説明

有機光電変換素子及びその製造方法

【課題】キャリア選択機能を付与した導電パスを有することにより、キャリア分離能が高まり導電性に優れ、軽量性、柔軟性をも実現できる第一又は第二の電極とその製造方法を提供する。
【解決手段】第一の電極12と第二の電極14間に少なくとも光電変換層13を有する有機光電変換素子であって、該光電変換層の少なくとも一層がバルクヘテロジャンクション構造であり、かつ、第一の電極と第二の電極の少なくとも一方は導電性繊維15を有し、該導電性繊維がp型有機半導体材料またはn型有機半導体材料のいずれか一方に被覆されていることを特徴とする有機光電変換素子及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池は塗布法で形成できることから大量生産に適した太陽電池として注目され、多くの研究機関で盛んに研究がなされている。有機太陽電池は有機ドナー材料と有機アクセプター材料を混合した、所謂、バルクヘテロジャンクション構造によって、課題だった電荷分離効率を向上させている。結果としてエネルギー変換効率は5%台まで向上し、一気に実用レベルにまで発展してきた分野と言える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
バルクヘテロジャンクション型の太陽電池では、一般的には、p型半導体とn型半導体のドメインのサイズが小さいく、pn界面の表面積が大きい方が励起子の発生サイトが多くなるため有利であると考えられるが、発生したキャリアを電極まで運ぶためには、ドメインによる電極までの導電パスが形成されている必要があり、そのためには膜厚に匹敵するくらいのドメインサイズが必要となり、両者はトレードオフの関係になっていた。また、ドメインによる導電パスを形成させる手法としては、p型半導体とn型半導体の混合溶液を塗布した後、焼成処理を行うという方法が用いられているが、この方法ではドメインの形成の仕方を制御するのが難しく、電極まで繋がっていなく、キャリアが発生しても電荷を取り出せない発電領域が出来てしまうという問題もあった。
【0004】
さらには、バルクヘテロジャンクション層は、厚膜化することにより太陽光を効率良く吸収することができるが、厚膜化しすぎると発生したキャリアが電極に到達する前に失活、再結合してしまう問題がある。
【0005】
正孔輸送層としてNiOを積層した有機光電変換素子が報告されて(例えば、非特許文献1参照)いる。この文献では、NiOをパルスレーザー蒸着法により成膜しており、真空プロセスを必要とすることから生産性が悪いという問題点があった。バルクヘテロジャンクション層を厚く積層すると、内部抵抗が高くなる、生成したキャリアが正孔輸送層にたどり着く前に再結合または失活してしまうなどの原因により結果として変換効率の低下を招いており、実用上の課題となっていた。
【0006】
基板上にイオンビーム照射法により金属ナノロッドを形成させ、その後表面を酸化させるという方法が報告されて(例えば、特許文献2参照)いる。しかし、この方法では金属ナノロッドの表面を改質させて酸化物層を形成させるため、ロッドを形成する金属の導電性と、表面を改質した酸化物層のブロック機能とを両立することが困難であるといった問題もあった。
【0007】
本発明では、導電性を担うナノワイヤ表面を異なる組成から成る物質を被覆することによりブロック層を形成させることを特徴としている。改質ではなく被覆することにより、導電性を担う部分とブロック性を担う部分の物質の組成選択の幅が広がるため、より導電性とブロック機能を両立した導電層を備えた補助電極を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5331183号明細書
【特許文献2】特開2008−192680号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】PANS、vol105、No.8、2783
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的は、光電変換効率に優れる光電変換素子を提供することであり、特にフレキシブル基板にも適用でき光電変換効率に優れる光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
1.第一の電極と第二の電極間に少なくとも光電変換層を有する有機光電変換素子であって、該光電変換層の少なくとも一層がバルクヘテロジャンクション構造であり、かつ、第一の電極は導電性繊維を有し、該導電性繊維が吸着基を導入したp型有機半導体材料またはn型有機半導体材料によって被覆されていることを特徴とする有機光電変換素子。
【0013】
2.前記導電性繊維が金属ナノワイヤであることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0014】
3.前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする前記2に記載の有機光電変換素子。
【0015】
4.前記導電性繊維を被覆するp型有機半導体材料またはn型有機半導体材料が少なくともUV硬化型、熱架橋型、及び、熱変換型のいずれかからなることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0016】
5.前記p型有機半導体材料がポリ−3ヘキシルチオフェン又は、ポルフィリン誘導体であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0017】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法において、第一の電極の形成工程が、導電性繊維を塗布する工程と、p型半導体もしくはn型半導体を化学的吸着法にて被覆する工程を含むことを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、キャリア選択機能を付与した導電パスを有することにより、キャリア分離能が高まり導電性に優れ、軽量性、柔軟性をも実現できる第一の電極とその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、第一の電極と、第二の電極との間にバルクヘテロジャンクション型の光電変換層を有する有機光電変換素子であって、該第一の電極は、該光電変換層の側に導電性繊維からなる補助電極を有し、該導電性繊維は、有機物半導体で被覆されており、かつ該光電変換層は、該導電性繊維の少なくとも一部を含むように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明では、特に補助電極として、導電性繊維を構成する元素でない金属の金属酸化物で被覆された導電性繊維を用いることにより、光電変換効率に優れる光電変換素子が提供できる。
【0022】
以下、本発明において好ましく用いることができる構成について、詳細に説明する。
【0023】
〔有機光電変換素子〕
発明の光電変換素子について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい有機光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
【0024】
図1において、有機光電変換素子10は、第一の電極12、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層およびn型半導体層)を有する光電変換層13(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、及び第二の電極14が積層された構造を有する。
【0025】
図1では、有機光電変換素子10が基板11上に配置された例を示している。
【0026】
第一の電極は、光電変換層13の側に導電性繊維15からなる補助電極16を有している。
【0027】
光電変換層13と第二の電極14との間に電子輸送層などの中間層を有しても良い。
【0028】
本発明では、第一の電極が、導電性繊維表面を有機半導体で被覆されている補助電極を含むことが特徴である。
【0029】
本発明の有機光電変換素子は、例えば以下のようにして作製できる。
【0030】
基板11上に、第一の電極として、導電性の層を形成し、その上に導電性繊維を含有する塗布液を塗布し、導電性繊維を新たに被覆させる。さらに、その上にp型半導体とn型半導体材料含む光電変換層13、電子輸送層17を順次積層し、第二の電極14を形成させることにより、有機光電変換素子を作製することができる。
【0031】
以下、本発明の好ましい構成について説明する。
【0032】
〔第一の電極〕
本発明の第一の電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができる。本発明では、第一の電極が、導電性繊維表面を有機物半導体で新たに被覆されている補助電極を含むことが特徴である。
【0033】
本発明の好ましい形態として、第一の電極が導電性の材料からなる層を有し、更に上述した導電性繊維からなる補助電極を有することも好ましい。
【0034】
例えば、陽極として用いる場合、第一の電極は、好ましくは300〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、銀、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、クロム、タングステン、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、シリコン等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、導電性高分子を用いることができ、また、それらを組み合わせて構成しても良い。
【0035】
さらに、第一の電極の全光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0036】
全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。また、本発明の第一の電極の電気抵抗値としては、表面抵抗率として50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、3Ω/□以下であることが特に好ましい。
【0037】
50Ω/□以下であれば、受光面積の広い有機光電変換素子においても十分な光電変換効率が得られるため好ましい。
【0038】
前記表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0039】
なお、図1に示すバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10では、光電変換層13が第一の電極12と第二の電極14とでサンドイッチされているが、一対の櫛歯状電極を光電変換層13の片面に配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成されてもよい。
【0040】
第一の電極の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に1μm以下であることが好ましく、厚みが薄くなるほど透明性や柔軟性が向上するためより好ましい。
【0041】
〔有機半導体材料〕
一般的に有機光電変換素子に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。有機半導体材料としては、有機半導体化合物が好ましい。
【0042】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0043】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0044】
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0045】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換―無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0046】
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0047】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
【0048】
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0049】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクへテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクへテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクへテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
【0050】
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0051】
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
【0052】
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0053】
本発明に用いられる有機半導体化合物は、導電性ナノワイヤに結合性を有する任意の結合基を分子の末端に少なくとも一箇所有する。金属ナノワイヤ結合性を有する任意の置換基の例としては、スルフィド基、ジスルフィド基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン基、ホスホン酸基、燐酸基が挙げられ、中でもスルフィド基が好ましい。例えば、銀ナノワイヤなどの金属ナノワイヤに結合させる場合、チオール基、メチルチオ基、メルカプトチオ基、メチルメルカプトチオ基、アセチルチオ基などを末端に有している有機半導体化合物を用いて、それらを元にしたスルフィド結合により金属ナノワイヤ表面に結合させる。又は、ジスルフィド結合を介して結合する分子の二量体あるいは多量体から金属ナノワイヤに結合させても良い。本発明に使用される有機半導体化合物は、位置規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)と銀ナノワイヤが結合したものが好ましく、位置規則的下記一般式(1)で表される末端チオフェン単位の5位に金属ナノワイヤは結合する基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)と一般式(2)で表される末端チオフェン単位の2位に金属ナノワイヤと結合する基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)のどちらを用いてもよい。
【0054】
【化1】

【0055】
式中、Rは置換基又は非置換基の炭素数4〜15のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R′は水素原子又は任意の置換基を表す。R″は、水素原子、メチル基、アセチル基、メルカプト基、またはメチルメルカプト基を表す。Xは、2価の連結基を表す。mは0又は1を表し、nは、2〜500の整数を表す。
【0056】
一般式(1)又は(2)において、Rで表される、炭素数4〜15のアルキル基またはアルコキシアルキル基は、炭素数6〜10のアルキル基またはアルコキシアルキル基が好ましい。
【0057】
R′で表される置換基は、置換又は非置換のアルキル基等を挙げることができ、好ましくは、メチル基ある。
【0058】
Xは、好ましくは、アルキレン基またはアリーレン基、さらに好ましくは、メチレン基、エチレンまたはプロピレンを表す。
【0059】
mは0または1が好ましい。nは100〜500が好ましく、150〜300が最も好ましい。
【0060】
本発明の有機半導体化合物に微粒子と結合し得る基を導入する方法は公知の合成手法を適用できる。例えば、芳香環末端にSH基を出す方法としては、J.Org.Chem.;EN;60;7;1995;2082−2091.、J.Amer.Chem.Soc.;EN;116;26;1994;11985−11989.、Synthesis;EN;9;1983;751−755.、J.Chem.Soc.PerkinTrans.1;EN;1987;187−194.を参照することができる。末端SでAg接続して、アルキレン基をはさんでπ電子系というパターンにおける「アルキレン末端SH」の作り方には、J.Amer.Chem.Soc.;70;1948;2439.(イソチオ尿素の還元)、Chem.Ber.;GE;93;1960;2604−2612.(末端ハロゲン化アルキルにチオ尿素を作用させた反応)、TetrahedronLett.;EN;35;12;1994;1837−1840.(末端のC=C二重結合にトリフェニルシランチオールを作用させたラジカル反応により二重結合に付加)を参照することができる。
【0061】
本発明の別の好ましい有機半導体化合物として、特開2001−253883号公報、特開2008−16834号公報などに開示されたポルフィリン誘導体が挙げられる。
【0062】
本発明において、導電性繊維に結合したポルフィリンを得るためには、前述の方法で導電性繊維への結合既を有するポルフィリン単量体を合成する方法を用いることができる。
【0063】
〔導電性繊維〕
本発明に係る導電性繊維とは、導電性を有し、かつその長さが直径(太さ)に比べて十分に長い形状を持つものである。本発明に係る導電性繊維は、透明導電層内において導電性繊維が互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し補助電極として機能すると考えられる。従って、導電性繊維が長い方が導電ネットワーク形成に有利であるため好ましい。一方で、導電性繊維が長くなると導電性繊維が絡み合って凝集体を生じ、光学特性を劣化させる場合がある。導電ネットワーク形成や凝集体生成には、導電性繊維の剛性や直径等も影響するため、使用する導電性繊維に応じて最適な平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)のものを使用することが好ましい。大凡の目安として、平均アスペクト比は、10〜10,000であるものが好ましい。
【0064】
形状としては中空チューブ状、ワイヤ状、ファイバー状のもの等があり、例えば、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等がある。本発明においては、透明性の観点から太さが300nm以下の導電性繊維であることが好ましく、併せて導電性も満足するために、導電性繊維は金属ナノワイヤ及びカーボンナノチューブの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらには、コスト(原材料費、製造費)と性能(導電性、透明性、可撓性)の観点から、銀ナノワイヤが特に好ましい。
【0065】
〔金属ナノワイヤ〕
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmスケールの直径を有する線状構造体を意味する。
【0066】
本発明に係る導電性繊維に適用される金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0067】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むこともできる。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよく、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0068】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。特に、Adv.Mater.,2002,14,833〜837及びChem.Mater.,2002,14,4736〜4745で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができる。銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤとして好ましく適用することができる。
【0069】
〔カーボンナノチューブ〕
カーボンナノチューブは、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が筒形に巻かれた形状からなる炭素系繊維材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT)と多層ナノチューブ(MWCNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられ、各種のものが知られている。
【0070】
本発明に係る導電性繊維に適用されるカーボンナノチューブとしては、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができ、また、これらの種々のカーボンナノチューブを複数混合して用いてもよいが、導電性に優れた単層カーボンナノチューブであることが好ましく、さらには金属性のアームチェア型単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
【0071】
本発明に係るカーボンナノチューブの形状としては、1つのカーボンナノチューブで長い導電パスを形成するために、アスペクト比(=長さ/直径)が大きい、すなわち細くて長い単層カーボンナノチューブであることが好ましい。例えば、アスペクト比が102以上、好ましくは103以上のカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブの平均長さは、3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は100nmより小さいことが好ましく、1〜50nmが好ましく、1〜30nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0072】
本発明で使用されるカーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現できることから好ましい。
【0073】
導電性繊維と導電性材料を含む透明導電層の好ましい形成方法としては、素子上に導電性繊維の分散液を塗布または印刷し、乾燥して導電性繊維からなる導電ネットワーク構造を形成する。次に、該導電性繊維のネットワーク構造上の隙間に透明導電性材料を含浸させ、導電性繊維と透明導電性材料を含む透明導電層を形成する方法が好ましい。
【0074】
〔正孔輸送層〕
正孔輸送層(電子ブロック層)として好ましく用いられる材料としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、WO2006019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、溶液塗布法で形成することが好ましい。
【0075】
〔電子輸送層〕
また電子輸送層(正孔ブロック層)としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0076】
本発明の第一の電極表面を被覆する層の製膜方法としては、炭素元素を含む金属酸化物層であれば如何なる方法でもよく、例えば塗布法や蒸着法、スパッタ法、スプレー熱分解法、減圧プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法などを用いる事ができる。フレキシブルな基板を用いた高い生産性を得るためには、連続プロセスに適した方法がより好ましく、中でも塗布法、スプレー熱分解法、大気圧プラズマCVD法が好ましく、連続生産性と膜質の観点から大気圧プラズマCVD法が最も好ましい。
【0077】
大気圧プラズマCVD法を用いて金属酸化物層を形成する場合、層中の炭素元素比率を制御する方法としては、後述する放電(キャリア)ガスの種類、原料となる反応性ガスの濃度および流速、第1電極と第2電極に印加する周波数や電力を調整することで制御することができる。
【0078】
導電性繊維表面がp型半導体の有機物半導体で被覆されていれば、形成される導電パスは正孔輸送層(HTL)としての機能を発現する。p型の半導体材料であれば如何なる有機物半導体でも用いることができる。
【0079】
導電性繊維表面がn型半導体の金属酸化物で被服されていれば、形成される導電パスは電子輸送層(ETL)としての機能を発現する。n型の半導体材料であれば如何なる有機物半導体でも用いることができる。
【0080】
正孔輸送層および電子輸送層は、正孔と電子のうちどちらかの電荷を主に流す層であり、正孔と電子の移動度の差や、エネルギー準位の差による障壁によって、逆の電荷をブロックする層であることが好ましい。
【0081】
第1の電極がカソード電極(正極)である場合は、正孔と電子からなるフリー電荷の内、正孔を主に取り出す構成のため、第一の電極上に形成される補助電極は正孔輸送層として働く有機物半導体に被覆されていることが好ましい。同様に、第1の電極がアノード電極(陰極)である場合は電子を主に取り出す構成のため、第一の電極上に形成される補助電極は電子輸送層として働く有機物半導体に被覆されていることが好ましい。
【0082】
(補助電極の形成方法)
補助電極は上記導電性繊維からなるが、補助電極を形成する方法としては例えば、導電性繊維を含有する塗布液を基板上に塗布して形成する方法、フォトリソグラフィー法でパターン形成する方法や、印刷法やインクジェット法などの方法がある。
【0083】
本発明に係る補助電極を形成する方法としては、補助電極に含まれる成分を含有する塗布液を第一の電極上に塗布して形成する方法が好ましく用いられる。
【0084】
〔基板〕
基板は、順次積層された第一の電極、光電変換層及び第二の電極を保持する部材である。本実施形態では、少なくとも第一の電極又は第二の電極、更には両方の電極から光電変換される光が入射することが可能なように、光電変換すべき光の波長に対して透明な基板であることが望ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0085】
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、透明基材にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0086】
〔光電変換層〕
光電変換層13は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0087】
本発明の有機光電変換素子のp型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
【0088】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。この中で、特に塗布法が好ましい。
【0089】
そして、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層は、光電変換率を向上すべく、製造工程中において所定の温度でアニール処理され、微視的に一部結晶化されている。
【0090】
光電変換素子では、基板を介して透明電極から入射された光は、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極と対電極の仕事関数が異なる場合では透明電極と対電極との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極の仕事関数が対電極の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極へ、正孔は、対電極へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極と対電極との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0091】
光電変換部は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
【0092】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び前述のような半導体材料の化学反応を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。
【0093】
〔中間層〕
また、上述のバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子は、順次に基板上に積層された透明電極、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部及び対電極で構成されたが、これに限られず、例えば透明電極や対電極と光電変換部との間に正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、あるいは平滑化層等の他の層を有してバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子が構成されてもよい。これらの中でも、バルクへテロジャンクション層と陽極(通常、透明電極側)との中間には正孔輸送層または電子ブロック層を、陰極(通常、対電極側)との中間には電子輸送層または正孔ブロック層を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0094】
〔タンデム型構成〕
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。タンデム型構成の場合、基板上に、順次透明電極、第一の光電変換部を積層した後、電荷再結合層を積層した後、第二の光電変換部、次いで対電極を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第二の光電変換部は、第一の光電変換部の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、電荷再結合層の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等が好ましい。
【0095】
〔封止〕
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)を直接堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0096】
実施例1
分散物1の作製
銀ナノワイヤは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調製した。この溶液中に、末端にSH基を有するP3HT(ポリ3へキシルチオフェン)のクロロホルム溶液を添加し、攪拌した後、クロロホルム相の分散液をよく精製し、クロロホルム分散物(分散物1)を得た。TEM観察のより平均直径75nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤが良好に分散されていることを観察した。
【0097】
分散物2の作製
銀ナノワイヤは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調製した。この溶液中に、末端にSH基を有するイミダゾリルポルフィリンのクロロホルム溶液を添加し、攪拌した後、クロロホルム相の分散液をよく精製し、クロロホルム分散物(分散物2)を得た。TEM観察のより平均直径75nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤが良好に分散されていることを観察した。
【0098】
【化2】

【0099】
〔有機光電変換素子SC−101の作製〕
バリア層付きPENフィルム基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて10×100mm角の受光部と取り出し電極部をパターニングしITO堆積フィルム基板を作製した。
【0100】
ITO堆積フィルム基板を界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0101】
ITO堆積フィルム基板上に、分散液1を銀ナノワイヤの目付け量が80mg/mとなるようにアプリケータを用いて塗布し乾燥して、本発明に関わる第一の電極および正孔輸送層を作製した。
【0102】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
【0103】
次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000、高分子p型半導体材料)とPCBM(フロンティアカーボン:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)(Mw=911、低分子n型半導体材料)を3.0質量%になるように1:1で混合した液を調製し、フィルターでろ過しながら膜厚300nmになるように塗布を行い、室温で放置して光電変換層を成膜した。
【0104】
次に、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/Lになるように溶解した液を調製し、マスキングした後、膜厚20nmになるように塗布を行い、水蒸気量を調節した大気中放置して電子輸送層を成膜した。
【0105】
次に、作製した素子を真空蒸着装置内に設置して、1cm幅のシャドウマスクをセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、アルミニウムを膜厚が100nmになるように蒸着し、第二の電極を形成させた。
【0106】
得られた有機光電変換素子SC−101は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0107】
〔有機光電変換素子SC−102の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、分散物1から分散物2に変更して銀ナノワイヤ分散液を調製し、ITOフィルム基板上に堆積させ第一の電極を作製した以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−102を作製した。
【0108】
得られた有機光電変換素子SC−102は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0109】
〔有機光電変換素子SC−103の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、ITOフィルム基板上に銀ナノワイヤのみを堆積させ、第一の電極を作製した以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−103を作製した。
【0110】
得られた有機光電変換素子SC−103は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0111】
〔有機光電変換素子SC−104の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、ITO堆積フィルム基板上に金属ニッケル(Ni)(膜厚5μm)を真空蒸着法により成膜し、この基板を、イオン照射機能を備えた真空槽内に設置し、10−6Torr(1.33×10−4Pa)以下の真空に排気した後、Arイオン照射を行った。イオン照射は、1kVのArイオンを用い、1〜10mAで行った。イオン照射後、試料を真空槽から取り出し、大気中300℃で10分間の加熱を行い、酸化皮膜(10nm程度:TEM像)をナノロッド上に形成し、第一の電極及び正孔輸送層を形成させた以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−104を得た。
【0112】
得られた有機光電変換素子SC−104は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0113】
〔有機光電変換素子SC−105の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、ITO堆積フィルム基板上に金属亜鉛(Zn)(膜厚5μm)を真空蒸着法により成膜し、この基板をイオン照射機能を備えた真空槽内に設置し、10−6Torr(1.33×10−4Pa)以下の真空に排気した後、Arイオン照射を行った。イオン照射は、1kVのArイオンを用い、1〜10mAで行った。イオン照射後、試料を真空槽から取り出し、大気中300℃で10分間の加熱を行い、酸化皮膜(10nm程度:TEM像)をナノロッド上に形成し、第一の電極及び正孔輸送層を形成させた以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−105を得た。
【0114】
得られた有機光電変換素子SC−105は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。
【0115】
〔有機光電変換素子SC−106の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、ITO堆積フィルム基板上にパルスレーザー法で酸化ニッケル層を積層させ正孔輸送層とした以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−106を得た。
【0116】
《光電変換効率の評価》
上記方法で作製した有機光電変換素子について、ソーラーシミュレーターを用いたAM1.5Gフィルタ、100mW/cmの強度の光を照射し、マスクを受光部に重ね、I−V特性を評価し、特性値として、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、フィルファクターffから式1を用いてエネルギー変換効率η(%)を得て、SC−101の光電変換効率を100としたとき相対値を表1に示した。
【0117】
(式1) Jsc(mA/cm)×Voc(V)×ff=η(%)
《折り曲げ耐性評価》
得られた有機光電変換素子を1inchφ(1inchは2.54cmである)の棒に表裏50回ずつ巻きつけた前後の光電変換効率を上記に従い測定し、表1に示した。
【0118】
【表1】

【0119】
表1から明らかな通り、本発明の有機光電変換素子は、光電変換効率と折り曲げ耐性において、優れた効果を奏することが判る。
【符号の説明】
【0120】
10 有機光電変換素子
11 基板
12 第一の電極
13 光電変換層
14 第二の電極
25 電子輸送層
15 導電性繊維
16 補助電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と第二の電極間に少なくとも光電変換層を有する有機光電変換素子であって、該光電変換層の少なくとも一層がバルクヘテロジャンクション構造であり、かつ、第一の電極は導電性繊維を有し、該導電性繊維が吸着基を導入したp型有機半導体材料またはn型有機半導体材料によって被覆されていることを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項2】
前記導電性繊維が金属ナノワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする請求項2に記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
前記導電性繊維を被覆するp型有機半導体材料またはn型有機半導体材料が少なくともUV硬化型、熱架橋型、及び、熱変換型のいずれかからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
前記p型有機半導体材料がポリ−3ヘキシルチオフェン又は、ポルフィリン誘導体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の製造方法において、第一の電極の形成工程が、導電性繊維を塗布する工程と、p型半導体もしくはn型半導体を化学的吸着法にて被覆する工程を含むことを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−251592(P2010−251592A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100796(P2009−100796)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】