説明

有機エレクトロルミネッセントデバイス

本発明は、基板2と、少なくとも基板電極3、カウンタ電極5並びに該基板電極3及びカウンタ電極5の間に配置された少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層4を備えた、上記基板2上の少なくとも1つのエレクトロルミネッセント積層部と、上記カウンタ電極5を覆う短絡防止層6であって、該短絡防止層6により誘起される引張応力TSを伴う二重層DLを確立するような短絡防止層6と、該短絡防止層6を少なくとも部分的に覆う電気絶縁層8とを有する有機エレクトロルミネッセントデバイス1に関するものである。上記電気絶縁層8は上記エレクトロルミネッセント積層部内の欠陥7の近傍における有機層4を部分的に溶解するのに適したものであり、上記短絡防止層6により誘起される引張応力TSは電気絶縁層8の堆積後に欠陥7に隣接する二重層DLを巻き上げる(10)のに適したものである。本発明は、更に、斯かるOLEDデバイス1を製造する方法及び斯かるOLEDデバイス1における短絡を防止するために短絡防止層6を使用する方法にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡を防止するように構成された有機エレクトロルミネッセント(有機電場発光)デバイス(OLEDデバイス)の分野、このようなOLEDを製造する方法及びこのようなOLEDデバイスにおいて短絡を防止するためのカウンタ電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機エレクトロルミネッセント(OLED)デバイスは、通常、光が放出されるガラス又はポリマ箔等の透明基板上に電極及び所要の薄い有機エレクトロルミネッセント層(又は複数の有機エレクトロルミネッセント層)を堆積することにより製造される。斯かる2つの電極の間に約2ボルトと10ボルトとの間の電圧が印加されると、上記エレクトロルミネッセント層又は積層部が光を放出する。このようなOLEDデバイスにおいて、基板上に堆積される電極(通常、基板電極と称され、通常、アノードを形成する)は、導電性であるが光学的に透明な酸化物、典型的にはインジウム錫酸化物(ITO)、の薄層として堆積することができる。該基板電極に対向する電極(通常、カウンタ電極と称され、通常、カソードを形成する)は、一般的に、上記エレクトロルミネッセント層(又は複数のエレクトロルミネッセント層)の堆積の後にアルミニウム又は銀の層を約100nmの厚さで蒸着することにより形成される。
【0003】
OLEDデバイスの主たる利点は、大きな面積を覆う薄い光源を製造することができるという可能性である。製造工程の間において例えば塵等の粒子の存在が不可避的であるのは、正に、数平方センチメートル以上を覆う大面積LED層の場合である。基板上に存在する、例えばエレクトロルミネッセント積層部の厚さより大幅に大きな直径の塵粒子等の粒子は、隣接するエレクトロルミネッセント積層部内に不確定な性質のエッジを伴う欠陥、例えば孔を生じさせる。このような孔内には、層化された構造は存在しないか、又はその一部のみが存在する。これらの欠陥は、結果として、上記基板電極とカウンタ電極との間に許容することができない漏れ電流及び短絡回路を生じさせる。この場合、斯かる短絡回路は、通常、OLEDデバイスの稼働の過程において、光収率の減退により、同量の光が発生されるのを可能にすべく動作電圧が上昇されねばならなくなるまで発生しない。発光層への酸素又は水の侵入による輝度のゆっくりとした劣化とは対照的に、欠陥の領域における短絡の結果としてのOLEDデバイスの故障は、輝度のゼロへの突然の低下として明らかとなる。孔状欠陥の領域における短絡回路がOLEDデバイスの故障の最も普通の原因となるのは、正に、大面積OLEDデバイスの場合である。
【0004】
国際特許出願公開第WO2007/099476号公報は、電気的遮蔽層(電気絶縁層)がカウンタ電極としてのアルミニウムカソード上に堆積されて、該アルミニウムカソード下のエレクトロルミネッセント積層部の有機層と反応するようにしたエレクトロルミネッセント装置を開示しており、上記アルミニウムの層が孔状の欠陥を有する。上記絶縁層の物質は上記アルミニウムカソードの下の有機層を、当該孔状欠陥の周囲の限られた領域において溶解する。結果として、基板電極(アノード)とアルミニウムカソードとの間の距離が増加し、かくして、アノードとカソードとの間の電界強度が減少する。エレクトロルミネッセント積層部における欠陥の周囲の減少された電界強度は、このような孔状欠陥に起因する短絡の危険性を低下させる。しかしながら、孔状欠陥の周囲に残存するアルミニウムカソード層は、依然として該孔状欠陥の周囲に残存する有機層のエッジを越えて延在し、依然として不確定な性質の鋭いエッジを有する。上記絶縁層が上記アルミニウムカソードの下の空洞を完全に満たさず、カソードをアノードから完全に隔離しない場合、依然として短絡の危険性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、短絡回路を一層効果的に防止するように構成された有機エレクトロルミネッセントデバイスを提供することである。