説明

有核成型品の製造方法

上下2重構造杵を有する圧縮成型手段を用い、核用成型材料と外層用成型材料のそれぞれの供給充填工程と、核用成型材料及び/又は外層用成型材料の圧縮成型工程と、核を含有する成型品全体の圧縮成型工程とを含む、核を有する成型品の製造方法において、核用成型材料の供給充填工程の後の外層用成型材料の供給充填工程を最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで行い、更に下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて成型品全体の圧縮成型工程を実施する。本法により、成型品側面部分の外層の強度を上げる効果、及び/又は、核用成型材料の供給充填工程の後で供給充填された外層用成型材料が核仮成型品の下側に回り込み、2回の成型材料の供給充填工程で有核成型品の製造を可能とする効果が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体等の成型材料を圧縮して成型品を製造するための製造方法に関するもので、具体的には、2重構造杵を用いて、核を有する成型品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体等に代表される成型材料を圧縮固化して成型品を製造する方法は、広範な産業分野において汎用されており、例えば、医薬品や食品(機能性食品、一般食品)のみならず、半導体封止樹脂の成型、電池関連製品の成型、粉末冶金関連製品の成型、電子機能部品の成型などの電子材料分野、農薬やサニタリー製品の分野にも用いられている。
【0003】
医薬品分野では、特に経口投与用製剤において、製造の簡便性、服用の容易性等、種々のメリットから、いわゆる錠剤と呼ばれる固形成型品が、現在、最も汎用されている剤形の1つである。その中でも、成型品中に内核を有する成型品は、内核 (中心錠)の周囲に外層とする粉粒体を配置し圧縮成型して作ることから、有核錠と呼ばれている。
【0004】
従来、有核錠のような核を有する成型品は、あらかじめ別の打錠機にて成型品としての核を製造し、その成型品としての核を外層粉粒体が供給充填された有核打錠機の臼内に供給した後、さらに外層粉粒体を供給・圧縮成型する方法で製造していた。この製造方法では、一般的な圧縮成型品を製造する方法に比べて作業量が多く、生産効率が低いことが大きな問題となっていた。また、無核や多核、核の位置のズレ等の、核供給に関連した問題があるため、品質保証上、核供給の監視や最終成型品の検査に複雑な機構・装置が必要となり、機械の大型化、複雑化といった状況を生じている。
【0005】
そこで、本願発明者らは、特許文献1に記載されているように、粉粒体等成型材料から効率よく一度に有核成型品を製造する方法を考案するに至った。当該方法は、臼と上下杵を有し、少なくとも上杵が、好ましくは上下両方の杵が、中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用いた、有核成型品の製造方法である。この製造方法は、核用成型材料と外層用成型材料のそれぞれの供給充填工程と、核用成型材料及び/又は外層用成型材料の圧縮成型工程と、核を含有する成型品全体の圧縮成型工程とを含む。
【0006】
更に、本願発明者らは、前述のような有核成型品の製造方法を実施するための装置として、特許文献2に記載の回転式圧縮成型機を考案するに至った。
【0007】
これらの2重構造杵を使用した有核成型品の製造方法としては、具体的には、上下ともに2重構造杵を用い、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程1、下外杵に囲まれ前工程で供給充填された外層用成型材料上の空間に核用成型材料を供給する核供給充填工程、前工程までに供給充填された外層用成型材料と核用成型材料を圧縮成型する外層核成型工程、更に、臼内の前工程で成型された外層核成型品上及びその回りの空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程2、前記外層核成型品と外層用成型材料を圧縮成型する全体成型工程を含む方法が挙げられる。
【特許文献1】国際公開第WO01/98067号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO02/90098号パンフレット
【発明の開示】
【0008】
本願発明者らは、前述の2重構造杵を使用した有核成型品の製造方法で成型品を製造した場合に、十分な成型品強度を得られない場合があることに気づき、その原因を究明したところ、外層核成型品上及びその回りの空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程2で供給充填される外層用成型材料の充填密度に問題があることがわかった。つまり、仮成型された外層核成型品の回りの空間、即ち、外層核成型品と下外杵の間に形成される空間に充填される外層用成型材料が、仮成型された外層核成型品と同じ厚みに相当する量であるため、この部位の外層用成型材料充填密度が不十分となる。そのため、成型品の側面に相当する外層の強度が十分に得られなくなる場合があることが判明した。本願発明は、前記問題点を解決するために考案されたものである。
【0009】
本願発明者らは、前記外層供給充填工程2で外層核成型品と下外杵の間に形成される空間に供給充填される外層用成型材料の量を増量することにより、前記課題を解決するに至った。具体的には、前述の外層核成型品上及びその回りの空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程2、即ち、核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程(最後の外層供給充填工程)を、更に下外杵杵先を下げて、最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで行うことにより、側面部分の外層用成型材料の充填密度を上げ、成型品の側面に相当する外層の強度を改善することに成功した。
【0010】
