説明

有彩色金属光沢積層体及びその製造方法

【課題】有彩色の金属光沢を有し、簡便に得られ、加工性等に優れる有彩色金属光沢積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ABS樹脂に、複素環系、ペリノン系及びチオインジゴ系等の有彩色染料を含有させ、混合・混練りした後、ペレット化する。次いで、このペレットを押出成形機にて未接合第1樹脂層11を得ると同時に、金属を蒸着して形成された金属膜層13を備え、金属光沢を有する未接合第2樹脂12を加熱及び加圧する。この時、未接合第1樹脂層11と未接合第2樹脂層12とは接合されると同時に、未接合第1樹脂層内に存在する染料が第2樹脂層内に移行して色差値ΔEが0.8以上変化する程度に着色される。これにより、第2樹脂層側において有彩色の金属光沢を有する積層体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有彩色金属光沢積層体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、有彩色の金属光沢を有し、簡便に得られ、簡便に色彩等を調整することができ、加工性等に優れた有彩色金属光沢積層体及びその製造方法に関する。本発明の有彩色金属光沢積層体は、各種の外装材、内装材及び容器等として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の代替材として、加工性、作業性及び耐久性等を向上させることができ、更には、大幅な軽量化が可能である主として有機材料からなる金属様の外観を有する積層体が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの多くは金属光沢は有するものの、そのほとんどが銀色であり無彩色であった。また、有彩色であったとしても金属材料に起因する色を有する程度であった。このため、より簡便に得ることができ、加工性に優れ、金属光沢を有し、且つ有彩色である材料が望まれている。
本発明は、上記課題を解決するものであり、有彩色の金属光沢を有し、簡便に得ることができ、加工性に優れた有彩色金属光沢積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の有彩色金属光沢積層体(I)は、第1樹脂層と金属膜層とを含み且つ該金属膜層の内部に染料が含有されていることを特徴とする。本発明の他の有彩色金属光沢積層体(II)は、染料を含有する第1樹脂層と金属膜層と第2樹脂層とをこの順で備え、該第2樹脂層は該第1樹脂層から移行された該染料を含有し、且つ、少なくとも該第2樹脂層側において有彩色の金属光沢を有することを特徴とする。本発明の更に他の有彩色金属光沢積層体(III)は、染料を含有する第1樹脂層と金属膜層とを備え、該金属膜層は該第1樹脂層から移行された該染料を含有し、且つ、少なくとも該金属膜層側において有彩色の金属光沢を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の有彩色金属光沢積層体は、有彩色金属光沢の外観を有し、加工性に優れ、更には、軽量である。また、本発明の有彩色金属光沢積層体によると所望の色彩の金属光沢という優れた装飾性を簡便に得ることができる。更に加熱を行うことで更なる色彩及び色の濃さ等を調節することができる。本発明の製造方法によると、上記のような優れた有彩色金属光沢積層体を極めて簡便に得ることができ、また、色彩及び色の濃さ等を簡便に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<有彩色金属光沢積層体(II)>
上記「染料」としては、色彩を有するものであれば特に限定されず用いることができ、無彩色であっても有彩色であってもよく、親油性であっても水溶性であってもよい。
この染料としては、樹脂への分散性に優れるため有機染料が好ましい。この有機染料としては、例えば、複素環系染料(シアニン系染料、トリアジン系染料、ピリミジン系染料、キノリン系染料及びキノキサリン系染料等)、アンスラキノン系染料、アゾ系染料(モノアゾ系染料、ジアゾ系染料、ビスアゾ系染料、トリスアゾ系染料及びスチルベン系染料等)、インジゴイド系染料(インジゴ系染料及びチオインジゴ系染料等)、ナフトール系染料、トリフェニルメタン系染料及びインダンスレン系染料等の染料を挙げることができる。尚、これらの染料は直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、建染染料、分散染料、反応染料及び蛍光増白染料等のいずれであってもよい。
【0007】
