説明

有害物質含有ガスの処理方法及び装置

【課題】 有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有するガスの無害化処理、特にオゾンによる無害化効率を向上させた有害物質含有ガスの無害化処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】 有害物質含有ガスにオゾンを添加、混合し、前記含有ガスを、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種を用いる吸着剤を充填した吸着剤層6aに流過させ、ガス中の有害物質をオゾンの作用により無害化処理し、さらに、上記吸着剤層を設けた吸着剤充填塔6の下流側に、リークするオゾンを分解するオゾン分解剤層6bを設けて処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有するガスの無害化処理方法及び装置、特にオゾンによる無害化効率を向上させた有害物質含有ガスの無害化処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する汚染ガスの無害化処理方法の一つとして、オゾンによる酸化処理方法がある。オゾンは自己分解が進行することから、処理ガス中に残存して入体に影響を及ぼす危険性は少なく、クリーンな処理剤として今後さらに利用分野が拡大していくものと予想される。
オゾンによる処理は、有害物質含有ガス中にオゾン発生器(オゾナイザー)からのオゾン含有ガスを注入することによって行うが、通常はガス中の有害物質の濃度は非常に希薄なため、有害物質の酸化分解、殺菌等に寄与する前に分解するオゾンの割合も多く、無害化効率が低いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決し、安全性の高い酸化剤であるオゾンを使用して各種有機系汚染物、悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有するガスを効率よく処理することができる有害物質含有ガス処理方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記課題を解決する手段として次の(ア)〜(エ)の構成を採るものである。
(ア) (A)有害物質含有ガスにオゾンを添加、混合し、
(B)前記含有ガスを、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種を用いる吸着剤を充填した吸着剤層に流過させ、
(C)ガス中の有害物質をオゾンの作用により無害化する有害物質含有ガスの処理方法。
(イ) (D)前記(C)で無害化されて得られた処理ガスをオゾン分解剤と接触させて残留するオゾンを分解する上記記載の有害物質含有ガスの処理方法。
(ウ) オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤層を設けた吸着剤充填塔と、該吸着剤充填塔に有害物質を含有するガスを供給する供給管と、該供給管に接続され、ガス中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理ガスを排出する排出管とを備える有害物質含有ガスの処理装置。
(エ) 前記吸着剤充填塔の下流側に、リークするオゾンを分解するオゾン分解剤層が設けられている上記記載の有害物質含有ガスの処理装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法及び装置は、オゾンの吸着効率、有効利用率、各種有機系汚染物、悪臭成分の処理速度に優れる。本発明により、処理済みガス中へのオゾン流出量は低減され、比較的簡単な設備で高性能な汚染ガス浄化システムを構築することができ、更に必要により活性炭などのオゾン分解剤層を設けることによってオゾンのリークを完全に防止することができる。また、本発明の装置によれば、有害物質を含有するガスのオゾンによる処理を低い運転コストで効率よく行うことができる。本発明は、(1)各種産業設備から排気されるVOC除去、(2)悪臭除去、(3)農作物鮮度保持のためのエチレン、アルデヒド類、テルペンの除去、(4)居住空間からのシックハウス症候群原因物質除去等、広範囲な応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明においては、(A)有害物質含有ガスにオゾンを添加、混合し、(B)前記含有ガスを、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する特定の吸着剤を充填した充填塔に流過させ、(C)ガス中の有害物質をオゾンの作用により無害化を行う。この構成によって、単に有害物質を含有するガス中にオゾンを添加して反応させる場合に比較してはるかに高効率で無害化を進行させることができる。
上記有害物質含有ガスとして、環境庁指定の有害物質であるVOC(Volatile Organic Compound:イソプロピルアルコール、酢酸エチル、BTX類、ハロゲン化有機物等)やダイオキシンなどの各種有機系汚染物、メルカプタン、硫化水素などの悪臭成分、細菌類などの有害物質を含有する汚染ガスが挙げられる。
汚染ガス中にオゾンを供給するためのオゾン発生器(オゾナイザー)としては、公知の無声放電方式、紫外線ランプ方式、水電解方式などいずれの方式のものでも適用できる。オゾンの添加量は処理ガス中の有害成分の種類、濃度等によって適宜設定すればよいが、通常のガス処理においては有害成分1モルに対し0.5〜20モル程度である。