更に、驚くべきことに、ある条件下で、前述のように外層供給充填工程2を行うと、その後の全体成型工程を行うために、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃える過程で、外層供給充填工程2で供給充填された外層用成型材料が、外層核成型品の下側に回り込む現象を確認することができた。これは、最初の外層供給充填工程1を省略しても、有核成型品を製造することができるということであり、ここに新たな発明を完成させることができた。
【0011】
即ち、本願発明は、臼の上下両方向に杵を有し、上杵および下杵が、中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用い、核用成型材料と外層用成型材料のそれぞれの供給充填工程と、核用成型材料及び/又は外層用成型材料の圧縮成型工程と、核を含有する成型品全体の圧縮成型工程とを含む、核を有する成型品の製造方法において、成型材料の供給充填工程が核用成型材料の供給充填工程とその後に行われる外層用成型材料の供給充填工程とを含み、前記外層用成型材料の供給充填工程を最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで行い、更に下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて成型品全体の圧縮成型工程を実施することを特徴とする、有核成型品の製造方法である。
【0012】
ここで、核用成型材料の供給充填工程の前に、従来のように、外層用成型材料の供給充填工程を行うこともできる。この場合、成型材料の供給充填工程は、通常、最初の外層用成型材料の供給充填工程と、その後に行われる核用成型材料の供給充填工程と、更にその後に行われる外層用成型材料の供給充填工程との、3回の成型材料供給充填工程からなる。
【0013】
一方、本発明によれば、核用成型材料の供給充填工程の前に、外層用成型材料の供給充填工程を行わずに、有核成型品を製造することもできる。この場合、成型材料の供給充填工程は、通常、核用成型材料の供給充填工程と、その後に行われる外層用成型材料の供給充填工程との、2回の成型材料供給充填工程からなる。
【0014】
本発明は、核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程を、最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで行い、更に下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて成型品全体の圧縮成型工程を実施することを本質とするものである。これにより、成型品の側面強度を上げる効果及び/又は2回の成型材料の供給充填工程で有核成型品の製造を可能とする効果を生み出すものである。
【0015】
本願発明によれば、臼と上下杵を有し、上下両方の杵が中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用いた製造方法で有核成型品を製造する場合に、ある場合には、成型品側面部分の外層の強度を上げ、十分な強度の有核成型品を得ることができる。また、ある場合には、最後に供給充填された外層用成型材料が外層核成型品の下側に回り込むことにより、核用成型材料の供給充填工程の前に行われる外層供給充填工程1を省略することも可能となり、2回の成型材料の供給充填工程で有核成型品を製造することができる。尚、この2回の成型材料の供給充填工程で有核成型品を製造する方法においては、成型品側面部分の外層の強度をも上げながら有核成型品を製造することもできる。更にまた、ある場合には、前記外層用成型材料が回り込む現象により、成型品底部の外層と側面外層との境界が無くなり、従来製造方法にてしばしば発生していた、製造工程中に核仮成型品の削れにより成型品底部表面上に現れる核用成型材料のコンタミネーションを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の有核成型品の製造方法の実施態様の第一例を示す杵先作動説明図。(便宜上、断面としての斜線は省略している。)
【図2】本発明の有核成型品の製造方法の実施態様の第二例を示す杵先作動説明図。(便宜上、断面としての斜線は省略している。)
【図3】本発明の有核成型品の製造方法の実施態様の第三例を示す杵先作動説明図。(便宜上、断面としての斜線は省略している。)
【図4】実施例3における本発明の有核成型品の製造方法を示す杵先作動写真。
【図5】実施例4における本発明の有核成型品の製造方法を示す杵先作動写真。
【符号の説明】
【0017】
3・・・臼
4A・・・上中心杵
4B・・・上外杵
5A・・・下中心杵
5B・・・下外杵
NP・・・核用成型材料
OP1・・・第一外層用成型材料
OP2・・・第二外層用成型材料
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において、成型材料という用語は、湿式、乾式の両者を含む粉粒体等、成型可能なあらゆる材料であり、また、粉粒体という用語は、粉末、顆粒、及びそれに類するものをすべて含めて使用している。成型材料としては、好ましくは粉粒体を使用する。
【0019】
本発明方法は、特許文献1に記載された方法の改良発明である。特許文献1に記載の発明とは、具体的には、臼の上下両方向に杵を有し、上杵および下杵が、中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用い、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程1、下外杵に囲まれ前工程で供給充填された外層用成型材料上の空間に核用成型材料を供給充填する核供給充填工程、前工程までに供給充填された外層用成型材料と核用成型材料を圧縮成型する外層核成型工程、更に、臼内の前工程で成型された外層核成型品上及びその回りの空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程2、前記外層核成型品と外層用成型材料を圧縮成型する全体成型工程を含む有核成型品の製造方法である。
【0020】