これらの染料の中でも、後述する第2樹脂層へより移行し易く、且つ、この第2樹脂層へ分散し易いためペリノン系染料、ペリレン系染料、複素環系染料、アンスラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等が好ましい。これらの染料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0008】
これらの染料が後述する第1樹脂層に含有される量は、結果的に第2樹脂層側において有彩色であることが確認できればよく特に限定されず、また、染料の種類等によっても様々であるが、通常、第1樹脂層全体を100質量部(以下、単に「部という」)とした場合、これに対する配合割合として通常0.01〜10部(好ましくは0.02〜5部、更に好ましくは0.03〜3部)である。染料の含有量が0.01部未満では製造時に第2樹脂層に移行する染料の量が不足し、第2樹脂層が十分に着色されない場合がある。一方、10部を超えて染料を含有させても色彩はそれ以上の変化をほとんどしなくなる傾向にある。
【0009】
上記「第1樹脂層」は、重合体(単独重合体及び共重合体を含む)を主成分(通常、第1樹脂層全体の80質量%以上)とする層である。この樹脂層を構成する重合体は特に限定されず、熱可塑性重合体、熱硬化性重合体、エラストマー及びゴム等から形成することができる。また、この熱可塑性重合体、熱硬化性重合体、エラストマー及びゴムは単独で用いてもよく、また、各々の混合物として用いてもよい。
【0010】
上記熱可塑性重合体としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−スチレン系共重合体、熱可塑性ポリウレタン系重合体、ポリ(メタ)アクリレート系重合体、ポリアクリル酸系重合体、ポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアルケンテレフタレート系重合体(ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等)、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリスチレン系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアセタール系重合体、ポリアミド系重合体、及び、フッ素系重合体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
また、熱硬化性重合体としては、フェノール系重合体、エポキシ系重合体、不飽和ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ウレタン−ウレア系共重合体、ウレア系重合体及びケイ素系重合体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
更に、エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック系共重合体、その水素添加ブロック共重合体等)、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、熱可塑性1、2−ポリブタジエン系エラストマー、シリコーン樹脂系エラストマー及びフッ素樹脂系エラストマー等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、ゴムとしては、スチレン−ブタジエン系ゴム、イソブチレン−イソプレン系ゴム、アクロルニトリル−ブタジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
これらのうち、特に熱可塑性重合体、熱可塑性重合体とゴムとの混合物、熱可塑性エラストマー、及び、熱可塑性重合体と熱可塑性エラストマーとの混合物のいずれかであることがより好ましい。更に、これらに用いる熱可塑性重合体には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体、ポリカーボネート系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体とポリカーボネート系重合体との混合物、及び、アクリロニトリル−スチレン系共重合体のうちのいずれかを用いることが特に好ましい。
また、これら第1樹脂層を構成する重合体の種類によって、含有されている染料の後述する第2樹脂層への移行の有無、及び、移行する量等を変化させることが可能である。
【0013】
また、この第1樹脂層の大きさ及び形状等は特に限定されない。また、その厚さも目的に応じて適宜選択すればよく限定されないが、通常、300μm〜15mmである。更に、適度な成形性を確保できるため、0.5〜10mm(より好ましくは0.5〜7mm)の範囲で用いることが好ましい。