本発明の他の目的は、このような有機エレクトロルミネッセントデバイスの製造のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目標は、基板と、少なくとも基板電極、カウンタ電極並びに上記基板電極及びカウンタ電極の間に配置される少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層を備えた、上記基板上の少なくとも1つのエレクトロルミネッセント積層部と、上記カウンタ電極を覆う短絡防止層であって、該短絡防止層により誘起される引張応力を伴う二重層を確立する短絡防止層と、該短絡防止層を少なくとも部分的に覆う電気的遮蔽層(電気絶縁層)とを有する有機エレクトロルミネッセントデバイスであって、上記電気絶縁層は上記エレクトロルミネッセント積層部内の欠陥の近傍における上記有機層を部分的に溶解するのに適しており、上記短絡防止層により誘起される引張応力は上記絶縁層の堆積の後に上記欠陥に隣接する上記二重層を巻き上げるのに適しているような有機エレクトロルミネッセントデバイスにより達成される。
【0007】
引張応力を有するカウンタ電極は、当該エレクトロルミネッセント層における欠陥(層欠陥とも称する)の周辺においてカウンタ電極のエッジと基板電極のエッジとの間の距離を増加させるが、斯かる欠陥は、例えば、上記基板電極上に存在する塵粒子により生じられる孔状欠陥であって、層の堆積の間において影効果により斯かる塵粒子の近傍において材料が堆積されるのを妨げる。しかしながら、カウンタ電極と基板電極との間の短絡を開始させるのに要する電界強度を増加させる斯様な層欠陥に隣接するカウンタ電極の、幾らか上方に湾曲された形状は、短絡の危険性を低下させるのに適している。短絡の危険性を完全に防止するためには、カウンタ電極のエッジは、欠陥の近傍から取り除かれねばならない。カウンタ電極上に設けられる短絡防止層は、カウンタ電極と短絡防止層との層系に対して引張応力を生じさせる。このことは、カウンタ電極と該カウンタ電極に接着する上記短絡防止層との二重層の引張応力が、層欠陥の周辺における有機エレクトロルミネッセント積層部への当該カウンタ電極の弱められた接着の結果として該二重層を該層欠陥の周辺で巻き上げるのに適したものとなるような調整を可能にする。ここで、上記の"巻き上げる"なる用語は、紙ロール上の紙と類似した、当該二重層のまるまり又はカール巻きを示す。二重層の該巻き上げは、当該欠陥に隣接するカウンタ電極の欠如により、カウンタ電極と基板電極との間の短絡を防止する。妨害されていない有機エレクトロルミネッセント層(又は複数のエレクトロルミネッセント層)上には、所望のように、平らなカウンタ電極が依然として存在する。上記"二重層"なる用語は、2つの必須の構成要素(カウンタ電極及び短絡防止層)が存在する積層体を指すものである。該"二重層"なる用語は、カウンタ電極と短絡防止層との間における追加の層の可能性を明示的に含むものである。ここで、カウンタ電極とは、当該有機エレクトロルミネッセントデバイスに電圧を印加するための機能的部品であると理解されるべきである。該カウンタ電極は、アノードとして作用することが可能であるように特定の導電度を確立するために必要とされる層又は1以上の層の積層体であり得る。上記短絡防止層とは、当該短絡防止層が被着する上記カウンタ電極に対して或る引張応力を生じさせる機能的構成要素と理解されるべきである。該短絡防止層は、或る引張応力を生じさせるために必要とされる層又は1以上の層の積層体であり得る。
【0008】
上記短絡防止層は真空蒸着により堆積され、カウンタ電極と短絡防止層との二重層に引張応力を誘起させる。該引張応力は、堆積の後に常温において存在し、如何なる更なる熱処理もなしに、上記欠陥の近傍において二重層の所望の巻き上げ挙動を達成する。該巻き上げ挙動は、当該OLEDデバイスの最初の運転の始動(初期起動と称す)より前に短絡を防止するであろう。従って、当該有機エレクトロルミネッセントデバイスを最初に動作させる前に短絡は防止され、層欠陥による漏れ電流を防止し、次いで、これら漏れ電流に起因する如何なる経年効果も防止する。
【0009】
通常、層内の応力は、その上に自身が堆積される非常に薄い基板の曲げとして最も顕著に現れる。堆積された層の現存応力の指示子としての、斯様な薄い基板の曲げを測定するために、多数の異なる方法が使用されている。最も一般的な構成は、その上に当該箔が堆積されるガラスの薄い条片(カンチレバを形成するように一端で固定される)を使用するものである。次いで、上記条片が曲げられると、上記自由端の偏位が、例えば、顕微鏡による上記自由端の直接的な光学的観測により、上記可撓性条片と該条片に対して接近し且つ平行に保持された固定導電プレートとの間に形成される電気容量の計測により、又は上記自由端に接触する針式ピックアップを用いた当該偏位の電気機械的測定により測定される。一例として、蒸着されたアルミニウム層(例えば、カウンタ電極としての)は、10nmより薄い層厚において高い引張応力を示す。このような薄い層厚のAl層は、電極として適用されるような十分な導電度は有さない。通常、20nm厚以上のAl電極は、殆ど応力を示さないか又は弱い広範囲の応力を示す。カウンタ電極を巻き上げるのに適した所要の引張応力は、該カウンタ電極上に設けられると共に該カウンタ電極に十分に接着する追加の層により誘起されねばならない。
【0010】
一実施例において、上記短絡防止層は、真空蒸着により前記有機エレクトロルミネッセント層(又は複数のエレクトロルミネッセント層)上に堆積された後に所望の巻き上げ挙動を示すために適した引張応力を有する、マンガン、銅、フッ化マグネシウム若しくは銀、又はこれら物質の合金若しくはこれらの組み合わせからなる群のうちの少なくとも1つの物質から形成される。
