部材14を備え、既設構造物が劣化したときにその構造物を取り壊すことなく、その外面、内面および底面などの面を覆って更生する更生パネル10であって、これにより更生された構造物の強度は回復し、その表面は補修される。既設構造物としては、農業用あるいは排下水用の開水路、下水暗渠、下水処理場の沈殿池あるいは貯水槽、上水施設の貯水池あるいは配水池、ビルピットまたは雨水貯留槽、ビル外壁、高速道路の遮音壁などが挙げられる。
【0031】
図1〜6に示すように、パネル部材12は、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などの合成樹脂で形成され、矩形状の板状体であって、互いに平行に延びる第1端16および第2端18を有する。第1端16の長さは、構造物の面の短い方の長さ、たとえば開水路などの幅であって、1000mmに設定され、第1端16と直交する長さは、1000mmに設定される。また、パネル部材12は平面部20および窪み部22を有する。
【0032】
平面部20は、矩形状の板状体であって、平らな第1面24とそれに対向する第2面26とを有する。第1面24は更生された構造物の表面を形成し、第1面24の表面はアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂層28で覆われ、樹脂層28は2層押出成形により一体的に形成される。第2面26は既設構造物の表面と対向してこれを覆い、第2面26には複数の突起部30が間隔を隔てて設けられる。
【0033】
突起部30は、既設構造物の面と第2面26との間に裏込め充填材を充填した際に裏込め充填材に嵌まって投錨効果を示す部分であって、その断面形状はT字状などで、第1端16に平行にパネル部材12の全長に亘って延びる。
【0034】
窪み部22は第2面26よりへこんだ部分であって、パネル部材12の第1端16および第2端18のそれぞれに設けられ、第1端16を含む第1窪み部22aと第2端18を含む第2窪み部22bとを備える。つまり、後述する第1連結部32と隣接するパネル部材12の第2連結部34とを接合することにより、第1窪み部22aと第2窪み部22bとが接続されて、断面形状がU字状の窪み部22が形成される。この窪み部22の深さは、後述する固定具取付部に取り付けたパネル用固定具の頭部などをキャップ部材14で覆うことができる深さであって、たとえば7mmに設定される。窪み部22の幅は、たとえば50mmに設定され、窪み部22は、第1端16と平行に設けられ、パネル部材12の全長に亘る連続物で形成される。また、窪み部22にはキャップ接合部が設けられ、キャップ接合部は、第1キャップ接合部36および第2キャップ接合部38を有する。
【0035】
第1窪み部22aには第1キャップ接合部36および第1連結部32が設けられ、第1窪み部22aの先端に第1端16が形成される。
【0036】
第1キャップ接合部36は、キャップ部材14をパネル部材12に接続するための突起部分などであって、第1窪み部22aの側面に設けられ、平面部20側から第1端16に向かって水平またはほぼ水平に突出し、パネル部材12の全長に亘って設けられる。また、第1キャップ接合部36の表面にシート状の止水材39などが貼り付けられる。止水材39は、キャップ部材14を窪み部22に嵌めた際にキャップ接合部36、38とパネル接合部46との間に挟まり、キャップ部材14とパネル部材12との間の隙間を埋めてそこから水が浸入するのを防ぐものである。
【0037】
第1連結部32は、第1端16と隣接するパネル部材12の第2端18とを接続するための部分であって、第1端16に設けられる。第1連結部32は、平面部20に平行で水平方向に延び、第2連結部34に水平方向に嵌められる。第1連結部32の表面に鋸状に複数の凹凸が設けられる。この凹凸は、第1連結部32を第2連結部34に嵌めた際に、第2連結部34の内面に係止して第1連結部32が第2連結部34から抜けにくくするものであって、第1端16に平行に第1連結部32の長手方向の全長に亘って設けられる。
【0038】
第2窪み部22bは平面部20を挟んで第1窪み部22aと反対側に配置され、第2窪み部22bには固定具取付部、第2キャップ接合部38および第2連結部34が設けられ、第2窪み部22bの先端に第2端18が形成される。
【0039】
固定用取付部は、第2窪み部22bの底に設けられ、パネル部材12を固定するためのパネル用固定具、またはパネル部材12を所定高さに保持する支保工を固定するための支保工用固定具の少なくとも一方が取り付け可能な部分であって、たとえば貫通孔40である。複数、この実施例では5つの貫通孔40が第1端16と平行な方向に間隔を隔てて設けられ、貫通孔40の内径は、パネル用固定具および支保工用固定具を通すことができる径であって、たとえば、13mmに設定され、各貫通孔40のピッチは、パネル用固定具および支保工用固定具でパネル部材12を既設構造物の面に固定することができるように、たとえば100〜150mmに設定される。
【0040】
第2キャップ接合部38は、キャップ部材14をパネル部材12に接続するための突起部分などであって、第2窪み部22bの側面に設けられ、平面部20側から第2端18に向かって水平またはほぼ水平に突出し、パネル部材12の全長に亘って設けられる。また、第2キャップ接合部38の表面にシート状の止水材39などが貼り付けられている。
