説明

有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイ

【課題】高い光電変換効率及び耐久性を有する有機光電変換素子、それを用いた太陽電池及び光センサアレイを提供する。
【解決手段】陰極、陽極、及び電子供与性を有するp型共役高分子半導体材料と電子受容性を有するn型半導体材料が混合された光電変換層を有する有機光電変換素子であってナフタロシアニン構造を有する化合物を含有する有機光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイに関し、さらに詳しくは、バルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子、この有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光センサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギーから直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いた太陽電池、GaAsやCIGSなどの化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案・実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの太陽電池で発電するコストは、未だ化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事が必要であり、これらも発電コストが高くなる一因であった。
【0004】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低コストな発電コストを達成しうる太陽電池として、透明電極と対電極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合された光電変換層を挟んだバルクへテロジャンクション型光電変換素子が提案されている(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。
【0005】
これらのバルクへテロジャンクション型太陽電池においては、陽極・陰極以外は塗布プロセスで形成されているため、高速且つ安価な製造が可能であると期待され、前述の発電コストの課題を解決できる可能性がある。更に、上記のSi系太陽電池・化合物半導体系太陽電池・色素増感太陽電池などと異なり、160℃より高温のプロセスがないため、安価且つ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0006】
前記非特許文献1では、5%を超える変換効率を達成するにいたっているが、これはチオフェン環とベンゾチアジアゾール環との間の分子内電荷移動を利用することで非常な長波長(〜900nm)までの幅広い太陽光を吸収することが可能となったためである。
【0007】
他方で太陽電池には耐久性も要求されるが、未だ有機薄膜太陽電池の耐久性は不十分なものであった。上記材料を用いた別の非特許文献2では、100時間で光電変換効率が約40%低下したと報告されている。
【0008】
また、バルクへテロジャンクション型太陽電池においては、第三成分として有機金属錯体化合物を含有することで光電変換効率を向上することが見出されている(特許文献2、非特許文献3参照)。
【0009】
前記特許文献2では、最低空軌道のレベルが、p型共役高分子の伝導帯の最低エネルギー準位とn型半導体の伝導帯の最低エネルギー準位との間にあり、最高被占軌道のレベルが、p型共役高分子の価電子帯の最高エネルギー準位とn型半導体の価電子帯の最高エネルギー準位との間にある有機金属錯体を第三成分として含有することで光電変換効率が向上することを開示している。
【0010】
前記非特許文献3では、ビストリヘキシルシリルシリコンフタロシアニンを第三成分として含有することで光電変換効率が向上することを開示している。
【0011】
しかしながら、何れも光電変換効率としては不十分なものであった。また、素子の耐久性については言及されていなかった。
【0012】
本発明に用いられる化合物に類似した構造の化合物は、既に開示されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)が、ここで開示されているのは有機半導体材料としての用途であり、本発明に係るバルクへテロジャンクション型太陽電池においての第三成分として有効であることを示唆するのは困難であった。
【0013】
特許文献5では本発明に用いられる化合物に類似した構造の化合物が既に開示されているが、色素増感型太陽電池の増感色素としての用途であり、本発明に係るバルクへテロジャンクション型太陽電池においての第三成分として有効であることを示唆するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表平8−500701号公報
【特許文献2】特開2007−180190号公報
【特許文献3】特開2009−54606号公報
【特許文献4】特開昭63−5093号公報
【特許文献5】特開2009−193763号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A.Heeger;Nature Mat.,vol.6(2007),p497
【非特許文献2】Science_317_2007_p222
【非特許文献3】ACS Appl.Mater.Interfaces,2009,1(4),804−810
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高い光電変換効率及び耐久性を有する有機光電変換素子、それを用いた太陽電池及び光センサアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0018】
1.陰極、陽極、及び電子供与性を有するp型共役高分子半導体材料と電子受容性を有するn型半導体材料が混合された光電変換層を有する有機光電変換素子であって、前記光電変換層が、下記一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機光電変換素子。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、MはSi、GeまたはSnを表し、Xは炭素またはSiを表し、R〜Rは置換基を表す。ただし、R〜Rのうち少なくとも一つは、置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基、置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基、のいずれかを表す。R〜Rは全て同一でも異なっても良い。R〜R27はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
2.前記R〜Rが、置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基、置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基、のいずれかであることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0021】
3.前記置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基が、炭素数3以上の置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基である、或いは、前記置換又は無置換のアルコキシ基が、炭素数3以上の置換又は無置換のアルコキシ基である、ことを特徴とする前記1または2に記載の有機光電変換素子。
【0022】
4.前記XがSiであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0023】
