説明

有害軟体動物を退治するためのサイカチ属サポニンの使用

本発明の目的は、摂取により陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための、少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニン、またはサポニンを含む少なくとも1つのサイカチ属植物由来の抽出物の使用である。本発明は、軟体動物駆除有効成分、これを含有する組成、および有害軟体動物の退治方法にも係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための、サイカチ属(Gleditsia)植物由来のサポニンを摂取させることによる毒物としての使用に関する。
【0002】
本発明はまた、軟体動物駆除有効物質であって、サイカチ属サポニンならびにこのような有効物質を含有する軟体動物駆除組成を含む軟体動物駆除有効物質、および陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための、摂取による毒物としてのその使用にも係る。
【背景技術】
【0003】
陸棲または水棲軟体動物のなかには、植物の深刻な害虫として知られているものがあり、それらは農産物、水産物、園芸産物またはアマチュア園芸家の植栽物を害する可能性がある。
【0004】
陸棲または水棲軟体動物のなかにはまた、例えばビオンファラリア属(Biomphalaria)の水棲カタツムリおよびサラシヌラ属(Sarasinula)のナメクジなど、人間に病原をもたらす可能性があると知られているものもある。
【0005】
これらの有害動物から植物および耕地を保護し、これらの有害動物が人間に病原をもたらさないようにするため、退治手段を講じる必要がある。
【0006】
有害軟体動物の撃退を試みるには、様々な方法を用いることができる。最も一般的かつ最も有効な方法は、軟体動物駆除製品、すなわち軟体動物を殺す特性を有する有効成分を利用する方法である。
【0007】
軟体動物駆除製品をその作用形態に応じて2つのカテゴリに分類する。接触により作用する軟体動物駆除剤、および摂取により作用する軟体動物駆除剤である。
【0008】
接触により作用する軟体動物駆除剤は、効果を発揮するためには、有害軟体動物と直接または間接的に接触する必要があるものである。その適用は、様々な方法で実現でき、とりわけ粉末または溶液を水中へ散布する、溶液を有害軟体動物に直接噴射する、または有効物質を含む粉末もしくは有効物質を含浸させた細帯を土壌に設置することによって実現できる。
【0009】
接触による軟体動物駆除剤は、特に稲田に生息する水棲軟体動物を退治するのにとりわけ使用される。この軟体動物駆除剤は、直接噴射されるか、水中に散布され、用水路網を流れる水を介してすべての水耕地に行き渡る。軟体動物駆除剤は有毒であることが多いため、水質汚染を引き起こすおそれがあり、標的ではない動物相にも人畜にも危険となることがある。
【0010】
接触による軟体動物駆除剤は、有害な陸棲軟体動物の退治にはほとんど使用されない。その最大の欠点は、軟体動物駆除製品と有害軟体動物との間に十分な物理的接触がある場合にしか効果がないという点である。軟体動物が土壌に設置された軟体動物駆除剤と接触しない、または致死量に達するほど十分には接触しない場合、あるいは体表付着の起こる正確な瞬間に溶液が噴射されない場合、有害動物は駆除されず、被害を及ぼし続ける。
【0011】
これらの理由により、陸棲有害軟体動物を退治するには、摂取による軟体動物駆除剤が接触による軟体動物駆除剤よりも遙かに好まれている。
【0012】
現時点で使用されている軟体動物駆除有効物質は、大多数が化学合成系のものである。これらは摂取および/または軟体動物との接触によって作用する。
【0013】
最も知られているものは、死に至らしめるまで軟体動物の粘膜細胞を溶解させて作用するメタアルデヒドである。また、神経毒として作用するメチオカルブも知られている。
【0014】
化学由来のこれらの製品は、有効性の面では一般に満足のいくものである。しかしながら、使用者は天然由来の代替案で、とりわけ有機農業の基準を満たすものを期待している。
【0015】
この基準を満たすため、天然由来の様々な軟体動物駆除製品がすでに開発されてきた。とりわけ植物由来または微生物由来の製品である。
【0016】
接触により作用する天然由来の軟体動物駆除剤のなかから、とりわけ稲田に使用される茶サポニンを挙げることができる。茶サポニンの最大の欠点は、水生環境および標的ではない動物を害するその高い毒性にある。スクミリンゴガイ(Golden Apple Snail)という名で知られる水棲カタツムリを退治するための、軟体動物に接触させるキノアサポニンの毒物としての使用に関する実験研究も行われた。
【0017】