【0041】
第2連結部34は、隣接するパネル部材12の第1連結部32に接続される部分であって、第2端18に設けられる。第2連結部34は第1連結部32を受けるように平面部20に平行で水平方向に延びるコの字状の断面形状で形成され、第2連結部34に第1連結部18が水平方向に嵌められる。コの字状の第2連結部34の内部にエラストマなど止水材42が嵌め込まれ、止水材42は、第1連結部32に第2連結部34が嵌められた際に、これらの間に挟まれて隣接するパネル部材12の間を止水する。
【0042】
図7および8に示すように、キャップ部材14は、第1連結部32に隣接するパネル部材12の第2連結部34を接続しパネル部材12どうしを連結した後に窪み部22を覆う部材であって、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などの合成樹脂で形成される矩形状の板状体である。キャップ部材14の長手方向の長さは、パネル部材12の第1端16と等しく、たとえば1000mmに設定され、短い方の長さは、窪み部22の幅に相当し、窪み部22の全体を覆うように設定される。
【0043】
キャップ部材14の表面はアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂層44で覆われ、樹脂層44は2層押出成形により一体的に形成される。また、キャップ部材14の上面は、平らであって、キャップ部材14が窪み部22を覆った際にパネル部材12の第1面24と面一になって、更生パネル10の表面を形成する。
【0044】
キャップ部材14の両側面のそれぞれにパネル接合部46が設けられる。パネル接合部46は、キャップ接合部36、38に接合される部分であって、水平またはほぼ水平に窪む凹部であり、キャップ部材14の長手方向の全長に亘って設けられる。
【0045】
また、キャップ部材14で窪み部22を覆った際に、これらにより形成される空隙に空隙充填材48が充填される。図9に示すように、空隙充填材48は、キャップ部材14および窪み部22で形成される空隙を埋めるものであって、発泡スチロールなどで形成される。空隙充填材48は、空隙を埋める形状であれば特に限定されないが、たとえば断面が矩形状の長尺物であって、その長さは窪み部22の全長に等しい。また、空隙充填材48には複数の挿通孔50が空隙充填材48の長手方向に間隔を隔てて設けられる。挿通孔50の位置は、空隙充填材48を窪み部22の内部に嵌めた際に、貫通孔40に相当する位置であり、挿通孔50の大きさは、貫通孔40に取り付けたパネル用固定具の頭部などが嵌まる大きさに設定される。このため、パネル用固定具の頭部などが貫通孔40から出ていても、この頭部などを挿通孔50に嵌めることにより、頭部などを避けて空隙充填材48を空隙に収容して窪み部22をキャップ部材14で覆うことができる。
【0046】
さらに、図10および図11に示すように、窪み部22の底面側でパネル用固定具などにスペーサ52が適宜装着される。スペーサ52は、パネル部材12のたわみを防止するためのものであって、ゴムなどによって略直方体に形成され、中空部53および開口部54を有する。そして、開口部54を介して中空部53にパネル用固定具を挿入すると、スペーサ52は、窪み部22と既設構造物の面との間に挿入され、パネル部材12のたわみを防止する。なお、スペーサ52の厚みは、連結されるパネル部材12の上面どうしが水平になるように設定される。また、スペーサ52の形状はこれに限定されず、適宜な形状のスペーサを用いることができる。
【0047】
このようなパネル部材12およびキャップ部材14を用いた更生パネル10で既設構造物の面、たとえば図12に示す開水路56の底面および側面を更生する場合、まず、開水路56の施工部分より上流側にコンクリートパネルなどで水を予め堰き止めて、水中ポンプなどにより堰き止められた水を施工部分より下流側に放流する。そして、開水路56の底面および側面の泥などを高圧洗浄機などで除去し、特に突き出た部分をディスクサンダーなどで除去する。
【0048】
次に、図11および12に示すように、複数のパネル部材12と、開水路56の底面および側面のそれぞれにパネル部材12を固定するためのアンカなどのパネル用固定具58とを用意する。第2面26を開水路56の底面側に向け、第1端16が開水路56の長手方向に対して直角になるようにして、パネル部材12を開水路56の底面に配置し、パネル用固定具58を貫通孔40に挿入し、開水路56の底面に打ち込む。この際、スペーサ52をパネル用固定具58に適宜取り付ける。これにより、貫通孔40に取り付けられるパネル用固定具58でパネル部材12が開水路56の底面と間隔を隔てて固定される。
【0049】
そして、固定されたパネル部材12の第1連結部32側に次のパネル部材12を配置し、次のパネル部材12をパネル用固定具58で開水路56に固定せずに、第1連結部32に隣接するパネル部材12の第2連結部34を嵌めて接続する。これにより、隣り合うパネル部材12どうしが連結されて、これらは開水路56の底面と間隔を隔てて配置される。次のパネル部材12も先のパネル部材12と同様に、パネル用固定具58で開水路56に固定せずに、第1連結部32に隣接するパネル部材12の第2連結部34を嵌めて接続する。
