説明

有価物回収システム及び有価物回収システムの運転方法

【課題】有価物を機能粉から脱離して再利用する有価物回収システム及び有価物回収システムの運転方法を提供する。
【解決手段】有価物回収システム1は、有価物を吸着及び脱離可能な機能粉11を排水に供給する機能粉供給部3と、機能粉11が供給された排水10を攪拌する攪拌部4と、攪拌部4により攪拌された排水10から機能粉11を分離する機能粉分離部5と、機能粉分離部5によって分離された機能粉11を回収する機能粉回収部7と、機能粉回収部7によって回収された機能粉11から有価物を脱離して、機能粉11及び有価物を再生する脱離再生部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水に含まれる油分等の有価物を回収するための有価物回収システム及び有価物回収システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業排水、公共排水、その他の様々な排水に含まれる油分、フッ素、ホウ素、リン、希少金属、重金属等の有価物の回収及び再利用可能な技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、油分を含む排水から油分を除去する油分濁水処理装置が開示されている。この油分濁水処理装置では、まず、磁性粒子と凝集剤とが排水に添加された後、攪拌混合される。これにより、油分と磁性粒子とが、凝集剤によって凝集されてフロックとなる。このフロックを磁石によって回収することにより、特許文献1の装置は排水から油分を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−177532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、排水から除去された油分を磁性粒子から脱離することができないので、有価物である油分の再利用が困難であるといった課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、有価物を機能粉から脱離して再利用する有価物回収システム及び有価物回収システムの運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1有価物を吸着及び脱離可能な第1機能粉を排水に供給する第1機能粉供給部と、前記第1機能粉が供給された排水を攪拌する攪拌部と、前記攪拌部により攪拌された排水から前記第1機能粉を分離する第1機能粉分離部と、前記第1機能粉分離部によって分離された前記第1機能粉を回収する第1機能粉回収部と、前記第1機能粉回収部によって回収された前記第1機能粉から有価物を脱離して、前記第1機能粉及び前記有価物を再生する脱離再生部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記第1機能粉は、担体と、前記担体に被覆され、前記担体から前記第1有価物を脱離可能な被覆樹脂とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記第1機能粉分離部の下流側に設けられ、排水から分離されずに残った前記第1機能粉を捕捉する細密取り装置を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記第1有価物と異なる第2有価物を吸着及び脱離可能な第2機能粉を排水に供給する第2機能粉供給部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記攪拌部により攪拌された排水から前記第2機能粉を分離する第2機能粉分離部と、前記第2機能粉分離部によって分離された前記第2機能粉を回収する第2機能粉回収部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、第1有価物を吸着及び脱離可能な第1機能粉を排水に供給する定量供給機構と、前記第1機能粉が供給された排水を攪拌する攪拌部と、前記攪拌部により攪拌された排水から前記第1機能粉を分離する第1機能粉分離部と、前記第1機能粉分離部によって分離された前記第1機能粉を回収する第1機能粉回収部とを備え、前記定量供給機構は、前記第1機能粉回収部によって回収された前記第1機能粉を前記攪拌部の上流に供給することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記第1機能粉は、担体と、前記担体に被覆され、前記担体から前記第1有価物を脱離可能な被覆樹脂とを有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記第1機能粉分離部の下流側に設けられ、排水から分離されずに残った前記第1機能粉を捕捉する細密取り装置を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、有価物回収システムの運転方法において、前記有価物回収システムは、前記第1機能粉供給部が前記第1機能粉を供給する個所よりも上流側に配置され、排水中の第1有価物の濃度を計測する第1計測器を備え、前記第1計測器によって計測された有価物の濃度と、前記第1機能粉の吸着性能に基づいて、前記第1機能粉供給部による前記第1機能粉の供給量を制御することを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に記載の発明は、前記有価物回収システムは、前記攪拌部による攪拌個所よりも下流側に配置され、排水中の前記第1有価物の濃度を計測する第2計測器を備え、前記第2計測器によって計測された有価物の濃度に基づいて、前記第1機能粉供給部による前記第1機能粉の供給量を制御することを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に記載の発明は、前記有価物回収システムは、前記攪拌部の下流側に設けられ、排水中の前記第1有価物の濃度を計測する第3計測器を備え、前記定量供給機構は、前記第3計測器によって計測された有価物の濃度が基準値を超えるまで、前記第1機能粉を繰り返し循環させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に記載の発明は、前記有価物回収システムは、前記第1機能粉分離部の下流側であって、前記第1機能粉が分離された処理水が送水される側に設けられ、前記処理水中の有価物の濃度を計測する第4計測器を備え、前記第4計測器による計測結果が基準値を超えると前記第1機能粉を入れ替えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項13に記載の発明は、有価物回収システムにおいて、前記細密取り装置によって捕捉された前記第1機能粉を回収するための逆洗回収部を備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項14に記載の発明は、有価物回収システムの運転方法において、所定の間隔で逆洗を行って、前記細密取り装置によって捕捉された前記第1機能粉を回収することを特徴とする。
