説明

最適経路選択方法、最適経路選択プログラムおよび最適経路選択装置

【課題】伝送方式がそれぞれ異なる複数ドメインを跨いだマルチドメインネットワークにおいて、広帯域が保証されたパスをユーザオンデマンドで提供する。
【解決手段】少なくとも1つのドメイン12−nを有するマルチドメインネットワーク11に於いて、最適経路選択装置20は、処理部30と、ドメイン12−nのドメイン隣接関係情報41とを記憶する記憶部40とを有し、処理部30は、帯域の閾値とドメインの帯域情報とに基いて最適ドメインを選択し、この最適ドメインを優先的に経由するようドメイン間リンクにメトリックを付与し、メトリックとドメイン隣接関係情報41とに基いて候補経路を選択し、この候補経路が複数存在する場合には、この候補経路上に存在するドメイン12−nの帯域情報と帯域利用情報に基いて、最も帯域利用率の高いドメイン12−nを経由する候補経路の除外を繰り返して最適経路を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送方式がそれぞれ異なるドメインから構成されるマルチドメインネットワークに於いて、ユーザの要求帯域および要求品質を保証する最適パス経路を決定する最適経路選択方法、最適経路選択プログラムおよび最適経路選択装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MPLS(Multi-Protocol Label Switching)、Ethernet(登録商標)、SONET(Synchronous Optical NETwork)、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)、OTN(Optical Transport Network)などの各種伝送方式に関する研究開発が盛んに進められている。各ドメインは、各運用サービスに対応した伝送方式を用いて構築され、即ち、マルチテクノロジ化が進んでいる。これらの伝送方式を用いた、ユーザオンデマンドに対応した、複数の異なる伝送方式ドメインに跨ったパスの自動的な最適経路設定が必要である。
【0003】
非特許文献1には、それぞれ異なる伝送方式を用いて構築されたドメイン内に於いて、最適パスの設定やトポロジ情報の収集などを行う技術が記載されている。非特許文献1に記載の技術により、それぞれ異なる伝送方式を用いた複数のドメインで、トポロジ情報やトラヒック情報の収集、およびパス確立が自動的に実現可能である。
【0004】
非特許文献2には、2個のASON(Automatic Switched Optical Networks)のネットワークドメインと、5個のGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)ネットワークドメインとを継ぎ目なく伝送した実証結果が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】塩本公平、「GMPLSの概要と標準化動向」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2004年4月、p.60-63
【非特許文献2】S. Okamoto, T. Otani, Y. Sone, W. Imajuku, K. Ogaki, M. Miyazawa, I. Nishioka, K. Miyazaki, A. Nagata, S. Seno, D. Ishii, S. Okamoto, N. Arai, and H. Otsuki、"Field Trial of Signaling Interworking of Multi-Carrier ASON/GMPLS Network Domains"、in Optical Fiber Communication Conference and Exposition and The National Fiber Optic Engineers Conference Technical Digest (CD)、Optical Society of America, 、2006、paper PDP47.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の技術は、様々な伝送方式による伝送装置を用いて構築されたドメイン内でのパスの最適経路設定には有効である。しかし、ドメイン間でのパス設定に関しては、単一の伝送方式を用いたドメイン間で、自動的なパスの最適経路設定の実証実験は行われているものの、それぞれ異なった伝送方式を用いたドメイン間での自動的なパスの最適経路決定技術は未だ確立されていない。
【0007】
マルチテクノロジ環境下でEnd-to-Endのパスを設定するにあたり、ユーザおよびネットワーク管理者の要求を満たし、かつ、効率的な網リソース利用を実現する最適ドメイン選択制御が必要である。ユーザの要求は、例えば、遅延や帯域確保といったQuality of Service(QoS)の向上である。ネットワーク管理者の要求は、例えば、マルチドメインネットワークに於いて、ドメイン間での負荷分散によるネットワークリソースの効率的な利用と、パス設定制御の自動化である。これらの要求を満足たすか否かは、各ドメインが適用している伝送方式の性質に依存する。
【0008】
そこで、本発明は、伝送方式がそれぞれ異なる複数ドメインを跨いだマルチドメインネットワークにおいて、広帯域が保証されたパスをユーザオンデマンドで提供することを実現する最適経路選択方法、最適経路選択プログラムおよび最適経路選択装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、少なくとも1つのドメインを有するマルチドメインネットワークの最適経路を選択する最適経路選択装置が行う最適経路選択方法であって、前記最適経路選択装置は、処理部と、前記ドメインのトポロジ情報と帯域情報と帯域利用情報とを記憶する記憶部とを有し、前記処理部は、前記ドメインの未使用帯域が出ないよう帯域の閾値を決定し、前記帯域の閾値と前記ドメインの前記帯域情報とに基いて最適ドメインを選択し、前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与し、前記リンクメトリックと前記トポロジ情報とに基いて、経路計算法を用いてリンクメトリックが最小となる候補経路を選択し、前記候補経路が複数存在する場合には、前記候補経路上に存在する前記ドメインの前記帯域情報と前記帯域利用情報に基いて、最も帯域利用率の高いドメインを経由する候補経路の除外を繰り返して、前記最適経路を決定することを特徴とする最適経路選択方法とした。
