説明

最適化されたパラキシレンの製造のための、並列した2基の吸着器を用いる擬似向流クロマト分離のための方法および装置

【課題】並列に接続された2基の吸着器を用いかつ各吸着器が12個の床を含む従来技術における解決策の不利な点を伴うことなく、24床パラキシレン製造装置の生産性の制限という課題を解決して、高純度(すなわち、純度99.7%超)のパラキシレンを直接製造する。
【解決手段】キシレンの擬似向流分離方法は2基の吸着器を用いる第1吸着工程を含み、各吸着器は12個の床を有し、各吸着器は、供給原料(F)導入ラインと、溶離剤(D)導入ラインと、エキストラクト(E)抜き出しラインと、ラフィネート(R)抜き出しラインとを有し、各吸着器は、4つのクロマトグラフィー帯域に分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラキシレンを、他の芳香族C8異性体から分離する分野に関する。そのような分離を行うために、一群の方法および関連する装置が用いられている。それらは、擬似移動床分離方法または擬似向流分離という名の下で、あるいはVARICOL(登録商標)法として、知られているが、本明細書の以降においてはSCC(simulated counter current:擬似向流)分離方法という一般用語を用いることとする。
【背景技術】
【0002】
SCC分離法は、当該技術分野において周知である。一般的に、擬似向流モードで機能するパラキシレン分離方法は、少なくとも4つ、場合により5つまたは6つの帯域を含み、各帯域は一定数の隣り合う(successive)床によって構成され、かつ、各帯域は、供給口と抜き出し口との間に含まれるその位置によって区画される。一般に、パラキシレン製造のためのSCC装置(unit)に、少なくとも1つの分別されるべき供給原料F(パラキシレンおよび他の芳香族C8異性体を含む)と、溶離剤と称されることもある脱着剤D(一般的に、パラジエチルベンゼンまたはトルエン)とが供給され、前記装置から、パラキシレンの異性体を含む少なくとも1つのラフィネートRおよび脱着剤と、パラキシレンを含むエキストラクトEおよび脱着剤とが抜き出される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたように、分配回路を洗浄するために、別の注入口−抜き出し口を追加してもよい。このような補足的な洗浄流れの追加は、決してSCCの機能の原則を変更するものではない。従って、本明細書を簡潔にするために、これらの補足的注入口および補足的抜き出し口については、本明細書の以降において説明しないこととする。
【0004】
供給口および抜き出し口は、経時的に変更され(modified)、1つの床に相当する値の分だけ同一方向にシフトされる。種々の注入口または抜き出し口は、特許文献2に記載のように、同期式あるいは非同期式でシフトされてもよい。非同期式シフトで機能する方法は、VARICOL(登録商標)法として知られている。
【0005】
従来、SCC装置において、以下の4つの異なるクロマトグラフィー帯域が区画される:
・帯域1(パラキシレン脱着帯域、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの除去との間に含まれる);
・帯域2(パラキシレン異性体脱着帯域、エキストラクトEの除去と分別されるべき供給原料Fの注入との間に含まれる);
・帯域3(パラキシレン吸着帯域、供給原料の注入とラフィネートRの抜き出しとの間に含まれる);および
・帯域4(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間に位置する帯域)。
【0006】
非特許文献1に記載されているように、SCCによるパラキシレンの分離方法は、一般的に24個の床からなり、24個の床は2基の吸着器(adsorber)に分配され、各吸着器は12個の床を含む。2基の吸着器は、直列に接続されており、従って、SCCサイクルは24工程を含み、これらの工程中に、各流れ(D、E、F、R)が24床のそれぞれの下流で注入または抜き出される。
【0007】
12個の床を有する吸着器を2基用いる場合において、2基の吸着器が「直列に接続」されるという用語は、以下の3つの特徴を意味する:
・第1吸着器の第12床は、少なくとも1つの再循環ポンプと、場合による他の機器、例えば流量計や圧力センサ等、とを含むラインを介して、第2吸着器の第1床に接続される;
・第2吸着器の第12床は、少なくとも1つの再循環ポンプと、場合による他の機器、例えば流量計や圧力センサ等、とを含むラインを介して、第1吸着器の第1床に接続される;
・2基の吸着器からなるアセンブリー(assembly)には、供給原料導入口が1箇所、溶離剤導入口が1箇所、ラフィネート抜き出し口が1箇所、ならびにエキストラクト抜き出し口が1箇所形成されている。
【0008】
重要なのは、これらの特徴に留意することである。なぜなら、本明細書の以降において展開されていくように、本発明の並列の構成においてこれらの特徴が改善されるからである。
【0009】
SCC法において起こる圧力降下は、吸着剤の床中の流体相の隙間速度(interstitial velocities)に直接関連する。
【0010】
用語「隙間速度」は、固体吸着剤を構成する粒子間の流体の実際の速度を意味する。圧力降下は、再循環ポンプ(単数または複数)のサイジング、吸着器の壁の厚さ、分配器プレートの供給システムのサイズ、吸着剤の粒の力学的挙動等に重要な役割を果たす。
【0011】
隙間速度はまた、吸着剤の粒の力学的挙動に関して、非常に重要な役割を果たし、かつ、SCC装置の操作に際して、制限要因となり得ることさえある。
【0012】
SCCによるパラキシレンの製造方法では生産性が制限されることは、従来技術(特に、特許文献3および特許文献4)から公知である。該方法を改良するために、従来技術においても以下の解決策が提案されている:
・特許文献5および特許文献6には、いくつかの吸着工程を用いる方法が示されている。その第1工程は、商業的に使用可能となるには不十分な純度(99重量%未満)を有するパラキシレンに富む流れを生じさせることを目的としている。第2工程は、非常に高い純度のパラキシレンを得るために用いられ得る。特に、特許文献6の図5には、供給原料の前処理のための吸着器を追加することによって、24床SCC法による従来の装置の製造工程が改善されることが示されている;
・特許文献7、特許文献8、および特許文献3には、結晶化と組み合わせたSCC吸着のための工程を用いる方法が示されている。その第1工程は、商業的に使用可能となるには不十分な純度(一般に90重量%程度)を有するパラキシレンに富む流れをSCCによって生じさせることを目的としている。第2工程は、非常に高い純度のパラキシレンを得るために用いられ得る。第2工程は、非常に高い純度のパラキシレンを結晶化により得るために用いられ得る。特に、特許文献3の図5には、並列に接続された2基の吸着器を用いる吸着方法を改変すること、および、エキストラクトを後処理するための結晶化工程を追加することによって、24床SCC法による従来の装置(2基の12床吸着器からなる)での製造工程が改善されることが示されている。
【0013】
従来技術において推奨される解決策は全て、24床の擬似移動床を用いるパラキシレン製造装置の生産性が制限されるという課題を解決したものである。これらの解決策は、供給原料を前処理するために吸着器を使用する分離段階、および/または、結晶化によるエキストラクト(単数または複数)の後処理を追加することからなるため、コストが非常に高くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7208651号明細書
