説明

有機化合物の製造方法、その製造方法により得られた電子材料、並びに、それを用いた電子デバイス、電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】炭酸塩を用いる有機化合物製造法において、高い収率、高い純度で、有機化合物を製造できるようにする。
【解決手段】原料に反応をさせて有機化合物を製造する有機化合物の製造方法において、前記反応の反応系に、個数平均粒径が60μm以下5μm以上の炭酸塩を存在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の製造方法、その製造方法により得られた電子材料、並びに、それを用いた電子デバイス、電子写真感光体及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子デバイスの特性は、使用する電子材料だけでなく、その製造法にも大きく影響される。中でも、電子材料に有機化合物を使用する場合、その効果は顕著に現れる。特に、電子デバイスの電気特性、安定性、耐久性に関しては、使用する電子材料の製造法の影響が強く現れることが知られている。電子材料の純度、電子材料中の不純物のみでは説明できない点もあり、電気特性にとって、有効な製造法が、常に切に求められている。
【0003】
有機化合物の製造方法の一つとして、炭酸塩を用いる方法が知られている。炭酸塩は、温室効果の原因の一つとなっている炭酸ガスを原料として作製される塩基である。したがって、炭酸塩は、環境に負荷の小さい化合物となっている。しかし、炭酸塩は、反応性や有機溶剤に対する溶解性等が充分に大きくないため、その使用は、比較的限定的である。
【0004】
例えば、炭酸塩を使用する有機化合物の合成方法としては、ウルマン反応に代表される古典的な手法が知られている。しかし、ウルマン反応等においては、反応速度や反応温度の点から、生成物に着色がおこる虞があることが知られている。
また、炭酸塩を使用する有機化合物の合成方法の他の例としては、エーテル生成反応が知られている。エーテル生成の反応においては、一般的には、ウィリアムソン反応に代表されるように、炭酸カリウムより強い塩基(水酸化金属等)を使用するのが普通である。しかし、この際、炭酸塩の使用は、活性化されたサイト等の限られた使用に用いられるのが一般的である。
【0005】
また、ポリマー合成等において、炭酸塩を使用する例が多く知られている。しかし、ポリマー合成において炭酸塩を使用しても、分子量の大きいポリマーを合成することは困難であった。
さらに、塩基として炭酸カリウムとアルキル化剤を併用する事による、アルキル化反応も多数知られている。しかし、このようなアルキル反応は、充分な収率、純度が得られにくい。
【0006】
また、特許文献1において、イミダゾールのアルキル化をする際に、粉末状の炭酸カリウムを用いられた例が報告されている。この中で、粒径74μm近辺の炭酸カリウムを用いた例があるが、より細かい炭酸カリウムは、収率を落とすと報告されている。
さらに、特許文献2において、ハロゲン化合物と、活性メチレン化合物との反応において、200μm以下の粉末状の炭酸カリウムを用いるのが好ましいことが報告されている。しかし、特許文献2には、具体的な例は示されておらず、その効果は不明である。
なお、平均粒径60μm以下や、50μm以下の粉砕炭酸カリウムを用いた例は、報告されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−171869号公報
【特許文献2】特開平11−116506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、炭酸塩を用いる有機化合物製造法において、高い収率、高い純度で、有機化合物を製造できるようにすることである。また、該製造方法を用いて製造された電子材料、並びに、それを用いた電子デバイス、電子写真感光体及び画像形成装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、個数平均粒径が60μm以下5μm以上の炭酸塩を使用することにより、収率良く、工業的に有利に有機化合物を製造できる事を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、原料に反応をさせて有機化合物を製造する有機化合物の製造方法であって、前記反応の反応系に、個数平均粒径が60μm以下5μm以上の炭酸塩を存在させることを特徴とする有機化合物の製造方法に存する(請求項1)。
【0010】
このとき、前記炭酸塩がカリウム塩であることが好ましい(請求項2)。
また、前記有機化合物としては、アミン化合物、アリール化合物、エーテル化合物、アルケン化合物及びエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を製造することが好ましい(請求項3)。
さらに、前記炭酸塩の比表面積が、0.5m2/g以上であることが好ましい(請求項4)。
【0011】
また、前記炭酸塩の嵩密度が、0.25g/mL以上1.1g/mL以下であることが好ましい(請求項5)。
さらに、前記反応の反応温度が、−10℃以上250℃以下であることが好ましい(請求項6)。
また、前記反応において、比誘電率が2以上50以下の反応溶媒を使用することが好ましい(請求項7)。
【0012】
本発明の別の要旨は、前記の有機化合物の製造方法で作製されたことを特徴とする電子材料に存する(請求項8)。
本発明の更に別の要旨は、前記の電子材料を使用したことを特徴とする電子デバイスに存する(請求項9)。
本発明の更に別の要旨は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層中に、前記の電子材料を含有することを特徴とする電子写真感光体に存する(請求項10)。
【0013】
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えたことを特徴とする、画像形成装置に存する(請求項11)。
【0014】
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち、少なくとも一つとを備えたことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジに存する(請求項12)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機化合物の製造方法によれば、炭酸塩を用いて、高い収率、高い純度で、有機化合物を製造することが可能である。