【0014】
このような第1樹脂層はどのような方法により得てもよいが、上記のような重合体を混練した後、成形して得ることができる。このうち混練の方法も特に限定されないが、例えば、各種の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混練機を単用又は併用して行う(各種重合体は一括混練りしても、添加混練りしてもよい)ことができる。この際、染料は混練前に所定の重合体と混合してもよく、混練時に混合してもよい。更に、成形の方法も特に限定されないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス成形、プレス成形、ブロー成形等によって行うことができる。
【0015】
上記「金属膜層」は、本発明の有彩色金属光沢積層体の金属光沢を与えるものである。この金属膜層を構成する金属種は特に限定されない。例えば、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、ロジウム、パラジウム、イリジウム、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、スズ及びケイ素等を挙げることができ、更には、これらのうちの2種以上の混合物等を挙げることができる。また、この金属膜層は1層から構成されても、2層以上から構成されてもよい。更に、2層以上から構成される場合には各層が異なる金属種から形成されていもよい。また、金属膜層はこれを構成する金属粒子間に上記の染料が分散できる程度の間隙(空隙であっても、また、樹脂バインダ等により充填された間隙であってもよいが、例えば、金属粒子状物が密接された状態又は最密充填されたような状態ではなく、染料の移行が阻害されない)を有する。
【0016】
この金属膜層の厚さ(2層以上の場合には合計厚さ)は、金属光沢が失われない程度であれば特に限定されないが、通常10〜200nm程度(好ましくは10〜150nm、より好ましくは10〜100nm)とすることができる。また、その形状も特に限定されない。更に、金属膜層はどのように形成されたものであってもよい。例えば、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法及びめっき等の方法により得ることができる他、別途製造した金属箔を用いることもできる。更には、多量の金属微粒子を少量の樹脂バインダと溶媒によりペースト化したものを塗布した後、溶媒を除去することにより得ることもできる。
上記のうち、金属箔を単独で金属膜層として用いる場合以外は、他の層に金属膜層を形成して用いる。他の層は特に限定されず、種々の材料を用いることができるが、上記第1樹脂層及び後述する第2樹脂層と同様な重合体を適用することができるが、特に、第1樹脂層及び/又は第2樹脂層の少なくとも1面に形成されることが好ましい。
【0017】
上記「第2樹脂層」は、重合体を主成分(通常、第2樹脂層全体の80質量%以上)とする層である。この第2樹脂層を構成する重合体は特に限定されず、第1樹脂層と同様なものを適用することができる。但し、第1樹脂層と第2樹脂層とが同じ重合体から形成されていても、異なる重合体から形成されていもよい。
【0018】
この第2樹脂層は、上記「第1樹脂層から移行された染料」を含有する。第2樹脂層に含有される染料の一部又は全部は、本発明の有彩色金属光沢積層体の製造時に第1樹脂層から移行されたものである。但し、第1樹脂層に含有される染料が1種の場合には、この染料が移行されるが、第1樹脂層に含有される染料が2種以上である場合には、第1樹脂層に含有される全種の染料が第2樹脂層に移行されてもよく、一部の種のみが移行されてもよい。これら染料は、第2樹脂層を構成する重合体内に含有されていても、また、同時に金属膜層を構成する金属粒子間に含有されていてもよい。更に、この第2樹脂層には、第1樹脂層から移行して含有された染料以外に、もとから他の染料が含有されていてもよい。この染料としては前記第1樹脂層における染料と同様なものを適用することができる。
【0019】
第2樹脂層に移行される染料の量は特に限定されないが、通常、第1樹脂層に含有される染料全体を100部とした場合に、0.001〜0.02部程度とすることができる。
また、この第2樹脂層は、第1樹脂層から移行される染料の含有前後において色差値が0.8以上(好ましくは1以上)異なることが好ましい。この色差の測定方法には後述する実施例における方法が適用できる。
尚、この第2樹脂層は、第1樹脂層と同様にして得ることができる。
【0020】