【0010】
請求項6に記載の発明は、少なくとも1つのドメインを有するマルチドメインネットワークの最適経路を選択する最適経路選択装置であって、前記最適経路選択装置は、前記ドメインのトポロジ情報と帯域情報と帯域利用情報とを記憶する記憶部と、処理部とを有しており、前記処理部は、ユーザからの要求帯域と前記ドメインの前記帯域情報とに基いて最適ドメインを選択し、前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与し、前記リンクメトリックと前記トポロジ情報とに基いて、経路計算法を用いてリンクメトリックが最小となる候補経路を選択し、前記候補経路が複数存在する場合には、前記候補経路上に存在する前記ドメインの前記帯域情報と前記帯域利用情報に基いて、最も帯域利用率の高いドメインを経由する候補経路の除外を繰り返して、前記最適経路を決定することを特徴とする最適経路選択装置とした。
【0011】
このようにすることで、本発明に係る最適経路選択方法および最適経路選択装置によれば、ユーザからの要求帯域と前記ドメインの前記帯域情報とに基いて最適ドメインを選択し、前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにメトリックを付与しているので、伝送方式がそれぞれ異なるドメインから構成されるマルチドメインネットワークにおいてパスを決定する際に、ユーザからの帯域要求を満足することが可能である。更に、各ドメイン伝送帯域とトラヒック収容効率を考慮してトラヒックの流入先を割り振っているので、ネットワーク利用効率の最適化、およびマルチドメインネットワークに於いて、各ドメインに負荷を分散させることが可能である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ドメインは、波長リンクドメインと非波長リンクドメインとがあり、前記処理部は、前記マルチドメインネットワークに含まれる前記波長リンクドメインの波長帯域に基いて帯域の閾値を決定し、ユーザの要求帯域が前記帯域の閾値を超えているとき、前記波長リンクドメインを前記最適ドメインとして選択し、前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与することを特徴とする請求項1に記載の最適経路選択方法とした。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記ドメインは、波長リンクドメインと非波長リンクドメインとがあり、前記処理部は、前記マルチドメインネットワークに含まれる前記波長リンクドメインの波長帯域に基いて帯域の閾値を決定し、ユーザの要求帯域が前記帯域の閾値を超えているとき、前記波長リンクドメインを前記最適ドメインとして選択し、前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与することを特徴とする請求項6に記載の最適経路選択装置とした。
【0014】
このようにすることで、本発明に係る最適経路選択方法および最適経路選択装置によれば、前記マルチドメインネットワークに含まれる前記波長リンクドメインの波長帯域に基いて帯域の閾値を決定し、ユーザの要求帯域が前記帯域の閾値を超えているとき、前記波長リンクドメインを前記最適ドメインとして選択しているので、波長リンクドメインの波長帯域を有効に使用することが可能である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記最適ドメインに付随するリンクの前記リンクメトリックは小さく設定し、その他のリンクの前記リンクメトリックは大きく設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の最適経路選択方法とした。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記最適ドメインに付随するリンクの前記リンクメトリックは小さく設定し、その他のリンクの前記リンクメトリックは大きく設定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の最適経路選択装置とした。
【0017】
このようにすることで、本発明に係る最適経路選択方法および最適経路選択装置によれば、メトリックとネットワーク構成情報とに基いて候補経路を選択しているので、メトリックが最大化する経路を選択することによって、候補経路を選択可能である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記経路計算法は、ダイクストラ法、ベルマン−フォード法、ワーシャル−フロイド法のいずれか1つであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の最適経路選択方法とした。
【0019】
このようにすることで、本発明に係る最適経路選択方法によれば、上記の経路計算法によって候補経路を計算することが可能である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の最適経路選択方法を、前記最適経路選択装置の前記処理部であるコンピュータに行わせるための最適経路選択プログラムとした。
【0021】
このようにすることで、本発明に係る最適経路選択プログラムによれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の最適経路選択方法を、前記最適経路選択装置の前記処理部に行わせることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、伝送方式がそれぞれ異なる複数ドメインを跨いだマルチドメインネットワークにおいて、広帯域が保証されたパスをユーザオンデマンドで提供することを実現する最適経路選択方法、最適経路選択プログラムおよび最適経路選択装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に於ける最適経路選択システムを示す概略の構成図である。
【図2】第1の実施形態に於ける最適経路選択装置を示す概略の構成図である。
【図3】第1の実施形態に於けるドメイン隣接関係情報の例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に於けるドメイン情報の例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に於けるネットワークリソース利用情報の例を示す図である。
【図6】第1の実施形態に於けるパス情報の例を示す図である。