【特許文献2】米国特許第6136198号明細書
【特許文献3】米国特許第7649124号明細書
【特許文献4】米国特許第7635795号明細書
【特許文献5】仏国特許発明第2743068号明細書
【特許文献6】米国特許第7635795号明細書
【特許文献7】仏国特許発明第2693186号明細書
【特許文献8】仏国特許発明第2757507号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Ind Eng Chem Res」2010年、第49巻、p.3316−3327、Limら著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の方法の目的は、並列に接続された2基の吸着器を用いかつ各吸着器が12個の床を含む従来技術における解決策の不利な点を伴うことなく、24床パラキシレン製造装置の生産性の制限という課題を解決して、高純度(すなわち、純度99.7%超)のパラキシレンを直接製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、キシレンの擬似向流分離方法であって、該方法は2基の吸着器を用いる第1吸着工程を含み、各吸着器は12個の床を有し、
各吸着器は、供給原料(F)導入ラインと、溶離剤(D)導入ラインと、エキストラクト(E)抜き出しラインと、ラフィネート(R)抜き出しラインとを有し、
各吸着器は、4つのクロマトグラフィー帯域、すなわち、
・帯域1:パラキシレン脱着帯域であって、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの除去との間に含まれる帯域、
・帯域2:パラキシレンの異性体の脱着帯域であって、エキストラクトEの除去と分別されるべき供給原料Fの注入との間に含まれる帯域、
・帯域3:パラキシレン吸着帯域であって、供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間に含まれる帯域、および
・帯域4:ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間に含まれる帯域、
に分割され、
2基の吸着器は、並列に接続されて機能し、すなわち、第1吸着器(a)の第12床は、再循環ポンプを含むラインを介して、前記第1吸着器(a)の第1床に接続され、第2吸着器(b)の第12床は、前記ポンプとは別個の再循環ポンプを含むラインを介して、前記第2吸着器(b)の第1床に接続され、
以下の工程を更に含む方法:
・単一の蒸留塔内で2つのラフィネートの混合物を蒸留する工程であって、該蒸留塔の塔頂から、パラキシレンがなくなった(depleted)キシレンの混合物が抜き出され、該蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて再循環させられる、工程;および
・1基または2基の蒸留塔内で2つのエキストラクトを蒸留する工程であって、該蒸留塔の塔頂から実質的に純粋な(すなわち、純度99.7重量%超の)パラキシレンが抜き出され、該蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて再循環させられる、工程。
【発明の効果】
【0018】
驚くべきことに、公知の「並列」の構成において、2基の12床吸着器および適切な操作条件(構成、切り替え周期、流量、吸着剤の含水量、ならびに溶媒の温度および量)を用いることにより、商業的に使用可能な純度(commercial purity)(すなわち、純度99.7重量%超)のパラキシレンを大量に製造することができることが分かった。上記並列の構成で製造され得るパラキシレンの量は、24床を直列に接続した構成での従来方法において2基の吸着器を使用する装置によって製造される量より多い。
【0019】
また、本発明の方法または装置を得るために、従来の24床装置に施すべき改変が比較的少なくかつ大規模な投資を必要としないことも分かっている。
【0020】
従って、本発明は、1基の24床装置を、2基の12床装置に改変する場合に、特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の装置を示す。本発明の装置は、2基の吸着器(aおよびb)によって構成され、各吸着器は、それぞれ12個の床を有する(吸着器aは床L1a〜床L12aを有し、吸着器bは床L1b〜床L12bを有する)。
【0022】
各吸着器において、供給原料流れの注入口(吸着器aはFa、吸着器bはFb)、脱着剤流れの注入口(吸着器aはDa、吸着器bはDb)、エキストラクト流れの抜き出し口(吸着器aはEa、吸着器bはEb)、およびラフィネート流れの抜き出し口(吸着器aはRa、吸着器bはRb)が形成されている。
【0023】
吸着器aの再循環ポンプはPaと示され、吸着器bの再循環ポンプはPbと示される。再循環ポンプPaおよびPbの代わりに用いられる単一の代替ポンプは、Pcと示される。一式の弁(Vc1〜Vc4)および点線(該点線は、代替ポンプPcが使用されていない場合には使用されないラインに相当する)は、ポンプPcが、吸着器aのポンプPaの代わりに、あるいは、吸着器bのポンプPbの代わりに用いられ得ることを意味する。
【図2】図2は、従来技術の方法を示す。従って、図2は2基の12床吸着器を含み、各吸着器は直列に接続されている。これは、1基の24床装置に相当するものである。
【0024】
従来技術において、1つの供給原料注入口(F)、1つの脱着剤導入口(D)、1つのエキストラクト抜き出し口(E)、および1つのラフィネート抜き出し口(R)が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の簡単な説明
本発明は、2基の吸着器を用いるキシレンの擬似向流分離方法であって、各吸着器はそれぞれ12個の床を含み、2基の吸着器は「並列の」構成で機能する方法として規定され得る。
【0026】
より正確には、本発明の擬似向流キシレン分離方法は、2基の吸着器を用いる第1吸着工程を含み、各吸着器は、12個の床を有し、各吸着器は、供給原料(F)導入ライン、溶離剤(D)導入ライン、エキストラクト(E)抜き出しライン、およびラフィネート(R)抜き出しラインを有し、かつ、4つのクロマトグラフィー帯域、すなわち、
帯域1:パラキシレン脱着帯域であって、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの除去との間に含まれる帯域、
・帯域2:パラキシレンの異性体の脱着帯域であって、エキストラクトEの除去と分別されるべき供給原料Fの注入との間に含まれる帯域、
・帯域3:パラキシレン吸着帯域であって、供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間に含まれる帯域、および
・帯域4:ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間に含まれる帯域、
に分割され、
2基の吸着器は、並列に接続されて機能し、すなわち、第1吸着器(a)の第12床は、再循環ポンプ(Pa)を含むラインを介して、前記第1吸着器(a)の第1床に接続され、第2吸着器(b)の第12床は、前記ポンプとは別個の再循環ポンプ(Pb)を含むラインを介して、前記第2吸着器(b)の第1床に接続され、
