説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】発光層を含む機能層が基材の一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成された構成でありながらも防湿性を向上させることが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20の周部と封止部材70の周部との間にある枠状の封止部80とを備えている。第1電極を兼ねる基材20の一表面側の機能層30は、基材20の上記一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成され、且つ、残りの2辺から離れて形成される。基材20は、上記一表面において上記規定方向に直交する方向の両端部が機能層30の各一部と併せて封止部材70側へ折り返され、当該折り返された両端部では他表面が封止部80と接着されている。また、第2電極50に電気的に接続された引き出し電極部47は、上記規定方向に沿って封止部80の外側へ引き出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法として、塗布法を採用してロールトゥーロール(roll-to-roll)方式を利用した製造方法が各所で検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、スリット型ダイコーターのリップ先端部と基材とを相対的に移動させながら該リップ先端部のスリット出口から流出される塗布液を、少なくとも2条のストライプ状に塗布する塗布方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、第1電極と第2電極との間の有機化合物層が、上述の塗布方法により形成されているものが記載されている。しかしながら、この有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法では、第1電極と有機化合物層と第2電極との積層体が形成される基材と封止部材とを接着する接着剤が、有機化号物層の両端部上に塗設されてしまう懸念がある。そして、この場合には、有機エレクトロルミネッセンスパネルの耐湿性が低下してしまう懸念がある。
【0005】
また、従来から、図9および図10に示す各工程を有する有機エレクトロニクスパネルの製造方法が提案されている(特許文献2)。ここで、特許文献2には、有機エレクトロニクスパネルとして、有機エレクトロルミネッセンスパネル、有機TFTパネル、有機太陽電池パネル、有機光電変換パネル、有機電子写真用感光体が例示されている。
【0006】
以下、この製造方法について簡単に説明する。なお、図9および図10で右側の図は、左側の図のA−A’に沿った拡大概略断面図である。
【0007】
有機エレクトロニクスパネル100(図10参照)は、図9および図10に示された工程フロー図における、基材供給工程、第1電極形成工程、有機機能層形成工程、払拭工程(パターニング工程)、クリーニング工程、第2電極形成工程、封止工程、回収工程に従って製造される。
【0008】
基材供給工程では、例えば、帯状の基材101が供給される。
【0009】
第1電極形成工程では、第1電極用外部接続電極102aを形成する部分を含む第1電極102と、リード部102bとが、基材101の上にパターニングされた状態で形成される。
【0010】
有機機能層形成工程では、第1電極用外部接続電極102aを形成する部分を含む第1電極102とリード部102bとを有する基材101の全面に、有機機能層103が形成される。有機機能層103の形成方法としては、塗布法が採用されている。
【0011】
パターニング工程では、有機機能層103の不要領域が、払拭方式により払拭除去される。
【0012】
クリーニング工程では、パターニングされた有機機能層103を有する基材101の全面がクリーニングされる。
【0013】
第2電極形成工程では、第1電極102の上の有機機能層103の上からリード部102bに亘り、第2電極104および第2電極用外部接続用電極104aが形成される。
【0014】
封止工程では、第1電極用外部接続用電極102aと、第2電極用外部接続用電極104aとを除き第2電極104の上と周囲に設けられた接着剤を介して封止部材106を貼着し、封止された有機エレクトロニクスパネル100が作製される。
【0015】
回収工程では、封止工程から供給される有機エレクトロニクスパネル100を回収する。
【0016】
なお、有機エレクトロニクスパネル100が有機エレクトロルミネッセンスパネルの場合には、上述の有機機能層形成工程において、単数または複数の有機物層を有機機能層103として形成する。この場合の有機機能層103は、有機物層として、少なくとも発光層を含んでいる。
【0017】
特許文献2には、上述の製造方法によれば、有機機能層103の不要部分を払拭方式で除去する際に発生したゴミの、基材101への付着がなくなり、封止した有機エレクトロニクスパネル100の防湿性が向上する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2011−131116号公報
【特許文献2】特開2011−40336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上述の有機エレクトロルミネッセンスパネル100の製造方法では、有機機能層103を塗布法により形成した後で、不要領域を除去するパターニング工程と、パターニング工程の後のクリーニング工程とが必要である。このため、上述の有機エレクトロルミネッセンスパネル100の製造方法では、有機機能層103の材料の使用効率の低下による製造コストの増加が懸念される。