【図7】第1の実施形態に於けるパス伝送品質情報の例を示す図である。
【図8】第1の実施形態に於ける最適経路選択装置の処理を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態に於けるIP/MPLS/TDMとWDMの相違を示す図である。
【図10】第1の実施形態に於ける閾値と最適経路との関係を示す図である。
【図11】第2の実施形態に於ける最適経路選択システムを示す概略の構成図である。
【図12】第2の実施形態に於ける経路設定装置を示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以降、本発明を実施するための形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態に於ける最適経路選択システムを示す概略の構成図である。
最適経路選択システム10は、マルチドメインネットワーク11と、最適経路選択装置20と、トポロジ情報管理装置50と、ネットワーク性能情報管理装置60とを有している。最適経路選択装置20と、トポロジ情報管理装置50と、ネットワーク性能情報管理装置60とは、それぞれの機能を有するプログラムが動作しているサーバである。
【0026】
マルチドメインネットワーク11は、ドメイン#1(12−1)〜ドメイン#4(12−4)を備えている。ドメイン#1(12−1)は、それぞれ、経路設定装置21−1と、トポロジ情報収集装置51−1と、ネットワーク性能情報測定装置61−1と、複数の通信装置13とを具備している。ドメイン#2(12−2)は、それぞれ、経路設定装置21−2と、トポロジ情報収集装置51−2と、ネットワーク性能情報測定装置61−2と、複数の通信装置13とを具備している。ドメイン#3(12−3)は、それぞれ、経路設定装置21−3と、トポロジ情報収集装置51−3と、ネットワーク性能情報測定装置61−3と、複数の通信装置13とを具備している。ドメイン#4(12−4)は、それぞれ、経路設定装置21−4と、トポロジ情報収集装置51−4と、ネットワーク性能情報測定装置61−4と、複数の通信装置13とを具備している。経路設定装置21−1〜21−4と、トポロジ情報収集装置51−1〜51−4と、ネットワーク性能情報測定装置61−1〜61−4とは、それぞれの機能を有するプログラムが動作しているサーバである。
【0027】
以下に、ドメイン#1(12−1)を説明する。ドメイン#2(12−2)〜ドメイン#4(12−4)は、ドメイン#1(12−1)と同様の構成を有しているため、説明を省略する。
【0028】
通信装置13は、例えば、ルータ、Layer 2 Switch、Layer 3 Switch、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置、SONET(Synchronous Optical Network)装置やSDH(Synchronous Digital Hierarchy)装置などに代表される時分割スイッチ、OXC(Optical Cross-Connect)装置やPXC(Photonic Cross-Connect)装置などに代表される波長または波長群スイッチ、交換機などである。
【0029】
複数の通信装置13は、ドメイン#1(12−1)の内部で相互に通信可能に接続されていると共に、それぞれトポロジ情報収集装置51−1と、ネットワーク性能情報測定装置61−1と通信可能に接続されている。経路設定装置21−1は、ドメイン#1(12−1)の1つの通信装置13と通信可能に接続されている。
【0030】
経路設定装置21−1は、最適経路選択装置20と通信可能に接続されている。トポロジ情報収集装置51−1は、トポロジ情報管理装置50と通信可能に接続されている。ネットワーク性能情報測定装置61−1は、ネットワーク性能情報管理装置60と通信可能に接続されている。
【0031】
最適経路選択装置20は、トポロジ情報管理装置50とネットワーク性能情報管理装置60とから周期的にパス計算に必要な情報を収集し、それらの情報とユーザ要求(帯域・品質)を基に経路計算を行う。最適経路選択装置20は、この経路計算の結果をパス設定指示情報として、各ドメイン内に配備されている経路設定装置21−1〜21−4に対して出力する。各経路設定装置21−1〜21−4は、それぞれ受信したパス設定指示情報を基に自ドメインの通信装置13に対して経路設定を行う。
【0032】
ドメイン#1(12−1)が具備しているトポロジ情報収集装置51−1は、ドメイン#1(12−1)の内部のトポロジ情報と、伝送方式と、帯域などの情報を周期的に収集する。トポロジ情報収集装置51−1は更に、ドメイン#1(12−1)と接続されている他のドメイン#2(12−2)〜ドメイン#4(12−4)との接続のトポロジ情報を収集する。以下、ドメイン#1(12−1)のトポロジ情報とは、ドメイン#1(12−1)内部のトポロジ情報と、ドメイン#1(12−1)と他のドメインとの間の接続のトポロジ情報の両方を指すものとする。トポロジ情報収集装置51−2〜51−4も同様に、ドメイン#2(12−2)〜ドメイン#4(12−4)のトポロジ情報と、伝送方式と、帯域などの情報を、それぞれ周期的に収集する。
【0033】
ドメイン#1(12−1)が具備しているネットワーク性能情報測定装置61−1は、ドメイン#1(12−1)のネットワーク性能情報(リソース利用状況など)を周期的に収集する。ネットワーク性能情報測定装置61−2〜61−4も同様に、ドメイン#2(12−2)〜ドメイン#4(12−4)のネットワーク性能情報(リソース利用状況など)を、それぞれ周期的に収集する。
【0034】
収集データを、トポロジ情報収集装置51−1はトポロジ情報管理装置50へ、ネットワーク性能情報測定装置61−1はネットワーク性能情報管理装置60へ登録し、データを取得したトポロジ情報管理装置50およびネットワーク性能情報管理装置60は、自ら保持する記憶情報の更新処理を行う。
【0035】
通信装置y1から通信装置y2へパスを設定したい場合、パスの始点ノードとなる通信装置y1が属するドメイン#1(12−1)に配備されている経路設定装置21−1が、ユーザあるいはユーザからの要求を受け付けた装置などからパス設定要求を受ける。要求を受け付けた経路設定装置21−1は、最適経路選択装置20に対して経路計算要求を出力する。要求を受け付けた最適経路選択装置20は、経路計算を実施した結果、ドメイン#2(12−2)、ドメイン#4(12−4)を経由するパスを決定したとする。この結果を受けて、最適経路選択装置20は、パス経路上に存在するドメイン#2(12−2)、ドメイン#4(12−4)の経路設定装置21−2,21−4に対して、決定結果をパス設定指示情報として出力する。
