説明

有機スルホン酸銅(II)の製造方法

【課題】不純物の含有量をできる限り低減した有機スルホン酸銅(II)の製造方法を提供する。
【解決手段】銅、有機スルホン酸、水及び酸素を反応させることを特徴とする有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【効果】効率がよく、不純物の低減が可能な有機スルホン酸銅(II)の製造方法が可能となり、電解銅めっきの電解質として所望されている不純物金属をppbレベルにまで低減させた有機スルホン酸銅(II)、更には、水溶液の形態の有機スルホン酸銅(II)を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機スルホン酸銅(II)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機スルホン酸銅(II)は、有機合成の反応剤、電解銅めっきにおける銅の供給源(電解質)、殺菌剤、農薬等に使用されている。有機スルホン酸銅(II)の製造方法としては、塩基性炭酸銅を原料とし、有機スルホン酸と反応させる方法、水酸化銅を有機スルホン酸と反応させる方法、酸化銅と有機スルホン酸とを反応させる方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩基性炭酸銅とアルカンスルホン酸との反応により得られたアルカンスルホン酸銅を使用した銅の電気めっきが報告されている。また、非特許文献1には、酸化銅とメタンスルホン酸からメタンスルホン酸銅を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−115294号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yingyong Huaxue,21(6),617−620;2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の文献において銅原料として使用される銅塩である塩基性炭酸銅や酸化銅等は、不純物金属を充分に低減させたものはなく、工業的に生産されているこれらの原料を使用すると、得られる有機スルホン酸銅(II)には、銅原料由来のナトリウム、ニッケル、鉄等不純物金属が含まれることになる。
【0007】
銅以外の不純物金属を低減した銅電解質を使用することで形成される銅の抵抗値が低下することが知られており、高集積化電子回路の製造におけるダマシン法や貫通電極を電解銅めっきにおいて、不純物金属をできる限り低減させた銅電解質又は銅めっき液が求められている。また、微細なパターンを形成する電解銅めっきにおいては、めっき特性を添加剤でコントロールするので、電解銅めっきの銅の電解質に含まれる酸、無機塩、有機化合物等の金属以外の不純物も制御することが求められている。有機合成の反応剤として使用される有機スルホン酸銅(II)においても、有機反応に影響を及ぼす可能性のある不純物は、できる限り低減することが求められている。
【0008】
従って、本発明の目的は、不純物の含有量をできる限り低減した有機スルホン酸銅(II)の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、検討を重ねた結果、銅を原料とし、水及び酸素を反応剤として使用する有機スルホン酸銅(II)を製造する方法が、不純物の低減及び低コスト生産を可能とすることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、銅、有機スルホン酸、水及び酸素を反応させることを特徴とする有機スルホン酸銅(II)の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率がよく、不純物の低減が可能な有機スルホン酸銅(II)の製造方法を提供でき、電解銅めっきの電解質として所望されている不純物金属をppbレベルにまで低減させた有機スルホン酸銅(II)、更には、水溶液の形態の有機スルホン酸銅(II)を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法によれば、有機スルホン酸銅(II)は、以下の化学反応によって得られる:
【化1】

(RSOHは、有機スルホン酸を表し、RSOは有機スルホン酸残基を表す。)
【0013】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法を適用できる有機スルホン酸銅(II)の有機スルホン酸源としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸等の炭素数1〜20のアルカンスルホン酸;モノクロロメタンスルホン酸、ジクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ペンタフルオロブタンスルホン酸等の炭素数1〜20のハロゲン化アルカンスルホン酸;2−ヒドロキシエタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、4−ヒドロキシブタンスルホン酸等の炭素数1〜20のヒドロキシアルカンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p−メチルベンゼンスルホン酸、p−ブチルベンゼンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸等の炭素数6〜20のアリールスルホン酸;p−クロロベンゼンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸等の