該方法は更に以下の工程を含む:
・単一の蒸留塔内で2つのラフィネートの混合物を蒸留する工程であって、該蒸留塔の塔頂から、パラキシレンがなくなったキシレンの混合物が抜き出され、該蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて再循環させられる工程;
・1基または2基の蒸留塔内で2つのエキストラクトを蒸留する工程であって、蒸留塔の塔頂から、実質的に純粋な(すなわち、純度99.7重量%超の)パラキシレンが抜き出され、蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて再循環させられる工程。
【0027】
全ての擬似移動床法と同様に、供給原料および脱着剤の注入口ならびにエキストラクトおよびラフィネートの抜き出し口は、各回毎に1つの床の分だけシフトされる。用語「サイクル」は、注入口および抜き出し口がそれぞれの初期位置に戻るのに必要な時間を意味して使用される。この概念(notion)は、「VARICOL(登録商標)」として知られる変形例において特に重要であり、1サイクル中の帯域当たりの床数を、平均値を用いて非整数で規定するために用いられ得る。
【0028】
本発明の方法の第1変形例(1)において、各吸着器における床の分配は、種々のクロマトグラフィー帯域に応じて定まる。この分配は、1サイクル中変化しない。
【0029】
各吸着器の12個の床は、4つのクロマトグラフィー帯域において以下のように分配される:
・帯域1に2床;
・帯域2に5床;
・帯域3に3床;
・帯域4に2床。
【0030】
本発明の方法の第2変形例(2)において、2基の吸着器のうち、一方の吸着器は固定モードで機能し、他方の吸着器は、「VARICOL(登録商標)」モードで機能する。
【0031】
固定モードで機能する吸着器について、吸着器の12個の床は、4つのクロマトグラフィー帯域において以下のように分配され:
・帯域1に2床;
・帯域2に5床;
・帯域3に3床;
・帯域4に2床;
「VARICOL(登録商標)」モードで機能する他方の吸着器について、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しておらず、これによりサイクル中の帯域当たりの平均床数が非整数で得られる。
【0032】
この吸着器における帯域当たりの床数は、以下の通りである:
・帯域1に2.5(+または−0.5)床;
・帯域2に4.5(+または−0.5)床;
・帯域3に3.5(+または−0.5)床;
・帯域4に1.5(+または−0.5)床。
【0033】
本発明の方法の第3変形例(3)において、2基の吸着器はいずれも「VARICOL(登録商標)」モードで機能する。2基の吸着器のそれぞれにおける、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しておらず、これによりサイクル中の帯域当たりの平均床数が非整数で得られる。
【0034】
この吸着器における帯域当たりの床数は、以下の通りである:
・帯域1に2.5(+または−0.5)床;
・帯域2に4.5(+または−0.5)床;
・帯域3に3.5(+または−0.5)床;
・帯域4に1.5(+または−0.5)床。
【0035】
上記3つの変形例(1)、(2)、(3)に適合可能な、本方法の別の変形例において、2基の吸着器はそれぞれ12個の床と、前記流体を順次分配および抽出するためにプログラミングされた手段とを含み、各床はプレートPiによって分離され、プレートPiは流体を分配および/または抽出するための室(chamber)を有する。
【0036】
流体を分配および抽出するためにプログラミングされたこれらの手段は、各プレートPiについて、少なくとも4つのプログラミングされた二方開閉弁によって構成され、上記4つの弁はそれぞれ、2つの流体、すなわち供給原料(F)および溶離剤(D)の供給ならびに、2つの流体、すなわちエキストラクト(E)およびラフィネート(R)の抜き出しを管理(manage)する。
【0037】
本発明の擬似向流キシレン分離方法の別の変形例によると、各吸着器は、プレート全てにわたって、供給原料(F)の供給、溶離剤(D)の供給、エキストラクト(E)の抜き出し、およびラフィネート(R)の抜き出しが管理可能なロータリー多方弁を1個使用する。
【0038】
本発明の擬似向流キシレン分離方法は一般的に、凝集ゼオライト吸着剤固体を使用する。凝集ゼオライト吸着剤固体は、小さい、すなわち径2ミクロン(μm)以下の結晶を含み、少なくとも90%がバリウムイオン単独か、バリウムイオンおよびカリウムイオンののいずれかによって交換されたXゼオライトである。交換可能部位は、バリウムイオン+カリウムイオンによって占められる交換可能部位の1/3以下であるカリウムによって占められている。不活性バインダの割合は15重量%未満である。
【0039】
好ましくは、本発明の擬似向流キシレン分離方法は、脱着剤を使用し、用いられる脱着剤はパラジエチルベンゼンである。
【0040】
本発明の擬似向流キシレン分離方法の操作条件は、一般的に以下の範囲である:
・吸着温度は、100〜250℃の範囲、好ましくは120〜180℃の範囲であり;
・吸着圧力は、本方法の温度でのキシレンの気泡点圧力(bubble-point pressure)と30×10Paの間の範囲であり;
・供給原料に対する脱着剤の流量比は、0.7〜2.5の範囲であり;
・溶離剤の再循環比は、2.5〜12個の範囲、好ましくは3.5〜6の範囲であり;
・吸着器までのサイクル周期(the duration of the cycle followed by the adsorbers)は、14〜30分の範囲、好ましくは18〜23分の範囲であり;
・空の反応器に対する平均線速度は、0.7〜1.4cm/sの範囲、好ましくは0.85〜1.1cm/sの範囲であり;
・液相中の含水量は、70〜140重量ppmの範囲、好ましくは80〜120重量ppmの範囲で維持される。
【0041】
本発明の擬似向流キシレン分離方法は、このように2基の吸着器を含み、各吸着器はそれぞれ12個の床を有しかつ並列に接続されて機能し、更に以下のものを含む:
・供給原料(F)供給ポンプ(単数または複数)の代わりに単一のポンプ、および脱着剤(D)供給ポンプ(単数または複数)の代わりに単一のポンプが用いられること;
・単一の代替再循環ポンプ(Pc)であって、第1吸着器(a)で用いられる再循環ポンプ(Pa)か、あるいは第2吸着器(b)で用いられる再循環ポンプ(Pb)のいずれかの代わりに用いられ得る。
【0042】

発明の詳細な説明
本発明は、パラキシレンとパラキシレンの芳香族C8異性体とを実質的に含む供給原料Fから、パラキシレンを分離するための方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
・12個の床を有する吸着器を2基用いる擬似向流クロマトグラフィー(SCC)による吸着工程であって、該吸着工程は、以下のことを特徴とする:
2基の吸着器は並列に接続されて機能し、すなわち、各吸着器は、供給原料導入口、溶離剤導入口、エキストラクト抜き出し口、およびラフィネート抜き出し口をそれぞれ1つずつ有し、該吸着工程は、2つのエキストラクト(各吸着器毎に1つのエキストラクト)と、2つのラフィネート(各吸着器毎に1つのラフィネート)とを生成させ、エキストラクトは脱着剤と混合されたパラキシレンに富むキシレンの混合物を含み、ラフィネートはパラキシレンがなくなったキシレンの混合物と脱着剤とを含む。
【0043】