【0036】
ただし、パス設定指示情報にはドメイン内の経路設定に関する情報は含まれなくても良い。含まれない場合は、ドメイン内の経路は、各々のドメインに於いて決定されるものとする。
【0037】
図2は、第1の実施形態に於ける最適経路選択装置を示す概略の構成図である。
最適経路選択装置20は、入出力部22と、通信部23と、処理部30と、記憶部40とを具えている。
入出力部22は、最適経路選択装置20に接続されるキーボードやマウスなどの図示しない入力装置と、液晶モニタなどの図示しない出力装置と、通信用ケーブルなどが接続可能なインタフェースである。
【0038】
通信部23は、各ドメインに配備されている経路設定装置21−1〜21−4、経路計算に必要な情報を保持するトポロジ情報管理装置50、ネットワーク性能情報管理装置60などと通信するときの通信インタフェースである。最適経路選択装置20は、通信部23を介して、トポロジ情報やネットワーク性能情報の更新情報を取得し、パス設定指示情報を経路設定装置21−1〜21−4へ出力する。
処理部30は、パス設定要求受付・応答部31、情報収集部32、閾値設定部33、経路計算部34、およびパス設定指示部35を有している。
【0039】
パス設定要求受付・応答部31は、ユーザあるいはユーザからの要求を受け付けた装置からの経路計算要求を受け付け、要求メッセージの受信に対するパス設定可否応答を返す。ユーザからの要求を受け付けた装置の例は、パスの始点ノードが属するドメイン#n(12−n)(但し、nは自然数)に配備されている経路設定装置21−nである。
【0040】
情報収集部32は、経路計算に必要な各ドメインのトポロジ情報やネットワーク性能情報などを、トポロジ情報管理装置50およびネットワーク性能情報管理装置60から収集する。
【0041】
閾値設定部33は、伝送方式がドメイン毎に異なるマルチドメインネットワーク11において、ユーザからの要求帯域を満足し、かつ、ドメインの単位リンク当たりの帯域消費が効率的なドメイン、すなわち「最適ドメイン」を決定するための帯域の閾値を設定する。帯域の閾値は、その変動要因が、過去の経験値に基づく各ドメインの単位リンク当たりの運用コストの最適化や、単位リンク当たりの帯域利用効率の最適化、などを目的として決定する。
【0042】
経路計算部34は、パスの始点ノードと終点ノードをつなぐパスの経路の計算を行う。まず、閾値設定部33で設定された帯域の閾値とユーザの要求帯域を参照し、最適ドメインを決定する。その後、最適ドメインを優先的に経由するようにリンクメトリックを付与していく。パスの経路は、決定されたリンクメトリックに基づき、パスの始点ノードから終点ノードまでリンクメトリック値が最小の経路を算出する。そのため、リンクメトリックは最適ドメインに接続するリンクのメトリックを優先的に小さく設定する。このとき、リンクメトリックは、過去の経験値、各ドメインの単位リンク当たりの運用コスト、ユーザの要求帯域の逆数、マルチドメインネットワーク11の規模、などの情報を考慮して決定する。そしてその際、パスの始点ノードから終点ノードまでのリンクメトリック値が同値のパスの経路候補が複数存在する場合は、経路計算部34に於いて、経路を構成するリンクを保持する各ドメインのネットワーク利用状況を踏まえて1つの候補経路に絞り込み、パスの経路として決定する。
【0043】
パス設定指示部35は、経路計算部34によって決定されたパスの経路に沿って、パス設定指示情報を、パスの経路を構成するドメイン#n(12−n)に配備されている経路設定装置21−nに出力する。
【0044】
記憶部40は、ドメイン隣接関係情報41、ドメイン情報42、ネットワークリソース利用情報43、パス情報44、および、パス伝送品質情報45を記憶している。また、記憶部40は、処理部30が機能するためのアプリケーションプログラムと、各ドメイン内に設置されるノードの識別情報とを記憶している。記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置によって実現される。
【0045】
ドメイン隣接関係情報41は、パスの始点と終点の決定、および、経路の決定に必須の情報であり、マルチドメインネットワーク11におけるドメインの隣接関係についての情報を記憶している。ドメイン隣接関係情報41は、ドメイン間の接続のトポロジ情報である。後述する図3に、ドメイン隣接関係情報41の例を示す。
【0046】
ドメイン情報42は、パスの始点と終点の決定、および、経路の決定に必須の情報であり、各ドメインの伝送方式を示す伝送方式情報、ドメインの帯域を示すリソース情報を含む情報を記憶している。なお、これらの情報は、各ドメイン固有の定常的な情報である。後述する図4に、ドメイン情報42の例を示す。
【0047】
ネットワークリソース利用情報43は、経路の決定に必要な情報であり、ドメインを構成するネットワークリソース利用状況を示す情報を記憶している。ネットワークリソース利用情報43は、通信部23を介してネットワーク性能情報管理装置60から周期的に収集される。ネットワークリソース利用情報43は、経路計算部34に於いてリンクメトリック値が最小となるパスを算出し、リンクメトリック値が同値の経路候補が複数存在する場合に於いて、複数の候補経路の中から、1つの候補経路に絞り込む際に用いられる。後述する図5に、ネットワークリソース利用情報43の例を示す。ネットワークリソース利用情報43は、各ドメインにおいて、時間と共に変動し、更新される動的な情報である。
パス情報44は、経路計算部34において算出されたパスの全候補経路に関わる情報を記録したものである。後述する図6に、パス情報44の例を示す。
【0048】
パス伝送品質情報45は、パス情報44の内容に関連して、マルチドメインネットワーク11上のパスの全候補経路の伝送品質情報を記憶している。パス伝送品質情報45を構成する要素として、パスの始点から終点までの間に於ける遅延や遅延ゆらぎなどがある。パス伝送品質情報45は、設定するパスについて、ユーザから品質要求があった場合に、算出されたパスの経路がユーザの要求品質を満足しているか否かを確認する際に用いられる。後述する図7に、パス伝送品質情報45の例を示している。
【0049】
図3は、第1の実施形態に於けるドメイン隣接関係情報の例を示す図である。
ドメイン隣接関係情報41は、ドメインID(IDentifier)41aの項目と、隣接ドメインIDリスト41bの項目とを有している。
ドメインID41aの項目には、各ドメインの識別子が格納されている。
