有機ハイドライド製造装置
【課題】電気化学的に有機ハイドライドを生成させる装置において、小型で効率の良い有機ハイドライド製造装置を提供することができる。
【解決手段】本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを製造する装置において、その電極構造が、触媒層として金属触媒担持カーボンもしくは金属触媒が、プロトン伝導性固体高分子電解質と適度に混ざり合ったマトリクスになっている構造であり、それらの触媒層が、透過水をブロックする層が形成されたプロトン伝導性固体高分子電解質膜の表裏に形成されていることを特徴とする。この電極において、アノード側に水もしくは水蒸気を供給し、カソード側に被水素化物を供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を負荷することで、アノードにおいて水の電気分解反応、カソードにおいて被水素化物への水素付加反応を起こし有機ハイドライドを生成させることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを製造する装置において、その電極構造が、触媒層として金属触媒担持カーボンもしくは金属触媒が、プロトン伝導性固体高分子電解質と適度に混ざり合ったマトリクスになっている構造であり、それらの触媒層が、透過水をブロックする層が形成されたプロトン伝導性固体高分子電解質膜の表裏に形成されていることを特徴とする。この電極において、アノード側に水もしくは水蒸気を供給し、カソード側に被水素化物を供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を負荷することで、アノードにおいて水の電気分解反応、カソードにおいて被水素化物への水素付加反応を起こし有機ハイドライドを生成させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを製造する有機ハイドライド製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素などによる地球温暖化が深刻になる中で、化石燃料に代わって次世代を担うエネルギー源として水素が注目されている。水素燃料は、燃料消費時に排出される物質が水だけあり、二酸化炭素を排出しないため環境への負荷が小さい。一方、水素は常温常圧で気体であるため、輸送,貯蔵,供給システムが大きな課題となっている。
【0003】
近年、安全性,運搬性、および貯蔵能力に優れた水素貯蔵方法として、シクロヘキサンや、メチルシクロヘキサン,デカリンのような炭化水素を用いた有機ハイドライドシステムが注目されている。これらの炭化水素は、常温で液体であるため、運搬性に優れている。例えば、トルエンとメチルシクロヘキサンは同じ炭素数を有する環状炭化水素であるが、トルエンは炭化水素同士の結合が二重結合である不飽和炭化水素であるのに対して、メチルシクロヘキサンは二重結合を持たない飽和炭化水素である。トルエンの水素付加反応によりメチルシクロヘキサンが得られ、メチルシクロヘキサンの脱水素反応によりトルエンが得られる。すなわち、これらの炭化水素の水素付加反応と脱水素反応を利用することにより、水素の貯蔵とその供給が可能となる。
【0004】
メチルシクロヘキサンなどの有機ハイドライドを製造するためには、まず水素を製造し、その水素とトルエンを触媒上で反応させる必要がある。すなわち、現状のプロセスは、水素を水電解装置などにおいて発生させ、水素付加反応装置において水素とトルエンを反応させて有機ハイドライドを生成させるという二段階のプロセスである。
【0005】
よって、有機ハイドライドの製造まで複数の装置が必要となり、装置の複雑化という問題が生じる。また、水素を製造してから水素付加反応まではガス状の水素であるため、貯蔵・運搬に関して問題が生じる。水素製造装置と水素付加装置を隣接して建設すれば、上記問題は解決されるが、建設および運用コストの問題があり、総合的なエネルギー効率も低下する。また、装置が大型化するため、設置場所が限られる。
【0006】
近年、単一装置を用い一段階で有機ハイドライドを製造する技術が開示されている(例えば特許文献1)。これらは電気化学的に有機ハイドライドを製造するものである。例えば、特許文献1では、水素イオンを選択的に透過する水素イオン透過性固体高分子電解質膜の両側に金属触媒をそれぞれ配置し、一方に水または水蒸気を供給し、もう一方に被水素化物を供給し、陽極側での水又は水蒸気の電気分解により生成された水素イオンを、陰極側で被水素化物と水素付加反応を起こし有機ハイドライドを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−45449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの有機ハイドライド製造方法は、高いエネルギー効率を得ることが困難であった。その理由として、透過水の影響が考えられる。すわなち、アノード反応に用いている水が水素イオン透過性固体高分子電解質膜を透過してカソードに到達してしまい、その透過水がカソード反応に悪影響を及ぼしていると考えられる。水と、トルエンなどの被水素化物は、互いに不溶性であり混ざり合わない。よって、水がカソード触媒層に存在する場合、その水により触媒へのトルエン供給が阻害されてしまう。その結果として、トルエンなどの被水素化物が供給されない触媒上では水素発生が起こるなどして、被水素化物への水素付加反応が起こらず有機ハイドライドが生成せずに、エネルギー効率が低くなってしまうためと考えられる。また、透過水が、水素付加反応後の有機ハイドライドに混ざってしまうと、水を除去するプロセスが別に必要となる。このことは、装置の簡略化などを考えると望ましいことではない。
【0009】
本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを生成させる装置において、小型で効率の良い有機ハイドライド製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実状に鑑み、本発明者は鋭意研究をおこなった結果、固体高分子電解質膜表面、もしくは固体高分子電解質膜中に、アノードからカソードへの透過水をブロックするような層を形成することで高効率の電極が得られることを見出した。本発明の電極では、触媒層は金属触媒担持カーボンもしくは金属触媒が、プロトン伝導性固体高分子電解質と適度に混ざり合ったマトリクスになっている構造とし、それらの触媒層が、透過水ブロック層が形成されたプロトン伝導性固体高分子電解質膜の表裏に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の有機ハイドライド製造装置では、被水素化物を還元するカソード触媒層、および水を酸化するアノード触媒層が、透過水ブロック層が形成されたプロトン導電性の固体高分子電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体と、カソード触媒層に被水素化物を供給する部材と、アノード触媒層に水または水蒸気を供給する部材とを備え、前記カソード触媒層が、被水素化物を還元して水素化物に反応させる触媒金属と、前記触媒金属を担持した担体、およびプロトン導電性の固体高分子電解質からなり、前記アノード触媒層が、水を酸化してプロトンに反応させる触媒金属と、前記触媒金属を担持した担体およびプロトン導電性の固体高分子からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気化学的に有機ハイドライドを生成させる装置において、小型で効率の良い有機ハイドライド製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の有機ハイドライド製造装置もしくは燃料電池の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の膜電極接合体を示す図である。
【図3】従来技術の膜電極接合体を示す図である。
