説明

有害物質除去材の製造方法

【課題】鶏卵抗体を担持した担体を含む長期安定保存が可能な有害物質除去材の製造方法の提供。
【解決手段】鶏卵抗体を含有する溶液を孔径0.5μm以下のフィルターで濾過すること、及び前記濾過後の前記溶液を担体に付着させることを含む鶏卵抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質除去材の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、長期安定保存が可能な、鶏卵抗体が担持された担体を含む有害物質除去材の製造方法、及び該製造方法により得られた有害物質除去材に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体担持フィルターは、液相や気相中のウイルスや雑菌の除去を行う材料として有用である。このフィルターは、温度及び湿度条件により変性しやすい抗体を利用したものであるため、使用中のフィルターや交換用に保存されているフィルターの長期間の安定性を担保する手段が望まれる。一般的に、長期保存のためには、保管用の包装体に封入後に電子線滅菌、ガンマ線滅菌、ガス滅菌などを行う手段があるが、抗体担持フィルターにこのような手段を適用すると、抗体の変性や劣化を引き起こす恐れがある。
特許文献1においては、気相雰囲気下で有害物質を除去する抗体を担持した有害物質除去材につき、長期保存のため保管雰囲気が18〜25℃且つ湿度40%以下となるように密封保管する保管方法や、酸素吸着剤を共存させることや不活性ガスや窒素ガスによるパージについての記載がある。
特許文献2には、抗体物質を用いた空気浄化フィルターの作製につき、不織布を浸積させるための抗体を含む脱脂卵黄粉末を懸濁した液を濾過して使用することについて記載がある。しかし、腐敗防止に関しての示唆はなく、また濾過の詳細な条件は開示されていない。
【特許文献1】特開2004-313755号公報
【特許文献2】特開2003-210558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、鶏卵抗体を担持した担体を含む長期安定保存が可能な有害物質除去材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、鶏卵抗体を担持させるための溶液または担体の前処理、および保管のための包装体を検討することによって、抗体担持フィルターの保存性が良好になる条件を見出し、この知見をもとに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]〜[5]を提供するものである。
【0005】
[1]鶏卵抗体を含有する溶液を孔径0.5μm以下のフィルターで濾過すること、及び前記濾過後の前記溶液を担体に付着させることを含む鶏卵抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。
[2]鶏卵抗体を含有する溶液を孔径0.5μm以下のフィルターで濾過すること、
担体を放射線またはガスによって滅菌処理すること、及び前記濾過後の前記溶液を前記滅菌処理後の担体に付着させることを含む鶏卵抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。
[3][1]または[2]に記載の製造方法により得られる有害物質除去材。
[4]紫外線を透過しない包装体で包装されている[3]に記載の有害物質除去材。
[5]前期包装体が、アルミニウム箔もしくはアルミニウム蒸着フィルムを含む包装体である[4]に記載の有害物質除去材。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、鶏卵抗体を担持した担体を含む有害物質除去材であって長期安定保存が可能な有害物質除去材の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
鶏卵抗体を担持させるための担体としては、特に限定されないが、繊維で構成された担体が好ましく、織布、不織布などの形態で担体を構成することが出来る。繊維としては、特に限定されないが、合成繊維であるポリエステル、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ビニロン、アクリル系、ポリウレタン、ポリアミド、天然繊維である綿、絹、ウール、再生繊維であるレーヨンなどを挙げることが出来る。これらの繊維を組み合わせても良い。 強度や寸度安定性を向上させる目的で、担体を金属・高分子材料・セラミックス等の他の適切な構造材料により補強してもよい。これらの補強材は、有害物質除去材料を供給する側面の実質的な最表面以外の部分(例えば、該側面の反対面や芯材に用いる等)に用いることが望ましい。
【0008】