隣接ドメインIDリスト41bの項目には、ドメインID41aで示されるドメイン#n(12−n)と隣接しているドメインの識別子のリストが格納されている。
【0050】
図4は、第1の実施形態に於けるドメイン情報の例を示す図である。
ドメイン情報42は、ドメインID42aの項目と、伝送方式情報42bの項目と、リソース情報42cの項目とを有している。
ドメインID42aの項目には、各ドメインの識別子が格納されている。
伝送方式情報42bの項目には、各ドメインの伝送方式を示す情報が格納されている。なお、WDMは波長分割多重方式を意味する情報である。TDM(Time Division Multiplexing)は、時分割多重方式を意味する情報である。
リソース情報42cの項目には、各ドメインの帯域を示す情報が格納されている。
【0051】
図5は、第1の実施形態に於けるネットワークリソース利用情報の例を示す図である。
ネットワークリソース利用情報43は、ドメインID43aの項目と、リソース利用状況43bの項目とを有している。
ドメインID42aの項目には、各ドメインの識別子が格納されている。
リソース利用状況43bの項目には、ドメインの帯域利用状況を示す情報が格納されている。このネットワークリソース利用情報43は、通信部23を介してネットワーク性能情報管理装置60から周期的に収集される。経路計算部34は、リンクメトリック値が等しい候補経路が複数存在する場合に、ネットワークリソース利用情報43に基いて、1つの候補経路に絞り込む。
【0052】
図6は、第1の実施形態に於けるパス情報の例を示す図である。
パス情報44は、パスID44aの項目と、始点ノードID44bの項目と、始点ノードIF_ID(InterFace Identifier)44cの項目と、終点ノードID44dの項目と、終点ノードIF_ID44eの項目と、経由ドメインIDリスト44fの項目と、メトリック値44gの項目と、フラグ44hの項目とを有している。
パスID44aの項目には、経路計算部34において算出されたパスの候補経路の識別子が格納されている。
始点ノードID44bの項目には、このパスの始点ノードの情報が格納されている。
始点ノードIF_ID44cの項目には、このパスの始点ノードのインタフェース番号の情報が格納されている。
終点ノードID44dの項目には、このパスの終点ノードの情報が格納されている。
終点ノードIF_ID44eの項目には、このパスの終点ノードのインタフェース番号の情報が格納されている。
経由ドメインIDリスト44fの項目には、このパスが経由しているドメインの識別子のリストが格納されている。
メトリック値44gの項目には、このパスのメトリック値が格納されている。
フラグ44hの項目は、このパスが最適パスであるか否かを示す情報が格納されている。フラグ44hの項目に“1”が格納されているパスは、最適パスである。
【0053】
図7は、第1の実施形態に於けるパス伝送品質情報の例を示す図である。
パス伝送品質情報45は、パスID45aの項目と、遅延45bの項目と、遅延ゆらぎ45cの項目とを有している。遅延45bの項目と、遅延ゆらぎ45cの項目とは、伝送品質情報の項目である。
遅延45bの項目には、パスの地点間での伝送遅延を[msec]単位で示した情報が格納されている。
遅延ゆらぎ45cの項目には、パスの地点間での伝送遅延のゆらぎを[msec]単位で示した情報が格納されている。
【0054】
(第1の実施形態の動作)
図8は、第1の実施形態に於ける最適経路選択装置の処理を示すフローチャートである。
最初に、ユーザからの要求を受け付ける装置、例えば、パスの始点ノードを持つドメインに配備された経路設定装置21−nは、入出力部22を介して、パス設定要求を受け付ける。パス設定要求には、パスの端点となるノードまたはインタフェースID、パス帯域、およびユーザの要求次第ではパスの要求品質を含む情報、などが含まれる。このパス設定要求は、マルチドメインネットワーク11を利用するユーザ、またはネットワーク運営管理者によって入力される。最適経路選択装置20は、通信部23を介して、処理部30のパス設定要求受付・応答部31に於いて、ユーザからのパス確立要求を受けた経路設定装置21−nからのパス設定要求を受け付けて、経路設定装置21−nに応答を返す。
なお、最適経路選択装置20は、自らの入出力部22を介して、バス設定要求を直接に受け付ける場合もある。
【0055】
パス設定要求を受けた最適経路選択装置20の閾値設定部33は、処理を開始し、ステップS10に於いて、パスの要求帯域に対して最適なドメインを選択するための帯域の閾値を設定する。
【0056】
具体的には、閾値設定部33は、ドメインID41aの項目と隣接ドメインIDリスト41bの項目とを有するドメイン隣接関係情報41(図3)を介して、パスの端点ノード(=始点ノードと終点ノード)それぞれが含まれるドメイン間に存在する全ドメインを参照する。閾値設定部33は更に、各当該ドメインのドメインIDを用いてドメイン情報42(図4)の伝送方式情報42bとリソース情報42cを参照する。閾値設定部33は、これらの情報を基に単位リンク当たりの帯域利用効率の最適化や単位リンク当たりの運用コストの最適化、などの目的関数の最適化の少なくともいずれかを実現する最適ドメインを導出するため適切な帯域の閾値を設定する。
【0057】
具体的には、単位リンク当たりの帯域利用効率の最適化とは、各ドメインの帯域粒度の単位で未使用帯域が極力出ないように考慮することである。単位リンク当たりの運用コストの最適化とは、比較的運用コストの高い伝送方式のドメインにフローが集中しないように考慮することである。帯域の閾値は、トポロジ情報管理装置50から取得した各ドメインのリソース情報42cと過去の経験値を基に設定される。なお、この帯域の閾値は、パス設定要求を受け付ける前に設定しておいても良い。
ステップS11に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、この帯域の閾値とパスの要求帯域とを比較して、最適ドメインを決定する。
【0058】
ステップS12に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、最適ドメインを優先的に経由するように各ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与する。
【0059】