本発明方法は、特許文献1に記載された方法において、外層供給充填工程2を最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで行い、更に、その後の全体成型工程を、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて実施する。こうすることによって、外層供給充填工程1は、省略することも可能となる。即ち、本発明方法を具体的に記載すると、次のように表現することができる。
【0021】
臼の上下両方向に杵を有し、上杵および下杵が、中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用い、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に核用成型材料を供給充填する核供給充填工程、前工程で供給充填された核用成型材料を圧縮成型する核成型工程、更に、前工程で成型された臼内の成型品上及びその回りの空間に、最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて前記核成型品と外層用成型材料を圧縮成型する全体成型工程を含む有核成型品の製造方法。
【0022】
ここで、核供給充填工程の前に、従来法のように、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程を実施する場合もある。この外層供給充填工程を実施する場合は、その後に、外層用成型材料を圧縮成型する外層成型工程を実施するのが好ましい。また、いずれの場合においても、全体成型工程以外の圧縮成型工程においては、仮圧縮とするのが好ましい。尚、全体成型工程は、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて行うと表現されているが、これは、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えた後に行う場合と、揃えながら行う場合を含んでいる。
【0023】
最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程において、下中心杵杵先を下外杵杵先より突出させる程度、即ち、下中心杵杵先に対して下外杵杵先を低下させる程度には、目的に応じて好ましい範囲が存在する。
【0024】
まず、成型品側面部分の外層の強度を上げる効果(以後、外層高密度充填効果とする)を期待する場合は、下外杵杵先の低下量は多過ぎてはいけない。これは、下中心杵杵先を下外杵杵先より突出させ過ぎると、即ち、下外杵杵先を下中心杵杵先に対して低下させ過ぎると、それにより生じた成型品側面の外層密度の過度の上昇が核部分と外層部分との密度差を生み、成型品全体の成型性の低下を招くからである。そのため、全体成型工程後の有核成型品の核部分と外層部分の粉体層の密度差が大きく異ならないように、下中心杵杵先の突出程度又は下外杵杵先の低下量を調整して外層用成型材料を供給するのが好ましい。尚、下外杵杵先の至適な低下量は、仮成型品の形状や大きさ、外層の厚み、仮成型品の密度等の諸条件により変わるため一概には言えないが、一般的な有核錠を製造する場合は、本工程に至るまでに仮成型された核を含む成型品の厚みの2〜0.5倍程度が好ましいと考えられる。
【0025】
次に、2回の成型材料の供給充填工程で有核成型品の製造を可能とする効果(以後、外層回り込み効果とする)を期待する場合は、核仮成型品の下に外層用成型材料が回り込む必要があるため、下外杵杵先の低下量は、ある程度十分な量が必要となる。ここで言うある程度十分な下外杵杵先の低下量とは、仮成型品の形状や大きさ、外層の厚み、仮成型品の密度等の諸条件により変わるため一概には言えないが、一般的な有核錠を製造する場合は、本工程に至るまでに仮成型された核を含む仮成型品の厚みの0.5〜8倍程度が好ましいと考えられる。
【0026】
外層供給充填工程で最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になってから、その後の全体成型工程のために、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃える工程は、下外杵を引き上げるか、下中心杵を引き下げるか、あるいは、下外杵を引き上げながら下中心杵を引き下げることにより実施することができる。どれを選択するかは、目的によりある程度決まってくるものである。即ち、基本的には、外層高密度充填効果を期待する場合は下外杵を引き上げる方法を、外層回り込み効果を期待する場合は下中心杵を引き下げる方法を、両方の効果を期待する場合は下外杵を引き上げながら下中心杵を引き下げる方法を選択するのが有利である。
【0027】
いずれの方法を選択するにしても、その目的を十分に達成するためには、上杵の状態が重要な要素となる。即ち、下外杵を引き上げる方法の場合は、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態からそれらの杵先を揃えるまでの操作を、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧した状態で実施することにより、外層高密度充填効果を十分に達成することができる。尚、下外杵を引き上げる方法の場合は、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態からそれらの杵先を揃えるまでの操作を、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧しない状態で実施することにより、外層回り込み効果を期待することもできる。
【0028】
一方、下中心杵を引き下げる方法の場合は、前記下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態で、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧する工程を実施することにより、外層回り込み効果を十分に達成することができる。また、下外杵を引き上げながら下中心杵を引き下げる方法の場合は、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態からそれらの杵先を揃えるまでの操作を、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧した状態で実施することにより、両方の効果を十分に達成することができる。