【0020】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、発光層を含む機能層が基材の一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成された構成でありながらも防湿性を向上させることが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極を兼ねる基材と、前記基材の一表面側にあり少なくとも発光層を含む機能層と、前記機能層における前記基材側とは反対側にある第2電極と、前記基材の前記一表面側において前記第2電極に電気的に接続された引き出し電極部と、前記引き出し電極部と前記基材とを電気的に絶縁する絶縁層と、前記第2電極における前記機能層側とは反対側にあり透光性を有する封止部材と、前記第2電極と前記封止部材との間に介在する透光性の樹脂層と、前記基材の周部と前記封止部材の周部との間にある枠状の封止部とを備え、前記封止部材側から光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記機能層は、前記基材の前記一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成され、且つ、前記規定方向に直交する2辺から離れて形成され、前記基材は、前記一表面において前記規定方向に直交する方向の両端部が前記機能層の各一部と併せて前記封止部材側へ折り返され、当該折り返された両端部では他表面が前記封止部と接着されてなり、前記引き出し電極部は、前記規定方向に沿って前記封止部の外側へ引き出されていることを特徴とする。
【0022】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記基材は、金属箔からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層を含む機能層が基材の一表面における規定方向に直交する2辺間に亘って形成された構成でありながらも防湿性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の概略分解斜視図、(b)は実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の要部概略断面図、(c)は実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の要部概略断面図である。
【図2】実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の別の要部概略断面図である。
【図3】実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における電極パターンの概略平面図である。
【図4】実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における電極パターンの他の構成例の概略平面図である。
【図5】実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における電極パターンの別の構成例の概略平面図である。
【図6】実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の要部概略断面図である。
【図7】(a)は実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子の別の構成例の概略下面図、(b)は実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子の別の構成例の要部概略断面図である。
【図8】(a)は実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子の更に別の構成例の概略平面図、(b)は実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子の更に別の構成例の要部概略断面図である。
【図9】従来の有機エレクトロニクスパネルを作製する基材供給工程からクリーニング工程までの工程フロー図である。
【図10】従来の有機エレクトロニクスパネルを作製する第2電極形成工程から回収工程までの工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子について図1〜図4に基づいて説明する。
【0026】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極を兼ねる基材20と、基材20の一表面側にあり少なくとも発光層32を含む機能層30と、機能層30における基材20側とは反対側にある第2電極50とを備えている。
【0027】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20の上記一表面側において第2電極50に電気的に接続された引き出し電極部47と、引き出し電極部47と基材20とを電気的に絶縁する絶縁層60とを備えている。ここにおいて、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50に電気的に接続された矩形枠状の補助電極46を備えており、引き出し電極部47は、補助電極46から延設されている。
【0028】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50における機能層30側とは反対側にあり透光性を有する封止部材70と、第2電極50と封止部材70との間に介在する透光性の樹脂層90と、基材20の周部と封止部材70の周部との間にある枠状の封止部80とを備えている。ここにおいて、有機エレクトロルミネッセンス素子は、封止部材70側から光を取り出すものである。要するに、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50側から樹脂層90および封止部材70を通して光を取り出すものである。
【0029】
機能層30は、基材20の上記一表面における規定方向(図1(a)の左右方向)に沿った2辺間に亘って形成され、且つ、上記一表面における上記規定方向に直交する2辺から離れて形成されている。ここにおいて、機能層30は、塗布法により形成してあり、上記規定方向に直交する方向に沿って塗布されている。
【0030】