【0050】
ここで、図13に示すように、全てのパネル部材12をパネル用固定具58で開水路56に固定するのではなく、たとえば、3つのパネル部材12ごとにパネル用固定具58で開水路56に固定する。また、その固定するパネル部材12においても全ての貫通孔40にパネル用固定具58を取り付けるのではなく、たとえば5つの貫通孔40の内の3つの貫通孔40にパネル用固定具58を取り付ける。
【0051】
上記のとおりパネル部材12どうしの連結を繰り返して、開水路56の底面をパネル部材12で覆い、これと同様の方法で開水路56の側面もパネル部材12で覆う。また、開水路56の底面を覆うパネル部材12と開水路56の側面を覆うパネル部材12との間には図19に示すハンチ部材60を取り付ける。ハンチ部材60は、パネル部材12と同様のものであるが、パネル部材12の第1端16に直交する端面の角度が異なり、45度に傾斜する。これ以外の部分に関してはパネル部材12と同様であるため、説明は省略する。
【0052】
それから、図14(A)および(B)に示す支保工用固定具64および支保工62を用意する。支保工用固定具64は、支保工62を一定の高さに支え固定するものであって、パイプクランプなどが用いられ、貫通孔40に挿入されて貫通孔40に取り付けられる。また、支保工62は、長尺部材であって、たとえば丸棒などの棒鋼、あるいは丸パイプや角パイプなどの鋼管が用いられる。また、支保工62は、支保工用固定具64により開水路56の底面および側面から所定の高さに保持されて、パネル部材12が所定の高さより上に浮き上がらないように押さえとめるものである。このため、支保工62によりパネル部材12は所定の高さに保持されて、既設構造物の面とパネル部材12との間に充填された裏込め充填材によるパネル部材12の浮き上がりが防止される。
【0053】
図14および15に示すように、隣接するパネル部材12をまたいでこれらの表面上に支保工62を渡し、支保工用固定具64を貫通孔40に取り付ける。ここで、パネル用固定具58を取り付けたパネル部材12ではなく、そのパネル部材12に連結されるパネル部材12の貫通孔40に支保工用固定具64を挿入する。そして、開水路56の底面および側面に予め打ち込んでおいたアンカ66に支保工用固定具64を螺合し、支保工用固定具64を既設構造物の面に固定する。それから、支保工用固定具64に支保工62を取り付け、用途に合わせて開水路56の底面および側面に対して平行にまたは一定の勾配になるように支保工62の高さを調整し、支保工用固定具64で支保工62を固定する。これにより、支保工用固定具64で支保工62は開水路56の底面および側面に固定され、支保工62によりパネル部材12は所定の高さに保持される。
【0054】
この支保工62でパネル部材12が開水路56の底面および側面から所定の高さより浮き上がらないようにした状態で、連結されたパネル部材12と開水路56の底面および側面との間に裏込め充填材68を充填し、全体に裏込め充填材68が満たされると養生する。このとき、裏込め充填材68の充填圧などによりパネル部材12に浮き上がる方向の力が作用しても、パネル用固定具58および支保工62でパネル部材12は浮き上がる方向への動きが抑えられているため、パネル部材12は所定の高さに保持され、連結されるパネル部材12の表面の高さは揃えられる。そして、裏込め充填材68がある程度に固化すると、支保工62を支保工用固定具64から取り外し、さらに支保工用固定具64を開水路56から取り外す。ただし、支保工用固定具64のアンカ66だけは開水路56に残してもよい。
【0055】
そして、隣接するパネル部材12では第1窪み部22aと隣接する第2窪み部22bとが連結されてU字状の窪み部22が形成されているため、図16に示すように、窪み部22の内部の空隙に空隙充填材48を嵌める。このとき、図17に示すように、パネル用固定具58の頭部が貫通孔40から突出している場合には、空隙充填材48の挿通孔50に頭部を嵌めて、空隙充填材48を窪み部22の内部に嵌める。
【0056】
全ての窪み部22に空隙充填材48を充填すると、図18に示すように、まずキャップ部材14を斜めに傾けて第2パネル接合部46をキャップ接合部38に嵌め、次にこの部分を支点としてキャップ部材14を押し下げて、第1パネル接合部46にキャップ接合部36を嵌めれば、簡単な操作かつ小さな力でパネル接合部46にキャップ接合部36、38を接合して、キャップ部材14で窪み部22を覆うことができる。これにより、図19に示すように、第1面24はキャップ部材14の表面と面一になり揃い、更生パネル10が形成されて、開水路56の底面および側面が更生パネル10で更生された構造物70が完成する。
【0057】
このように、第1連結部32およびそれに接続される第2連結部34をパネル部材12に形成することにより、パネル部材12どうしが容易に連結され、連結作業の省力化が図れる。また、連結すれば、パネル部材12を固定する間にそのパネル部材12がずれないため、パネル部材12を固定し易い。さらに、連結によって固定されたパネル部材12に隣接されるパネル部材12をパネル用固定具58で固定する必要がない場合もあり、パネル用固定具58の取付作業を省ける。これらの結果、施工性に優れる。
【0058】
