説明

有害菌類を防除するためのトリチコナゾールに対する薬害軽減剤としてのピラクロストロビンの使用

本発明は、(1)式I:
【化1】


で表されるピラクロストロビンの使用であって、
(2)有害菌類を防除するための式II:
【化2】


で表される、トリチコナゾールまたはその塩もしくはその付加体に対する薬害軽減剤としてのピラクロストロビンの使用に関する。また本発明は、式IおよびIIの化合物の混合物を使用する有害菌類の防除法における式IおよびIIの化合物の使用、ならびにかかる混合物を製造するための式IおよびIIの化合物の使用、さらにかかる混合物を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(1)式I:
【化1】

【0002】
で表されるピラクロストロビンの使用であって、
(2)有害菌類を防除するための式II:
【化2】

【0003】
で表される、トリチコナゾールまたはその塩もしくはその付加体に対する薬害軽減剤としてのピラクロストロビンの使用に関する。
【0004】
さらに本発明は、化合物IおよびIIの混合物を用いる有害菌類の防除法における該化合物IおよびIIの使用、ならびにかかる混合物を調製するための該化合物IおよびIIの使用、ならびにこれら混合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
式Iで表されるピラクロストロビンは欧州特許出願公開第0,804,421号から周知である(特許文献1)。
【0006】
式IIで表されるトリチコナゾールは欧州特許出願公開第0,378,953号に記載されている(特許文献2)。
【0007】
式Iで表されるピラクロストロビンおよび式IIで表されるトリチコナゾールと他の殺菌剤との混合物もまた、国際公開WO 98/54969号から周知である(特許文献3)。
【0008】
ドイツ国特許出願102 00 402 9338.4号は、サビ病菌のダイズへの感染を防除するために、ストロビルリンを含む混合物中でのトリチコナゾールの使用を開示している(特許文献4)。
【0009】
Montfortら (Pesticide Science、46(4)巻、1996年、315-322頁) は、トリチコナゾールを種子または作物の植物体を処理するために用いると、植物の生長に対して負の効果が起きる場合があることを開示している。このトリチコナゾール処理中に生じる負の効果は、例えば縦方向の生長が激しく低下することが挙げられる。前記の効果は作物であるコムギについて記載されている。
【特許文献1】EP-A 0 804 421号
【特許文献2】EP-A 0 378 953号
【特許文献3】WO 98/54969号
【特許文献4】DE 102 00 402 9338.4号
【非特許文献1】Pesticide Science、46(4)巻、1996年、315-322頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、同じ殺菌作用において、植物の生長に関する前記のトリチコナゾールによる負の効果を除去する薬害軽減剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
我々は、最初に定義したように、有害菌類を防除するためのトリチコナゾールに対する薬害軽減剤としてのピラクロストロビンの使用によって、前記の目的が達成されることを発見した。さらに我々は、ピラクロストロビンおよびトリチコナゾールを同時に、すなわち一緒にもしくは別々に施用することが可能であることを発見した。さらにまた、ピラクロストロビンとトリチコナゾールは組成物の調製に使用することが可能であることも発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
式I:
【化3】

【0013】
で表されるピラクロストロビンは欧州特許出願公開第0,804,421号に記載されている。
【0014】
式II:
【化4】

【0015】
で表されるトリチコナゾールは欧州特許出願公開第0,378,953号に記載されている。
【0016】
窒素原子の塩基的性質により、該化合物IIは無機もしくは有機酸、および金属イオンと、それぞれ塩または付加体を形成することができる。
【0017】
無機酸の例としてはフッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素のようなハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸ならびに硝酸である。
【0018】
好適な有機酸としては、例えば、ギ酸、炭酸、ならびに酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、およびプロピオン酸のようなアルカン酸類、ならびにまたグリコール酸、チオシアン酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、シュウ酸、アルキルスルホン酸(C1〜C20の直鎖もしくは分枝したアルキル基を有するスルホン酸)、アリールスルホン酸もしくはジスルホン酸(フェニルおよびナフチル基のような芳香族基であって、1もしくは2のスルホン酸基を有する)、アルキルホスホン酸(C1〜C20の直鎖もしくは分枝したアルキル基を有するホスホン酸)、アリールホスホン酸もしくはジホスホン酸(フェニルおよびナフチル基のような芳香族基であって、1もしくは2のホスホン酸基を有する)、ここで該アルキルまたはアリール基は更なる置換基を有してよく、たとえばp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸などが挙げられる。
【0019】
好適な金属イオンとしては、第2主族元素のイオン、特にカルシウムおよびマグネシウム、第3および第4主族元素のイオン、特にアルミニウム、スズおよび鉛、ならびに第1〜8族の遷移元素、特にクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛およびその他の元素のイオンが挙げられる。特に好適なものは、第4周期に属する遷移元素の金属イオンである。該金属イオンはそれらが取り得る様々な価数で存在することができる。
【0020】
最初に述べたように、多くの作物において、殺菌剤の種子粉衣は出芽を遅らせまたは減少させ、その結果、栽培開始時に株立ちの定着率がより低い値となる。
【0021】
該化合物IおよびIIの混合物の使用、または該化合物IおよびIIのうち1種ずつの同時、すなわち一緒もしくは別々の使用は、植物におけるこれらの負の効果であって、その用量によってはトリチコナゾールもしくはピラクロストロビンによって起こり得る前記負の効果が、起こらないか、または明白でない、という点において特徴づけられる。加えて、該混合物は植物病原菌、特に子嚢菌綱(Ascomycetes)、担子菌綱(Basidiomycetes)、不完全菌綱(Deuteromycetes)および卵菌綱(Peronosporomycetes; Oomycetesと同義)に対して広範なスペクトラムで良好な活性を有する。これらのいくつかは全身的に活性を示し、葉面殺菌剤、種子粉衣殺菌剤および土壌殺菌剤として、作物保護に用いることが可能である。
【0022】
前記混合物はバナナ、ワタ、野菜類(例えば、キュウリ、マメ、トマトおよびウリ科植物)、オオムギ、牧草、オートムギ、コーヒー、ジャガイモ、トウモロコシ、果実類、イネ、ライムギ、マメ科植物(例えば、ダイズ、エンドウ、マメ、レンズマメ)、ブドウの木、コムギ、観賞植物およびサトウキビのような様々な栽培植物、ならびに多くの種子において多数の菌類を防除するために特に重要である。
【0023】
前記混合物は下記の植物病害:
-野菜、アブラナ、サトウダイコンおよび果実およびイネに感染するアルテルナリア属菌(Alternaria species)、
-サトウダイコンおよび野菜に感染するアファノマイセス属菌(Aphanomyces species)、
-トウモロコシ、穀類、イネおよび芝生に感染するビポラリス属菌 (Bipolaris species)およびドレクスレラ属菌(Drechslera species)、
-穀類に感染するブルメリア・グラミニス (Blumeria graminis) (ウドンコ病)、
-イチゴ、野菜、花卉、およびブドウの木に感染するボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビ病)、
-レタスに感染するブレミア・ラクツカエ (Bremia lactucae)、
- トウモロコシ、ダイズ、イネおよびサトウダイコンに感染するサーコスポラ属菌(Cercospora species)、
-トウモロコシ、穀類およびイネに感染するコクリオボルス属菌(例えば、穀類にはコクリオボルス・サティバス (Cochliobolus sativus)、イネにはコクリオボルス・ミヤビーナス (Cochliobolus miyabeanus))、
-ダイズおよびワタに感染するコレトトリクム属菌 (Colletotricum species)、
-穀類およびトウモロコシに感染するドレックスレラ属菌 (Drechslera species)、
-トウモロコシに感染するエキセロヒラム属菌 (Exserohilum species)、
-ウリ科植物に感染するエリシフェ・シコラセアルム (Erysiphe cichoracearum)およびスファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、
-様々な植物に感染するフザリウム属菌(Fusarium species)およびバーティシリウム属菌(Verticillium species)、
-穀類に感染する ガエウマノマイセス・グラミニス (Gaeumanomyces graminis)、
-穀類およびイネに感染するジベレラ属菌 (Gibberella species) (例えば、イネにはジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi))、
-イネに感染する穀粒染色複合体(grain staining complex)、
-トウモロコシおよびイネに感染するヘルミントスポリウム属菌 (Helminthosporium species)、
-穀類に感染するミクロドシウム・ニバル (Michrodochium nivale)、
-穀類、バナナおよびラッカセイに感染するマイコスファエレラ属菌(Mycosphaerella species)、
-ダイズに感染するファコサラ・パシリジィ (Phakopsara pachyrhizi)およびファコサラ・メイボミエ (Phakopsara meibomiae)、
-ダイズおよびヒマワリに感染するホモプシス属菌 (Phomopsis species)、
-ジャガイモおよびトマトに感染するフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、
-ブドウの木に感染するプラスモパラ・ビチコーラ(Plasmopara viticola)、
-リンゴに感染するポドスファエラ・ロイコトリカ(Podosphaera leucotricha)、
-穀類に感染するシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)、
-ホップおよびウリ科植物に感染するシュードペロノスポラ属菌(Pseudoperonospora species)、
-穀類およびトウモロコシに感染するプッシニア属菌(Puccinia species)、
-穀類に感染するピレノフォーラ属菌 (Pyrenophora species)、
-イネに感染するピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、コルティシウム・ササキ(Corticium sasakii)、サロクラディウム・オリゼ (Sarocladium oryzae)、サロクラディウム・アテヌアタム (S. attenuatum) および エンティロマ・オリゼ (Entyloma oryzae)、
-芝生および穀類に感染するピリクラリア・グリサ (Pyricularia grisea) 、
-芝生、イネ、トウモロコシ、ワタ、アブラナ、ヒマワリ、サトウダイコン、野菜および他の植物に感染するピシウム属菌群 (Pythium spp.) 、
-ワタ、イネ、ジャガイモ、芝生、トウモロコシ、アブラナ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜および他の植物に感染するリゾクトニア属菌(Rhizoctonia species)、
-アブラナおよびヒマワリに感染するスクレロシニア属菌(Sclerotinia)、
-コムギに感染するセプトリア・トリティシ (Septoria tritici)およびスタゴノスポラ・ノドルム (Stagonospora nodorum)、
-ブドウの木に感染するエリシフェ(ウンキヌラと同義)・ネクトール (Erysiphe (Uncinulaと同義) necator)、
-トウモロコシおよび芝生に感染するセトスパリア属菌 (Setospaeria species)、
-トウモロコシに感染するスファセロセカ・レイリニア (Sphacelotheca reilinia)、
-ダイズおよびワタに感染するチエバリオプシス属菌 (Thievaliopsis species)、
-穀類に感染するチレチア属菌 (Tilletia species)、
-穀類、トウモロコシおよびサトウダイコンに感染するウスチラゴ属菌(Ustilago species)、および、
-リンゴおよびナシに感染するベンチュリア・イネクアリス(Venturia inaequalis)(黒星病)、
を防除するのに特に好適である。
【0024】
該化合物IおよびIIは、資材(例えば木材、紙、塗料分散剤、繊維または織物)の保護および保存製品の保護において、パーシノマイセス・バリオティ (Paecilomyces variotii) のような有害菌類の防除に用いることも可能である。
【0025】
該化合物IおよびIIは同時に、すなわち、一緒にもしくは別々に、または逐次的に施用することが可能であるが、別々の施用の場合、その順序は、一般に植物の生長および該防除法の結果にはいかなる影響もない。
【0026】
本発明に関する使用においては、純粋な活性化合物IおよびIIを用いることが好ましく、その中には、有害菌類、または昆虫、クモもしくは線虫のような他の害虫に対するさらなる活性化合物、また他には除草活性もしくは生長調節活性化合物、または肥料を必要に応じて加えることが可能である。
【0027】
通常、該化合物IおよびIIの混合物が使用される。しかしながら、ある場合には、該化合物IおよびIIの混合物は、好適であれば、例えば化合物IおよびIIにさらなる殺菌剤を加えた混合物のように、複数の活性組成物との混合物が有益でありうる。
【0028】
該化合物IおよびIIの混合比(重量比)は、前記の薬害軽減作用を奏するように選択され、例としては、化合物I:化合物IIの比は例えば100:1〜1:100であり、特に10:1〜1:10が挙げられ、また例えば5:1〜1:5であり、特に3:1〜1:3であり、好ましくは2:1〜1:2が挙げられる。該混合物の薬害軽減作用は、植物の生長に対するトリチコナゾールの負の効果が無い、または明白でない状態として現れる。
【0029】
さらなる活性成分は、所望により20:1〜1:20の比で化合物IおよびIIに加えられる。
【0030】
化合物の種類および所望の効果に依存するが、使用される該混合物の施用割合は、特に農業耕地において5 g/ha〜2000 g/ha、好ましくは20〜900 g/ha、特に好ましくは50〜750 g/haである。
【0031】
同様に、該化合物Iの施用割合は、通常1〜1000 g/haであり、好ましくは10〜900 g/haであり、特に好ましくは20〜750 g/haである。
【0032】
同様に、該活性化合物IIの施用割合は、通常1〜1000 g/haであり、好ましくは10〜900 g/haであり、特に好ましくは40〜750 g/haである。
【0033】
種子処理において、混合物の施用割合は通常1〜1000 g/100 kg種子であり、好ましくは1〜750 g/100 kgであり、特に好ましくは5〜500 g/100 kgである。
【0034】
本発明による有害菌類の防除法における該化合物IおよびIIの使用は、播種前もしくは後、または出芽前もしくは後に、種子、植物体、もしくは土壌に散布または散粉することによる、該化合物IおよびIIの別々もしくは一緒の施用、または該化合物IおよびIIの混合物の施用により実施される。
【0035】
本発明において該化合物IおよびIIを使用するとき、それらは、例えば液剤、乳剤、懸濁水和剤、粉剤、粉末、ペースト剤および粒剤が挙げられるような通常の製剤へと変換することが可能である。該使用形態は、その特定の意図する目的による;いずれの場合も該化合物IおよびIIの微細で均一な分散が確実になされるべきである。
【0036】
該製剤は周知の方法、例えば、該活性化合物に溶剤および/または担体を加えて、また所望により乳化剤および分散剤を用いて、希釈増量することによって調製される。本目的に好適である溶剤/助剤は基本的に:
- 水、芳香族溶剤類(例えば、ソルベッソ(Solvesso(商標))製品、キシレン)、パラフィン類(例えば、鉱油画分)、アルコール類(例えば、メタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン類(例えば、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン)、ピロリドン類(NMP, NOP)、アセテート類(二酢酸グリコール)、グリコール類、脂肪酸ジメチルアミド類、脂肪酸類および脂肪酸エステル類。原則として溶剤混合物も使用してもよい、
- 担体類としては、粉砕天然鉱物類(例えば、カオリン類、粘土類、タルク、チョーク)および粉砕合成鉱物類(例えば、高分散シリカ、シリケート類);乳化剤としては、非イオン性および陰イオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル類、アルキルスルホン酸類およびアリールスルホン酸類)ならびに分散剤としてはリグノ亜硫酸廃液およびメチルセルロース、
である。
【0037】
界面活性剤としての用途に好適であるのは、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸類、アルキル硫酸類、アルキルスルホン酸類、脂肪族アルコール硫酸類、脂肪酸類および硫酸化されている脂肪族アルコールグリコールエーテル類のアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム塩、さらに、スルホン化されているナフタレンおよびナフタレン誘導体とホルムアルデヒドとの縮合体、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドとの縮合体、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシル化されているイソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル類、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコールおよび脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合体、エトキシル化されているヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、エトキシル化されているポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル類、リグノ亜硫酸廃液およびメチルセルロースである。
【0038】
直接散布可能な溶液、乳濁液、ペーストまたは油分散液の調製に好適な物質は、中〜高沸点の鉱油画分、例えばケロセンまたはディーゼル油であり、さらにコールタール油、および植物または動物由来油であり、脂肪族、環式および芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化されているナフタレン類またはその誘導体類であり、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロンであり、高極性溶剤、例えばジメチルスルフォキシド、N-メチルピロリドンおよび水である。
【0039】
粉末、展着のための薬剤および紛剤は、該活性物質と固体担体とを混合または同時に粉砕することにより調製することが可能である。
【0040】
粒剤、例えば被覆粒剤(coated granule)、含浸粒剤(impregnated granule)および均質粒剤(homogeneous granule)は、該活性化合物と固体担体とを結合させることにより調製することが可能である。固体担体の例としては、鉱物土類、例えばシリカゲル、シリケート、タルク、カオリン、アタクレイ(attaclay(商標))、石灰石、石灰、チョーク、膠灰粘土、黄土、粘土、苦灰石、および珪藻土;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、および酸化マグネシウム;粉砕合成資材;肥料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、および尿素;植物由来物、すなわち穀物粉、樹皮粉、木粉、および堅果殻粉;セルロース粉;ならびに他の固体担体である。
【0041】
一般に、該製剤は該活性化合物を0.01〜95重量%、好ましくは0.1〜90重量%含む。該活性化合物は90〜100%純度、好ましくは95〜100%純度(NMRスペクトルによる)で使用される。
【0042】
以下は製剤の例である。
【0043】
1.水で希釈する製品
A) 水溶液剤(water-soluble concentrate) (SL)
10重量部の本発明による化合物を、90重量部の水または水溶性溶剤に溶解する。代替としては、湿潤剤または他の助剤を加える。該活性化合物は水による希釈で溶解する。これにより10重量%の活性化合物を含有する製剤を与える。
【0044】
B) 分散製剤(dispersible concentrate) (DC)
20重量部の本発明による化合物を、例えばポリビニルピロリドンが挙げられる分散剤を10重量部加えた、70重量部のシクロヘキサノンに溶解する。水希釈により分散液を与える。該活性化合物含量は20重量%である。
【0045】
C) 乳剤(emulsifiable concentrate)(EC)