基材20は、上記一表面において上記規定方向に直交する方向の両端部が機能層30の各一部と併せて封止部材70側へ折り返され、当該折り返された両端部では他表面が封止部80と接着されている。また、引き出し電極部47は、上記規定方向に沿って封止部80の外側へ引き出されている。
【0031】
本実施形態の有機エレクトルミネッセンス素子における基材20は、上記規定方向の両端部で引き出し電極部47が形成された第1部分20aが、封止部材70側とは反対側へ折り返されている(図1(c)参照)。図1(c)は、図1(a)のC−C’線およびE−E’線に沿った概略断面図であり、第1部分20aを含む概略断面図である。基材20は、上記規定方向の両端部の少なくとも一方で、引き出し電極部47が形成された第1部分20aが、封止部材70側とは反対側へ折り返されていればよい。なお、基材20の上記一表面における上記規定方向の両端部の第1部分20a以外の第2部分については、後述する。
【0032】
また、基材20は、上記一表面において上記規定方向に直交する方向の両端部(第3部分20c)が、封止部材70側へ折り返されている(図1(b)参照)。図1(b)は、図1(a)のA−A’線、D−D’線に沿った共通の概略断面図であり、第3部分20cを含む概略断面図である。
【0033】
また、封止部80は、封止部材70とは反対側において、引き出し電極部47の一部に接着された第1部位80a以外の第2部位80bが、基材20の他表面に接着されている。要するに、封止部80は、封止部材70とは反対側に、基材20の上記一表面側にある各引き出し電極部47の各々に接着された第1部位80aと、基材20の他表面に接着された第2部位80bとを有している。引き出し電極部47のうち封止部80よりも外側にある部分は、保護層91により保護されており、保護層91に設けられた開口部92により露出した部分が、外部接続用の端子部48を構成している。
【0034】
上述の第2電極50は、機能層30からの光を取り出すことが可能となるように構成されている。第2電極50は、機能層30に接する導電性高分子層39と、この導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の開口部41(図2および図3参照)を有する電極パターン40とを備えていることが好ましい。要するに、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、機能層30からの光の取り出し用の開口部41を有していることが好ましい。
【0035】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極を兼ねる基材20および第2電極50の電極パターン40それぞれの抵抗率を、透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide:TCO)の抵抗率よりも低くしてある。透明導電性酸化物としては、例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなどがある。
【0036】
樹脂層90は、基材20と封止部材70と封止部80とで囲まれる空間において、第1電極、機能層30および第2電極50などからなる素子部を覆うように設けることが好ましい。また、樹脂層90は、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有することが好ましい。
【0037】
以下、有機エレクトロルミネッセンス素子の各構成要素について詳細に説明する。
【0038】
基材20は、平面形状を矩形状としてあるが、矩形状であれば、長方形状でも正方形状でもよい。
【0039】
基材20は、金属箔により構成してある。金属箔からなる基材20の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaが10nm以下であることが好ましく、数nm以下であることが、より好ましい。これにより、第1電極を兼ねる基材20の上記一表面の表面粗さに起因して、第1電極を兼ねる基材20と第2電極50との短絡を抑制することが可能となる。
【0040】
金属箔の材料としては、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、錫、鉛、金、銀、鉄、チタンなどの金属や、これらの金属の1種以上を含む合金などを採用することができる。ただし、本実施形態では、第1電極が反射電極となるので、発光層32から放射される光に対する反射率が高く、且つ、抵抗率の低い材料が好ましい。また、金属箔の材料としては、耐候性の高い材料が好ましい。
【0041】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1電極が陰極を構成し、第2電極50が陽極を構成している。この場合、第1電極から機能層30へ注入する第1キャリアは電子であり、第2電極50から機能層30へ注入する第2キャリアは正孔である。機能層30は、第1電極側から順に、第1キャリア注入層31、発光層32、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34を備えている。ここにおいて、第1キャリア注入層31、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34は、それぞれ、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層である。なお、第1電極が陽極を構成し、第2電極50が陰極を構成する場合には、例えば、第1キャリア注入層31としてホール注入層を、第2キャリア輸送層33として電子輸送層を、第2キャリア注入層34として電子注入層を採用すればよい。
【0042】
上述の機能層30の構造は、図1の例に限らず、例えば、第1キャリア注入層31と発光層32との間に、第1キャリア輸送層を設けたり、発光層32と第2キャリア注入層34との間にインターレイヤーを設けたりした構造でもよい。第1電極が陰極を構成し、第2電極50が陽極を構成している場合、第2キャリア輸送層は、ホール輸送層である。