【図4】本発明の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【図5】本発明の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【図6】従来技術の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【図7】従来技術の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを製造する装置において、プロトン伝導性固体高分子電解質と金属触媒担持カーボンもしくは金属触媒が適度に混ざり合ったマトリクスになった構造の触媒層が、透過水ブロック層が形成されたプロトン伝導性固体高分子電解質膜の表裏に形成された電極構造を有していることを特徴とする。この電極において、アノード側に水もしくは水蒸気を供給し、カソード側に被水素化物を供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を印加することで、アノードにおいて水の電気分解反応,カソードにおいて被水素化物への水素付加反応を起こし有機ハイドライドを生成させることを特徴とする。
【0015】
本発明による実施形態について図面を用いて詳しく述べる。
【0016】
図1に本発明の有機ハイドライド製造装置の一例を示す。本実施形態の有機ハイドライド製造装置は、透過水ブロック層が形成された固体高分子電解質膜12の一方の面にアノード触媒層13を、他方の面にカソード触媒層14を接合し、一体化した膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を一対のガス拡散層15、及び、ガス流路が形成されたセパレータ11で挟み込んで構成されている。また。一対のセパレータ11の間にはガスシールのためのガスケット16が挿入されている。
【0017】
セパレータ11は導電性を有し、その材質は、緻密黒鉛プレート,黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料を樹脂によって成形したカーボンプレート,ステンレス鋼やチタン等の耐蝕性の優れた金属材料が望ましい。また、セパレータ11の表面を貴金属メッキしたり、耐食性,耐熱性の優れた導電性塗料を塗布し表面処理することも望ましい。セパレータ11のアノード触媒層13及びカソード触媒層14に対向する面には反応ガスまたは液体の流路となる溝が形成されている。アノード側のセパレータ11の流路溝には水または水蒸気が供給される。流路溝を流れる水または水蒸気はガス拡散層15を介してアノード触媒層に供給される。また、カソード側の側セパレータ11には被水素化物が供給される。流路溝を流れる被水素化物はガス拡散層15を介してカソード触媒に供給される。被水素化物の供給方法としては、液体状の被水素化物をそのまま供給してもよいし、HeガスやN2ガスをキャリアとした蒸気状の被水素化物を供給してもよい。
【0018】
ガス拡散層15は、セパレータ11の流路に供給された反応物質(ガスまたは液体)を触媒層の面内に均一に供給するために設けられ、カーボンペーパーあるいはカーボンクロス等の通気性を有する基体を使用する。特に、これらの基体を撥水化処理したものが好ましい。
【0019】
ガスケット16は絶縁性であり、特に水素あるいは被水素化物,有機ハイドライドに対して耐性があり、それらの透過が少なく機密性が保たれる材質であればよく、例えばブチルゴム,バイトンゴム,EPDMゴム等が挙げられる。
【0020】
アノード側に水または水蒸気を供給し、カソード側に被水素化物としてトルエンを供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を負荷すると、アノードにおいて(1)式の水の電気分解反応が起こる。(1)式の電気分解反応により生じたプロトンが固体高分子電解質膜12を介してカソード14へ移動し、カソードにおいて(2)式の水素付加反応が起こり有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンが生成する。
H2O→2H++1/2O2+2e- (1)
C7H8+6H++6e-→C7H14 (2)
【0021】
本実施形態の有機ハイドライド装置では、固体高分子電解質膜に透過水ブロックが形成されているため、アノードの水がカソードに透過することはない。よって、高効率で有機ハイドライドの生成が可能である。
【0022】
図2に本実施形態の有機ハイドライド製造装置の電極部分を示す。図2には透過水ブロック層27が形成された固体高分子電解質膜21の表裏にカソード触媒層22,アノード触媒層23が形成されたMEAをカソード側から見た平面図、平面図におけるD−E部分の断面図と拡大図を示している。
【0023】
MEAは、D−E断面図に示すように、カソード及びアノードは緻密な触媒層として透過水ブロック層27が形成された固体高分子電解質膜21の上下に形成されている。カソード触媒層22は拡大図Fに示したように、触媒担体25には触媒金属24が担持されており、触媒担体25同士が固体高分子電解質26により接着されている。触媒金属24は触媒担体25を介して互いにつながったネットワーク構造を有しおり、(2)の反応に必要な電子の通り道を形成している。また、触媒層中の固体高分子電解質26も同様につながったネットワーク構造を有しており、(2)の反応に必要なプロトンの通り道を形成している。
【0024】
電極反応は、触媒担体25上の金属触媒24と電解質および反応物質が接触する三相界面において行われる。本実施形態の電極では固体高分子電解質26によってプロトンの通り道を形成しているため、固体高分子電解質膜21と直接接していない金属触媒24にも三相界面が形成されているため、多くの金属触媒が電極反応に寄与できる構造となっている。
【0025】
本実施形態の有機ハイドライド製造装置の電極では、固体高分子電解質膜に透過水ブロック層27が形成されているため、アノードの水がカソードに透過することを防止できる。よって、高効率で有機ハイドライドの生成が可能である。
【0026】
図3に従来技術の電極の構造を示す。図3に示した電極では、固体高分子電解質膜31の表面に金属触媒34を担持した触媒担体35を直接形成している。従来技術の電極構造では電極反応に寄与する金属触媒34は電解質膜と直接接する部分のみであり、三相界面が少なく、反応に寄与する触媒が限られる。また、触媒のネットワーク構造の形成も少なく、抵抗が高くなると考えられる。
【0027】
また、図3に従来技術の電極の構造を示す。図3に示した電極では、固体高分子電解質膜31の表面に、触媒金属34を担持した触媒担体35と固体高分子電解質36が混ざった構造である。従来技術では、アノードの水が固体高分子電解質膜31を透過した透過水37がカソード触媒層に存在する。水とトルエンなどの被水素化物は互いに不溶性であり混ざり合わない。よって、水がカソード触媒層32に存在する場合、その水により触媒へのトルエン供給が阻害されてしまう。その結果として、トルエンなどの被水素化物が供給されない触媒金属38上では、水素付加反応ではなく、下記の(3)式により水素発生が起こると考えられる。
2H++2e-→H2 (3)
【0028】
よって、従来技術の電極では、被水素化物への水素付加反応が起こらない触媒が存在するため有機ハイドライド生成が制限され、その結果、エネルギー効率が低くなってしまうと考えられる。
【0029】
本発明のMEAに関しては以下の方法で作製することができる。まず、触媒金属を担持した担体,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したカソード触媒ペーストと、触媒金属,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したアノード触媒ペーストを作製する。それらのペーストを、それぞれポリフルオロエチレン(PTFE)フィルム等の剥離フィルム上に、スプレードライ法等により噴霧し、80℃で乾燥させて溶媒を蒸発させ、カソードおよびアノード触媒層を形成する。次にそれらのカソードおよびアノード触媒層を、透過水ブロック層が形成された固体高分子電解質膜を真ん中にはさんでホットプレス法によって接合し、剥離フィルム(PTFE)を剥がすことにより、本発明のMEAを作製することができる。
【0030】