炭素数6〜20のハロゲン化アリールスルホン酸:フェノールスルホン酸、ノニルフェノールスルホン酸等の炭素数6〜20のヒドロキシアリールスルホン酸;メタンジスルホン酸、1,1−エタンジスルホン酸、1,1−プロパンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,2−プロパンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジスルホン酸、1,8−オクタンジスルホン酸等の炭素数1〜20のアルカンジスルホン酸;モノクロロメタンジスルホン酸、ジクロロメタンジスルホン酸、2−クロロエタンジスルホン酸、1,2−ジクロロ−1,1−エタンジスルホン酸、3−クロロ−1,1−プロパンジスルホン酸等の炭素数1〜20のハロゲン化アルカンジスルホン酸等が挙げられる。
【0014】
上記有機スルホン酸源の中で電解銅めっきに好適に使用されるのは、炭素数1〜4の有機スルホン酸であり、中でもアルカンスルホン酸が好適である。
【0015】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法において、得られる有機スルホン酸銅(II)は、無水和物又は水和物として得られる。水和物として得られる場合の水和水の数は通常1〜5であり、例えば、メタンスルホン酸銅(II)は、4水和物として得られる。本明細書においては、特に断りのない限り、有機スルホン酸銅(II)は、無水和物と水和物を区別せず、両方を示す。
【0016】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法において、反応に必要な水は、水又は水を含有する反応溶媒として供給することができる。有機スルホン酸銅(II)水溶液を製造する場合は、通常、水のみを反応溶媒として使用することが好適である。
【0017】
有機スルホン酸銅(II)を単体で取り出す場合には、水のみを反応溶媒として使用してもよく、また、有機スルホン酸銅(II)を取り出しやすい水を含有する反応溶媒を使用してもよい。例えば、得られる有機スルホン酸銅(II)が水に溶解しないか、溶解しにくい場合は、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤等の有機スルホン酸銅(II)の生成反応に不活性な有機溶剤と水を反応溶媒とし、2相の反応系で反応を行い、有機相から有機スルホン酸銅(II)を取り出すことができる。
【0018】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法の典型的な方法としては、銅と有機スルホン酸及び水を含有する反応溶媒に、酸素を含有するガスを導入して反応させる方法が挙げられる。例えば、反応溶媒として水のみを使用する場合は、水に銅及び有機スルホン酸を加えた反応系に、ガス導入管から酸素ガスを含有するガスを吹き込みながら、撹拌、加熱して、反応を促進させればよい。
【0019】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法の特徴のひとつは、銅を出発原料として使用することにある。銅原料として一般的に入手が可能な水酸化銅、酸化銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅は、不純物金属として、鉄、ナトリウム、ニッケルをppmオーダーで含有し、これらを使用して製造された有機スルホン酸銅(II)は、これらに相当する不純物金属を含有することになる。このような有機スルホン酸銅(II)から、効率よく不純物金属を除くことは、非常に困難である。これに対し、銅は、不純物金属を低減した高純度の銅の入手が容易である。銅を原料とすることで、不純物金属を低減した有機スルホン酸銅(II)の製造が容易となる。原料として使用する銅は、線状、板状、粒状、粉状のいずれでもよい。粉状のものが撹拌しやすく、反応時間も短くなるので好ましい。
【0020】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法のもうひとつの特徴は、酸素を使用することにある。酸素は、銅と有機スルホン酸との反応剤として機能する。水の存在する系で銅を原料とし、有機スルホン酸とを反応させる反応剤として、硝酸、過酸化水素が考えられる。硝酸を使用すると、副生する窒素酸化物と硝酸が系内に残留し、これを完全に除くためには、晶析、再結晶等の精製が必要となり、収量のロス、精製工程の追加のためコストが大きくなる。また、過酸化水素を使用すると、副反応によってギ酸、硫酸が生成する。ギ酸、過酸化水素を除くため晶析、再結晶等の精製が必要となり、収量のロス、精製工程の追加のためコストが大きくなる。更に、硫酸を完全に除去することが困難である。酸素を使用すると、除去困難な副生成物がなく、反応剤である酸素を容易に除くこともできる。また、精製工程も不要で収量のロスがないので低コストでの高純度品の製造が可能となる。
【0021】
また、酸素の含有量によってある程度の反応速度をコントロールすることができる。酸素の希釈ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用することができる。酸素を含有するガスとして空気を使用することもできる。酸素を含有するガス中の酸素の含有量は十分に反応が進む範囲である5〜100体積%が好ましい。また、窒素で希釈された酸素又は空気が低コストで好ましい。
【0022】