【0029】
結局、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態からそれらの杵先を揃えるまでに、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧する工程を実施するのが一般的である。ただし、ここで言う上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧するとは、圧縮ロールを使用する通常の圧縮成型工程とは異なり、上中心杵および上外杵で臼内の成型材料を覆い、杵の自重で押圧する程度の軽度な加圧、あるいは、上杵杵軌道により上杵を低下させて臼内の成型品を押圧する程度の軽度な加圧である。尚、好ましくはないが、通常の圧縮ロールを使用して成型品を加圧することも可能である。
【0030】
尚、本発明方法においても、杵先の形状次第では、更に、下外杵上に残る残留成型材料を除去する工程を、実施する必要がある、または、実施するのが好ましい場合もある。これについては、特許文献1に詳細に説明されているので参照されたい。
【0031】
本発明の有核成型品の製造方法の実施態様第1例を、主に図1をもとに以下に詳細に説明する。
【0032】
まず、下中心杵5Aを低下させた状態で(図1のA)、下外杵5Bにより囲まれる下中心杵5A上の第一外層用空間201Aに、第一外層OP1用成型材料を供給し(図1のB)、必要に応じて下中心杵5Aを上昇させて、余剰の第一外層用成型材料を臼外に排出した後、上中心杵4A及び下中心杵5Aを互いに相寄る向きに移動仮圧縮し(図1のC)、第一外層を仮成型する。
【0033】
次に、第一外層OP1の仮成型品を、下中心杵5Aと下外杵5Bにより保持したまま、下外杵5Bにより囲まれる第一外層OP1仮成型品上の核用空間202Aに核NP用成型材料を供給する(図1のE、F)。その後、必要に応じて下中心杵5Aを上昇させて、余剰の核用成型材料を臼外に排出した後、上中心杵4A及び下中心杵5Aを互いに相寄る向きに移動仮圧縮し(図1のG)、第一外層仮成型品と核を仮成型する。
【0034】
更に、第一外層と核の仮成型品を下中心杵5A上に保持したまま、下杵(下中心杵5Aと下外杵5Bの両者もしくは下外杵5B)を低下させ(図1のI)、更に下外杵5Bを低下させることにより下中心杵杵先が下外杵杵先より適度に突出した状態となるまで、臼3内の第一外層と核の仮成型品上及びその回りの第二外層用空間203Aに第二外層OP2用成型材料を供給する(図1のJ、K)。第一外層仮成型品上に保持していた核の仮成型品が、外層用成型材料と外層仮成型品で完全に包含された状態にし、必要に応じて余剰の第二外層OP2用成型材料を臼外に排出する(図1のK)。尚、ここで、先に下外杵5Bを充分下げておいて、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態にしてから、第二外層OP2用成型材料を供給することもできる。その後、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧した状態で、下外杵杵先を上昇させて下中心杵杵先と下外杵杵先を揃え(図1のL、M)、上杵(上中心杵4Aと上外杵4B)及び下杵(下中心杵5Aと下外杵5B)を互いに相寄る向きに移動し、第一外層と核と第二外層とからなる成型品全体を、必要に応じて予備圧縮(仮圧縮)を行い、最終的に本圧縮を実施する(図1のM)。図1のNは完成した成型品を取り出す工程である。
【0035】
ここで、外杵の先端部(図1において7Bにて示す)の形態次第では、外層用成型材料と核用成型材料のコンタミネーションを防止するために、更に、第一外層OP1の供給後又はその圧縮成型時もしくはその後、及び、核NPの供給後又はその圧縮成型時もしくはその後に、下外杵上7Bに残る残留成型材料57(57A、 57B)を除去する工程(図1のD、H)を追加するのが好ましい。本除去工程については、やはり特許文献1に詳細に説明されているので参照されたい。
【0036】
次に本発明の有核成型品の製造方法の実施態様第2例を、主に図2をもとに以下に詳細に説明する。
【0037】
まず、下中心杵5Aを低下させた状態で(図2のA)、下外杵5Bにより囲まれる下中心杵5A上の核用空間302Aに核NP用成型材料を供給し(図2のB)、必要に応じて下中心杵5Aを上昇させて、余剰の核NP用成型材料を臼外に排出した後、上中心杵4A及び下中心杵5Aを互いに相寄る向きに移動仮圧縮し(図2のC)、核を仮成型する。
【0038】
次に、核の仮成型品を下中心杵5A上に保持したまま、下杵(下中心杵5Aと下外杵5Bの両者もしくは下外杵5B)を低下させ(図2のE)、更に下外杵5Bを低下させることにより下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態となるまで、臼3内の核の仮成型品上及びその回りの外層用空間303Aに外層OP2用成型材料を供給する(図2のF)。必要に応じて余剰の外層OP2用成型材料を臼外に排出する(図2のG)。尚、ここで、先に下外杵5Bを充分下げておいて、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態にしてから、外層OP2用成型材料を供給することもできる。その後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態のままで、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を軽く加圧し、次に下中心杵杵先を低下させると、核の仮成型品と下中心杵の間に空間304Aが生じ、当該空間に外層OP2用成型材料が回り込むように充填される(図2のH〜J)。このようにして、最終的に、下中心杵杵先と下外杵杵先を揃えた状態で、上杵(上中心杵4Aと上外杵4B)及び下杵(下中心杵5Aと下外杵5B)を互いに相寄る向きに移動し、核と外層とからなる成型品全体を、必要に応じて予備圧縮(仮圧縮)を行い、最終的に本圧縮を実施する(図2のK)。図2のLは、完成した成型品を取り出す工程である。
【0039】