また、本発明のMEA作製の別の一例として、上記の触媒金属を担持した担体,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したカソード触媒ペーストと、触媒金属,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したアノード触媒ペーストとを、スプレードライ法等により、直接透過水ブロック層が形成された固体高分子電解質膜に噴霧することでも作製することができる。
【0031】
固体高分子電解質膜を構成する有機高分子としては、パーフルオロカーボンスルホン酸、あるいは、ポリスチレンやポリエーテルケトン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン、その他のエンジニアリングプラスチック材料に、スルホン酸基,ホスホン酸基,カルボキシル基等のプロトン供与体をドープあるいは化学的に結合,固定化したものを用いることができる。また、上記材料において、架橋構造にしたり、部分フッ素化することで材料安定性を高めることも望ましい。また、有機高分子と金属酸化物水和物などとの複合電解質膜を用いることもできる。
【0032】
また、透過水をブロックする層としては、水素イオンを透過させ水をブロックするものであればよい。例えば、パラジウムあるいはパラジウム合金などの無機物が考えられる。パラジウムと合金化する金属としては、Rh,Cu,Co,Ir,Agなどの遷移金属が挙げられる。また、Mg,Caなどのアルカリ土類金属,La,Ndなどの希土類金属など、Pdと合金化できる金属は種々考えられる。また、透過水をブロックする層として、水素吸蔵合金が挙げられる。その水素吸蔵合金として、Ti−Fe系金属,V系金属,Mg系合金,Ca系合金が挙げられる。また、Ti,Mn,Zr,Niなどの遷移元素の合金をベースとしたAB2型金属も挙げられる。あるいは、LaNi5,ReNi5などの、希土類元素,Nb,Zr1原子に対して触媒効果を持つ遷移元素(Ni,Co,Alなど)5原子を含む合金をベースとしたAB5型が挙げられる。また、スルホン酸基,ホスホン酸基,カルボキシル基等のプロトン供与体が少ない有機高分子を用いることもできる。プロトン供与体が少ない有機高分子として、乾燥重量当たりのイオン交換量が0.75meq/g以下の有機高分子が望ましい。
【0033】
透過水ブロック層は、固体高分子電解質膜表面に形成してもよいし、また、固体高分子電解質膜の中に形成してもよい。本発明は、透過水をブロックする層を形成することにより、水の透過量を制限するものである。透過水は、プロトン移動に伴って移動するため、流れる電流値によりその量は異なる。本発明の透過水ブロック層を含む膜電極接合体としては、電流密度値60mA/cm2の際に、水の透過量が30μg/cm2・sec以下になるものが望ましい。この条件を満たすように上述したような透過水ブロック層が用いられる。
【0034】
触媒層に含有される固体高分子電解質には、プロトン導電性を示す高分子材料を用い、例えばパーフロロカーボン系スルホン酸樹脂やポリパーフロロスチレン系スルホン酸樹脂に代表されるスルホン酸化あるいはアルキレンスルホン酸化したフッ素系ポリマーやポリスチレン類が挙げられる。その他にポリスルホン類,ポリエーテルスルホン類,ポリエーテルエーテルスルホン類,ポリエーテルエーテルケトン類,炭化水素系ポリマーにスルホン酸基等のプロトン供与体を導入した材料が挙げられる。
【0035】
一方、本発明で用いる触媒金属には、水素付加作用を有する触媒材料を用い、例えば、Ni,Pd,Pt,Rh,Ir,Re,Ru,Mo,W,V,Os,Cr,Co,Feなどの金属及びこれらの合金触媒を用いることができる。水素付加触媒は、触媒金属の低減による低コスト化と反応表面積の増大化のため、微粒子化することが好ましい。また、微粒子の凝集による比表面積の減少を防止するため、担体に担持してもよい。触媒の製造方法は、共沈法,熱分解法,無電解めっき法など特に限定はない。
【0036】
カソード触媒担持材料としては、活性炭,カーボンナノチューブ,黒鉛などのカーボン材料や、シリカ,アルミナ,ゼオライトなどのアルミナシリケートなどを用いることができる。一方、アノードにカーボン材料が存在すると、カーボンが酸化される可能性があり、望ましいことではない。よって、アノード触媒担持材料としては、シリカ,アルミナ,ゼオライトなどのアルミナシリケートなど、非カーボン材料を用いることができる。もしくは、アノードには、担持材料を用いず、触媒金属のみを用いてもよい。
【0037】
被水素化物としては、ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,ナフタレン,メチルナフタレン,アントラセン,ビフェニル,フェナントロリン及びそれらのアルキル置換体のいずれか又は複数混合したものを用いることができる。これらの炭素同士の二重結合に水素が付加されることにより、水素を貯蔵することができる。
【0038】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
固体高分子電解質膜として、ナフィオン(デュポン社製)の表面に25μmのパラジウム膜を物理的に接着させたものを用いた。パラジウム膜は、アノード側表面に接着させた。
【0040】
カソード触媒層は、スプレーコーターを用いて、直接上記の固体高分子電解質膜に触媒スラリーを塗布して形成した。以下の順序でカソード触媒層を上記の固体高分子電解質膜に塗布した。
【0041】
パラジウム膜を接着させたナフィオンを基板のホットプレート上に置き、吸引することで固定した。ここで、ホットプレートの温度は50℃とした。
【0042】
次に、その上からマスクをして、スプレーコーター(ノードソン社製)でカソード触媒スラリーを塗布した。カソード触媒スラリーとして、白金担持カーボン触媒TEC10E70TPM(田中貴金属製)と水,5wt%ナフィオン溶液,221溶液(1−プロパノール:2−プロパノール:水=2:2:1の溶液)を2:1.2:5.4:10.6の重量比で混合したものを用いた。塗布条件は、液圧0.01MPa,スワール圧0.15MPa,霧化圧0.15MPa,ガン/基板距離60mm,基板温度50℃とした。カソード触媒量は0.4mgPt・cm-2とした。
【0043】
パラジウム膜を接着したナフィオン表面にカソード触媒層を形成した。また、ナフィオンの裏面にアノード触媒層を形成した。アノード触媒層は転写法により形成した。まず、アノード触媒スラリーを作製した。アノード触媒スラリーとして、白金ブラックHiSPEC1000(ジョンソンマッセイ製)と5wt%ナフィオン溶液,221溶液を、1:1.11:2.22の重量比で混合したものを用いた。それをアプリケータにより、テフロン(登録商標)のシート上に塗布した。テフロン(登録商標)のシート上に塗布したアノード触媒層を、ホットプレス(テスター産業社製SA−401−M)による熱転写でパラジウム膜を接着させたナフィオン表面に形成した。ホットプレス圧力は37.2kgf・cm-2,ホットプレス温度は120℃,ホットプレス時間は2分間とした。アノード触媒量は4.8mgPt・cm-2とした。
【0044】
作製したMEAを図1の有機ハイドライド製造装置に組み込んだ。セル抵抗は200mΩであった。
【0045】
カソードに被水素化物のトルエンを0.03ml/minおよび0.1ml/minで供給し、アノードに純水を5ml/minで供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を2.2V印加した。セル温度は25,40,60,80℃でおこなった。
【0046】
図4にセル温度に対する電流値を示す。セル温度を高くするほど、電流密度は大きくなった。これは、温度が高くなるほど、反応に対する電極触媒の反応活性が高くなったためであると考えられる。また、トルエンの供給量が0.03ml/minと0.1ml/minの場合では、ほぼ同程度の電流が流れる結果となった。
【0047】
水素付加反応後のカソード液体を回収し、ガスクロマトグラフィで分析すると、いずれの条件においても有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンの生成が認められた。本発明の電極により、トルエンの水素付加反応でメチルシクロヘキサンが生成されたことを示唆する。また、カソードからの回収液には、水は含まれていなかった。ナフィオン表面に形成させたパラジウム膜により、アノードの水が透過するのを防止できたと考えられる。