また、本発明の有機化合物の製造方法により製造された本発明の電子材料は、電子デバイス、電子写真感光体及び画像形成装置に使用した場合に、高いパフォーマンスを発揮させることができる。
さらに、本発明の電子デバイス、電子写真感光体及び画像形成装置は、高いパフォーマンスを発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。
【0017】
[I.有機化合物の製造方法]
本発明の有機化合物の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」という)は、原料に反応をさせて有機化合物を製造する、有機化合物の製造方法である。また、本発明の製造方法においては、前記反応の反応系に、個数平均粒径が60μm以下5μm以上の炭酸塩を存在させるようにする。
【0018】
〔炭酸塩〕
炭酸塩は、本発明の製造方法において、反応系に反応促進剤として存在させるものである。
本発明にかかる炭酸塩の種類は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。したがって、炭酸塩は、正塩、水素塩(炭酸水素塩)及び水酸化物塩のいずれであってもよいが、好ましくは正塩が用いられる。
【0019】
本発明の効果を高めることが可能な好ましい炭酸塩の例を挙げると、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。中でも、アルカリ金属塩が好ましく、特に、炭酸カリウム(カリウム塩)がより好ましい。
なお、炭酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0020】
また、本発明にかかる炭酸塩は、所定の個数平均粒径を有する粒子の状態で用いる。具体的には、炭酸塩の個数平均粒径は、通常60μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、また、通常5μm以上である。炭酸塩の個数平均粒径を上記範囲とすることにより、高い収率、高い純度で、有機化合物を製造することが可能である。なお、炭酸塩粒子の安定性の観点から、好ましくは、10μm以上である。
なお、前記の個数平均粒径は、既存の手法で測定可能であり、顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、レーザー散乱法等が測定手段として選ばれるが、レーザー散乱法により測定ができる場合は、レーザー散乱法により測定し、当該炭酸塩の個数平均粒径が前記範囲に収まることを確認するものとする。
【0021】
また、本発明にかかる炭酸塩は、本発明の効果を著しく損なわない限り、その比表面積に制限は無い。ただし、通常は、炭酸塩の比表面積は、通常0.5m2/g以上、好ましくは0.6m2/g以上、より好ましくは0.8m2/g以上、更に好ましくは1.0m2/g以上、特に好ましくは1.3m2/g以上であることが望ましい。特に、個数平均粒径が40μm以上60μm以下の炭酸塩の場合は、当該炭酸塩の比表面積は、1.7m2/g以上である事が好ましい。炭酸塩の比表面積をこの範囲にすることで、反応性を高めるという利点を得ることができる。
【0022】
また、炭酸塩の比表面積が大きすぎると、水分を吸いやすくなるため、取扱いに不便になり、保存性が悪化する虞がある。このため、本発明にかかる炭酸塩の比表面積は、2.5m2/g以下が好ましく、2.0m2/g以下がより好ましく、1.9m2/g以下が更に好ましい。
【0023】
なお、炭酸塩の比表面積の測定は、BET法等が用いられる。BET法とは、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法であり、窒素を用いる方法は簡便で好ましい。ここでは、窒素を用いたBET法により比表面積を測定するものとする。
【0024】
さらに、本発明にかかる炭酸塩は、本発明の効果を著しく損なわない限り、その嵩密度に制限はない。ただし、反応において反応溶媒を使用する場合には、その反応溶媒にもよるが、炭酸塩の比重が反応溶媒の比重より重い場合、攪拌を良好に行なうことができなくなる虞がある。したがって、炭酸塩の嵩密度は、反応溶媒よりも低いことが望ましい。具体的には、炭酸塩の嵩密度は、通常1.1g/mL以下、好ましくは1.0g/mL以下、より好ましくは0.9g/mL以下であることが望ましい。
【0025】
一方、炭酸塩の嵩密度が軽すぎると、粉黛が浮遊し、攪拌を良好に行なうことができなくなる虞があるため、炭酸塩の嵩密度は、通常0.25g/mL以上、好ましくは0.30g/mL以上、より好ましくは0.40g/mL以上である。
なお、嵩密度は、JIS K 6891に準ずる方法によって測定することができる。
【0026】
また、本発明にかかる炭酸塩の使用量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、反応溶媒を使用するなどして、反応を液相の反応系中で行なう場合には、その反応系内における炭酸塩の濃度を、通常0.1g/mL以上、好ましくは0.2g/mL以上、より好ましくは0.3g/mL以上、また、通常2g/mL以下、好ましくは1g/mL以下、より好ましくは0.8g/mL以下である。この範囲の下限を下回ると反応効率が悪くなる虞があり、上限を上回ると攪拌効率が悪くなる虞がある。
【0027】
〔原料〕
本発明の有機化合物の原料は、生成物及び反応に応じて適切な物質を選択すればよい。
また、原料としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。例えば、合成反応等により生成物を得るには、通常、原料は2種以上の物質を使用する。また、例えば、分解反応等により生成物を得るには、通常、原料は1種のみを用いるようにしてもよい。
また、原料の使用量も、適宜、任意の量とすればよい。
【0028】
〔反応〕
本発明の製造方法において進行させる反応は、生成物及び原料に応じて設定すればよい。ただし、本発明の製造方法においては、本発明にかかる炭酸塩を反応促進剤として用いることができる反応を行なうようにする。即ち、反応系に炭酸塩を存在させることにより、炭酸塩が反応促進剤として作用しうる反応を行なうようにする。
この際、反応は、合成反応、分解反応などの各種反応から適宜選択して行なうようにすればよいが、例えば、アルキル化、アミン化、アルケン化、エーテル化、エステル化反応等が挙げられる。中でも、好ましい形態は、アリール化、メチル化、メトキシ化、アミン化反応等である。