15重量部の本発明による化合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよびエトキシル化されているヒマシ油(それぞれ5重量部)を加えた75重量部のキシレンに溶解する。水希釈により乳濁液を与える。該製剤は15重量%の活性化合物を含有する。
【0046】
D)エマルジョン製剤(emulsion)(EW, EO)
25重量部の本発明による化合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムおよびエトキシル化されているヒマシ油(それぞれ5重量部)を加えた35重量部のキシレンに溶解する。本混合物を、乳化装置(例えばUltraturrax)を用いて30重量部の水に加え、均質なエマルジョン製剤にする。水希釈によりエマルジョンが得られる。該製剤は25重量%の活性化合物を含有する。
【0047】
E) 懸濁剤(suspension) (SC, OD)
ボールミルで撹拌しながら、20重量部の本発明による化合物を、10重量部の分散剤および湿潤剤ならびに70重量部の水もしくは有機溶剤に加えて細分することで、微細な活性化合物の懸濁液が得られる。水で希釈することで、該活性化合物の安定な懸濁液が得られる。該製剤中の活性化合物含量は20重量%である。
【0048】
F) 顆粒水和剤(water-dispersible granule)および顆粒水溶剤(water-soluble granule) (WG, SG)
50重量部の本発明による化合物を、50重量部の分散剤および湿潤剤を加えて微粉砕し、専用の装置(例えば押出機、噴霧塔、流動床)によって顆粒水和剤または顆粒水溶剤として調製する。水希釈によって、該活性化合物の安定な分散液または溶液が得られる。該製剤は、50重量%の活性化合物を含有する。
【0049】
G) 粉末水和剤(water-dispersible powder)および粉末水溶剤(water-soluble powder)(WP, SP)
75重量部の本発明による化合物を、ローター・ステーターミル中で25重量部の分散剤、湿潤剤およびシリカゲルを加えて粉砕する。水希釈によって、該活性化合物の安定な分散液または溶液が得られる。該製剤に含まれる活性化合物の含量は75重量%である。
【0050】
2.希釈せず施用する製品
H) 粉剤(dustable powder)(DP)
5重量部の本発明による化合物を微粉砕し、95重量部の微細カオリンと充分に混合する。これにより5重量%の活性化合物を含有する粉剤が得られる。
【0051】
J) 粒剤(granule)(GR, FG, GG, MG)
0.5重量部の本発明による化合物を99.5重量部の担体と共に微粉砕し混合する。通常の方法は、押出、噴霧乾燥または流動床である。これにより、希釈せずに施用する粒剤が、0.5重量%の活性化合物を含有して得られる。
【0052】
K) 超微量散布液剤(ULV solution)(UL)
10重量部の本発明による化合物を、90重量部の有機溶剤、例えばキシレンに溶解する。これにより、希釈せずに施用する製品が、10重量%の活性化合物を含有して得られる。
【0053】
該活性化合物は、それ自体として、それらの製剤の形態として、またはそれらから調製される使用形態、例えば、直接散布可能な溶液、粉末、懸濁液もしくは分散液の使用形態として、エマルジョン製剤、油分散剤、ペースト剤、粉剤化製品、展着のための薬剤または粒剤の形態として、散布(spraying)、噴霧(atomizing)、散粉(dusting)、展着(spreading)または灌注(pouring)によって使用することができる。該使用形態はもっぱらその意図する目的による;それらは各々の場合において、本発明による活性化合物が可能な限り微細な分布となるよう意図されるものである。
【0054】
水性の使用形態は、乳剤、ペースト剤または水和剤(噴霧可能な粉剤、油分散剤)に水を加えることにより調製することが可能である。乳剤、ペースト剤または油分散剤の調製のためには、該物質は、そのまま、または油もしくは溶剤に溶解した状態として、湿潤剤、粘着付与剤(tackifier)、分散剤または乳化剤によって水中に均質化することが可能である。しかしながら、活性物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤もしくは乳化剤、ならびに適宜溶剤もしくは油を含む濃縮製剤を調製することも可能であり、かかる濃縮製剤は水希釈に好適である。
【0055】
直ちに使用可能な調製物に含まれる該活性化合物の濃度は、比較的広い範囲で変えることが可能である。通常、それらは0.0001〜10%であり、好ましくは0.01〜1%である。
【0056】
該活性化合物は、超微量散布法(ultra-low-volume process (ULV))においてもうまく使用することができ、それにより95重量%を超える活性化合物を含む製剤を施用したり、または添加剤なしで該活性化合物を施用したりすることができる。
【0057】
様々な種類の油、湿潤剤、アジュバントが、適切であれば、必ずしも直前でなくとも使用前に該活性化合物に加えられてよい(タンク混合)。これらの物質は、典型的には本発明による該組成物に対して重量比で1:100〜100:1,好ましくは1:10〜10:1の割合で混合される。
【0058】
該化合物IおよびII、またはその混合物、またはそれに対応する製剤は、有害菌類が存在しない状態を保つために、殺菌剤として有効な用量の該混合物で、または別途施用の場合には殺菌剤として有効な用量の該化合物IおよびIIで、有害菌類、植物体、種子、土壌、用地、資材または空間を処理することによって施用する。施用は該有害菌類による感染前または感染後に実施することが可能である。
【実施例】
【0059】
該化合物IおよびIIの薬害軽減効果は下記の試験によって証明された。
【0060】
二種の活性化合物を個別に、または両活性化合物の混合物として種子を処理し、その植物体の発育を観察した。該混合物を用いた場合、混合成分の一方または両者を個別に施用した場合に観察される負の効果が、あったとしても、軽減したレベルで観察された。
【0061】
ベントグラスの種子処理
ベントグラスの種子を、表に示した製品および濃度で種子処理した。トリチコナゾールおよびピラクロストロビンは200 g/l FS製剤として使用した。処理した種子は処理当日に播種し、温室内にて湿潤条件下で栽培した。播種後9日目に、出芽した植物による被度(地表を覆う割合)を評価した。
【表1】

