説明

有刺体

【課題】塀や窓のサッシなどへの取り付け作業が簡単な有刺体の提供を目的とする。
【解決手段】金属帯材1の側縁に尖頭状の歯2を適宜間隔で設け、該歯2、2・・を曲げ起こして帯状の取付基部3から長手方向に沿って刺4、4・・を立設させて形成され、
前記取付基部3には、刺4を避けるようにして線状に曲げに対する抵抗力を小さくする切断ガイド5を形成して構成する。
刺4を避けるようにして取付基部3に線状に曲げに対する抵抗力を小さくする切断ガイド5が設けられることにより、繰り返し折り曲げるだけで、金切りばさみ等を用いることなく、金属疲労を利用して適宜の長さに容易に切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有刺体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
侵入などを防ぐために用いられる有刺鉄線等の有刺体としては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、有刺体は、長尺の金属板に抜き溝を設け、抜き溝により区画された爪片を曲げ起こして形成される。上記金属板には取付穴が形成され、この取付穴を介して釘などによって塀の上に金属板の平坦面を固定した後、爪片を曲げ起こすことにより、爪片が塀の上に刺状に起立する。
【特許文献1】実開平6-20804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例に示すように、有刺鉄線のように適宜の支柱に絡ませることで囲いをつくる以外に、塀や窓のサッシなどを手掛かり、足掛かりにした侵入を防ぐことができるようにするために、これらに対しても取り付けやすい有刺体が求められている。この点、上記従来例においては、長尺であるために長い塀などにも沿わせるようにして容易に配置できる反面、塀の長さなどに長さを合わせるためには、金属板材を金切りばさみや金切りのこなどで切断しなければならず、切断作業に手間がかかってしまう。
【0004】
また、爪片は侵入防止効果を高めるためにも密集して多数形成する必要があるために、取り付け時にひとつひとつ曲げ起こすようにすると、極めて作業効率が悪い。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、取り付け作業が簡単な有刺体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
金属帯材1の側縁に尖頭状の歯2を適宜間隔で設け、該歯2、2・・を曲げ起こして帯状の取付基部3から長手方向に沿って刺4、4・・を立設させて形成され、
前記取付基部3には、刺4を避けるようにして線状に曲げに対する抵抗力を小さくする切断ガイド5が形成される有刺体を提供することにより達成される。
【0007】
本発明によれば、有刺体は、帯状の取付基部3から刺4、4・・を立設させて形成される。取付基部3は金属の薄板材からなり、刺4を避けるようにして線状に曲げに対する抵抗力を小さくする切断ガイド5が設けられることにより、繰り返し折り曲げるだけで、金切りばさみ等を用いることなく、金属疲労を利用して適宜の長さに容易に切断することができる。したがって長さ調整を簡単にすることができ、塀や窓のサッシなどに対して容易に取り付けることができる。
【0008】
また、取付基部3とこれに立設される刺4、4・・は、金属帯材1の側縁に適宜間隔8で尖頭状の歯2を形成し、該歯2、2・・を曲げ起こすことにより一体形成されるために、例えば、金属帯材1の側縁を鋸歯や歯車の歯のように切り出して、すなわち金属帯材1に剪断加工や曲げ加工を施すだけでも製造することが可能で、極めて製造効率を高めることができる。この刺4、4・・は歯2、2・・を金属帯材1の一側縁に形成して取付基部3の一側縁に沿って一列に形成することも可能であるが、歯2、2・・を金属帯材1の両側縁に形成して取付基部3の両側縁に沿って2列に形成することも可能で、この場合には侵入防止効果をより高めることができる。加えて、上記切断ガイド5についてはプレス加工などによって形成することが可能であり、したがって連続加工により安価に大量生産することができる。
