説明

有機エレクトロルミネッセンス装置および有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法

【課題】膜厚ムラの発生を抑制し高画質な画像を表示できる有機EL装置および有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1領域、第2領域および第3領域を区画する隔壁と、第1領域に配置された第1有機膜と、第2領域に配置された第2有機膜と、第3領域に配置された第3有機膜と、を備え、第1領域内には、発光に寄与する画素であって、第1配列軸に沿って連続して配置された複数の有効画素を有し、複数の有効画素の1つは、有効画素電極と、共通電極と、画素電極と共通電極との間に配置された第1有機膜と、を有しており、第2領域および第3領域は、第1領域を挟んで対向して配置されており、かつ第1領域、第2領域および第3領域は第1配列軸に沿って配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置、および有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気光学素子のひとつである有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)素子を使用して、有機ELディスプレイ等の電気光学装置、ラインヘッド等の光書き込みヘッド、及び光プリンタ等の画像形成装置等の開発が盛んに行われている。有機EL素子は、一般に、対向する一対の電極間に有機材料で構成された発光層を備えた構造を有している。このような有機EL素子を用いた有機EL装置では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色に対応するカラーフィルタを介することで、または、各色の光を射出する有機EL素子を用いることでフルカラー表示が可能な構成となっている。
【0003】
上述の有機EL素子は、有機EL素子を構成する発光材料(以下、「有機EL材料」という)に高分子材料を用いるか、又は低分子材料を用いるかによってその製造方法が異なる。有機EL材料が高分子材料である場合には、所謂液滴吐出法を利用して製造する方法が知られている。詳しくは、有機EL材料を所定の溶媒に溶解又は分散させて液状組成物を形成し、液滴吐出法を用いてこの液状組成物を所定の画素電極上に塗布することで有機EL素子を製造する方法である。
【0004】
液滴吐出法を用いて液状組成物の塗布を行うと、高度に制御された微量の液状組成物を所望の位置に塗布することが可能である。そのため、液滴吐出法を用いた製造方法では有機EL材料の高精細パターニングを行うことができるという利点がある。更にこの製造方法では、有機EL材料を塗布する画素電極の周囲に隔壁(バンク)を設け、各々の画素間を区画することが提案されている。バンクを設けることで、ある画素電極上に塗布された有機EL材料の液状組成物が他の画素電極上に塗布された液状組成物と混ざり合うことを抑制し、確実なパターニングをすることが可能となるとされている(例えば特許文献1から3参照)。
【0005】
ところで近年においては、有機EL素子に流れる電流を低減するため、または高輝度化のために、複数の有機EL素子を囲んでバンクよりも高い共通隔壁を形成し、複数の画素ごとに共通隔壁で区画した構造とすることが多くなっている。このような構造の有機EL装置は、上記の液滴吐出法で同様に製造することができる。つまり、複数の有機EL素子が形成された共通隔壁によって囲まれた領域内に液滴吐出法により液滴を配置し、これを乾燥することにより、共通隔壁の複数の有機EL素子に同じ種類の有機EL材料の膜を形成するという方法である。しかし、このような製造方法で有機EL装置を製造する際には、新たな課題が生じる。それは、配置した液体が乾燥の過程で流動してしまい、膜厚の差を生じてしまうことである。
【0006】
共通隔壁に囲まれた複数の有機EL素子の形成に液滴吐出法を用いる場合には、共通隔壁に囲まれた領域の外周部、つまり共通隔壁の近傍と共通隔壁に囲まれた領域の中央部とでは、配置する液状組成物の乾燥状態に差が生じるという課題がある。なぜなら、共通隔壁の近傍では共通隔壁に囲まれた領域の中央部よりも液状組成物から蒸発する溶媒分子の分圧が低い、言い換えると溶媒蒸気濃度が低いため、より速く溶媒の蒸発が進行するためである。この蒸発速度の差により、領域内に同様に塗布した液状組成物であっても、速く蒸発する箇所と遅く蒸発する箇所との間に体積差を生じる。そのため、溶媒の蒸発があまり進行していない領域から、溶媒の蒸発が進行して体積が減っている領域に向かって、液状組成物が流動する。結果、形成される膜には形成箇所による膜厚の差(膜厚ムラ)が生じてしまう。この膜厚ムラは、発光量の差となって表れるため輝度や色合いに差を生じ、その結果、表示不良(表示ムラ)の原因となってしまう。
【0007】
また、共通隔壁の近傍の膜厚は、液状組成物と共通隔壁との親液性または撥液性によっても影響を受ける。例えば、親液性が高い隔壁近傍の液状組成物は、乾燥過程でも隔壁表面に濡れ広がるため、共通隔壁近傍では共通隔壁に沿って盛り上がり、大きな膜厚となり膜厚ムラを生じる。これらの課題に対し、特許文献4では共通隔壁から一定距離以上離間して有機EL素子を形成し、膜厚ムラを抑制する方法が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−334782号公報
【特許文献2】特開2002−372921号公報
【特許文献3】特許第3036436号公報
【特許文献4】特開2007−87693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、成膜する領域の下地の凹凸形状は膜厚ムラの原因となる乾燥状態に大きく影響を与える。例えば、窪んだ箇所には液状組成物が溜まるため、当該箇所から蒸発する溶媒量が平坦な箇所から蒸発する溶媒量と異なるためである。また、乾燥に伴い液状組成物が流動してしまう場合においても、凹凸形状の違いにより液状組成物の流動のしやすさが異なる。そのため、形成される膜の膜厚に差が生じることとなる。更には、液状組成物の流動する方向は、共通隔壁の親液性、溶媒の揮発性、乾燥速度などの様々な要因により決まるため、一定方向に決まるものではなく、加えて凹凸形状の違いによっても影響を受ける。これらのことから、液状組成物の流動による膜厚ムラは抑制が困難なものとなっている。
【0010】
上述の特許文献では、共通隔壁から一定距離以上離間して隔壁近傍の膜を有機EL素子に使用しないことで膜厚ムラを回避しているが、このような下地形状の差に起因する課題に関しては何の記述も無い。更に、共通隔壁から離間している領域は平坦に形成されているため、この領域に配置された液状組成物は流動しやすい。したがって、共通隔壁近傍の膜厚ムラを厳密に回避しようと離間距離を広くとる設計をした場合には、流動しやすい液状組成物を増やす結果となり、かえって膜厚ムラを助長するおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機機能層の膜厚ムラの発生を抑制することで高画質な画像を表示できる有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。また、このような製造方法で製造された有機EL装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置によれば、第1領域、第2領域および第3領域を区画する隔壁と、前記第1領域に配置された第1有機膜と、前記第2領域に配置された第2有機膜と、前記第3領域に配置された第3有機膜と、を備え、前記第1領域内には、発光に寄与する画素であって、第1配列軸に沿って連続して配置された複数の有効画素を有し、前記複数の有効画素の1つは、有効画素電極と、共通電極と、前記画素電極と前記共通電極との間に配置された前記第1有機膜と、を有しており、前記第2領域および前記第3領域は、前記第1領域を挟んで対向して配置されており、かつ前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域は前記第1配列軸に沿って配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明において、発光に寄与する画素とは、画素において出射された発光光が、表示装置の表示やプリンタヘッドの光源等に利用される画素である。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置によれば、前記第1領域には、発光に寄与しない画素であって、前記第1配列軸に沿って配置された第1ダミー画素と第2ダミー画素とをさらに有し、前記複数の有効画素は前記第1ダミー画素と前記第2ダミー画素との間に配置されており、前記第1ダミー画素は第4有機膜を有し、前記第2ダミー画素は第5有機膜を有することを特徴とする。