【0043】
また、機能層30は、少なくとも発光層32を含んでいればよく(つまり、機能層30は、発光層32のみでもよく)、発光層32以外の、第1キャリア注入層31、第1キャリア輸送層、インターレイヤー、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34などは適宜設ければよい。発光層32は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層32中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0044】
発光層32の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体など、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したものなどや、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、およびこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、およびこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物などが挙げられる。また、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えばイリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体などの発光材料、又はそれらを分子内に有する化合物若しくは高分子も好適に用いることができる。これらの材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。発光層32は、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することが好ましい。ただし、発光層32の成膜方法は、塗布法に限らず、例えば、真空蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって発光層32を成膜してもよい。
【0045】
電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、チタン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムなどの酸化物、などを用いることができる。これらの材料の場合、電子注入層は、真空蒸着法により形成することができる。また、電子注入層の材料は、例えば、電子注入を促進させるドーパント(アルカリ金属など)を混合した有機半導体材料を用いることができる。このような材料の場合、電子注入層は、塗布法により形成することができる。
【0046】
また、電子輸送層の材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0047】
ホール輸送層の材料としては、LUMO(Lowest UnoccupiedMolecular Orbital)準位が小さい低分子材料や高分子材料を用いることができる。例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)や、ポリピリジン、ポリアニリンなどの側鎖や主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体などの芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ホール輸送層の材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを用いることが可能である。
【0048】
ホール注入層の材料としては、例えば、チオフェン、トリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アミールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミンなどを含む有機材料が挙げられる。具体的には、たとえば、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPDなどの芳香族アミン誘導体などで、これらの材料を単独で用いてもよいし、2種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。このようなホール注入層は、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
【0049】
インターレイヤーは、発光層32側からの第2電極50側への第1キャリア(ここでは、電子)の漏れを抑制する第1キャリア障壁(ここでは、電子障壁)としてのキャリアブロッキング機能(ここでは、電子ブロッキング機能)を有することが好ましく、更に、第2キャリア(ここでは、正孔)を発光層32へ輸送する機能、発光層32の励起状態の消光を抑制する機能などを有していることが好ましい。なお、本実施形態では、インターレイヤーが、発光層32側からの電子の漏れを抑制する電子ブロッキング層を構成している。
【0050】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、インターレイヤーを設けることにより、発光効率の向上および長寿命化を図ることが可能となる。インターレイヤーの材料としては、例えば、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などを用いることができる。このようなインターレイヤーは、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
【0051】