これら第1樹脂層、金属膜層及び第2樹脂層は、この順で備えられていればよい{図1(a)参照}。但し、各層の層間、第1樹脂層の第2樹脂層に対向しない側、及び、第2樹脂層の第1樹脂層に対向しない側には他の層を1層又は2層以上備えていてもよい。但し、他の層が、第1層と第2樹脂層との間に位置する場合は、第1樹脂層から第2樹脂層への染料の移行を阻害しないものであることが好ましい。
【0021】
この他の層としては、例えば、使用時には剥離することができ、この層下を保護する目的などで形成される保護層を挙げることができる。また、各層の接合を補助する接着材層や、上記の金属膜層を除く他の金属膜層等を挙げることができる。
上記のうち保護層を構成する材料は特に限定されないが、第1樹脂層及び第2樹脂層を構成する樹脂として例示したものと同様な重合体等を用いることができる。この保護層の厚さも特に限定されないが、通常、5〜1000μm(好ましくは10〜750μm、より好ましくは10〜500μm)である。5μm未満であると保護層としての役目を十分に発揮できない場合があり、1000μmを超えて厚いと成形が困難となる場合がある。
【0022】
本発明の有彩色金属光沢積層体は、上記のように少なくとも第2樹脂層側において有彩色の金属光沢を有する。この金属光沢は前述のように、上記金属膜層に起因するものである。従って、金属膜層が内層である場合には、この金属膜層よりも表面側に位置する各層は金属光沢を失わせない程度に無色透明又は有色透明なものを用いることができる。
【0023】
本発明の第1樹脂層及び第2樹脂層は、前記染料の他にも、顔料や、各種の添加剤等を必要に応じて含有していてもよい。
このうち、顔料としては、雲母状酸化鉄、黒色酸化鉄、炭酸鉛、四酸化三鉛、クロム酸鉛、硫化亜鉛、硫化水銀、硫酸バリウム、群青、紺青、酸化コバルト、二酸化チタン、酸化クロム、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、モリブデン酸鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム亜鉛、アセト亜ヒ酸銅、及び硫化カドミニウム等を含有する無機系顔料を挙げることができる。また、アゾ系顔料(溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料及び縮合アゾ顔料)、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノン系顔料及びペリレン系顔料等の有機系顔料を挙げることができる。
【0024】
また、添加剤としては、例えば、機械的強度を向上させる目的で含有させる炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維、ミルドファイバー、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー及び有機系繊維等を挙げることができる。また、物性を改善する目的や、体積を増加させる目的等で含有させるタルク、マイカ、カオリン、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ワラストナイト、及びカーボンブラック等を含有させることができる。その他、滑剤、難燃剤、難燃助剤、カップリング剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、耐候剤、耐光剤、可塑剤、帯電防止剤、シリコーンオイル等を含有させることができる。
また、本発明の有彩色金属光沢積層体を成形する方法は特に限定されないが、例えば、加熱圧縮成形、真空成形、ブロー成形等の方法により成形することができる。
尚、本発明の有彩色金属光沢積層体は、塗装等の二次加工を施すこともできる。
【0025】
本発明の有彩色金属光沢積層体の製造方法は、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の有彩色金属光沢積層体の製造方法であって、染料を含有する未接合第1樹脂層と、少なくとも一面に金属膜層が形成された未接合第2樹脂層とを加熱して、該未接合第1樹脂層と該金属膜層とが対向して配置されるように接合すると共に、該染料の一部を該未接合第2樹脂層内に移行させることを特徴とする。
【0026】
上記「未接合第1樹脂層」は、本発明の有彩色金属光沢積層体における第1樹脂層となる層であり、上記「未接合第2樹脂層」は、本発明の有彩色金属光沢積層体における第2樹脂層となる層である。この未接合第1樹脂層から未接合第2樹脂層への染料の移行はまだ生じていない。また、未接合第1樹脂層と金属膜層とは直接接して接合されてもよく、未接合第1樹脂層と金属膜層との間に他の層を伴って接合されてもよい。
【0027】