用語「2基の吸着器は並列に接続されて機能する」は、第1吸着器の第12床が前記第1吸着器の第1床に接続され、同様に、第2吸着器の第12床が前記第2吸着器の第1床に接続されることを意味する;
・1基の蒸留塔内で2つのラフィネートの混合物を蒸留する工程であって、蒸留塔の塔頂から、パラキシレンがなくなったキシレンの混合物が抜き出され、蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて、該脱着剤は再循環させられてもよい、工程;
・1基または2基の蒸留塔内で2つのエキストラクトを蒸留する工程であって、蒸留塔の塔頂から実質的に純粋な(すなわち、純度99.7重量%超の)パラキシレンが抜き出され、蒸留塔の底部から脱着剤底部から抜き出され、該脱着剤は再循環させられてもよい、工程。
【0044】
本発明の方法の擬似向流クロマトグラフィー(SCC)による吸着工程には、各吸着器の種々のクロマトグラフィー帯域における吸着剤床の分配に関して、3つの変形例が含まれる。
【0045】
一般に、4つのクロマトグラフィー帯域は以下のように区画される:
・帯域1:パラキシレン脱着帯域であって、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの除去との間に含まれる帯域、
・帯域2:パラキシレンの異性体の脱着帯域であって、エキストラクトEの除去と分別されるべき供給原料Fの注入との間に含まれる帯域、
・帯域3:パラキシレン吸着帯域であって、供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間に含まれる帯域、および
・帯域4:ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間に含まれる帯域。
【0046】
本発明の方法の第1変形例a)において、これらの注入口および抜き出し口のシフトは同期しており、各吸着器の床は、種々の帯域に以下のように分配される:
・帯域1に2床;
・帯域2に5床;
・帯域3に3床;
・帯域4に2床。
【0047】
本発明の方法の第2変形例b)によると、一方の吸着器において、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期式であり、該吸着器の12個の床は、以下のように、4つのクロマトグラフィー帯域に分配されれ:
・帯域1に2床;
・帯域2に5床;
・帯域3に3床;
・帯域4に2床;
他方の吸着器において、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しておらず、これにより、帯域当たりの平均床数が非整数で得られる。サイクル中、この吸着器の帯域当たりの床数は、以下の通りである:
・帯域1に2.5(+または−0.5)床;
・帯域2に4.5(+または−0.5)床;
・帯域3に3.5(+または−0.5)床;
・帯域4に1.5(+または−0.5)床。
【0048】
本発明の方法の第3変形例c)によると、各吸着器おいて、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しておらず、これにより、サイクル中の帯域当たりの平均床数が非整数で得られ、各吸着器の帯域当たりの床数は以下の通りである:
・帯域1に2.5(+または−0.5)床;
・帯域2に4.5(+または−0.5)床;
・帯域3に3.5(+または−0.5)床;
・帯域4に1.5(+または−0.5)床。
【0049】
各吸着器はそれぞれ、プレートPiによって分離された12個の床と、流体を順次分配および抽出するためのプログラミングされた手段とを含む。プレートPiは、種々の吸着剤床に流体を分配するための、および/または、種々の吸着剤床から流体を抽出するための室(chamber)を有する。
【0050】
流体を順次分配および抽出するための前記プログラミングされた手段は、典型的には、以下の2つの主要なタイプの技術のいずれかである:
・各プレートについて、流体の供給または抜き出しを行うための複数のプログラミングされた開閉弁であって、これらの開閉弁は、典型的には、対応するプレートのすぐ近くに位置する。具体的には、各プレートPiについて、少なくとも4つのプログラミングされた二方開閉弁が形成されており、すなわち、これらは、2つの、つまり流体Fおよび流体Dの供給のため、ならびに、2つの、つまり流体Eおよび流体Rの抜き出しのために形成されている;
・全プレートにわたって流体の供給または抜き出しを行うための1つのロータリー多方弁。
【0051】
本発明の方法の吸着工程において、純度99.7重量%以上のパラキシレンを得るために必要な注入および抜き出しネットワークを洗浄するための装置が用いられる。本発明の方法において用いられ得るネットワーク洗浄装置としては、以下の2つのケースが挙げられ得る。:
・第1装置は、所定のプレートの注入/抜き出しネットワークを、脱着剤または比較的高純度のパラキシレンでフラッシュすることからなる。この目的のために、例えば、(帯域1に関連するネットワークがフラッシュされ得るように)1つの流れが帯域1から抜き出され、(帯域2に関連するネットワークがフラッシュされ得るように)前記流れが帯域2に再注入される。エキストラクトつまり蒸留後のパラキシレンの小さい流れを、エキストラクト抜き出し口に最も近い帯域2のプレートに注入することも可能である。注入および抜き出しによる洗浄については、他の可能性も実施可能である。そのような装置は、具体的には、米国特許第3201491号明細書、米国特許第5750820号明細書、米国特許第5912395号明細書、米国特許第6149874号明細書、および国際公開第2006/096394号パンフレットに記載されている。好ましくは、このような洗浄装置は、全プレートにわたる流体の供給または抜き出しを、1つのロータリー多方弁を用いて行う場合に、用いられることとなる。;
・第2装置は、主要な流れの大部分を、吸着器の内部に通過させ、主要な流れの小部分(典型的には、主要な流れの1〜20%)を、隣り合う(successive)プレート間の、外部バイパスラインを介して吸着器の外側に通過させることからなる。このようなフラッシュ、つまり、1つのプレートにおける注入/抜き出しネットワークを上方プレートに由来する流れによってフラッシュすることは、典型的には、連続的に(continuously)行われ、これにより、注入/抜き出しネットワークのラインおよび帯域が、もはや「死角(dead)」ではなく、コンスタントにフラッシュされるようになされる。そのような装置は、特に、仏国特許発明第2935100号明細書、仏国特許発明第2935101号明細書、および仏国特許発明第2944215号明細書に記載されている。好ましくは、この洗浄装置は、全プレートにわたる流体の供給および抜き出しを、複数のプログラミングされた開閉弁を介して行われる場合に用いられることとなる。
【0052】
本方法の1つの特徴によると、吸着工程において用いられる吸着剤は、バリウムと交換されるか、あるいは、バリウムおよびカリウムと交換されるフォージャサイトタイプのゼオライトを含んでいてもよい。
【0053】
好ましくは、吸着剤は凝集ゼオライト吸着剤固体である。凝集ゼオライト吸着剤固体は、Xゼオライトの小結晶(すなわち、径が2μm以下の結晶)を含み、Xゼオライトは、少なくとも90%が、バリウムイオン単独かあるいはバリウムイオンおよびカリウムイオンのいずれかによって交換されており、交換可能部位は、カリウムによって占められており、カリウムはバリウムイオン+カリウムイオンによって占められる交換可能部位の1/3以下に相当する(任意の補体(any complement)は、バリウムおよびカリウム以外のアルカリまたはアルカリ土類イオンによって一般的に提供されている)。小結晶はまた、小さい割合、すなわち15重量%未満の不活性バインダを含む。