次に本発明の有核成型品の製造方法の実施態様第3例を、主に図3をもとに以下に詳細に説明する。
【0040】
まず、下中心杵5Aを低下させた状態で(図3のA)、下外杵5Bにより囲まれる下中心杵5A上の核用空間402Aに核NP用成型材料を供給し(図3のB)、必要に応じて下中心杵5Aを上昇させて、余剰の核NP用成型材料を臼外に排出した後、上中心杵4A及び下中心杵5Aを互いに相寄る向きに移動仮圧縮し(図3のC)、核を仮成型する。
【0041】
次に、核の仮成型品を下中心杵5A上に保持したまま、下杵(下中心杵5Aと下外杵5Bの両者もしくは下外杵5B)を低下させ(図3のE)、更に下外杵5Bを低下させることにより下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態となるまで、臼3内の核の仮成型品上及びその回りの外層用空間403Aに外層OP2用成型材料を供給する(図3のF)。必要に応じて余剰の外層OP2用成型材料を臼外に排出する(図3のG)。尚、ここで、先に下外杵5Bを充分下げておいて、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態にしてから、外層OP2用成型材料を供給することもできる。その後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態のままで、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を軽く加圧した状態で、下外杵5Bを引き上げながら下中心杵5Aを引き下げると(図3のH)、下外杵上の外層OP2用成型材料の密度、つまり成型品の側面密度が上がりながら、下中心杵を引き下げることより生じる空間に外層OP2用成型材料が回り込み、核が外層OP2用成型材料により完全に包含される(図3のI)。このようにして、最終的に、下中心杵杵先と下外杵杵先を揃えた状態で、上杵(上中心杵4Aと上外杵4B)及び下杵(下中心杵5Aと下外杵5B)を互いに相寄る向きに移動し、核と外層とからなる成型品全体を、必要に応じて予備圧縮(仮圧縮)を行い、最終的に本圧縮を実施する(図3のJ)。図3のKは、完成した成型品を取り出す工程である。
【0042】
次に本発明の有核成型品の製造方法の実施態様第4例を、前述の図3をもとに以下に詳細に説明する。
【0043】
尚、当該製造方法は、基本的に前実施態様(第3例)と同様の製造方法であるが、違いは下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から(図3のG)、上中心杵4Aおよび上外杵4Bにより臼内の成型材料を軽く加圧することなく、下外杵5Bを、下外杵杵先と下中心杵杵先が揃うまで引き上げるところにある(図3のH、J)。その結果、核仮成型品と下中心杵5Aとの間に生じる回り込み用空間に外層OP2用成型材料が回り込み、核が外層OP2用成型材料により完全に包含される。他の工程は実施態様第3例と同様である。
【0044】
これらの実施態様において、核の仮成型品と下中心杵の間に外層OP2用成型材料が回り込むように充填されるためには、いくつかの好ましい条件がある。以下にその条件について説明する。
【0045】
まず、2重構造杵の杵先形状であるが、これは平型形状でないものが好ましい。平型形状の杵先とは、本発明法の成型品全体の圧縮成型工程(本圧縮)において、下中心杵杵先と下外杵杵先が揃った時に両者の杵先が同一水準となり、1つの平面となる杵先形状である。杵先形状が平型形状でない2重構造の杵とは、下外杵杵先外周が中心杵杵先面より鋭角に立ち上がっているふち角平面や、下中心杵杵先と下外杵杵先が揃った時、曲面形状等を示す杵先を持つ2重構造の杵である。尚、ふち角平面又は曲面形状を持つ2重構造杵においては、下中心杵杵先と下外杵杵先が揃った時の下外杵杵先最先端部と下中心杵杵先最凹部の水準差が大きいほど、外層OP2用成型材料の回り込みに好適である。
【0046】
次に、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで臼内に供給充填される外層OP2用成型材料の量であるが、当該成型材料の好ましい供給充填方法は、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃える工程において、下外杵を引き上げるか、下中心杵を引き下げるか、の杵の摺動の違いにより若干異なる。例えば、下外杵を引き上げる場合においては、核の仮成型品上面に、この外層用成型材料の供給充填量が充分な量であることが好ましい。ここで言う充分な量とは、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から下外杵杵先を上昇させる時、核の仮成型品が下外杵杵先の上昇と共に上杵方向に上昇する余地をもたらす外層OP2用成型材料の量である。一方、下中心杵を引き下げる場合においては、下中心杵杵先より下外杵杵先が低下することにより作られる空間に供給充填される外層用成型材料が十分な量であることが好ましい。ここで言う十分な量とは、前にも説明したように、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態で上杵により臼内の成型材料を加圧した後、下中心杵を引き下げた時に作られる下中心杵上の空間に、最終圧縮(全体圧縮)時に、前述の外層用成型材料が当該空間に崩れながら入り込み、核が外層用成型材料により完全に包含されることを可能とする外層の量である。
【0047】
このように、核の仮成型品と下中心杵の間に外層用成型材料が回り込むように充填させることは、最終成型品底部表面の中心杵輪郭部分に現れる核用成型材料のコンタミネーションを防止することにも繋がる。この核用成型材料のコンタミネーションは、従来製造方法にてしばしば認められるもので、臼内の第二外層用成型材料中に核外層仮成型品を押し上げる工程において、核仮成型品が下外杵内側先端部との接触によりわずかに削れ、それが下外杵内側先端部に付着し、これが最終成型品上に残るものである。一方、本発明法により、外層用成型材料が外層核成型品の下側に回り込むように充填されれば、このコンタミネーション部分を核仮成型品方向に押し戻しながら覆っていくため、このコンタミネーションを軽減もしくは防止することができると考えられる。
【0048】