摂取による軟体動物駆除効果を示すいくつかの天然製品も存在するが、これらは、摂取による有益な軟体動物駆除効果を得るために極めて多量で使用する必要があるため、天然由来のこれらの有効成分に基づく軟体動物駆除用の餌を産業規模で作製することが技術的に非常に困難であり、さらには不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、摂取により効果的に陸棲または水棲の有害軟体動物を退治することができ、産業規模の餌形態で容易に作製可能な天然由来の製品を提供することにより、先行技術の欠点を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのために、本発明は、陸棲または水棲の有害軟体動物を摂取により退治するための、少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニン、またはサポニンを含む少なくとも1つのサイカチ属植物由来の抽出物の使用を目的とする。
【0020】
サイカチ属サポニンは、環境面において化学合成系の軟体動物駆除剤よりも好ましい天然製品であることが有利である。
【0021】
意外にも、サイカチ属サポニンは、陸棲軟体動物に対しても水棲軟体動物に対しても、大量摂取により低濃度であっても軟体動物駆除効果を有する。
【0022】
本発明はまた、サイカチ属サポニンを含む軟体動物駆除有効成分、およびこのような有効物質を配合した軟体動物駆除組成も目的とする。
【0023】
最後に、本発明は、サイカチ属サポニンを配合した軟体動物駆除組成の使用を含め、摂取により陸棲有害軟体動物を退治する方法、および摂取により水棲有害軟体動物を退治する方法にも焦点を当てている。
【0024】
その他の特徴および利点は、本発明に関する以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【0025】
よって第1の態様によれば、本発明は、摂取による有害軟体動物を制御する、すなわち陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための、少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニン、またはサポニンを含む少なくとも1つのサイカチ属植物由来の抽出物の使用に関する。
【0026】
特に、本発明は、少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニン、または少なくとも1つのサイカチ属植物由来の抽出物を、陸棲または水棲の有害軟体動物に摂取させるようにした組成に軟体動物駆除有効物質として使用することに焦点を当てている。
【0027】
サイカチ属からの抽出物であれば、少なくともサポニンを20重量%含む少なくとも1つのサイカチ属植物を純化した抽出物であることが好ましい。
【0028】
サポニンは、少なくとも一部がトリテルペンサポニンであることが好ましい。トリテルペンサポニンは、軟体動物駆除の有効性がより高い。
【0029】
サポニンまたはサポニンを含む抽出物は、サイカチ属に属する1つまたは複数の植物に由来し、とりわけGleditsia amorphoides、Gleditsia aquatica(ヌマサイカチ)、Gleditsia australis、Gleditsia delavayi、Gleditsia fera、Gleditsia japonica(サイカチ)、Gleditsia rolfeiなどに由来する。
【0030】
特に適合した一実施形態によれば、サポニンまたはサポニンを含む抽出物は、amorphoides種であるサイカチ群のうちの少なくとも1つの植物に由来する。
【0031】
一変形例によれば、サイカチ属サポニンは、適合したあらゆる方法で、少なくとも部分的に加水分解することができる。適合した方法とは、例えば、
− サポニンが抽出されるまで高温にした水に、サイカチ属サポニンを含む植物の断片を含浸させる工程と、
− 採取するサイカチ属サポニンの量を最大にするために、必要に応じて第1の工程を何度か繰り返す工程と、
− 例えばデカンテーションまたは濾過によって、サポニンを含む溶液から植物の断片を分離する工程と、
− 溶液に塩基性剤(pH>7)を添加し、全体を加熱してサポニンを加水分解する工程と、
− 溶液に酸性剤(pH<7)を添加し、この溶液の中和を進行させる工程と、
− このようにして得た溶液を必要に応じて脱水し、例えば微粒化などのあらゆる適切な方法で粉末を得る工程と
を実施することからなる方法である。
【0032】
本発明は、あらゆる陸棲または水棲の有害軟体動物に対して有効である。本発明は、特に、
− コウラナメクジ科(Limacidae)、クロコウラナメクジ科(Arionidae)、ニワコウラナメクジ科(Milacidae)で、特に、種がノハラナメクジ(Deroceras Reticulatum)およびArion Hortensisであるナメクジ、