【0029】
具体例を挙げると、アミン化合物とハロゲン化合物との反応による二級アミン又は三級アミンの合成反応、アミド化合物とハロゲン化合物との反応によるアミン化合物の合成反応、ヒドロキシ基とハロゲン化合物との反応によるエーテル化合物の合成反応、ヒドロキシ基とアルキル化剤との反応によるエーテル化合物合成反応等が挙げられる。
なお、本発明の製造方法において、炭酸塩の存在する反応系において進行させる反応は1種でもよいが、2種以上の反応が進行させてもよい。ただし、生成物の純度を高める観点からは、進行する反応は1種であることが好ましい。
【0030】
〔他の反応促進剤等〕
本発明の製造方法では、反応に応じて、炭酸塩の他に適当な反応促進剤を併用することもできる。他の反応促進剤の例を挙げると、アミン化合物合成反応、エーテル化合物合成反応を行なう際には、パラジウム触媒、銅触媒、ニッケル触媒、ロジウム触媒、亜鉛触媒などを併用することができる。
また、前記の反応促進剤の活性向上の為に、適切な配位子を使用する事も好ましい。配位子の例としては、例えば、ホスフィン配位子、アミン配位子、硫黄系配位子、酸素系配位子等があげられる。
さらに、適宜、添加剤を反応系に共存させてもよい。
なお、前記のような他の反応促進剤、配位子、添加剤等は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0031】
〔反応温度〕
本発明の製造方法において、反応を行なう際の反応温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、現実的には、通常−10℃以上、また、通常250℃以下であることが望ましい。
【0032】
中でも、アミン化合物の製造を行なう際には、反応温度は35℃以上240℃以下であることが好ましい。
また、アリールアミン化合物の製造(例えば、アミン化合物と、アリール化合物とのカップリング反応)を行なう際には、反応温度は、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常240℃以下、好ましくは150℃以下である。但し、0価銅を他の反応促進剤として炭酸塩と併用する場合には、135℃以上220℃以下であることが望ましい。
【0033】
さらに、エーテル化合物の製造を行なう際には、反応温度は、30℃以上100℃以下であることが好ましい。
また、アリール化合物の製造(例えば、アリール化合物と、アリール化合物とのカップリング反応)を行なう際には、反応温度は、−5℃以上150℃以下であることが好ましい。
さらに、アルケン化合物の製造を行なう際には、反応温度は、−10℃以上30℃以下が好ましい。
【0034】
〔反応溶媒〕
反応は、無溶媒で行なってもよいが、反応溶媒中で行なうようにしてもよい。反応溶媒を使用する場合、かかる反応溶媒としては実質上反応に不活性な溶媒であれば特に制限は無い。ただし、反応溶媒としては、前記反応の反応温度よりも高温の沸点を有するものが、製造上の簡便さから好ましい。
【0035】
反応溶媒の例を挙げると、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル2−ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
【0036】
さらに、炭酸塩として炭酸カリウムを使用する場合には、炭酸カリウムと反応溶媒との相性から、反応溶媒の比誘電率は、通常2以上、また、通常50以下、好ましくは40以下である事は好ましく、更に好ましくは、30以下であり、更に好ましくは、20以下である。比誘電率が上記範囲の下限を下回ると反応効率が悪くなる虞があり、上限を上回るとスラリー粘度の上昇により、攪拌効率が悪くなる虞がある。
【0037】
なお、反応溶媒を使用する場合、反応溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、反応溶媒を使用する場合、その使用量は任意である。ただし、生成物である有機化合物に対して、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、より好ましくは3重量倍以下である。使用量をこの範囲内とすることにより、反応収率を高めることが可能である。また、反応を無溶媒で行なった場合には、更に収率を高めることができる。
【0038】
〔反応時の操作〕
本発明の製造方法では、原料及び炭酸塩、並びに、適宜使用される反応溶媒、他の反応促進剤、配位子、添加剤等を共存させた反応系において、所定の反応温度で、反応を進行させて、生成物である有機化合物を生成させる。
反応を行なう際、反応系に存在させる各成分の配合順序は任意であり、また、各成分は1度に配合してもよく、2回以上に分けて配合しても良い。さらに、反応時には、攪拌、脱気、還流など、適宜、任意の操作を行なうようにしてもよい。
【0039】
〔生成物〕
本発明の製造方法は、炭酸塩を使用する任意の有機化合物の製造において使用可能である。したがって、本発明の製造方法で製造される生成物(有機化合物)に、特に制限は無い。
本発明の製造方法による製造に適した有機化合物の例を挙げるとアミン化合物、アリール化合物、エーテル化合物、アルケン化合物、エステル化合物などが挙げられる。よって、これらのアミン化合物、アリール化合物、エーテル化合物、アルケン化合物及びエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成物として製造することが望ましい。中でも、アミン化合物、アリール化合物の製造には、最終品のパフォーマンスを鑑みた場合、高い効果を発揮する。
なお、上記のアミン化合物、アリール化合物、エーテル化合物、アルケン化合物及びエステル化合物は、電子材料として用いて好適である。
【0040】
〔収率〕
本発明の製造方法によれば、所望の有機化合物を高い収率で製造することができる。具体的な収率は、原料や反応の種類、反応条件などに応じて変わるが、通常80%以上、好ましくは90%以上である。なお、収率の上限に制限は無いが、理論的には100%である。
【0041】
〔純度〕
本発明の製造方法によれば、所望の有機化合物を高い純度で製造することができる。具体的な純度は、原料や反応の種類、反応条件などに応じて変わるが、通常70%以上、好ましくは80%以上である。なお、純度の上限に制限は無いが、理論的には100%である。