酸素を含有するガスは、銅と有機スルホン酸と水との混合物に直接当該ガスをバブリングさせて供給すればよい。酸素を含有するガスの反応系内での気泡サイズを細かくするため及び/又は管の閉塞を防ぐためにガス導入管先端にセラミックやメッシュ等の細孔を有するガス透過性部品を使用してもよい。導入するガスの流量は、反応容器の形状、原料濃度、撹拌装置の能力により適宜設定される。通常は、銅の1モルに対して、酸素の供給量で0.01〜1モル/分で供給すればよい。
【0023】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法における反応は、室温(無加熱)でもよく、加熱してもよい。加熱することで反応は促進されるので、反応系が50℃〜90℃になるように加熱するのが好ましい。
【0024】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法において、銅1モル部に対する有機スルホン酸の使用量は、通常は、1.6〜3モル部、好ましくは1.8〜2.5モル部である。有機スルホン酸を残留させたくない場合は、理論反応量よりも過剰の銅を使用し、未反応の銅をろ過等により除去することもできる。有機スルホン酸銅(II)を水溶液としてではなく、単体として取り出す場合は、この方法が好ましい。有機スルホン酸銅(II)水溶液から有機スルホン酸銅(II)を取り出す方法は、水の除去、晶析処理等の通常使用される方法を用いることができる。
【0025】
一方、電解銅めっきにおける銅の供給源となるめっきベース液は、電解質である有機スルホン酸銅(II)と有機スルホン酸が含まれる水溶液である。当該ベース液用の有機スルホン酸銅(II)水溶液を製造する場合は、仕込みの段階で、所望の組成となるように予め有機スルホン酸を過剰分に使用すればよい。本発明の有機スルホン酸銅(II)水溶液の製造方法は、電解銅めっきのベース液の製造方法として特に好適である。
【0026】
本発明の有機スルホン酸銅(II)の製造方法を、メタンスルホン酸銅(II)を電解質とした電解銅めっき用ベース液の製造方法に応用する場合について説明する。
当該電解銅めっき液のベース液の組成は、通常メタンスルホン酸銅(II)1モル部に対し、メタンスルホン酸0.05〜0.5モル部であり、残りは水である。メタンスルホン酸銅(II)の濃度は、50〜10質量%である。予めこの組成となるように銅、有機スルホン酸を仕込んで反応に付せば、電解銅めっき用ベース液を製造することができる。また、本発明の製造方法は、酸素を含んだガスを吹き込み加熱して反応させるので、水が系外に放出される場合がある。水については、最終的に必要な量と同じか、それより少なく仕込み、反応後に、不足分を加えて所望の濃度に調整してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例並びに比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例などによって何ら制限を受けるものではないことを理解されたい。
実施例1:メタンスルホン酸銅(II)の製造
加熱装置、撹拌装置、ガス供給管を備えた2リットルの反応容器に水800g、銅粉127g(2.00モル)、70質量%メタンスルホン酸水溶液542g(3.95モル)を仕込み、液温85℃で撹拌しながら、1050ml/分(酸素供給量:0.588モル/分)の流量の空気を反応液にバブリングさせ、8時間反応させた。室温まで冷却した後、ろ過により、固体相を取り除き、水溶液(A)を得た。水溶液(A)から水を留去後100℃で減圧乾燥し、メタンスルホン酸銅(II)の4水和物を収率100%で得た。
【0028】
比較例1
撹拌装置を備えた2リットルの反応容器に水553g、塩基性炭酸銅221g(1.00モル)、70質量%メタンスルホン酸水溶液542g(3.95モル)を仕込み、室温で撹拌しながら、30分反応させた。攪拌後、ろ過により、固体相を取り除き、得られた水溶液の水を留去後100℃で減圧乾燥し、メタンスルホン酸銅(II)の4水和物を収率100%で得た。
【0029】
比較例2
加熱装置、撹拌装置、ガス供給管を備えた300ミリリットルの反応容器に水120g、銅粉32.0g(0.504モル)、70質量%メタンスルホン酸水溶液137g(0.998モル)を仕込み、液温が40℃〜60℃となるように加熱撹拌しながら、60質量%硝酸水溶液93g(0.886モル)を滴下した。硝酸水溶液滴下後、アルゴンガスを吹き込みながら加熱し、30分還流させた。ろ過により固体相を取り除き、水溶液(B)を得た。水溶液(B)を80℃減圧下で濃縮した。80gの水を留去させた時点で濃縮を止め、大気圧解放後、濃縮物を撹拌下5℃に冷却して、晶析を行った。析出した固体をろ取し、100℃で減圧乾燥後、メタンスルホン酸銅(II)の4水和物を収率75%で得た。
【0030】
比較例3
冷却装置、撹拌装置を備えた1リットルの反応容器に銅粉124g(1.95モル)、水415g、70質量%メタンスルホン酸水溶液529g(3.853モル)を仕込み、液温が30℃以下になるように冷却撹拌しながら、35質量%過酸化水素水溶液258g(2.66モル)を滴下した。過酸化水素水溶液滴下後さらに1時間撹拌を継続した後、ろ過により固体相を取り除き、水溶液(C)を得た。水溶液(C)を800gになるまで濃縮した。得られた濃縮物にイソプロピルアルコールを加えて晶析を行った。析出した固体をろ取し、100℃で減圧乾燥後、メタンスルホン酸銅(II)の4水和物を収率79%で得た。
【0031】
評価1