− ヘリックス属(Helix)、ディスクス属(Discus)、エウオムファリア属(Euomphalia)で、特に、種がヒメリンゴマイマイ(Helix Aspersa)およびマジョルカコマイマイ(Theba pisana)であるカタツムリ、
− ビオンファラリア属(Biomphalaria)、リムネア属(Lymnea)、ポマセア属(Pomacea)の水棲カタツムリで、特にスクミリンゴガイ(Pomacea canaliculata)
に対して有効である。
【0033】
本発明によれば、サイカチ属サポニンまたはサイカチ属サポニンを含む抽出物は、摂取により作用する。サイカチ属サポニンは、この作用形態に適合した様々な担体に配合して使用することができる。
【0034】
サイカチ属サポニンまたはサイカチ属サポニンを含む抽出物は、とりわけペレット形態、粉末形態または粉末混合形態、ブロック形態、ゲル形態またはコーティングした中性担体形態の餌に使用できる。
【0035】
サイカチ属サポニンまたはサポニンを含むサイカチ属からの抽出物は、とりわけサイカチ属のトリテルペンサポニンであり、極めて低濃度であっても軟体動物駆除効果を有することが有利である。よってこれらのサポニンまたは抽出物は、産業規模で容易に作製可能である。
【0036】
さらに、低濃度のサイカチ属サポニンを使用することには、もう1つの利点がある。実際、サポニンは、その物理化学的特性および乳化特性から、餌中にあまりにも大量に含まれていれば、最終的には有害軟体動物を寄せ付けない効果を持つおそれがあり、これによって有害軟体動物はこの餌を消費しないために駆除されないことがある。サポニンは低濃度で有効であるため、サイカチ属サポニンはこのような喫食性の問題を回避することができる。
【0037】
サイカチ属サポニンまたはこのようなサポニンを含む抽出物は、単独で、またはその他の軟体動物駆除成分と組み合わせて使用できる。
【0038】
第2の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニンを含む軟体動物駆除有効成分に関する。
【0039】
サイカチ属の好適な種は、amorphoides種である。
【0040】
有効成分は、乾燥抽出物の重量表記でサイカチ属サポニンを少なくとも20%含有していることが好ましい。
【0041】
特に適合した一実施形態によれば、サポニンは、少なくとも一部がトリテルペンサポニンである。
【0042】
サイカチ属サポニンまたはサイカチ属サポニンを含む植物の抽出物は、固液抽出、好ましくは水抽出によって得ることができ、その後、好ましくは膜を用いた限外濾過によって実施する純化および濃縮工程を続行する。
【0043】
サポニンを含む植物の全部分を使用することができる。しかしながら、特にサポニンの豊富な果実の外皮が好ましいであろう。
【0044】
本発明による有効成分は、陸棲有害軟体動物を摂取により退治するようになっている組成、または水棲有害軟体動物を摂取により退治するようになっている組成に配合することができる。
【0045】
本組成は、組成の2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%の有効成分を含む。
【0046】
本発明は、組成の0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%のサイカチ属サポニンを含む組成にも焦点を当てている。
【0047】
本組成は、例えば小麦粉、穀物の副産物、保存料または誘引剤など、広く使用される補足材料を含んでもよい。
【0048】
本組成は、非限定的な例として、メタアルデヒド、メチオカルブ、カルバリルなど、1つまたは複数のその他の軟体動物駆除有効成分、鉄化合物もしくは鉄錯体、線虫類、生物学的毒素、または摂取により軟体動物駆除効果を有するサイカチ属以外の植物由来のサポニンを含んでもよい。
【0049】
本発明による組成は、摂取により作用するようになっている。本組成は、ペレット形態、粉末形態もしくは粉末混合形態、ブロック形態、ゲル形態もしくはコーティングした中性担体形態、または摂取により陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するように適合したその他のあらゆる形態を取ることができる。本組成は一般に、軟体動物が消費可能な食欲をそそる担体で構成されるか、またはこのような担体に組み込まれる。
【0050】
有効成分のコーティングは、場合によっては適切な技術および補足材料を用いて実行することができる。このコーティングにより、とりわけサポニンの存在をマスキングすることができる。非限定的な例として、これらの材料は、アクリル酸誘導体、ビニル誘導体、セルロース誘導体またはゴムの群から選択することができる。しかしながら、餌の喫食性に影響を与えないためにサポニンを十分に低い濃度で使用できるため、このコーティングは、ない方がよい場合は必要ない。