【0062】
該データは、TTZによる負の効果がピラクロストロビンによって相殺され得ることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式I:
【化1】

で表されるピラクロストロビンの使用であって、
(2)有害菌類を防除するための式II:
【化2】

で表される、トリチコナゾールまたはその塩もしくは付加体に対する薬害軽減剤としての、ピラクロストロビンの使用。
【請求項2】
式Iで表されるピラクロストロビンと式IIで表されるトリチコナゾールの重量比が100:1〜1:100である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式Iで表されるピラクロストロビンと式IIで表されるトリチコナゾールを用いて、菌類、その生息地、または菌類が存在しない状態を保つべき植物体、種子、土壌、用地、資材もしくは空間を処理することを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
請求項1に記載の式IおよびIIの化合物が同時に、すなわち、一緒にもしくは別々に、または逐次的に施用される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
請求項1に記載の式IおよびIIの化合物が、5 g/ha〜2000 g/haの用量で施用される、請求項3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の式IおよびIIの化合物が、種子100 kgあたり1 g〜1000 gの用量で施用される、請求項3または4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
有害菌類の防除に適した組成物を製造するための、請求項1に記載の式IおよびIIの化合物の使用。
【請求項8】
組成物が、式IおよびIIの化合物に加えて、固体または液体の担体を含む、請求項7に記載の使用。

【公表番号】特表2009−515847(P2009−515847A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539414(P2008−539414)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068103
【国際公開番号】WO2007/054471
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】