【0009】
さらに、金属帯材1の側縁に形成される歯2を曲げ起こして刺4を形成することにより、取付基部3には、上述した従来例における抜き溝のように強度が長手方向に極端に不安定になるような大きな空隙は形成されず、したがって線状に局部的に曲げに対する抵抗力を小さくする切断ガイド5に沿って取付基部3を簡単に折り曲げることが可能となる。また、刺4は、金属帯材1の中央部に形成しなくても、取付基部3の幅寸法や歯2の配置間隔を調整することにより金属帯材1の長手方向や幅方向に密集して形成することが可能であり、これにより侵入防止効果を確保することが可能である。
【0010】
切断ガイド5は、上述したように取付基部3の曲げに対する抵抗力を筋状に局部的に小さくして繰り返し折り曲げやすいように、すなわち切断を促すことができれば足りるため、例えば、取付基部3の幅寸法を細くするスリットや、板厚を薄くする溝、あるいは取付基部3の幅方向に不連続の切り込み等を入れていわゆる切り取り線として取付基部3の断面積を線状に小さくするものとして構成することが可能である。また、切断ガイド5は、上述したように刺4に干渉しないように、すなわち取付基部3を切断しやすいように取付基部3の刺4が形成されないところをその幅方向に走るようにして形成され、このため取付基部3の長手方向に対して切断ガイド5を斜め向きに形成することも可能であるが、直角に形成すれば、切断したときに取付基部3の端部を塀などの端部にきれいに合わせることが可能となる。
【0011】
さらに、切断ガイド5は、長さ調整の融通性を考慮すると、取付基部3の長手方向に所定ピッチで形成することが望ましく、このピッチもなるべく小さく設定することが望ましい。刺4も侵入防止効果や量産性を考慮するとほぼ同様であり、上述したように切断ガイド5が刺4を避けるように形成される点を考慮すれば、各刺4の間に切断ガイド5を形成したり、あるいは複数の刺4、4・・毎の間に切断ガイド5を形成することが望ましい。
【0012】
加えて、切断ガイド5は、上述したように繰り返して折り曲げたときに取付基部3を切断できるようにすれば、繰り返して曲げない範囲では単に取付基部3を板厚方向に曲がりやすくする折り曲げ部としても作用することが可能である。したがって上述したように取付基部3に小さなピッチで切断ガイド5を設ければ、雨樋の縦管などの細いものに対しても比較的容易に巻き付けることができる。この場合、切断ガイド5を取付基部3の刺4立設面側に溝状に形成すれば、刺4を縦管等の取り付け対象物の外周側に向けて曲げ易い上に、取り付け状態において取付基部3の裏面が取り付け対象物にほぼ密着状態になるために取付基部3表裏方向に折り返される心配がなく、不用意に切断してしまうことがない。
【0013】
以上の切断ガイド5を利用した切断に際しては、例えば作業用の革手袋を嵌めるなどすれば、刺4を気にすることなく容易に行うことが可能であるが、作業性を高めるためには刺4に触れることなく折り曲げやすいようにすることが有効である。このため、刺4を、すなわち歯2を小型のペンチが挿入できる程度の所定ピッチに形成することが望ましく、このピッチは上述したように侵入防止効果を考慮すれば、指の挿入が困難な程度に抑えておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、取り付け作業が簡単な有刺体を提供することができるために、専門業者に有刺体の施工を依頼することなく一般ユーザ自身で住居の防犯性を容易に高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態において、有刺体Aは、取付基部3と、刺部(刺4)とを有し、取付基部3から刺部4を立設させて形成される。
【0016】
取付基部3は、ステンレスを細幅帯状にして形成され、幅寸法は一般的な大人の指よりも細くなる程度に、厚さ寸法は表裏に妄りに曲がることがない程度の曲げ強度を確保できるように、適宜設定される。この実施の形態において、取付基部3の幅寸法は12ミリ、厚さ寸法は0.5ミリに設定される。また、この取付基部3には、図1(a)および(b)に示すように、幅方向中央部に釘や針金が挿入可能な程度の大きさであって上述した曲げ強度を損ねない程度の円形の取付穴11が穿孔され、この取付穴11は取付基部3の長手方向に所定間隔で設けられる。