そして、第2連結部34に止水材42を装着すると、第1連結部32と第2連結部34とを連結すると同時に、これらの間が止水材42で止水されるため、別途止水処理をする必要がなく、さらに省力化が図れる。
【0059】
また、窪み部22に貫通孔40を設ければ、貫通孔40に取り付けた支保工用固定具64で複数のパネル部材12を跨ぐ支保工62を固定して、パネル部材12を所定の高さに保持しながら開水路56の底面および側面に強固に固定することができる。この結果、パネル部材12は浮きにくくなるため、裏込め充填材68を段階的に充填する必要がなく、工期の短縮化が図れる上、裏込め充填材68の充填圧による浮力に対してもパネル部材12の高さは変わらないため、歩掛の低減化が図れる。
【0060】
そして、裏込め充填材68によるパネル部材12の浮き上がりを支保工用固定具64に取り付けた支保工62で防止すれば、パネル部材12を既設構造物に固定するためのパネル用固定具58以外の、浮き上がり防止のためのパネル用固定具58を貫通孔40に取り付ける必要がなく、作業性が向上する。
【0061】
さらに、部分的でなく、支保工62により連続的にパネル部材12を開水路56の底面および側面に固定し、パネル部材12の高さを保持すれば、パネル部材12の開水路56への固定強度が増すだけでなく、パネル部材12自体の強度も増す。このため、パネル部材12の厚みを薄くしたり、大きさを大きくしたりしても、裏込め充填材68の充填圧などによりパネル部材12が浮きにくく、かつパネル部材12が破損しにくくなる。この結果、パネル部材12を薄くすることにより、パネル部材12の製品コストを抑え、経済性に優れる。また、パネル部材12を大きくすることにより、パネル用固定具58の取り付ける数および手間が減らせ、施工性に優れる。
【0062】
さらに、窪み部22にキャップ接合部36、38を設け、かつキャップ部材14にパネル接合部46を設けると、これらを接合して、キャップ部材14の上面とパネル部材12の第1面24とが面一になるように窪み部22をキャップ部材14で覆うことができる。これにより、更生パネル10の表面が面一になるため、水が更生パネル10上を流れる場合、水の流れは更生パネル10の表面で乱されず、その水の流速および流量を十分に確保できる。
【0063】
しかも、このキャップ接合部36、38に止水材39を取り付けておけば、キャップ部材14で窪み部22を覆うと同時に、止水材39でキャップ部材14とパネル部材12との間が止水され、別途止水処理を要せず、省力化が図られる。しかも、止水材39はキャップ接合部36、38とパネル接合部46とを固定するものでなく、かつキャップ接合部36、38とパネル接合部46との嵌め合いでキャップ接合部36、38とパネル部材12とを接合することにより、キャップ接合部36、38を脱着可能であるため、パネル部材12の固定のやり直しなどができ、施工性に優れる。
【0064】
そして、開水路56の底面および側面とパネル部材12との間に裏込め充填材68を充填した後に支保工62などを取り外してから、窪み部22の内部に空隙が形成されたままキャップ部材14で窪み部22を覆うと、空隙によってキャップ部材14およびパネル部材12が変形し易く、これらが割れやすくなるが、キャップ部材14で窪み部22を覆う前に、窪み部22の内部に空隙充填材48を充填することにより、これらの問題が生じにくくなるため、更生パネル10の信頼性が向上する。
【0065】
また、開水路56の底面および側面が更生パネル10で覆われ、それらの間に裏込め充填材68が充填されて、これらが一体となるため、強度が回復された構造物70が形成される。
【0066】
また、裏込め充填材68が充填された後のパネル部材12は所定高さに保持されている上、窪み部22がキャップ部材14で覆われていることにより、更生パネル10の表面が面一に形成され、その更生パネル10で開水路56の底面および側面が覆われるため、表面が補修された構造物70が形成される。
【0067】
図20に示すこの発明の他の実施例である更生パネル10は図1に示す更生パネル10とほぼ同じであるが、キャップ部材が異なる。図1では、キャップ部材14はパネル部材12と別に形成されていたが、図20ではキャップ部材72がパネル部材12と一体的に形成される。これ以外の部分に関しては図1実施例の示す更生パネル10と同様であるため、説明は省略する。
【0068】
キャップ部材72は、窪み部22を開閉可能にパネル部材12と一体的に連結される。たとえば、キャップ部材72と平面部20とが一連の平板状に形成され、キャップ部材72が平面部20から第1端16側へ延び、キャップ部材72と平面部20との間に切欠74が設けられる。この切欠74は、キャップ部材72と平面部20とが切り離されず、かつキャップ部材72がパネル部材12に対して折り曲げられる程度の深さで設けられ、第1端16と平行に更生パネル10部材の全長に亘って延びる。
【0069】
また、この場合、キャップ部材72と第1窪み部22aとを接続する必要がないため、第1キャップ接合部36は設けられないが、キャップ部材72と第2窪み部22bとを接続する必要があるため、第2キャップ接合部38は設けられる。
【0070】