ステップS13に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、このリンクメトリックと各ドメイン隣接関係情報41(接続トポロジ)とに基いて、経路計算法(本実施形態では、Dijkstraアルゴリズム(ダイクストラ法))を用いて、リンクメトリック最小の経路をパスの経路として算出する。算出されたパスの経路は、記憶部40のパス情報44(図6)に記憶される。なお、経路計算部34では、ドメインを跨ぐ経路、またはドメイン内の設定を含む経路のいずれも算出可能である。
【0060】
パス情報44(図6)に示すように、リンクメトリック値が等しい、パスの候補となる経路が複数存在する場合には、経路上に存在する各ドメインのネットワーク性能情報を参照し、利用状況が最も高いドメインを経由する経路を除外していき、一意に決定する。ネットワーク性能情報の例として、ネットワークリソース利用状況がある。各ドメインのリソース利用状況は、記憶部40のネットワークリソース利用情報43(図5)を参照し、判定していく。
【0061】
ステップS14に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、パス候補経路が複数存在しているか否かを判断する。パス候補経路が複数存在していないならば(No)、ステップS16の処理を行う。パス候補経路が複数存在していたならば(Yes)、ステップS15の処理を行う。
【0062】
ステップS15に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、利用状況が最も高いドメインを経由するパス候補経路を除外し、ステップS14の処理に戻る。
【0063】
図5および図6を基に、ステップS14〜S15の処理を説明する。例えば、パス情報44(図6参照)に記憶されている各経路候補について、各経路候補が経由するドメインのリソース利用率をネットワークリソース利用情報43(図5)で参照した結果、候補経路ID2が経由するドメインIDのリソース利用状況が最も高かった場合、候補経路ID2は候補から除外される。同様の動作を、最終的にパスの候補経路が一意に決定されるまで繰り返す。決定されたパスの経路には、決定されたことを示すため、フラグ44hの項目に1が格納される。処理部30のパス設定指示部35は、パス情報44のフラグ44hの項目を参照し、この項目に“1”が格納されているパスを、パス設定指示情報とする。
【0064】
ステップS16に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、設定するパスについてユーザからの品質要求の有無を判断する。ユーザからの品質要求が無かったならば(No)、ステップS19の処理を行う。ユーザからの品質要求が有ったならば(Yes)、ステップS17の処理を行う。
【0065】
ステップS17に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、パス候補経路がユーザからの品質要求を満たしているか否かを判断する。パス候補経路がユーザからの品質要求を満たしているならば(Yes)、ステップS19の処理を行う。パス候補経路がユーザからの品質要求を満たしていないならば(No)、ステップS18の処理を行う。
ステップS18に於いて、最適経路選択装置20の経路計算部34は、次候補のパスを再選択し、ステップS17の処理に戻る。
【0066】
ステップS19に於いて、最適経路選択装置20のパス設定指示部35は、決定したパス経路に関する情報をパス設定指示情報として、パス経路に含まれる各ドメインに配備された経路設定装置21−nに対して出力する。
パス確立の確認方法例としては、通信装置13間でのシグナリングの応答メッセージが、パスの始点ノードで確認できること、などが挙げられる。
【0067】
ステップS20に於いて、最適経路選択装置20の処理部30は、記憶部40に記憶されている各情報の更新を行う。更新されるのは、主に、ネットワークリソース利用情報43に格納されている、リンクの残余帯域情報や各リンクの利用状況情報である。
パス確立後、最適経路選択装置20の処理部30は、入出力部22を介して、ユーザに設定結果を出力し、図8の処理を終了する。
【0068】
図9は、第1の実施形態に於けるIP/MPLS/TDMとWDMの相違を示す図である。
このマルチドメインネットワーク11Aは、ドメイン12a−1〜12a−3を有している。ユーザ端末14−1は、ドメイン12a−1とドメイン12a−2とに接続されている。ドメイン12a−1は、ドメイン12a−3に接続されている。ドメイン12a−2は、ドメイン12a−3に接続されている。ドメイン12a−1の伝送方式は、IP(Internet Protocol)、MPLS、TDMの何れかである。
【0069】
IP、MPLS、TDMのいずれか1つの伝送方式をとるドメイン12a−1では、各リンクに於いてタイムスロットごとに通信が行われる。例えば、帯域1Gbpsの波長リンクに対して、300Mbpsの要求帯域と、400Mbpsの要求帯域と、100Mbpsの要求帯域とを其々積み重ねて、合計800Mbpsの帯域を利用可能である。IP、MPLS、TDMの伝送方式をとるドメイン12a−nは、非波長リンクドメインである。
【0070】
ドメイン12a−2の伝送方式は、WDM、FSC(Fiber Switch Capability)の何れかである。
WDM、FSCの伝送方式をとるドメイン12a−2では、各リンクに於いて要求帯域分を波長単位で消費する。例えば、帯域1Gbpsの波長リンクに対して、使用帯域が300Mbpsであっても、800Mbpsであっても、同様に波長リンク1本分が消費されてしまう。WDM、FSCの伝送方式をとるドメイン12a−2は、波長リンクドメインである。
【0071】
図10(a)〜(d)は、第1の実施形態に於ける閾値と最適経路との関係を示す図である。
【0072】
図10(a)は、ユーザの要求帯域が帯域の閾値を超えている場合を示している。
【0073】
WDMのドメイン12a−nのLinkが帯域1Gbpsの波長リンクを有している。帯域の閾値は、0.5Gbpsである。ユーザの要求帯域は、800Mbpsであり、閾値を超えていることを示している。
【0074】
図10(b)は、ユーザの要求帯域が帯域の閾値を超えているときの最適経路を示している。
マルチドメインネットワーク11Aは、ドメイン12a−1〜12a−10を有している。
ユーザ端末14−1は、ドメイン12a−1,12a−2に接続されている。
ドメイン12a−1は、ユーザ端末14−1と、ドメイン12a−3,12a−4とに接続されている。
ドメイン12a−2は、ユーザ端末14−1と、ドメイン12a−3,12a−5とに接続されている。
ドメイン12a−3は、ドメイン12a−1,12a−2,12a−4,12a−5に接続されている。