上記「加熱」における各種条件は各樹脂層が所望の特性を維持できる範囲であれば特に限定されないが、通常、100〜300℃(好ましくは120〜270℃、より好ましくは120〜250℃)とすることができる。100℃未満では後述する加圧を伴っても各樹脂層を接合することが困難であり、300℃を超えると各樹脂層が融解又は分解し、その形状を維持することが難しくなる場合がある。
また、この加熱時の加熱温度及び加熱時間により、未接合第1樹脂層から未接合第2樹脂層へ移行する染料の量及び染料の種類を変化させることができ、色の濃さ及び色調を所望のものとすることができる。この加熱時間は特に限定されないが、通常、1秒〜30分(好ましくは5秒〜20分、より好ましくは10秒〜10分)とすることができる。1秒未満では加熱を行う効果が得られ難い場合があり、30分を超えて加熱時間を長くしても変化が得られ難い。
【0028】
この加熱時には、更に加圧を行うこともできる。また、加熱後であっても余熱(通常100〜300℃程度)を有する間に加圧することもできる。これらの加圧によると、加熱と同様に未接合第1樹脂層から未接合第2樹脂層へ移行する染料の量及び染料の種類を変化させることができる。加圧する圧力は特に限定されないが、通常、0.5〜50MPa(好ましくは1〜40MPa、より好ましくは1〜20MPa)とすることができる。0.5MPa未満では加圧を行う効果が得られ難いことがあり、50MPaを超えて大きな圧力を課す必要は通常生じない。また、加圧時間は特に限定されないが、通常、1秒〜30分(好ましくは5秒〜20分、より好ましくは10秒〜10分)とすることができる。1秒未満では加圧を行う効果が得られ難い場合があり、30分を超えて加圧時間を長くしても変化が得られ難い。
【0029】
また、本発明の他の有彩色金属光沢積層体の製造方法は、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の有彩色金属光沢積層体の製造方法であって、染料を含有する接合第1樹脂層、金属膜層及び接合第2樹脂層をこの順で備える接合積層体を加熱し、該染料の一部を該接合第2樹脂層内に移行させることを特徴とする。
【0030】
上記「接合第1樹脂層」は、本発明の有彩色金属光沢積層体における第1樹脂層となる層であり、各層が接合された後の接合積層体を構成する。上記「接合第2樹脂層」は、本発明の有彩色金属光沢積層体における第2樹脂層となる層であり、各層が接合された後の接合積層体を構成する。
【0031】
上記「加熱」は、主に接合第1樹脂層から接合第2樹脂層へ染料を移行させる目的を有する。但し、この加熱において接合積層体の接合が更に強化される効果が得られてもよい。この加熱は染料の移行を生じ、且つ、各樹脂層が所望の特性を維持できる範囲であれば特に限定されず、通常課す温度は前記一方の発明におけると同様である。また、この加熱時の加熱温度及び加熱時間により、接合第1樹脂層から接合第2樹脂層へ移行する染料の量及び染料の種類を変化させることができ、色の濃さ及び色調を所望のものとすることができることも前記一方の発明におけると同様である。更に、加熱時に加圧を行うこともでき、加熱後であっても余熱を有する間に加圧できることも前記一方の発明におけると同様である。
【0032】
<有彩色金属光沢積層体(III)>
本発明の有彩色金属光沢積層体(III)は、染料を含有する第1樹脂層と金属膜層とを備え、該金属膜層は該第1樹脂層から移行された該染料を含有し、且つ、少なくとも該金属膜層側において有彩色の金属光沢を有することを特徴とする{図1(b)参照}。
【0033】
本発明は、前記一方の発明において第2樹脂層を備えないこと以外は同様である。また、上記「金属膜層」は、第1樹脂層表面に形成されたものであってもよい。
本発明の他の有彩色金属光沢積層体は、未接合の第1樹脂層と未接合の金属膜層とを接合すると共に、加熱を行うことで未接合金属膜層内に未接合第1樹脂層内に含有される染料を移行して得ることができる。更に、接合された第1樹脂層と、接合された金属膜層とを備える接合積層体を加熱し、上記と同様に染料の移行を行って得ることができる。
【0034】
<有彩色金属光沢積層体(I)>
本発明の有彩色金属光沢積層体(I)は、第1樹脂層と金属膜層とを含み且つ該金属膜層の内部に染料が含有されていることを特徴とする。斯かる本発明は、言わば、染料について「第1樹脂層から移行された」との限定により方法的要素を含む前述の有彩色金属光沢積層体において、完全な製品として表現された発明である。従って、有彩色金属光沢積層体(I)の詳細は、当業者にとっては前述の有彩色金属光沢積層体に関する説明から容易に理解される。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
[1]有彩色金属光沢積層体の製造方法:
(1)未接合第1樹脂層となるペレットの製造
表1〜3に示す(i)〜(iii)の重合体100質量部に対して、表1〜3に示す質量部のA〜Gの染料を添加した混合物を、タンブラー機に投入して混合し、その後、二軸押出機によりペレット化した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
尚、表1〜3に示す(i)〜(iii)の重合体及びA〜Gの染料は以下のものである。
(i);ABS樹脂(テクノポリマー株式会社製、品名「ABS330」)
(ii);難燃ABS樹脂(テクノポリマー株式会社製、品名「ABSF5450」)
(iii);ポリカーボネート樹脂(出光石油化学株式会社製、品名「FN2200」)
【0040】
A;黄色複素環系化合物(三菱化学株式会社製、品名「DIAREGIN YELLOW 3G」)
B;橙色ペリノン系化合物(三菱化学株式会社製、品名「DIAREGIN ORANGE HS」)
C;赤色チオインジゴ系化合物;(ヘキスト社製、品名「HOSTASOL RED 5B」)
D;紫色アンスラキノン系化合物(三菱化学株式会社製、品名「DIAREGIN VIOLET D」)
E;青色アンスラキノン系化合物(BASF社製、品名「MACROLEX BLUE RR」)
F;緑色アンスラキノン系化合物(BASF社製、品名「MACROLEX GREEN G」)
G;茶色モノアゾ系化合物(三菱化学株式会社製、品名「DIAREGIN BROWN A」)
【0041】
(2)未接合第2樹脂層及び金属膜層:
未接合第2樹脂層及び金属膜層としては、これらの層以外に剥離可能な保護層及び接着用層とを既に備える市販の蒸着金属膜層を備える樹脂フィルムを使用した。この樹脂フィルム(合計厚さ約26μm)の構成を以下に示す。
剥離可能な保護層; ポリエチレンテレフタレート(15μm)
未接合第2樹脂層; ポリウレタン(10μm)
金属膜層 ; クロム膜層(40nm)
接着用層 ; シリカ粒子を含有するポリウレタン(1.2μm)
【0042】
(3)未接合第1樹脂層、未接合第2樹脂層及び金属膜層の接合:
(1)で得られた未接合第1樹脂層用のペレットを押出成形機に投入し、シート状の未接合第1樹脂層を成形した。同時に上記の樹脂フィルム(未接合第2樹脂層及び金属膜層)を未接合第1樹脂層にラミネート成形により接合した。この時の、未接合第1樹脂層の温度は、実験例1、7、12、16及び27については250℃であり、この温度における未接合第1樹脂層と樹脂フィルムとの接触時間(加熱時間)は10秒程度とした。また、上記実験例以外の実験例では、未接合第1樹脂層の温度は230℃であり、接触時間は5秒程度とした。
【0043】
[2]色差の評価:
重合体(i)〜(iii)の各々に染料を含有させていない参考例の未接合第1樹脂層を上記[1]の(1)と同様に成形し、上記[1]の(2)と同様な未接合第2樹脂層及び金属膜層を備える樹脂フィルムを用い、上記[1]の(3)と同様にして接合して標準試料を作製した。
この標準試料を用い、色差測定機(倉敷紡績株式会社製、形式「アウカラー7e」)を用い、光源としてD65を用い、10度視野において色差値ΔEの測定を行った。色差式はCIE1976(L*a*b)に従った。
この結果、標準試料との色差値ΔEが0.8を超えた積層体には表1〜表3中の「彩色」の欄に「○」と示し、色差値ΔEが0.8となった積層体には「△」と示した。尚、財団法人日本色彩研究所が設定している評価基準である「並べてみれば、ほとんどの人に色差が感じられるレベル」としてΔE=0.8以上が示されている。このため、ΔE=0.8を判断基準とした。
また、金属光沢の有無を目視判定し、金属光沢を有している積層体には表1〜表3中の「金属光沢」の欄に「○」と示した。
【0044】
[3]結果:
表1〜3の結果より、いずれの重合体及び染料を用いた場合においても、ほとんどの実験例において色差値ΔEは0.8以上となっている。また、実験例1に対して実験例2〜6を、実験例7に対して実験例8〜11を、実験例12に対して実験例13を、実験例16に対して実験例18を、実験例27に対して実験例29を各々比べることにより、概して染料の量が多い方がΔEは0.8以上となり易いことが分かる。
【0045】
また、実験例1、7、12、16、及び27においては重合体に含有させる染料の量が0.01部であるために十分な効果が得られ難いことが分かる。しかし、実験例23においては、同じ種類の染料が同じ量で含有されているにも関わらず、良好な結果が得られている。即ち、染料の含有量が0.01部を超えると良好な結果が得られ易いが、染料の含有量が0.01部以下であっても染料の種類及び量だけでなく、重合体の種類を選択することによって良好な結果が得られる場合があることが分かる。