また、陰極は、機能層30中に第1電荷である電子(第1キャリア)を注入するための電極である。第1電極が陰極の場合、陰極の材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。なお、第1電極が、機能層30中に第2電荷であるホール(第2キャリア)を注入するための電極である陽極を構成する場合、第1電極の材料としては、仕事関数の大きい金属を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。
【0052】
第2電極50の導電性高分子層39の材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾールなどの導電性高分子材料を用いることができる。また、導電性高分子層39の導電性高分子材料としては、導電性を高めるために、例えば、スルホン酸、ルイス酸、プロトン酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのドーパントをドーピングしたものを採用してもよい。ここで、導電性高分子層39は、抵抗率がより低いほうが好ましく、抵抗率が低いほど、横方向(面内方向)への通電性が向上し、発光層32に流れる電流の面内ばらつきを低減することが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。
【0053】
第2電極50の電極パターン40は、金属の粉末と有機バインダとを含む電極からなる。この種の金属としては、例えば、銀、金、銅などを採用することができる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、導電性透明酸化物により形成された薄膜の場合に比べて、第2電極50の電極パターン40の抵抗率およびシート抵抗を小さくすることが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。なお、第2電極50の電極パターン40の導電性材料としては、金属の代わりに、合金や、カーボンブラックなどを用いることも可能である。
【0054】
電極パターン40は、例えば、金属の粉末に有機バインダおよび有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより印刷して形成することができる。有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
電極パターン40は、図1〜図3に示すように、格子状(網状)に形成されており、複数(図3に示した例では、6×6=36)の開口部41を有している。ここで、図3に示した電極パターン40は、各開口部41の各々の平面視形状が正方形状である。要するに、図3に示した電極パターン40は、正方格子状に形成されている。
【0056】
第2電極50は、正方格子状の電極パターン40の寸法に関して、例えば、線幅L1(図2参照)を1μm〜100μm、高さH1(図2参照)を50nm〜100μm、ピッチP1(図2参照)を100μm〜2000μmとすればよい。ただし、第2電極50の電極パターン40の線幅L1、高さH1およびピッチP1それぞれの数値範囲は、特に限定するものではなく、素子部の平面サイズに基づいて適宜設定すればよい。ここにおいて、第2電極50の電極パターン40の線幅L1については、発光層32で発光する光の利用効率の観点からは狭い方が好ましく、第2電極50の低抵抗化によって輝度むらを低減するという観点からは広い方が好ましいので、有機エレクトロルミネッセンス素子の平面サイズなどに基づいて適宜設定することが好ましい。また、第2電極50の電極パターン40の高さH1については、第2電極50の低抵抗化の観点、電極パターン40をスクリーン印刷法などの塗布法により形成する際の電極パターン40の材料の使用効率(材料使用効率)の観点、機能層30から放射される光の放射角の観点などから、100nm以上10μm以下が、より好ましい。
【0057】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、電極パターン40における各開口部41を、図2に示したように、機能層30から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなる開口形状としてある。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30から放射される光の広がり角を大きくすることが可能になり、輝度むらを、より低減することが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40での反射損失や吸収損失を低減することが可能となり、外部量子効率のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0058】
電極パターン40を格子状の形状とする場合、各開口部41の各々の平面視形状は正方形状に限らず、例えば、長方形状や正三角形状や正六角形状の形状としてもよい。
【0059】
電極パターン40は、各開口部41の各々の平面視形状が正三角形状の場合、三角格子状の形状となり、各開口部41の各々の平面視形状が正六角形状の場合、六角格子状の形状となる。なお、電極パターン40は、格子状の形状に限らず、例えば、櫛形状の形状でもよいし、2つの櫛形状の電極パターンにより構成してもよい。また、電極パターン40は、開口部41の数も特に限定するものではなく、複数に限らず、1つでもよい。例えば、電極パターン40を櫛形状の形状としたり、2つの櫛形状の電極パターンにより構成とした場合などは、開口部41の数を1つとすることが可能である。
【0060】
また、電極パターン40は、例えば、図4に示すような平面形状としてもよい。すなわち、電極パターン40は、平面視において、直線状の細線部44の線幅を一定として、電極パターン40における周部から中心部に近づくにつれて隣り合う細線部44間の間隔が狭くなり開口部41の開口面積が小さくなる形状としてもよい。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40の平面形状を図4のような平面形状とすることにより、図3のような平面形状とした場合に比べて、第2電極50において引き出し電極部47(図1参照)からの距離が周部よりも遠い中央部での発光効率を向上させることが可能となり、外部量子効率の向上を図ることが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40の平面形状を図4のような形状とすることにより、図3のような平面形状とした場合に比べて、機能層30のうち引き出し電極部47からの距離が近い周部での電流集中を抑制することが可能となるから、長寿命化を図ることが可能となる。