【0011】
当該有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLEDデバイス)は、当業者により既知の如何なるOLEDデバイスとすることもできる。他の実施例において、本発明のOLEDデバイスは、光源若しくはランプとして使用されるか又は光源若しくはランプに含まれ、又はモニタ、スイッチ若しくはディスプレイに含まれる。このように、本発明のELデバイスを有する光源、ランプ、モニタ、スイッチ及びディスプレイも、本発明に含まれる。以下では、OLEDデバイスの基本的構造が例示的に説明される。
【0012】
前記基板は、好ましくは透明であり、当業者により既知の如何なる好適な材料を有することもできる。本発明において、"透明"なる用語は、例えば前記基板又は電極等の所与の材料中の、可視領域内での50%以上の光の透過を指す。このように、残りの光は反射され及び/又は吸収される。"透明"とは、可視領域内での10%以上で50%未満の光の透過を示す材料を指す"半透明"を含む。このように、"透明"材料を参照する場合には、これは、そうでないと言わない限り、"半透明"材料をも明示的に開示するものである。好ましくは、可視領域の光は、450nm以上で700nm以下の波長を有する。このように、例えば、透明な基板又は電極は、入射光の50%未満を吸収及び/又は反射する。
【0013】
本発明の好ましい実施例において、前記基板はガラス、プラスチック又はセラミックから形成される。該基板の更に好ましい材料は、ポリマのシート又は箔、より好ましくは当該OLEDデバイスに水分及び/又は酸素が侵入するのを実質的に防止するための適切な水分及び酸素障壁を備えたポリマシート又は箔を含む。該基板は、更に、例えば光の導出の向上等の光学的目的の追加の層を有することもできる。
【0014】
上記基板は、如何なる好適な幾何学構造又は形状を有することもできるが、好ましくは平坦とし、可撓性材料が使用される場合は、必要とされる如何なる三次元形状にも整形又は折曲することができる。
【0015】
前記基板電極は、当業者により既知の如何なる好適な材料から形成することもできる。好ましい実施例において、該基板電極は透明電極である。本発明の他の好ましい実施例において、該基板電極は透明な導電酸化物(TCO)、より好ましくはインジウム錫酸化物(ITO)、ZnO又はドーピングされたZnOを有する。オプションとして、該基板電極は、前記基板から当該電極への可動原子又はイオンの拡散を有利に抑圧するためにSiO及び/又はSiOにより下塗りされる。TCOを有する電極は、好ましくは、60%以上で100%以下の、より好ましくは70%以上で90%以下の、最も好ましくは約80%の透明度を有する。
【0016】
本発明の前後関係において、カウンタ電極なる概念は、前記基板から離れた電極を示す。斯かるカウンタ電極は、通常、不透明であり、該電極が反射性となるように十分な厚さのAl又はAg層から形成される(典型的には、Alの場合は100nm、Agの場合は100〜200nm)。該カウンタ電極は、通常はカソードであるが、アノードとしてバイアスされることもあり得る。上面発光型又は透明型エレクトロルミネッセントデバイスの場合、カウンタ電極は透明でなければならない。透明なカウンタ電極は、他の先に堆積された層上に堆積された薄いAg若しくはAl層(5〜15nm)から又はITO層から形成される。好ましい実施例において、カウンタ電極の厚さは、前記短絡防止層により巻き上げられ得るように、140nm未満、好ましくは10nmと100nmとの間、より好ましくは20nmと80nmとの間、更に一層好ましくは30nmと50nmとの間とする。
【0017】
上記各電極(カウンタ及び基板)は、電気導体を介して電圧/電流源に接続することができる。
【0018】
前記エレクトロルミネッセント積層部は、有機エレクトロルミネッセント積層部と称される複数の有機エレクトロルミネッセント層又は1つの有機エレクトロルミネッセント層を有することができる。しかしながら、種々の他の基本構造のOLEDデバイスが当業者により既知であり、これら全てが本発明に含まれるものである。本発明の前後関係において、エレクトロルミネッセント積層部なる概念は前記基板電極と前記カウンタ電極との間に設けられる全ての層も示すものである。EL積層部の一実施例において、該積層部は基板及びカウンタ電極の間に設けられた少なくとも1つの発光する有機エレクトロルミネッセント層を有する。他の実施例において、これら積層部は基板及びカウンタ電極の間に設けられた幾つかの層を有することができる。これらの幾つかの層は、1以上の正孔輸送層、電子阻止層、電子輸送層、正孔阻止層、エミッタ層等の有機層又は有機及び無機層の組み合わせであり得る。上記無機層は、当該積層部内に2以上の発光層がある場合は追加の電極及び/又は電荷注入層であり得る。前記有機エレクトロルミネッセント層又は2以上の有機層の場合における有機エレクトロルミネッセント積層部は、当業者により既知の及び/又はOLEDデバイスに適した如何なる層又は積層体とすることもできる。上述したように、エレクトロルミネッセント積層部は、EL分子を含む少なくとも1つのELエミッタ層を有する。単一のELエミッタ層は、好ましくは、約10nmの厚さを有する。
【0019】