【0015】
本発明において、発光に寄与しない画素とは、画素において出射された発光光が、表示装置の表示やプリンタヘッドの光源等に利用されない画素である。
【0016】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置によれば、前記第1ダミー画素は、第1ダミー画素電極と、前記共通電極と、をさらに有し、前記第2ダミー画素は、第2ダミー画素電極と、前記共通電極と、をさらに有し、前記第4有機膜は前記第1ダミー画素と前記共通電極との間に配置され、前記第5有機膜は前記第2ダミー画素と前記共通電極との間に配置されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置によれば、前記複数の有効画素は、前記第1ダミー画素の隣に配置された第1有効画素と、前記第1有効画素の隣に配置された第2有効画素と、前記第2ダミー画素の隣に配置された第3有効画素と、を有し、前記第1ダミー画素と前記第1有効画素との間の距離、前記第1有効画素と前記第2有効画素との間の距離及び前記第2有効画素と前記第2ダミー画素との間の距離は互いに等しいことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置によれば、前記第1有機膜、前記第2有機膜及び前記第3有機膜は同一の材料で形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置によれば、前記第1有機膜、前記第2有機膜、前記第3有機膜、前記第4有機膜及及び前記第5有機膜は同一の材料で形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法によれば、第1領域において、第1配列軸に沿って、発光に寄与する画素の電極である複数の有効画素電極を基板上に形成する工程と、前記基板上に、前記第1領域、第2領域及び第3領域を区画する隔壁を形成する工程と、前記隔壁で囲まれた、前記第1領域における前記基板上、前記第2領域における前記基板上及び前記複数の有効画素電極上、前記第3領域における前記基板上、に機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体を配置し、前記溶媒を蒸発させて前記機能性材料からなる有機膜を形成する工程と、前記複数の有効画素電極に対向して配置されるように前記有機膜上に共通電極を形成する工程と、を含み、前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域は前記第1配列軸に沿って配置されており、前記第1領域は、前記第2領域と前記第3領域との間に配置されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法によれば、前記第1領域において、前記第1配列軸に沿って発光に寄与しない画素の電極である第1ダミー画素電極と第2ダミー画素電極とを基板上に形成する工程をさらに有し、前記複数の有効画素電極は、前記第1ダミー画素と前記第2ダミー画素電極との間に配置されており、前記有機膜を形成する工程においては、前記第1ダミー画素電極及び前記第2ダミー画素電極上にも前記液状体を配置し、前記第1ダミー画素電極及び前記第2ダミー画素電極上にも前記有機膜を形成することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法によれば、前記複数の有効画素は、前記第1ダミー画素の隣に配置された第1有効画素と、前記第1有効画素の隣に配置された第2有効画素と、前記第2ダミー画素の隣に配置された第3有効画素と、を有し、前記第1ダミー画素と前記第1有効画素との間の距離、前記第1有効画素と前記第2有効画素との間の距離及び前記第2有効画素と前記第2ダミー画素との間の距離は互いに等しくなるように、前記第1ダミー画素電極、前記第2ダミー画素電極及び前記複数の有効画素電極は形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法によれば、前記有機膜を形成する工程において、前記隔壁で区画された前記第2領域及び前記隔壁で区画された前記第3領域には、前記液状体に代えて前記溶媒を配置することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の有機EL装置の製造方法は、有効表示領域に配置される複数の有効画素と、前記有効表示領域の周囲に設けられたダミー領域に配置される前記複数のダミー画素と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、前記有効表示領域と前記ダミー領域との両方に、複数の有効画素と複数のダミー画素とにそれぞれ対応する複数の配線と複数のスイッチング素子と複数の画素電極とを形成する工程と、前記有効表示領域に形成された前記画素電極と、前記ダミー領域に形成された前記画素電極とを共通に囲む第1隔壁を形成する工程と、前記第1隔壁で囲まれた領域に、機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体を配置し、前記溶媒を蒸発させて前記機能性材料の薄膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体(機能液)を、第1隔壁に囲まれる領域(第1領域)に配置すると、第1隔壁近傍では、第1隔壁に対する機能液のぬれ性により、膜厚が不均一になりやすい。しかしこの方法によれば、第1領域内に配置された複数の有効画素の両端側には、それぞれダミー画素が同時に配置されている。そのため、第1領域に配置されている複数の有効画素は、少なくともダミー画素の幅は第1隔壁から離間することになる。したがって、第1隔壁近傍に形成される機能性材料の薄膜(機能膜)ではなく、隔壁から離れた領域に形成される略均一の膜厚を備える機能膜を使用して有効画素を形成することができる。
【0026】
更に、ダミー領域およびその近傍では、配置された機能液から溶媒が蒸発するため、ダミー画素に隣接する有効画素と他の有効画素とにおいて、溶媒蒸気濃度に起因する蒸発状態の差が縮小する。そのためそれぞれの有効画素に形成される機能膜に膜厚の差(膜厚ムラ)が生じにくくなる。
【0027】
また、ダミー画素に対応して形成された画素電極、スイッチング素子、配線などに起因して、機能液を配置するダミー領域の表面には凹凸形状が形成されている。この表面の凹凸形状により配置された機能液は、せき止められ流動しにくくなる。そのため、溶媒の蒸発状態の差や機能液の流動による膜厚の差(膜厚ムラ)も生じにくくなる。
【0028】
これらのことから、第1領域内に配置された複数の有効画素間では機能性材料の薄膜の膜厚ムラが生じることを抑制することができ、したがって優れた画像表示が可能な有機EL装置とすることができる。
【0029】
本発明においては、前記複数の有効画素および前記複数のダミー画素は、互いに等間隔に形成されていることが望ましい。
この方法によれば、有効画素の配置間隔と同じ間隔でダミー画素も配置されているため、形成された画素電極、スイッチング素子、配線などに起因する凹凸形状にも一定の規則性または連続性が生まれる。そのため、溶媒の蒸発や機能液の流動が略均一となり、形成される機能膜の膜厚ムラを抑制することができる。
【0030】
本発明においては、前記薄膜を形成する工程の前に、前記第1隔壁の周囲の領域を複数の第2隔壁で囲む工程を含み、前記薄膜を形成する工程では、複数の前記第2隔壁で囲まれた領域に前記液状体を配置する工程を含むことが望ましい。
第1領域にダミー画素を多く配置すると、ダミー画素に配置される機能液が増えるため、有効画素周辺の溶媒蒸気を多くすることができ、より精緻に膜厚ムラを抑制することが出来る。その一方で、第1領域にダミー画素を多く配置すると、第1領域内の流動可能な機能液を増やす結果となり、かえって膜厚ムラを助長することにつながるおそれがある。しかしこの方法によれば、第1領域とは独立した第2隔壁で囲まれた領域(第2領域)に配置する機能液から溶媒が蒸発するため、ダミー画素を増やすことなく有効画素周辺の溶媒蒸気濃度を高めることができる。そのため、第1領域内の機能液の量を増やすことなく膜厚ムラを抑制することができる。また、第2領域には第1領域とおなじ機能液を配置することから、第2領域に配置する液状体を別途用意する必要がない。したがって、容易に有効画素の膜厚ムラを抑制することができる。
【0031】