本発明において担体として用いられる繊維の作製法としては、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、湿乾式紡糸など一般的な製造法や、物理的処理(例えば超高圧ホモジナイザーによる強力な機械的せん断処理)によって繊維を微細化する方法などが挙げられるが、安定な品質を確保するためには、乾式紡糸もしくは湿乾式紡糸法を用いることが好ましい。平均繊維径が100nm以下で均一な繊維を作製するためには、さらに加工技術、2005年、40巻、No.2、101頁、および167頁;Polymer International誌、1995年、36巻、195〜201頁;Polymer Preprints誌、2000年、41(2)号、1193頁;Journal of Macromolecular Science : Physics誌、1997年、B36、169頁などに開示されている電界紡糸法を採用することが好ましい。
【0009】
紡糸に用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水など、合成樹脂繊維に用いられる樹脂を溶解するものであれば何でも用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数種混合して用いてもよい。
【0010】
電界紡糸法を採用する場合には樹脂溶液に、さらに塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩を添加してもよい。
【0011】
担体を構成する繊維同士は部分的に接着することにより三次元ネットワークを形成している構造をもつことが望ましい。かような構造をとることにより、加工ならびに実用上の機械的耐性の向上、ひいては有害物質除去材の信頼性をあげることができる。また抗体の保持特性を上げることができる。繊維同士の接着はSEM等の方法で観察することができる。繊維同士の接着点の密度は、該有害物質除去材の投影表面積に対して1mm角辺り10箇所以上存在することが好ましく、100箇所以上であることがより好ましい。
【0012】
接着点を形成する方法としては、乾式紡糸法で形成される癒着や溶融紡糸法で形成される融着点で形成してもよいし、紡糸後に加熱や、接着剤・可塑化溶剤等の添加による接着点形成処理を行ってもよい。製造コストの観点では適切な溶液処方により乾式紡糸法で癒着点を形成させることが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において、担体は滅菌されることが好ましい。滅菌方法は担体を劣化させない滅菌法であれば特に限定されないが、放射線による滅菌またはガスによる滅菌が好ましい。
放射線による滅菌方法としては、ガンマ線滅菌、電子線滅菌などを用いる方法をあげることができる。このうち、ガンマ線滅菌を用いる方法が好ましい。
ガスによる滅菌方法としては、エチレンオキサイドガス滅菌、二酸化塩素ガス滅菌などを用いる方法をあげることができる。このうち、エチレンオキサイドガス滅菌を用いる方法が好ましい。
【0014】
本発明の製造方法に用いられる抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状分子構造のうち、一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
【0015】
前記抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス菌、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌などを挙げることができる。カビとしては、例えば、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムなどを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン、ネコアレルゲンなどを挙げることができる。
【0016】
鶏卵抗体はニワトリに抗原を投与して免疫卵を産ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から精製して得ることができる。鶏卵から抗体を得る方法は、容易にかつ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
【0017】
前記担体に抗体を担持する(固定化する)方法としては、前記担体に抗体を物理的に吸着させる方法のほか、担体をγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定化する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングした後にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法をあげることができる。
【0018】
ここで、前記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C65NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
【0019】
また、前記担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
【0020】