好ましい有機エレクトロルミネッセント積層部は2以上の発光層を含み、各発光層は少なくとも1つのタイプのエレクトロルミネッセント分子を有する。好ましくは、上記各発光層は異なる色の光を放出する。この構成は、色調整可能なOLEDデバイスが必要とされる場合に特に有利である。本発明の他の実施例において、当該有機エレクトロルミネッセント積層部は異なる発光色を持つ少なくとも2つの発光層を有する。このことは、本発明のOLEDデバイスが電圧/電流の供給により光を放出するように誘起された場合に、上記少なくとも2つの発光層の各々が異なる波長で光を放出するであろうことを意味する。異なる発光色は、通常、EL発光層により含まれる異なるEL分子の使用により達成される。各EL発光層は、単一の又は2以上のタイプのEL分子を有することができる。より好ましい実施例において、当該EL積層部は、赤色、緑色及び青色光を各々放出する3つのEL発光層を有する。
【0020】
例示としての基本的OLEDデバイスは、通常はガラス又は可撓性ポリエチレンテレフタレート(PET)箔等の基板上に配設されたアノードとしての基板電極を有する。該透明な基板電極上には、少なくとも1つのタイプのエレクトロルミネッセント(EL)分子を含む少なくとも1つのエミッタ層を有する有機層(又は複数の有機層)が配設される。通常はカソードである前記カウンタ電極は、該有機積層部上に配設される。当業者であれば、このようなOLEDデバイスの製造のために種々の他の層が組み込まれ得るという事実に気付くであろう。これらの層は、例えば、前記アノードと接触し得る正孔輸送層、前記カソードと接触し得る電子輸送層、前記アノードと正孔輸送層との間に配設される、好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチロールスルホン酸塩(PEDOT/PSS)から形成される正孔注入層、及び/又は前記電子輸送層とカソードとの間に配設される、好ましくはリチウムフッ化物又はセシウムフッ化物から形成される非常に薄い層である電子注入層である。更に、当業者によれば、OLEDデバイスは2以上のエミッタ層が存在するような有機積層部を有することができことが知られている。
【0021】
一実施例において、前記有機発光層(又は複数の有機発光層)は、光を放出するためにポリマ(PLED)又は小分子(SMOLED)等の有機発光分子を有する。他の好ましい実施例において、当該OLEDデバイスは、蛍光(phosphorescent)有機発光ダイオード(PHOLED)デバイスである。本発明は、OLEDデバイスにおいてエレクトロルミネッセント分子として使用するのに適している限り、特定の有機分子に限定されるものではない。当業者によれば種々の有機発光分子が知られており、これらの全ては本発明に含まれるものである。本発明において使用される場合、"発光分子"とは、好ましくは"有機エレクトロルミネッセント分子"を意味する。好ましい実施例において、PLEDの前記ポリマは、ポリ(pフェニレンビニル)(PPV)の誘導体等の共役ポリマであり、SMOLEDの前記小分子は、例えばAlq3等の有機金属キレート及び/又は共役デンドリマである。
【0022】
本発明によるエレクトロルミネッセントデバイスは、前記エレクトロルミネッセント積層部をカプセル封入するためのカプセル封入手段を有する。該カプセル封入手段は、当該エレクトロルミネッセントデバイスの積層部全体をカプセル封入することもできるか、又は積層部全体の一部を形成する複数の層のみをカプセル封入することができる。好ましくは、該カプセル封入手段は、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセント層及びカウンタ電極を覆う気密エレメントである。気密カプセル封入手段を使用することにより、水分又は酸素等の環境要因が、カプセル封入された層を損なうことが防止される。該カプセル封入手段は気密性蓋体を形成することができる。この蓋体は、ガラス又は金属から形成することができる。該カプセル封入手段を、当該エレクトロルミネッセントデバイス又は該エレクトロルミネッセントデバイスの部分のみに被着された1つの又は複数の層により形成することも可能である。これら層は、シリコン、シリコン酸化物、窒化シリコン、アルミニウム酸化物又は酸窒化シリコンを有することができる。全ての列挙されたカプセル封入手段は、機械的及び/又は環境的要因が当該エレクトロルミネッセントデバイスの積層部に悪影響を与えるのを防止する。一例として、該カプセル封入手段は、金属、ガラス、セラミック又はこれらの組み合わせから形成することができる。該カプセル封入手段は、前記基板に、導通性又は非導通性接着剤、溶融ガラスフリット又は金属半田により取り付けられる。従って、該カプセル封入手段は、当該エレクトロルミネッセントデバイスに対して機械的安定性も付与することができる。
【0023】
他の実施例において、前記短絡防止層は、前記絶縁層の堆積後に前記欠陥に隣接するカウンタ電極を巻き上げるために適した応力を形成するように適合された層厚、好ましくは20nmより厚い層厚、より好ましくは40nmより厚い層厚、更に一層好ましくは60nmより厚い層厚を有する。該厚さは、阻害されていない領域(層欠陥が存在しない領域)において当該引張応力が前記二重層の巻き上げを開始させるような厚さを越えるべきではない。該厚さは、層欠陥が存在しない場合には前記二重層が下側の有機層に接着し、下側の有機層への該接着が前記絶縁層により弱められる層欠陥の近傍において上記二重層が巻き上げ挙動を示すような所望の値への当該引張応力の調整を可能にする1つのパラメータである。当業者であれば、被着される短絡防止層の層厚を、本発明の範囲内で該短絡防止層の下の前記積層部(材料及び/又は層厚及び/又は形成条件)に依存して所要の厚さに調整することができる。