【0021】
また、請求項15に記載の発明は、前記有価物回収システムは、前記細密取り装置の圧力損失を計測する圧力計測器を備え、前記圧力計測器によって計測された圧力損失が基準値を超えると、逆洗を行うことを特徴とする。
【0022】
また、請求項16に記載の発明は、前記有価物回収システムは、前記細密取り装置の下流側に設けられ、排水中の前記第1機能粉の濃度を計測する第5計測手段を備え、前記第5計測手段による前記第1機能粉の濃度が基準値を超えた場合に、逆洗を行って、前記細密取り装置によって捕捉された前記第1機能粉を回収することを特徴とする。
【0023】
また、請求項17に記載の発明は、前記第1機能粉回収部と前記第1機能粉分離部の上流側とを接続する戻り配管と、前記戻り配管の途中部に設けられ、前記戻り配管を流れる排水の流量を調整する調整機構とを備えることを特徴とする。
【0024】
また、請求項18に記載の発明は、前記有価物回収システムにおいて、前記攪拌部により攪拌された排水から前記第1機能粉を分離する第3機能粉分離部と、前記第3機能粉分離部によって分離された前記第1機能粉を回収する第3機能粉回収部とを備えることを特徴とする。
【0025】
また、請求項19に記載の発明は、有価物回収システムの運転方法において、前記第1機能粉分離部または前記第3機能粉分離部の一方への排水の送水を停止して、前記第1機能粉回収部または前記第3機能粉回収部に回収された前記第1機能粉を前記脱離再生部へ移動させるとともに、前記第1機能粉分離部または前記第3機能粉分離部の他方では排水の処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、第1有価物を吸着及び脱離可能な第1機能粉によって第1有価物を吸着した後、脱離再生部によって第1機能粉から第1有価物を脱離させて再生することができる。これにより、本発明は、第1機能粉及び第1有価物を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図2】第2実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図3】第3実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図4】第4実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図5】第5実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図6】第6実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図7】第7実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図8】第8実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【図9】細密取り装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、油分を回収するための有価物回収システムに本発明を適用した第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。
【0029】
図1に示すように、第1実施形態による有価物回収システム1は、排水ポンプ2と、機能粉供給部3と、攪拌部4と、機能粉分離部5と、計測器6と、機能粉回収部7と、脱離再生部8と、各部を繋ぐ配管9n(n=1、2・・)とを備えている。
【0030】
排水ポンプ2は、工場90等から排出される排水10を、配管9を介して、攪拌部4へと送水する。
【0031】
機能粉供給部3は、機能粉11を排水10へと供給するものである。機能粉供給部3は、配管9の途中部に設けられている。即ち、機能粉供給部3は、排水ポンプ2と攪拌部4との間に配置されている。
【0032】
機能粉11は、油分である有価物を吸着及び脱離可能に構成されている。機能粉11は、担体と、担体の周りに被覆された被覆樹脂とを有する。担体は、磁性体であるFeからなる。尚、担体を無機粒子または金属粒子等によって構成してもよい。被覆樹脂は、有価物を吸着するとともに、担体から有価物を脱離可能に構成されている。被覆樹脂は、ヒドロキシ脂肪酸及びセスキテルペン酸を含むシェラック樹脂からなる。尚、被覆樹脂として、疎水性の部分と親水性の部分とを併せ持つ樹脂が好ましい。
【0033】
機能粉供給部3は、供給カートリッジ15と、計測器16と、注入部17と、駆動モータ18とを備えている。供給カートリッジ15は、供給用の機能粉11を貯留するためのものである。計測器16は、排水10に含まれる有価物の濃度を計測するものである。計測器16は、注入部17により機能粉11が注入される個所よりも上流側に配置されている。注入部17は、駆動モータ18によって回転されることにより供給カートリッジ15に貯溜された機能粉11を配管9へと注入する。駆動モータ18は、計測器16によって計測された排水10に含まれる有価物の濃度と機能粉11が吸着可能な有価物の量である吸着性能とに基づいて制御される。これにより、機能粉11の供給量が制御される。
【0034】
攪拌部4は、機能粉11が供給された排水10を攪拌する。攪拌部4は、筐体21と、複数の攪拌板22と、計測器23とを有する。筐体21の内部には、機能粉11が供給された排水10が排水ポンプ2によって供給される。攪拌板22は、筐体21の内面に傾斜した状態で立設されている。各攪拌板22は、所定の間隔を開けて配置されている。攪拌部4は、筐体21に供給された排水10の流れを攪拌板22によって変えることにより、排水10を攪拌する。これにより、排水10に含まれる有価物と供給された機能粉11との接触効率が向上する。この結果、機能粉11による有価物の吸着効率が向上する。計測器23は、排水10に含まれる有価物の濃度を計測するものである。計測器23は、排水10の攪拌個所である筐体21よりも下流側に配置されている。計測器23は、計測結果を機能粉供給部3にフィードバックする。機能粉供給部3は、この計測結果に基づき、機能粉11の供給量を調整する。
【0035】
