説明

有孔管材

【課題】有孔管材の打設時に管体内への土砂の流入を抑制できるうえに、設置後にスリットに目詰まりが生じた場合でも容易に目詰まりを解消することが可能な有孔管材を提供する。
【解決手段】管体11の外周に、管体の長尺方向が長さ方向となる細長い矩形状のスリット2が複数、形成されて内外が連通される有孔管材1である。
そして、スリットは幅が0.2−0.6mmに形成されるとともに、複数のスリットの総開口面積SAが管体の内空断面積PAの3倍以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に空気や液体などを注入したり、汚染された土壌から汚染物質を吸引したり、地中の地下水を採取したりする際に使用される有孔管材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下水を採取したり、土壌の汚染物質を回収したりするために、対象となる地盤にスリットなどの開口部が設けられた有孔管材を埋設する方法が知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された井戸用管は、地盤に打ち込む際にシルトや粘土がスクリーン管の内部に侵入して採水部(開口部)が詰まるのを防ぐために、矩形状のスリットを設けた外管と、円形孔を設けた内管と、外管と内管との間に介在させる網部との三重構造となっている。
【0004】
また、特許文献2には、有孔管材を地盤に打ち込む前に、スリットを地中で溶解可能な材料によって塞いでおくことで、打ち込み時の目詰まりを防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3422689号公報
【特許文献2】特開2008−274578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、有孔管材の打設時における目詰まり防止対策についての記載がない。また、特許文献1,2には、地盤に有孔管材を打ち込んだ後に発生するスリットの目詰まりに対して、何らその解消策が開示されていない。特に、特許文献1に開示された三重構造の有孔管材は、外管のスリットが目詰まりした場合に、洗浄用のブラシを挿入しても、内管の外側にある外管の孔にまでブラシの毛先が届かないので、ブラシで目詰まりしたシルトや粘土を取り除くことができない。
【0007】
また、内管に高圧洗浄水を送って洗浄する場合でも、内管の孔を通して外管側に洗浄水が流れることになるので、スリットに詰まったシルトや粘土を洗い流す力が弱く、効果的な井戸内洗浄がおこなえないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、有孔管材の打設時に管体内への土砂の流入を抑制できるうえに、設置後にスリットに目詰まりが生じた場合でも容易に目詰まりを解消することが可能な有孔管材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の有孔管材は、管体の外周に、管体の長尺方向が長さ方向となる細長い矩形状のスリットが複数、形成されて内外が連通される有孔管材であって、前記スリットは幅が0.2−0.6mmに形成されるとともに、前記複数のスリットの総開口面積が前記管体の内空断面積の3倍以下に設定されることを特徴とする。
【0010】
また、前記管体の前記スリットを設けた位置より先端側に、前記管体の外径より大きく、その外径の1.1倍より小さい外径のフリクションカット部を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の有孔管材は、スリットの幅が0.2−0.6mmと非常に狭く形成されている。また、すべてのスリットの開口面積を合わせた総開口面積が、管体の内空断面積の3倍以下になるように設定されている。
【0012】
この条件であれば、有孔管材を地盤にそのまま打ち込んでも、細砂やシルト分等が管体内に侵入することがほとんどない。また、スリット内に侵入した土砂については、有孔管材の打設後に、空気、水又はそれら両方を同時に有孔管材に供給することによって、スリットからの吐き出し圧力により容易に除去できるため、井戸洗浄が不要になる。さらに、洗浄が必要になった場合でも、有孔管材内には内管やスリットを保護するための充填材等が存在しないため、ブラシや高圧水によって容易に洗浄することが可能である。
【0013】
また、スリットより先端側に管体の外径より大きく、その外径の1.1倍より小さいフリクションカット部を設けることで、設置後の地盤とスリットとの所望される密着度を確保したうえで、打ち込み時にスリットに地盤が圧着されることによる目詰まりの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の有孔管材の構成を示した説明図である。
【図2】有孔管材のスリット近傍の構成を説明する図であって、(a)は上半に側面、下半に断面を示した図、(b)は(a)のA−A矢視方向で見た断面図、(c)は(a)のB−B矢視方向で見た断面図である。
【図3】有孔管材を地盤に打ち込んだ状態を示した説明図である。