5.前記MがSiであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0024】
6.前記一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物を含有する光電変換層が、溶液塗布法によって作製されたことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0025】
7.前記光電変換層が、溶液塗布された後、加熱処理されて作製されたことを特徴とする前記6に記載の有機光電変換素子。
【0026】
8.前記1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【0027】
9.前記1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子が、アレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、高い光電変換効率及び耐久性を有する有機光電変換素子、それを用いた太陽電池及び光センサアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図2】p−i−nの三層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図4】光センサアレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討したところ、p型共役高分子半導体材料と電子受容性を有するn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション型光電変換層に、第三成分として前記一般式(1)で表される特定構造のナフタロシアニン化合物を含有させることで上記課題を達成できることを見出した。
【0032】
p型共役高分子半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション型光電変換層はブレンド液を塗布した後、熱によるアニールを行うとp型共役高分子半導体材料の結晶性が促進されミクロ相分離構造を形成し、p型共役高分子半導体材料とn型半導体材料の接触界面が増大する。
【0033】
バルクへテロジャンクション型光電変換層に光が入射されると、p型共役高分子半導体材料の電子が最高被占軌道(以下、「HOMO」という)から最低空軌道(以下、「LUMO」と言う)に励起され、この電子はn型半導体材料の伝導帯に移動した後、外部回路を経由してp型共役高分子の伝導帯に移動する。そして、p型共役高分子の伝導帯で生じた電子は、LUMOのレベルに移動する。一方、光が入射されると、p型共役高分子半導体材料のHOMOのレベルに発生した正孔は、外部回路を経由してn型半導体の価電子帯に移動する。こうしてバルクへテロジャンクション型光電変換層おいて光電流が流れる。このような光電荷分離はp型共役高分子半導体材料とn型半導体材料の接触界面が大きいほど促進されると考えられている。
【0034】
この時、第三成分を含有することにより、光電荷分離を促進することとp型共役高分子半導体が吸収しない太陽光の赤外波長領域を吸収することにより光電変換効率を向上できると考えられている。
【0035】
本発明の前記一般式(1)の特定構造の嵩高い置換基を有するナフタロシアニン化合物を第三成分として含有することにより、熱によるアニールの際にp型共役高分子半導体材料の結晶成長を阻害することなく、かつp型共役高分子半導体材料の結晶内に取り込まれることなくp型共役高分子半導体材料とn型半導体材料の界面に配向でき、光電荷分離をより効率よく促進していると本発明者らは考えている。また界面に配向した特定構造のナフタロシアニン化合物がp型共役高分子半導体材料の蛍光波長に合った赤外領域に吸収を有することで、単にp型共役高分子半導体の吸収しない太陽光の赤外波長領域を補うだけでなく、エネルギー移動を利用した光電荷分離を促進していると本発明者らは考えている。
【0036】
また本発明の特定構造のナフタロシアニン化合物は安定性が高く長寿命化を実現していると本発明者らは考えている。
【0037】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
〔一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物〕
一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物について説明する。
【0038】
前記一般式(1)において、R〜Rは置換基を表す。R〜R27はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0039】
〜R、R〜R27で表される置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、多環シクロアルキル基、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の基等が挙げられる。
【0040】
〜R、R〜R27で表される置換基の例としては、さらに詳しくは、下記の(1)〜(48)などが挙げられる。
(1)ハロゲン原子
例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
(2)アルキル基
好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換の直鎖または分岐アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)
(3)シクロアルキル基
好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)
(4)ビシクロアルキル基
好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)
(5)多環シクロアルキル基
好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のトリシクロアルキル基(例えば、1−アダマンチル)、さらに環構造が多い多環シクロアルキル基
なお、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)は上記アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、多環シクロアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
(6)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、(6−a)〜(6−c)を包含するものである。
(6−a)アルケニル基
好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)
(6−b)シクロアルケニル基
好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)
(6−c)ビシクロアルケニル基
置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基(例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)
(7)アルキニル基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)
(8)アリール基
好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)
(9)複素環基
好ましくは、5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜50の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフロル。なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い)
(10)シアノ基
(11)ヒドロキシ基
(12)ニトロ基
(13)カルボキシ基
(14)アルコキシ基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)
(15)アリールオキシ基
好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)
(16)シリルオキシ基
好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)
(17)ヘテロ環オキシ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)
(18)アシルオキシ基
好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)
(19)カルバモイルオキシ基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)
(20)アルコキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)
(21)アリールオキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)
(22)アミノ基
好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)
(23)アンモニオ基
好ましくは、アンモニオ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、複素環が置換したアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)
(24)アシルアミノ基
好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)
(25)アミノカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ(例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)
(26)アルコキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)
(27)アリールオキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)
(28)スルファモイルアミノ基
好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)
(29)アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ(例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)
(30)メルカプト基
(31)アルキルチオ基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)
(32)アリールチオ基
好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ(例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)
(33)ヘテロ環チオ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)
(34)スルファモイル基
好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)
(35)スルホ基
(36)アルキルもしくはアリールスルフィニル基
好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)
(37)アルキルもしくはアリールスルホニル基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)
(38)アシル基
好ましくは、ホルミル基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基(例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)
(39)アリールオキシカルボニル基
好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)
(40)アルコキシカルボニル基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)
(41)カルバモイル基
好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)
(42)アリールおよびヘテロ環アゾ基
好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)
(43)イミド基
好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド
(44)ホスフィノ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)
(45)ホスフィニル基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基(例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)
(46)ホスフィニルオキシ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)
(47)ホスフィニルアミノ基
好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)
(48)ホスフォ基
(49)シリル基
好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)
(50)ヒドラジノ基
好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基(例えば、トリメチルヒドラジノ)
(51)ウレイド基
好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基(例えばN,N−ジメチルウレイド)
また、R〜R、R〜R27で表される置換基の2つが共同して環を形成することもできる。このような環としては芳香族、または非芳香族の炭化水素環、または複素環や、これらがさらに組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、およびフェナジン環が挙げられる。
【0041】
上記のR〜R、R〜R27で表される置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのようなR〜R、R〜R27で表される置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0042】
〜R27のうち、8個以上が水素原子である場合が好ましく、16個以上が水素原子である場合がより好ましく、全てが水素原子である場合が最も好ましい。
【0043】
〜R27で表される置換基としては炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基から選ばれることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基のいずれかから選ばれることがより好ましい。二つ以上のR〜R27が共同して環を形成してもよく、その中で特にRおよびR、R12およびR13、R18およびR19、R24およびR25で共同してベンゼン環またはナフタレン環を形成している場合が好ましい。
【0044】
本発明ではp型共役高分子半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション光電変換層に第三成分として記一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物を含有し第三成分がp型共役高分子半導体材料とn型半導体材料の界面に配向することが重要である。また、溶液塗布法によりバルクヘテロジャンクション光電変換層を形成するため、良好な溶液プロセス適性を有することが重要である。このような観点からは、軸配位に適度に分子間相互作用を弱めるために適度な嵩高さの置換基を導入することが有効である。
【0045】
本発明では、R〜Rのうち少なくとも一つが、置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基、置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基、のいずれかである。R〜Rは全て同一でも異なっても良い。
【0046】
好ましくはR〜Rが、置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基、置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基、のいずれかである。
【0047】
該置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基としては、炭素数3以上の置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基が好ましく、炭素数3〜12の置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基がさらに好ましく、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。
【0048】
該置換又は無置換のアルコキシ基としては、炭素数3以上の置換又は無置換のアルコキシ基が好ましく、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基が好ましい。
【0049】
該置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基としてはフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基、チオフェニル基、2−フリル、2−チエニル、が好ましい。
【0050】
該置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基としてはシクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラヒドロフリル基が好ましい。
【0051】
MはSi、GeまたはSnを表す。中心元素Mとしては、Siである場合が特に好ましい。
【0052】
Xは炭素またはSiを表す。連結元素Xとしては、Siである場合が特に好ましい。
【0053】
以下に、本発明の一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物(以下単に、本発明の化合物ともいう。)の具体例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0054】
【化2】

【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
(合成法)
本発明の化合物のナフタロシアニン環形成反応は、白井汪芳、小林長夫編・著「フタロシアニン−化学と機能−」(アイピーシー社、1997年刊)の第1〜62頁、廣橋亮、坂本恵一、奥村映子編「機能性色素としてのフタロシアニン」(アイピーシー社、2004年刊)の第29〜77頁、特許文献3および特許文献5に準じて行うことができる。
【0058】
ナフタロシアニン誘導体の代表的な合成方法としては、これらの文献に記載のワイラー法、フタロニトリル法、リチウム法、サブフタロシアニン法、および塩素化フタロシアニン法などが挙げられる。本発明の化合物のナフタロシアニン環形成反応において、いかなる反応条件を用いても良い。環形成反応においては、ナフタロシアニンの中心金属となる種々の金属を添加することが好ましいが、中心金属を持たないナフタロシアニン誘導体を合成後に、所望の金属を導入しても良い。反応溶媒としては、いかなる溶媒を用いても良いが、好ましくは高沸点の溶媒である。また、環形成反応促進のために、酸または塩基を用いることが好ましく、特に塩基を用いることが好ましい。最適な反応条件は、目的とするナフタロシアニン誘導体の構造により異なるが、上記の文献に記載された具体的な反応条件を参考に設定することができる。
【0059】
上記のナフタロシアニン誘導体の合成に使用する原料としては、無水ナフタル酸、ナフタルイミド、ナフタル酸およびその塩、ナフタル酸ジアミド、ナフタロニトリル、1,3−ジイミノベンゾイソインドリンなどの誘導体を用いることができる。これらの原料は公知のいかなる方法で合成しても良い。
【0060】
〔有機光電変換素子及び太陽電池〕
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
【0061】
基板11は、順次積層された陽極12、光電変換部14及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に陽極12及び陰極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0062】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型共役高分子半導体材料とn型半導体材料および第三成分として前記一般式(1)で表される特定構造のナフタロシアニン化合物とを混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型共役高分子半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。また、第三成分として前記一般式(1)で表される特定構造のナフタロシアニン化合物がp型共役高分子半導体材料とn型半導体材料の界面に配向することにより変換効率を向上しているものと本発明者らは考えている。
【0063】
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、陽極12へ、正孔は、陰極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0064】
なお、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0065】
さらに好ましい構成としては、前記光電変換部14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層および/または第三成分が混合した、14i層単体であるが、p型半導体材料単体からなる14p層、及びn型半導体材料単体からなる14n層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0066】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次陽極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで陰極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0067】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0068】
(p型半導体材料)
本発明において、バルクヘテロジャンクション層のp型半導体材料は、分子構造に共役二重結合を有する共役高分子半導体材料であり、共役高分子半導体材料としては、公知の共役高分子材料が使用できる。
【0069】
共役系高分子としては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv.Mater.,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。なかでもポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、PCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体が特に好ましい。
【0070】
また、他の公知の縮合多環芳香族低分子化合物またはオリゴマー材料を併用しても良い。
【0071】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0072】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基を持ったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No.14,4986,J.Amer.Chem.Soc.,vol.123,p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008),No.9,2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、特開2008−16834号等に記載のポルフィリン系化合物等が挙げられる。
【0073】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーを好適に用いることができる。
【0074】
本発明の好ましい有機光電変換素子のp−i−nの三層構成となっている構成(図2)では、バルクヘテロジャンクション層(14i層)であるi層のp型半導体材料は上記の共役高分子半導体材料であるが、p層(14p層)に使用するp型半導体材料は、上記の高分子材料および縮合多環芳香族低分子化合物またはオリゴマー材料を使用することができる。
【0075】
(n型半導体材料)
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0076】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0077】
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有しより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0078】
(バルクヘテロジャンクション層の形成方法)
本発明のp型共役高分子半導体材料と電子受容性および第三成分が混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。塗布法としては、キャスト法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スピンコート法、Langmuir−Blodgett(LB)法などの通常の方法を用いることができ、キャスト法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが特に好ましい。
【0079】
塗布法を用いてバルクヘテロジャンクション層の形成する場合、層を形成する材料を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルフォキサイドなどの極性溶媒)および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。その塗布液中の本発明の化合物の濃度は、好ましくは、0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜10質量%とすることにより、任意の厚さの膜を形成できる。
【0080】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集またはp型共役高分子半導体材料の結晶化が促進されバルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることが、また本発明の第三成分がp型共役高分子半導体材料とn型半導体材料の界面に配向できバルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0081】
加熱方法としては、加熱温度はp型共役高分子半導体材料のガラス転移温度よりも高いほうが好ましく、使用する溶媒の沸点より高いことが好ましい。また樹脂フィルムを基板に用いる場合は樹脂フィルムの融点より低い温度が好ましい。用いる材料にもよるが、130〜160℃で3〜60分の加熱が生産性のからは好ましい。
【0082】
本発明のバルクへテロジャンクション型光電変換層のp型共役高分子半導体材料と型半導体材料との混合比は、質量比で2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。本発明の第三成分の混合比(含有量)はp型共役高分子半導体材料と型半導体材料の総和に対して0.5〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましくは2〜6質量%の範囲である。
【0083】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間に電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0084】
電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。より好ましくは、n型半導体のHOMO準位よりも深い材料を電子輸送層として用いることである。また、電子を輸送する特性から、電子移動度の高い化合物を用いることが好ましい。
【0085】
このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0086】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0087】
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0088】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0089】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0090】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
【0091】
〔電極〕
本発明の有機光電変換素子においては、少なくとも陽極と陰極とを有する。また、タンデム構成をとる場合には中間電極を用いることでタンデム構成を達成することができる。なお、本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。
【0092】
また透光性があるかどうかといった機能から、透光性のある電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合がある。通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
【0093】
(陽極)
本発明の陽極は、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0094】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて陽極とすることもできる。
【0095】
(陰極)
陰極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。陰極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0096】
陰極の導電材として金属材料を用いれば陰極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0097】
また、陰極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成でき好ましい。
【0098】
また、陰極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の陰極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記陽極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性陰極とすることができる。
【0099】
(中間電極)
また、前記図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極(電荷再結合層)の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記陽極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0100】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0101】
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0102】
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0103】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0104】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0105】
〔光学機能層〕
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0106】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0107】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0108】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0109】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0110】
〔パターニング〕
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0111】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
【0112】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
【0113】
〔封止〕
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0114】
〔光センサアレイ〕
次に、以上説明したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を応用した光センサアレイについて詳細に説明する。光センサアレイは、前記のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が受光によって電流を発生することを利用して、前記の光電変換素子を細かく画素状に並べて作製し、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する効果を有するセンサである。
【0115】
図4は、光センサアレイの構成を示す図である。図4(a)は、上面図であり、図4(b)は、図4(A)のA−A’線断面図である。
【0116】
図4において、光センサアレイ20は、保持部材としての基板21上に、下部電極としての陽極22(例えばITO)、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部24及び陽極22と対をなし、上部電極としての陰極23(例えばAl)が順次積層されたものである。光電変換部24は、p型共役高分子半導体材料とn型半導体材料および本発明の第三成分とを混合したバルクヘテロジャンクション層を有してなる光電変換層24bと、バッファ層24aとの2層で構成される。図4に示す例では、6個のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が形成されている。
【0117】
これら基板21、陽極22、光電変換層24b及び陰極23は、前述したバルクヘテロジャンクション型の光電変換素子10における陽極12、光電変換部14及び陰極13と同等の構成及び役割を示すものである。
【0118】
基板21には、例えば、ガラスが用いられ、陽極22には、例えば、ITOが用いられ、陰極23には、例えば、アルミニウムが用いられる。そして、光電変換層24bのp型共役高分子半導体材料には、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)が用いられ、n型半導体材料には、例えば、前記PCBMが用いられる。また、第三成分として本発明の化合物が用いられる。バッファ層24aには、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)導電性高分子(スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP)が用いられる。このような光センサアレイ20は、後述の実施例3のようにして製作されることができる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0120】
実施例1:
〔有機光電変換素子1〜25の作製〕
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を110nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、透明電極を形成した。
【0121】
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0122】
これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。
【0123】
クロロベンゼンにp型共役高分子半導体材料として、P3HT(プレクトストロニクス製、プレックスコアOS2100)を1.0質量%、n型半導体材料としてPCBM(フロンティアカーボン製)を1.0質量%、第三成分として表1に記載した化合物を0.07質量%溶解した液を作製し、オーブンで70℃に過熱しながら攪拌(60分)した後室温に冷却した。この溶液を0.2μmのフィルタでろ過をかけながら700rpmで60秒、次いで2000rpmで2秒間のスピンコートを行い、その後150℃、5分加熱しアニール処理を施し、光電変換層を得た。
【0124】
次に、上記有機層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを0.5nm、Alを80nm蒸着した。蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。最後に120℃で10分間の加熱を行い、有機光電変換素子1〜25を得た。
【0125】
得られた有機光電変換素子1〜22は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0126】
(光電変換効率の評価)
上記作製した封止した光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部についてそれぞれ測定し、平均値を求めた。また、Jsc、Voc、FFから式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。結果を表1に示す。数字が大きい程エネルギー変換効率(光電変換効率)が良好であることを示す。
【0127】
式1 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
(光電変換効率の耐久性評価)
ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、暴露前の変換効率を測定した。更に、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を10倍の1000mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、暴露後の変換効率を測定した。式2により変換効率の相対効率低下を算出した。結果を表1に示す。数字が小さい程、エネルギー変換効率の耐久性(光電変換効率の耐久性)が良好であることを示す。
【0128】
式2 変換効率の相対効率低下(%)=(1−暴露後の変換効率/暴露前の変換効率)×100
【0129】
【表1】

【0130】
比較化合物1:下記構造のビストリヘキシルシリルシリコンフタロシアニン(Aldrich社製)
【0131】
【化5】

【0132】
比較化合物2:下記構造のビス(テトラブチルアンモニウム)シス−ビス(チオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4−ジカルボキシリックアシッド,4’−カルボキシレート)ルテニウム(II)錯体(ソラオニクス社製、「N719」)
【0133】
【化6】

【0134】
比較化合物3、4
下記の一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物(比較化合物3、4)
【0135】
【化7】

【0136】
表1から、本発明に係る構造を有する化合物を第三成分として添加することで、変換効率を向上でき、耐久性(変換効率の耐久性)も向上できることがわかる。
【0137】
実施例2:
〔有機光電変換素子26〜40の作製〕
p型共役高分子半導体材料を下記構造のPCPDTBTに変更し、第三成分として表2に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして有機光電変換素子26〜40を作製した。実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0138】
【化8】

【0139】
【表2】

【0140】
表2から、本発明に係る構造を有する化合物を第三成分として添加することで、変換効率を向上でき、耐久性(変換効率の耐久性)も向上できることがわかる。
【0141】
実施例3
〔光センサアレイの作製〕
ガラス基板上にスパッタリングによりITO膜を形成し、フォトリソグラフィにより所定のパターン形状に加工した。ガラス基板の厚さは、0.7mm、ITO膜の厚さは、200nm、フォトリソグラフィ後のITO膜における受光部面積aは、0.5mm×0.5mmであった。次に、このガラス基板21上に、スピンコート法(条件;回転数=1000rpm、フィルタ径=1.2μm)によりPEDOT−PSS膜を形成した。その後、該基板を、オーブンで140℃、10分加熱し、乾燥させた。乾燥後のPEDOT−PSS膜の厚さは30nmであった。
【0142】
次に、上記PEDOT−PSS膜の上に、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)とPCBMおよび本発明の化合物1の10:10:0.7混合膜を、スピンコート法(条件;回転数=3300rpm、フィルタ径=0.8μm)により形成した。このスピンコートに際しては、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)とPCBMおよび本発明の化合物1をクロロベンゼン溶媒に=10:10:0.7で混合し、これをオーブンで70℃に過熱しながら攪拌(60分)して得た混合液を室温に冷却して用いた。混合膜の形成後、窒素ガス雰囲気下においてオーブンで150℃、5分加熱しアニール処理を施した。アニール処理後の混合膜の厚さは70nmであった。
【0143】
その後、所定のパターン開口を備えたメタルマスクを用い、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)とPCBMおよび本発明の化合物1の混合膜の上に、電子輸送層として前記BCを5nm蒸着し、ついで陰極としてのアルミニウム層を蒸着法により形成(厚さ=10nm)した。その後、PVA(polyvinyl alcohol)をスピンコートで1μm形成し、150℃で焼成することで図略のパッシベーション層を作製した。以上により、図4に記載の光センサアレイ20を作製した。
【0144】
この光センサアレイ20上に、所定のパターンを有する光を照射したところ、光の当たったセルのみから光電流が検出され、光センサとして機能することが確認された。
【符号の説明】
【0145】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 光電変換層
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換層
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換層
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 陽極
23 陰極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、及び電子供与性を有するp型共役高分子半導体材料と電子受容性を有するn型半導体材料が混合された光電変換層を有する有機光電変換素子であって、前記光電変換層が、下記一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機光電変換素子。
【化1】

(式中、MはSi、GeまたはSnを表し、Xは炭素またはSiを表し、R〜Rは置換基を表す。ただし、R〜Rのうち少なくとも一つは、置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基、置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基、のいずれかを表す。R〜Rは全て同一でも異なっても良い。R〜R27はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【請求項2】
前記R〜Rが、置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族へテロ環基、置換又は無置換のシクロアルキル基または脂肪族へテロ環基、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基が、炭素数3以上の置換又は無置換の直鎖または分岐アルキル基である、或いは、前記置換又は無置換のアルコキシ基が、炭素数3以上の置換又は無置換のアルコキシ基である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
前記XがSiであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
前記MがSiであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
前記一般式(1)で表されるナフタロシアニン構造を有する化合物を含有する光電変換層が、溶液塗布法によって作製されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項7】
前記光電変換層が、溶液塗布された後、加熱処理されて作製されたことを特徴とする請求項6に記載の有機光電変換素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子が、アレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−155105(P2011−155105A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15179(P2010−15179)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】