【0048】
図5に水素付加反応時のトルエンからメチルシクロヘキサンへの転化率を示す。転化率は下記の式によりガスクロマトグラフィのピーク面積から算出した。
転化率=メチルシクロヘキサンのピーク面積
/(トルエンのピーク面積+メチルシクロヘキサンのピーク面積)×100
(4)
【0049】
セル温度25℃,40℃,60℃,80℃いずれにおいてもメチルシクロヘキサンは検出され、セル温度が高くなるほど転化率は大きくなった。また、トルエンの供給量0.1ml/minに比べて、0.03ml/minの方が転化率は高い結果となった。これは、トルエンの供給速度が小さいほど、トルエンが電極触媒に接する機会が増えたためであると考えられる。今回の条件で最も転化率が高かったのは、セル温度80℃トルエン流量0.03ml/minにおいて、転化率68%であった。
【0050】
〔比較例1〕
固体高分子電解質膜として、ナフィオンを用いてMEAを作製した。その他の作製条件は同一とした。
【0051】
作製したMEAを図1の有機ハイドライド製造装置に組み込み、セル抵抗を測定した所、250mΩであった。
【0052】
実施例1と同様の条件で、トルエンへの水素付加反応試験をおこなった。セル温度25,40,60,80℃において、アノード−カソード間に電圧を2.2V負荷した。図6にセル温度に対する電流値を示す。セル温度が高くなるほど電流は流れたが、実施例1と比べれば、いずれも電流密度は低い結果となった。
【0053】
水素付加反応後のカソード液体を回収し、ガスクロマトグラフィで分析すると、いずれの条件においても有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンの生成が認められた。しかし、カソードから回収した排液は、いずれのセル温度においても2相に分離していた。
上相部がトルエンおよびメチルシクロヘキサン,下相部が水であると考えられる。温度が高くなるほど、下相部の水の割合が大きくなった。この水はアノードの水が電解質膜を透過してカソードに到達したものと考えられる。特に、セル温度が高くなり電流が大きくなるほど、アノードからカソードへのプロトン移動が多くなり、それに伴う水の移動も多くなっていると考えられる。
【0054】
図7にトルエンからメチルシクロヘキサンへの転化率を示す。セル温度が高くなるほど転化率は高くなったが、実施例1に比べれば小さい結果となった。これは、透過水がカソード触媒層に存在しており、その水により触媒へのトルエン供給が阻害されてしまっていることが考えられる。その結果として、トルエンが供給されない触媒上では水素発生が起こるなどしてメチルシクロヘキサンの生成が起こらず、転化率が低くなってしまうと考えられる。
【実施例2】
【0055】
電解質膜としてナフィオンを用い、その表面に10μmのS−PES(Sulfonated-Poly Ether Sulfone)を接着させた。S−PESはポリエーテルスルホンにスルホン酸基を導入した有機高分子である。乾燥重量当たりのイオン交換容量が0.6meq/gのものを用いた。その他のMEA作製条件は、実施例1と同一でおこなった。
【0056】
作製したMEAを図1の有機ハイドライド製造装置に組み込み、セル抵抗を測定した所、350mΩであった。実施例1と同様の条件で、トルエンへの水素付加反応試験をおこなった。セル温度25,40,60,80℃において、アノード−カソード間に電圧を2.2V負荷した。
【0057】
水素付加反応後のカソード液体を回収し、ガスクロマトグラフィで分析すると、いずれの条件においても有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンの生成が認められた。また、カソード排液は、比較例1よりは水量は少ないものの、いずれも2相に分離していた。これは、S−PESでは、完全に水透過を防げなかったと考えられる。しかし、比較例1のナフィオン単体を電解質膜に用いた場合と比較すると、水透過が少なくなったため、転化率は高い結果となった。最も高い転化率は、セル温度80℃トルエン流量0.03ml/minにおいて、転化率58%であった。
【符号の説明】
【0058】
11 セパレータ
12,21,31 固体高分子電解質膜
13,23,33 アノード触媒層
14 カソード触媒層
15 ガス拡散層
16 ガスケット
22,32 カソード触媒層
24,34 触媒金属
25,35 触媒担体
26,36 固体高分子電解質
27 透過水ブロック層
37 透過水
38 反応に寄与しない触媒金属
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを製造する有機ハイドライド製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素などによる地球温暖化が深刻になる中で、化石燃料に代わって次世代を担うエネルギー源として水素が注目されている。水素燃料は、燃料消費時に排出される物質が水だけあり、二酸化炭素を排出しないため環境への負荷が小さい。一方、水素は常温常圧で気体であるため、輸送,貯蔵,供給システムが大きな課題となっている。
【0003】
近年、安全性,運搬性、および貯蔵能力に優れた水素貯蔵方法として、シクロヘキサンや、メチルシクロヘキサン,デカリンのような炭化水素を用いた有機ハイドライドシステムが注目されている。これらの炭化水素は、常温で液体であるため、運搬性に優れている。例えば、トルエンとメチルシクロヘキサンは同じ炭素数を有する環状炭化水素であるが、トルエンは炭化水素同士の結合が二重結合である不飽和炭化水素であるのに対して、メチルシクロヘキサンは二重結合を持たない飽和炭化水素である。トルエンの水素付加反応によりメチルシクロヘキサンが得られ、メチルシクロヘキサンの脱水素反応によりトルエンが得られる。すなわち、これらの炭化水素の水素付加反応と脱水素反応を利用することにより、水素の貯蔵とその供給が可能となる。
【0004】
メチルシクロヘキサンなどの有機ハイドライドを製造するためには、まず水素を製造し、その水素とトルエンを触媒上で反応させる必要がある。すなわち、現状のプロセスは、水素を水電解装置などにおいて発生させ、水素付加反応装置において水素とトルエンを反応させて有機ハイドライドを生成させるという二段階のプロセスである。
【0005】
よって、有機ハイドライドの製造まで複数の装置が必要となり、装置の複雑化という問題が生じる。また、水素を製造してから水素付加反応まではガス状の水素であるため、貯蔵・運搬に関して問題が生じる。水素製造装置と水素付加装置を隣接して建設すれば、上記問題は解決されるが、建設および運用コストの問題があり、総合的なエネルギー効率も低下する。また、装置が大型化するため、設置場所が限られる。
【0006】
近年、単一装置を用い一段階で有機ハイドライドを製造する技術が開示されている(例えば特許文献1)。これらは電気化学的に有機ハイドライドを製造するものである。例えば、特許文献1では、水素イオンを選択的に透過する水素イオン透過性固体高分子電解質膜の両側に金属触媒をそれぞれ配置し、一方に水または水蒸気を供給し、もう一方に被水素化物を供給し、陽極側での水又は水蒸気の電気分解により生成された水素イオンを、陰極側で被水素化物と水素付加反応を起こし有機ハイドライドを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−45449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの有機ハイドライド製造方法は、高いエネルギー効率を得ることが困難であった。その理由として、透過水の影響が考えられる。すわなち、アノード反応に用いている水が水素イオン透過性固体高分子電解質膜を透過してカソードに到達してしまい、その透過水がカソード反応に悪影響を及ぼしていると考えられる。水と、トルエンなどの被水素化物は、互いに不溶性であり混ざり合わない。よって、水がカソード触媒層に存在する場合、その水により触媒へのトルエン供給が阻害されてしまう。その結果として、トルエンなどの被水素化物が供給されない触媒上では水素発生が起こるなどして、被水素化物への水素付加反応が起こらず有機ハイドライドが生成せずに、エネルギー効率が低くなってしまうためと考えられる。また、透過水が、水素付加反応後の有機ハイドライドに混ざってしまうと、水を除去するプロセスが別に必要となる。このことは、装置の簡略化などを考えると望ましいことではない。
