説明

有機エレクトロルミネッセンス表示パネル及び製造方法

【課題】 発光特性が劣化しにくい高遮蔽性有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス表示パネルを提供する。
【解決手段】 第1及び第2表示電極並びに第1及び第2表示電極間に挟持かつ積層された有機化合物からなる1以上の有機機能層からなる有機エレクトロルミネッセンス素子と、有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する基板と、からなる有機エレクトロルミネッセンス表示パネルであって、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその周囲の基板の表面を覆う第1の無機バリア膜と、有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で第1の無機バリア膜を覆う高分子化合物膜と、高分子化合物膜及びその縁部を覆う第2の無機バリア膜と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電流の注入によって発光するエレクトロルミネッセンスを呈する有機化合物材料からなる発光層を含む1以上の薄膜(以下、有機機能層という)を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)及びその1以上が基板上に形成された有機エレクトロルミネッセンス表示パネル(以下、有機EL表示パネルという)に関する。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、基本的には有機機能層を陽極及び陰極で挟んだ形態で、両電極から注入された電子と正孔が再結合時に形成される励起子が励起状態から基底状態に戻り光を生じさせる。例えば、透明基板上に、陽極の透明電極と、有機機能層と、陰極の金属電極とが順次積層して有機EL素子は構成され、透明基板側から発光を得る。有機機能層は、発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層、発光層及び有機電子輸送層の3層構造、又は有機正孔輸送層及び発光層の2層構造、さらにこれらの適切な層間に電子或いは正孔の注入層やキャリアブロック層を挿入した積層体である。
【0003】有機EL表示パネルとして、例えばマトリクス表示タイプのものや、所定発光パターンを有するものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この有機EL素子は、大気に晒されると、水分、酸素などのガス、その他の使用環境中のある種の分子の影響を受けて劣化し易い、特に有機EL素子の電極と有機機能層の界面では特性劣化が顕著であり、輝度、色彩などの発光特性が低下する問題がある。これを防止するために、有機EL表示パネルにおいて、酸化シリコンなどの無機物単一層の保護膜で有機EL素子を封止してその劣化を抑制する方法が考えられるが、これは十分なバリア性を有していない。すなわち、無機バリア膜ではピンホール発生を回避できないからである。保護膜にピンホールがあるとその部分から水分、酸素などが侵入し、有機EL素子の発光しない部分いわゆるダークスポットが拡大してしまう。
【0005】そこで、本発明は、有機機能層又は電極に対する酸素及び水分などに対する遮蔽性が高く発光特性が劣化しにくい有機EL素子及び有機EL表示パネルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルは、第1及び第2表示電極並びに前記第1及び第2表示電極間に挟持かつ積層された有機化合物からなる1以上の有機機能層からなる有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する基板と、からなる有機エレクトロルミネッセンス表示パネルであって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子及びその周囲の前記基板の表面を覆う第1の無機バリア膜と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で前記第1の無機バリア膜を覆う第1の高分子化合物膜と、前記第1の高分子化合物膜及びその縁部を覆う第2の無機バリア膜と、を有することを特徴とする。
【0007】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜より狭い範囲かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲に形成されることを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うに形成されることを特徴とする。