本発明においては、前記薄膜を形成する工程の前に、前記第1隔壁の周囲の領域を複数の第2隔壁で囲む工程を含み、前記薄膜を形成する工程では、複数の前記第2隔壁で囲まれた領域に前記溶媒を配置する工程を含むことが望ましい。
この方法によれば、第1領域とは独立した第2領域に配置する溶媒が蒸発するため、第1領域内の機能液量を増やすことなく効率的に有効画素周辺の溶媒蒸気濃度を高めることができ、より精緻に膜厚ムラを抑制することができる。また、第2領域には溶媒を配置するため、蒸発した後に堆積するものがなく、薄膜形成工程を繰り返す場合であっても、第2領域が堆積物によって埋没することがない。したがって、同じ第2領域を用いて何度も溶媒蒸気濃度の制御を行うことができ、効率的に有効画素の膜厚ムラを抑制することができる。
【0032】
本発明においては、前記液状体または前記溶媒の配置を液滴吐出法を用いて行うことが望ましい。
この方法によれば、量を高度に制御して機能液の配置を行うことができる。そのため、形成する機能膜の膜厚を高度に制御することができ、所望の膜厚に形成することが可能となる。
【0033】
また、本発明の有機EL装置は、複数の有効画素と、前記複数の有効画素の周囲に配置された複数のダミー画素と、前記複数の有効画素と前記複数のダミー画素との周囲に配置された隔壁と、を備え、前記有効画素は、前記有効画素に対応した画素電極とスイッチング素子と複数の配線と、を有しており、前記ダミー画素は、前記ダミー画素に対応したダミー画素電極とダミースイッチング素子と複数のダミー配線と、を有しており、前記有効画素は、駆動電気信号を制御する駆動回路と電気的に接続されており、前記ダミー画素は前記駆動回路と電気的に絶縁されていることを特徴とする。
この構成によれば、このダミー画素は有効画素と同じく画素電極、スイッチング素子、配線を備えていることから、有効画素とダミー画素とは同じ構成・形状とすることができ、構造の差による有効画素とダミー画素との形成ムラを無くすことができる。また、表示不良を起こしやすい隔壁周辺の領域にダミー画素を配置し、表示に関わらないダミー領域とすることで、隔壁の有効画素への影響を抑制する構造となっている。更に、ダミー画素は駆動回路と絶縁されているため、ダミー画素は確実に非発光となり、表示に影響を与えない。これらのことから、良好な表示が可能な有機EL装置とすることができる。
【0034】
本発明においては、前記ダミー配線は、電気的に非導通状態となる寸断部を備えていることが望ましい。
この構成によれば、確実にダミー画素と駆動回路とを絶縁することができる。
【0035】
本発明においては、前記ダミー画素電極と前記ダミースイッチング素子とが、互いに電気的に接続されていないことが望ましい。
この構成によれば、確実にダミー画素と駆動回路とを絶縁することができる。
【0036】
本発明においては、前記ダミー配線と前記ダミースイッチング素子とが、互いに電気的に接続されていないことが望ましい。
この構成によれば、確実にダミー画素と駆動回路とを絶縁することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
[実施形態]
以下、図1〜図9を参照しながら、本発明の有機EL装置1の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率、各構成要素の数などは適宜異ならせてある。
【0038】
有機EL装置には、有機EL素子が放つ光を有機EL素子が形成された基板側とは反対側から取り出すトップエミッション方式と、有機EL素子が形成された基板側から基板を介して取り出すボトムエミッション方式の2種類の発光方式がある。本発明はこのどちらの方式に適用しても良好な結果が得られるため、以下の説明においては形成材料などに限定があるものを除き、発光方式に限定をせずに記載する。
【0039】
図1は、本実施形態の有機EL装置1の配線構造を示す模式図である。この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の配線としての走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の配線としての信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の給電線103とからなる配線構成を有し、走査線101と信号線102との各交点付近に有効画素Pを形成したものである。本発明の技術的思想に沿えば、TFTなどを用いるアクティブマトリクスは必須ではなく、単純マトリクス向けの素子基板を用いて本発明を実施し、単純マトリクス駆動しても全く同じ効果が低コストで得られる。
【0040】
走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える駆動回路としての走査線駆動回路80が接続されている。また、信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備える駆動回路としてのデータ線駆動回路90が接続されている。
【0041】
さらに、有効画素Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング素子としてのスイッチング用TFT142と、このスイッチング素子としてのスイッチング用TFT142を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量145と、該保持容量145によって保持された画素信号がゲート電極に供給されるスイッチング素子としての駆動用TFT143と、このスイッチング素子としての駆動用TFT143を介して給電線103に電気的に接続したときに該給電線103から駆動電流が流れ込む陽極としての画素電極141Aと、該画素電極141Aと共通電極154との間に挟み込まれた有機発光層としての発光層140が設けられている。画素電極141Aと発光層140と共通電極154は、有機EL素子200を構成している。
【0042】
この有機EL装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT142がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量145に保持され、該保持容量145の状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して、給電線103から画素電極141Aに電流が流れ、さらに発光層140を介して共通電極154に電流が流れる。発光層140は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0043】
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な態様を、図2から図5を参照して説明する。ここで、図2は有機EL装置1の構成を模式的に示す平面図である。
【0044】
まず、図2を参照し、有機EL装置1の構成を説明する。図2は、基板としての基板本体20上に形成された前述した各種配線,TFT,各種回路によって、発光層140を発光させるTFT素子基板(以下「素子基板」という。)20Aを示す図である。有機EL装置の素子基板20Aは、基板本体20の略中央部分に位置し有機EL素子200がマトリクス状に配置された有効表示領域4と、有効表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(2つの一点鎖線の間の領域)とを備えている。
【0045】
更に、ダミー領域5の周囲には、前述の走査線駆動回路80や給電線103や陰極配線156などが配置されている。これらの各種配線は、フレキシブル基板40の配線42に接続され、フレキシブル基板40に備えられた駆動回路としての集積回路44に接続されている。その他、製造途中や出荷時に装置の品質や欠陥の検査を行うことが出来る検査回路などの付帯装置が必要に応じて付設されるが、図2では図示を省略している。
【0046】
有効表示領域4とダミー領域5との両方にまたがって、複数の有機EL素子200を含む第1領域120が複数配置されている。複数の第1領域120はそれぞれ同形状で帯状に延在しており、互いに並行に第1領域120の長軸方向と直行する配列軸に沿って配列している。第1領域120の中央部は有効表示領域4に、両端部はダミー領域5に配置されている。有機EL素子200は有効表示領域4に配置されている。第1領域120の構造については、後に図3を用いて詳述する。
【0047】
複数の第1領域120の配置された領域の周囲には、複数の第2領域130が配置されている。第1領域120の長軸方向の両端側および複数の第1領域120の配列方向の両端には、それぞれ第2領域130が配置されている。すべての第2領域130はダミー領域5に配置されている。これらの第2領域130についても後に図3を用いて詳述する。