【図4】実施例1で説明する性能確認実験の実験状況を示した説明図である。
【図5】実施例2で説明する性能確認実験の結果を示したグラフである。
【図6】実施例2で説明する性能確認実験の結果を示したグラフである。
【図7】実施例2で説明する性能確認実験の結果を示したグラフである。
【図8】実施例3の有孔管材の構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施の形態の有孔管材1を設置して構築される井戸は、地中に空気を圧入するためのスパージング井戸として使用したり、地中に空気と水を同時に供給するためのバイオスパージング井戸として使用したり、地中に水や地盤改良用の薬液などの液体を注入するための液体注入井戸として使用したり、調査などの目的で地中の地下水を採取するための観測井戸として使用したり、汚染された土壌に含まれる有害ガスを吸い取るための気体吸引井戸として使用したり、揚水井戸として使用したりすることができる。
【0017】
この有孔管材1は、図1に示すように、円筒状の鋼管によって形成される管体11と、その先端に形成される下向き円錐状の先端部12とを備えている。この先端部12は、小型のクローラ式の打込み機4(図3参照)やクレーンで支持させたリーダーに沿って昇降するモータ付きロッド(図示省略)などによって有孔管材1を地盤Gに打ち込めるように、先端が尖った形状に形成されている。
【0018】
また、先端部12は、打ち込み時に他の個所よりも大きな力が作用するので、強度の高い材料で形成する。さらに、先端部12の先端角度αを60度以下に設定することで、有孔管材1の推進性能を向上させることができる。
【0019】
また、管体11の外周には、複数のスリット2,・・・が設けられており、そのスリット2,・・・によって内外が連通して地下水やガスを内部に取り込んだり、水や空気を地中に送り込んだりすることができる。
【0020】
このスリット2,・・・は、地盤Gに対する流体の供給や採取をおこないたい範囲に間隔をおいて複数形成される。このスリット2は、図2(a)に示すように、長さL、幅Wの細長い矩形状に形成される。
【0021】
また、図2(b),(c)に示すように、管体11の周方向に間隔を置いて複数のスリット2,・・・が設けられる。この図2に示した管体11には、周方向に60度間隔で6(=s)個のスリット2,・・・が形成されている。さらに、管体11の長尺方向(軸方向)に隣接するスリット2,2同士は、千鳥配置となっている。なお、スリット2,・・・の間隔及び配置は任意に設定することができ、例えば周方向の間隔を30−72度の範囲で設定するなどスリット2,・・・が形成できればどのような間隔であってもよい。
【0022】
そして、図1に示すように、周方向に設けられるs個のスリット2,・・・によって構成されるスリット群Nを1段とすると、有孔管材1にはn段のスリット群Nが設けられる。
【0023】
ここで、一つのスリット2の開口面積はL×Wによって算出されるため、周方向にs個のスリット2,・・・が配置されたスリット群Nがn段ある場合の総開口面積SAは、以下の式によって算出される。
【0024】
SA=L×W×s×n (1)
一方、図2に示すように、管体11の外径をD、肉厚をtとすると、管体11の内径d=D−2tとなる。そして、管体11の内空断面積PAは、以下の式によって算出される。
【0025】
PA=πd/4 (2)
本実施の形態では、総開口面積SAが内空断面積PAの3倍以下になるように設定する。
【0026】
次に、本実施の形態の有孔管材1を用いた井戸の構築方法について図3を参照しながら説明する。
【0027】
まず、移動が可能な打込み機4を、井戸を構築する地盤G上に移動させる。そして、打込み機4の打込み部41に有孔管材1の頭部を接続し、地盤Gに向けて鉛直に打ち込みを開始する。なお、地表近くに砕石を含む埋め戻し土や舗装がある場合は、予めケーシング掘りなどによって打ち込み可能な深さまで掘削をおこなう。
【0028】
この有孔管材1の打ち込みは、地盤Gから有孔管材1の上部が少し突出した状態になるまでおこない、その時点で一旦、打ち込みを停止して打込み部41を有孔管材1の上端から切り離す。
【0029】
そして、有孔管材1の上端に、図3に示すように、ケーシングパイプ3を接続する。このケーシングパイプ3は、外周にスリット2などの開口部が形成されていない筒状の鋼管である。
【0030】
ここで、有孔管材1とケーシングパイプ3との接続はねじ溝を介しておこなうことができ、繋ぎ目の外側から表面が滑らかな養生シールテープなどを貼り付けて遮蔽処理をおこなうのが好ましい。
【0031】
続いて、打込み部41を下げて新たに接続したケーシングパイプ3の頭部に接続し、打込み機4による打ち込みを再開し、地盤Gから一本目のケーシングパイプ3の上部が少し突出した状態で打ち込みを停止して、再び打込み部41を切り離す。
【0032】
そして、所望する深さに有孔管材1が配置されるまで、ケーシングパイプ3を接続して打ち込む作業を繰り返す。このようにして打ち込みが終了したときには、図3に示すように、有孔管材1のスリット2,・・・が、対象地盤である細砂層に配置されることになる。