【0024】
前記電気絶縁層は、上記短絡防止層上に該短絡防止層を少なくとも部分的に覆うように堆積される。該電気絶縁層の材料は、カウンタ電極と基板電極との間の有機積層部の電気抵抗と少なくとも同程度に高い電気抵抗を有し、かくして該絶縁層を介して上記電極間に漏れ電流が流れないようにする。前記少なくとも部分的に堆積される絶縁層の厚さは、層に依然として粘着しているかもしれない如何なる塵粒子にも拘わらず当該欠陥の全領域を充填することができるように、当該エレクトロルミネッセント積層部よりも厚く、例えば少なくとも1マイクロメートルに、好ましくは少なくとも1.5マイクロメートルに、より好ましくは少なくとも2マイクロメートルに、更に一層好ましくは5マイクロメートルより厚くしなければならない。より大きな層厚(例えば、10マイクロメートルより厚い)は、例えばOLEDデバイスに10000時間を超える寿命を付与すべく環境ガスに対して該OLEDデバイスを保護するために該OLEDデバイスをカプセル封入するカバー蓋体によるような、機械的接触に対する当該エレクトロルミネッセント積層部の強靱さも向上させる。当該有機エレクトロルミネッセントデバイスの約2以上のファクタの放出光の大幅な減少は寿命の終わりと理解されるべきである。
【0025】
好ましい実施例において、前記電気絶縁層はポリマ層、好ましくは溶媒又は反応性成分を有するポリマ層である。このようなポリマ層は、前記有機エレクトロルミネッセント積層部の最も上の有機層に対する前記カウンタ電極の接着を、該有機層を局部的に破壊することにより弱める。塗布の後、これらのポリマは固化又は硬化されねばならず、これは、上記溶媒の蒸発により又は上記成分の反応により達成することができる。該固化処理は、熱により又はUV光の供給により開始又は加速することができる。
【0026】
更に、本発明は上記本発明による有機エレクトロルミネッセントデバイスを製造する方法にも関するもので、該方法は、前記カウンタ電極上に短絡防止層を堆積するステップであって、該短絡防止層が前記エレクトロルミネッセント積層部内の欠陥に隣接して上記カウンタ電極と該短絡防止層との二重層を巻き上げるのに適した引張応力を有するようなステップと、上記短絡防止層上に該短絡防止層を少なくとも部分的に覆う電気絶縁層を堆積するステップと、欠陥の近傍において前記基板電極と前記カウンタ電極との間に配設された前記少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層を、先に堆積された前記電気絶縁層により溶解するステップと、上記二重層内に存在する引張応力により誘起されて、前記欠陥に隣接する前記カウンタ電極と短絡防止層との二重層を巻き上げるステップと、上記電気絶縁層を固化又は硬化するステップとを有する。硬化する上記最後のステップは、上記エレクトロルミネッセント積層部の如何なる損傷も、硬質被覆層としての該電気絶縁層により防止することができる。
【0027】
前記エレクトロルミネッセント積層部の各層の堆積は、如何なる好適な手段により実行することもできる。当業者により広く知られた一群の好ましい堆積技術は、蒸着技術である。このような技術は、低圧CVD(LPCVD)等の化学蒸着法(CVD)又はスパッタリング若しくは電子ビーム蒸着等の物理蒸着法(PVD)を含む。好ましい実施例において、前記短絡防止層は真空蒸着法により堆積され、該真空蒸着法は、前もって他の層により覆われた基板上に堆積される場合、容易に再現性のある応力条件で層を形成する。上記短絡防止層は、典型的には、直接的に又は間接的に加熱されたルツボを用いて、常温に保たれた基板上に堆積される。銅及びマンガンの場合の堆積速度は、毎秒0.1nmと1nmとの間の範囲である。上記電気絶縁層は、環境条件(例えば周囲圧力)の下で、常温で堆積される。該堆積は、乾燥雰囲気、好ましくは乾燥窒素雰囲気内で実行することができる。全エレクトロルミネッセント積層部を堆積した後に上記絶縁層を被着させる可能性は、処理工程費用を低下させ、液体の形での絶縁層の塗布も可能である。該電気絶縁層は、好ましくは、前記カウンタ電極及び短絡防止層を完全に覆うようにする。好ましい実施例において、該電気絶縁層は、スプレイコーティングにより、又は印刷により、好ましくはスクリーン若しくはタンポン印刷により堆積される。スプレイコーティングの利点は、速く、簡単で且つ安価な技術を適用するということである。また、堆積速度も高く、マイクロメートルの範囲の厚さで層を堆積することを可能にする。電気絶縁層の材料は、ポリマ、好ましくは当該絶縁層を固化するために熱的及び/又は紫外線硬化に適した反応性成分(例えば、2液混合物)又は溶媒を有するポリマとすることができる。2液混合物は、この場合、硬化剤及びバインダを有する。その利点は、当該絶縁層が更なる工程ステップなしで自身で固化するという事実に存する。このようなポリマは、前記有機エレクトロルミネッセント積層部の最上有機層に対するカウンタ電極の接着を、斯かる有機層を局部的に溶解することにより弱める。
【0028】