機能粉分離部5は、攪拌部4によって攪拌された排水10から機能粉11を分離するものである。機能粉分離部5は、固体と液体とを遠心力によって分離するサイクロンからなる。これにより、有価物を吸着した機能粉11は、固体なので、下方へと沈降する。一方、機能粉11が分離された排水(以下、処理水)は、配管9を介して、上方へと送水される。
【0036】
計測器6は、処理水中に含まれる有価物の残量を計測するものである。計測器6は、計測結果を機能粉供給部3へとフィードバックする。機能粉供給部3は、この計測結果に基づき、機能粉11の供給量を調整する。
【0037】
機能粉回収部7は、機能粉分離部5によって分離されて沈降する機能粉11を回収する。機能粉回収部7は、ポッド25と、回収カードリッジ26とを有する。ポッド25は、機能粉分離部5と回収カードリッジ26とを接続する。ポッド25の一端部は、機能粉分離部5の下端部に設けられている。回収カートリッジ26は、ポッド25の他端部に取り外し可能に接続されている。回収カートリッジ26には、有価物を吸着した機能粉11が蓄積される。
【0038】
脱離再生部8は、回収カートリッジ26に回収された機能粉11から有価物を脱離して、機能粉11及び有価物を再生するものである。脱離再生部8は、機能粉11をヘキサンにより洗浄した後、機能粉11と有価物とを別々に回収する。そして、脱離再生部8は、機能粉11を再生する。一方、有価物である油分は、燃焼等により再利用される。
【0039】
(有価物回収システムの運転方法)
次に、上述した有価物回収システムの運転方法について説明する。
【0040】
まず、工場等90から排出される排水10が、排水ポンプ2により、配管9を介して、攪拌部4へと送水される。この送水される排水10は、機能粉供給部3の計測器16によって有価物の濃度が計測される。この計測器16の計測結果に基づき、機能粉回収部3は、排水10へ供給する機能粉11の量を決定する。これにより、駆動モータ18が制御されて、注入部17が駆動される。この結果、適量の機能粉11が排水10に供給される。
【0041】
この状態で、機能粉11が供給された排水10が攪拌部4へと送水される。排水10は、攪拌部4の攪拌板22によって流れが変えられて、強攪拌される。これにより、機能粉11と有価物との接触効率が向上して、機能粉11による有価物の吸着効率が向上する。この後、排水10は、配管9に送水される。計測器23は、配管9中を流れる排水10に含まれる有価物の濃度を計測して、機能粉供給部3へとフィードバックする。これにより、機能粉供給部3は、供給する機能粉11の量を調整する。
【0042】
次に、排水10は、配管9を送水されて機能粉分離部5に送水される。機能粉分離部5では、機能粉11を含む排水10が回転されて、遠心力が排水10に作用する。これにより、排水10は、固体と液体、即ち、有価物を吸着した機能粉11と、有価物が除去された処理水とに分離される。
【0043】
分離された処理水は上方へと送水される。この処理水は、計測器6によって有価物の量が計測される。計測器6は、計測結果を機能粉供給部3へとフィードバックする。これにより、機能粉供給部3は、この計測結果に基づき、機能粉11の供給量を調整する。
【0044】
一方、分離された機能粉11は下方へと沈降する。沈降する機能粉11は、機能粉回収部7のポッド25を介して回収カートリッジ26に蓄積される。この後、回収カートリッジ26は、取り外されて、脱離再生部8へと移動される。
【0045】
次に、回収された機能粉11は、脱離再生部8において、ヘキサンで洗浄される。これにより、有価物である油分が機能粉11から脱離される。この後、脱離再生部8において、機能粉11、ヘキサン、有価物を含む溶液が加熱される。これにより、まず、溶液中のヘキサンが蒸発する。次に、溶液中の水分が蒸発する。最後に、油分である有価物が蒸発するので、この油分を回収して、燃焼することにより再利用する。また、全ての溶液が蒸発した後に、機能粉11の担体が残るので、脱離再生部8は、この機能粉11の担体を回収する。この後、脱離再生部8は、機能粉11の周りに被覆樹脂を被覆することにより機能粉11を再生する。更に、再生された機能粉11は、供給カートリッジ15に補充されて再利用される。
【0046】
(有価物回収システムの効果)
次に、上述した第1実施形態による有価物回収システムの効果について説明する。
【0047】
上述したように有価物回収システム1では、有価物を吸着及び脱離可能な機能粉11により有価物を回収している。これにより、脱離再生部8が、機能粉11に吸着された油分である有価物を脱離させることにより、油分を効率よく再利用できる。
【0048】
また、有価物回収システム1は、機能粉11を変えることにより、異なる排水10や種々の有価物に対応することができる。これにより、有価物回収システム1は、異なる状況及び環境に容易に対応できるので、経済的に優れている。
【0049】
また、有価物回収システム1の攪拌部4では、攪拌板22によって排水10の流れを変えて、攪拌している。これにより、排水10と機能粉11とを接触反応させている。この結果、有価物回収システム1は、モータ等の駆動手段を有する攪拌手段に比べて、攪拌部4を小型化できる。また、排水10の種類、有価物、吸着阻害物質の有無、機能粉11の性能の違いにより接触反応させるのに必要な時間が異なる場合でも、攪拌部4を追加・削減することにより異なる状況に対応することができる。
【0050】
また、有価物回収システム1の機能粉分離部5は、遠心力により固体と液体とを分離するサイクロンを有する。これにより、反応槽に一定量の排水10を貯留するバッチによる吸着や重力沈降による分離法に比べて、有価物回収システム1は、機能粉分離部5の大幅な小型化、及び、機能粉分離の高速化を実現できる。
【0051】
また、有価物回収システム1は、計測器16、23、6により排水10に含まれる有価物の濃度を計測している。この計測結果及び機能粉11の吸着性能に基づいて、機能粉供給部3が機能粉11の供給量を調整することができるので、機能粉11の過剰な消費を抑制することできる。この結果、有価物回収システム1は、運転コストを低減することできる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0053】
図2に示すように、第2実施形態による有価物回収システム1Aでは、第1実施形態の構成と、細密取り装置31と、逆洗物回収カートリッジ32と、逆洗用配管9、9とを更に備えている。
【0054】