【0009】
本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを生成させる装置において、小型で効率の良い有機ハイドライド製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実状に鑑み、本発明者は鋭意研究をおこなった結果、固体高分子電解質膜表面、もしくは固体高分子電解質膜中に、アノードからカソードへの透過水をブロックするような層を形成することで高効率の電極が得られることを見出した。本発明の電極では、触媒層は金属触媒担持カーボンもしくは金属触媒が、プロトン伝導性固体高分子電解質と適度に混ざり合ったマトリクスになっている構造とし、それらの触媒層が、透過水ブロック層が形成されたプロトン伝導性固体高分子電解質膜の表裏に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の有機ハイドライド製造装置では、被水素化物を還元するカソード触媒層、および水を酸化するアノード触媒層が、透過水ブロック層が形成されたプロトン導電性の固体高分子電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体と、カソード触媒層に被水素化物を供給する部材と、アノード触媒層に水または水蒸気を供給する部材とを備え、前記カソード触媒層が、被水素化物を還元して水素化物に反応させる触媒金属と、前記触媒金属を担持した担体、およびプロトン導電性の固体高分子電解質からなり、前記アノード触媒層が、水を酸化してプロトンに反応させる触媒金属と、前記触媒金属を担持した担体およびプロトン導電性の固体高分子からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気化学的に有機ハイドライドを生成させる装置において、小型で効率の良い有機ハイドライド製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の有機ハイドライド製造装置もしくは燃料電池の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の膜電極接合体を示す図である。
【図3】従来技術の膜電極接合体を示す図である。
【図4】本発明の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【図5】本発明の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【図6】従来技術の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【図7】従来技術の有機ハイドライド製造装置の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、電気化学的に有機ハイドライドを製造する装置において、プロトン伝導性固体高分子電解質と金属触媒担持カーボンもしくは金属触媒が適度に混ざり合ったマトリクスになった構造の触媒層が、透過水ブロック層が形成されたプロトン伝導性固体高分子電解質膜の表裏に形成された電極構造を有していることを特徴とする。この電極において、アノード側に水もしくは水蒸気を供給し、カソード側に被水素化物を供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を印加することで、アノードにおいて水の電気分解反応,カソードにおいて被水素化物への水素付加反応を起こし有機ハイドライドを生成させることを特徴とする。
【0015】
本発明による実施形態について図面を用いて詳しく述べる。
【0016】
図1に本発明の有機ハイドライド製造装置の一例を示す。本実施形態の有機ハイドライド製造装置は、透過水ブロック層が形成された固体高分子電解質膜12の一方の面にアノード触媒層13を、他方の面にカソード触媒層14を接合し、一体化した膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を一対のガス拡散層15、及び、ガス流路が形成されたセパレータ11で挟み込んで構成されている。また。一対のセパレータ11の間にはガスシールのためのガスケット16が挿入されている。
【0017】
セパレータ11は導電性を有し、その材質は、緻密黒鉛プレート,黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料を樹脂によって成形したカーボンプレート,ステンレス鋼やチタン等の耐蝕性の優れた金属材料が望ましい。また、セパレータ11の表面を貴金属メッキしたり、耐食性,耐熱性の優れた導電性塗料を塗布し表面処理することも望ましい。セパレータ11のアノード触媒層13及びカソード触媒層14に対向する面には反応ガスまたは液体の流路となる溝が形成されている。アノード側のセパレータ11の流路溝には水または水蒸気が供給される。流路溝を流れる水または水蒸気はガス拡散層15を介してアノード触媒層に供給される。また、カソード側の側セパレータ11には被水素化物が供給される。流路溝を流れる被水素化物はガス拡散層15を介してカソード触媒に供給される。被水素化物の供給方法としては、液体状の被水素化物をそのまま供給してもよいし、HeガスやN2ガスをキャリアとした蒸気状の被水素化物を供給してもよい。
【0018】
ガス拡散層15は、セパレータ11の流路に供給された反応物質(ガスまたは液体)を触媒層の面内に均一に供給するために設けられ、カーボンペーパーあるいはカーボンクロス等の通気性を有する基体を使用する。特に、これらの基体を撥水化処理したものが好ましい。
【0019】
ガスケット16は絶縁性であり、特に水素あるいは被水素化物,有機ハイドライドに対して耐性があり、それらの透過が少なく機密性が保たれる材質であればよく、例えばブチルゴム,バイトンゴム,EPDMゴム等が挙げられる。
【0020】
アノード側に水または水蒸気を供給し、カソード側に被水素化物としてトルエンを供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を負荷すると、アノードにおいて(1)式の水の電気分解反応が起こる。(1)式の電気分解反応により生じたプロトンが固体高分子電解質膜12を介してカソード14へ移動し、カソードにおいて(2)式の水素付加反応が起こり有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンが生成する。
H2O→2H++1/2O2+2e- (1)
C7H8+6H++6e-→C7H14 (2)
【0021】
本実施形態の有機ハイドライド装置では、固体高分子電解質膜に透過水ブロックが形成されているため、アノードの水がカソードに透過することはない。よって、高効率で有機ハイドライドの生成が可能である。
【0022】
図2に本実施形態の有機ハイドライド製造装置の電極部分を示す。図2には透過水ブロック層27が形成された固体高分子電解質膜21の表裏にカソード触媒層22,アノード触媒層23が形成されたMEAをカソード側から見た平面図、平面図におけるD−E部分の断面図と拡大図を示している。
【0023】
MEAは、D−E断面図に示すように、カソード及びアノードは緻密な触媒層として透過水ブロック層27が形成された固体高分子電解質膜21の上下に形成されている。カソード触媒層22は拡大図Fに示したように、触媒担体25には触媒金属24が担持されており、触媒担体25同士が固体高分子電解質26により接着されている。触媒金属24は触媒担体25を介して互いにつながったネットワーク構造を有しおり、(2)の反応に必要な電子の通り道を形成している。また、触媒層中の固体高分子電解質26も同様につながったネットワーク構造を有しており、(2)の反応に必要なプロトンの通り道を形成している。
【0024】
電極反応は、触媒担体25上の金属触媒24と電解質および反応物質が接触する三相界面において行われる。本実施形態の電極では固体高分子電解質26によってプロトンの通り道を形成しているため、固体高分子電解質膜21と直接接していない金属触媒24にも三相界面が形成されているため、多くの金属触媒が電極反応に寄与できる構造となっている。
【0025】
本実施形態の有機ハイドライド製造装置の電極では、固体高分子電解質膜に透過水ブロック層27が形成されているため、アノードの水がカソードに透過することを防止できる。よって、高効率で有機ハイドライドの生成が可能である。
【0026】
図3に従来技術の電極の構造を示す。図3に示した電極では、固体高分子電解質膜31の表面に金属触媒34を担持した触媒担体35を直接形成している。従来技術の電極構造では電極反応に寄与する金属触媒34は電解質膜と直接接する部分のみであり、三相界面が少なく、反応に寄与する触媒が限られる。また、触媒のネットワーク構造の形成も少なく、抵抗が高くなると考えられる。
【0027】
また、図3に従来技術の電極の構造を示す。図3に示した電極では、固体高分子電解質膜31の表面に、触媒金属34を担持した触媒担体35と固体高分子電解質36が混ざった構造である。従来技術では、アノードの水が固体高分子電解質膜31を透過した透過水37がカソード触媒層に存在する。水とトルエンなどの被水素化物は互いに不溶性であり混ざり合わない。よって、水がカソード触媒層32に存在する場合、その水により触媒へのトルエン供給が阻害されてしまう。その結果として、トルエンなどの被水素化物が供給されない触媒金属38上では、水素付加反応ではなく、下記の(3)式により水素発生が起こると考えられる。
2H++2e-→H2 (3)
【0028】
よって、従来技術の電極では、被水素化物への水素付加反応が起こらない触媒が存在するため有機ハイドライド生成が制限され、その結果、エネルギー効率が低くなってしまうと考えられる。
【0029】
本発明のMEAに関しては以下の方法で作製することができる。まず、触媒金属を担持した担体,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したカソード触媒ペーストと、触媒金属,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したアノード触媒ペーストを作製する。それらのペーストを、それぞれポリフルオロエチレン(PTFE)フィルム等の剥離フィルム上に、スプレードライ法等により噴霧し、80℃で乾燥させて溶媒を蒸発させ、カソードおよびアノード触媒層を形成する。次にそれらのカソードおよびアノード触媒層を、透過水ブロック層が形成された固体高分子電解質膜を真ん中にはさんでホットプレス法によって接合し、剥離フィルム(PTFE)を剥がすことにより、本発明のMEAを作製することができる。
【0030】
また、本発明のMEA作製の別の一例として、上記の触媒金属を担持した担体,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したカソード触媒ペーストと、触媒金属,固体高分子電解質、および固体高分子電解質を溶解する溶媒を加えて十分混合したアノード触媒ペーストとを、スプレードライ法等により、直接透過水ブロック層が形成された固体高分子電解質膜に噴霧することでも作製することができる。
【0031】
固体高分子電解質膜を構成する有機高分子としては、パーフルオロカーボンスルホン酸、あるいは、ポリスチレンやポリエーテルケトン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン、その他のエンジニアリングプラスチック材料に、スルホン酸基,ホスホン酸基,カルボキシル基等のプロトン供与体をドープあるいは化学的に結合,固定化したものを用いることができる。また、上記材料において、架橋構造にしたり、部分フッ素化することで材料安定性を高めることも望ましい。また、有機高分子と金属酸化物水和物などとの複合電解質膜を用いることもできる。
【0032】
また、透過水をブロックする層としては、水素イオンを透過させ水をブロックするものであればよい。例えば、パラジウムあるいはパラジウム合金などの無機物が考えられる。パラジウムと合金化する金属としては、Rh,Cu,Co,Ir,Agなどの遷移金属が挙げられる。また、Mg,Caなどのアルカリ土類金属,La,Ndなどの希土類金属など、Pdと合金化できる金属は種々考えられる。また、透過水をブロックする層として、水素吸蔵合金が挙げられる。その水素吸蔵合金として、Ti−Fe系金属,V系金属,Mg系合金,Ca系合金が挙げられる。また、Ti,Mn,Zr,Niなどの遷移元素の合金をベースとしたAB2型金属も挙げられる。あるいは、LaNi5,ReNi5などの、希土類元素,Nb,Zr1原子に対して触媒効果を持つ遷移元素(Ni,Co,Alなど)5原子を含む合金をベースとしたAB5型が挙げられる。また、スルホン酸基,ホスホン酸基,カルボキシル基等のプロトン供与体が少ない有機高分子を用いることもできる。プロトン供与体が少ない有機高分子として、乾燥重量当たりのイオン交換量が0.75meq/g以下の有機高分子が望ましい。
【0033】
透過水ブロック層は、固体高分子電解質膜表面に形成してもよいし、また、固体高分子電解質膜の中に形成してもよい。本発明は、透過水をブロックする層を形成することにより、水の透過量を制限するものである。透過水は、プロトン移動に伴って移動するため、流れる電流値によりその量は異なる。本発明の透過水ブロック層を含む膜電極接合体としては、電流密度値60mA/cm2の際に、水の透過量が30μg/cm2・sec以下になるものが望ましい。この条件を満たすように上述したような透過水ブロック層が用いられる。
【0034】
触媒層に含有される固体高分子電解質には、プロトン導電性を示す高分子材料を用い、例えばパーフロロカーボン系スルホン酸樹脂やポリパーフロロスチレン系スルホン酸樹脂に代表されるスルホン酸化あるいはアルキレンスルホン酸化したフッ素系ポリマーやポリスチレン類が挙げられる。その他にポリスルホン類,ポリエーテルスルホン類,ポリエーテルエーテルスルホン類,ポリエーテルエーテルケトン類,炭化水素系ポリマーにスルホン酸基等のプロトン供与体を導入した材料が挙げられる。
【0035】
一方、本発明で用いる触媒金属には、水素付加作用を有する触媒材料を用い、例えば、Ni,Pd,Pt,Rh,Ir,Re,Ru,Mo,W,V,Os,Cr,Co,Feなどの金属及びこれらの合金触媒を用いることができる。水素付加触媒は、触媒金属の低減による低コスト化と反応表面積の増大化のため、微粒子化することが好ましい。また、微粒子の凝集による比表面積の減少を防止するため、担体に担持してもよい。触媒の製造方法は、共沈法,熱分解法,無電解めっき法など特に限定はない。
【0036】
カソード触媒担持材料としては、活性炭,カーボンナノチューブ,黒鉛などのカーボン材料や、シリカ,アルミナ,ゼオライトなどのアルミナシリケートなどを用いることができる。一方、アノードにカーボン材料が存在すると、カーボンが酸化される可能性があり、望ましいことではない。よって、アノード触媒担持材料としては、シリカ,アルミナ,ゼオライトなどのアルミナシリケートなど、非カーボン材料を用いることができる。もしくは、アノードには、担持材料を用いず、触媒金属のみを用いてもよい。
【0037】
被水素化物としては、ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,ナフタレン,メチルナフタレン,アントラセン,ビフェニル,フェナントロリン及びそれらのアルキル置換体のいずれか又は複数混合したものを用いることができる。これらの炭素同士の二重結合に水素が付加されることにより、水素を貯蔵することができる。
【0038】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
固体高分子電解質膜として、ナフィオン(デュポン社製)の表面に25μmのパラジウム膜を物理的に接着させたものを用いた。パラジウム膜は、アノード側表面に接着させた。
【0040】
カソード触媒層は、スプレーコーターを用いて、直接上記の固体高分子電解質膜に触媒スラリーを塗布して形成した。以下の順序でカソード触媒層を上記の固体高分子電解質膜に塗布した。
【0041】
パラジウム膜を接着させたナフィオンを基板のホットプレート上に置き、吸引することで固定した。ここで、ホットプレートの温度は50℃とした。