【0048】
各々の第1領域120に含まれる有機EL素子200は、発光することで赤色(R)、緑色(G)または青色(B)のいずれかの光を取り出すことが可能となっている。これらの各色の光は、有機EL素子200が直接各色の光を射出してもよく、有機EL素子200が白色光を射出した後に、R、G、Bに対応するカラーフィルタを介することで各色の光に変調することとしてもよい。本実施形態の有機EL装置1は、ひとつの第1領域120では同一色の光を射出する構成となっている。そのため、有効表示領域4においては、第1領域120の形状に対応して図の縦方向に同一色で配列しており、いわゆるストライプ配置を構成している。また、有効表示領域4においては、有機EL素子200に対応するサブ画素としての有効画素Pがマトリクス状に配置している。有効表示領域4では、マトリクス状に配置された有効画素Pが射出するRGBの光を混色させてフルカラー表示を行うことが可能となっている。
【0049】
ここで、本発明において「駆動回路」とは、有機EL装置が一定の機能を奏するように駆動させる電気的な信号を供給・制御する半導体装置及び関連する配線等が集積され配線された回路の全般を指す。上述した中では、例えば集積回路44、走査線駆動回路80、データ線駆動回路90がこれに該当する。
【0050】
続いて、図3を用いて第1領域120と、第1領域120の両側に配置された第2領域130と、について説明する。図3は第1領域120と第2領域130とを示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)に示すA−Aにおける矢視断面図を示す。ここでは説明を容易にするために、1列分の第1領域120と第2領域130のみを示している。なお、図を見やすくするために、図3以降の各図では、図2で縦方向に延在するように示した第1領域120および第2領域130を横方向に延在するように図示し説明する。
【0051】
図3(a)に示すように、有機EL装置1が備える第1領域120には、複数の有効画素Pとダミー画素Dが配置されており、周囲を第1隔壁122で囲まれている。複数の有効画素P(図3では3つ)は、所定の配列軸に沿って連続して配置しており、ダミー画素Dは同じ配列軸に沿って複数の有効画素Pの配置された領域の両端側に配置されている。また、ダミー画素Dと有効画素Pとの間隔は、複数の有効画素P同士の間隔と同じ間隔で配置されている。
【0052】
各々の有効画素Pとダミー画素Dとの間は、有効画素Pとダミー画素Dの平面視形状に対応する開口部を備えた無機バンク149が形成されている。有効画素Pとダミー画素Dとは、平面視形状が同形状となっている。また、第1領域120の長軸方向の両端側には、第2隔壁132で囲まれた第2領域130が配置されている。第1領域120が含む有効画素Pは、素子基板20Aにおいて有効表示領域4に配置され、ダミー画素Dおよび第2領域130は、素子基板20Aのダミー領域5に配置されている。
【0053】
図3(b)に示すように、素子基板20Aは、基板本体20と、基板本体20上に形成され有機EL装置1を駆動させるための配線やスイッチング素子などを備える配線層250と、有効画素Pに対応して配線層250上の有効表示領域4に形成された画素電極141Aと、ダミー画素Dに対応して配線層250上のダミー領域5に形成された画素電極141Bと、有効画素Pとダミー画素Dとに対応して開口部が形成された無機バンク149と、無機バンク149上に形成された有機バンク150と、を備えている。配線層250は、配線層250が含む配線やスイッチング素子などに起因する表面凹凸形状を備えている。配線層250と画素電極141A,141Bと無機バンク149とは、これらの上部に形成される発光層140の形状に影響を与える下地となっている。以下の説明においては、各層の積層する方向を上、基板本体20の配置されている方向を下として各構成部材の上下関係を示す。
【0054】
また、有機バンク150に囲まれた領域には、無機バンク149を覆って機能性材料の薄膜としての正孔注入層140Aと機能性材料の薄膜としての有機発光層140Bとがこの順に積層された発光層140が形成されており、更にその上部には有機バンク150および有機発光層140Bを覆って全面に陰極としての共通電極154が形成されている。発光層140および共通電極154の上面は、無機バンク149や配線層250の構造に起因した凹凸形状を備えている。第1領域120の中央付近では無機バンク149が一定の周期で繰り返しているため、発光層140および共通電極154の上面は一定の周期で同じ形状が繰り返して形成されている。しかし、有機バンク150が付設された無機バンク149では、下地の凹凸形状の連続性が途切れるため、上層に形成されている発光層140および共通電極154の形状が第1領域120の中央付近とは異なっている。
【0055】
有効表示領域4に形成された画素電極141Aと発光層140と共通電極154とは有機EL素子200を構成し、有効画素Pとなっている。一方、ダミー領域5に形成された画素電極141Bは、電気的に非導通となるように形成されているため発光することは無い。そのため、ダミー領域5に形成された画素電極141Bと発光層140と共通電極154とはダミー画素Dとなっている。また、ここでは、第2領域130には有効画素Pおよびダミー画素Dのいずれも設けられていないが、第2領域130にもダミー画素Dを配置することとしても良い。
【0056】
図4は、有効画素Pおよびその周辺部の配線構造を示す平面図である。図4においては、図面を見やすくするために各配線と半導体膜とを図示し、その他の構成については省略している。
【0057】
図に示すように、有効画素Pの近傍には垂直方向に延在する走査線101Aと、水平方向に延在する配線としての給電線103と、同じく水平方向に延在し一部垂直方向枝分かれ部を有する信号線102と、が配置されている。更に、走査線101と信号線102と給電線103とに3方向を囲まれた領域には平面視矩形の画素電極141Aが配置されている。
【0058】
画素電極141Aと重ならない領域には、走査線101をゲート電極として用いるスイッチング用TFT142が配置されている。スイッチング用TFT142のソース電極には、前述の信号線102の枝分かれ部の端部が接続し、ドレイン電極には配線146を介して一端側が接続された配線143Aが接続している。帯状の配線143Aは一部矩形状に突出して幅広に形成されている部分を有し、この突出部と給電線103が平面的に重なっている箇所が保持容量145を形成している。これらの各TFTは前述の第1領域120と平面的にかさならない領域に形成することが好ましく、本実施形態ではこの構成を採用している。
【0059】
更に、配線143Aの他端側には、配線143Aをゲート電極として用いる駆動用TFT143が配置されている。駆動用TFT143のソース電極には給電線103が接続し、ドレイン電極には電極236を介して画素電極141Aが接続している。
【0060】
次いで、図5には有効画素Pおよびその周辺部の概略断面図を示す。図5(a)は図4のB−Bにおける矢視断面図であり、図5(b)は図4のC−Cにおける矢視断面図である。図5(a)と図5(b)とは、断面が互いに直交する位置関係になっている。
【0061】
基板本体20は、ボトムエミッション方式を採用すると透明基板を、トップエミッション方式を採用すると透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。透明基板としては、例えばガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、光透過性を備えるならば、前記材料を積層または混合して形成された複合材料を用いることもできる。本実施形態では、基板本体20の材料としてガラスを用いる。
【0062】
基板本体20の上には全面に配線層250が形成されている。次いで配線層250の構成を順に説明する。
【0063】
基板本体20の上には、図5(a)に示すように駆動用TFT143が形成されており、また図5(b)に示すようにスイッチング用TFT142が形成されている。更に、これらの各TFTの表面を覆って基板本体20の表面全面に、ゲート絶縁膜220が形成されている。
【0064】
ゲート絶縁膜220上には、図5(a)に示すように駆動用TFT143のゲート領域に重なって配線143Aが形成されており、また図5(b)に示すようにスイッチング用TFT142のゲート領域に重なって走査線101が形成されている。更に、走査線101と配線143Aとの表面を覆ってゲート絶縁膜220の表面全面に、第1層間絶縁膜230が形成されている。
【0065】