【0007】
本発明で使用する吸着剤は、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着するものでなければならない。このような吸着剤の例として(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤を挙げることができる。
理論によって本発明を限定するものではないが、アルミノシリケートをオゾン吸着剤として使用する場合に、アルミノシリケートの固体表面の強いルイス酸点でオゾンが分解して原子状酸素を生成し、生成した原子状酸素は、高い反応性を持っていて、更にオゾンの分解を促進する。本発明のオゾン吸着剤は、従来オゾン吸着剤として使用されるアルミノシリケートと比べて、強いルイス酸点を固体表面に持たないため、オゾン分解が少なくかつオゾン吸着能が高いと考えられる。これは、吸着剤のアンモニアTPD(昇温脱離曲線:Temperature Programmed Desorption)試験において、強酸点に対応すると考えられるアンモニアβピーク(高温ピーク)がアルミノシリケートよりも強いピークを示すことを根拠としている。
【0008】
従って、本発明のオゾン吸着剤は、オゾンとVOC(ガス相ではCODの高い成分でもある)を同時吸着してオゾン、VOCを濃縮し、吸着剤の結晶構造内でオゾンが分解されることなく吸着されてVOCが効率良く酸化分解される効果を奏する。
このように、本発明の吸着剤は、オゾンの吸着能力が高く、しかも吸着したオゾンの分解率が低く、かつ有害物質を吸着する特性を有するほか、水に対する耐性があり、湿気を含むガスの処理にも安定して適用可能である。
【0009】
ペンタシル型ボロシリケート
本発明において用いるオゾン吸着剤の内のペンタシル型ボロシリケートは、いわゆるメタロシリケートとして知られているものである。メタロシリケートは、ゼオライト中のアルミニウムの一部又は全部を特定の元素で置換された構造を有するものを意味し、非晶質を含んでいるものも使用可能である。アルミニウムと置換する元素としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除くほとんど全ての金属元素が使用可能であるが、本発明では、ガリウム、ホウ素を挙げることができる。置換する元素は、一種でも二種以上でもよい。
本発明のペンタシル型ボロシリケートのSiO2/B23比は、好ましくは20〜1000、更に好ましくは20〜200である。20未満であると触媒活性点としてのオゾン分解を発現し、一方、1000を超えると従来の高シリカゼオライトに対する優位性はない。
【0010】
水熱合成法により得られるペンタシル型ボロシリケート(S−1);
ペンタシル型ボロシリケートは、通常行なわれるペンタシル型ゼオライトの製造方法と類似の水熱合成法で合成することができる。すなわち、シリカ、シリカゾル、ケイ酸ソーダ等のシリカ源、ホウ酸、アミン等の有機塩基その他のテンプレート、水、そして必要に応じて苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ源を含む原料混合物を、水熱処理するとボロシリケートに含まれるホウ酸と等モルのプロトン(H+)又はプロトンと交換可能なカチオン(Na、K、Mg、Ca等)を含むペンタシル型ボロシリケートを得ることができる。この水熱処理の条件は、温度は約50℃から300℃位まで、反応時間は約1時間から数ヶ月が適用可能で、一般には高温条件程、短時間で水熱処理反応が進み、約80%の結晶化が終了する。従って、実用的には、温度は約100〜250℃、反応時間は数時間から1週間程度までが好ましい。
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/B23比を有するペンタシル型ボロシリケートを得ることが出来る。SiO2/B23比はシリカ源濃度に対するホウ酸濃度を変更することにより適宜変更できる。
水熱合成法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークを図1に示す。図1よりMFI型結晶であることが確認できる。又、SiO2/B23比は、元素分析(湿式分析)により決定でき、図1に示される実施例吸着材料の場合は200である。又、ホウ素と等モルの水素も含まれた。
水熱合成法により得られるペンタシル型ボロシリケートの特徴は、ボロシリケートの優れた均一分散性であり、SiO2/B23比が低いものの製造も安定して行なうことが出来る。
【0011】
含浸法により得られるペンタシル型ボロシリケート(S−2);
ペンタシル型ボロシリケートは、いわゆる含浸法によって調製することもできる。すなわち、ホウ酸、ホウ酸中のホウ素と等モルのプロトン(H+)を含む硝酸、硫酸、塩酸等を水に溶解し、これにシリカライト(人工ゼオライト;100%シリカ)を加えて攪拌してスラリーを得、このスラリーをエバポレーター等を使用して水分を吸引除去して粉末を得る。この粉末を、所望に応じて加熱して乾燥させた後に、必要であれば約400〜700℃で、0.5〜3時間焼成する等して、ホウ素と等モルのプロトン(H+)を含むペンタシルボロシリケートを最終的に調製する。上記製造方法によっても好ましい範囲内のSiO2/B23比を有するペンタシル型ボロシリケートを得ることが出来る。