【0008】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で前記第2の無機バリア膜を覆う第2の高分子化合物膜と、前記第2の高分子化合物膜及びその縁部を覆う第3の無機バリア膜と、をさらに有することを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記無機バリア膜は窒化シリコン又は窒化酸化シリコンからなることを特徴とする。
【0009】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記無機バリア膜はプラズマ化学気相成長法又はスパッタ法により成膜されたことを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記高分子化合物膜はプラズマ重合成長法又は化学気相成長法又はスピンコート法により成膜されたことを特徴とする。
【0010】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記高分子化合物膜がポリパラキシリレンからなることを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記基板は高分子化合物からなるプラスチック基板であることを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネルにおいては、前記プラスチック基板の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する表面を覆うように予め形成された基板側無機バリア膜を有することを特徴とする。
【0011】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法は、1以上の有機エレクトロルミネッセンス素子及び前記有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する基板からなる有機エレクトロルミネッセンス表示パネルの製造方法であって、基板上に、各々が第1及び第2表示電極並びに前記第1及び第2表示電極間に挟持かつ積層された有機化合物からなる1以上の有機機能層からなる1以上の有機EL素子を形成する工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で第1の無機バリア膜を成膜する工程と、前記第1の無機バリア膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うように、第1の高分子化合物膜を成膜する工程と、前記第1の高分子化合物膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うように、前記第1の高分子化合物膜よりも大きい範囲に第2の無機バリア膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜より狭い範囲かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲に形成されることを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うに形成されることを特徴とする。
【0013】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で前記第2の無機バリア膜を覆う第2の高分子化合物膜と、前記第2の高分子化合物膜及びその縁部を覆う第3の無機バリア膜と、をさらに有することを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記無機バリア膜は窒化シリコン又は窒化酸化シリコンからなることを特徴とする。
【0014】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記無機バリア膜はプラズマ化学気相成長法又はスパッタ法により成膜されたことを特徴とする。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記高分子化合物膜はプラズマ重合成長法又は化学気相成長法又はスピンコート法により成膜されたことを特徴とする。
【0015】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル製造方法においては、前記高分子化合物膜がポリパラキシリレンからなることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】発明者は、無機バリア膜だけの有機EL素子封止は不充分であるので、有機EL素子において有機EL素子に直接接する高分子化合物膜とその上の無機バリア膜の2層封止構造とする実験をした。高分子化合物膜として光硬化性のエポキシ樹脂などを用いた実験をしたが、得られた有機EL素子を高温保存した場合、樹脂中の光重合開始剤の残査や、樹脂中の不純物、反応に寄与しない副生成物などからのアウトガスが生じ、これらが有機EL素子を攻撃して黒点の拡大や輝度劣化を引き起こす。そこで、多層保護膜の成膜順を窒化シリコンなどの無機物膜そして、高分子化合物膜、無機物膜、高分子化合物膜の順とする。このように多層保護膜の有機EL素子と接する部分にアウトガス発生の心配に無い無機物膜を付けることにより、黒点の拡大しない、かつ外部から酸素や水分などの侵入の無い、信頼性の高い有機EL表示パネルを得ることができる。
【0017】以下に、本発明による実施の形態例を図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態の有機EL素子を示す。実施形態の有機EL素子は、ガラスなどの基板10の上に順に積層された、第1表示電極13(透明電極の陽極)、有機化合物からなる発光層を含む1以上の有機機能層14、及び第2表示電極15(金属電極の陰極)を備える。さらに、有機EL素子は、その第2表示電極15の背面を覆うように、順に積層された多層封止膜、すなわち第1の無機バリア膜16S1、第1の高分子化合物膜16P1、第2の無機バリア膜16S2、第2の高分子化合物膜16P2を有する。第1の無機バリア膜16S1は、有機EL素子D及びその周囲の基板10の表面を被覆している。第1の高分子化合物膜16P1は、第1の無機バリア膜16S1の表面を被覆するが、第1の無機バリア膜16S1の縁部を被覆しない。第2の無機バリア膜16S2は、第1の高分子化合物膜16P1とその縁部及びその周囲の第1の無機バリア膜16S1の表面を被覆している。第2の高分子化合物膜16P2は、第2の無機バリア膜16S2とその縁部及びその周囲の基板の表面を被覆している。内部の高分子化合物膜は1対の無機バリア膜に包埋されるように、その縁部は外部に露出しないように形成される。無機バリア膜の縁部を高分子化合物膜で必ずしも被覆する必要はないが、最表面に高分子化合物膜が成膜されるときは、無機バリア膜全体を覆うことができる。また、基板10の材料は限定されないので、ガラスなどの無機物の他、高分子化合物などの有機物から選択できる。
【0018】例えば、図2に示すように、有機EL素子の製造方法においては、基板10上にインジウム錫酸化物(ITO)からなる第1表示電極13を蒸着又はスパッタ法にて成膜する。その上に、銅フタロシアニンからなる正孔注入層、TPD(トリフェニルアミン誘導体)からなる正孔輸送層、いわゆるAlq3(アルミキレート錯体)からなる発光層、Li2O(酸化リチウム)からなる電子注入層を順次、蒸着して有機機能層14を形成する。さらに、この上に蒸着によって、Alからなる第2表示電極15を透明電極13の電極パターンと有機機能層14を介して対向するように成膜する。
【0019】次に、図3に示すように、有機EL素子D上に第1の無機バリア膜16S1として窒化シリコン膜をCVD(化学気相成長法)により成膜する。この時、第1開口マスクM1を使って画素又は有機EL素子を含む表示領域よりも大きい範囲に第1の無機バリア膜を成膜する。次に、図4に示すように、第1の無機バリア膜16S1上に第1の高分子化合物膜16P1としてポリパラキシリレン膜をCVD(化学気相成長法)により成膜する。この時、第2開口マスクM2を使って第1の無機バリア膜よりも狭いが有機EL素子を含む表示領域よりも広い面積範囲に第1の高分子化合物膜16P1を成膜する。
【0020】次に、図5に示すように、第1の高分子化合物膜16P1上に第2の無機バリア膜16S2として窒化シリコン膜をプラズマCVDにより成膜する。この時、第3開口マスクM3を使って第1の高分子化合物膜よりも大きい範囲に第2の無機バリア膜16S2を成膜する。次に、図6に示すように、第2の無機バリア膜16S2上に第2の高分子化合物膜16P2としてポリパラキシリレン膜をCVDにより成膜して、図1に示す有機EL素子が作成される。この時、第4開口マスクM4を使って第2の無機バリア膜16S2よりも小さい面積範囲に第2の高分子化合物膜16P2を成膜しているが、他の開口マスクを使って第2の無機バリア膜16S2よりも大きい面積範囲に第2の高分子化合物膜16P2を成膜してもよい。このように、実施形態では、高分子化合物膜は1対の無機バリア膜に包埋され、かつ無機バリア膜は常に有機EL素子に接触する構成をとる。
【0021】高分子化合物膜を成膜するプラズマ重合法は、有機分子をプラズマ状態になし、発生するラジカル種のカップリングによって重合させる成膜方法である。プラズマ重合によれば、モノマーは蒸気圧を持っていればビニル基のような特別な重合性基を必要とせず、得られた高分子化合物膜は緻密な薄膜となる。実施形態では、交流プラズマ重合装置によってプラズマ重合を行うが、陰極と陽極が区別される直流プラズマ法によって重合を行ってもよい。
【0022】高分子化合物膜の原料ガスは、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、アセチレン、メチルアセチレンなどの炭化水素系モノマー、ヘキサメチルジシロキサン、トリエトキシビニルシラン、ポリジメチルシロキサン、テトラメトキシシランなどのケイ素系モノマー、テトラフルオロエチレンなどのフッ化水素系モノマー、などがある。特に実質的に炭素と水素のみからなる高分子化合物膜は表面に緻密でピンホールの無い硬質の膜を形成できるという利点を有するので好ましく、中でも原子数の比(原子組成比)で表わして好ましくはH/C=1.5以下であると三次元的に充分架橋した特性の良い高分子化合物膜が形成できる。このような高分子化合物膜は炭化水素系モノマーガスの量を少なくし、反応圧力を低くし、かつ印加電力を大きくすることにより生成し得る。すなわち、反応圧力を低く印加電力を大きくすることにより、モノマー単位量あたりの分解エネルギーが大きくなって分解が進み、架橋した高分子化合物膜が形成できる。その他キャリアガスとして水素、不活性ガスなどのガスが使用できる。
【0023】CVD(化学気相成長法)による高分子化合物膜は、ポリパラキシリレン、特にパラキシリレン重合膜又は塩素化パラキシリレン重合膜がガス及び水蒸気透過性が極めて低く、不純物の混入が抑制でき、ピンホールの少ない、均一な膜を成膜できるので好ましい。このようなキシレン樹脂は米国ユニオン・カーバイド社のパリレンN(ポリパラキシリレン)、パリレンC(ポリモノクロクロロパラキシリレン)、パリレンD(ポリジクロロパラキシリレン)などがある。ガス透過性が低い点でパリレンCが好ましいが、SiN膜をその上に成膜するので、パリレンNでも十分である。ポリパラキシリレンなど高分子化合物膜は2量体のガスを減圧下に熱分解することにより得られる。
【0024】実験例では、ガラス基板のITO陽極面上に所定の有機機能層を形成し、更にAl陰極を成膜して有機EL素子を形成した。次いで、第1の無機バリア膜として窒化シリコンをプラズマCVD法により有機EL素子を覆うように成膜し、次に、有機EL素子より広い範囲でかつ第1の無機バリア膜より狭い範囲でポリエチレンの高分子化合物膜をプラズマ重合により成膜した。さらに、有機EL素子より広い範囲でかつ高分子化合物膜の縁部を覆うように窒化シリコンの第2の無機バリア膜をプラズマCVD法により成膜し、実施例の有機EL表示パネルを作製した。高分子化合物膜のプラズマ重合成膜条件は、20SCCMのエチレンガスで、圧力0.9Torr、RF電力500mW/cm2、周波数13.56MHz温度を室温で、膜厚0.5μmを成膜した。なお、比較例として、第1の無機バリア膜を成膜せずに、高分子化合物膜として光硬化性エポキシ樹脂を用い直接有機EL素子上に成膜した以外、実施例と同一の有機EL表示パネルをも作製した。耐久性を大気中にて60℃、95%RHの条件で、これらの有機EL素子のダークスポットの拡大状態を測定する試験をしたところ、実施例ではダークスポットの拡大がなかったが、比較例ではダークスポットの拡大があった。
【0025】図7は他の実施形態の、複数の有機EL素子を備えた有機EL表示パネルの部分拡大背面図である。有機EL表示パネルは、基板10上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子を備えている。透明電極層を含む行電極13(陽極の第1表示電極)と、有機機能層と、該行電極に交差する金属電極層を含む列電極15(第2表示電極)と、が基板10上に順次積層されて構成されている。行電極は、各々が帯状に形成されるとともに、所定の間隔をおいて互いに平行となるように配列されており、列電極も同様である。このように、マトリクス表示タイプの表示パネルは、複数の行と列の電極の交差点に形成された複数の有機EL素子の発光画素からなる画像表示配列を有している。有機EL表示パネルは基板10上の有機EL素子の間に平行に設けられた複数の隔壁7を備えていてもよい。複数の有機EL素子を覆うように、第2表示電極15及び隔壁7の上には上記無機バリア膜及び高分子化合物膜の交互積層保護膜16が形成されている。有機機能層の材料を選択して適宜積層して各々が赤R、緑G及び青Bの発光部を構成することもできる。
【0026】図8に他の実施形態の有機EL素子を示す。この有機EL素子は、その基板に、合成樹脂を用いたプラスチック基板10とし、その表面を窒化シリコン又は窒化酸化シリコンなど無機物からなる基板側無機バリア膜22で被覆した以外、上記図1の実施形態と同一である。基板側無機バリア膜22上に有機EL素子の電極が形成される。合成樹脂基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェノキシエーテル、ポリアリレート、フッ素樹脂、ポリプロピレンなどのフィルムが適用できる。
【0027】基板側無機バリア膜22が覆うプラスチック基板の表面は、少なくとも有機EL素子に接触する表面、有機EL素子間の表面、有機EL素子周囲の表面、有機EL素子に接触する表面の裏側の表面を含むことが好ましい。プラスチック基板から有機機能層へのアウトガスなどの侵入を防止するためである。また、プラスチック基板の両面を基板側無機バリア膜22で覆うことにより、プラスチック基板の反りを防止できる。
【0028】上述した例においては、無機バリア膜の製法として、プラズマCVDを用いたが、これに限られることはなく、スパッタ法、真空蒸着法などの気相成長法も適用可能である。また、上述した例においては、高分子化合物膜の製法として、プラズマ重合成長法を用いたが、これに限られることはなく、化学気相成長法又はスピンコート法も適用可能である。無機バリア膜を交互に積層しているので、光硬化性樹脂をスピンコート法により成膜できて、高分子化合物膜の製法の自由度か大きくなる。