このように、キャップ部材72をパネル部材12と一体的に連結すると、キャップ部材72が窪み部22を開閉可能になる。この結果、キャップ部材72を折り曲げて窪み部22を開けば、パネル用固定具58および支保工用固定具64の取り付け、取り外しができ、一方、キャップ部材72を延ばして窪み部22を閉めれば、パネル用固定具58などを覆って更生パネル10の表面を面一にできる。
【0071】
また、図1の実施例と同様に、連結作業の省力化、工期の短縮化、および歩掛の低減化が図れる。さらに、パネル部材12を大きくできて施工性に優れ、また、更生パネル10の表面を面一にでき、さらに、更生パネル10の信頼性の向上が図れる。
【0072】
なお、上記全ての実施例では、第1連結部32および第2連結部34を平面部20に平行で水平方向に延びるように形成し、第1連結部32と第2連結部34とが水平方向に嵌めて隣接するパネル部材12どうしを連結するようにしたが、第1および第2連結部34はともに、これらを接続した際に連結されたパネル部材12どうしが上下方向および/または横方向に動いて外れるのを防止するような形状であればよい。このため、第1連結部と第2連結部とが鉛直方向に嵌めて隣接するパネル部材12どうしを連結するようにすることもできる。
【0073】
図21に示すこの発明の他の実施例である更生パネル10は図1に示す更生パネル10とほぼ同じであるが、窪み部の位置、ならびに第1および第2連結部の形状が異なる。これ以外の部分に関しては図1実施例の示す更生パネル10と同様であるため、説明は省略する。
【0074】
図21〜図23に示すように、窪み部76は、第2面26よりへこんだ部分であって、パネル部材12の端でない位置、たとえばパネル部材12の中央に設けられ、第1端16と平行にパネル部材12の全長に亘って設けられる。第1キャップ接合部36および第2キャップ接合部38は、窪み部76の側面に設けられ、窪み部76の内部に向かって突出し、窪み部76の全長に亘って延びる。
【0075】
また、第1端16は平面部20の一方端に形成され、第1端16に第1連結部78が設けられる。第2端18は平面部20の他方端に第1端16に平行に形成され、第2端18に第2連結部80が設けられる。第1連結部78および第2連結部80はともに鉤形の切欠74が設けられ、これらの切欠74は互いにぴたりと組み合わされるように形成されて、これらの切欠74を組み合わせることにより、第1端16と隣接するパネル部材12の第2端18とは係止し接続される。
【0076】
また、第1連結部78および第2連結部80の少なくとも一方、この実施例では第2連結部80の切欠74にシート状の止水材75などが装着される。これにより、第1連結部78および第2連結部80の切欠74を組み合わせると、第1連結部78および第2連結部80との間に止水材75が介在して、パネル部材12どうしの間が止水される。
【0077】
この更生パネル10では、図1の実施例と同様に、連結作業の省力化、工期の短縮化、および歩掛の低減化が図れる。さらに、パネル部材12を大きくできて施工性に優れ、また、更生パネル10の表面を面一にでき、さらに、更生パネル10の信頼性の向上が図れる。
【0078】
なお、図21では、第1連結部78および第2連結部80のそれぞれに鉤形の切欠74を設け、これらの切欠74を組み合わせて第1端16と隣接するパネル部材12の第2端18とを係止し接続するようにしたが、第1連結部および第2連結部の接続方法はこれに限定されず、これらを接続した際に連結されたパネル部材12どうしが上下方向および/または横方向に動いて外れるのを防止するような形状であればよい。
【0079】
たとえば、特願2005−220579の非湾曲壁面用更生パネル部材と同様に、図24および25に示すように。第1端16に第1連結部81aおよび係止部81bを設け、第2端18に第2連結部81cおよび係り部81dを設けることもできる。第2連結部81cは、その上面が平面部20の第1面24よりパネル部材12の厚みの分だけ下がった位置に設けられ、第1連結部81aの中にエラストマなどの止水材81eが嵌められる。そして、斜めに傾けたパネル部材12の第1連結部81aを隣接するパネル部材12の第2連結部81cに嵌めてから、斜めに傾けたパネル部材12aを押し下げると、第2連結部81cが第1連結部81aに嵌まり、係止部81bが係り部81dに係わり合うことにより、パネル部材12どうしが接続される。
【0080】
なお、上記全ての実施例では、窪み部22、76をパネル部材12の全長に亘る連続物で形成したが、複数の窪み部を間隔を隔てながらパネル部材12の全長に亘って形成することもできる。
【0081】
また、上記全ての実施例では、複数の挿通孔50が予め設けられた空隙充填材48を用いたが、発泡スチロールなどの加工し易い材料で空隙充填材48を形成する場合、施工現場で空隙充填材48の必要な場所に挿通孔50を設けることもできる。
【0082】
そして、上記全ての実施例では、キャップ部材14および空隙充填材48を別々に形成したが、キャップ部材14および空隙充填材48を予め取り付けておいたり、一体物として成形したりすることにより、図26に示すようにこれらを一体的に形成したキャップ・空隙充填材83を用いることもできる。キャップ・空隙充填材83は、その両側面のそれぞれにパネル接合部46を有する。図27に示すように、パネル接合部46をキャップ接合部36、38に嵌めれば、キャップ・空隙充填材83で窪み部22に被覆および窪み部22内の隙間の充填を同時にすることができる。