【0061】
また、第2電極50の電極パターン40は、例えば、図5に示すような平面形状としてもよい。すなわち、電極パターン40は、平面視において、電極パターン40における最外周にある4つの第1細線部42の線幅と、図5において左右方向の中央にある1つの第2細線部43の線幅とを、第1細線部42と第2細線部43との間にある細線部(第3細線部)44よりも幅広としてある。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40を図5のような平面形状とすることにより、図3のような平面形状の場合に比べて、第2電極50において引き出し電極部47(図1参照)からの距離が周部よりも遠い中央部での発光効率を向上させることが可能となり、外部量子効率の向上を図ることが可能となる。なお、電極パターン40は、図5のような平面形状とする場合、相対的に線幅の広い第1細線部42および第2細線部43の高さを第3細線部44の高さよりも高くすることにより、第1細線部42および第2細線部43それぞれの、より一層の低抵抗化を図ることが可能となる。
【0062】
なお、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1キャリア注入層31の膜厚を5〜15nm、発光層32の膜厚を60〜200nm、第2キャリア輸送層33の膜厚を5〜30nm、第2キャリア注入層34の膜厚を10〜60nm、導電性高分子層39の膜厚を200〜400nmにそれぞれ設定してあるが、これらの数値は一例であって、特に限定するものではない。
【0063】
絶縁層60の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、絶縁層60に吸湿剤を含有させてもよい。
【0064】
吸湿剤としては、アルカリ土類金属の酸化物や硫酸塩が好ましい。アルカリ土類金属の酸化物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウムなどを挙げることができる。また、硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケルなどを挙げることができる。また、吸湿剤としては、その他に、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、酸化マグネシウムなどを用いることができる。また、吸湿剤としては、例えば、シリカゲルや、ポリビニルアルコールなどの吸湿性を有する有機化合物を用いることもできる。吸湿剤は、これらに限定されるものではないが、これらの中でも、酸化カルシウム、酸化バリウム、シリカゲルなどが特に好ましい。なお、絶縁層60中の吸湿剤の含有率は、特に限定するものではない。
【0065】
絶縁層60は、機能層30上で平面視形状が矩形枠状に形成されているが、当該矩形枠状の部位から、基材20と引き出し電極部47との間に介在する部分が延設されている。
【0066】
補助電極46は、絶縁層60上で平面視形状が矩形枠状に形成されている。この補助電極46は、絶縁層60と第2電極50との間に形成されている。
【0067】
補助電極46は、金属の粉末と有機バインダとを含む電極からなる。この種の金属としては、例えば、銀、金、銅などを採用することができる。なお、補助電極46は、上述の金属の代わりに、合金や、カーボンブラックなどを用いることも可能である。
【0068】
補助電極46は、例えば、金属の粉末に有機バインダおよび有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより印刷して形成することができる。有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。引き出し電極47の材料としては、例えば、補助電極46と同じ材料を用いることができるが、必ずしも同じ材料である必要はない。
【0069】
封止部材70は、平面形状を矩形状としてある。封止部材70としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック板などを用いてもよい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを採用することができる。また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを採用することができる。ただし、プラスチック板の場合には、ガスバリア層が形成されたものが好ましい。
【0070】
封止部80の材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂などを採用してもよい。封止部80の材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。ここで、封止部80は、基材20側および封止部材70側それぞれにおいて全周に亘って気密的に接着されている。また、封止部80の材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。
【0071】
ところで、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、樹脂層90の材料である透光性樹脂として、第2電極50の導電性高分子層39の材料の屈折率以上の屈折率を有するものを用いることが好ましい。このような透光性樹脂としては、例えば、屈折率が高くなるように調整されたイミド系樹脂などを用いることができる。
【0072】
保護層91の材料は、樹脂層90と同じ材料を採用しているが、これに限らず、例えば、封止部80と同じ材料を採用してもよい。