【0029】さらに上述した実施例においては、単純マトリクス表示タイプの有機EL表示パネルを説明したが、本発明はTFTなどを用いたアクティブマトリクス表示タイプのパネルの基板にも応用できる。図9に他の実施形態の有機EL素子を示す。この実施形態では、被覆された基板10の無機バリア膜22上に形成された有機EL素子Dをさらに多層封止膜で保護した構造を有する。有機EL素子Dは、その第2表示電極15の背面を覆うように、順に、第1の無機バリア膜16S1、第1の高分子化合物膜16P1、第2の無機バリア膜16S2、第2の高分子化合物膜16P2、第3の無機バリア膜16S3、及び第3の高分子化合物膜16P3を有する。このように、高分子化合物膜及び無機バリア膜の交互に積層する更なる多層構造とする場合に高分子化合物膜及び無機バリア膜の成膜工程を繰り返して各層を成膜する。
【0030】さらに、図10に示す他の実施形態の有機EL素子では、第1の無機バリア膜16S1は有機EL素子D及びその周囲の基板10の表面を被覆している。第1の高分子化合物膜16P1は第1の無機バリア膜16S1及びその周囲の基板10の表面を被覆している。第2の無機バリア膜16S2は、第1の高分子化合物膜16P1とその縁部及びその周囲の基板の表面を被覆している。第2の高分子化合物膜16P2は、第2の無機バリア膜16S2とその縁部及びその周囲の基板の表面を被覆している。各層の成膜工程におけるそれぞれの開口マスクを、その前工程の開口マスクより大なる面積の堆積物通過用開口を有していれば、積層された各膜のエッジを被覆するように多層保護膜が成膜できる。このように、いずれの実施形態でも、内部の高分子化合物膜はその縁部も含めて1対の無機バリア膜に被覆、包埋され、かつ有機EL素子には無機バリア膜が常に接触する構成をとる。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、有機EL素子に直接触れる部位に窒化シリコンなどの無機バリア膜を成膜して、その上に高分子化合物膜を成膜することよリ高分子化合物膜からのアウトガスによる有機EL素子の劣化を回避することができる。よって、有機EL素子を覆う高分子化合物膜からのアウトガスなどにより有機EL素子にタメージを与えてしまう問題が解消される。さらには、高分子化合物膜エッジからの水分や酸素の侵入を遮断でき、水や酸素の遮断が十分な封止構造を形成できて有機EL素子が保護されるので、耐久性の高い有機EL表示パネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施形態の有機EL素子の概略斜視図。
【図2】本発明による有機EL表示パネル製造工程における基板の概略断面図。
【図3】本発明による有機EL表示パネル製造工程における基板の概略断面図。
【図4】本発明による有機EL表示パネル製造工程における基板の概略断面図。
【図5】本発明による有機EL表示パネル製造工程における基板の概略断面図。
【図6】本発明による有機EL表示パネル製造工程における基板の概略断面図。
【図7】本発明による他の実施形態の、複数の有機EL素子を備えた有機EL表示パネルの部分拡大背面図。
【図8】本発明による他の実施形態の有機EL素子の概略斜視図。
【図9】本発明による他の実施形態の有機EL素子の概略斜視図。
【図10】本発明による他の実施形態の有機EL素子の概略斜視図。
【符号の説明】
10 基板
13 第1表示電極(透明電極の陽極)
14 有機機能層(発光層)
15 第2表示電極(金属電極の陰極)
16S1 第1の無機バリア膜
16P1 第1の高分子化合物膜
16S2 第2の無機バリア膜
16P2 第2の高分子化合物膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1及び第2表示電極並びに前記第1及び第2表示電極間に挟持かつ積層された有機化合物からなる1以上の有機機能層からなる有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する基板と、からなる有機エレクトロルミネッセンス表示パネルであって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子及びその周囲の前記基板の表面を覆う第1の無機バリア膜と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で前記第1の無機バリア膜を覆う第1の高分子化合物膜と、前記第1の高分子化合物膜及びその縁部を覆う第2の無機バリア膜と、を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項2】 前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜より狭い範囲かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲に形成されることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項3】 