第1層間絶縁膜230の上には、信号線102と給電線103と配線146と電極236とが形成されている。更に、ゲート絶縁膜220および第1層間絶縁膜230には、これら各絶縁膜を貫通して連通し、スイッチング用TFT142と駆動用TFT143とに達する複数のコンタクトホール232,233,234,235が形成されている。これら複数のコンタクトホールに埋設される電極を介して給電線103は駆動用TFT143のソース領域と、電極236は同TFTのドレイン領域と接続している。また、信号線102はスイッチング用TFT142のソース領域と、配線146は同TFTのドレイン領域と接続している。これらの各配線および電極を覆って、第1層間絶縁膜230の上には第2層間絶縁膜240が形成されている。
【0066】
これら基板本体20上に構成されている第2層間絶縁膜240までの各層を、まとめて配線層250としている。配線層250が備える各配線や各TFTは公知の方法により形成することができる。各層間絶縁膜は、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物やシリコン酸窒化物などの絶縁材料で形成されている。
【0067】
第2層間絶縁膜240の上には画素電極141Aが形成されている。更に第2層間絶縁膜240にはコンタクトホール237が形成されており、この貫設されたコンタクトホール237に画素電極141Aの一部が埋設されている。そして画素電極141Aと電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141Aとが電気的に接続されている。画素電極141Aの形成材料には、仕事関数が5eV以上の材料を用いることができる。このような材料は、正孔注入効果が高いため画素電極141Aの形成材料として好ましい。このような材料としては、例えばITO(Indium Thin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物を挙げることができる。本実施形態ではITOを用いる。
【0068】
第2層間絶縁膜240および画素電極141Aの上には、画素電極141Aの周縁部に一部乗り上げるようにして無機絶縁材料からなる無機バンク149が形成されている。無機バンク149は、有効画素Pおよびダミー画素Dに対応する開口部を備えて形成される。そのため、画素電極141Aはこの開口部内において露出した状態となっている。無機バンク149はシリコン酸化物やシリコン窒化物やシリコン酸窒化物などの絶縁材料で形成されている。無機バンク149の高さは、例えば400nmに形成されている。
【0069】
無機バンク149上には、更に有機材料からなる有機バンク150が積層され、これら無機バンク149および有機バンク150によって、有機EL装置1における隔壁部材が形成されている。図5においては有機バンク150の側壁は第1隔壁122として機能し、無機バンク149および有機バンク150で囲まれる領域は第1領域120を形成する。有機バンク150の高さは、例えば1μm〜2μm程度に設定され形成されている。
【0070】
この有機バンク150は絶縁性の樹脂材料で形成されている。また、有機バンク150は、後述する機能性材料を溶解または分散させた液状体(機能液)またはこの溶媒に対して撥液性を示すものが好ましい。有機バンク150は、例えば光硬化性のアクリル樹脂や熱硬化性のエポキシ樹脂などが用いて形成した後に、表面をCF4プラズマ処理することで撥液処理してもよく、また樹脂そのものが撥液性を示す含フッ素樹脂を用いて形成しても良い。
【0071】
第1領域120には、電荷輸送層としての正孔注入層140Aが画素電極141Aと無機バンク149とを覆って形成されている。更に、正孔注入層140Aの上には有機発光層140Bが積層して形成され、正孔注入層140Aと有機発光層140Bとは発光層140を形成している。正孔注入層140Aおよび有機発光層140Bは通常知られた材料を使用することが可能である。
【0072】
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルフォン酸、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物(PEDOT/PSS)等の公知の材料を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
【0073】
発光層形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料である、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0074】
有機発光層140Bと有機バンク150とを覆って共通電極154が形成されている。共通電極154は、有機発光層140Bと有機バンク150の上面、更には有機バンク150の側面部を形成する壁面の一部を覆った状態で形成される。この共通電極154を形成するための材料としては、仕事関数が4eV以下の材料を用いることができる。このような材料は電子注入効果が大きいため、共通電極154の形成材料として好ましい。このような材料のなかでも、トップエミッション型の発光方式を採用する場合には、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。ボトムエミッション型の場合には、透明導電材料のほか、アルミニウム等の不透明若しくは光反射性を有する導電材料を用いることができる。
【0075】
共通電極154の上層側には、陰極保護層を形成してもよい。係る陰極保護層を設けることで、製造プロセス時に共通電極154が腐食されるのを防止する効果が得られる。陰極保護層は、無機化合物、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン窒酸化物等のシリコン化合物により形成できる。共通電極154を無機化合物からなる陰極保護層で覆うことにより、無機酸化物からなる共通電極154への酸素等の侵入を良好に防止することができる。なお、このような陰極保護層は、共通電極154の平面領域の外側の基板本体20上まで、10nmから300nm程度の厚みに形成される。以上のように、本実施形態の有機EL装置1にかかる有効画素Pが構成されている。
【0076】
ダミー画素Dは、上述の有効画素Pの構成とほぼ共通している。異なる点は、ダミー画素Dが備える画素電極141Bが、表示(発光)に寄与する駆動回路と電気的に非導通と成るように形成されていることである。このように形成されていることで、配線や電極に起因する凹凸形状を備えているが確実に非発光であるダミー画素Dとすることができる。
【0077】
電気的に非導通にするための構成としては、有効画素Pにおいては形成されていた各コンタクトホールのうちの少なくともいずれか1つを設けないこととすることが容易であり、また確実な形成方法である。本実施形態では、ダミー画素Dにかかる周辺構造で、コンタクトホール232,233,234,235に対応する貫通孔を設けないこととし、画素電極141Bと駆動回路とを絶縁している。
【0078】
(有機EL装置の製造方法)
続いて、図6から図9を用いて上述した有機EL装置1の製造方法について説明する。ここでは、発光層140を形成する工程を中心に説明する。本実施形態では、発光層140の形成において液滴吐出法を用い機能液を配置し、機能液に含まれる機能性材料を用いて発光層140を形成する。そのため、まず図6および図7を用いて液滴吐出法に用いる液滴吐出装置ついて説明した後、図8および図9で有機EL装置1の製造方法を説明する。
【0079】
図6は、液滴吐出装置の概略的な構成図である。本装置の説明においては、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、水平面の鉛直方向をZ軸方向とする。本実施形態の場合、後述する液滴吐出ヘッドの非走査方向をX軸方向、液滴吐出ヘッドの走査方向をY軸方向としている。なお、図に示す液滴吐出装置の構成は一例であり、これに限定されない。
【0080】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301から基板本体20に対して液滴を吐出するものであって、液滴吐出ヘッド301と、X方向駆動軸304と、Y方向ガイド軸305と、制御装置306と、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。
【0081】
液滴吐出装置300は、制御装置306から駆動信号を供給し不図示の駆動機構を駆動させる。すると基板本体20を支持するステージ307はX方向駆動軸304と、Y方向ガイド軸305に沿ってX方向またはY方向に移動する。液滴吐出ヘッド301は、相対移動する基板本体20に対して液状体の液滴を吐出し、所望の塗布を行う。本実施形態では、液状体は前記機能液である。ヒータ315は基板本体20上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行い、機能性材料の薄膜を成膜する。
【0082】
図7は、液滴吐出装置300が備える液滴吐出ヘッド301の断面図である。液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドである。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面に一方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体としての機能液Lが吐出される。本実施形態では、液状体は機能性材料を溶解または分散させた液状体(機能液)である。本実施形態で吐出する機能液の一滴の量は、例えば1ナノグラム〜300ナノグラムである。
【0083】
本実施形態で用いる液滴吐出ヘッド301は、電気機械変換式の吐出技術を採用したものを用いる。本方式では、液状体を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体を収容する材料タンクを含む液状体供給系323を介して液状体が供給される。ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室321が変形して内圧が高まり、ノズル325から液状体の機能液Lが吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御し、液状体の吐出量を制御する。
【0084】
なお、液滴吐出法の吐出技術としては、上記の電気機械変換式の他に、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などのものが挙げられ、これらのいずれの方式も好適に用いることができる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。加圧振動方式は、材料に例えば30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものである。電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料をノズルから吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてノズル先端から材料を引き出すものである。この他にも、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式のものがあり、いずれも適用可能である。
【0085】
次に、有機EL装置1の製造方法について図8および図9を参照しながら説明する。なお、以下に示す手順や材料の構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0086】
まず図8(a)に示すように、基板本体20上に配線やスイッチング素子等に起因する凹凸形状を備えた下地を形成する。公知の方法を用いて配線層250を形成した後に、配線層250の上に画素電極141A,141Bを形成する。更に、画素電極141A,141Bの周縁部と一部平面的に重なるように、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンク149を形成する。具体的には、画素電極141A,141B及び第2層間絶縁膜240を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141A,141Bの表面を部分的に開口させることで形成できる。無機バンク149の開口部は互いに一定間隔で形成する。
【0087】
次に、図8(b)に示すように、無機バンク149上に、含フッ素樹脂からなる有機バンク150を形成する。有機バンク150は画素電極141A,141Bの周囲を囲んで第1領域120を形成し、有機バンク150の第1領域120側の側壁は第1隔壁122として機能する。また、有機バンク150は第1領域120に重ならない領域を囲んで第2領域130を形成し、有機バンク150の第2領域130側の側壁は第2隔壁132として機能する。第1領域120と第2領域130とにはさまれた有機バンク150は、第1隔壁122と第2隔壁132との機能を兼ね備える。有機バンク150をポリイミドやアクリル樹脂などで形成した場合には、有機バンク150の形成後に前述の撥液処理を行うと良い。また撥液処理を行う場合には、撥液処理の前にO2プラズマ洗浄を行い、画素電極141A,141B上の洗浄と有機バンク150の親液処理を行うと良い。
【0088】
第2領域130は、機能液の受容部としての機能を備えていれば良いため、特に形状に限定は無い。ただし、第2領域130は表示に関与しないダミー領域5に設けられているため、第2領域130を広く形成すると製造する装置のダミー領域5が増え、結果、有効表示領域4の割合が減少する。そのため、第2領域130は、設計上好ましい形状・大きさにすると良い。また、本実施形態では第2領域130は第1領域120の両端側に1つずつ配置することとしているが、複数ずつ配置することとしても良い。
【0089】
次いで図8(c)に示すように、第1領域120および第2領域130へ液滴吐出ヘッド301から機能液L1を塗布する。機能液L1は、前述の正孔注入層形成材料を溶媒に溶解ないし分散させたものである。第1領域120へ塗布する機能液L1の量と、第2領域130へ塗布する機能液L1の量は、それぞれ独立に制御することができ、必要に応じて増減が可能である。第2領域130へは機能液L1の代わりに機能液L1の溶媒を塗布することとしても良い。本実施形態では第2領域130にも機能液L1を塗布する。
【0090】
機能液L1が液滴吐出ヘッド301より吐出されると、機能液L1は流動性によって水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで有機バンク150が形成されているので、機能液L1は有機バンク150を越えてその外側に広がらない。また、有機バンク150は機能液L1に対して撥液性を保っているため、有機バンク150の頂面に塗布された機能液L1は、第1領域120または第2領域130のいずれかに向かって流動し配置される。
【0091】
次いで図8(d)に示すように、第1領域120および第2領域130へ機能液L1を配置したら、加熱あるいは光照射により機能液L1の溶媒を蒸発させて画素電極141A,141B上に固形の正孔注入層140Aを形成する。または、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間で焼成するようにしてもよい。あるいは大気圧より低い圧力環境下(減圧環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。
【0092】
ここで、第1領域120内の有効画素Pとダミー画素Dとの形成領域では、画素電極の導通/非導通のみが異なり他は同じ構成であることから、表面の凹凸形状が同じになっている。また、有効画素Pとダミー画素Dとの形成領域は配置間隔が一定している。そのため、有効画素Pとダミー画素Dとの形成領域では、表面の凹凸形状に起因した機能液L1の溶媒の蒸発状態に差が無くなる。また、表面の凹凸形状が機能液L1をせき止めて流動を抑制するため、機能液L1の流動による膜厚の違いが生じなくなる。更に、第1領域120のみならず第2領域130においても溶媒の蒸発が進行するため、第1領域120の第1隔壁122近傍における蒸発溶媒濃度が他と比べて低くなることが無く、第1領域120全体で乾燥速度が均一になる。これらのことから、得られる正孔注入層140Aは、下地の表面凹凸形状に対応して同様の形状を備え、膜厚、膜質が均一なものとなる。
【0093】
このような思想により第2領域130を設けることから、第1領域120と第2領域130との離間距離は広すぎないほうが良い。例えば本実施形態では、図3(a)に示すように、有効画素間の距離の略2倍の距離を空けた設計としている。第1領域120と第2領域130との離間距離が広すぎると、第2領域130から蒸発する溶媒により第1隔壁122近傍の蒸発溶媒濃度を制御するという主旨から外れるためである。この離間距離は使用する溶媒の種類や製造時の乾燥条件、および形成のしやすさなどを考慮して設定することができる。
【0094】
続いて、図9(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301より、機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体としての機能液L2を第1領域120の正孔注入層140A上および第2領域130の正孔注入層140A上に塗布する。機能液L2は、有機発光層形成材料を溶媒に溶解ないし分散させたものである。また、機能液L1の塗布時と同様に、有機バンク150は撥液性の有機材料で形成されているため、有機バンク150に塗布された機能液L2は、第1領域120または第2領域130のいずれかに良好に配置される。
【0095】
前述の有機発光層形成材料については、極性溶媒に溶解ないし分散させて液状体(機能液)とし、この機能液を液滴吐出ヘッド301から吐出する。極性溶媒は、前記発光材料等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッドのノズル孔での機能液中の固形分が付着したり目詰りを起こしたりすることを防止することができる。
【0096】
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、2,3−ジヒドロベンゾフラン、等が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであっても良い。また、これらの溶媒にシクロヘキシルベンゼン等を適宜加えて粘度を調整しても構わない。
【0097】
有機発光層140Bが赤色、緑色、青色のそれぞれの光を射出する構成の場合には、有機発光層140Bの形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液、緑色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液、青色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液を、それぞれ対応する第1領域120に吐出することによって行う。また、有機発光層140Bが白色光を射出する構成を採用する場合には、例えば赤色、緑色、青色の3色の光を発光可能な有機発光層を同じ第1領域内に積層して形成し、同時に発光させて白色発光を取り出す3層構造とするといった構成を採用することも可能である。
【0098】
次いで図9(b)に示すように、機能液L2中の溶媒を蒸発させる。この工程により、正孔注入層140A上に固形の各色に対応する有機発光層140Bが形成され、これにより正孔注入層140Aと有機発光層140Bとからなる発光層140が得られる。
【0099】
この際、正孔注入層140Aの形成時と同様に、第2領域130にも機能液L2が塗布されているので、第1領域120の第1隔壁122近傍における蒸発溶媒濃度が他と比べて低くなることが無く、第1領域120全体で乾燥速度が均一になる。また、機能液L2が配置される正孔注入層140Aは、表面が良好に平坦化されて形成されているので、その上に形成される有機発光層140Bも良好な平坦性を持って形成される。したがって、均一かつ良好な発光特性、信頼性を備えた有機発光層140Bとなる。
【0100】
次いで、図9(c)に示すように、全ての第1領域120に有機発光層140Bを形成したら、有機発光層140Bおよび有機バンク150を覆って基板本体20の表面全体にITO等を用いて共通電極154を形成する。共通電極154はスパッタなどの物理的蒸着、CVDなどの化学的蒸着いずれの方法によっても形成可能である。必要に応じて、共通電極154の表面に共通電極154の破損を防ぐための保護膜を形成してもよい。以上のようにして、有機EL素子200を形成し有機EL装置1が完成する。
【0101】
以上のような有機EL装置1の製造方法によれば、第1領域120内において、有効画素Pと同じ構成・形状を備えるダミー画素Dを配置して有効画素Pの形成をすることとしている。このことにより、第1領域120内に配置された複数の有効画素P間では正孔注入層140Aや有機発光層140Bといった機能膜の膜厚ムラが生じることを抑制することができ、優れた画像表示が可能な有機EL装置1とすることができる。
【0102】
また、本実施形態では、第1領域120に配置された複数の有効画素Pおよびダミー画素Dは、互いに等間隔に形成されていることとしている。そのため、機能液を配置する表面の凹凸形状も形成される画素電極、スイッチング素子、配線などに起因して一定の規則性・連続性が生まれる。したがって、溶媒の蒸発や機能液の流動が略均一となり、形成される機能膜の膜厚ムラを抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態では、第1領域120の周囲に第2隔壁132で囲まれた第2領域130を配置し、第2領域130にも機能液を塗布することとしている。第2領域130に配置する機能液からも溶媒が蒸発するため、第1領域120内に配置するダミー画素Dを増やすことなく第1領域120近傍の溶媒蒸気濃度を高めることができる。したがって、より精緻に膜厚ムラを抑制することができる。また、第2領域130には第1領域120とおなじ機能液を配置することから、容易に第2領域130に機能液の配置を行い膜厚ムラの抑制を行うことができる。
【0104】
また、本実施形態では、液滴吐出法を用いて機能液の塗布を行うこととしている。そのため、量を高度に制御して機能液の配置を行うことができ、形成する機能膜を所望の膜厚に形成することが可能となる。
【0105】
また、以上のような構成の有機EL装置1によれば、ダミー画素Dは有効画素Pと同じく画素電極、スイッチング素子、配線を備えていることから、有効画素Pとダミー画素Dとは同じ構成・形状とすることができ、構造の差による有効画素Pとダミー画素Dとの形成ムラを無くすことができる。また、表示不良を起こしやすい隔壁周辺の領域に表示(発光)に寄与しないダミー画素Dを配置し、表示(発光)に関わらないダミー領域5とすることで、隔壁の有効画素Pへの影響を抑制する構造となっている。更に、ダミー画素Dは駆動回路と絶縁されているため、ダミー画素Dは確実に非発光となり、表示に影響を与えない。これらのことから、良好な表示が可能な有機EL装置1とすることができる。
【0106】
また、本発明においては、配線同士および配線とスイッチング素子とを接続するコンタクトホール232,233,234,235を形成しないで電気的に非導通状態となることとしている。この構成によれば、確実にダミー画素Dと駆動回路とを絶縁することができる。
【0107】
なお、本実施形態ではコンタクトホール232,233,234,235を形成しないこととしたが、コンタクトホール237を形成しないこととし、スイッチング素子と画素電極とを電気的に非導通とすることでダミー画素と駆動回路とを絶縁することもできる。
【0108】
なお、本実施形態では、ダミー画素Dの画素電極141Bが電気的に非導通とするために、画素電極141Bに接続される配線のコンタクトホールを形成しないこととしたが、ダミー画素Dにかかる配線を不連続に形成して絶縁することとしても構わない。更には、有効画素Pとダミー画素Dとを同様に形成し、回路処理によってダミー画素Dに信号を流さないこととすることも可能である。
【0109】
また、本実施形態では、第2領域130には第1領域120に塗布する機能液と同じ機能液を塗布することとしているが、機能液が含む溶媒のみを第2領域130を塗布し溶媒蒸気の濃度を制御することとしても良い。このようにすると、第2領域130には溶媒が蒸発した後に堆積するものがないため、複数回の薄膜形成を繰り返す場合であっても、第2領域130が埋没することがない。そのため、同じ第2領域130を用いて何度も溶媒蒸気濃度の制御を行うことができ、効率的に膜厚ムラを抑制することができる。溶媒の塗布を行う場合にも、液滴吐出法を用いると塗布量の制御が容易である。
【0110】
また、本実施形態では、液滴吐出法を用いて機能液を配置することとしたが、他にもスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、ディスペンサ法など、機能液を配置して機能膜を形成する湿式の塗布形成方法を用いることもできる。
【0111】
また、本実施形態では有機EL装置1として、有機EL素子を用いるフルカラー表示可能な画像表示装置を示したが、他の有機EL装置の製造にも用いることができる。例えば本発明の製造方法を用いて、画像形成装置である光プリンタの露光ヘッド用の光源を製造することができる。その場合には、有機EL素子は白色光を射出する構成とし、カラーフィルタは不要となる。このような光源を備えた露光ヘッドを用いると、高解像度の光プリンタを製造することが可能となる。
【0112】
[電子機器]
次に、図10を参照し本発明の有機EL装置を備えた電子機器の例について説明する。
【0113】