ドメイン12a−4は、ドメイン12a−1,12a−3,12a−6,12a−8に接続されている。
ドメイン12a−5は、ドメイン12a−2,12a−3,12a−6,12a−7に接続されている。
ドメイン12a−6は、ドメイン12a−4,12a−5,12a−7に接続されている。
ドメイン12a−7は、ドメイン12a−5,12a−6,12a−8,12a−9に接続されている。
ドメイン12a−8は、ドメイン12a−4,12a−7,12a−10に接続されている。
ドメイン12a−9は、ドメイン12a−7と、ユーザ端末14−2とに接続されている。
ドメイン12a−10は、ドメイン12a−8と、ユーザ端末14−2とに接続されている。
ユーザ端末14−2は、ドメイン12a−9,12a−10に接続されている。
【0075】
白抜きの楕円で示されているドメイン12a−1,12a−3,12a−4,12a−5,12a−9,12a−10は、TDMの伝送形式である帯域1Gbpsのリンクを有している。
【0076】
灰色の楕円で示されているドメイン12a−2,12a−6,12a−7,12a−8は、WDMの伝送形式である帯域1Gbpsのリンクを有している。このとき、帯域の閾値は、WDMの伝送形式のドメインの帯域1Gbpsの半分である0.5Gbpsである。
【0077】
この場合に於ける最適経路は、ユーザ端末14−1を始点として、ドメイン12a−2,12a−5,12a−7,12a−9を介して、終点のユーザ端末14−2に至る経路である。
【0078】
ユーザの要求帯域は、800Mbpsであり、帯域の閾値を超えているので、最適経路は、WDMの伝送方式のドメイン12a−2,12a−6,12a−7などを経路に含んでいる。
【0079】
図10(c)は、ユーザの要求帯域が、帯域の閾値以下である場合を示している。
WDMのドメイン12a−nのLinkが帯域1Gbpsの波長リンクを有している。本実施形態の帯域の閾値は、波長リンクドメインの帯域の0.5倍である0.5Gbpsである。ユーザの要求帯域は、300Mbpsであり、帯域の閾値以下である。
本実施形態の帯域の閾値は、波長リンクドメインの帯域の0.5倍である。しかし、これに限られず、波長リンクドメインの帯域に0から1の間の任意の係数を掛けたものを帯域の閾値としても良い。
【0080】
図10(d)は、ユーザの要求帯域が、帯域の閾値以下であるときの最適経路を示している。
図10(d)に示すマルチドメインネットワーク11Aは、図10(b)に示すマルチドメインネットワーク11Aと同様の構成を有している。
ユーザの要求帯域は帯域の閾値以下なので、最適経路は、WDMの伝送方式であるドメインをできるだけ含まないものとなる。
【0081】
この場合に於ける最適経路は、ユーザ端末14−1を始点として、ドメイン12a−1,12a−4,12a−8,12a−10を介して、終点のユーザ端末14−2に至る経路である。
【0082】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A)〜(C)のような効果がある。
(A) 第1実施形態の最適経路選択装置20によれば、ユーザが要求する帯域と、マルチドメインネットワーク11の各ドメインの伝送帯域を考慮しているので、伝送方式がそれぞれ異なるドメインから構成されるマルチドメインネットワーク11においてパスを決定する際に、ユーザからの帯域要求を満足することが可能である。
【0083】
(B) 各ドメイン伝送帯域とトラヒック収容効率を考慮してトラヒックの流入先を割り振っているので、ネットワーク利用効率の最適化、および、マルチドメインネットワーク11に於いて、各ドメインに負荷を分散させることが可能である。
【0084】
(C) マルチドメインネットワーク11Aに含まれる波長リンクドメインの波長帯域に基いて帯域の閾値を決定し、ユーザの要求帯域が前記帯域の閾値を超えているとき、波長リンクドメインを最適ドメインとして選択しているので、波長リンクドメインの波長帯域を有効に使用することが可能である。
(第2の実施形態の構成)
【0085】
図11は、第2の実施形態に於ける最適経路選択システムを示す概略の構成図である。図1に示す第1の実施形態の最適経路選択システム10と同一の要素には同一の符号を付与している。
【0086】
第2の実施形態の最適経路選択システム10Aは、第1の実施形態の最適経路選択システム10とは異なる経路設定装置21A−1〜21A−4を有し、かつ、最適経路選択装置20を有していない他は、第1の実施形態の最適経路選択システム10と同様の構成を有している。
【0087】
第2実施形態の最適経路選択システム10Aでは、第1実施形態の最適経路選択システム10に於ける最適経路選択装置20の機能は、ドメイン#1(12−1)〜ドメイン#4(12−4)に配備された経路設定装置21A−1〜21A−4の機能として実現されている。
【0088】
また、最適経路選択システム10Aに於ける経路設定装置21A−1〜21A−4の処理は、図8に示す第1の実施形態の最適経路選択装置20の処理と同様である。
【0089】
図12は、第2の実施形態に於ける経路設定装置を示す概略の構成図である。図2に示す第1の実施形態の最適経路選択装置20と同一の要素には同一の符号を付与している。
第2の実施形態の経路設定装置21−nは、第1の実施形態の最適経路選択装置20と同様の構成を有している。
(第2の実施形態の動作)
【0090】
ユーザからのパス設定要求は、このパスの始点ノードとなる通信装置13が属するドメインに配備されている経路設定装置21−nに受け付けられる。この経路設定装置21−nは、記憶部40のドメイン情報42から経路計算に必要な情報を参照し、その情報とユーザからの要求帯域を基に経路計算を行い、パス経路を算出する。リンクメトリック値が等しいパス候補経路が複数存在する場合は、これらの経路上に存在する当該ドメインのネットワーク性能情報を参照し、利用状況が最も高いドメインを経由する経路を1つずつ除外することにより、パス経路を一意に決定する。
【0091】
決定したパス経路は、記憶部40のパス情報44が有するフラグ44hの項目に“1”が付与される。経路設定装置21−nは、通信部23を介して、RSVP-TE(Resource reSerVation Protocol-Traffic Engineering)などのシグナリングプロトコルを用いて、パスの経路上に存在するドメインの経路設定装置21−p〜21−q(p,qは自然数)に対して、それぞれパス設定指示情報を出力し、ユーザが指定した始点ノード〜終点ノードまでの間にパスを確立する。
【0092】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(D),(E)のような効果がある。