【0073】
上述した有機エレクトロルミネッセンス素子は、塗布法を採用してロールトゥーロールで製造することが可能である。そして、機能層30を形成する際に、塗布法により、上記規定方向を塗布方向(例えば、ダイコーターと基材20との少なくとも一方を移動させることにより機能層30を帯状あるいはストライプ状に形成する場合において、機能層30が連続的に形成される方向)として形成することが可能である。この際、塗布方向に直交する塗布幅を、基材20の上記一表面において上記規定方向に直交する方向の寸法よりも小さく設定することにより、機能層30を塗布法により形成した後に、機能層30をパターニングするような工程が不要であり、材料の使用効率を向上させることが可能となる。
【0074】
ここで、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1電極を兼ねる基材20の上記一表面側の機能層30が、基材20の上記一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成され、且つ、残りの2辺から離れて形成されている。また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における基材20は、上記一表面において上記規定方向に直交する方向の両端部が機能層30の各一部と併せて封止部材70側へ折り返され、当該折り返された両端部では上記他表面が封止部80と接着されている。また、第2電極50に電気的に接続された引き出し電極部47は、上記規定方向に沿って封止部80の外側へ引き出されている。更に説明すれば、基材20は、上記規定方向の両端部で引き出し電極部47が形成された第1部分20aが封止部材70側とは反対側へ折り返され、且つ、上記一表面において上記規定方向に直交する方向の両端部(第3部分20c)が封止部材70側へ折り返されている。また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子における封止部80は、封止部材70とは反対側において、引き出し電極部47の一部に接着された第1部位80a以外の第2部位80bが、基材20の上記他表面に接着されている。
【0075】
また、基材20は、上記規定方向の両端部の第1部分20a以外の第2部分に関して、図6に示すように、折り返さずに上記一表面を封止部80と接着させてある。なお、図6は、図1(a)のB−B’線およびF−F’線に沿った共通の概略断面図である。基材20は、上記規定方向の両端部の第1部分20a以外の第2部分に関して、機能層30がある場合には図1(b)と同様に基材20を機能層30と併せて封止部材70側へ折り返えし、上記他表面を封止部80と接着させればよい。
【0076】
いずれにしても、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造にあたっては、機能層30を塗布法により形成した後に、機能層30をパターニングすることなく、封止部80が機能層30の一部に接着されるのを防止することが可能となる。これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、封止部80の密着性を向上させることが可能となる。
【0077】
しかして、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層32を含む機能層30が基材20の上記一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成された構成でありながらも防湿性を向上させることが可能となる。
【0078】
また、第2電極50が透明導電性酸化物からなる透明電極により構成されている場合には、第2電極50のシート抵抗が、第1電極11のシート抵抗に比べて高いため、第2電極50での電位勾配が大きくなって、輝度の面内ばらつきが大きくなる懸念がある。しかしながら、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2電極50が、機能層30に接する導電性高分子層39と、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の開口部41を有する電極パターン40とを備えている。したがって、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第2電極50が透明導電性酸化物からなる透明電極により構成されている場合に比べて、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。さらに、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、補助電極46を備えているので、輝度むらの、より一層の低減を図ることが可能となる。また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、樹脂層90が、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有しているので、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20が、金属箔10からなることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30などで発生した熱が基材20を通して放熱されやすくなるから、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20が金属箔からなることにより、機能層30の温度の面内均一性が向上し、輝度むらの低減を図ることが可能となる。
【0080】