更に、前記抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きになり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
【0021】
前記抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよい。この場合、担体上での抗体の自由度が高くなり、有害物質への接近が容易となるので、高い除去性能を得ることができる。リンカーとしては、二価以上のクロスリンク試薬を挙げることができ、具体的にはマレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanate)があり、標的官能基(SH基、NH2基、COOH基、OH基)に選択的なものと非選択的なものとがある。また、クロスリンク間の距離(スペースアーム)もクロスリンク試薬ごとに異なっており、目的の抗体に応じて0.1nm〜3.5nm程度の範囲で選択することができる。有害物質を効率的に捕捉するという観点からは、リンカーとして抗体のFcに結合するものが好ましい。
【0022】
リンカーを導入する方法としては、抗体にリンカーを結合させておき、それを更に抗体に結合する方法、担体にリンカーを結合させておき、担体上のリンカーに抗体を結合させる方法のいずれも可能である。
【0023】
本発明の製造方法において、鶏卵抗体を含む溶液を担体に付着させることにより、抗体を担体に担持させる。鶏卵抗体液を担体に付着させる方法は、特に限定されないが、担体を鶏卵抗体液に浸漬させる方法、スプレー塗布、インクジェット塗布、カーテン塗布が挙げられる。
鶏卵抗体を含む溶液は、上記のように得られる鶏卵抗体を生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水などに溶解して作製すればよい。該溶液において鶏卵抗体の濃度は、0.001質量%〜10質量%であればよく、0.005質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。該溶液は、安定化剤や、抗菌剤、抗カビ剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の製造方法においては、鶏卵抗体を含む溶液を、孔径0.5μm以下のフィルターで濾過して用いることを特徴とする。この濾過用のフィルターは0.3μm以下であることがより好ましい。孔径0.5μm以下のフィルターで濾過することにより、製造される有害物質除去材における雑菌やカビの増殖を抑えることができる。
【0025】
本発明の製造方法により得られる有害物質除去材によって、気相中又は液相中の有害物質の除去が可能である。この有害物質除去材は抗体が気相に面しているドライな環境においても使用可能であり、空気清浄機用フィルター、マスク、拭き取りシートなどに用いることができる。本発明の製造方法により得られる有害物質除去材は長期間安定保存が可能である。
本発明の製造方法により得られる有害物質除去材は、紫外線を透過しない包装体を用いて包装されることが好ましい。このような包装体を用いることによって、紫外線による抗体の劣化が防止でき、さらに長期間の安定保存が可能である。包装体としては、アルミニウム箔フィルム、アルミニウム蒸着フィルムが好ましく、また、これらを含む多層フィルムも好ましく用いられる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
<抗体フィルター作製>
<担体の作製>
(担体N−1)
セルロースアセテート(アルドリッチ製、全置換度2.4、数平均分子量3万)のアセトン:水(97:3)溶液(25質量%)を60℃に加温し、直径0.1mmのノズルから、紡速500m/mの速度で空気とともに噴出させ不織布を形成し膜厚85μmの不織布担体N−1を得た。紡糸筒はヒーターで100℃に加温した。SEMで平均繊維径を測定したところ、8μmであった。
(N−2)
不織布N−1にガンマ線滅菌を行い、滅菌済み不織布担体N−2を得た。
【0027】
<抗体液の調製>
抗原を投与したニワトリが産んだ免疫卵の卵黄液を、噴霧乾燥して乾燥卵黄粉末を得た。次いで、この乾燥卵黄粉末をエタノールで脱脂して脱脂成分を除去した後、減圧下で乾燥し、抗体物質としての脱脂卵黄粉末を得た。この脱脂卵黄粉末を精製してインフルエンザウイルス抗体(IgY抗体)の純度を測定したところ、3質量%であった。次いで、脱脂卵黄粉末をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させ、抗体濃度100ppmになるように調整した。得られた液を、孔径0.22μmのフィルターで濾過した抗体溶液(K−1)、孔径0.45μmのフィルターで濾過した抗体溶液(K−2)、孔径1μmのフィルターで濾過した抗体溶液(K−3)、濾過処理しない抗体溶液(K−4)を作製した。
【0028】
<抗体の固定化>
(抗体フィルターF−1)
抗体溶液K−1に担体N−1を室温で16〜24時間浸漬させ、繊維表面に抗体を付与させた。得られた試料を25℃20%RHの環境下で24時間静置し、次に25℃90%RHの環境下で24時間静置した。この操作を交互に3回ずつ、合計6条件の間で繰返した。