他の実施例において、本方法は、堆積後に前記電気絶縁層を、好ましくは該堆積された電気絶縁層を紫外光及び/又は上昇された温度に曝すことにより硬化するステップを更に有する。該硬化するステップは、前記エレクトロルミネッセント積層部上の該電気絶縁層を固化させる。熱硬化法の結果、当該層の前記溶媒の蒸発又は前記成分の反応が生じる。
【0029】
更に、本発明は、前記本発明による有機エレクトロルミネッセントデバイスにおける、好ましくは銅又はマンガンから形成される短絡防止層の使用に関するもので、上記短絡防止層は、基板電極とカウンタ電極との間に配設された少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層を欠陥の近傍において部分的に溶解した後に上記層欠陥の周辺においてカウンタ電極と該短絡防止層との二重層を巻き上げるのに適した引張応力を有し、これにより当該有機エレクトロルミネッセントデバイスの初期始動の前に上記カウンタ電極と基板電極との間の短絡を防止する。短絡を防止するための上記短絡防止層の使用法は、如何なる種類のOLEDデバイスに対しても容易に適用可能であり、他の解決策と比較して有利である。また、短絡は当該有機エレクトロルミネッセントデバイスを動作させる前に防止され、層欠陥による如何なる漏れ電流も防止し、後に、これら漏れ電流により生じる如何なる経年効果も防止する。
【0030】
本発明による方法の好ましい実施例は、当業者によれば、上述したOLEDデバイスに関する記載を精読すれば容易に明らかとなるであろう。しかしながら、以下においては、好ましい実施例の幾つかが明示的に開示される。
【0031】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施例から明らかとなり、斯かる実施例を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明によるOLEDデバイスの、電気絶縁層を堆積する前の概略断面図である。
【図2】図2は、電気絶縁層及び欠陥の近傍に巻き上げられた二重層を有する本発明によるOLEDデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、平らなガラス基板2を有する本発明によるOLEDデバイス1の概略断面図であり、上記ガラス基板上には基板電極3としての120nmの層厚の透明ITOアノードがスパッタリング又はCVDにより堆積されている。基板電極3上には、光を放出するための有機エレクトロルミネッセント積層部4が堆積され、該積層部は、4%のF4-TCNQでドーピングされたNHT-5α-NPDの25nm厚の正孔注入層と、α-NPDの10nm厚の正孔輸送層と、発光小分子が埋め込まれた母材の30nm厚の有機発光層と、TPBIの50nm厚の電子輸送層とを有する。当業者であれば、本発明の範囲内で、追加の層を備える又は少ない数の層を備える又は単一の有機発光層を備える他の有機エレクトロルミネッセント積層部を選択することもできる。有機エレクトロルミネッセント積層部4上には、厚さ100nmのアルミニウムから形成されたカウンタ電極5が蒸着される。該カウンタ電極5上には、銅からなる短絡防止層6が100nmなる層厚で設けられる。短絡防止層6及びカウンタ電極5は、短絡防止層6の形成条件(ここでは、真空蒸着)及び選択された層厚(ここでは、100nm)により誘起される引張応力TSを伴うような接着性二重層DLを形成する。引張応力TSは、欠陥7から離れる方向に向く点線矢印により示されている。該引張応力は、カウンタ電極5の、下側の層(ここでは、有機エレクトロルミネッセント積層部4)に対する接着が弱い場合に上記二重層DLを巻き上げるであろう。如何なる欠陥7によっても阻害されていない領域における二重層DLの巻き上げを回避するために、短絡防止層6の引張応力は、カウンタ電極5上への短絡防止層6の堆積の後において二重層DLを巻き上げるには不十分であるように調整される。
【0034】
図1に示された層構造は、層欠陥7(例えば基板電極3に付着する塵粒子)により阻害される。このような塵粒子7は、数ミクロンの直径を有し得る。現状技術によれば、上記有機層及びカウンタ電極のための好ましい堆積技術は真空蒸着法である。真空蒸着法は、堆積されるべき材料が蒸発源から基板への直線経路を辿り、方向性の堆積となるような堆積技術である。基板電極3上に存在する塵粒子7は鋭いエッジ又はオーバーハング状態の(張り出した)エッジを有するので、これらエッジは下側の、該塵粒子7の直近における材料の堆積を妨げるであろう。このような効果は影効果として知られており、有機層4及びカウンタ電極5に孔を生じさせる。図1に示されるように、上記塵粒子は、該塵粒子が基板電極3に付着した後に堆積される層により上側が覆われる。
【0035】
短絡防止層6上に電気絶縁層等の如何なる追加の層もない場合、欠陥7の周囲における上記各層のエッジにおいて短絡9の危険性が生じる。カソード層5と基板電極層3との間には、当該有機エレクトロルミネッセントデバイスの動作の間において2〜10Vが印加される。このような電圧は、前記エレクトロルミネッセント積層部の厚さ及び印加される電圧に依存して、上記有機層に20〜100kV/mmの電界を生じさせる。これらの有機層は、非常に高い抵抗率を持つ半導体と見なすことができる。そして、前記塵粒子7の周囲には、危機的な領域が存在する。何故なら、有機層4及びカウンタ電極5は孔を有し、従って導電性基板電極3の表面は当該層及び欠陥の周囲において環境ガスに曝されることになり、これは当該有機層よりも大幅に低い誘電率を有するので、これら有機層に対するよりも大幅に低い降伏電界となり、動作の間においてカウンタ電極5と基板電極3との間に短絡9を生じさせるからである。このような短絡9は、当該OLEDを破壊するであろう。