【0042】
次に、その上からマスクをして、スプレーコーター(ノードソン社製)でカソード触媒スラリーを塗布した。カソード触媒スラリーとして、白金担持カーボン触媒TEC10E70TPM(田中貴金属製)と水,5wt%ナフィオン溶液,221溶液(1−プロパノール:2−プロパノール:水=2:2:1の溶液)を2:1.2:5.4:10.6の重量比で混合したものを用いた。塗布条件は、液圧0.01MPa,スワール圧0.15MPa,霧化圧0.15MPa,ガン/基板距離60mm,基板温度50℃とした。カソード触媒量は0.4mgPt・cm-2とした。
【0043】
パラジウム膜を接着したナフィオン表面にカソード触媒層を形成した。また、ナフィオンの裏面にアノード触媒層を形成した。アノード触媒層は転写法により形成した。まず、アノード触媒スラリーを作製した。アノード触媒スラリーとして、白金ブラックHiSPEC1000(ジョンソンマッセイ製)と5wt%ナフィオン溶液,221溶液を、1:1.11:2.22の重量比で混合したものを用いた。それをアプリケータにより、テフロン(登録商標)のシート上に塗布した。テフロン(登録商標)のシート上に塗布したアノード触媒層を、ホットプレス(テスター産業社製SA−401−M)による熱転写でパラジウム膜を接着させたナフィオン表面に形成した。ホットプレス圧力は37.2kgf・cm-2,ホットプレス温度は120℃,ホットプレス時間は2分間とした。アノード触媒量は4.8mgPt・cm-2とした。
【0044】
作製したMEAを図1の有機ハイドライド製造装置に組み込んだ。セル抵抗は200mΩであった。
【0045】
カソードに被水素化物のトルエンを0.03ml/minおよび0.1ml/minで供給し、アノードに純水を5ml/minで供給した状態で、アノード−カソード間に電圧を2.2V印加した。セル温度は25,40,60,80℃でおこなった。
【0046】
図4にセル温度に対する電流値を示す。セル温度を高くするほど、電流密度は大きくなった。これは、温度が高くなるほど、反応に対する電極触媒の反応活性が高くなったためであると考えられる。また、トルエンの供給量が0.03ml/minと0.1ml/minの場合では、ほぼ同程度の電流が流れる結果となった。
【0047】
水素付加反応後のカソード液体を回収し、ガスクロマトグラフィで分析すると、いずれの条件においても有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンの生成が認められた。本発明の電極により、トルエンの水素付加反応でメチルシクロヘキサンが生成されたことを示唆する。また、カソードからの回収液には、水は含まれていなかった。ナフィオン表面に形成させたパラジウム膜により、アノードの水が透過するのを防止できたと考えられる。
【0048】
図5に水素付加反応時のトルエンからメチルシクロヘキサンへの転化率を示す。転化率は下記の式によりガスクロマトグラフィのピーク面積から算出した。
転化率=メチルシクロヘキサンのピーク面積
/(トルエンのピーク面積+メチルシクロヘキサンのピーク面積)×100
(4)
【0049】
セル温度25℃,40℃,60℃,80℃いずれにおいてもメチルシクロヘキサンは検出され、セル温度が高くなるほど転化率は大きくなった。また、トルエンの供給量0.1ml/minに比べて、0.03ml/minの方が転化率は高い結果となった。これは、トルエンの供給速度が小さいほど、トルエンが電極触媒に接する機会が増えたためであると考えられる。今回の条件で最も転化率が高かったのは、セル温度80℃トルエン流量0.03ml/minにおいて、転化率68%であった。
【0050】
〔比較例1〕
固体高分子電解質膜として、ナフィオンを用いてMEAを作製した。その他の作製条件は同一とした。
【0051】
作製したMEAを図1の有機ハイドライド製造装置に組み込み、セル抵抗を測定した所、250mΩであった。
【0052】
実施例1と同様の条件で、トルエンへの水素付加反応試験をおこなった。セル温度25,40,60,80℃において、アノード−カソード間に電圧を2.2V負荷した。図6にセル温度に対する電流値を示す。セル温度が高くなるほど電流は流れたが、実施例1と比べれば、いずれも電流密度は低い結果となった。
【0053】
水素付加反応後のカソード液体を回収し、ガスクロマトグラフィで分析すると、いずれの条件においても有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンの生成が認められた。しかし、カソードから回収した排液は、いずれのセル温度においても2相に分離していた。
上相部がトルエンおよびメチルシクロヘキサン,下相部が水であると考えられる。温度が高くなるほど、下相部の水の割合が大きくなった。この水はアノードの水が電解質膜を透過してカソードに到達したものと考えられる。特に、セル温度が高くなり電流が大きくなるほど、アノードからカソードへのプロトン移動が多くなり、それに伴う水の移動も多くなっていると考えられる。
【0054】
図7にトルエンからメチルシクロヘキサンへの転化率を示す。セル温度が高くなるほど転化率は高くなったが、実施例1に比べれば小さい結果となった。これは、透過水がカソード触媒層に存在しており、その水により触媒へのトルエン供給が阻害されてしまっていることが考えられる。その結果として、トルエンが供給されない触媒上では水素発生が起こるなどしてメチルシクロヘキサンの生成が起こらず、転化率が低くなってしまうと考えられる。
【実施例2】
【0055】
電解質膜としてナフィオンを用い、その表面に10μmのS−PES(Sulfonated-Poly Ether Sulfone)を接着させた。S−PESはポリエーテルスルホンにスルホン酸基を導入した有機高分子である。乾燥重量当たりのイオン交換容量が0.6meq/gのものを用いた。その他のMEA作製条件は、実施例1と同一でおこなった。
【0056】
作製したMEAを図1の有機ハイドライド製造装置に組み込み、セル抵抗を測定した所、350mΩであった。実施例1と同様の条件で、トルエンへの水素付加反応試験をおこなった。セル温度25,40,60,80℃において、アノード−カソード間に電圧を2.2V負荷した。
【0057】
水素付加反応後のカソード液体を回収し、ガスクロマトグラフィで分析すると、いずれの条件においても有機ハイドライドであるメチルシクロヘキサンの生成が認められた。また、カソード排液は、比較例1よりは水量は少ないものの、いずれも2相に分離していた。これは、S−PESでは、完全に水透過を防げなかったと考えられる。しかし、比較例1のナフィオン単体を電解質膜に用いた場合と比較すると、水透過が少なくなったため、転化率は高い結果となった。最も高い転化率は、セル温度80℃トルエン流量0.03ml/minにおいて、転化率58%であった。
【符号の説明】
【0058】
11 セパレータ
12,21,31 固体高分子電解質膜
13,23,33 アノード触媒層
14 カソード触媒層
15 ガス拡散層
16 ガスケット
22,32 カソード触媒層
24,34 触媒金属
25,35 触媒担体
26,36 固体高分子電解質
27 透過水ブロック層
37 透過水
38 反応に寄与しない触媒金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハイドライド製造装置であって、
被水素化物を還元するカソード触媒層、および水を酸化するアノード触媒層がプロトン導電性の固体高分子電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体と、カソード触媒層に被水素化物を供給する部材と、アノード触媒層に水または水蒸気を供給する部材とを備え、
前記固体高分子電解質膜表面もしくは内部に、水をブロックする層が形成されていることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記水をブロックする層が、パラジウムもしくはパラジウム合金であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項3】
請求項1において、前記水をブロックする層が、乾燥重量当たりのイオン交換量が0.75meq/g以下の有機高分子であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項4】