本発明の有核成型品の製造方法は、臼の上下両方向に杵を有し、上杵と下杵の両方が中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段により、実施することができる(特許文献1参照)。このような圧縮成型手段としては、やはり特許文献2記載の回転式圧縮成型機が挙げられるが、基本的には、上下の2重構造杵と臼とがあれば、油圧式プレス機等により簡単に実施することができる。すなわち、本発明の工程順序に従い、上下の杵、もしくは中心杵、外杵を手動及び/又は自動にて所定位置まで動かし、目的とする成型材料(外層用成型材料、核用成型材料)を充填した後、油圧式プレス機にて、上下から挟み込むように押圧する本発明の工程順序に従った一連の工程を行うことにより、簡単に実施することが出来る。
【0049】
実施例1
以下、実施例1をもって外層用成型材料の充填密度の改善による有核成型品の成型性改善例を、実施例2〜4を外層用成型材料が回り込み充填による有核成型品の製造例として以下に説明する。
[製造例1]
内径5mmφ、外径8mmφの2重構造を持ち、押圧可能な平型フチ角の上下杵それぞれの杵表面に、少量のステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)を塗布し、下中心杵を低下させた状態で、下外杵により囲まれる下中心杵上の空間に乳糖・結晶セルローススプレードライ品 (メグレ社: Microcellac, 以後、成型材料Aとする) 30mgを供給し、上中心杵及び下中心杵を互いに相寄る向きに移動し、表面が平らとなる程度に手動にて仮圧縮し、第一外層を仮成型した。次に、下中心杵を低下させた状態で、下外杵により囲まれ先の成型材料Aの仮成型品上の空間にアセトアミノフェン(タイコヘルスケア社製 アセトアミノフェン)と成型材料Aの1:3の混合末100mgを供給し、上中心杵及び下中心杵を互いに相寄る向きに移動し、万能引張圧縮成型機(島津製作所社製: AG-I 20kN)にて圧縮圧力0.3kNで仮圧縮し、核を仮成型した。最後に下杵を低下させ、更に、下外杵を下外杵杵先先端部が下中心杵杵先先端部から3mm(外層核仮成型品の厚みの約0.7倍)低下した状態で、臼内の、前記外層及び核からなる仮成型品上及びその回りの空間に、残りの成型材料A260mgを供給して、核仮成型品が成型材料Aで完全に包含された状態とし、上杵で臼内の成型材料を加圧した状態で、下外杵を下外杵杵先と下中心杵杵先が揃うまで手動にて上昇させ、次に上杵及び下杵を互いに相寄る向きに移動し、前述の万能引張圧縮成型機を用いて、7.5kNの圧縮圧で打錠した。錠剤重量は1錠390mgであった。
[比較製造例1]
製造例1の核の仮成型品を覆う成型材料Aの充填を、下外杵杵先先端部と下中心杵杵先先端部を揃えた状態(0mm低下の状態)で充填し、他の製造方法は[製造例1]と同一条件にして錠剤を調製した。錠剤重量は1錠390mgであった。
[試験例1]
a,錠剤硬度の評価
製造例1及び比較製造例1の錠剤硬度の評価は、レオメーター(サン科学社製)にて錠剤を直径方向に加圧し、圧裂破断した時の最大応力を測定した。結果を表1に示す。
b,摩損性の評価
製造例1及び比較製造例1の錠剤の摩損性評価は、日本薬局方第13改正第2追補の参考情報 錠剤の摩損度試験法(USP24 General/information <1216> TABLET FRIABILITYと同様)に従った電動機付きドラム(ELECTROLAB:EF1-W)を用いて実施した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から、錠剤の硬度および摩損度はいずれも、比較製造例1よりも製造例1、即ち、下外杵低下量0mmより3mmの方が優っていた。本結果から、下外杵低下量3mmにより調製された錠剤は、0mmで調製された錠剤より外層の充填密度が改善され、成型性が向上したと結論付けた。
【0052】
実施例2
[製造例2]
内径7mmφ、外径8mmφの2重構造を持ち、押圧可能な平型フチ角の上下杵それぞれの杵表面に、少量のステアリン酸マグネシウムを塗布し、下中心杵を低下させた状態で、下外杵により囲まれる下中心杵上の空間に核となる乳糖・結晶セルローススプレードライ品 (成型材料A) 100mgを供給し、上中心杵及び下中心杵を互いに相寄る向きに移動し、万能引張圧縮成型機(島津製作所社製: AG-I 20kN)にて圧縮圧力1kNで仮圧縮し、核を仮圧縮した。次に、下外杵を下外杵杵先先端部が下中心杵杵先先端部から1,2,及び3mm低下した状態で、前記核仮成型品上及びその回りの空間に、食用赤色三号(FFI社製)にて着色した残りの成型材料A130mgを供給して、上杵で臼内の成型材料を加圧した後、下中心杵を下中心杵杵先と下外杵杵先が揃うまで手動にて下降させ、次に上杵及び下杵を互いに相寄る向きに移動し、前述の万能引張圧縮成型機を用いて5kNの圧縮圧で打錠した。錠剤重量は1錠230mgであった。
[比較製造例2]
製造例2で、着色した成型材料Aの充填を下外杵杵先先端部と下中心杵杵先先端部を揃えた状態 (0mm低下の状態)で行い、他は製造例2と同一条件にして錠剤を調製した。錠剤重量は1錠230mgであった。
[試験例2]
a,回り込みの評価
製造例2と比較製造例2の錠剤底面を肉眼により観察し、着色した外層の核層下側への回り込みを評価した。
【0053】
【表2】

【0054】
表2から、製造例2で下外杵低下量を増やすと共に、核仮成型品底部への外層の回りこみの増加が認められ、下外杵低下量3mm(核仮成型品の厚みの約1倍)では、完全に核成型品を包含していることが明確となった。以上の結果から、下外杵杵先を下中心杵杵先よりも低下させて外層用成型材料の供給充填工程を行うことにより、外層用成型材料を核仮成型品下側に回り込ませ、核用成型材料の供給充填工程と、その後に行われる外層用成型材料の供給充填工程との、2つの成型材料供給充填工程のみで有核成型品を製造できることがわかった。
【0055】
実施例3
[製造例3]