【0036】
何らかの追加の対策なしでは、孔状欠陥のエッジにおけるカソード層の小さな曲率半径が、前記層のエッジに電界を劇的に集中させ、短絡9に到る。
【0037】
図2は、本発明によるエレクトロルミネッセントデバイスを示し、該デバイスにおいて短絡防止層6及びカウンタ電極5は、これら短絡防止層6及びカウンタ電極5の二重層DLの上に堆積された電気絶縁層8により覆われている。上記電気絶縁層8の粘性は、当該積層部上に堆積される際には低いので、該電気絶縁層8は欠陥7の周囲及び下の領域も覆うことができ、当該層構造内の上記孔のエッジにおいて、巻き上げられたカウンタ電極5から基板電極3へ流れる電流を防止する。該電気絶縁層8は、前記有機エレクトロルミネッセント積層部4の部分を溶解し、かくして、カウンタ電極5の下の有機層4への該カウンタ電極5の接着を弱める。カウンタ電極5の下の有機層4への該カウンタ電極5の接着が弱められた領域に関しては、短絡防止層6により誘起される前記引張応力TS(点線矢印)は、カウンタ電極5と短絡防止層6との二重層DLを巻き上げる(10)のに十分である。
【0038】
上記巻き上げ10は、カウンタ電極5と基板電極3との間の短絡9を防止するための、該カウンタ電極のエッジの必要とされる整形である。この形状(所謂、ロゴスキー形状に類似する)は、カウンタ電極のエッジにおける電界が、阻害されていない有機エレクトロルミネッセント積層部4における平均電界よりも決して大きくならないことを保証する。このように、電界強度の上昇の完全な回避が可能となる。図2に示すようなカウンタ電極の整形(巻き上げ)は、例えば塵粒子に起因する層欠陥(ピンホール)7のエッジにおける短絡9の発生を完全に防止する。
【0039】
・ 第1に、カウンタ電極5が、有機層4に直接接触させて、例えばアルミニウム又は銀により形成される。
【0040】
・ 第2に、上記軟アルミニウムより強い組み込み応力を有する一層硬い金属の層が、上記カウンタ電極5上に短絡防止層6として堆積される。試験においては好ましくも銅が使用されたが、マンガン等の他の金属も好適である。例えばMgF等の高引張応力を持つ非金属層も使用することができる。この層の厚さを、当該引張応力が前記有機層に対するカウンタ電極の接着力を越えないように調整するよう注意する必要がある。何故なら、これはカウンタ電極の完全な層剥離につながるからである。一例として、このような効果は、50nmより厚いマンガン層の場合に発生し得る。
【0041】
・ 第3に、この層構造は、前記電気絶縁層8としてのポリマ溶液(例えば、最も簡単な場合では絶縁ラッカ又はスプレイ)によりコーティングされる。
【0042】
上記コーティングにおける溶媒又は反応性物質は、前記有機層を、全ての層欠陥7(ピンホール)を通して、且つ、金属カウンタ電極5のエッジの周囲において溶解する。金属カウンタ電極層5が損なわれていない場合、浸食(層の溶解)は回避される。上記溶媒の有機層4との相互作用は、ピンホール7の各々においてカウンタ電極金属5を局部的に引き剥がす。次いで、短絡防止層6による誘起された応力が、基板電極3から離れるようなカウンタ電極と短絡防止層との二重層DLの巻き上げ10を生じさせ、欠陥7(ピンホール)の周囲の電界強度を減少させる。
【0043】
巻き上げられた二重層DLの斯かる新しい幾何学構造は、層欠陥7の周囲の電界を大幅に減少させる。引き剥がされ巻き上げられた二重層DLの間に形成される自由空間は、電気絶縁層8により充填され、前記2つの電極を高信頼度で絶縁する。
【0044】
一例として、上記電気絶縁層8は、2マイクロメートルの層厚による絶縁ラッカスプレイ(Farnell社からのウレタン71スプレイ)により形成される。該コーティングは、OLEDを60℃まで30分間加熱し、真空中で1時間乾燥することにより硬化した。カウンタ電極5は上記ピンホールにおいて引き剥がされるので、黒点(非発光領域)が形成される。上記ラッカ層を乾燥した後、当該デバイスは通常に動作され、ブレークスルーは開始され得なかった。
【0045】
尚、上述した実施例は、有機エレクトロルミネッセント積層部4を有するものである。該エレクトロルミネッセント積層部が1つの有機発光層4しか含まない場合でも、上述した処理工程は有効である。
【符号の説明】
【0046】
1 有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)
2 基板
3 基板電極
4 有機エレクトロルミネッセント層(又は積層部)
5 カウンタ電極
6 短絡防止層
7 欠陥(ここでは、塵粒子)
8 電気絶縁層
9 欠陥の周囲の層のエッジにおける電気的短絡
10 欠陥の近傍における巻き上げられた二重層
DL 二重層
TS 引張応力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
少なくとも基板電極、カウンタ電極、及び前記基板電極と前記カウンタ電極との間に配設される少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層を備えた、前記基板上の少なくとも1つのエレクトロルミネッセント積層部と、