【0051】
本組成は、構成成分の単なる混合または当業者に公知の方法によって得ることができる。
【0052】
摂取させるようになっている陸棲または水棲の有害軟体動物に対する組成の一例は、以下の構成要素で構成される。
− 穀物粉およびその他の穀物副産物を含む、食欲をそそる担体70〜85%、
− サイカチ属サポニンを少なくとも20%含む、本発明による有効成分2〜20%、
− 染料0.01〜0.1%、
− 有機酸タイプの保存料、およびソルビン酸、クエン酸、安息香酸ナトリウムなど、この有機酸の塩0.2〜2%、
− 砂糖、甘味料、界面活性作用を持つ食欲刺激剤、酵母由来の産物および乳タンパク質など、食欲をそそる添加物0.5〜5%、
− 親水コロイド、パラフィンまたは卵のタンパク質など、餌の崩壊を抑制できる添加物、および
− 安息香酸デナトニウムなど、子どもまたは家畜が偶発的に消費するリスクを軽減できる物質0.005〜0.05%。
【0053】
このような組成が、ペレット形態またはブロック形態をした軟体動物駆除用の餌に相当する。
【0054】
この製品は、とりわけ、
− 様々な材料を計量する工程と、
− リボンブレンダーまたはインテンシブミキサーを用いて材料を混合する工程と、
− 蒸気形態または液体形態である一定量の水、および/または溶解した一定量のパラフィンを配合し、連続した均質な混合物を形成する工程と、
− この混合物の加工過程で、加熱押出成形機または高圧プレスを用いて、押出成形または圧縮する工程と、
− 餌を切断する工程と、
− 少なくとも2年間貯蔵できるように、冷蔵/乾燥により餌を安定させる工程と、
− 使用に適合した封入容器に餌を封入する工程と
を実施することにより製造することができる。
【0055】
最後の態様によれば、本発明は、有害軟体動物の退治方法に焦点を当てている。
【0056】
陸棲軟体動物を退治するための第1の方法は、体表付着が起こっている最中に、あるいは予防として、気象条件によりこの体表付着が起こることが妥当に予測できる場合に、本発明による軟体動物駆除組成(餌とも呼ぶ)を、好ましくは土壌への遠心散布機を用いて手動または機械で散布する方法である。餌は、筒状の顆粒形態であることが好ましい。気象条件および体表付着の程度に応じて、複数回の実行が必要なこともある。いずれの場合においても、退治プログラムは、健全な農業の実践を重視して大規模耕作を保護するためであれば、責任を持って遂行しなければならない。
【0057】
餌は、種子と混合してもよい。この場合、餌は種子と同時に散布されるため、使用を1回のみにすることができ、それによってコストを合理化することができる。
【0058】
餌は、例えば微顆粒にする造粒機(micro−granuleur)タイプの機械を用いて畝溝の上または中に設置してもよい。
【0059】
水棲軟体動物を退治するための第2の方法は、本発明による軟体動物駆除組成(または餌)を、手動または機械で、好ましくは筒状の顆粒形態で、処理対象の水の範囲内に散布する、あるいは、水棲軟体動物が大きい場合は、水耕作の土壌に埋め込んだ台の上にこれらの餌を置くことによって餌を泥の上かつ水面の下に保持できるようにし、このシステムによって餌が泥の中に埋め込まれるのを回避でき、それによって有害な水棲軟体動物にこの餌がうまく消費されるようにできる方法である。
【0060】
次に、特許請求の範囲に記載した効果を示す実験結果をもとに、本発明を説明する。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0061】
I.サイカチ属サポニンの軟体動物駆除効果の評価
この研究は、サイカチ属サポニンの軟体動物駆除効果を示すことを目的とする。
【0062】
動作プロトコルは以下のとおりである。
【0063】
同等の成虫サイズをした灰色ナメクジ(Deroceras reticulatum)(同じ日に同じ採取場所で集めたナメクジ)を原野で収集し、次の飼育条件で保持した:プラスチックケース内での光周期で、気温10〜20°C、相対湿度60〜90%。
【0064】
ナメクジの食物は、植物のみで構成する。
【0065】
水で湿らせたフィルタ紙をプラスチックケースの底に設置する。ナメクジの避難域の役割を果たすプラスチックの台を、ケースの中央に設置する。
【0066】
実験を実施するため、ナメクジの入ったケースをCOの瓶に連結する。制御したCOの流れを数分間ナメクジに吸引させ、ナメクジを麻痺させる。
【0067】
次に、Gleditsia amorphoidesのサポニンを含む親水コロイドベースの水溶性ゲルをナメクジが摂取するようにナメクジを操作する。下記の表に記載したパーセンテージは、純粋なサポニンの含有量を示す。
【0068】
プラセボ対照のゲルもテストする。
【0069】
各テストに対し、10匹のナメクジを使用する。
【0070】
次に、ナメクジを飼育ケースに戻し、最初の4日間に死んだナメクジの数を記録する。
【0071】
得られた結果を下記の表に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
これらの結果は、サイカチ属サポニンが摂取による軟体動物駆除効果を有することをよく示している。この効果は、ゲル状に作製した純粋なサポニン1%から有意である。
【実施例2】
【0074】
II.その他の軟体動物駆除製品と比較したサイカチ属サポニンの軟体動物駆除効果の評価
この研究は、摂取によるサイカチ属サポニンの軟体動物駆除効果を、軟体動物駆除効果を有するその他のサポニンの効果と比較して評価することを目的とする。
【0075】
動作プロトコルは、前述の項目Iと同じである。
【0076】
親水コロイドベースの水溶性ゲルは、テストする以下の有効物質を含有する:
− A:Gleditsia amorphoidesのサポニン
− B:キノア粉末由来のサポニン
− C:アルカリ処理を施したキノア由来のサポニン
− D:茶粉末由来のサポニン
− E:キラヤ(quillaja)サポニン(使用量100)
− F:キラヤ(quillaja)サポニン(使用量1000)
− G:ユッカ(Yucca)サポニン
− H:アカザ(Chenopodium album)サポニン
【0077】
各製品に対し、10匹のナメクジを使用する。
【0078】
この工程の後、ナメクジを飼育ケースに戻す。
【0079】
次に、死んだナメクジの数を1週間にわたり毎日記録し、テストした製品それぞれの3日間での半数致死量(LD50)を算出する。
【0080】
得られた結果を以下の表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
これらの結果から、サイカチ属サポニン(A)が軟体動物駆除効果を確実に有することがわかる。さらに、この効果は、摂取による軟体動物駆除効果を有するその他のサポニンで得られた効果よりも良好であり、サイカチ属サポニンは、遙かに低い濃度で使用できることがわかる。
【実施例3】
【0083】
III.本発明による組成の軟体動物駆除効果の評価
この研究は、サイカチ属サポニンを含有する組成の摂取による軟体動物駆除効果を示すことを目的とする。
【0084】
テストは、制御した条件で、水棲カタツムリのスクミリンゴガイ(Pomacea Canaliculata)を対象に実施する。自然環境(用水路)で野生の水棲カタツムリを収集し、容器に保存する。
【0085】
次に、収集したカタツムリの良好な健康状態を有効なものとするため、1週間の順応期間を順守する。
【0086】
そして、1ビーカー当たりカタツムリ1匹の割合で、水を充填した適切なビーカーにカタツムリを入れてから実験を実行する。
【0087】
顆粒形態で、摂取による様々な軟体動物駆除有効物質を含有する複数の餌をテストする。
【0088】
ペレット形態またはブロック形態でこの実験に使用した餌は、以下の組成を有する。
− 穀物粉末およびその他の穀物副産物を含む、十分な量の食欲をそそる担体、
− パーセンテージが様々なAからKまでの有効成分、
− 青色染料PB15を0.05%、
− 安息香酸デナトニウム0.005%、
− 砂糖3%、
− カラギーナン0.5%。
【0089】
本組成は、
− リボンブレンダーを用いて材料を混合する工程と、
− 蒸気形態の水を配合して、連続した均質な混合物を形成する工程と、
− この混合物の加工過程で、高圧プレスを用いて押出成形する工程と、
− 餌を切断する工程と、
− 冷蔵/乾燥により餌を安定させる工程と
を実施することにより得られる。
【0090】
テストした有効成分は、以下のとおりである。
− A:メタアルデヒド5%
− B:キノアサポニン1%
− C:キラヤサポニン5%
− D:キラヤサポニン1%
− E:アルカリ処理したキノアサポニン1%
− F:茶サポニン0.1%
− G:サポニン1%
− H:ユッカサポニン0.5%
− I:Gleditsia amorphoidesのサポニン0.1%
− J:Gleditsia amorphoidesのサポニン0.5%
− K:Gleditsia amorphoidesのサポニン1%
【0091】
上記のパーセンテージは、有効原料のパーセンテージである。
【0092】
各製品に対し、10匹のカタツムリを使用する。
【0093】
死んだカタツムリの数を5日間にわたって毎日記録する。
【0094】
得られた結果を以下の表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
これらの結果から、サイカチ属サポニン(I、JおよびK)を含有する組成が有害動物に消費され、摂取による軟体動物駆除効果を有することが確認される。さらに、この効果は、低濃度でも有意であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂取により陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための、少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニン、またはサポニンを含む少なくとも1つのサイカチ属植物由来の抽出物の使用。
【請求項2】
請求項1に記載のサイカチ属サポニンまたはサポニンを含むサイカチ属由来の抽出物の使用であって、陸棲または水棲の有害軟体動物に摂取されるようになっている組成における、摂取による軟体動物駆除用有効物質としての使用。
【請求項3】
前記サポニンは、少なくとも一部がトリテルペンサポニンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記サポニンまたはサポニンを含む抽出物は、amorphoides種である少なくとも1つのサイカチ属植物に由来することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
少なくとも1つのサイカチ属植物由来のサポニンを含む、軟体動物駆除有効成分。
【請求項6】
サポニンを少なくとも20重量%含む、少なくとも1つのサイカチ属植物の抽出物であることを特徴とする、請求項5に記載の軟体動物駆除有効成分。
【請求項7】
前記サポニンは、少なくとも一部がトリテルペンサポニンであることを特徴とする、請求項5または6に記載の軟体動物駆除有効成分。
【請求項8】
前記サポニンは、amorphoides種である少なくとも1つのサイカチ属植物に由来することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の軟体動物駆除有効成分。
【請求項9】
サイカチ属サポニンを0.1〜10%または請求項5から8のいずれか一項に記載の有効成分を2〜20%、および軟体動物の食欲をそそる消費可能な担体を含むことを特徴とする、陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための組成。
【請求項10】
前記有効成分は、アクリル酸誘導体、ビニル誘導体、セルロース誘導体またはゴムの群に由来する材料でコーティングされることを特徴とする、請求項9に記載の陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための組成。
【請求項11】
ペレット形態、粉末形態もしくは粉末混合形態、ブロック形態、ゲル形態もしくはコーティングした中性担体形態、または摂取により陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するように適合したその他のあらゆる形態を取ることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための軟体動物駆除組成。
【請求項12】
軟体動物駆除効果を有する少なくとも1つの別の有効成分も含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための軟体動物駆除組成。
【請求項13】
メタアルデヒド、メチオカルブ、カルバリル、鉄化合物もしくは鉄錯体、線虫類、生物学的毒素、または軟体動物駆除効果を有するサイカチ属以外の植物由来のサポニンのなかから選択される、軟体動物駆除効果を有する少なくとも1つの別の有効成分も含むことを特徴とする、請求項12に記載の陸棲または水棲の有害軟体動物を退治するための軟体動物駆除組成。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載の組成を、手動または機械で土壌に散布することからなることを特徴とする、陸棲有害軟体動物の退治方法。
【請求項15】
請求項8から13のいずれか一項に記載の組成を、手動または機械で処理対象の水の中に散布することからなることを特徴とする、水棲有害軟体動物の退治方法。
【請求項16】
請求項8から13のいずれか一項に記載の組成を、土壌レベルの上かつ水面下に餌を維持できる、土壌に埋め込んだ台の上に置くことからなることを特徴とする、水棲有害軟体動物の退治方法。

【公表番号】特表2013−519661(P2013−519661A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552445(P2012−552445)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050270
【国際公開番号】WO2011/098723
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512188100)
【Fターム(参考)】