具体的には、SiO2/Al23比1000以上のペンタシル型ゼオライトにホウ酸を加えて、ろ過、乾燥した後400〜700℃程度の高温に保持することで、結晶表面のホウ酸が結晶内に固体−固体拡散してペンタシル型ボロシリケート構造を採ることが出来る。又、SiO2/Al23比が1000以下の原料を、硝酸溶液等に浸積して90℃で3時間程度保持しても、結晶中のアルミニウムが離脱してSiO2/Al23比1000以上のペンタシル型ゼオライトを得ることが出来るので、これを出発原料としてSiO2/B23比20〜1000のボロシリケートをアルミノシリケート構造の立体障害を受けることなく調製することが出来る。
含浸法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークを図2に示す。図2よりMFI型結晶であることが確認できる。図2に示される実施例吸着材料のSiO2/B23比は200である。又、ホウ素と等モルの水素も含まれた。含浸法でもSiO2/B23比はシリカ源濃度に対するホウ酸濃度を変更することにより適宜変更できる。
【0012】
メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO);
本発明のメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのSiO2/P25モル比は好ましくは20〜1000、更に好ましくは50〜300である。20未満であるとメソ孔内にアルミノフォスフェートが高濃度に存在して細孔容積が減少し、VOC、オゾンとも吸着量、吸着速度が減少してオゾン吸着反応が低下する。一方、1000を超えると従来の高シリカゼオライトに対する優位性はない。
【0013】
低温合成法により得られるシリコアルミノフォスフェート(S−3);
本発明のシリコアルミノホスフェートは、下記の通りにして調製することができる。低pHでモノケイ酸とのミセル形成能に優れた3級アンモニウム塩であるアンモニウムブロミドのような溶媒を溶解した水に、リン酸及びテンプレート剤を加え、これを激しく撹拌しながら、水に溶解したケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムを加え、さらに水に溶解したアルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムを少しずつ加えて懸濁液とし、この懸濁液を撹拌する。上記添加、溶解、攪拌作業は、通常室温で行われる。液中に生成した沈殿物をろ過して多孔体粉末を分離した後に、水で洗浄し、電気炉に入れて、加熱して表面水分を除去した後に、昇温して溶媒を熱分解除去してシリコアルミノホスフェートを得ることができる。得られるシリコアルミノホスフェートはメソポーラス材料であり、均一で規則的な配列のメソ孔(直径2〜50nm)を有する多孔質材料(多孔体)であり、構造的には「MCM−41」(2〜50nmの均一メソスコピックサイズの細孔を有するシリカ)と良く似た2次元柱状構造を有している。
本発明のメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのメソ孔の直径は、好ましくは12〜100nmである。
【0014】
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/P25比を有するシリコアルミノホスフェートを得ることが出来る。SiO2/P25比はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
上記低温合成法で合成したメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのX線回折ピークを図3に示す。図3よりメソ多孔体の柱状構造とSAPO構造が確認できる。又、SiO2/P25比は、元素分析(湿式分析)により決定でき、図3に示される実施例吸着材料の場合は200である。
【0015】
SAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト;
SAPO構造とは、アルミノリン酸ゼオライトの略称であり4価のSiの周りに3価のアルミニウムと5価のリンが酸素を介して結合した結晶構造である。
本発明のSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの全体を平均したSiO2/P25モル比は好ましくは20〜1000、更に好ましくは50〜300である。20未満であると結晶化が困難であり、一方、1000を超えると従来の高シリカゼオライトに対する優位性はない。
【0016】
水熱合成法による部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−4);
本発明の部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトは、下記の通りにして調製することができる。リン酸及びアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等をテンプレート剤水溶液に溶解し、これをシリケート、例えばテトラエチルオルトシリケートに加え、加熱しながら攪拌し、シリケートを加水分解する。得られた粉末を、ろ過して加水分解を完全に終了させる。この粉末を水蒸気飽和させて、9〜15wt%の水分を含む乾燥ゲルを得た後に、これをねじ栓密封ボトルに詰めて、電気炉に入れて加熱して水熱合成する。合成終了後、密封ボトルから取り出した粉末を再度電気炉に入れ、昇温してテンプレートを除去し、部分的にSAPO構造を含有するペンタシル型ゼオライトを得ることができる。水熱合成法は、通常含浸法よりも高い収率と品質の結晶を得ることが出来る。ゼオライト中のSAPO構造の割合の調整はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