細密取り装置31は、排水10から分離されずに、処理水中に含まれる機能粉11を捕捉するものである。細密取り装置31は、処理水が排水される配管9に取り付けられている。即ち、細密取り装置31は、機能粉分離部5の下流側に配置されている。細密取り装置31は、金属膜33及び電磁石34を有する磁気分離膜35と、圧力計測器36とを備えている。金属膜33は、処理水が流れる配管9の内側に配置されている。電磁石34は、処理水が流れる配管9の外側に配置されている。圧力計測器36は、細密取り装置31による圧力損失を計測するものである。圧力計測器36による圧力損失が基準値を超えると、細密取り装置31による機能粉11の捕捉限界と判断されて、逆洗が行われる。
【0055】
逆洗物回収カートリッジ32は、細密取り装置31によって捕捉された機能粉11を、所定の間隔で行われる逆洗によって回収するものである。逆洗物回収カートリッジ32は、機能粉分離部5と細密取り装置31との間の配管9から分岐した配管9の後段に配置されている。配管9は、配管9と細密取り装置31の下流の配管9とを接続する。
【0056】
第2実施形態による有価物回収システム1Aでは、通常の排水処理中は、細密取り装置31の電磁石34がオンに設定される。また、配管9、9への送水が停止される。この状態で、排水は、攪拌部4から機能粉分離部5に流れた後、機能粉分離部5により分離された処理水が配管9に排水される。そして、機能粉分離部5によって固体側に分離されずに処理水中に残った機能粉11(例えば、粒径または密度の小さい機能粉11)が、細密取り装置31により捕捉される。機能粉11の捕捉量が増加して、細密取り装置31による圧力損失が基準値を超えたことが圧力計測器36により測定されると、逆洗が行われる。
【0057】
逆洗について具体的に説明する。まず、攪拌部4から機能粉分離部5への排水10の流れが、遮断される。次に、細密取り装置31の電磁石34がオフに切り替えられる。この後、攪拌部4、配管9、細密取り装置31、配管9、逆洗物回収カートリッジ32へと排水10が送水される。これにより、細密取り装置31に捕捉されている機能粉11が逆洗されて、逆洗物回収カートリッジ32に回収される。この後、逆洗物回収カートリッジ32に回収された機能粉11は、脱離再生部8によって脱離及び再生される。再生された機能粉11は、供給カートリッジ15に充填されて再利用される。
【0058】
上述したように第2実施形態による有価物回収システム1Aでは、機能粉分離部5によって固体側に分離されなかった、機能粉11を細密取り装置31により捕捉して、逆洗物回収カートリッジ32により回収することができる。これにより、機能粉11の回収率を増大させて、再利用率を向上させることができる。この結果、有価物回収システム1Aは、運転コストを低減できるとともに、処理水中の機能粉11の濃度を低減して水質保全を向上できる。
【0059】
また、有価物回収システム1Aでは、圧力計測器36による圧力損失の計測結果に基づいて逆洗を行っているので、圧力損失の増大による運転阻害を防止できる。
【0060】
尚、上述した第2実施形態では、圧力計測器36による圧力損失の計測結果に基づいて逆洗を行ったが、逆洗を行うタイミングは適宜変更可能である。例えば、一定の時間毎に逆洗を行ってもよい。また、細密取り装置31の下流側に配置された計測器6により計測された機能粉11の濃度が基準値を超えた時に、逆洗を行って、機能粉11を回収してもよい。
【0061】
(第3実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0062】
図3に示すように、第3実施形態による有価物回収システム1Bでは、2つの機能粉供給部3a、3bを備えている。尚、機能粉供給部3aの構成15a〜18a、及び、機能粉供給部3bの構成15b〜18bは、第1実施形態による機能粉供給部3の構成15〜18と略同様なので説明を省略する。
【0063】
機能粉供給部3aから供給される機能粉11aに油分を吸着可能な機能粉を適用するとともに、機能粉供給部3bから供給される機能粉11bにリン(P)を吸着及び脱離可能な機能粉を適用する。リンを吸着及び脱離可能な機能粉11bは、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性体からなる担体と、担体の表面を被覆する被覆樹脂とを備える。被覆樹脂としては、亜鉛イオンまたは鉄イオンとが固定され、分子構造の一端にアミノ基を有する窒素含有化合物を適用できる。これにより、第3実施形態による有価物回収システム1Bは、2つの有価物(油分及びリン)を回収することができる。
【0064】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第4実施形態について説明する。図4は、第4実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0065】
図4に示すように、第4実施形態による有価物回収システム1Cは、第3実施形態と同様に2つの機能粉供給部3a、3bを備えるとともに、2つの機能粉分離部5a、5b、2つの計測器6a、6b、2つの機能粉回収部7a、7b、及び、2つの脱離再生部8a、8bとを更に備えている。また、有価物回収システム1Cは、機能粉分離部5aと機能粉分離部5bとを接続する配管9と、配管9の途中部に設けられた中間ポンプ41とを更に備える。
【0066】
機能粉分離部5aの半径が、後段の機能粉分離部5bの半径よりも大きく構成されている。また、有価物回収システム1Cでは、機能粉供給部3aにより供給される油分回収用の機能粉11aが、機能粉供給部3bにより供給されるリン回収用の機能粉11bよりも大きく形成されている。
【0067】
第4実施形態による有価物回収システム1Cでは、攪拌部4を通過した排水10が機能粉分離部5aに送水される。次に、機能粉分離部5aでは、半径の大きい機能粉11aが分離されて、機能粉回収部7aのポッド25aを通って回収カートリッジ26aに回収される。この後、機能粉11aは、脱離再生部8aによって機能粉11aと油分とに脱離されて再利用される。
【0068】
一方、機能粉分離部5aによって分離されなかった半径の小さい機能粉11bは、排水10とともに、中間ポンプ41によって配管9を送水される。この後、機能粉11bは、機能粉分離部5bによって分離されて、機能粉回収部7bのポッド25bを通って回収カートリッジ26bに回収される。この後、回収された機能粉11bは、脱離再生部8bにおいて、塩基性脱離液であるNaOH水溶液または中性脱離液であるNaCl水溶液によって洗浄される。これにより、有価物であるリンが機能粉11bから脱離される。この後、機能粉11b及びリンを含む脱離液を加熱することによって、脱離液、リン及び機能粉11bを別々に回収する。この後、リンは再利用される。一方、機能粉11bは、酸性溶液のHCl水溶液に通水されることにより、再生される。
【0069】
上述したように第4実施形態による有価物回収システム1Cは、半径の異なる機能粉分離部5a、5bを備えているので、機能粉回収部7a、7bに機能粉11a、11bを別々に回収することができる。この結果、機能粉11a、11bを容易に再利用することができる。また、高純度の有価物(油分及びリン)を回収することができるので、有価物を容易に再利用することができる。
【0070】
尚、上述した第4実施形態では、機能粉11a、11bの粒径を変えることによって別々に回収可能に構成したが、機能粉11a、11bの密度等の他の要素を変えることによって、別々に回収可能に構成してもよい。
【0071】
(第5実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第5実施形態について説明する。図5は、第5実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0072】
図5に示すように、第5実施形態による有価物回収システム1Dは、排水ポンプ2と、攪拌部4と、機能粉分離部5と、計測器6と、機能粉回収部7と、脱離再生部8と、各部を繋ぐ配管9n(n=1、2、3、7)と、定量供給機構43とを備えている。即ち、第1実施形態の機能粉供給部3は設けられていない。
【0073】
配管9は、回収カートリッジ26と配管9とを接続する。定量供給機構43は、機能粉回収部7によって回収された機能粉11を攪拌部4の上流に供給する。定量供給機構43は、計測器44と、注入部45と、駆動モータ46とを備えている。計測器44は、配管9の途中部に設けられている。注入部45及び駆動モータ46は、配管9の途中部に設けられている。計測器44、注入部45、及び、駆動モータ46は、それぞれ第1実施形態の計測器16、注入部17、及び、駆動モータ18と同様の構成である。
【0074】
第5実施形態による有価物回収システム1Dは、機能粉11を攪拌部4、機能粉分離部5、機能粉回収部7、及び、定量供給機構43の間で循環させつつ、排水10を処理する。そして、計測器6、23により計測された有価物の濃度により機能粉11の吸着能力が低下して、破過状態になるまで、機能粉11を繰り返し循環させる。次に、有価物の濃度が基準値を超えて、機能粉11が破過になったと判定したら、排水処理を停止する。この後、機能粉11を回収した回収カートリッジ26を新しい機能粉11が収容された回収カートリッジ26に取り替えて、排水処理を再開する。一方、回収カートリッジ26に回収された機能粉11は、脱離再生部8によって、機能粉11及び有価物に脱離された後、再生される。この後、再生された機能粉11は、回収カートリッジ26に充填されて、再利用される。
【0075】
第5実施形態による有価物回収システム1Dは、機能粉11を循環させて使用している。これにより、有価物回収システム1Dは、第1実施形態と比べて、排水中の機能粉11の濃度を高めることができるので、排水10に含まれる有価物と機能粉11との接触効率を向上させることができる。この結果、有価物と機能粉11との反応性が向上するので、攪拌部4を小型化でき、これに伴って、有価物回収システム1Dは小型化を実現できる。
【0076】
また、有価物回収システム1Dは、計測器6、23の計測結果及び機能粉11の吸着性能に基づいて、機能粉11を破過するまで循環させることができるので、機能粉11の最適な交換時期を把握できる。この結果、機能粉11を効率よく使用することができるので、運転コストを削減できる。
【0077】
(第6実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第6実施形態について説明する。図6は、第6実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0078】
図6に示すように、第6実施形態による有価物回収システム1Eは、第5実施形態の構成と、細密取り装置31と、逆洗物回収カートリッジ32と、逆洗用配管9、9とを備えている。
【0079】
第6実施形態による有価物回収システム1Eは、機能粉11の粒径や密度の影響により機能粉分離部5によって排水10と分離されずに、処理水とともに配管9を排水される機能粉11を細密取り装置31によって捕捉することができる。
【0080】
(第7実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第7実施形態について説明する。図7は、第7実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0081】
図7に示すように、第7実施形態による有価物回収システム1Eは、第6実施形態の構成と、機能粉供給部3と、戻り配管9と、調整機構51とを備えている。
【0082】
戻り配管9は、機能粉回収部7の回収カートリッジ26と配管9とを接続する。即ち、戻り配管9は、機能粉回収部7と機能粉分離部5の上流側とを接続する。調整機構51は、戻り配管9の途中部に設けられている。調整機構51は、戻り配管9を流れる排水10の流れを回収カートリッジ26から配管9の一方向に規制する。調整機構51は、戻り配管9を流れる排水10の流量を調整する。調整機構51には、弁開度の調整やポンプによる流量調整等を適用できる。
【0083】
第7実施形態による有価物回収システム1Eでは、調整機構51によってポッド25や回収カートリッジ26に引き抜きの流れを形成することができる。これにより、有価物回収システム1Eは、機能粉分離部5による機能粉11の分離性能を向上させることができる。
【0084】
尚、調整機構51による引き抜きの流れは、回収カートリッジ26に回収された機能粉11が流出しない程度が好ましい。但し、たとえ機能粉11が、回収カートリッジ26から流出しても、再度、機能粉分離部5によって分離されるので、排水処理に問題が発生することは少ない。
【0085】
(第8実施形態)
次に、上述した実施形態の一部を変更した第8実施形態について説明する。図8は、第8実施形態による有価物回収システムの全体構成図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、第8実施形態による有価物回収システム1Fは、排水ポンプ2と、機能粉供給部3と、攪拌部4と、2つの同型の機能粉分離部5c、5dと、計測器6と、2つの同型の機能粉回収部7c、7dと、脱離再生部8と、各部を繋ぐ配管9nと、バルブ52とを備えている。
【0087】
機能粉分離部5c及び機能粉回収部7cは、機能粉分離部5d及び機能粉回収部7dに対して並列に接続されている。尚、機能粉分離部5c、5d及び機能粉回収部7c、7dは、それぞれ、機能粉分離部5及び機能粉回収部7と同様の構成である。
【0088】
配管9は、機能粉分離部5dによって分離された処理水を送水するために機能粉分離部5dと配管9とに接続されている。配管910は、攪拌された排水10を機能粉分離部5dに送水するために、配管9と機能粉分離部5dとに接続されている。バルブ52は、排水10の流れを機能粉分離部5cまたは機能粉分離部5dの何れかに切り替えるためのものである。バルブ52は、配管9と配管910との分岐個所に設けられている。
【0089】
第8実施形態による有価物回収システム1Fでは、バルブ52によって排水10の流れを切り替えることにより、何れかの機能粉分離部5c、5dへの排水10の送水を停止することができる。そして、有価物回収システム1Fは、停止された側の回収カートリッジ26d(26c)をポッド25d(25c)から外して、脱離再生部8に移動させて、機能粉11を脱離及び再生処理をする。また、有価物回収システム1Fは、他方の機能粉分離部5d(5c)には排水10を流すことにより、排水処理を継続することができる。この結果、有価物回収システム1Fは、排水処理を中断することなく連続処理をすることができる。
【0090】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0091】
上述した各実施形態の構成の形状、材質、配置、数値等は適宜変更可能である。また、上述した実施形態と他の実施形態とを組み合わせてもよい。
【0092】
(機能粉の変形例)
油分を吸着可能な機能粉の変形例について説明する。
【0093】
<担体>
まず、機能粉を構成する担体の変形例について説明する。担体は油分用の機能粉のコアをなすものであって、水中に短時間浸漬しても大きな化学変化を起こさないものから適宜選択する。したがって、かかる要件を満足するものであれば、担体の種類は問わないが、例えば、無機粒子、金属粒子等から構成することができる。
【0094】
無機粒子及び金属粒子としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス、タルク、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、雲母等のセラミック粒子、アルミニウム、鉄、銅、及びこれらの合金等、又は及びこれらの酸化物である磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト等を用いることができる。
【0095】
特に、以下に説明するように、上記油分用の機能粉を回収する際に有利であることから、無機粒子及び金属粒子は、磁性体を含むことが好ましい。
【0096】
磁性体は特に限定されるものではないが、室温領域において強磁性を示す物質であることが望ましい。しかしながら、本実施形態に当ってはこれらに限定されるものではなく、強磁性物質を全般的に用いることができ、例えば鉄、および鉄を含む合金、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト、などが挙げられる。
【0097】
これらのうち水中での安定性に優れたフェライト系化合物であればより効果的に本発明を達成することができる。尚、実施形態で適用した磁鉄鉱であるマグネタイト(Fe)は安価であるだけでなく、水中でも磁性体として安定し、元素としても安全であるため、水処理に使用しやすいので好ましい。
【0098】
また、上述した実施形態では、上記無機粒子及び金属粒子自体を磁性体とすることができる。この場合、磁性体は磁性粉として構成されるが、球状、多面体、不定形など種々の形状を取り得るが特に限定されない。また、望ましい磁性粉としての粒径や形状は、製造コストなどを鑑みて適宜選択すれば良く、特に球状または角が丸い多面体構造が好ましい。ここで、球状とは、完全な球である必要はなく、外観的に球形を呈していればよく、楕円球状や一部に凹凸が形成されていたり、非連続な曲部が形成されていたりする場合をも含むものである。
【0099】
鋭角な角を持つ粒子であると、後の噴霧処理を経て表面を被覆するポリマー層を傷つけ、樹脂複合体、すなわち目的とする油分用の機能粉の形状を維持しにくくなってしまうことがあるためである。これらの磁性粉は、必要であればCuメッキ、Niメッキなど、通常のメッキ処理が施しされていてもよい。また、その表面が腐食防止などの目的で表面処理されていてもよい。
【0100】
また、上記磁性体は、上述のように直接磁性粉として構成される代わりに、磁性粉が樹脂等のバインダーで結合されたものであってもよい。また、磁性粉に対して、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシシランなどのアルコキシシラン化合物で表面処理がなされ、疎水化処理されていてもよい。すなわち、磁性体を磁力によって回収する際に、磁力が及ぶだけの磁性を有すれば特に限定されるものでない。
【0101】
また、上記無機粒子等として、平均粒子径が40nm以下の微細シリカも好ましく用いることができる。このようなシリカは油分の吸着能力が高いため、最終的に得た油分用の機能粉は、上述したシェラック樹脂のみではなく、シリカによっても油分吸着能を呈するようになるため、油分用の機能粉全体の油分吸着能を増大させることができる。
【0102】
シリカの具体例としては、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル200V、アエロジル200CF、アエロジル200FAD、アエロジル300、アエロジル300CF、アエロジル380、アエロジルR972、アエロジルR972V、アエロジルR972CF、アエロジルR974、アエロジルR202、アエロジルR805、アエロジルR812、アエロジルR812S、アエロジルOX50、アエロジルTT600、アエロジルMOX80、アエロジルMOX170、アエロジルCOK84、アエロジルRX200、アエロジルRY200(以上、すべて商品名:日本アエロジル株式会社製)などがあり、特に油分吸着能力に優れた親油性シリカがこのましい。
【0103】
上記担体の大きさは、処理設備の磁力、流速、吸着方法のほか、担体の密度、種々の条件によって変化する。しかしながら、本態様における担体の大きさは、一般に0.05〜100μmである。担体の大きさの測定は、例えばレーザー回折法により測定することができる。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。
【0104】
担体の大きさが100μmよりも大きいと、水中での沈降が激しくなり、水への分散が悪くなる傾向があり、また得られる油分用の機能粉の実効的な表面積が減少して、油類などの吸着量が減少する傾向にあるので好ましくない。また担体の大きさが0.05μmより小さくなると、1次粒子が緻密に凝集し、処理液の上層に浮遊する状態となり、分散性が低下する傾向があるので好ましくない。また、担体の粒径が小さい場合には排水の流速により回収が完全にできない問題が生ずる。
【0105】
なお、担体の大きさを上述のような範囲に設定することによって、0.2μm〜5mm、好ましくは10μm〜2mmの大きさの油分用の機能粉を得ることができるようになる。この際に得られる作用は、担体の大きさを上述した範囲に設定した場合と同様であり、その結果、油分用の機能粉の油分吸着能がより向上するようになる。
【0106】
ここで“担体の大きさ”とは、担体の形態に依存して決定されるものであって、担体の形態に特徴的な部分の大きさを意味する。例えば、担体が粒子状であれば、担体の大きさは平均粒子径を意味し、担体が多面体や不定形である場合は、その最大長さ及び最大幅等を意味するものである。
【0107】
さらに、担体は、球状、多面体、不定形等の他に、繊維状、シート状、ひも状及びネット状の形状を有する場合も含む。
【0108】
特に繊維状の担体としては、チタニア、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、マグネシア、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、α−アルミナ、クリソタイル、ワラストナイトなどのウィスカー類、また、Eガラス繊維、シリカアルミナ繊維、シリカガラス繊維などの非晶質繊維の他チラノ繊維、炭化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、γアルミナ繊維、α−アルミナ繊維、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの結晶性繊維などの無機系繊維の他、有機系繊維としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などを挙げることができる。
【0109】
<被覆樹脂>
次に、機能粉の被覆樹脂の変形例について説明する。被覆樹脂には、種々のシェラック樹脂を適用できる。シェラック樹脂は、セラックとも呼ばれ、インドやタイ、ビルマ、インドシナ等を主要な原産国として桑科(アコウ、インド菩提樹等)、豆科(ビルマネム、アメリカネム、カッチ、オバマメノキ、キマメ、アラビアゴムモドキ等)の植物の枝に寄生するラックカイガラ虫が分泌する樹脂状物質で、枝が分泌物で覆われ、固化した状態のスチックラックを原料としているものである。
【0110】
樹脂状物質は比重差分離法を用いて分離し、得ることができる。例えば、樹脂状物を枝ごと切り取って水に浸漬させると、樹脂分は沈降し、枝および不純物は浮くようになるので、沈降した樹脂分をそのままシェラック樹脂として使用することができる。 なお、このようにして得たシェラック樹脂は一般にシードラックと呼ばれる。
【0111】
また、シードラックを精製して漂白した後にシェラック樹脂とすることもできる。この場合、シェラック樹脂は、樹脂酸エステルを主成分とし、白シェラックと呼ばれる。さらに、上述のようにして得た白シェラック等を脱ろうした後のものをシェラック樹脂とすることもできる。
【0112】
シェラック樹脂の性状は淡黄色から暗褐色で推定構造はアリュリチン酸、シェロール酸及びその誘導体および各種有機酸からなっているもので、自然界では外気温の熱履歴を受けることにより架橋反応が進行し、不溶、不融状態になり硬化が完了してしまう。したがって、自然界で生成されたシェラック樹脂を使用するに際しては、加熱により溶融し、流動性を示す状態とする。
【0113】
なお、上記シェラック樹脂は自然界に存在するものの他、市販品として提供されており、例えば、日本シェラック工業株式会社より、レモンNo.1、NSC(脱ロウ品)、NST−2(含ロウ品),乾燥透明白ラック(脱ロウ/漂白品)、乾燥乳状白ラック(脱ロウ/漂白品)等の商品名で販売されている。また、(株)岐阜セラック製造所より、GSA、GS、GSN、脱色セラック(PEAL−N811)、乳状白ラックS−GB、乳状白ラックS−GBD、透明白ラックGBN、透明白ラックGBND等の商品名で販売されている。
【0114】
上記シェラック樹脂は、以下に示すような方法で目的とする油分用の機能粉を製造する観点から、微粉化処理して使用することができる。また、硬化反応性、機械特性の点からは脱ロウ品が好ましく、ロウ含有品は機械特性の低下を招く恐れがある。また、着色の点からは色素を完全に除去した漂白品が特に好ましい。
【0115】
なお、特に理由は明確でないが、上述したシェラック樹脂は高い親油性を示し、以下に説明する水処理方法において、水中に含まれる油分を高い割合で吸着することができる。
【0116】
また、シェラック樹脂は、実施形態において用いたヒドロキシ脂肪酸及びセスキテルペン酸を含むことが好ましい。理由は定かではないが、シェラック樹脂がヒドロキシ脂肪酸及びセスキテルペン酸を含むことによって、親油性がより増大し、油分に対する吸着度合いがより向上する。
【0117】
(他の機能粉)
また、上述した実施形態では、油分及びリンを回収するための機能粉について説明したが、フッ素、マグネシウム、ホウ素、重金属イオン、貴金属イオン等の他の有価物を回収可能な機能粉を用いてもよい。
【0118】
(細密取り装置の変形例)
図9に示すように、金属膜33を省略して、電磁石34のみによって機能粉11を捕捉するように細密取り装置31Aを構成してもよい。また、膜分離装置やサイクロン等を細密取り装置として適用してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 有価物回収システム
2 排水ポンプ
3、3a、3b 機能粉供給部
4 攪拌部
5、5a、5b、5c、5d 機能粉分離部
6、6a、6b 計測器
7、7a、7b、7c、7d 機能粉回収部
8、8a、8b 脱離再生部
〜910 配管
10 排水
11、11a、11b 機能粉
15 供給カートリッジ
16 計測器
17 注入部
18 駆動モータ
21 筐体
22 攪拌板
23 計測器
25、25a、25b、25c、25d ポッド
26、26a、26d 回収カートリッジ
31、31A 細密取り装置
32 逆洗物回収カートリッジ
33 金属膜
34 電磁石
35 磁気分離膜
36 計測器
41 中間ポンプ
43 定量供給機構
44 計測器
45 注入部
46 駆動モータ
51 調整機構
52 バルブ
90 工場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有価物を吸着及び脱離可能な第1機能粉を排水に供給する第1機能粉供給部と、
前記第1機能粉が供給された排水を攪拌する攪拌部と、