請求項1において、前記カソード触媒が、触媒金属と、前記触媒金属を担持した担体からなり、
前記アノード触媒が、触媒金属のみ、もしくは、触媒金属と前記触媒金属を担持した非カーボン担体からなることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項5】
請求項1において、前記被水素化物が、ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,ナフタレン,メチルナフタレン、または、アントラセンであることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項6】
請求項1において、前記触媒金属が、白金,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,イリジウム,モリブデン,レニウム,タングステンおよびこれらの少なくとも一部を含む合金からなることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項7】
被水素化物を還元するカソード触媒層、および水を酸化するアノード触媒層がプロトン導電性の固体高分子電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体と、前記カソード触媒層および前記アノード触媒層の表面に配置されたガス拡散層と、前記ガス拡散層の表面に配置され、前記ガス拡散層と接する面に流路溝が形成されたセパレータとを備える有機ハイドライド製造装置であって、
前記固体高分子電解質膜表面もしくは内部に、水をブロックする層が形成されていることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項8】
請求項7において、前記水をブロックする層が、パラジウムもしくはパラジウム合金であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項9】
請求項7において、前記水をブロックする層が、乾燥重量当たりのイオン交換量が0.75meq/g以下の有機高分子であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項10】
請求項7において、前記カソード触媒層側のセパレータの流路溝に被水素化物が供給され、前記アノード触媒層側のセパレータの流路溝に水または水蒸気が供給されることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項11】
請求項7において、前記被水素化物が、ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,ナフタレン,メチルナフタレン、または、アントラセンであることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項12】
請求項7において、前記触媒金属が、白金,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,イリジウム,モリブデン,レニウム,タングステンおよびこれらの少なくとも一部を含む合金からなることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項1】
有機ハイドライド製造装置であって、
被水素化物を還元するカソード触媒層、および水を酸化するアノード触媒層がプロトン導電性の固体高分子電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体と、カソード触媒層に被水素化物を供給する部材と、アノード触媒層に水または水蒸気を供給する部材とを備え、
前記固体高分子電解質膜表面もしくは内部に、水をブロックする層が形成されていることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記水をブロックする層が、パラジウムもしくはパラジウム合金であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項3】
請求項1において、前記水をブロックする層が、乾燥重量当たりのイオン交換量が0.75meq/g以下の有機高分子であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項4】
請求項1において、前記カソード触媒が、触媒金属と、前記触媒金属を担持した担体からなり、
前記アノード触媒が、触媒金属のみ、もしくは、触媒金属と前記触媒金属を担持した非カーボン担体からなることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項5】
請求項1において、前記被水素化物が、ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,ナフタレン,メチルナフタレン、または、アントラセンであることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項6】
請求項1において、前記触媒金属が、白金,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,イリジウム,モリブデン,レニウム,タングステンおよびこれらの少なくとも一部を含む合金からなることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項7】
被水素化物を還元するカソード触媒層、および水を酸化するアノード触媒層がプロトン導電性の固体高分子電解質膜を挟むように配置された膜電極接合体と、前記カソード触媒層および前記アノード触媒層の表面に配置されたガス拡散層と、前記ガス拡散層の表面に配置され、前記ガス拡散層と接する面に流路溝が形成されたセパレータとを備える有機ハイドライド製造装置であって、
前記固体高分子電解質膜表面もしくは内部に、水をブロックする層が形成されていることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項8】
請求項7において、前記水をブロックする層が、パラジウムもしくはパラジウム合金であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項9】
請求項7において、前記水をブロックする層が、乾燥重量当たりのイオン交換量が0.75meq/g以下の有機高分子であることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項10】
請求項7において、前記カソード触媒層側のセパレータの流路溝に被水素化物が供給され、前記アノード触媒層側のセパレータの流路溝に水または水蒸気が供給されることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項11】
請求項7において、前記被水素化物が、ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,ナフタレン,メチルナフタレン、または、アントラセンであることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【請求項12】
請求項7において、前記触媒金属が、白金,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,イリジウム,モリブデン,レニウム,タングステンおよびこれらの少なくとも一部を含む合金からなることを特徴とする有機ハイドライド製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−72477(P2012−72477A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220254(P2010−220254)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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