【0017】
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/P25比を有するSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトを得ることが出来る。
上記で合成したSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークを図4に示す。図4より、含まれるSAPO構造が0.2(volmol%)であるペンタシル型ゼオライト結晶であることが確認できる。又、SiO2/P25比は、元素分析(湿式分析)により決定でき、図4に示される実施例吸着材料の場合は200である。SiO2/P25比はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
【0018】
含浸法による部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−5);
本発明の部分的にSAPO構造を含有するペンタシル型ゼオライトは、また、上記水熱合成法に代えて、いわゆる含浸法によって調製することもできる。すなわち、リン酸及びアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等を水に溶解し、これにシリカライトを加えて攪拌してスラリーを得る。このスラリーをエバポレーター等で水分を吸引除去して粉末を得る。この粉末を加熱して乾燥した後に、昇温して加熱してリン酸を脱水および硫酸塩を分解して、部分的にSAPO構造を含有するペンタシル型ゼオライトを得ることができる。ゼオライト中のSAPO構造の割合の調整はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
上記製造方法により好ましい範囲内のSiO2/P25比を有するSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトを得ることが出来る。含浸法においてはSiO2/P25比はシリカ源濃度に対するリン酸濃度、アルミニウム塩濃度を変更することにより適宜変更できるが、原則的にリン酸/アルミニウム塩モル比1である。
具体的には、SiO2/Al23比1000以上のペンタシル型ゼオライトにリン酸、アルミニウム塩を加えて、ろ過、乾燥した後400〜700℃程度の高温に保持することで、結晶表面のリン、アルミニウムが結晶内に固体−固体拡散して部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトを調製することが出来る。又、SiO2/Al23比が1000以下の原料を、硝酸溶液等に浸積して90℃で3時間程度保持しても、結晶中のアルミニウムが離脱してSiO2/Al23比1000以上の部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトも得ることが出来るのでこれを出発原料としてSiO2/B23比20〜1000のボロシリケートをアルミノシリケート構造の立体障害を受けることなく調製することが出来る。
【0019】
含浸法は水熱合成法に比べ調製は容易であるが、得られたゼオライト中のSAPO構造分布の均一性に欠けること、低SiO2/Al23比条件での調製における再現性が悪くなる等の問題がある。いずれの製造方法で調製したものも本発明のオゾン吸着反応に使用できる。
上記で合成したSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークを図5に示す。図5より含まれるSAPO構造が0.2(mol%)であるペンタシル型ゼオライト結晶であることが確認できる。又、図5に示される実施例吸着材料のSiO2/P25比は200である。
【0020】
本発明の吸着剤は、それぞれ使用目的に応じて単独又は混合物の形で、粒状、ペレット状、ハニカム状など任意の形状に成形して使用できる。
本発明に使用される吸着剤量は、使用目的に応じて異なるが、通常汚染物質1〜500ppm(vol/vol)、オゾン量1〜500ppm(vol/vol)の条件で吸着剤1m3当たりSV値500〜100,000(リットル/h)程度である。
本発明の吸着剤の性能は、使用目的に応じて異なるが、80%以上の非常に高い除去率を示す。
【0021】
本発明は、発明者等がオゾンのガス相での吸着試験を行う中で、特定の吸着剤が、オゾンを効率よく吸着し、しかも共吸着した有機系汚染物や細菌、悪臭成分等の有害物質をオゾンにより高効率で無害化し、未反応のオゾンは酸素に変換させる、ことを見出した結果に基づくものである。上記無害化には酸化反応による有機系汚染物や悪臭成分の酸化分解、細菌類の殺菌などを含むものである。
このように本発明の吸着剤存在下で汚染物質とオゾンとを共存させると、ガス中の有害物質の無害化、例えば、有機系汚染物のオゾン酸化が効率よく進行するのは、理論により本発明を制限するものではないが、下記のように考えられる。