【0042】
〔効果〕
上記のように、所定の個数平均粒径を有する炭酸塩を反応系に存在させることにより、反応の収率及び純度を高めることができる。
【0043】
[II.電子材料]
上述した本発明の製造方法で製造した有機化合物は、純度という点で優れているため、電子材料として使用することができる。例えば、後述する電子デバイスの材料として用いて好適である。
中でも、本発明の製造方法によって好適に製造できる電子材料としては、電荷輸送性を有する電荷輸送物質が挙げられる。電荷輸送物質の中でも、特に、アミン化合物、アリール化合物、エーテル化合物、アルケン化合物、エステル化合物が好ましく、アリールアミン化合物が、特に大きな効果を発現するため、より好ましい。
【0044】
電子材料の具体例を挙げると、下記に示す構造を有する化合物が挙げられる。即ち、アリールアミン化合物としては、下記構造式(I)で表わされる構造を有する化合物が挙げられる。また、エーテル化合物としては、下記構造式(II)で表わされる構造を有する化合物が挙げられる。さらに、アルケン化合物としては、下記構造式(III)で表わされる構造を有する化合物が挙げられる。また、エステル構造としては、下記構造式(III)で表わされる構造を有する化合物、又は、下記構造式(IV)で表わされる構造を有する化合物が挙げられる。
【化1】

【0045】
なお、上記の構造式(I)ないし(IV)において、Ar1ないしAr3、及び、Ar5は、それぞれ独立に、置換基を有しても良いアリール基を表わす。また、Ar4は、置換基を有しても良いアリーレン基を表わす。さらに、R1ないしR7は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有しても良いアルキル基若しくはアリール基、又は、エステル基を表わす。また、Ar1ないしAr5、及び、R1ないしR5は、直結または、連結基を通じて環構造を有しても良い。
【0046】
上述したような、本発明の製造方法で製造された電子材料は、電子デバイス、及び、画像形成装置等に使用された場合に、高いパフォーマンスを発揮することができる。
【0047】
[III.電子デバイス]
上記の電子材料は、電子デバイスの材料として広く用いることができる。このような電子デバイスの例を挙げると、電子写真感光体(感光体)、電界発光素子、トランジスター、コンデンサー、液晶、エレクトロクロミック媒体、記録媒体等が挙げられる。なかでも、特に、電子写真感光体、電界発光素子等に使用される事は好ましい。
以下、電子デバイスの例として、電子写真感光体について説明する。
【0048】
〔電子写真感光体〕
電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有するように構成される。本発明の有機化合物の製造方法で製造された電子材料をこの電子写真感光体に適用する場合、当該電子材料は、感光層に含有されることになる。
【0049】
電子写真感光体の概要は、以下の通りである。即ち、電子写真感光体の感光層は、導電性支持体上に設けられ、下引き層を有する場合は下引き層上に(即ち、下引き層を介して導電性支持体上に)設けられる。
感光層の型式としては、蒸着膜として形成されてもよいが、通常は、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散された型(単層型)の感光層;電荷発生物質がバインダ樹脂中に分散された電荷発生層、及び、電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層の二つに機能分離された複層構造を有する型(積層型、又は、機能分離型)の感光層が挙げられる。単層型の感光層を有する感光体は、いわゆる単層型感光体であり、積層型の感光層を有する感光体は、いわゆる積層型感光体(又は、機能分離型感光体)であるが、感光層としては、何れの構成のものを用いてもよい。また、感光層上に、帯電性の改善や、耐摩耗性改善を目的としてオーバーコート層(保護層)を設けてもよい。
【0050】
さらに、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能である。ただし、中でも、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
【0051】
〔導電性支持体〕
感光体に用いる導電性支持体に特に制限は無いが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を混合して導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、その形態としては、例えばドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。さらに、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
【0052】
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化皮膜の形成方法に制限は無いが、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜を形成することができる。中でも、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
【0053】
さらに、このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは、主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
【0054】
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、低温封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下で行なうことが望ましい。さらに、低温封孔処理時に用いるフッ化ニッケル水溶液のpHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲とすることが望ましい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。また、低温封孔処理の処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり、1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するために、例えばフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に含有させておいてもよい。また、浸漬後、水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