また、この有機エレクトロルミネッセンス素子においては、第2電極50が陽極であり、機能層30が、発光層32よりも第2電極50側にある第2キャリア注入層34を含んでいることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層32へ第2キャリアであるホールを、より効率良く注入することが可能となり、結果的に外部量子効率の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、封止部材70における外面側(基材20側とは反対の面側)には、発光層32から放射された光の上記外面での反射を抑制する光取出し構造部(図示せず)を備えていることが好ましい。このような光取出し構造部としては、例えば、2次元周期構造を有した凹凸構造部が挙げられる。このような2次元周期構造の周期は、発光層32で発光する光の波長が例えば300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。このような凹凸構造部は、例えば、封止部材70の上記外面側に、例えば、熱インプリント法(熱ナノインプリント法)、光インプリント法(光ナノインプリント法)などのインプリント法により、予め形成することが可能である。また、封止部材70の材料によっては、封止部材70を射出成形により形成するようにし、射出成形時に適宜の金型を用いて、封止部材70に凹凸構造部を直接形成することも可能である。また、凹凸構造部は、封止部材70とは別部材により構成することも可能であり、例えば、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成することができる。
【0082】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、上述の光取出し構造部を備えることにより、発光層32から放射され封止部材70の上記外面側まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0083】
ところで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20に関して、上記一表面において上記規定方向に直交する方向の両端部が機能層30の各一部と併せて封止部材70側へ折り返され、当該折り返された両端部では他表面が封止部80と接着され、引き出し電極部47に関して、上記規定方向に沿って封止部80の外側へ引き出されていればよい。
【0084】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20と封止部材70との外形サイズは同じままで、図7に示すように、基材20の上記規定方向の両端部に切欠部21を設け、且つ、封止部材70における基材20との対向面上に引き出し電極部47を設けるようにし、引き出し電極部47と基材20の上記一表面との間に封止部80の一部が介在するようにしてもよい。なお、図7(b)は、図7(a)のC−C’線およびE−E’線に沿った共通の概略断面図である。また、図7(a)のA−A’線、D−D’線に沿った共通の概略断面図については図1(a)のA−A’線、D−D’線に沿った共通の概略断面図と同じであり、B−B’線およびF−F’線に沿った共通の概略断面図については図6と同じである。
【0085】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、基材20と封止部材70との外形サイズは同じままで、図8に示すように、封止部材70において上記規定方向に沿った方向の両端部に切欠部71を設けるようにし、基材20の上記一表面側の引き出し電極部47と封止部材70との間に封止部80の一部が介在するようにしてもよい。なお、図8(b)は、図8(a)のC−C’線およびE−E’線に沿った共通の概略断面図である。また、図8(a)のA−A’線、D−D’線に沿った共通の概略断面図については図1(a)のA−A’線、D−D’線に沿った共通の概略断面図と同じであり、B−B’線およびF−F’線に沿った共通の概略断面図については図6と同じである。
【0086】
上述の実施形態で説明した有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子として好適に用いることができるが、照明用に限らず、他の用途に用いることも可能である。
【0087】
なお、上述の実施形態において説明した各図は、模式的なものであり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際のものの寸法比を反映しているとは限らない。
【符号の説明】
【0088】
20 基材(第1電極)
30 機能層
32 発光層
47 引き出し電極部
50 第2電極
60 絶縁層
70 封止部材
80 封止部
90 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を兼ねる基材と、前記基材の一表面側にあり少なくとも発光層を含む機能層と、前記機能層における前記基材側とは反対側にある第2電極と、前記基材の前記一表面側において前記第2電極に電気的に接続された引き出し電極部と、前記引き出し電極部と前記基材とを電気的に絶縁する絶縁層と、前記第2電極における前記機能層側とは反対側にあり透光性を有する封止部材と、前記第2電極と前記封止部材との間に介在する透光性の樹脂層と、前記基材の周部と前記封止部材の周部との間にある枠状の封止部とを備え、前記封止部材側から光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記機能層は、前記基材の前記一表面における規定方向に沿った2辺間に亘って形成され、且つ、前記規定方向に直交する2辺から離れて形成され、前記基材は、前記一表面において前記規定方向に直交する方向の両端部が前記機能層の各一部と併せて前記封止部材側へ折り返され、当該折り返された両端部では他表面が前記封止部と接着されてなり、前記引き出し電極部は、前記規定方向に沿って前記封止部の外側へ引き出されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記基材は、金属箔からなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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