(D) 第2実施形態の経路設定装置21−nによれば、第1実施形態の最適経路選択装置20と同様に、ユーザからの帯域要求を満足し、ネットワーク利用効率の最適化、および、ドメイン間負荷分散の実現するパスの設定が期待できる。
【0093】
(E) 第2実施形態の経路設定装置21−nによれば、各ドメインに配備された経路設定装置21−n全てで経路計算が可能であることから、集中制御による経路計算に比べ、計算処理の負荷分散が可能となる。
【0094】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a),(b)のようなものがある。
【0095】
(a) 第1の実施形態の最適経路選択装置20と、第2実施形態の経路設定装置21−nとは、いずれもDijkstraアルゴリズム(ダイクストラ法)を経路計算法として用いて、リンクメトリックが最小となる経路をパスの経路として算出している。しかし、これに限られず、ベルマン−フォード法、ワーシャル−フロイド法によって、リンクメトリックが最小となる経路をパスの経路として算出しても良い。
【0096】
(b) 第1の実施形態の最適経路選択装置20と、第2実施形態の経路設定装置21−nとは、これらのコンピュータ(サーバ)に最適経路選択方法を行わせるための最適経路選択プログラムとして実現しても良い。
【符号の説明】
【0097】
10,10A 最適経路設定システム
11,11A マルチドメインネットワーク
12−1〜12−4,12−n,12a−1〜12a−10,12a−n ドメイン
13 通信装置
20 最適経路選択装置
21−1〜21−4,21A−1〜21A−4 経路設定装置(最適経路選択装置)
30 処理部
31 パス設定要求受付・応答部
32 情報収集部
33 閾値設定部
34 経路計算部
35 パス設定指示部
40 記憶部
41 ドメイン隣接関係情報(トポロジ情報)
42 ドメイン情報
43 ネットワークリソース利用情報(帯域利用情報)
44 パス情報
45 パス伝送品質情報
50 トポロジ情報管理装置
51−1〜51−4 トポロジ情報収集装置
60 ネットワーク性能情報管理装置
61−1〜61−4 ネットワーク性能情報測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのドメインを有するマルチドメインネットワークの最適経路を選択する最適経路選択装置が行う最適経路選択方法であって、
前記最適経路選択装置は、処理部と、前記ドメインのトポロジ情報と帯域情報と帯域利用情報とを記憶する記憶部とを有し、
前記処理部は、
前記ドメインの未使用帯域が出ないよう帯域の閾値を決定し、
前記帯域の閾値と前記ドメインの前記帯域情報とに基いて最適ドメインを選択し、
前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与し、
前記リンクメトリックと前記トポロジ情報とに基いて、経路計算法を用いてリンクメトリックが最小となる候補経路を選択し、
前記候補経路が複数存在する場合には、前記候補経路上に存在する前記ドメインの前記帯域情報と前記帯域利用情報に基いて、最も帯域利用率の高いドメインを経由する候補経路の除外を繰り返して、前記最適経路を決定する
ことを特徴とする最適経路選択方法。
【請求項2】
前記ドメインは、波長リンクドメインと非波長リンクドメインとがあり、
前記処理部は、
前記マルチドメインネットワークに含まれる前記波長リンクドメインの波長帯域に基いて帯域の閾値を決定し、
ユーザの要求帯域が前記帯域の閾値を超えているとき、前記波長リンクドメインを前記最適ドメインとして選択し、
前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与する
ことを特徴とする請求項1に記載の最適経路選択方法。
【請求項3】
前記最適ドメインに付随するリンクの前記リンクメトリックは小さく設定し、その他のリンクの前記リンクメトリックは大きく設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の最適経路選択方法。
【請求項4】
前記経路計算法は、ダイクストラ法、ベルマン−フォード法、ワーシャル−フロイド法のいずれか1つである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の最適経路選択方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の最適経路計算方法を、前記最適経路選択装置の前記処理部であるコンピュータに行わせるための最適経路選択プログラム。
【請求項6】
少なくとも1つのドメインを有するマルチドメインネットワークの最適経路を選択する最適経路選択装置であって、
前記最適経路選択装置は、
前記ドメインのトポロジ情報と帯域情報と帯域利用情報とを記憶する記憶部と、処理部とを有しており、
前記処理部は、
ユーザからの要求帯域と前記ドメインの前記帯域情報とに基いて最適ドメインを選択し、
前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与し、
前記リンクメトリックと前記トポロジ情報とに基いて、経路計算法を用いてリンクメトリックが最小となる候補経路を選択し、
前記候補経路が複数存在する場合には、前記候補経路上に存在する前記ドメインの前記帯域情報と前記帯域利用情報に基いて、最も帯域利用率の高いドメインを経由する候補経路の除外を繰り返して、前記最適経路を決定する
ことを特徴とする最適経路選択装置。
【請求項7】
前記ドメインは、波長リンクドメインと非波長リンクドメインとがあり、
前記処理部は、
前記マルチドメインネットワークに含まれる前記波長リンクドメインの波長帯域に基いて帯域の閾値を決定し、
ユーザの要求帯域が前記帯域の閾値を超えているとき、前記波長リンクドメインを前記最適ドメインとして選択し、
前記最適ドメインを優先的に経由するよう前記ドメイン間リンクにリンクメトリックを付与する
ことを特徴とする請求項6に記載の最適経路選択装置。
【請求項8】
前記最適ドメインに付随するリンクの前記リンクメトリックは小さく設定し、その他のリンクの前記リンクメトリックは大きく設定する
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の最適経路選択装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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