【0055】
一方、前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、例えば、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液などを用いることが出来る。中でも、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。
酢酸ニッケル水溶液を用いる場合、濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。また、処理温度は、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下で行なうことが望ましい。さらに、酢酸ニッケル水溶液のpHは、5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としては、例えばアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。また、処理時間は通常10分以上、好ましくは20分以上処理するのが望ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させても良い。また、浸漬後、水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
【0056】
また、陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件にて封孔処理を行なうことが望ましい。したがって、陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、生産性が悪くなる虞があると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
【0057】
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に、引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
【0058】
〔下引き層〕
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子(通常は無機粒子)を分散したものなどが用いられる。
【0059】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。
【0060】
これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又は、ステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。なお、酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。なお、酸化チタン粒子は、その結晶型が1種類のみであってもよく、2種以上の結晶型が任意の組み合わせ及び比率で含まれていてもよい。
【0061】
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも電気特性および下引き層形成用の塗布液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
【0062】
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダ樹脂に分散した状態で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダ樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知のバインダ樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
【0063】
また、下引き層に用いられるバインダ樹脂に対する粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
さらに、下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
また、下引き層には、適宜添加剤を含有させても良い。例えば、下引き層に公知の酸化防止剤等を混合してもよい。さらに、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
【0064】
〔感光層〕
導電性支持体上に形成される感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散された単層構造のものであってもよく、また、電荷発生物質がバインダ中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものであってもよい。
【0065】
〔電荷発生層〕
積層型感光体の電荷発生層は、電荷発生物質を含有するとともに、通常はバインダ樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。
このような電荷発生層は、通常、結着樹脂(バインダ樹脂)を有機溶剤に溶解した溶液に電荷発生物質を分散させることにより塗布液を調製し、これを導電性支持体上に塗布し、電荷発生物質の微粒子と各種バインダ樹脂とを結着することにより形成される。
【0066】
電荷発生物質は公知のものを任意に用いることができるが、例えば、セレン及びその合金、硫化カドミウム、その他の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられる。なかでも、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン顔料(フタロシアニン化合物)、アゾ顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、ベンズイミダゾール顔料、ピリリウム顔料、チアピリリウム顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、アントアントロン顔料等が挙げられる。
【0067】
上記例示の有機顔料の中でも、電荷発生物質としては、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましく、フタロシアニン顔料がより好ましく、特に、オキシチタニウムフタロシアニン顔料が好ましい。
また、オキシチタニウムフタロシアニン顔料としては、アモルファス様態のものは勿論のこと、各種の結晶形のものを用いることができる。その中でも特に、CuKαを線源とする粉末X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2゜)27.1°若しくは27.3°に明瞭なピークを示すことを特徴とするオキシチタニウムフタロシアニンは、非常に高い電荷発生効率を有しており、より好適に電荷発生物質として用いることができる。
なお、電荷発生物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0068】
また、電荷発生層に用いられるバインダ樹脂に制限は無く、任意の樹脂を用いることができる。その具体例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーが挙げられるが、これらポリマーに限定されるものではない。なお、これらバインダ樹脂は1種を単独で用いても、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0069】
バインダ樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒に特に制限は無く、任意の溶媒及び分散媒を用いることが出来る。その具体例を挙げると、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状、及び環状ケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;リグロイン等の鉱油;水などが挙げられる。なかでも、上述した下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0070】
さらに、電荷発生層において、前記バインダ樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)に制限は無いが、バインダ樹脂100重量部に対して、電荷発生物質は、通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上、また、通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下である。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する虞があり、一方、低すぎる場合は感光体としての感度の低下をまねく虞があることから、前記範囲で使用する事が好ましい。
また、電荷発生層の膜厚にも制限は無いが、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常4μm以下、好ましくは0.6μm以下である。
【0071】
さらに、電荷発生層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させてもよい。また、感光層に、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含有させても良い。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。
また、前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることが出来る。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
【0072】
〔電荷輸送物質〕
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダ樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダ樹脂とを溶剤(溶媒、分散媒)に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
【0073】
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率でで併用しても良い。
【0074】
また、電荷輸送層に用いるバインダ樹脂に制限は無く、任意のものを用いることができる。例えば、電荷発生層のバインダ樹脂として例示したものと同様のものを用いることができる。ただし、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂が用いられ、より好ましくはポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が用いれる。
【0075】
電荷輸送層中に使用されるバインダ樹脂と電荷輸送物質の割合は、通常、バインダ樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質が通常20重量部以上であり、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、繰り返し使用時の安定性及び電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。また、一方で、感光層の熱安定性の観点から通常150重量部以下であり、電荷輸送物質とバインダ樹脂の相溶性の観点から120重量部以下が好ましく、耐刷性の観点からは100重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは80重量部以下がとりわけ好ましい。
【0076】
電荷輸送層の膜厚も任意であるが、通常5μm〜50μmの範囲で用いられるが、長寿命、画像安定性の観点からは、好ましくは10μm〜45μm、高解像度の観点からは10μm〜30μmがより好ましい。
さらに、電荷輸送層には、添加剤を含有させても良い。添加剤としては、例えば、電荷発生層と同様のものが挙げられる。
【0077】
〔単層型の感光層〕