【0046】
[4]加熱温度と色差との相関:
実験例9と同じ重合体及び同じ染料を同じ量で含有する未接合第1樹脂層を製造し、上記[1]におけると同様に未接合第2樹脂層及び金属膜層を備える樹脂フィルムを接合して本発明の有彩色金属光沢積層体を得た。その後、この有彩色金属光沢積層体を部分的に更に加熱及び加圧して、接合第2樹脂層側から観察される色の濃さを変化させた有彩色金属光沢積層体1〜4を得た。各有彩色金属光沢積層体の加熱及び加圧の条件は表4に示す通りである。
【0047】
その後、実験例9と同じ重合体アを用い染料を含有させていない標準試料を作製し、この標準試料と各有彩色金属光沢積層体1〜4との色差値ΔEを上記[2]と同様な方法にて測定した。その結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
上記の結果より、加熱温度及び加熱時間を変化させることにより、色の濃度を変化させることができ、特に加熱温度が高いほど有彩色金属光沢積層体の色が濃くなることが分かる。実際、剥離可能な保護層にまで染料が十分に移行していることが観察できた。これらより加熱温度が高い程、第2樹脂層に移行する染料の量が多いこと分かる。従って、加熱温度により色の濃さを調整し、所望の色の有彩色金属光沢を得ることができることが分かる。
【0050】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、本発明の有彩色金属光沢積層体は各種の外装材及び容器等として利用できる他、特に限定されず種々の目的に用いることができる。外装材及び内装材としては、例えば、スーツケース等の鞄類の外装材、住宅の内装材、家具類の外装材(キッチン棚、洗面具収納棚、各種ラック類及びたんす等)を挙げることができる。その他、各種のラベル、ステッカー、パネル及び取手材等としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)及び(b)は本発明の有彩色金属光沢積層体の一例の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1:有彩色金属光沢積層体
11:第1樹脂層
12:第2樹脂層
13:金属膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料を含有する第1樹脂層と金属膜層と第2樹脂層とをこの順で備え、該第2樹脂層は該第1樹脂層から移行された該染料を含有し、且つ、少なくとも該第2樹脂層側において有彩色の金属光沢を有することを特徴とする有彩色金属光沢積層体。
【請求項2】
上記金属膜層は、上記第1樹脂層又は上記第2樹脂層に蒸着されたものである請求項1記載の有彩色金属光沢積層体。
【請求項3】
上記第2樹脂層は、上記染料の上記移行の前後において0.8以上の色差値の変化を生じている請求項1又は2に記載の有彩色金属光沢積層体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の有彩色金属光沢積層体の製造方法であって、染料を含有する未接合第1樹脂層と、少なくとも一面に金属膜層が形成された未接合第2樹脂層とを加熱して、該未接合第1樹脂層と該金属膜層とが対向して配置されるように接合すると共に、該染料の一部を該未接合第2樹脂層内に移行させることを特徴とする有彩色金属光沢積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の有彩色金属光沢積層体の製造方法であって、染料を含有する接合第1樹脂層、金属膜層及び接合第2樹脂層をこの順で備える接合積層体を加熱し、該染料の一部を該接合第2樹脂層内に移行させることを特徴とする有彩色金属光沢積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−276489(P2007−276489A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122297(P2007−122297)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【分割の表示】特願2002−247055(P2002−247055)の分割
【原出願日】平成14年8月27日(2002.8.27)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【出願人】(591258587)日本カラリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】