【0029】
(抗体フィルターF−2)
抗体溶液をK−1からK−2に変更した以外は、F−1と同様の方法で、抗体フィルターF−2を作製した。
(抗体フィルターF−3)
担体をN−1からN−2に変更した以外はF−1と同じ方法で、抗体フィルターF−3を作製した。
【0030】
(抗体フィルターF−4)
抗体溶液をK−1からK−3に変更した以外は、F−1と同様の方法で、抗体フィルターF−4を作製した。
(抗体フィルターF−5)
抗体溶液をK−1からK−4に変更した以外は、F−1と同様の方法で、抗体フィルターF−5を作製した。
【0031】
<強制腐敗試験>
抗体フィルターF−1〜F−5を保管雰囲気25℃湿度80%の暗室で2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月保管した後、目視で外観を確認した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から明らかなように、本発明の製造方法により得られた抗体フィルターは、高湿度環境下でも長期間腐敗することがない。
【0034】
<抗体フィルターの包装>
(包装済み抗体フィルターH−1)
抗体フィルターF−1を、防湿・遮光のアルミニウム箔フィルムを含む包装袋(ストロングパックALH メイワパックス社製)に封入した。
(包装済み抗体フィルターH−2)
抗体フィルターF−2を、防湿・遮光のアルミニウム箔フィルムを含む包装袋(ストロングパックALH メイワパックス社製)に封入した。
(包装済み抗体フィルターH−3)
抗体フィルターF−4を、防湿・遮光のアルミニウム箔フィルムを含む包装袋(ストロングパックALH メイワパックス社製)に封入した。
(包装済み抗体フィルターH−4)
抗体フィルターF−1を、防湿・透明の包装袋(ストロングパックBX メイワパックス社製)に封入した。
【0035】
<紫外線照射下での保存>
包装済み抗体フィルターH−1〜H4を保管雰囲気25℃湿度60%の室内で、100μW/cm2の紫外線を2週間照射した。紫外線強度は、浜松フォトにクス社製のUV-パワーメーター(C9536−01/H9958)により測定した。
【0036】
<ウイルス不活性化効率評価>
紫外線照射下での保存後の抗体フィルターのウイルス不活性化評価を実施した。
供試ウイルス液は精製インフルエンザウイルスをPBSで10倍希釈したもの(ウイルス濃度20万プラーク/mL)を使用した。前記各サンプルを5cm角に切り、ウイルス噴霧試験装置の中央に取り付け固定した。上流側に設置したネブライザーに供試ウイルス液を入れ、下流側にウイルス回収用装置を取り付けた。エアーコンプレッサーから圧縮空気を送り、ネブライザーの噴霧口から供試ウイルスを噴霧した。マスク下流側には、ゼラチンフィルターを設置し、10L/分の吸引流量で5分間試験装置内空気を吸引し、通過ウイルスミストを捕集した。
試験後、ウイルスを捕集したゼラチンフィルターを回収し、MDCK細胞を用いたTCID50法(50%細胞感染量測定法)により、サンプル通過後のウイルス感染価を求めた。サンプル有り無しでのゼラチンフィルターのウイルス感染価の比較から、各サンプルのウイルスの一過性除去率を算出した。
【0037】
【表2】

【0038】
表2から明らかなように、本発明の包装済み抗体フィルターは、紫外線で抗体が劣化することがなく、長期保存後も、ウイルス不活性能力を有する。
さらにH−1及びH−2とH−3とを比較すると、H−1及びH−2においてはウイルスの一過性除去率が顕著に高く、付着させる抗体溶液を0.5μmのフィルターで濾過した抗体フィルターは、ウイルスの除去率が向上していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏卵抗体を含有する溶液を孔径0.5μm以下のフィルターで濾過すること、及び
前記濾過後の前記溶液を担体に付着させること
を含む鶏卵抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。
【請求項2】
鶏卵抗体を含有する溶液を孔径0.5μm以下のフィルターで濾過すること、
担体を放射線またはガスによって滅菌処理すること、及び
前記濾過後の前記溶液を前記滅菌処理後の担体に付着させること
を含む鶏卵抗体を担持した担体を含む有害物質除去材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られる有害物質除去材。
【請求項4】
紫外線を透過しない包装体で包装されている請求項3に記載の有害物質除去材。
【請求項5】
前期包装体が、アルミニウム箔もしくはアルミニウム蒸着フィルムを含む包装体である請求項4に記載の有害物質除去材。

【公開番号】特開2009−95773(P2009−95773A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270068(P2007−270068)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】