【0033】
このように構成された本実施の形態の有孔管材1は、スリット2,・・・の総開口面積SAを管体11の内空断面積PAの3倍以下に設定することで、スリット2からの吐き出し圧力を高くすることができ、有孔管材1を細砂層に設置した後にスリット2に砂分が付着したり、スリット2が目詰まりしたりしても、管体11に供給される空気、水又はそれら両方の圧力によって付着物を外側に押し出し、容易に目詰まりを解消することができる。
【実施例1】
【0034】
以下、この実施例1では、前記した実施の形態で説明した有孔管材1の性能を確認するためにおこなった実験の結果について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
[実験1]
実験1では、有孔管材1のスリット2が、地盤Gへの打ち込み時に目詰まりを起こすことがないかの確認をおこなった。この実験1で使用した有孔管材1の仕様Aを表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
このような仕様Aの有孔管材1を使って、2つのケースで図3に示した細砂層まで有孔管材1の打ち込みをおこなった。ここで、ケース1は、スリット2をそのままの状態にして打ち込む場合である。また、ケース2は、スリット2に水溶解性の樹脂を塗布してスリット2の打ち込み時の目詰まりが起きないようにした場合である。
【0037】
また、有孔管材1を設置する細砂層は、ほぼ均一な地盤で、その土質性状は、土粒子密度ρsが2.69、自然含水比Wnが21.7%、平均粒径(50%粒径)が0.14mm(礫分0%,砂分77.7%,シルト分17.6%,粘土分4.7%,最大粒径0.85mm)、飽和透水係数(定水位)が4.8×10-7m/sである。
【0038】
ここで、地盤Gに打ち込まれた有孔管材1の性能を確認するためにおこなった実験について、図4を参照しながら説明する。この有孔管材1の上端にはケーシングパイプ3が接続されており、ケーシングパイプ3の上端は供給管68に接続されている。
【0039】
この供給管68は、途中の分岐管69の位置から分岐しており、一方はエアホース62を介してコンプレッサ61に接続されている。コンプレッサ61と分岐管69との間には、流量計63及び圧力計64が取り付けられており、コンプレッサ61から有孔管材1に供給される空気の量と圧力が測定できるようになっている。また、エアホース62の途中には調整バルブ62aが設けられており、供給する空気量を調整できるようになっている。
【0040】
そして、分岐管69から分岐する他方は、給水管66を介して給水ポンプ65に接続されている。この給水ポンプ65は水槽65aに沈められており、水槽65aごと重量計65bに載せられている。また、給水管66の途中には圧力計67が取り付けられている。すなわち、重量計65bの測定値から水の供給量がわかり、圧力計67の測定値から供給時の水圧がわかる。なお、より詳細に説明すると、給水ポンプ65には給水管66から水槽65aに水を戻す分岐経路(図示省略)が接続されており、その分岐経路の途中にあるバルブ(図示省略)を調整して水槽65aに戻る返送水量を調整することで給水管66に供給する水量(圧力)を調整する。
【0041】
このように構成された実験装置であれば、任意の圧力で任意の量の空気、水又はそれら両方を有孔管材1に向けて供給することができる。表2には、この実験装置を使って有孔管材1に空気を供給したときの空気供給量(風量)と井戸内圧力との関係を示している。
【0042】
【表2】

【0043】
ここで、空気供給量と井戸内圧力との関係は、空気供給量が増加すればそれに伴って井戸内圧力も上昇することになるが、目詰まりが発生している場合は発生していない場合に比べて井戸内圧力の上昇率が非常に大きくなるため、双方の比較をおこなうことによって判断できる。
【0044】
この実験1では、ケース2は目詰まりが発生していない場合であり、それと比較するとケース1は略同じペースで井戸内圧力が上昇している。このため、スリット2の幅Wを0.3mmにした場合は、有孔管材1に打ち込み時の目詰まり対策を施さなくても目詰まりが発生しないといえる。
[実験2]
実験2では、管体11の材質、及びスリット2の形状、数、配置などの相違が与える影響についての確認をおこなった。比較は、実験1で示したケース1(仕様A)と、以下の表3で示した仕様Bの有孔管材1を使ったケース3とでおこなった。
【0045】
【表3】

【0046】
そして、表4に、ケース1(仕様A、表1)とケース3(仕様B、表3)の実験結果を示した。
【0047】
【表4】

【0048】
この実験2の結果を見ると、管体11の内空断面積PAに対するスリット2,・・・の総開口面積SAの比率が小さく、材質が他と異なるケース3においても、ケース1と略同じペースで井戸内圧力が上昇していることがわかる。
【0049】
このため、スリット2の幅Wを0.2−0.3mm、内空断面積PAに対する総開口面積SAの比率が50−80%となる範囲であれば、有孔管材1のスリット2,・・・に打ち込み時の目詰まり対策を施さなくても目詰まりが発生しないといえる。
[実験3]
実験3では、有孔管材1を埋設させる地盤Gの土質の相違による効果の違いについて確認をおこなった。この実験3の対象地盤は、図3に示した細砂層の下層のシルト層である。
【0050】
このシルト層は、ほぼ均一な地盤で、その土質性状は、土粒子密度ρsが2.68、自然含水比Wnが72.8%、平均粒径(50%粒径)が0.0044mm(礫分0%,砂分1.1%,シルト分46.9%,粘土分52.0%,最大粒径0.25mm)、飽和透水係数(定水位)が1.0×10-9m/sである。
【0051】
そして、このシルト層に、表5に示す仕様Cの有孔管材1を埋設して実験をおこなった。
【0052】
【表5】

【0053】
そして、表5に示した仕様Cの有孔管材1を使った場合をケース4としておこなった実験の結果を、表6に示した。
【0054】
【表6】

【0055】
ここで、ケース4では、150L/minの風量まで空気を供給することができ、風量を50L/minから150L/minに増加させても井戸内圧力はほとんど変化しなかった。これは、風量が増えるにしたがって、有孔管材1の打ち込み時に目詰まりを起こしたスリット2に高い風圧がかかって目詰まりが徐々に解消され、スリット2,・・・の開口の総面積が風量の上昇と共に増加していくためと考えられる。
【0056】
よって、スリット2の総開口面積SAとスリットの幅Wを適切に調整すれば、対象地盤がシルト層であっても細粒分による目詰まりを解消することが可能なことが確認できた。
【実施例2】
【0057】
以下、この実施例2では、実施例1に続いて前記した実施の形態で説明した有孔管材1の性能(スリット幅、SA/PA比の範囲)を確認するためにおこなった実験の結果について説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0058】
この実施例2の実験で使用した有孔管材1の仕様を表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
このような仕様の有孔管材1を使って、シルト混じり砂層に有孔管材1の打ち込みをおこなった。有孔管材1の打設深度はGL-7mである。シルト混じり砂層は、土粒子密度ρsが2.67、自然含水比Wnが20.2%、平均粒径(50%粒径)が0.29mm(礫分1%,砂分77%,シルト・粘土分22%)、飽和透水係数(変水位)が7.2×10-8m/sである。
【0061】
また、有孔管材1の打設時における地下水位、及び汚泥のスリット2,・・・からの管体11内部への流入可能性を評価するために、有孔管材1の打設後の管内における地下水位及び汚泥堆積高さを測定した。
【0062】
そして、実施例1の図4で説明した地上に設置したコンプレッサ61及び給水ポンプ65を使って、ケーシングパイプ3を介して有孔管材1に、1)空気のみを供給する場合、2)空気と水の両方を供給する場合、3)水のみを供給する場合に分けて実験をおこなった。
【0063】
この実験では、空気や水を供給した時の井戸内圧力と風量(又は水供給量)との関係から有孔管材1の目詰まりの可能性について評価した。表8に、有孔管材1を地盤Gに打ち込んだ直後の地下水位及び汚泥堆積高さの測定結果を示した。
【0064】
【表8】

【0065】
この表8の結果を見ると、スリット幅Wが0.2−0.6mmの仕様T1−T8の有孔管材1については、打設後に若干の地下水が有孔管内に浸入しているが、汚泥堆積高さの結果を見ると管内への土砂の侵入はないといえる。これに対して、スリット幅Wが2mmとなる仕様H1の有孔管材については、大量の地下水と土砂の侵入が確認された。
【0066】
続いて、これらの仕様T1−T8,H1の管内に空気を供給したときの空気供給量と井戸内圧力との関係を図5に示した。ここで、仕様T1−T8については、管打設後に井戸洗浄をすることなく空気供給をおこなった。これに対して仕様H1については、打設後に水洗浄による管内土砂の除去をおこなった。
【0067】
この実験では、井戸内(有孔管材内)に供給する空気を50L/min→100L/min→150L/minの順で増加させていき、井戸内圧力を測定した。その結果、有孔管材1の仕様T1−T8については、井戸洗浄を実施しなくても空気供給が可能であることが確認できた。
【0068】
また、井戸洗浄を実施している仕様H1はスリットに目詰まりが生じていない状態であり、この場合は空気供給量に比例して井戸内圧力が上昇することが確認できた。
【0069】
そして、図5(a),(b)に示すように、スリット幅Wが0.2mm又は0.4mmの仕様T1−T5においては、風量を50→100 L/minに増加したときと比較して、100→150 L/minに増加したときの井戸内圧力の上昇が小さくなっていることがわかる。これは、風量を増加させることによりスリット2に対する圧力が高まって、スリット2を塞いでいた一部の土砂が掃き出された結果と考えられる。
【0070】
続いて、風量を100 L/minに固定して、1本の井戸から空気と水の両方を供給することが可能であるかどうかを確認した結果を図6に示した。この図6の結果を見ると、水供給量が右肩上がりに増加しており、100 L/minの風量に固定された空気と同時に水が供給されていることがわかる。
【0071】
続いて、図7に、水のみを供給した実験の結果を示した。なお、実験を開始する前に自然流入での水の供給可能性について調べたが、井戸に水を供給しても圧力をかけなければ、井戸管内の水位はほとんど低下せず、水供給を行うことができなかった。そこで、水供給圧を0.1MPa→0.2MPa→0.3Mpaに増加したときの注入水量の水位を図7に示した。この結果、仕様T1−T8の有孔管材1は、井戸洗浄を実施している仕様H1とほぼ同様の挙動を示し、水の供給が可能であることが確認できた。
【実施例3】
【0072】
以下、この実施例3では、前記した実施の形態とは別の実施の形態について図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0073】
この実施例3では、フリクションカット部5を備えた有孔管材1Aについて説明する。このフリクションカット部5は、図8に示すように、管体11と先端部12との間に設けられる。すなわち、フリクションカット部5を設ける位置は、スリット2,・・・を設けた位置より先端側となる。
【0074】
また、フリクションカット部5は、例えば管体11先端の外周に円環状に形成される。また、その外径Fは、管体11の外径Dより大きく、その外径Dの1.1倍より小さい範囲で設定される。
【0075】
このようにスリット2,・・・よりも先端側にフリクションカット部5を設けることで、図8に示すように管体11よりも大きく地盤Gが削られる。このため、打ち込み時に管体11の外周面と地盤Gとの間に発生する摩擦抵抗が低減され、有孔管材1を効率よく推進させることができる。
【0076】
さらに、フリクションカット部5を設けることで、打ち込み時に地盤Gがスリット2,・・・に圧着される状態になり難くなるので、目詰まりの発生を抑えることができる。
【0077】
また、フリクションカット部5の外径Fを、管体11の外径Dの1.1倍より小さくすることで、設置後の地盤Gとスリット2,・・・との所望される密着度を確保することができる。
【0078】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1,2と略同様であるので説明を省略する。
【0079】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0080】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、有孔管材1を地盤Gに直接、打ち込む場合について説明したが、これに限定されるものではなく、先行して削孔された孔に有孔管材1を挿入して井戸を構築する場合にも有孔管材1を使用することができる。
【0081】
また、前記実施例1では、有孔管材1にコンプレッサ61によって圧縮された高圧の空気を供給することでスリット2の目詰まりを解消させる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、水と空気の混合流体や高圧水などを有孔管材1に供給することでスリット2の目詰まりを解消させることもできる。
【0082】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、対象地盤の所定の位置に停止させた状態で空気を供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、有孔管材1を鉛直方向に移動させながら空気等の流体を有孔管材1に断続的に供給し続けることで、鉛直方向の広い範囲にわたって流体を供給したり、鉛直方向の広い範囲から流体を採取したりすることができる。
【0083】
また、地盤Gに薬液や固化液を注入して地盤改良をおこなう際にも、有孔管材1を鉛直方向に移動させることによって、広い範囲の対象地盤を改良することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,1A 有孔管材
11 管体
2 スリット
5 フリクションカット部
W スリットの幅
SA 総開口面積
PA 内空断面積
D 管体の外径
F フリクションカット部の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の外周に、管体の長尺方向が長さ方向となる細長い矩形状のスリットが複数、形成されて内外が連通される有孔管材であって、
前記スリットは幅が0.2−0.6mmに形成されるとともに、前記複数のスリットの総開口面積が前記管体の内空断面積の3倍以下に設定されることを特徴とする有孔管材。
【請求項2】
前記管体の前記スリットを設けた位置より先端側に、前記管体の外径より大きく、その外径の1.1倍より小さい外径のフリクションカット部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有孔管材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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