前記攪拌部により攪拌された排水から前記第1機能粉を分離する第1機能粉分離部と、
前記第1機能粉分離部によって分離された前記第1機能粉を回収する第1機能粉回収部と、
前記第1機能粉回収部によって回収された前記第1機能粉から有価物を脱離して、前記第1機能粉及び前記有価物を再生する脱離再生部とを備えることを特徴とする有価物回収システム。
【請求項2】
前記第1機能粉は、
担体と、
前記担体に被覆され、前記担体から前記第1有価物を脱離可能な被覆樹脂とを有することを特徴とする請求項1に記載の有価物回収システム。
【請求項3】
前記第1機能粉分離部の下流側に設けられ、排水から分離されずに残った前記第1機能粉を捕捉する細密取り装置を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有価物回収システム。
【請求項4】
前記第1有価物と異なる第2有価物を吸着及び脱離可能な第2機能粉を排水に供給する第2機能粉供給部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の有価物回収システム。
【請求項5】
前記攪拌部により攪拌された排水から前記第2機能粉を分離する第2機能粉分離部と、
前記第2機能粉分離部によって分離された前記第2機能粉を回収する第2機能粉回収部とを備えることを特徴とする請求項4に記載の有価物回収システム。
【請求項6】
第1有価物を吸着及び脱離可能な第1機能粉を排水に供給する定量供給機構と、
前記第1機能粉が供給された排水を攪拌する攪拌部と、
前記攪拌部により攪拌された排水から前記第1機能粉を分離する第1機能粉分離部と、
前記第1機能粉分離部によって分離された前記第1機能粉を回収する第1機能粉回収部とを備え、
前記定量供給機構は、前記第1機能粉回収部によって回収された前記第1機能粉を前記攪拌部の上流に供給することを特徴とする有価物回収システム。
【請求項7】
前記第1機能粉は、
担体と、
前記担体に被覆され、前記担体から前記第1有価物を脱離可能な被覆樹脂とを有することを特徴とする請求項6に記載の有価物回収システム。
【請求項8】
前記第1機能粉分離部の下流側に設けられ、排水から分離されずに残った前記第1機能粉を捕捉する細密取り装置を備えることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の有価物回収システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有価物回収システムの運転方法において、
前記有価物回収システムは、前記第1機能粉供給部が前記第1機能粉を供給する個所よりも上流側に配置され、排水中の第1有価物の濃度を計測する第1計測器を備え、
前記第1計測器によって計測された有価物の濃度と、前記第1機能粉の吸着性能に基づいて、前記第1機能粉供給部による前記第1機能粉の供給量を制御することを特徴とする有価物回収システムの運転方法。
【請求項10】
前記有価物回収システムは、前記攪拌部による攪拌個所よりも下流側に配置され、排水中の前記第1有価物の濃度を計測する第2計測器を備え、
前記第2計測器によって計測された有価物の濃度に基づいて、前記第1機能粉供給部による前記第1機能粉の供給量を制御することを特徴とする請求項9に記載の有価物回収システムの運転方法。
【請求項11】
請求項6〜請求項8の何れか1項に記載の有価物回収システムの運転方法において、
前記有価物回収システムは、前記攪拌部の下流側に設けられ、排水中の前記第1有価物の濃度を計測する第3計測器を備え、
前記定量供給機構は、前記第3計測器によって計測された有価物の濃度が基準値を超えるまで、前記第1機能粉を繰り返し循環させることを特徴とする有価物回収システムの運転方法。
【請求項12】
前記有価物回収システムは、前記第1機能粉分離部の下流側であって、前記第1機能粉が分離された処理水が送水される側に設けられ、前記処理水中の有価物の濃度を計測する第4計測器を備え、
前記第4計測器による計測結果が基準値を超えると前記第1機能粉を入れ替えることを特徴とする請求項11に記載の有価物回収システムの運転方法。
【請求項13】
前記細密取り装置によって捕捉された前記第1機能粉を回収するための逆洗回収部を備えることを特徴とする請求項3または請求項8に記載の有価物回収システム。
【請求項14】
請求項13に記載の有価物回収システムの運転方法において、
所定の間隔で逆洗を行って、前記細密取り装置によって捕捉された前記第1機能粉を回収することを特徴とする有価物回収システムの運転方法。
【請求項15】
前記有価物回収システムは、前記細密取り装置の圧力損失を計測する圧力計測器を備え、
前記圧力計測器によって計測された圧力損失が基準値を超えると、逆洗を行うことを特徴とする請求項13に記載の有価物回収システムの運転方法。
【請求項16】
請求項13に記載の有価物回収システムの運転方法において、
前記有価物回収システムは、前記細密取り装置の下流側に設けられ、排水中の前記第1機能粉の濃度を計測する第5計測手段を備え、
前記第5計測手段による前記第1機能粉の濃度が基準値を超えた場合に、逆洗を行って、前記細密取り装置によって捕捉された前記第1機能粉を回収することを特徴とする有価物回収システムの運転方法。
【請求項17】
前記第1機能粉回収部と前記第1機能粉分離部の上流側とを接続する戻り配管と、
前記戻り配管の途中部に設けられ、前記戻り配管を流れる排水の流量を調整する調整機構とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項8、請求項13のいずれか1項に記載の有価物回収システム。
【請求項18】
前記攪拌部により攪拌された排水から前記第1機能粉を分離する第3機能粉分離部と、
前記第3機能粉分離部によって分離された前記第1機能粉を回収する第3機能粉回収部とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項8、請求項13、請求項17のいずれか1項に記載の有価物回収システム。
【請求項19】
請求項18に記載の有価物回収システムの運転方法において、
前記第1機能粉分離部または前記第3機能粉分離部の一方への排水の送水を停止して、前記第1機能粉回収部または前記第3機能粉回収部に回収された前記第1機能粉を前記脱離再生部へ移動させるとともに、
前記第1機能粉分離部または前記第3機能粉分離部の他方では排水の処理を行うことを特徴とする有価物回収システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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