ガス中のオゾン酸化分解反応がガス中のオゾン濃度〔O3〕と有機系汚染物濃度〔ORG〕の積〔O3〕・〔ORG〕に比例して進行する。一方、本発明の吸着剤相にはオゾン及び有害物質が選択的に吸着されるため、単なるガス相に比べて吸着剤表面のオゾン濃度〔O3〕及び有機系汚染物濃度〔ORG〕はそれぞれ10〜100倍程度に達する(日本吸着学会2000年年会「シリカ系吸着剤における水中溶存オゾンの吸脱着特性」鈴木基之ら)。従って、吸着剤表面での〔O3〕・〔ORG〕はガス相中での100〜10000倍に達すると予想される。
【0022】
また、ガス相ではオゾンは有害物質以外の第三物質との衝突により無害化に寄与することなく分解してしまう頻度が多くなり、オゾンの無害化効率に限界がある。しかし、本発明の吸着剤表面でのオゾンによる有害物質の無害化においては、吸着剤にオゾン及び有害物質が選択的に吸着されることから、第三物質との衝突によるオゾン分解の確率は大幅に低減され、オゾンは有害物質の無害化のために効率的に消費される。
【0023】
ガス相での有害物質の無害化処理効率の悪い従来法ではリークオゾン濃度も高く、このためオゾン分解剤の消耗もかなり大きく、使用済み分解剤の交換頻度の多さから経済性、保守性については改善のニーズが強かった。一方、本発明において、通常のガス処理の場合は未反応オゾンは吸着剤に吸着されたまま滞留するため下流へのリークの恐れはほとんどなく、リークオゾン濃度が従来の1/10以下である。
しかし、本発明でも特殊な細菌の殺菌など多量のオゾンを添加する場合や、何らかの理由によりリークした場合の対策としては、吸着剤充填塔の処理ガス出口部分にリークするオゾンを分解する分解剤層を設けることによって未反応のオゾンを分解して無害化処理を行うことができる。上記オゾン分解剤としては、リークオゾンと接触して自らはCO2へと酸化される消耗型吸着剤である活性炭やアルミナ系化合物などが挙げられる。なお、分解剤層は吸着剤充填塔の出口部分の内側に設けてもよく、また、充填塔の外側に別途設けてもよい。本発明では、リークオゾン濃度が低いためオゾン分解剤の交換頻度も従来の10倍程度と大幅な延長が達成できる。
【0024】
なお、必要により有害物質含有ガスヘのオゾン注入点の上流側及び/又はオゾン吸着反応器の下流側にダストを除去するろ過材層を設けることができる。ろ適材層の設置の有無、設置位置等は装置の状況有害物質含有ガスの性状等により適宜定めればよい。
【0025】
次に図面を参照して本発明の処理装置を説明する。図6に印刷所からの排ガス処理に本発明を適用した有害物質含有ガスの処理フローの1例を示す。図6において主プラント1からの有害物質含有ガスは排ガスブロア3により排ガス導出配管2を経て混合器4に送られ、オゾン発生器5からオゾンを注入されて吸着剤充填塔6に導入される。吸着剤充填塔6には本発明の特定の吸着剤が充填されており、導入ガス中の有害物質及びオゾンが吸着剤に共吸着し、高濃度の状態で反応して有害物質が分解される。通常は処理ガス排出配管7から排出される処理済のガスヘのオゾンのリークはないが、必要により吸着剤充填塔6内の処理ガス出口側あるいは吸着剤充填塔6の下流に活性炭などのオゾン分解剤層を設ければよい。なお、図6には吸着剤充填塔6内の吸着剤層6aの処理ガス出口側に仕切6cを介してオゾン分解剤層6bを設けた例を示した。
【実施例】
【0026】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
製造例1(水熱合成法ペンタシル型ボロシリケート(S−1))
ホウ酸3gを22.5wt%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液440gに溶解し、これをテトラエチルオルトシリケート1.00kgに加え、70℃で約4時間攪拌し、テトラエチルオルトシリケートを加水分解した。得られた粉末を80℃の乾燥器に入れて約3時間保持し、加水分解を完全に終了させた。この粉末を室温で水蒸気飽和させて、9〜15wt%の水分を含む乾燥ゲルを得た後、これをポリプロピレンあるいはテフロン(登録商標)製のねじ栓密封ボトルに詰めて、電気炉に入れ140℃で72時間保持して水熱合成した。
合成終了後、密封ボトルから取り出した粉末を再度電気炉に入れ、空気雰囲気中昇温速度100℃/時間で昇温して500℃で20時間保持してテンプレートを除去し、ホウ素含有シリカライト(UOP社製ボロシリケート;SiO2/B23=200、BET比表面積528m2/g)約280gを調製した(収率80%)。
得られた結晶のX線回折ピークを図1に示す。図1よりMFI型結晶であることが確認できた。又、重量法(ニトロン−5%酢酸水溶液と48%フッ化水素酸との反応により生じた沈殿の重量から決定)により元素分析(湿式分析)して測定したSiO2/B23比は、200であった。得られた吸着材料を実験室的に試作したシリカモノリス基材に嵩比重が0.4になるように担持して直径10cm、高さ10cmのモノリス形に成形した。下記吸着材料の成形法も同様である。
ホウ酸を40gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が20の吸着材料を収率65%で得た。
ホウ酸を0.6gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0027】
製造例2(含浸法ペンタシル型ボロシリケート(S−2))