【0054】
900℃で測定される強熱減量は、4.0〜7.7重量%の範囲、好ましくは4.7〜6.7重量%の範囲である。より好ましくは、吸着剤は、非常に小さい割合、すなわち5重量%未満の不活性バインダを含む;吸着剤は「バインダレス」と称される。
【0055】
好ましい脱着剤はパラジエチルベンゼンであるが、他の脱着剤、例えば、混合物としての、トルエン、パラ−ジフルオロベンゼン、またはジエチルベンゼン等もまた適切であってもよい。好ましくは、パラジエチルベンゼンが推奨されるが、これは、蒸留による回収が容易であり、かつ、吸着剤に対する親和性が高いからである。
【0056】
本方法の別の特徴によると、吸着工程のための操作条件は以下の通りである:
・温度は、100〜250℃、好ましくは120〜180℃であり;
・圧力は、本方法の温度でのキシレンの気泡点圧力(bubble-point pressure)と30×10Paの間であり;
・脱着剤の供給原料に対する流量比は0.7〜2.5であり;
・再循環比は、2.5〜12の範囲、好ましくは3.5〜6の範囲であり;再循環比は、種々の吸着剤床中を流れる平均流量と、当該吸着器に注入される供給原料の流量との比として規定され;
・吸着器までのサイクル周期は、14〜30分の範囲、好ましくは18〜23分の範囲であり;
・空の反応器に対する平均線速度は、0.7〜1.4cm/sの範囲、好ましくは0.85〜1.1cm/sの範囲であり;
・液相中の含水量は、70〜140重量ppmの範囲、好ましくは80〜120重量ppmの範囲で維持される。
【0057】
本発明の方法は、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは98%超のパラキシレン収率を得るために用いられ得る。
【0058】
本発明の方法によって達成される生産性に関し、時間当たりかつ吸着剤床の体積(m)当たりのパラキシレンの製造量は、60〜180kgの範囲であり、好ましくは75〜140kgの範囲であり、より一層好ましくは90〜130kgの範囲である。
【0059】
本発明の方法において2基の吸着器が並列して用いられるという事実は、以下のことを意味する:
・供給原料供給ポンプ(単数または複数)の代わりに単一のポンプが用いられ、脱着剤供給ポンプ(単数または複数)の代わりに別の単一のポンプが用いられること;
・単一の代替再循環ポンプ(Pc)が利用可能であり、この単一の代替再循環ポンプ(Pc)は、第1吸着器(a)で使用される再循環ポンプ(Pa)の代わりか、第2吸着器(b)で使用される再循環ポンプ(Pb)の代わりかのいずれにおいても使用され得るキャパシティを有する。ポンプPaの代わりにポンプPcが用いられる場合、弁Va1および弁Va2は閉にされ、弁Vc1および弁Vc3が開にされる。ポンプPbの代わりにポンプPcが用いられる場合、弁Vb1および弁Vb2が閉にされ、弁Vc2および弁Vc4が開にされる;
・2基の吸着器について、1つの自動コントロール手段のみが使用される;
・吸着器中の濃度を分析するために、単一のインラインデバイスのみが使用される。そのような装置は、特に、仏国特許発明第2942879号明細書に記載されている;
・本方法のコントロールおよび操作に必要な情報は全て、単一のコントロール室で集中化されている(centralized)。
【0060】
更なる態様(aspect)において、本発明は、2基の吸着器を含み各吸着器が12個の床を含む、24床の擬似移動床における高純度パラキシレンの製造方法について、直列に配置された2基の吸着器を含む方法を、並列に接続された2基の吸着器を含む方法に転換する方法に関する。
【0061】
この方法は、生産性を向上させるために、既存の設備を改変(リモデリングとしても知られている)することからなる。
【0062】
・第1吸着器(a)の第12床は、1つの再循環ポンプ(Pa)を含むラインを介して前記第1吸着器(a)の第1床に接続され;
・第2吸着器(b)の第12床は、少なくとも1つの再循環ポンプ(Pb)を含むラインを介して前記第2吸着器(b)の第1床に接続される。
【0063】
24床の吸着工程において、供給原料および脱着剤の注入流量と、エキストラクトおよびラフィネートの抜き出し流量とをコントロールおよびレギュレートするためのシステムは、本発明のリモデリングされた方法の2基の吸着器のそれぞれにおいて注入および抜き出しの流量を独立して管理(manage)することが可能となるように、適合させられる。
【0064】
注入装置について、この操作は、以下のいずれかによって実施され得る:
・各吸着器に注入されるフローをレギュレートするために、ポンプ+測定手段からなるシステムを倍増させる;あるいは
・コストを最小限に抑える目的のために、従来のポンプと、一緒に注入されるべき2つの流れを管理することとなる測定手段とを使用し、かつ、2基の吸着器の一方に供給するフローを測定およびレギュレートするためのシステムを加える。
【0065】
既存の24床方法の、全プレートにわたる流体の供給または抜き出しが、プログラミングされた複数の開閉弁によって提供される場合、供給および抜き出しネットワークに補足的に改変を行う必要はない。既存の24床方法の、全プレートにわたる流体の供給または抜き出しが、1つのロータリー多方弁を用いることによって提供される場合、それらの機能は、好ましくは、2つのロータリー多方弁を用いることによって提供されることとなるであろう(場合により、適合後2つのポート(port)のうちの一方で従来の弁を再利用することによる)。
【0066】
図2からわかるように、12個の床を2つ直列に配置することにより構成される既存の24床装置の場合、主要な流れは、第1吸着器の底部から第2吸着器の頭部に向かい、かつ、第2吸着器の底部から第1吸着器の頭部に向かって移動する。
【0067】
図1に示されるように、2基の吸着器のそれぞれの底部からの流れは、弁およびラインを変えることにより、それぞれの吸着器の頭部に向かって移動するように再配向させられる。吸着器a)からの底部流れは、前記吸着器a)の頭部に再循環させられ、吸着器b)からの底部流れは、前記吸着器b)の頭部に再循環させられる。
【0068】
2基の吸着器の構成(帯域当たりの平均床数)は、上記3つの変形例のうちの1つによるものであってよく、すなわち、3つの変形例とは以下の通りである:
・両吸着器について、各クロマトグラフィー帯域の床数は固定数である;
・一方の吸着器の床数は変数であり、他方の吸着器の床数は固定数である;
・両吸着器について、床数は変数である。
【実施例】
【0069】
本発明は、以下の3つの実施例から、より良く理解されることができる。
【0070】
実施例1(従来技術に合致する)
24個の床によって構成され、各床の長さが1.1mであり内半径が1.05mであるSCC装置について検討した。SCC装置は、1つの供給原料注入口、1つの脱着剤注入口、1つのエキストラクト抜き出し口、および1つのラフィネート抜き出し口を有していた。
【0071】
用いた吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体(zeolitic BaX type solid)であり、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃であり、圧力は15バールであった。含水量は95重量ppmであった。