前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うに形成されることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項4】 前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で前記第2の無機バリア膜を覆う第2の高分子化合物膜と、前記第2の高分子化合物膜及びその縁部を覆う第3の無機バリア膜と、をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項5】 前記無機バリア膜は窒化シリコン又は窒化酸化シリコンからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項6】 前記無機バリア膜はプラズマ化学気相成長法又はスパッタ法により成膜されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項7】 前記高分子化合物膜はプラズマ重合成長法又は化学気相成長法又はスピンコート法により成膜されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項8】 前記高分子化合物膜がポリパラキシリレンからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項9】 前記基板は高分子化合物からなるプラスチック基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項10】 前記プラスチック基板の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する表面を覆うように予め形成された基板側無機バリア膜を有することを特徴とする請求項9記載の有機エレクトロルミネッセンス表示パネル。
【請求項11】 1以上の有機エレクトロルミネッセンス素子及び前記有機エレクトロルミネッセンス素子を担持する基板からなる有機エレクトロルミネッセンス表示パネルの製造方法であって、基板上に、各々が第1及び第2表示電極並びに前記第1及び第2表示電極間に挟持かつ積層された有機化合物からなる1以上の有機機能層からなる1以上の有機EL素子を形成する工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で第1の無機バリア膜を成膜する工程と、前記第1の無機バリア膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うように、第1の高分子化合物膜を成膜する工程と、前記第1の高分子化合物膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うように、前記第1の高分子化合物膜よりも大きい範囲に第2の無機バリア膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項12】 前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜より狭い範囲かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲に形成されることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項13】 前記第1の高分子化合物膜は前記第1の無機バリア膜、その縁部及びその周囲の前記基板の表面を覆うに形成されることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項14】 前記有機エレクトロルミネッセンス素子より広い範囲で前記第2の無機バリア膜を覆う第2の高分子化合物膜と、前記第2の高分子化合物膜及びその縁部を覆う第3の無機バリア膜と、をさらに有することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1記載の製造方法。
【請求項15】 前記無機バリア膜は窒化シリコン又は窒化酸化シリコンからなることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1記載の製造方法。
【請求項16】 前記無機バリア膜はプラズマ化学気相成長法又はスパッタ法により成膜されたことを特徴とする請求項11〜15のいずれか1記載の製造方法。
【請求項17】 前記高分子化合物膜はプラズマ重合成長法又は化学気相成長法又はスピンコート法により成膜されたことを特徴とする請求項11〜16のいずれか1記載の製造方法。
【請求項18】 前記高分子化合物膜がポリパラキシリレンからなることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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