10.3gのホウ酸(H3BO3)を精製水1.3リットルに溶解し、これに1.0kgのシリカライトを加えて室温で2時間攪拌してスラリーを得た。このスラリーを60℃の水浴上、エバポレーターで水分を吸引除去して粉末を得た。この粉末を空気雰囲気中110℃で7時間乾燥した後、昇温速度100℃/時間で昇温して270℃で3.5時間加熱してホウ酸を脱水させて、ホウ素含有シリカライト(SiO2/B23=200、BET比表面積355m2/g)約1kgを調製した(収率100%)。
得られた結晶のX線回折ピークを図2に示す。図2よりMFI型結晶であることが確認できた。SiO2/B23比は、200であった。
ホウ酸を103gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が20の吸着材料を収率100%で得た。
ホウ酸を2gとした以外は上記と同様にして、SiO2/B23比が1000の吸着材料を収率100%で得た。
【0028】
製造例3(低温合成法シリコアルミノフォスフェート(S−3))
セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMAB;C1635(CH33NBr)(FW364.45 東京化成社製)6.0kgを溶解した水32リットルに、85%リン酸(H3PO4)(FW98.00 関東化学社製(85wt%))0.1kgを滴下し、さらにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)水溶液((CH34NOH、水中25wt%)30〜33リットルを加えてpH7.7に調整した。
これを激しく撹拌しながら、水15.4リットルに溶解したケイ酸ナトリウム(Na2O・2SiO2・2.52H2O)(FW227.56 キシダ化学)3.00kgを加え、さらに水31.6リットルに溶解した硫酸アルミニウム(Al2(SO43・17H2O)(半井化学薬品社製)0.25kgを少しずつ加え、この懸濁液を室温で3時間撹拌した。
この沈殿生成物をろ過して多孔体粉末を分離した後、水で洗浄後、電気炉に入れて、まず110℃で約8時間保持して表面水分を除去したのち、昇温速度100℃/時間で昇温して600℃6時間保持してセチルトリメチルアンモニウムブロミドを熱分解除去してメソポーラスシリコアルミノホスフェートを約1kg調製した。得られたゲル組成は、SiO2:P25:Al23:CTMAB:H2O=0.8:0.012:0.012:0.5:80であり、粉末状シリコアルミノフォスフェートの収率は80%であった。
以上の手順により調製した粉末状SiO2/Al23比は200、SiO2/P25比は200であり、日本ベル社製BET法表面積計測機により測定した比表面積は767〜1100m2/g、細孔直径は3.5nmであった。
得られた結晶のX線回折ピークを図3に示す。図3よりMFI型結晶であることが確認できた。SiO2/P25比は、200であった。
硫酸アルミニウム及びリン酸を、それぞれ1kg及び2.5kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が20の吸着材料を収率80%で得た。
硫酸アルミニウム及びリン酸を、それぞれ0.05kg及び0.02kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0029】
製造例4(水熱合成法SAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−4))
85%リン酸(H3PO4)0.1kgおよび硫酸アルミニウム(Al2(SO43・17H2O)0.25kgを22.5wt%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液440gに溶解し、これをテトラエチルオルトシリケート1.00kgに加え、70℃で約4時間攪拌し、テトラエチルオルトシリケートを加水分解した。得られた粉末を80℃の乾燥器に入れて約3時間保持し、加水分解を完全に終了させた。この粉末を室温で水蒸気飽和させて、9〜15wt%の水分を含む乾燥ゲルを得た後、これをポリプロピレンあるいはテフロン(登録商標)製のねじ栓密封ボトルに詰めて、電気炉に入れ140℃で72時間保持して水熱合成した。
合成終了後、密封ボトルから取り出した粉末を再度電気炉に入れ、空気雰囲気中昇温速度100℃/時間で昇温して500℃で20時間保持してテンプレートを除去し、部分的にSAPO構造を含有するシリカライト約280gを調製した。
得られたペンタシル型ゼオライト中のSAPO構造の割合は、0.5mol%であった。得られた結晶のX線回折ピークを図4に示す。図4よりペンタシル及びSAPO構造が結晶化されていることが確認できる。SiO2/P25比は、200であった。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ1kg及び2.5kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が20の吸着材料を収率80%で得た。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ0.02kg及び0.05kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0030】
製造例5(含浸法SAPO構造を有するペンタシル型ゼオライト(S−5))