【0017】
刺部4は、上記取付基部3と同じステンレスの薄板材からなり、図1(b)に示すように、頂角が30度の二等辺三角形形状に形成される。この刺部4は、取付基部3の側端面に対して二等辺三角形の底辺に対応する下端縁部の側面を固定するようにして、すなわち、取付基部3の側縁よりも板厚相当寸法T(図1(a)参照)だけさらに側方に突出するようにして取付基部3と板面を直交方向に向けて固定される。刺部4の高さは指などに刺4さった際に適宜の痛みを与えることができるように、この実施の形態においては6ミリに設定される。
【0018】
また、上記刺部4は、取付基部3の両側縁に形成されるとともに、その長手方向に連設される。図1(a)に示すように、取付基部3の両側縁には幅方向に対をなすようにして刺部4が並設され、これらの刺部4の対が取付基部3の長手方向に所定間隔で形成される。この長手方向の配置間隔は、隣接する刺部4の先端間の間隔が一般的な大人の指よりも細くなる程度に適宜設定され、この実施の形態においては10ミリとされる。また、この刺部4の配置間隔は上述した取付穴11の配置間隔の半分にされ、刺部4の先端の位置と取付穴11の中心が位置合わせされることにより、図1(a)および(b)に示すように、取付穴11が刺部4の一つ置きに取付基部3両側縁の刺部4、4先端を結ぶ線上に配置される。さらに、このようにして取付基部3に刺部4、4・・が固定されることにより、有刺体Aには、取付基部3の刺部4が形成されない刺部4、4間に平板状の領域が生じ、この平板状の領域を利用して切断ガイド5が形成される。
【0019】
切断ガイド5は、図1(a)および(b)に示すように取付基部3の板厚方向に形成される溝であり、取付基部3の両側縁間全域に渡って連続状にその長手方向に対して直交する直線状に形成される。この切断ガイド5は、取付基部3の断面積を局部的に直線状に低くして折り曲げやすくし、繰り返して折り曲げるだけで金属疲労により容易に切断できるようにしたもので、その深さは切断のための繰り返し折り曲げ回数や当該部位における取付基部3の曲げ強度の程度による使い勝手などを考慮して適宜設定される。この実施の形態においては、切断ガイド5は、図1(b)に示すように、取付基部3の表面側、すなわち刺部4が立設する側に形成され、取付基部3表面側に行くに従ってなだらかに断面積が大きくなる断面半径0.2ミリの半円形状に取付基部3を凹設して形成される。
【0020】
また、上記切断ガイド5は、図1(a)および(b)に示すように上述した平板状の領域内において、取付基部3の長手方向のいずれかの端部に形成される。上述したように刺部4を先端の位置を基準にしたピッチで取付基部3長手方向に10ミリ程度に連設することにより、図1(a)および(b)における隣接する刺部4、4の連結基端側の頂部間の間隔S、すなわち上記平板状の領域の長さSは7ミリ程度とされ、この平板状の領域の端部に切断ガイド5を配置することにより、平板状の領域には、取付基部3長手方向に7ミリ程度の幅寸法を有する矩形状の板状部12と、この板状部12の一端縁に沿う直線状の切断ガイド5により構成される。
【0021】
したがって以上の有刺体Aを塀の上などに取り付けたい場合には、取付基部3の取付穴11を通すようにして釘を塀に打ち込み、あるいはその裏面を両面粘着テープや接着剤により塀の上面に固定すればよく、両面テープ等を用いた場合であっても取付基部3の微少な取付穴11が形成される以外の領域は粘着面、接着面として作用するために容易に固定強度を高めることができる。取付基部3の両側縁から刺部4、4・・を立設させて側面視コ字形状となる有刺体Aは、取付基部3が塀の上面に沿うように固定されることにより、刺部4、4・・が塀の上面に起立するように並び、塀の上に手や足を掛けた場合には刺部4、4・・によって手や足を突き刺し、塀を乗り越えることを困難にする。
【0022】