以下、製造例3を図4のフローにそって説明する。内径6mmφ、外径8mmφの2重構造を持ち、押圧可能な平型フチ角の上下杵を圧縮方向に切断し、圧縮時の粉体の状態が目視にてわかるように切断した臼に強化ガラスを装着し、さらにその杵臼のそれぞれの表面に、少量のステアリン酸マグネシウムを塗布し、下中心杵を低下させた状態で、下外杵により囲まれる下中心杵上の空間に、食用赤色三号にて着色した乳糖・結晶セルローススプレードライ品(成型材料A)を供給し、上中心杵及び下中心杵を互いに相寄る向きに移動し、表面が平らとなる程度に手動にて仮圧縮し、核を仮成型した(図4のc、d)。次に、下杵を低下させ、更に下外杵を低下させて、下中心杵が下外杵より3mm程度突出した状態で、臼内の核仮成型品上及びその回りの空間に、無着色の成型材料Aを供給し、当該状態のまま手動にて臼内の核仮成型品及び無着色の成型材料Aを加圧した(図4のf)。その後、下中心杵を下外杵杵先と下中心杵杵先が揃うまで手動にて引き下げ(図4のg)、着色した核仮成型品と下中心杵との間に回り込み用空間を作り(図4のh)、さらに上杵及び下杵を互いに相寄る向きに移動し、手動にて圧縮することにより、当該空間に無着色の成型材料Aをなだれこませ、2度の粉体供給のみで有核錠を調製することが出来た。図4のiは取り出し前の有核錠である。
【0056】
実施例4
[製造例4]
次に、製造例4を図5のフローにそって説明する。臼杵は、実施例3と同一のものを使用した。下中心杵を低下させた状態で、下外杵により囲まれる下中心杵上の空間に、食用赤色三号にて着色した乳糖・結晶セルローススプレードライ品(成型材料A)を供給し、上中心杵及び下中心杵を互いに相寄る向きに移動し、表面が平らとなる程度に手動にて仮圧縮し、核を仮成型した(図5のC)。次に、下杵を低下させ、更に下外杵を低下させて下中心杵が下外杵より3mm程度突出した状態で、臼内の核仮成型品上及びその回りの空間に、無着色の成型材料Aを供給し(図5のF)、臼内の核仮成型品及び無着色の成型材料Aを上杵により圧縮することなく、下外杵を下外杵杵先と下中心杵杵先が揃うまで手動にて引き上げ、着色した核仮成型品が下外杵の上昇に伴い上杵方向に上昇し(図5のG)、核仮成型品と下中心杵との間に、回り込み用空間を作り(図5のG、H)、さらに上杵及び下杵を互いに相寄る向きに移動し、手動にて圧縮することにより、当該空間に無着色の成型材料Aをなだれこませ、2度の粉体供給のみで有核錠を調製することが出来た。図5のIは取り出し前の有核錠である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の活用例として、医薬品、食品、農薬、サニタリー製品、粉末冶金関連製品等の成型、電子機能部品半導体封止樹脂の成型、及び電池関連製品の成型等、粉粒体等に代表される成型材料を圧縮して成型品を製造するものに広く適用し得るものである。
【0058】
本発明の製造方法は、フレーム内に回転可能に配設される回転盤に臼孔を有する臼を所定のピッチで設けるとともに、各臼の上下に、上述した本発明の二重構造を有する上杵及び下杵を上下摺動可能に保持させておき、杵先を臼孔内に挿入した上杵と下杵とを押圧操作することにより、臼孔内に充填した成型材料を圧縮成型する回転式圧縮成型機により実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臼の上下両方向に杵を有し、上杵および下杵が、中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用い、核用成型材料と外層用成型材料のそれぞれの供給充填工程と、核用成型材料及び/又は外層用成型材料の圧縮成型工程と、核を含有する成型品全体の圧縮成型工程とを含む、核を有する成型品の製造方法において、成型材料の供給充填工程が核用成型材料の供給充填工程とその後に行われる外層用成型材料の供給充填工程とを含み、前記外層用成型材料の供給充填工程を最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで行い、更に下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて成型品全体の圧縮成型工程を実施することを特徴とする、有核成型品の製造方法。
【請求項2】
核用成型材料の供給充填工程の前に、外層用成型材料の供給充填工程を行わないことを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項3】
成型材料の供給充填工程が、核用成型材料の供給充填工程と、その後に行われる外層用成型材料の供給充填工程との、2つの供給充填工程からなることを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項4】
核用成型材料の供給充填工程の前に、外層用成型材料の供給充填工程を行うことを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項5】
成型材料の供給充填工程が、外層用成型材料の供給充填工程と、その後に行われる核用成型材料の供給充填工程と、更にその後に行われる外層用成型材料の供給充填工程とからなることを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項6】
核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から、下外杵を引き上げることにより下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えることを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項7】
核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から、下中心杵を引き下げることにより下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えることを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項8】
核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から、下外杵を引き上げながら下中心杵を引き下げることにより下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えることを特徴とする、請求項1に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項9】