85%リン酸(H3PO4)0.1kgおよび硫酸アルミニウム(Al2(SO43・17H2O)0.25kgを精製水1.3リットルに溶解し、これに1.0kgのシリカライトを加えて室温で2時間攪拌してスラリーを得た。このスラリーを60℃の水浴上、エバポレーターで水分を吸引除去して粉末を得た。この粉末を空気雰囲気中110℃で7時間乾燥した後、昇温速度100℃/時間で昇温して550℃で3.5時間加熱してリン酸を脱水および硫酸塩を分解して、部分的にSAPO構造を含有するシリカライト約1kgを調製した。
得られたペンタシル型ゼオライト中のSAPO構造の割合は、0.5mol%であった。得られた結晶のX線回折ピークを図5に示す。図5よりペンタシル及びSAPO構造が結晶化されていることが確認できた。SiO2/P25比は、200であった。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ1kg及び2.5kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が20の吸着材料を収率80%で得た。
アルミニウム塩及びリン酸を、それぞれ0.02kg及び0.05kgとした以外は上記と同様にして、SiO2/P25比が1000の吸着材料を収率80%で得た。
【0031】
使用サンプル;
本発明の吸着剤サンプルは上記で製造したS−1〜S−5中の末尾にSiO2比を付して区別している。又、比較例としてシリカライト(UOP社製シリカライトSiO2/Al23比200)を使用し、R−1として表した。R−1の形状は、直径10cm、高さ10cmのモノリスであった。
有害物質としてメチルメルカプタン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)をそれぞれ100ppm含有する排ガス(印刷所排ガスの模擬ガス)を使用した。
【0032】
実施例1;
図6のフローの試験装置(オゾン分解剤層は設けず)を用いてオゾンによる有害物質含有ガスの処理試験を行った。使用した吸着剤を表1に、試験条件等を表2に示す。
使用した吸着剤は、(S−1−20、−200、−1000)水熱合成ボロシリケート、(S−2−20、−200、−1000)含浸法ボロシリケート、(S−3−20、−200、−1000)メソポーラスシリコアルミノホスフェート、(S−4−20、−200、−1000)水熱合成部分SAPOペンタシル、(S−5−20、−200、−1000)含浸法部分SAPOペンタシル、の5種類であり、処理ガスのオゾン/メチルメルカプタンモル比1.0に設定した。
図6の処理ガス排出配管7の部分でサンプリングしたガス中のメチルメルカプタン濃度(出口メチルメルカプタン濃度)及びオゾン濃度(出口O3濃度)及び従来法との比較結果を下記表3に示す。サンプルR−1と比べて優れた結果の場合「○」とした。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

処理ガス中のメチルメルカプタン濃度100ppm、オゾン濃度100ppmで行った。
【0036】
表3より、メチルメルカプタンのオゾン分解では、(S−1)〜(S−5)のいずれもSiO2/B23比又はSiO2/P25比20〜200では従来のシリカライト(高シリカゼオライト)のメチルメルカプタン分解率を上回っていた。このことから本発明吸着剤上でのメチルメルカプタン−オゾン反応による高効率のメチルメルカプタン除去が期待される。
【0037】
実施例2;
実施例1と同一条件で、キシレンを100ppm含有する排ガスを表2の条件で処理し、図6の処理ガス排出配管7の部分でサンプリングしたガス中のキシレン濃度(出口キシレン濃度)及びオゾン濃度(出口O3濃度)を測定した。
使用した吸着剤は、実施例1と同様であり、オゾン/キシレンモル比1.0に設定した。
試験結果として、出口キシレン濃度及び、出口O3濃度及び従来法との比較結果を下記表4に示す。
【0038】
【表4】

処理ガス中のキシレン濃度100ppm、オゾン濃度100ppmで行った。
【0039】
表4より、キシレンのオゾン分解では、(S−1)〜(S−5)のいずれもSiO2/B23比又はSiO2/P25比20〜200では従来のシリカライト(高シリカゼオライト)のキシレン分解率を上回っていた。
【0040】
実施例3;
実施例1と同一条件で、MEKを100ppm含有する排ガスを表2の条件で処理し、図6の処理ガス排出配管7の部分でサンプリングしたガス中のMEK濃度(出口MEK濃度)及びオゾン濃度(出口O3濃度)を測定した。
使用した吸着剤は、実施例1と同様であり、オゾン/MEKモル比1.0に設定した。
試験結果として、出口MEK濃度及び、出口O3濃度及び従来法との比較結果を下記表4に示す。
【0041】
【表5】

処理ガス中のMEK濃度100ppm、オゾン濃度100ppmで行った。
【0042】
表5より、MEKのオゾン分解では、(S−1)〜(S−5)のいずれもSiO2/B23比又はSiO2/P25比20〜200では従来のシリカライト(高シリカゼオライト)のMEK分解率を上回っていた。
【0043】
実施例4(必要オゾン量の確定);
図6のフローの試験装置(オゾン分解剤層は設けず)を用いてオゾンによる有害物質含有ガスの処理試験を行った。使用した吸着剤は、(S−1−200)水熱合成ボロシリケートのモノリスであり、処理ガスのメチルメルカプタン、キシレン、MEK含有量100ppmで行った。試験条件は、SV値60(リットル/h)とし、オゾン/処理成分モル比を0.5〜3と変化させた以外は実施例1と同様である。