前記カウンタ電極を覆う短絡防止層であって、該短絡防止層により誘起される引張応力を伴った二重層を確立する短絡防止層と、
前記短絡防止層を少なくとも部分的に覆う電気絶縁層と、
を有する有機エレクトロルミネッセントデバイスであって、
前記電気絶縁層は前記エレクトロルミネッセント積層部内の欠陥の近傍において前記有機層を部分的に溶解するのに適しており、
前記短絡防止層により誘起される前記引張応力は、前記電気絶縁層の堆積の後に前記欠陥に隣接する前記二重層を巻き上げるのに適している、
有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて、前記短絡防止層が、マンガン、銅、フッ化マグネシウム若しくは銀、又はこれら材料を有する合金若しくはこれらの組み合わせからなる群のうちの少なくとも1つの材料から形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて、前記短絡防止層が、前記絶縁層の堆積の後に前記欠陥に隣接する前記カウンタ電極を巻き上げるのに適した応力を生じる層厚、好ましくは20nmより大きな層厚、より好ましくは40nmより大きな層厚、更に一層好ましくは60nmより大きな層厚を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて、前記カウンタ電極の厚さが、140nm未満、好ましくは10nmと100nmとの間、より好ましくは20nmと80nmとの間、更に一層好ましくは30nmと50nmとの間であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて、前記電気絶縁層が、少なくとも1マイクロメートルの、好ましくは少なくとも1.5マイクロメートルの、より好ましくは2マイクロメートルを越える、更に一層好ましくは5マイクロメートルを越える層厚を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて、前記電気絶縁層が、ポリマ層、好ましくは溶媒又は反応性成分を含むポリマ層であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスを製造する方法であって、
前記カウンタ電極上に短絡防止層を堆積するステップであって、該短絡防止層が前記エレクトロルミネッセント積層部内の欠陥に隣接する前記カウンタと前記短絡防止層との二重層を巻き上げるのに適した引張応力を有するようなステップと、
前記短絡防止層上に該短絡防止層を少なくとも部分的に覆う電気絶縁層を堆積するステップと、
先に堆積された前記電気絶縁層により、前記欠陥の近傍において前記基板電極と前記カウンタ電極との間に配設された少なくとも1つの前記有機エレクトロルミネッセント層を溶解するステップと、
前記欠陥に隣接する前記カウンタ電極と前記短絡防止層との二重層を、該二重層内に存在する引張応力により誘起されて巻き上げるステップと、
前記電気絶縁層を固化又は硬化させるステップと、
を有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記短絡防止層が真空蒸着法により堆積されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の方法において、前記電気絶縁層が前記カウンタ電極及び前記短絡防止層を完全に覆うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7ないし9の何れか一項に記載の方法において、前記電気絶縁層がスプレイコーティングにより又は印刷により、好ましくはスクリーン印刷若しくはタンポン印刷により堆積されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記電気絶縁層を、堆積後に、好ましくは該堆積された電気絶縁層を紫外光及び/又は上昇された温度に曝すことにより、硬化させるステップを更に有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて、好ましくは銅又はマンガンから形成される短絡防止層を使用する方法であって、前記短絡防止層は層欠陥の近傍において前記基板電極と前記カウンタ電極との間に配設された前記少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセント層を部分的に溶解した後に、該欠陥の周辺において前記カウンタ電極と前記短絡防止層との二重層を巻き上げるのに適した引張応力を有し、これにより、前記有機エレクトロルミネッセントデバイスの最初の始動前に前記カウンタ電極と基板電極との間の短絡を防止する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512541(P2013−512541A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540520(P2012−540520)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055217
【国際公開番号】WO2011/064693
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】