【0072】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0073】
SCC装置は、分配器プレートによって分離された24個の床により構成されていた。注入ネットワークおよび抜き出しネットワークは、各分配器プレートと関連(assosiated with)していた。用いた洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載のバイパス流体流量調節(modulated)装置であった。各帯域における同期性は100%であった。
【0074】
種々の注入口および抜き出し口を同期式でシフトした。床を、以下の構成で、4つのクロマトグラフィー帯域に分配した:
5/9/7/3
すなわち、床の分配は以下の通りであった:
・帯域1に5床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に9床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に7床(供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に3床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間)。
【0075】
供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃と想定することによって規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料の注入流量 0.6102m/分;
・脱着剤の注入流量 0.7715m/分 。
【0076】
加えて、帯域4の流量は1.8807m/分であり、エキストラクト抜き出し流量は、0.3966m/分であった。切り替え周期は、71.0秒であった。
【0077】
シミュレーションによって以下の数値を得た:
パラキシレンの純度 99.88% ;
パラキシレンの収率 98.67%;
生産性 72.5kgPX.h-1.m
【0078】

実施例2(本発明に合致する)
2基の吸着器によって構成され、各吸着器が12個の床を有する、本発明による装置について検討した。各床の長さは1.1mであり、内半径は1.05mであった。
【0079】
用いた吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体であり、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃であり、圧力は15バールであった。含水量は110重量ppmであった。
【0080】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0081】
各吸着器は、分配器プレートによって分離された12個の床によって構成されていた。注入ネットワークおよび抜き出しネットワークは、各分配器プレートと関連していた。用いた洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載のバイパス流体流量調節装置であった。各帯域における同期性は100%であった。
【0082】
各吸着器について、種々の注入口および抜き出し口を同期式でシフトした。各吸着器において、床を、以下の構成で、4つのクロマトグラフィー帯域床に分配した:
2/5/3/2
すなわち、床の分配は以下の通りであった:
・帯域1に2床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に5床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に3床(供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に2床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間)。
【0083】
2基の吸着器のそれぞれについて、供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃と想定することによって規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料の注入流量 0.4126m/分;
・脱着剤の注入流量 0.5583m/分。
【0084】
加えて、各吸着器について、帯域4の流量は1.2566m/分であり、 エキストラクトの抜き出し流量は0.3201m/分であった。切り替え周期は102.4秒であった。
【0085】
シミュレーションによって、装置を、2基の吸着器によって構成された全体として考慮して、以下の数値を得た:
パラキシレンの純度 99.72%;
パラキシレンの収率 98.08%;
生産性 97.5kgPX.h-1.m
【0086】

実施例3(本発明に合致する)
2基の吸着器によって構成され、かつ、各吸着器が12個の床を有する、本発明による装置について検討した。各床の長さは1.1mであり、内半径は1.05mであった。
【0087】
各吸着器において、用いた吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体であり、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃であり、圧力は15バールであった。含水量は110重量ppmであった。
【0088】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0089】
各吸着器は、分配器プレートによって分離された12個の床によって構成されていた。注入ネットワークおよび抜き出しネットワークは、各分配器プレートと関連していた。用いた洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載のバイパス流体流量調節装置であった。各帯域における同期性は100%であった。
【0090】
各吸着器について、種々の注入口および抜き出し口を非同期式でシフトし、これにより、クロマトグラフィー帯域の長さを非整数の数で得た(このことは、米国特許第6136198号明細書中に開示されている)。2基の吸着器のそれぞれにおいて、床を、以下の構成で、4つのクロマトグラフィー帯域に分配した:
2.2/4.8/3.2/1.8
すなわち、1周期中の床の分配は以下の通りであった(慣例により、周期の始まりと終わりは、脱着剤注入口のシフトによって規定される):
・周期の始まりから81.92秒(周期の始まりに対して規定される)までは:
・帯域1に2床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に5床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に3床(供給原料Fの注入およびラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に2床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間)。
【0091】
・81.92秒(周期の始まりに対して規定される)から周期の終わりまでは:
・帯域1に3床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に4床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に4床(供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に1床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間)。
【0092】
2基の吸着器のそれぞれについて、供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃と想定することによって規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料の注入流量 0.4126m/分;
・脱着剤の注入流量 0.5460m/分。
【0093】
加えて、各吸着器について、帯域4の流量は1.2433m/分であって、エキストラクトの抜き出し流量は0.2949m/分であった。切り替え周期は102.4秒であった。
【0094】
シミュレーションによって、装置を、2基の吸着器によって構成された全体として考慮して、以下の数値を得た:
パラキシレンの純度 99.70%;
パラキシレンの収率 98.20%;
生産性 97.6kgPX.h-1.m
【0095】

実施例4(本発明に合致する)
2基の吸着器によって構成され、かつ、各吸着器が12個の床を有する、本発明による装置について検討した。各床の長さは1.1mであり、内半径は1.05mであった。
【0096】
各吸着器において、用いた吸着剤はBaXタイプゼオライトの固体であり、脱着剤はパラジエチルベンゼンであった。温度は175℃であり、圧力は15バールであった。含水量は110重量ppmであった。
【0097】
供給原料の組成は、パラキシレン21.6%、オルトキシレン20.8%、メタキシレン47.9%、およびエチルベンゼン9.7%であった。
【0098】
各吸着器は、分配器プレートによって分離された12個の床によって構成されていた。注入ネットワークおよび抜き出しネットワークは、各分配器プレートと関連していた。用いた洗浄装置は、国際公開第2010/020715号パンフレットに記載のバイパス流体流量調節装置であった。各帯域における同期性は100%であった。
【0099】
第1吸着器において、種々の注入口および抜き出し口を同期式でシフトし、床を、以下の構成で、4つのクロマトグラフィー帯域床に分配した:
2/5/3/2
すなわち、床の分配は以下の通りであった:
・帯域1に2床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に5床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に3床(供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に2床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間)。
【0100】
第1吸着器において、供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃と想定することによって規定される)は、以下の通りであった:
・供給原料の注入流量 0.4126m/分;
・脱着剤の注入流量 0.5583m/分。
【0101】
加えて、第1吸着器において、帯域4の流量は1.2566m/分であって、エキストラクトの抜き出し流量は0.3201m/分であった。切り替え周期は102.4秒であった。
【0102】
第2吸着器において、種々の注入口および抜き出し口を非同期式でシフトして、これにより、クロマトグラフィー帯域の長さを非整数の数で得た(このことは、米国特許第6136198号明細書中に開示されている)。床を、以下の構成で、4つのクロマトグラフィー帯域に分配した:
2.2/4.8/3.2/1.8
すなわち、1周期中の床の分配は以下の通りであった(慣例により、周期の始まりと終わりは、脱着剤注入口のシフトによって規定される):
・周期の始まりから81.92秒(周期の始まりに対して規定される)までは:
・帯域1に2床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に5床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に3床(供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に2床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間)。
【0103】
・81.92秒(周期の始まりに対して規定される)から周期の終わりまでは:
・帯域1に3床(脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間);
・帯域2に4床(エキストラクトEの抜き出しと供給原料Fの注入との間);
・帯域3に4床(供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間);
・帯域4に1床(ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入R)。
【0104】
第2吸着器において、供給原料および脱着剤の注入流量(基準温度を40℃と想定することによって規定される)は以下の通りであった:
・供給原料の注入流量 0.4126m/分;
・脱着剤の注入流量 0.5460m/分。
【0105】
加えて、第2吸着器において、帯域4の流量は1.2433m/分であり、エキストラクトの抜き出し流量は0.2949m/分であった。切り替え周期は102.4秒であった。
【0106】
シミュレーションによって、装置を、2基の吸着器によって構成された全体として考慮して、以下の数値を得た:
パラキシレンの純度 99.71%;
パラキシレンの収率 98.14%;
生産性 97.6kgPX.h-1.m
【0107】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシレンの擬似向流分離方法であって、該方法は2基の吸着器を用いる第1吸着工程を含み、各吸着器は12個の床を有し、
各吸着器は、供給原料(F)導入ラインと、溶離剤(D)導入ラインと、エキストラクト(E)抜き出しラインと、ラフィネート(R)抜き出しラインとを有し、
各吸着器は、4つのクロマトグラフィー帯域、すなわち、
・帯域1:パラキシレン脱着帯域であって、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの除去との間に含まれる帯域、
・帯域2:パラキシレンの異性体の脱着帯域であって、エキストラクトEの除去と分別されるべき供給原料Fの注入との間に含まれる帯域、
・帯域3:パラキシレン吸着帯域であって、供給原料Fの注入とラフィネートRの抜き出しとの間に含まれる帯域、および
・帯域4:ラフィネートRの抜き出しと脱着剤Dの注入との間に含まれる帯域、
に分割され、
2基の吸着器は、並列に接続されて機能し、すなわち、第1吸着器(a)の第12床は、再循環ポンプを含むラインを介して、前記第1吸着器(a)の第1床に接続され、第2吸着器(b)の第12床は、前記ポンプとは別個の再循環ポンプを含むラインを介して、前記第2吸着器(b)の第1床に接続され、
以下の工程を更に含む方法:
・単一の蒸留塔内で2つのラフィネートの混合物を蒸留する工程であって、該蒸留塔の塔頂から、パラキシレンがなくなったキシレンの混合物が抜き出され、該蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて再循環させられる、工程;および
・1基または2基の蒸留塔内で2つのエキストラクトを蒸留する工程であって、該蒸留塔の塔頂から実質的に純粋な(すなわち、純度99.7重量%超の)パラキシレンが抜き出され、該蒸留塔の底部から脱着剤が抜き出されて再循環させられる、工程。
【請求項2】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって、各吸着器の12個の床は、以下のように4つのクロマトグラフィー帯域に分配される方法:
・帯域1に2床;
・帯域2に5床;
・帯域3に3床;
・帯域4に2床。
【請求項3】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって、一方の吸着器について、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しており、該吸着器の12個の床は、以下のように4つのクロマトグラフィー帯域に分配され:
・帯域1に2床;
・帯域2に5床;
・帯域3に3床;
・帯域4に2床;
他方の吸着器について、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しておらず、これによりサイクル中の帯域当たりの平均床数が非整数で得られ、該吸着器の帯域当たりの床数は、以下の通りである、方法:
・帯域1に2.5(+または−0.5)床;
・帯域2に4.5(+または−0.5)床;
・帯域3に3.5(+または−0.5)床;
・帯域4に1.5(+または−0.5)床。
【請求項4】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって、各吸着器について、2つの注入口および2つの抜き出し口のシフトは同期しておらず、これによりサイクル中の帯域当たりの平均床数が非整数で得られ、各吸着器における帯域当たりの床数は以下の通りである、方法:
・帯域1に2.5(+または−0.5)床;
・帯域2に4.5(+または−0.5)床;
・帯域3に3.5(+または−0.5)床;
・帯域4に1.5(+または−0.5)床。
【請求項5】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって、2基の吸着器はそれぞれ、プレートPiによって分離された12個の床と、前記流体を順次(sequential)分配および抽出するためにプログラミングされた手段とを含み、プレートPiは、前記流体を分配および/または抽出するための室を有し、流体を分配および抽出するための前記プログラミングされた手段は、各プレートPiについて、供給原料(F)および溶離剤(D)の2つの流体の供給、ならびにエキストラクト(E)およびラフィネート(R)の2つの抜き出しをそれぞれ管理するために、少なくとも4つのプログラミングされた二方開閉弁によって構成される、方法。
【請求項6】
各吸着器は1つのロータリー多方弁を使用し、前記1つのロータリー多方弁は、各吸着器の全プレートにわたって、供給原料(F)の供給、溶離剤(D)の供給、エキストラクト(E)の抜き出し、およびラフィネート(R)の抜き出しを管理する、請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法。
【請求項7】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって、吸着剤固体は、凝集ゼオライト吸着剤固体であり、該凝集ゼオライト吸着剤固体は、小さい、すなわち径2μm以下の結晶のXゼオライトを含み、Xゼオライトは、少なくとも90%がバリウムイオン単独か、バリウムイオンおよびカリウムイオンのいずれかによって交換され、交換可能部位は、バリウムイオン+カリウムイオンによって占められる交換可能部位の1/3以下であるカリウムによって占められ、不活性バインダの割合は15重量%未満である、方法。
【請求項8】
脱着剤はパラジエチルベンゼンである、請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法。
【請求項9】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって:
a) 吸着温度は、100〜250℃の範囲、好ましくは120〜180℃の範囲であって;
b) 吸着圧力は、本方法の温度でのキシレンの気泡点圧力(bubble-point-pressure)と、30×10Paの間の範囲であり;
c) 供給原料に対する脱着剤の流量比は0.7〜2.5の範囲であり;
d) 溶離剤の再循環比は、2.5〜12個の範囲、好ましくは3.5〜6の範囲であり;
e) 吸着器までのサイクル周期(the duration of the cycle followed by the adsorbers)は、14〜30分の範囲、好ましくは18〜23分の範囲の範囲であり;
f) 空の反応器に対する平均線速度は、0.7〜1.4cm/sの範囲、好ましくは0.85〜1.1cm/sの範囲であり;
g) 液相中の含水量は、70〜140重量ppmの範囲、好ましくは80〜120重量ppmの範囲で維持される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載のキシレンの擬似向流分離方法であって、並列に接続された2基の吸着器によって構成される装置は、更に:
・供給原料(F)を供給するためのポンプ(単数または複数)の代わりに用いられる単一のポンプ、および脱着剤(D)を供給するためのポンプ(単数または複数)の代わりに用いられる単一のポンプ;と
・単一の代替再循環ポンプであって、第1吸着器において用いられる再循環ポンプの代わりか、あるいは、第2吸着器において用いられる再循環ポンプの代わりか、のいずれかのために使用され得る、前記単一の代替ポンプ;
とを含む、方法。
【請求項11】
直列に接続された2基の12床吸着器で構成された、24床擬似移動床においてパラキシレンを製造するための方法を、請求項1に記載の方法に適合させる方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする、方法:
a) 第1吸着器(a)の第12床を、少なくとも1つの再循環ポンプ(Pa)を含むラインを介して、前記第1吸着器(a)の第1床に接続する工程と;
b) 第2吸着器(b)の第12床を、少なくとも1つの再循環ポンプ(Pb)を含むラインを介して、前記第2吸着器(b)の第1床に接続する工程と;
c) 供給原料および脱着剤の注入流量と、エキストラクトおよびラフィネートの抜き出し流量とを測定およびレギュレートするためのシステムを適合させ、これによって、2基の吸着器のそれぞれにおいて注入および抜き出しの流量を独立して管理することを可能とする、工程と;
d) 並列に接続された2基の吸着器をコントロールおよびモニタリングできるように、本方法の自動コントロール手段を改変する工程。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1709(P2013−1709A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−135288(P2012−135288)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】