オゾン/処理成分モル比に対する、図6の処理ガス排出配管7の部分でサンプリングしたガス中のメチルメルカプタン、キシレン、MEKの除去率を図7に示す。オゾン/処理成分モル比3でメチルメルカプタン、キシレン、MEKとも除去率は95%を超える高性能が確認された。
【0044】
実施例5(必要吸着剤量の確定);
図6のフローの試験装置(オゾン分解剤層は設けず)を用いてオゾンによる有害物質含有ガスの処理試験を行った。使用した吸着剤は、(S−1−200)水熱合成ボロシリケートのモノリスであり、処理ガスのメチルメルカプタン、キシレン、MEK含有量100ppm、オゾン/処理成分モル比1.0で行った。試験条件は、SV値を3500〜20000(リットル/h)と変化させた以外は実施例1と同様である。
SV値に対する、図6の処理ガス排出配管7の部分でサンプリングしたガス中のメチルメルカプタン、キシレン、MEKの除去率を図8に示す。SV値3500でメチルメルカプタン、キシレン、MEKとも除去率は95%を超える高性能が確認された。
【0045】
実施例6(適正温度の確定);
図6のフローの試験装置(オゾン分解剤層は設けず)を用いてオゾンによる有害物質含有ガスの処理試験を行った。使用した吸着剤は、(S−1−200)水熱合成ボロシリケートのモノリスであり、処理ガスのメチルメルカプタン、キシレン、MEK含有量100ppm、オゾン/処理成分モル比1.0で行った。試験条件は、温度を10〜75℃と変化させた以外は実施例1と同様である。
温度に対する、図6の処理ガス排出配管7の部分でサンプリングしたガス中のメチルメルカプタン、キシレン、MEKの除去率を図9に示す。温度の上昇に従って除去率も向上するために50℃以上でメチルメルカプタン、キシレン、MEKとも除去率は90%を超える高性能が確認された。但し75℃以上の高温ではオゾンの分解が進行するために、余り高温での処理は適切ではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】水熱合成法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークである。
【図2】含浸法で合成したペンタシル型ボロシリケートのX線回折ピークである。
【図3】低温合成法で合成したメソポーラス型シリコアルミノホスフェートのX線回折ピークである。
【図4】水熱合成法で合成した部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークである。
【図5】含浸法で合成した部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトのX線回折ピークである。
【図6】本発明の処理フローの1例を示す概略図である。
【図7】実施例4におけるO3/メチルメルカプタン、O3/キシレン、O3/MEKモル比とメチルメルカプタン、キシレン、MEK除去率の関係を示すグラフである。
【図8】実施例5におけるSV値とメチルメルカプタン、キシレン、MEK除去率の関係を示すグラフである。
【図9】実施例6における温度とメチルメルカプタン、キシレン、MEK除去率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 主プラント
2 排ガス導出配管
3 排ガスブロア
4 混合器
5 オゾン発生器
6 吸着剤充填塔
6a 吸着剤層
6b オゾン分解剤層
6c 仕切
7 処理ガス排出配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有害物質含有ガスにオゾンを添加、混合し、
(B)前記含有ガスを、オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種を用いる吸着剤を充填した吸着剤層に流過させ、
(C)ガス中の有害物質をオゾンの作用により無害化する有害物質含有ガスの処理方法。
【請求項2】
(D)前記(C)で無害化されて得られた処理ガスをオゾン分解剤と接触させて残留するオゾンを分解する請求項1記載の有害物質含有ガスの処理方法。
【請求項3】
オゾンを吸着し、かつ有害物質を吸着する(1)ペンタシル型ボロシリケート、(2)メソポーラス型シリコアルミノホスフェート(SAPO)、及び(3)部分的にSAPO構造を有するペンタシル型ゼオライトの群から選ばれた少なくとも一種の吸着剤層を設けた吸着剤充填塔と、該吸着剤充填塔に有害物質を含有するガスを供給する供給管と、該供給管に接続され、ガス中にオゾンを添加するオゾン発生器と、前記吸着剤充填塔から処理済みの処理ガスを排出する排出管とを備える有害物質含有ガスの処理装置。
【請求項4】
前記吸着剤充填塔の下流側に、リークするオゾンを分解するオゾン分解剤層が設けられている請求項3記載の有害物質含有ガスの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−44645(P2007−44645A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233204(P2005−233204)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000173647)財団法人産業創造研究所 (17)
【Fターム(参考)】