また、有刺体Aの長さを塀などの長さに合わせる際には、隣接するそれぞれの板状部12にラジオペンチを差し込み、取付基部3を刺部4の反対側に繰り返して折り曲げればよく、取付基部3は断面積が極端に小さくなっている切断ガイド5の形成部分を起点に折れ曲がり、次第に金属疲労を起こして切断ガイド5に沿って切断される(図2(a)参照)。したがって図2(b)に示すように上部に凹凸がある塀13に対しても簡単に取り付けることができる。
【0023】
一方、有刺体Aを製造する際には、図3(a)および(b)に概略示すように、ステンレス帯材(金属帯材1)のロール14を解きほぐして取付基部3となる帯状の領域の両側端縁に刺部4の形成ピッチに合わせて尖頭状の歯2が形成されるように剪断加工を施した後、歯2を曲げ起こして刺4を形成すればよく、切断ガイド5や取付穴11についても上記歯2形成時に剪断加工等により同時に形成することが可能である。したがって図に矢印で示すように一連の連続加工により量産することができる。
【0024】
また、歯2の曲げ起こし基端を歯2の取付基部3との連結基端ではなく、この連結基端よりも板厚分だけ取付基部3の外方側に、すなわち取付基部3の側縁よりもさらに板厚分側方にすることにより、図1(a)および図4(b)に示すように、歯2の曲げ起こしにより形成される刺部4、4・・は、取付基部3と平面上重ならない位置で取付基部3から直角に立ち上がる。このように刺部4、4・・を取付基部3から平面上ずらせて立設させることにより、有刺体A同士を重ね合わせたときにそれぞれの位置を長手方向にやや変位させておけば、図4(a)および(b)に示すように、一方の有刺体Aの刺部4は他方A’の取付基部3’と重なることがない上に、当該他方A’の刺部4’とも重ならなくなる。これにより、図4(c)に示すように、複数の有刺体A、A’同士をより密接に重ね合わせることが可能となり、持ち運びがしやすくなる。また、図3(a)および(b)に2点鎖線で示すように、製造後においても、コンパクトに巻回収納することが可能となる。
【0025】
なお、以上の実施の形態においては、取付基部3の長手方向における取付穴11の配置について、歯2の先端、すなわち刺4の先端と位置合わせする場合を示したが、隣接する切断ガイド5、5の中央に配置することも可能で、このように切断ガイド5と取付穴11の位置をより離しておくことによって切断ガイド5に沿った有刺体Aの折り曲げがさらにやりやすくなる。また、取付穴11の形成ピッチは有刺体Aの塀13等に対する固定強度を考慮して適宜決定可能であり、取付基部3の長手方向に各刺部4に隣接するように形成すれば、各刺部4をしっかりと支えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を示す図で、(a)は要部平面図、(b)は要部側面図である。
【図2】塀への取り付け作業を説明する図で、(a)は切断作業を説明する図、(b)は取り付け状態を示す図である。
【図3】製造方法の概略を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】有刺体同士を重ね合わせた状態を示す図で、(a)は側面図、(b)は背面図、(c)は(a)の4c-4c線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 金属帯材
2 歯
3 取付基部
4 刺
5 切断ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯材の側縁に尖頭状の歯を適宜間隔で設け、該歯を曲げ起こして帯状の取付基部から長手方向に沿って刺を立設させて形成され、
前記取付基部には、刺を避けるようにして線状に曲げに対する抵抗力を小さくする切断ガイドが形成される有刺体。
【請求項2】
前記切断ガイドは取付基部の刺立設面側に溝状に形成される請求項1記載の有刺体。
【請求項3】
前記歯は指の挿入が困難で、かつ小型のペンチが挿入可能な程度の間隔を隔てて金属帯材の側縁に連設される請求項1または2記載の有刺体。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate