説明

有害事象の予後診断のためのプロカルシトニン

本発明は、対象由来の体液のサンプル中のプロカルシトニン(PCT)もしくはそれのフラグメントまたは前駆体もしくは少なくとも12アミノ酸残基を有するそれのフラグメントのレベルの決定および決定したレベルと支持する有害事象の潜在的なリスクとの相互関係を含む、無症状の対象についての有害事象の予後診断のためのインビトロにおける方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断の分野に関する。特に、本発明は、対象の体液由来のサンプルにおけるプロカルシトニン(Procalcitonin)(PCT)のレベルの決定に関する。
【背景技術】
【0002】
プロカルシトニンは、局所および全身の細菌感染、例えば敗血症などの存在および重症度を反映するバイオマーカーとして知られている(Assicot et al.,Lancet 1993;341:515‐8;Muller et al.,Crit Care Med 2000;28:977‐83;Harbarth et al.,Am J Respir Crit Care Med 2001;164:396‐402;Becker et al.,Crit Care Med 2008;36:941‐52;Becker et al.,J Clin Endocrinol Metab 2004;89:1512‐25;Nobre et al.,Am J Respir Crit Care Med 2008;177:498‐505;Christ−Crain et al.,Lancet 2004;363:600‐7;Stolz et.al.,Chest 2007;131:9‐19;Christ−Crain et al.,Am J Respir Crit Care Med 2006;174:84‐93;Briel et al.,Arch Intern Med 2008;168:2000‐7;discussion 7‐8)。
【0003】
細菌感染の間、血漿PCT濃度は、典型的に0.25ng/ml以上となる。より最近、高感度アッセイ技術の使用により、いくつかの非感染性疾患において、PCT濃度が、通常の範囲であるがより高い濃度範囲または通常の範囲以上に上昇するかもしれないことが見出されてきたが、抗細菌治療を必要とする細菌感染と関連することが知られている濃度よりも下である。それ以上に、これらのPCT濃度は、これらの患者の望ましくない予後に関連することが見出された。
【0004】
これらの疾患は、冠状動脈疾患および急性冠症候群を含む。健康な個人についての定量的PCT濃度を記載する刊行物が2つだけある(Morgenthaler et al.,Clin Chem 2002,48:788−790;Morgenthaler et al.,Clin Lab 2002,48:263−270)。しかしながら、健康的な個人において相対的に上昇したPCT濃度が、潜在的な将来の有害事象の発生と関連するか否かは、知られていない。診察時に見かけ上健康である個人に対して将来の有害事象を予測する可能性は重要である。なぜなら、リスクの早期認識は、有害事象の進行を予防するための手助けとなる手段を開始するための要件となるからである。
【0005】
従って、有害事象の予後診断で、見かけ上健康な(無症状である)集団のPCTレベル間の関連を確立することが、本発明の対象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、後に有害事象を患う無症状の対象由来のサンプルにおけるPCTレベルが、後に有害事象を患わない無症状の対象由来のサンプルにおけるPCTレベルと比較して、統計的に関連性のある態様で増加するという驚くべき知見に基づく。
【0007】
本発明は、無症状の対象が有害事象を体験することについての予後診断用インビトロ方法に関する。本方法は、第一に、対象由来のサンプル中におけるプロカルシトニン(PCT)またはそれのフラグメントのレベルを測定し;
第二に、プロカルシトニンまたはそれのフラグメントのレベルを、対象が有害事象を患うリスクと関連付けすることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、見かけ上は健康な対象が、有害事象を患うリスク決定のための、または見かけ上健康な対象が将来において有害事象を患う増加したリスクの有無の決定のための方法に関する。好ましくは、約6ヶ月から10年の期間の間の有害事象の発生のリスクを、予測することができる。本方法は、以下の工程:
第一に、対象からサンプルを準備し、
第二に、当該サンプル中においてプロカルシトニンまたはそれのフラグメントのレベルを決定し、
第三に、上記PCTレベルに基づいて、上記対象が有害事象患うリスクを決定するか、または当該PCTレベルに基づいて、当該対象が、有害事象を患う増加したリスクを有するか否かを決定すること、
を含む。
【0009】
用語「リスク」は、ある有害事象を、将来患う対象のための確率を指す。
【0010】
本明細書において使用される「対象(subject)」とは、生存しているヒトまたはヒトでない生物を指す。好ましい実施態様において、対象は、ヒトである。さらに、対象から対象由来のサンプルを得る時点で、対象が細菌感染を含まない(無症状)ことが、好ましい。これは、PCTレベルが、対象の通常の範囲より上に増加していないことを確保する。従って、対象は、本発明の方法を行う前に、細菌感染の検査を受けることが好ましい。
【0011】
「見かけ上健康な(apparently healthy)」対象は、どんな非感染性疾患も含まないことがまた好ましい、すなわち対象は、非感染性疾患の診断において認めるであろう症状を全く示さない。用語「非感染性疾患(non‐infectious disease)」は、例えば高血圧、整形外科疾患、例えば骨粗しょう症、および神経変性疾患、例えばアルツハイマー疾患などの疾患を指す。出産後の外傷のため、新生児においてPCT濃度が増強することが知られている。従って、本請求項から新生児は除く。本発明の定義による新生児は、好ましくは産後1日〜10日の間、より好ましくは1日〜3日の間である。また、例えば、心臓移植、肺移植、肝臓移植、腎臓移植などの器官移植後、心臓手術などの手術後の患者において、PCT濃度は増強することが知られている。従って、心臓移植、肺移植、肝臓移植、腎臓移植などの器官移植後、心臓手術などの手術後の患者は、仮に当該手術が7日以内に行われていれば、見かけ上健康なヒトの群から除き、好ましくは手術後の患者は、仮に当該手術が14日以内に行われていれば除く。他の実施態様において、2月以内に手術を受けた手術後の患者は除く。選択的に、14日以内に、好ましくは7日以内に、前記外傷を経験した外傷後の患者および対象は除く。
【0012】
本明細書で使用されるように、用語「サンプル」は、患者などの目的の対象の診断、予後診断、または評価の目的で得た体液のサンプルを指す。好ましい試験サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、および胸水を含む。さらに、当業者は、いくつかのテストサンプルが、以下の、例えば、血液全体から血清または血漿成分を分離するなどの分画または精製処置でより簡単に分析されるであろうことを理解するであろう。
【0013】
従って、本発明の好ましい実施態様において、サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、唾液サンプルおよび尿サンプルまたは任意の前記のサンプルの抽出物からなる群から選択されるサンプルである。好ましくは、サンプルは血液サンプルであり、より好ましくは、血清サンプルまたは血漿サンプルである。
【0014】
本発明において、用語「予後診断(prognosis)」は、対象の(例えば、患者の)健康状態がどのように進行するかの予測を意味する。これは、前記対象について起こる有害事象の見込みの評価を含む。
【0015】
「有害事象(adverse event)」または「有害事象(adverse outcome)」は、個人の健康を損なうような事象または結果を定義する。前記有害事象は、心臓事象(cardiac event)、心血管事象(cardiovascular event)、脳血管事象(cerebrovascular event)、癌、糖尿病、およびすべてに起因する死亡からなる群から選択されてもよいが、これらに制限されない。有害事象は、感染、重篤な感染、および敗血症様全身感染および敗血症を含む。有害(adverse)は、急性外的要因に誘導される有害事象および/または外的要因に誘導される外傷により引き起こされる事象ではない。外的要因誘導性の外傷は、例えば、自動車事故などの事故によって誘導され得る外的要因を含む。外的要因誘導性の外傷は、従って有害事象の群から除かれる。
【0016】
心臓事象は、以下の事象:急性心筋梗塞(ICDコード 410)、急性および亜急性虚血性心疾患(ICDコード 411)、および以下の処置:冠動脈バイパス手術または経皮的冠動脈形成術の任意の合計として定義される。
【0017】
脳血管事象は、以下の事象:脳実質外動脈の閉塞または狭窄(ICDコード 433)または脳動脈の閉塞または狭窄(ICDコード 434)の任意の合計として定義される。
【0018】
心血管死亡(cardiovascular mortality)は、心臓性のまたは脳血管事象による死亡として定義される。心血管の全ての事象は、心臓事象、脳血管事象、および心血管死亡の合計として定義される。
【0019】
明細書に述べるように、タンパク質またはペプチドの文脈において、用語「フラグメント」は、より大きなタンパク質またはペプチド由来のより小さなタンパク質またはペプチドを指し、そしてそれは、従って、より大きなタンパク質またはペプチドの部分的な配列を含む。前記フラグメントは、一またはそれ以上のそのペプチド結合のケン化により、より大きなタンパク質またはペプチドに由来する。
【0020】
本発明の文脈におけるプロカルシトニンは、好ましくは、アミノ酸残基1〜116、2〜116、もしくは3〜116にまたがるペプチド、またはそれのフラグメントに関する。従って、プロカルシトニンフラグメントの長さは、少なくとも12または15のアミノ酸、好ましくは50超のアミノ酸、より好ましくは100超または110超のアミノ酸であるべきである。
【0021】
PCTは、グルコシル化、脂質過酸化または誘導体化などの翻訳後修飾を含んでもよい。PCT自体は、カルシトニンおよびカタカルシンの前駆体である。PCT1〜116のアミノ酸配列は、配列番号1において与えられる。
【0022】
本発明の文脈における用語「レベル」は、対象から取ったサンプルにおけるPCT(または、フラグメント/前駆体)の濃度(好ましくは質量/体積;w/vとして表される)に関する。
【0023】
本明細書におけるPCTもしくはフラグメント、または前駆体もしくはそれのフラグメントのレベルの決定(または測定または検出)は、以下で説明する検出方法および/または診断上のアッセイを使用して行う。
【0024】
明細書に述べるように、「アッセイ」または「診断上のアッセイ(diagnostic assay)」は、診断の分野の任意のタイプを適用できる。そのようなアッセイは、検出される検体を、特定の親和性を有する一またはそれ以上の捕捉プローブ(capture probe)に結合させることに基づいてもよい。捕捉分子(capture molecule)と標的分子または目的の分子間の相互作用に関して、親和定数は、好ましくは108-1超である。
【0025】
本発明の文脈において、「捕捉分子」は、標的分子または目的の分子、すなわちサンプル由来の検体(すなわち、本発明の文脈において、心血管ペプチド(一または複数))と結合するために使用されてもよい。捕捉分子は、従って、空間的におよび表面特徴、例えば、表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナーおよび/またはアクセプターの有無の点で、標的分子または目的の分子と特異的に結合するために、適当に形作らなければならない。これによって、結合は、例えば、イオン性、ファンデルワールス、π‐π、σ‐π、疎水性、もしくは水素結合相互作用、または捕捉分子と標的分子もしくは目的の分子との間の、2またはそれ以上の前述の相互作用の組み合わせであってもよい。本発明の文脈において、捕捉分子は、例えば、核酸分子、炭化水素分子、RNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド、または糖タンパク質を含む群から選択されてもよい。好ましくは、捕捉分子は、抗体であり、標的もしくは目的分子に十分な親和性を有するそれのフラグメントを含み、そして組み替え抗体もしくは組み替え抗体フラグメント、並びに前記抗体またはそれのフラグメントの化学的および/または生化学的に修飾された誘導体であって、少なくとも12のアミノ酸長のバリアント鎖由来のフラグメントである。
【0026】
好ましい検出方法は、さまざまな形式についての免疫測定、例えば、放射免疫測定(RIA)、化学発光免疫測定、蛍光免疫測定、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、ルミネックスに基づくビーズアレイ(luminex‐based bead arrays)、タンパク質マイクロアレイ測定、および迅速形式試験、例えば、免疫クロマトグラフィーストリップ試験(immunochromatographic strip test)などを含む。
【0027】
PCTレベルの決定は、好ましくは抗体(ポリクローナル、または好ましくはモノクローナル)、特にPCTのカタカルシン部分またはカルシトニン部分に特異的に結合する抗体を使用して行う。
【0028】
アッセイは、ホモジニアスまたはヘテロジニアス測定、競合および非競合測定であり得る。特に好ましい実施態様において、測定は、非競合免疫測定であるサンドイッチ測定の形態であり、そこで検出されるおよび/または定量される分子は、一次抗体と結合し、そして二次抗体と結合する。一次抗体は、固相、例えば、ビーズ、ウェルまたは他の容器の表面、チップまたはストリップと結合してもよく、そして二次抗体は、例えば、色素で、放射性同位体で、または反応性のもしくは触媒的な活性成分で標識された抗体である。検体と結合する標識された抗体の量は、その後、適当な方法で測定する。「サンドイッチアッセイ」に関係する一般的な組成物および手順は、よく確立されそして当業者に知られている(The immunoassay Handbook,Ed.David wild,Elsevier LTD,Oxford;3rd ed.(May 2005),ISBN‐13;978‐0080445267;Hultschig C et al.,Curr Opin Chem Biol.2006 Feb;10(1):4‐10.PMID:16376134,参照により明細書に組み込まれる)。
【0029】
特に好ましい実施態様において、測定は二つの捕捉分子、好ましくは液体反応混合物中に分散型でともに存在する抗体を含み、そこで、一次標識成分は、一次捕捉分子と結合し、ここで当該一次標識成分は、蛍光もしくは化学発光の抑制または増幅に基づく標識システムの一部であり、そして当該標識システムの二次標識成分は、第二捕捉分子に結合し、その結果、両方の捕捉分子が検体に結合した場合に、測定可能なシグナルが生じ、それによりサンプルを含む溶液中で形成されたサンドイッチ複合体の検出が可能になる。
【0030】
さらに好ましくは、前記標識システムは、希土類クリプテートまたは希土類キレートと蛍光色素または化学発光色素、特にシアニンタイプの色素との組み合わせを含む。
【0031】
本発明の文脈において、色素の使用を含む蛍光に基づくアッセイは、そしてそれは、例えば、FAM(5‐または6‐カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、IRD‐700/800、シアニン色素、例えばCY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7、キサンテン、6‐カルボキシ‐2’,4’,7’,4,7‐ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6‐カルボキシ‐4’,5’‐ジクロロ‐2’,7’‐ジメトジフルオレセイン(JOE)、N,N,N’,N’‐テトラメチル‐6‐カルボキシルローダミン(TAMRA)、6‐カルボキシ‐X‐ローダミン(ROX)、5‐カルボキシローダミン‐6G(R6G5)、6‐カルボキシローダミン‐6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、ボディピー(BODIPY)色素、例えばボディピーTMR、オレゴングリーン、クマリン、例えばウンベリフェロン、ベンジミド、例えばヘキスト33258;フェナントリジン、例えばテキサスレッド、ヤキマイエロー、アレクサフルオル、PET、エチジウムブロマイド、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素、およびそのようなものからなる群からから選択されてもよい。本発明の文脈において、色素の使用を含む、化学発光に基づく測定は、「KirkOthmer,Encyclopedia of chemical technology,4thed.,executive editor,J.I.Kroschwitz;editor,M.Howe‐Grant,John Wiley&Sons,1993,vol.15,p.518‐562」における発光色素材料に記載された物理的原理に基づき、551頁〜562頁の引用を含んで、参照において本明細書に取り込まれる。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0032】
本発明の方法において、見かけ上健康な対象の有害事象を患う増加するリスクを決定するためのいくつかの手段が、応用できる。本方法は、比較できる集団におけるPCTの予め決定した値で対象中のPCTのレベルを比較することを含んでもよい。これは、単一のカットオフ値、例えば、中央値または平均値または、集団の75、90、95または99パーセンタイル(percentile)があり得る。あるいは、範囲が用いられることもあり、例えば、試験される集団が、均等にまたは不均等にグループに分割され(例えば、低度、中度、高度リスククループ)または四分位値(quartile)に分割され、最も低い四分位値は、もっとも低リスクの個人でありそしてもっとも高い四分位値はもっとも高いリスクの個人である。
【0033】
予め決定した値は、特定のファクター、例えば性別、年齢、遺伝学、習慣、民族性、またはよく似たものに依存して、選択される特定の集団間で変化してもよい。
【0034】
好ましくは、リスク決定は、以下の選択肢:
‐ 測定したPCTまたはPCTフラグメントのレベルと、見かけ上健康な対象の集団由来の予め測定されたサンプルの集合においてPCTまたはそれのフラグメントのレベルの中央値の比較、または
‐ 測定したPCTまたはPCTフラグメントのレベルと、見かけ上健康な対象の集団由来の予め測定したサンプルの集団におけるPCTまたはそれのフラグメントの変位値(quantile)との比較、または
‐ コックス比例ハザード分析またはリスク指標の算定、例えば正味の再分類指数(Net Reclassification Index)(NRI)または総合判別指数(Integrated Discrimination Index)(IDI)などに基づく算定の実行
の使用により行われる。
【0035】
他の実施例において、オッズ比、またはハザード比は、リスクを予測するためのまたは疾患を診断するための試験能力の測定として使用される。
【0036】
オッズ比の場合,1の値は,「疾病を有する(diseased)」および「対照」群の両方の対象において陽性結果が同等に起こりそうであることを示し;1より大きい値は,疾病群において陽性結果がより起こりそうであることを示し;1より小さい値は,対照群において陽性結果がより起こりそうであることを示す。ある好ましい態様において,マーカーおよび/またはマーカーパネルは,好ましくは,少なくとも約1.5またはそれ以上または約0.75またはそれ以下,より好ましくは,少なくとも約2またはそれ以上または約0.5またはそれ以下,さらにより好ましくは少なくとも約3またはそれ以上または約0.33またはそれ以下,さらにより好ましくは少なくとも約4またはそれ以上または約0.25またはそれ以下,さらにより好ましくは少なくとも約5またはそれ以上または約0.2またはそれ以下,もっとも好ましくは少なくとも約10またはそれ以上または約0.1またはそれ以下のオッズ比を示すよう選択される。この文脈において,用語「約(about)」は、所与の測定値の+/−5%を指す。
【0037】
ハザード比の場合,1の値は「疾病を有する(diseased)」および「対照」群の両方でエンドポイント(例えば死亡)の相対的リスクが等しいことを示し;1より大きい値は疾病群においてリスクがより高いことを示し;1より小さい値は対照群においてリスクがより高いことを示す。ある好ましい態様において,マーカーおよび/またはマーカーパネルは,好ましくは,少なくとも約1.1またはそれ以上または約0.91またはそれ以下,より好ましくは少なくとも約1.25またはそれ以上または約0.8またはそれ以下,さらにより好ましくは少なくとも約1.5またはそれ以上または約0.67またはそれ以下,さらにより好ましくは少なくとも約2またはそれ以上または約0.5またはそれ以下,およびもっとも好ましくは少なくとも約2.5またはそれ以上または約0.4またはそれ以下のハザード比を示すよう選択される。この文脈において,用語「約(about)」は、所与の測定値の+/−5%を指す。
【0038】
例えば表6において見られるように、本発明者らは、将来ある有害事象を患う対象について示すPCTレベルのカットオフ値を確立することを可能にした。血清サンプルのPCTレベルが、少なくとも0.015ng/ml(血清)、好ましくは0.02ng/mlの時、一般的に、対象が有害事象を患うリスクを有することを決定できる。
【0039】
具体的に、血清サンプル中の前記PCTレベルが少なくとも0.0155ng/ml(血清)の場合に、対象は、心臓事象または心血管事象を患う増加したリスクを有すると決定される。血清サンプル中の決定されたPCTレベルが、少なくとも0.0215ng/mlの場合に、対象は、脳血管事象または脳血管原因による死亡を患う増加したリスクを決定される。血清サンプル中のPCTレベルが、少なくとも0.0155ng/mlの場合に、対象は、癌による死亡の増加したリスクを有することを決定される。血清サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.0205ng/mlの場合に、対象は死亡の増加したリスクを有することを決定され、血清サンプル中のPCTレベルが、少なくとも0.0185ng/mlの場合に、対象は糖尿病を患うリスクを有することを決定される。
【0040】
本発明の方法において少なくとも一のさらなるパラメーターが決定され、そして有害事象を患うリスクまたは増加したリスクを決定するために使用されることが好ましい。そのようなさらなるパラメーターは、臨床のパラメーター、ラボラトリー(すなわち生化学的)パラメーターおよび/または遺伝学的パラメーターであろう。
【0041】
対象を異なる群(カテゴリー)へと層分類するための適当な閾値は、患者の参照集団を、そのPCTレベルに従って、特定の変位値、例えば三分位値、四分位値、五分位値へと群分けするか、または適当なパーセンタイルに従い群分けすることにより決定される。特定のパーセンタイルより上および下の各変位値または各群について、ハザード比は、例えば生存率の観点で、有害事象(adverse outcome)、すなわち「好ましくない効果(unfavorable effect)」についてのリスク、つまり増加したリスクを比較することにより、計算することができる。そのようなシナリオにおいて、1超のハザード比(HR)は、患者の有害事象(adverse outcome)のより高いリスクを示す。1未満のHRは、より低いリスクを示す。1付近のHR(例えば+/−0.1)は、患者の特定の群の非上昇リスクを示す。患者の特定の変位値間のHRを、互いに比較し、そして患者の全体集合のHRと比較することにより、増加したレベルを有し、そして増加したリスクを有する患者の変位値を同定することが可能になる。
【0042】
診断および/または予後試験の感度および特異度は,単なる試験の分析の「質」を超えるものによって異なり,すなわち,これらは何が異常な結果を構成するかの定義にも依存する。実用的には,受診者動作特性(Receiver Operating Characteristic)曲線(ROC曲線)は,典型的には,「正常」(すなわち、見かけ上健康な)および「疾患」集団(すなわち、細菌感染を患う患者)においてある変数の値をその相対的頻度に対してプロットすることにより計算される。任意の特定のマーカーについて,疾患を有する対象および有しない対象についてのマーカーレベルの分布はおそらく重複するであろう。そのような条件下では,試験は100%の正確性をもって正常を疾患から絶対的に区別せず,重複する面積は,試験が正常を疾患から区別することができない場合を示す。閾値は,それより高い(またはそれより低い,マーカーが疾患にともなってどのように変化するかによる)場合に試験は異常であると考えられ,それより低い場合に試験は正常であると考えられるように選択する。ROC曲線の下の面積は,知覚される測定値が状態の正しい同定を可能とする確率の尺度である。ROC曲線は,試験結果が必ずしも正確な数値を与えない場合であっても使用することができる。結果を等級付けすることができる限り,ROC曲線を作成することができる。例えば,「疾患」サンプルについての試験の結果を,程度(例えば,1=低,2=正常,3=高)にしたがって等級付けすることができる。この等級付けは,「正常な」集団における結果と相関させることができ,ROC曲線を作成することができる。これらの方法は当該技術分野においてよく知られている(Hanley et al.1982.Radiology 143:29‐36)。好ましくは,閾値は,約0.5より大きい,より好ましくは約0.7より大きい,さらにより好ましくは約0.8より大きい,さらにより好ましくは約0.85より大きい,もっとも好ましくは約0.9より大きいROC曲線下面積を与えるように選択される。この文脈において,「約(about)」との用語は,所定の測定値の+/−5%を指す。
【0043】
ROC曲線の横軸は、(1‐特異性(specificity))を示し、そしてそれは偽陽性率で増加する。曲線の縦軸は、感度を示し、そしてそれは、真陽性率で増加する。従って、選択された特定のカットオフについて、(1‐特異性)の値が決定されてもよく、そして対応する感度が得られてもよい。ROC曲線下の面積は、測定されたマーカーレベルが疾患または症状の正確な同定を可能にする可能性の尺度である。従って、ROC曲線下の面積は、試験の有効性を決定するために使用することができる。
【0044】
オッズ比は、二つのバイナリーデータ値間の関連性または非独立性の強さを記載する効果サイズの尺度である(例えば、試験陽性群で生じる事象のオッズに対する、試験陰性群で生じる事象のオッズの比)。陽性適中率(PPV)適合率(precision rate)は、正確に診断され、および/または予測された陽性試験結果の患者の比率である。陽性適中率または適合率は、陽性試験が、試験をするための根底にある症状を反映する確率を反映する。陰性適中率(NPV)は、正確に診断されおよび/または予測された陰性試験結果の患者の集団である。全精度は、試験で正確に分類されたすべての患者のパーセントである。
【0045】
特異的に、少なくとも一の臨床的パラメーターは、性別(すなわち、男性または女性)、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、ボディマス指標(BMI)、ウェスト周囲、ウェスト‐ヒップ比、および喫煙習慣からなる群から選択できる。
【0046】
特に、PCTレベルは、男性および女性の間で著しく異なるため(例えば、表2参照)、本発明の方法を行う時、対象の性別は、考慮する必要のあるパラメーターである。
【0047】
少なくとも一のラボラトリーパラメーターは、空腹時血糖濃度または血漿グルコース濃度、中性脂肪、コレステロール濃度、およびHDLコレステロール濃度およびそれのサブフラクション、LDLコレステロール濃度およびそれのサブフラクション、シスタチンC、インスリン、CRP、AおよびB型のナトリウム利尿ペプチド並びにそれらの前駆体およびそれらのフラグメント、例えば、ANP、proANP、NT‐proANP、MR‐proANP、BNP、proBNP、NT‐proBNP、GDF15、ST2、プロカルシトニンおよびそれのフラグメント、プロ‐アドレノメデュリンおよびそれのフラグメント、例えば、ADM,PAMP、MR‐proADM,CT‐proADM、pro‐エンドセリン‐1およびそれのフラグメント、例えば、CT‐proET‐1、NT‐proET‐1、big‐エンドセリン‐1、およびエンドセリン‐1からなる群から選択できる。
【0048】
少なくとも一の遺伝学的パラメーターは、好ましくは一塩基多型(SNPs)、および変異体からなる群から選択される。
【0049】
本発明の方法は、上および明細書中に記載したように、有害事象を患う対象の増加するリスクの可能性としての情報を提供する。この情報に基づき、予防処置は、対象について発生する有害事象を避けるために用いられる。予防処置は、例えば、適切な薬の使用、次に食事制限、運動、医学的管理などであってもよい。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、見かけ上健康な対象の有害事象を患う増加したリスクを決定するための、上および明細書中に記載したような方法の使用について言及する。
【0051】
それ以上に、本発明は、有害事象を経験する無症状の対象の予後診断のため、すなわち、明細書中に記載されたように行うため、PCTまたはそれのフラグメント、または前駆体、またはそれのフラグメントと直接結合する一またはそれ以上の抗体を含むキットの使用に関する。
【実施例】
【0052】
試験集団および設計
試験集団を、末期腎臓疾患および末期血管疾患の予防(Prevention of Renal and Vascular Endstage Disease:PREVEND)試験から得た。PREVEND試験は、オランダのグロニンゲン市の一般的な集団(28歳から75歳の年齢範囲)から抜き取られた大規模コホートにおいて、アルブミン尿の自然な進行並びに腎臓および心臓血管疾患へのその関連を前向き調査するために設計された。試験設計、採用、および手順の詳細は、他で発行されている(Hillege et al.,Circulation 2002,106:1777‐1782;Hillege et al.,J Intern Med 2001,249:519‐526;Mahmoodi et al.,JAMA 2009,301:1790‐1797)。PREVEND試験は、グロニンゲン大学病院センターの地域臨床倫理委員会により承認され、そしてヘルシンキ宣言において略述された基本原則に順ずる。すべての参加者は、文書のインフォームドコンセントを提出した。
【0053】
測定
参加者は、人口統計学データ、身体計測、および心血管リスク因子を評価するために2回の外来通院を受けた。彼らは、最初の通院前に、人工統計学データ、心血管疾患(CVD)病歴、喫煙習慣、CVDの家族病歴、アルコール消費量、および薬物使用のアンケートを完了した。参加者を、総コレステロールレベル、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール、中性脂肪、血圧測定、血清クレアチニンおよび糖尿病について調査した。糖尿病は、空腹時血漿グルコース≧7.0mmol/lというアメリカ糖尿病学会のガイドラインまたは抗糖尿病薬の使用により定義した。さらに、薬物使用の情報は、グロニンゲン市の薬局コミュニティーから投薬データの使用で実証した。
【0054】
ベースラインにおいて、CVDは、以前の主な心血管事象(すなわち、心筋梗塞、脳血管障害)の病歴、冠動脈形成術および/またはバイパス手術歴、0.9未満の足関節上腕血圧比、またはミネソタ分類(Minnesota classification)(すなわち、1.1および1.2コード)に基づくQSパターンの存在により定義される。診察時にCVDを患う個人は、試験から除いた。診察時に糖尿病を患う個人は、試験から除いた。診察時になんらかの癌を有する個人は、試験から除いた。血清クレアチニン>132μmol/lの個人は、腎不全を有すると考慮しそして試験から除いた。試験に適格な個人の総数は、n=5313であった。従って、この試験について調査された集団は、見かけ上疾患がない人の代表的な集団で、一般的に健康な集団について代表している。
【0055】
実験参加の時点で、血液サンプルを、ラボラトリー測定(以下を参照)のためにそれぞれの個人から採取した。
【0056】
調査した集団を、10年間追跡し、そしてさまざまな評価項目の発生を記録した:試験の評価項目は、心臓事象の発症、脳血管事象の発症、心血管死亡、心血管事象の合計(total Cardiovascular events)、糖尿病の発症、癌死亡、および死亡合計(total mortality)である。心臓事象は、以下の何らかの事象:急性心筋梗塞(ICD−code 410)、急性および亜急性虚血性心疾患(411)、および以下の処置:冠動脈大動脈バイパス移植術または経皮的冠動脈形成術の合計として定義される。脳血管事象は、以下の何らかの事象:脳実質外動脈の閉塞または狭窄(433)または脳動脈の閉塞または狭窄(434)の合計として定義される。心血管死亡は、心臓または脳血管事象による死亡と定義される。心血管事象の合計は、心臓事象、脳血管事象、および心血管死亡の合計として定義される。糖尿病は、空腹時血漿グルコース≧7.0mmol/lというアメリカ糖尿病学会のガイドラインまたは抗糖尿病薬の使用により定義される。癌死亡は、癌による死亡として定義される。死亡合計は、なんらかの原因の死亡として定義される。
【0057】
心臓血管の病的状態についての(入院中の)情報は、PRISMANT、病院退院時診断のオランダ国立登記から入手した。データを、国際疾病分類第9版および治療分類に従ってコード化した。対象が不明の宛先に引っ越した場合は、地方自治体の登記から対象が削除された日付を、検閲日として使用した。死亡のデータは、地方自治体の登記から受け取り、そして死因は、死亡証明の数を、オランダ中央統計局によるコードされた主な死因にリンクすることにより入手した。
【0058】
ラボラトリーアッセイ
ベースラインとして、血液サンプルは、終夜絶食後、採血した。血液サンプルは、EDTAを含むチルチューブ(chill tube)内に入れた。サンプルは、すぐに4℃、1500gで10分間遠心分離し、その後の使用のために上清を一定分量、−80℃で保存した。PCTは、以下のように測定した:市販のPCT用超高感度サンドイッチアッセイ(BRAHMS PCT LIA sensitive)(Morgenthaler et al.Clin Chem 2002;48:788‐90)を使用し、そしてそれは、固相としてPCTのカタカルシン部分と直接結合する一の抗体を使用し、そして標識抗体としてPCTのカルシトニン部分と直接結合する一の抗体(BRAHMS AG,Hennigsdorf,Germany)を使用した。さまざまな濃度の組換えPCTをキャリブレーターとして使用した。100μlのサンプル量を、使用した。
【0059】
統計分析
データの分布が歪んだ時はいつでも、連続変数のベースライン記述統計を、平均±標準偏差(SD)として、並びに25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを伴う中央値として報告した。カテゴリー変数を、数およびパーセンテージとして表した。カイ2乗検定を、カテゴリー変数についての群間における相違を試験するために使用した。もし、変数が、コルモゴロフ‐スミルノフ検定に従って通常に分布されないなら、連続データを、スチューデントt検定またはマン‐ホイットニーランク検定を使用することにより比較した。事象の発生に対してPCTの予測値を試験するために、本発明者らは、コックス比例ハザードモデル、記録された様々な事象に、従属変数としてフィットさせた。歪んだ分布のため、PCTの対数変換(log2)を、コックス回帰分析に適用して、ハザード比(HR)およびPCTレベルの2倍あたりの95%信頼区間(CIs)を計算した。両側検定から0.05またはそれより小さいP値は、統計的に有意とした。さらに、ハザード比を、第1PCT五分位値に比較した第2〜第5五分位値について計算した。すべての統計に基づく分析は、Statistical Package for Social Sciences version 16(SPSS Inc,Chicago,Illnois,USA)およびS‐PLUS software(Insightful Corp.,Seattle, Washington,USA)を介して行った。
【0060】
結果
試験集団のベースライン特徴を、表1に要約する。
【0061】
表2は、ベースラインPCTレベル(全体)、および性別によって階層化したベースラインPCTレベル(≦0.1ng/ml)を示す。
【0062】
分析は、PCTレベル≦0.1ng/mlを含むサンプルについて、およびまた0.1ng/ml超のPCTレベルを含むサンプルについて行った。PCTの予後値が、これらのサンプルの両方にとって本質的に同じであることを見出した。
【0063】
PCTレベルは、全試験群(P<0.001)について並びにPCT値≦0.1ng/mlの対象(P<0.001)について、男性および女性間で有意差があった(表2)。
【0064】
表3および4は、PCT濃度の2倍ごとに、示したように、事象が発達するリスクの増加を記載するハザード比を示す。例えば、心血管死亡について2.33のハザード比は、例えば、0.030ng/mlのPCT濃度の個人が、0.015ng/mlのPCT濃度を有する個人より心血管合併症に由来する死亡のリスクが2.23倍高いことを意味する。
【0065】
表3は、全試験群におけるPCTレベル(全体および≦0.1ng/ml、それぞれ)による心臓血管事象、並びに癌による死亡、心血管による死亡および死亡合計の予測のためのハザード比(95% CI)を示す。
【0066】
表4は、性別により階層化したPCTレベル(全体および≦0.1ng/ml、それぞれ)による心臓血管事象、並びに癌による死亡、心血管による死亡および死亡合計の予測のためのハザード比(95% CI)を示す。
【0067】
表5は、PCTレベル(全体および≦0.1ng/ml)による無症候性の集団における2型糖尿病の進行の予測のためのハザード比(95% CI)を示す。
【0068】
表6は、カットオフ値およびAUC ROCを示す。すべての調査した集団から、PCT値>0.1ng/mlを、この分析から除いた。事象のそれぞれのタイプについて、受診者動作特性曲線下の面積(AUC ROC)を計算した。すべての可能なカットオフ値を試験した場合に、最適なカットオフ値を、事象の各タイプについて得ることができる感度と特異性とのもっとも高い数学的積(mathematical product)として定義した。当業者にとって、特定の適用において、感度、特異性、陽性適中率または陰性適中率のいずれかが重要かどうかに依存して、他のカットオフ値が「最適」と考えられうることは明確である。
【0069】
表7.PCT五分位値による有害事象を示す。すべての調査した集団から、PCT値>0.1ng/mlを、この分析から除いた。集団は、PCT濃度の五分位値ごとに分離した。さまざまなタイプの事象において、五分位値ごとの事例の数、および割合(パーセント)を示した。事象のそれぞれのタイプの進行についてのハザード比を、Q1五分位値と比較することにより、Q2からQ5の五分位値について計算した。糖尿病事象タイプについての分析は、他の事象と切り離して示した。なぜなら、この事象タイプについて追跡できる対象の数が、他の対象タイプよりも少なかったためである。この濃度において上側の五分位値または下側の五分位値に割る振るべき五分位値を分ける上記PCT濃度上の個々の値の頻度が高いため、五分位値あたりの個人の数が、完全に等しい訳ではない。
【0070】
まとめると、本結果は、無症状の対象において上昇したPCTレベルが、将来において有害事象を患うリスクを対象が有するかどうかを予測するための予後診断の値となることを示している。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
見かけ上健康な対象、好ましくはヒトが有害事象を患う増加したリスクを決定するための方法であって:
‐ 前記対象由来のサンプルを提供し;
‐ 前記サンプル中のプロカルシトニン(PCT)またはそれのフラグメントのレベルを決定し;および
‐ 前記PCTレベルに基づいて、有害事象を患う増加したリスクを前記対象が有するかどうかを決定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記PCTが、配列番号1として示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PCTフラグメントが、
‐ 少なくとも12アミノ酸、好ましくは50超のアミノ酸、もっとも好ましくは100超のアミノ酸、または
‐ 配列番号1として示されるアミノ酸配列のアミノ酸2〜116または3〜116
を含む(含む(contain))、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レベル決定が、診断アッセイ、好ましくは免疫アッセイを使用して行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有害事象が、心臓事象、心血管事象、脳血管事象、心血管死亡、糖尿病、癌死亡、および死亡からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リスク決定が、
‐ 決定したPCTまたはPCTフラグメントのレベルと、見かけ上健康な対象の集団から予め定めたサンプルの母集団についてのPCTまたはそれのフラグメントの前記レベルの中央値とを比較することにより、または
‐ 決定したPCTまたはPCTフラグメントのレベルと、見かけ上健康な対象の集団から予め定めたサンプルの母集団についてのPCTまたはそれのフラグメントの変位値とを比較することにより、または
‐ コックス比例ハザード分析、または再分類指数(Net Reclassification Index(NRI))または総合判別指数(integrated Discrimination Index(IDI))などのリスク指数計算に基づく計算を行うことにより
遂行される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、症候性の感染を含まない(PCTレベルが、通常の範囲より上に増加しない)、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが、体液、特に血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、または胸水である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
血清または血漿サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.015ng/ml、好ましくは少なくとも0.02ng/mlである時、前記対象が、有害事象を患うリスクを有することを決定する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
血清サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.0155ng/mlの時、前記対象が、心臓事象または心血管事象を患う増加したリスクを有することを決定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
血清サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.0215ng/mlの時、前記対象が、脳血管事象または心血管起因による死亡を患う増加したリスクを有することを決定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
血清サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.0155ng/mlの時、前記対象が、癌由来の死亡の増加したリスクを有することを決定する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
血清サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.0205ng/mlの時、前記対象が、死亡の増加したリスクを有することを決定する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
血清サンプル中の前記PCTレベルが、少なくとも0.0185ng/mlの時、前記対象が、糖尿病を患う増加したリスクを有することを決定する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
‐ 性別、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、ボディマス指数、ウェスト周囲、ウェスト‐ヒップ比率、および喫煙習慣からなる群から選択される臨床パラメーター;または
‐ 空腹時血糖濃度または血漿グルコース濃度、中性脂肪、コレステロール濃度、およびHDLコレステロール濃度およびそれのサブフラクション、LDLコレステロール濃度およびそれのサブフラクション、シスタチンC、インスリン、CRP、AおよびB型のナトリウム利尿ペプチド並びにそれらの前駆体およびそれらのフラグメント、例えば、ANP、proANP、NT‐proANP、MR‐proANP、BNP、proBNP、NT‐proBNP、GDF15、ST2、プロカルシトニンおよびそれのフラグメント、プロ‐アドレノメデュリンおよびそれのフラグメント、例えば、ADM,PAMP、MR‐proADM,CT‐proADM、pro‐エンドセリン‐1およびそれのフラグメント、例えば、CT‐proET‐1、NT‐proET‐1、big‐エンドセリン‐1およびエンドセリン‐1からなる群から選択されるラボラトリーパラメーター;または
‐ 一塩基多型(SNP)、および変異体、特に糖尿病遺伝に関するからなる群から選択される遺伝学的パラメーター
を決定することをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象中の発生に由来の前記有害事象を避けるための少なくとも一の予防処置をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
見かけ上健康な対象の有害事象を患う増加したリスクを決定するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法の使用。

【公表番号】特表2013−503329(P2013−503329A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526079(P2012−526079)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062597
【国際公開番号】WO2011/023813
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508093584)ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (27)
【Fターム(参考)】