核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程の後、下中心杵杵先と下外杵杵先を揃えるまでの操作を、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧した状態で実施することを特徴とする、請求項6又は8に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項10】
核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態で、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧する工程を実施することを特徴とする、請求項7に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項11】
核用成型材料の供給充填工程の後に行われる外層用成型材料の供給充填工程の後、下中心杵杵先と下外杵杵先を揃えるまでに、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧する工程を実施しないことを特徴とする、請求項6に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項12】
臼の上下両方向に杵を有し、上杵および下杵が、中心杵とその中心杵の外周を取り巻く外杵との2重構造からなり、該中心杵と外杵がどちらも摺動可能であるとともに圧縮操作が可能である圧縮成型手段を用い、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に核用成型材料を供給充填する核供給充填工程、前工程で供給充填された核用成型材料を圧縮成型する核成型工程、更に、前工程で成型された臼内の成型品上及びその回りの空間に、最終的に下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態になるまで外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程、下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えて前記核成型品と外層用成型材料を圧縮成型する全体成型工程を含む有核成型品の製造方法。
【請求項13】
核供給充填工程の前に、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程を実施することを特徴とする、請求項12に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項14】
核供給充填工程の前に、下外杵に囲まれる下中心杵上の空間に外層用成型材料を供給充填する外層供給充填工程を実施しないことを特徴とする、請求項12に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項15】
核成型工程の後に行われる外層供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から、下外杵を引き上げることにより下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えることを特徴とする、請求項12に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項16】
核成型工程の後に行われる外層供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から、下中心杵を引き下げることにより下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えることを特徴とする、請求項12に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項17】
核成型工程の後に行われる外層供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態から、下外杵を引き上げながら下中心杵を引き下げることにより下中心杵杵先と下外杵杵先とを揃えることを特徴とする、請求項12に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項18】
核成型工程の後に行われる外層供給充填工程の後、下中心杵杵先と下外杵杵先を揃えるまでの操作を、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧した状態で実施することを特徴とする、請求項15又は17に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項19】
核成型工程の後に行われる外層供給充填工程の後、下中心杵杵先が下外杵杵先より突出した状態で、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧する工程を実施することを特徴とする、請求項16に記載の有核成型品の製造方法。
【請求項20】
核成型工程の後に行われる外層供給充填工程の後、下中心杵杵先と下外杵杵先を揃えるまでに、上中心杵および上外杵により臼内の成型材料を加圧する工程を実施しないことを特徴とする、請求項15に記載の有核成型品の製造方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/046978
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515445(P2005−515445)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016759
【国際出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000144577)株式会社三和化学研究所 (29)
【出願人】(000141543)株式会社菊水製作所 (29)
【Fターム(参考)】