【0083】
この発明の他の実施例である更生パネル10は、図28に示すパネル部材12および図29に示すキャップ部材82を備える。なお、更生パネル10の共通する部分については同じ番号を付して、その番号の説明は省略している。
【0084】
図28に示すように、パネル部材12には複数、この実施例では7個の窪み部84が設けられる。この内のパネル用固定具58が取り付けられる複数、この実施例では5個の窪み部84はパネル部材12の全体に亘って均等に配置される。これにより、窪み部84の固定具取付部に取り付けたパネル用固定具58などによりパネル部材12の全体は均等に既設構造物に固定されるため、パネル部材12の大きさを図1のパネル部材12より大きくすることができる。
【0085】
窪み部84は第2面26よりへこんだ部分であって、円筒形状に設けられ、窪み部84の深さは、固定具取付部に取り付けたパネル用固定具58の頭部などをキャップ部材82で覆うことができる深さに設定される。窪み部84にはキャップ接合部86が設けられ、窪み部84の底には固定具取付部として貫通孔40が設けられる。
【0086】
図29に示すように、キャップ接合部86は、窪み部84の側面に設けられ、平面部20から窪み部84の内部に水平またはほぼ水平に突出する突起形状に形成される。
【0087】
また、図22および23と同様に、平面部20の一方端に形成された第1端16に第1連結部78が設けられ、平面部20の他方端に形成された第2端18に第2連結部80が設けられて、第1連結部78および第2連結部80は互いに組み合わされる鉤形の切欠74が設けられる。
【0088】
図29および図30に示すように、キャップ部材82は、円柱状であって、キャップ部材82の上面は平らに形成され、キャップ部材82の側面にパネル接合部88が設けられる。パネル接合部88はキャップ接合部86に接合される部分であって、水平またはほぼ水平に窪む凹部であり、キャップ部材82の全周に亘って設けられる。パネル接合部88にシート状の止水材87が装着される。止水材87は、キャップ部材82を窪み部84に嵌めた際に、キャップ接合部86とパネル接合部88との間に介在して、キャップ部材82とパネル部材12との間を止水する。
【0089】
また、キャップ部材82の底面にへこみ部90が設けられ、へこみ部90は、貫通孔40に取り付けたパネル用固定具58の頭部などが窪み部84の底面から突出している場合にこれを回避するためのスペースを形成する部分である。この場合、キャップ部材82で窪み部84を覆った際にこれらの間に大きな空隙が形成されなければ、空隙充填材48を用いる必要がない。
【0090】
このようなパネル部材12およびキャップ部材82を用いた更生パネル10による既設構造物の更生方法は、図1の更生パネル10を用いた更生方法とほぼ同様である。ただし、図31に示すように、たとえば、1つのパネル部材12に設けられる7個の窪み部84の内の5個の窪み部84の貫通孔40にパネル用固定具58が取り付けられ、残る2個の窪み部84の貫通孔40に支保工用固定具64が取り付けられる。これ以外は図1の更生パネル10を用いた更生方法とほぼ同様である。
【0091】
なお、図28のパネル部材12では、第1および第2連結部78、80に互いに組み合わされる鉤形の切欠74を設けたが、図21のパネル部材12と同様に、第1および第2連結部の接続方法はこれに限定されず、たとえば図24および25に示す連結部81a、81cを設けることもできる。
【0092】
なお、上で挙げた角度や寸法の具体的数値はいずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【0093】
また、上記全ての実施例では、固定具取付部として貫通孔40を設けたが、固定具取付部として、パネル用固定具58などを通すことができない程度の小さな貫通孔、または孔の開いていない窪みや印などを設けることもできる。
【0094】
さらに、上記全ての実施例では、支保工用固定具64にパイプクランプなどが用い、支保工用固定具64に支保工62を固定したが、図32に示すように、支保工用固定具としてパネル用固定具58の頭部に番線92などを取り付けたものを用い、その番線92などで支保工62を固定することもできる。
【0095】
また、上記全ての実施例では、第1面24およびキャップ部材14、72、82の表面をアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂層28、44で覆ったが、この樹脂層28、44を設けなくてもよい。
【0096】
さらに、上記全ての実施例では、開水路56の底面を覆うパネル部材12と開水路56の側面を覆うパネル部材12との間にはハンチ部材60を取り付けたが、開水路56など既設構造物の形状によっては、ハンチ部材60を取り付けなくてもよい。
【0097】
そして、このハンチ部材60においてその端面の角度を45度に傾斜させたが、これに限定されず、端面を傾斜させなくてもよい。
【0098】
また、上記全ての実施例では、図13に示すように、3つのパネル部材12ごとにパネル用固定具58で開水路56に固定したが、これに限定されず、たとえば図33に示すように、2つのパネル部材12ごとにパネル用固定具58で開水路56に固定することもできる。
【0099】
そして、このパネル用固定具58で固定したパネル部材12に連結されるパネル部材12に支保工用固定具64を取り付けたが、これに限定されず、たとえば図34に示すようにパネル用固定具58で固定したパネル部材12と同じパネル部材12に支保工用固定具64を取り付けることもできる。
【0100】
さらに、5つの貫通孔40の内の3つの貫通孔40にパネル用固定具58を取り付けたが、これに限定されず、たとえば5つの貫通孔40の全てにパネル用固定具58を取り付けることもできる。
【0101】
すなわちパネル用固定具58および支保工用固定具64の取り付ける位置および個数は、裏込め充填材68の充填などによりパネル部材12が浮き上がらないように設定される。
【0102】
また、上記全ての実施例では、パネル部材12を矩形状の板状体で形成したが、パネル部材の形状はこれに限定されず、既設構造物の面形状に合わせて適宜決められる。たとえば、特願2005−220579の湾曲壁面用更生パネル部材と同様に、図35に示すように、パネル部材100を台形状などに形成することもできる。パネル部材の形状を除けば、このパネル部材100は図24のパネル部材12と同様のものであるため、共通する部分の説明は省略する。第1端102が第2端104に対して傾斜し、第1連結部81aの幅は第1端102に沿って変化する。このような形状のパネル部材100どうし、またはこのような形状のパネル部材100に矩形状のパネル部材12を連結すると、パネル部材1000の部分で連結する方向が曲がる。このため、既設構造物の湾曲面などを隙間なく覆うことができる。
【0103】
また、上記全ての実施例では、キャップ接合部36、38、86を水平またはほぼ水平に延びる方向に突出させ、パネル接合部46、88を水平またはほぼ水平に方向に窪ませて形成することにより、キャップ接合部36、38、86をパネル接合部46、88に水平方向に嵌めて、キャップ部材14で窪み部22を覆いながら、キャップ部材14をパネル部材12に取り付けるようにした。しかしながら、キャップ接合部36、38、86およびパネル接合部46、88はともに、これらを接合した際にキャップ部材14がパネル部材12から外れるのを防止する形状であればよく、たとえば、キャップ接合部とパネル接合部とを鉛直方向に嵌めてキャップ部材14をパネル部材12に取り付けるようにすることもできる。
【0104】
さらに、止水材39をキャップ接合部36、38に付け、止水材87をパネル接合部88に付けたが、止水材39をパネル接合部46に付け、止水材87をキャップ接合部86に付けることもできる。また、止水材39,87にシート状のものを用いたが、止水材はキャップ部材14とパネル部材12との間を止水するものであれば、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】この発明の一実施例の更生パネルに用いられるパネル部材を示す斜視図である。
【図2】図1のパネル部材を示す平面図である。
【図3】図1のパネル部材を示す断面図である。
【図4】図1のパネル部材の第1端側を示す斜視図である。
【図5】図1のパネル部材の第2端側を示す斜視図である。
【図6】第1連結部に隣接するパネル部材の第2連結部を接続して、パネル部材どうしを連結した状態を示す断面図である。
【図7】この発明の一実施例の更生パネルに用いられるキャップ部材を示す斜視図である。
【図8】図7のキャップ部材を示す断面図である。
【図9】窪み部内の空隙を埋めるための空隙充填材を示す斜視図である。
【図10】スペーサを示す斜視図である。
【図11】図10のスペーサをパネル用固定具に取り付け、パネル部材を既設構造物の面に固定し、このパネル部材に別のパネル部材を連結した状態を示す断面図である。
【図12】開水路の底面に連結したパネル部材を固定した状態を示す斜視図である。
【図13】複数のパネル部材を連結し、パネル用固定具でパネル部材を開水路に固定した状態を示す平面部である。
【図14】(A)は貫通孔に挿入した支保工用固定具に支保工を取り付け、この支保工でパネル部材を所定の高さに保持した状態を示す第1端に垂直な断面図であり、(B)は図14の状態を示す第1端に平行な断面図である。
【図15】支保工を複数のパネル部材に渡した状態を示す平面図である。
【図16】支保工用固定具および支保工を取り外した後に空隙充填材を嵌めた状態を示す断面図である。
【図17】空隙充填材の挿通孔にパネル用固定具の頭部を挿入しながら空隙充填材を窪み部に嵌めた状態を示す断面図である。
【図18】空隙充填材で空隙を充填した窪み部をキャップ部材で覆った状態を示す断面図である。
【図19】開水路の底面および側面を更生パネルで覆い、これらの間に裏込め充填材を充填し更生した状態を示す断面図である。
【図20】この発明の別の実施例の更生パネルに用いられるパネル部材どうしを連結した状態を示す断面図である。
【図21】この発明のさらに別の実施例の更生パネルに用いられるパネル部材を示す平面図である。
【図22】図21のパネル部材を示す断面図である。
【図23】図21のパネル部材の第1連結部に隣接するパネル部材の第2連結部を接続した状態を示す断面図である。
【図24】この発明のさらに別の実施例の更生パネルに用いられるパネル部材を示す平面図である。
【図25】図24のパネル部材を示す断面図である。
【図26】この発明のさらに別の実施例の更生パネルに用いられるキャップ部材を示す斜視図である。
【図27】図26のキャップ部材を窪み部に嵌めた状態を示す断面図である。
【図28】この発明のさらに別の実施例の更生パネルに用いられるパネル部材を示す平面図である。
【図29】図28のパネル部材の窪み部に嵌められるキャップ部材を示す斜視図である。
【図30】図28のパネル部材の窪み部を図29のキャップ部材で覆った状態を示す断面図である。
【図31】図28のパネル部材どうしを連結し、これをパネル用固定具で固定して、支保工用固定具に取り付けられた支保工で所定高さに保持された状態を示す平面図である。
【図32】この発明のさらに別の実施例であって、パネル用固定具の頭部に取り付けた番線で支保工をパネル部材上に固定した状態を示す断面図である。
【図33】この発明のさらに別の実施例であって、2つのパネル部材ごとにパネル用固定具を取り付け、この次のパネル部材に支保工用固定具を取り付け、この支保工用固定具で支保工を固定した状態を示す平面図である。
【図34】この発明のさらに別の実施例であって、3つのパネル部材ごとにパネル用固定具を取り付け、これと同じパネル部材に支保工用固定具を取り付け、この支保工用固定具で支保工を固定した状態を示す平面図である。
【図35】この発明のさらに別の実施例の更生パネルに用いられるパネル部材を示す斜視図である。
【図36】図35のパネル部材を示す平面図である。
【図37】図35のパネル部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0106】
10、100…更生パネル
12…パネル部材
14、72、82…キャップ部材
16…第1端
18…第2端
20…平面部
22、76、84…窪み部
24…第1面
26…第2面
32、78、81a…第1連結部
34、80、81c…第2連結部
36…第1キャップ接合部
38…第2キャップ接合部
40…貫通孔
46、88…パネル接合部
48…空隙充填材
56…開水路
58…パネル用固定具
62…支保工
68…裏込め充填材
70…更生された構造物
86…キャップ接合部
92…番線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の面を更生するための更生パネルであって、
第1端および第2端を有するパネル部材、
前記パネル部材に形成される、かつ第1面とそれに対向する第2面とを有する平面部、
前記パネル部材に形成される、かつ前記第2面よりへこんだ窪み部、
前記窪み部の底に形成される固定具取付部、
前記窪み部に形成されるキャップ接合部、
前記第1端に形成される第1連結部、
前記第2端に形成される、かつ隣接する前記パネル部材の前記第1連結部に接続される第2連結部、
前記第1連結部に隣接する前記第2連結部を接続し前記パネル部材どうしを連結した後に前記窪み部を覆うキャップ部材、および
前記キャップ部材に形成される、かつ前記キャップ接合部に接合されるパネル接合部を備え、
前記固定具取付部に、前記パネル部材を固定するためのパネル用固定具、および前記パネル部材を所定高さに保持する支保工を固定するための支保工用固定具の少なくとも一方が取り付け可能である、更生パネル。
【請求項2】
前記キャップ部材は、前記窪み部を開閉可能に前記パネル部材と一体的に連結される、請求項1記載の更生パネル。
【請求項3】
請求項1または2の更生パネルを用いた既設構造物の面の更生方法であって、
(a) 前記固定具取付部に取り付けられるパネル用固定具で前記パネル部材を既設構造物の面と間隔を隔てて固定するステップ、および
(b) 前記パネル部材の前記第1連結部に隣接する前記パネル部材の前記第2連結部を接続し、前記既設構造物の面と間隔を隔てて前記パネル部材どうしを連結するステップを含み、前記ステップ(a)および(b)を繰り返して、さらに
(c) 隣接する前記パネル部材をまたいで支保工を渡し、前記固定具取付部に取り付けられる支保工用固定具で前記支保工を固定するステップ、
(d) 前記既設構造物の面と前記パネル部材との間に裏込め充填材を充填するステップ、
(e) 前記支保工および前記支保工用固定具を取り外すステップ、および
(f) 前記キャップ接合部に前記パネル接合部を接合し、前記窪み部を前記キャップ部材で覆い、前記更生パネルを形成するステップを含む、既設構造物の面の更生方法。
【請求項4】
前記ステップ(f)の前に、前記窪み部内に空隙充填材を充填するステップをさらに含む、請求項3記載の既設構造物の面の更生方法。
【請求項5】
請求項3または4の既設構造物の面の更生方法で更生された構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2008−179966(P2008−179966A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13472(P2007−13472)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(503315702)クボタシーアイプラテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】