図10(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、携帯電話50は表示部51を備えている。表示部51には、本発明に係る有機EL装置を備えている。
【0114】
図10(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図10(b)において、情報処理装置60は、キーボードなどの入力部61、表示部62、筐体63を備えている。また表示部62には、本発明に係る有機EL装置を備えている。
【0115】
図10(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(c)において、時計70は表示部71を備えている。表示部71には、本発明に係る有機EL装置を備えている。
【0116】
図10(a)〜(c)に示す電子機器はいずれも、先述の実施形態に示した有機EL装置が備えられたものであるので、表示不良が少なく高品質であり且つ長寿命である電子機器とすることができる。
【0117】
なお、電子機器としては、前記電子機器に限られることなく、種々の電子機器に適用することができる。例えば、ディスクトップ型コンピュータ、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することができる。
【0118】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施形態に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る有機EL装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る有機EL装置の要部を拡大した概略図である。
【図4】本実施形態の有効画素周辺の配線構造を模式的に示す平面図である。
【図5】本実施形態の有効画素周辺の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】液滴吐出装置の概略的な構成図である。
【図7】液滴吐出装置に備わる液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の実施形態の有機EL装置を備える電子機器を示す図である。
【符号の説明】
【0120】
1…有機EL装置、4…有効表示領域、5…ダミー領域、20…基板としての基板本体、101…配線としての走査線、102…配線としての信号線、103…配線としての給電線、122…第1隔壁、132…第2隔壁、140A…機能性材料の薄膜又は電荷輸送層としての正孔注入層、140B…機能性材料の薄膜としての有機発光層、141A,141B…画素電極、142…スイッチング素子としてのスイッチング用TFT、143…スイッチング素子としての駆動用TFT、143A,146…配線、P…有効画素、D…ダミー画素、L,L1,L2…機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体としての機能液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域、第2領域および第3領域を区画する隔壁と、
前記第1領域に配置された第1有機膜と、
前記第2領域に配置された第2有機膜と、
前記第3領域に配置された第3有機膜と、
を備え、
前記第1領域内には、発光に寄与する画素であって、第1配列軸に沿って連続して配置された複数の有効画素を有し、
前記複数の有効画素の1つは、
有効画素電極と、
共通電極と、
前記画素電極と前記共通電極との間に配置された前記第1有機膜と、
を有しており、
前記第2領域および前記第3領域は、前記第1領域を挟んで対向して配置されており、かつ前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域は前記第1配列軸に沿って配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記第1領域には、発光に寄与しない画素であって、前記第1配列軸に沿って配置された第1ダミー画素と第2ダミー画素とをさらに有し、
前記複数の有効画素は前記第1ダミー画素と前記第2ダミー画素との間に配置されており、
前記第1ダミー画素は第4有機膜を有し、前記第2ダミー画素は第5有機膜を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記第1ダミー画素は、
第1ダミー画素電極と、
前記共通電極と、
をさらに有し、
前記第2ダミー画素は、
第2ダミー画素電極と、
前記共通電極と、
をさらに有し、
前記第4有機膜は前記第1ダミー画素と前記共通電極との間に配置され、
前記第5有機膜は前記第2ダミー画素と前記共通電極との間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記複数の有効画素は、前記第1ダミー画素の隣に配置された第1有効画素と、前記第1有効画素の隣に配置された第2有効画素と、前記第2ダミー画素の隣に配置された第3有効画素と、を有し、
前記第1ダミー画素と前記第1有効画素との間の距離、前記第1有効画素と前記第2有効画素との間の距離及び前記第2有効画素と前記第2ダミー画素との間の距離は互いに等しいことを特徴とする請求項2または3に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記第1有機膜、前記第2有機膜及び前記第3有機膜は同一の材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記第1有機膜、前記第2有機膜、前記第3有機膜、前記第4有機膜及及び前記第5有機膜は同一の材料で形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
第1領域において、第1配列軸に沿って、発光に寄与する画素の電極である複数の有効画素電極を基板上に形成する工程と、
前記基板上に、前記第1領域、第2領域及び第3領域を区画する隔壁を形成する工程と、
前記隔壁で囲まれた、
前記第1領域における前記基板上、
前記第2領域における前記基板上及び前記複数の有効画素電極上、
前記第3領域における前記基板上、
に機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液状体を配置し、前記溶媒を蒸発させて前記機能性材料からなる有機膜を形成する工程と、
前記複数の有効画素電極に対向して配置されるように前記有機膜上に共通電極を形成する工程と、
を含み、
前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域は前記第1配列軸に沿って配置されており、
前記第1領域は、前記第2領域と前記第3領域との間に配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1領域において、前記第1配列軸に沿って発光に寄与しない画素の電極である第1ダミー画素電極と第2ダミー画素電極とを基板上に形成する工程をさらに有し、
前記複数の有効画素電極は、前記第1ダミー画素電極と前記第2ダミー画素電極との間に配置されており、
前記有機膜を形成する工程においては、前記第1ダミー画素電極及び前記第2ダミー画素電極上にも前記液状体を配置し、前記第1ダミー画素電極及び前記第2ダミー画素電極上にも前記有機膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項9】
前記複数の有効画素は、前記第1ダミー画素の隣に配置された第1有効画素と、前記第1有効画素の隣に配置された第2有効画素と、前記第2ダミー画素の隣に配置された第3有効画素と、を有し、
前記第1ダミー画素と前記第1有効画素との間の距離、前記第1有効画素と前記第2有効画素との間の距離及び前記第2有効画素と前記第2ダミー画素との間の距離は互いに等しくなるように、前記第1ダミー画素電極、前記第2ダミー画素電極及び前記複数の有効画素電極は形成されていることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項10】
前記有機膜を形成する工程において、前記隔壁で区画された前記第2領域及び前記隔壁で区画された前記第3領域には、前記液状体に代えて前記溶媒を配置することを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−146885(P2009−146885A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286216(P2008−286216)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】