上記実施例1並びに比較例1〜3で得たメタンスルホン酸銅(II)の4水和物について、それぞれ、銅含有量換算で100g/リットルの水溶液(実施例1の水溶液:水溶液1、比較例1の水溶液:水溶液2、比較例2の水溶液:水溶液3、比較例3の水溶液:水溶液4)を調製し、ICP−MSによる不純物金属元素分析を行った。また、原料として使用した銅粉及び塩基性炭酸銅のICP−MSまたはICPによる不純物金属元素分析を行った。塩基性炭酸銅のFe、Na、NiはICP分析結果であり、単位はppm(μg/g)であり、これ以外はICP−MS分析結果であり、単位はppb(ng/g)である。また、表中、<後の数値は定量下限であり、例えば、「<50」は、定量下限50ppbで定量下限より小さい値であることを表す。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
評価2
上記評価1で調製した水溶液1、3、4、上記実施例1、比較例2、3の水溶液(A)、(B)、(C)を銅含有量換算で100g/リットルの水溶液となるように濃度調製したサンプルについてキャピラリー電気泳動による分析を行った。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例2:メタンスルホン酸銅(II)水溶液の製造
加熱装置、撹拌装置、ガス供給管を備えた20リットルの反応容器に水10.648kg、銅粉1.500kg(23.605モル)、70質量%メタンスルホン酸水溶液6.800kg(49.53モル)を仕込み、液温85℃で撹拌しながら、1050ml/分の流量の酸素(酸素供給量:2.81モル/分)を反応液にバブリングさせた。2時間後銅粉が消失したのを確認してから加熱を止めた。室温まで冷却した後、ろ過により、固体相を取り除き、メタンスルホン酸銅(II)水溶液18.100kgを得た。なお、得られたメタンスルホン酸銅(II)水溶液は、メタンスルホン酸銅(II)1モルに対し、メタンスルホン酸0.0983モルを含有していた。
【0036】
実施例3:メタンスルホン酸銅(II)の水溶液の製造
加熱装置、撹拌装置、ガス供給管を備えた20リットルの反応容器に水10.648kg、銅粉1.500kg(23.605モル)、70質量%メタンスルホン酸水溶液6.800kg(49.53モル)を仕込み、液温85℃で撹拌しながら、1050ml/分(酸素供給量:0.588モル/分)の流量の空気を反応液にバブリングさせた。17時間後銅粉が消失したのを確認してから加熱を止めた。室温まで冷却した後、ろ過により、固体相を取り除き、メタンスルホン酸銅(II)水溶液18.308kgを得た。なお、得られたメタンスルホン酸銅(II)水溶液は、メタンスルホン酸銅(II)1モルに対し、メタンスルホン酸0.0983モルを含有していた。
【0037】
実施例4:メタンスルホン酸銅(II)の水溶液の製造
加熱装置、撹拌装置、ガス供給管を備えた20リットルの反応容器に水10.648kg、銅粉1.500kg(23.605モル)、70質量%メタンスルホン酸水溶液6.800kg(49.53モル)を仕込み、液温85℃で撹拌しながら、1050ml/分の流量の7体積%酸素と93体積%の窒素の混合ガスを反応液にバブリングさせた(酸素供給量:0.197モル/分)。36時間後銅粉が消失したのを確認してから加熱を止めた。室温まで冷却した後、ろ過により、固体相を取り除き、メタンスルホン酸銅(II)水溶液18.088kgを得た。なお、得られたメタンスルホン酸銅(II)水溶液は、メタンスルホン酸銅(II)1モルに対し、メタンスルホン酸0.0983モルを含有していた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のメタンスルホン酸銅(II)の製造方法により得られたメタンスルホン酸銅(II)は、その水溶液として電解銅めっきにおける銅の供給源となるめっきベース液として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、有機スルホン酸、水及び酸素を反応させることを特徴とする有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項2】
銅、有機スルホン酸及び水を含有する反応溶媒よりなる混合物に酸素を含有するガスを導入して反応させる、請求項1記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項3】
有機スルホン酸が、炭素数1〜20のアルカンスルホン酸、炭素数1〜20のハロゲン化アルカンスルホン酸、炭素数1〜20のヒドロキシアルカンスルホン酸、炭素数6〜20のアリールスルホン酸、炭素数6〜20のハロゲン化アリールスルホン酸、炭素数6〜20のヒドロキシアリールスルホン酸、炭素数1〜20のアルカンジスルホン酸または炭素数1〜20のハロゲン化アルカンジスルホン酸である、請求項1又は2記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項4】
有機スルホン酸が、メタンスルホン酸である、請求項3記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項5】
水を含有する反応溶媒が、水または水と有機溶剤から構成される、請求項2記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項6】
酸素を含有するガスの酸素含有量が5〜100体積%である、請求項2ないし5のいずれか1項記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項7】
有機スルホン酸銅(II)が水溶液の形態で得られる、請求項1ないし6のいずれか1項記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。
【請求項8】
更に、有機スルホン酸銅(II)水溶液が、有機スルホン酸を含有する、請求項7記載の有機スルホン酸銅(II)の製造方法。