単層型感光体の感光層は、電荷発生物質及び電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダ樹脂を使用して形成する。具体的には、通常は、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶媒又は分散媒に溶解又は分散して塗布液を作製し、感光体用基体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
【0078】
単層型の感光層において、電荷輸送物質及びバインダ樹脂の種類並びにこれらの使用割合は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。
また、単層型の感光層においては、前記の電荷輸送物質及びバインダ樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくすることが望ましい。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0079】
また、単層型の感光層内に分散される電荷発生物質は少なすぎると充分な感度が得られない虞があり、多すぎると帯電性の低下や感度の低下が生じる虞がある。したがって、単層型の感光体においては、電荷発生物質の含有率は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下とする。
さらに、単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。
また、単層型の感光層には、添加剤を含有させても良い。添加剤としては、例えば、電荷発生層と同様のものが挙げられる。
【0080】
〔その他の層〕
また、上述した電荷発生層、電荷輸送層、単層型の感光層のほかの層をさらに設けるようにしても良い。
例えば、感光体の最表面層には、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。
【0081】
保護層は、導電性材料を適当なバインダ樹脂中に含有させて形成することができる。また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いて保護層を形成することもできる。導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0082】
また、保護層に用いるバインダ樹脂についても制限は無いが、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂との共重合体を用いることも出来る。
【0083】
上記保護層は電気抵抗が109Ω・cm〜1014Ω・cmとなるように構成することが好ましい。電気抵抗が上記範囲の上限より高くなると残留電位が上昇し、当該感光体を用いて形成される画像がカブリの多い画像となる虞がある。一方、上記範囲の下限より低くなると、当該感光体を用いて形成される画像に、画像のボケ、解像度の低下が生じる虞がある。ただし、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成する。
【0084】
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
【0085】
〔具体的な層形成方法の例〕
感光体を構成する各層は、各層を構成する材料を含有する塗布液を、支持体上に、公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
【0086】
単層型感光体の感光層、及び、積層型感光体の電荷輸送層の場合には、層形成用の塗布液は、固形分濃度を、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下とすることが望ましい。また、該塗布液の粘度は、通常10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下の範囲とすることが望ましい。
【0087】
一方、積層型感光体の電荷発生層の場合には、層形成用の塗布液は、固形分濃度を、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。また、該塗布液の粘度は、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とすることが望ましい。
【0088】
塗布液の塗布方法に制限は無い。例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる、ただし、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥方法にも制限は無い。ただし、室温における指触乾燥後、30〜200℃の温度範囲で、1分から2時間の間、無風、または送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行なってもよい。
【0089】
〔電子材料の適用部位〕
上述したように、本発明の製造方法で製造した電子材料は特有の電気的性質を有していることが多い。このため、前記の電子材料を用いた感光体においては、前記の電子材料は、感光層(単層型の感光層、電荷発生層、電荷輸送層)に含有させることが好ましい。したがって、本発明の製造方法においては、上述した電荷発生材料、電荷輸送材料、バインダ又は添加剤を製造することが好ましい。また、感光層が積層構造を有する場合には、当該電子材料は、電荷発生層及び電荷輸送層のいずれに含有されていても良いが、電荷輸送物質として電荷輸送層に含有させることがより好ましい。
【0090】
上述したような本発明の有機化合物の製造方法を用いた電子材料を使用した電子写真感光体は、初期電特に優れ、移動度の速い、繰返しの耐久性に優れたものとなる。
また、該電子材料を使用した他の電子デバイスも、それぞれ、優れたパフォーマンスを発揮することが期待される。
【0091】
[IV.画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0092】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置(転写部)5、クリーニング装置(クリーニング部)6及び定着装置(定着部)7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0093】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。
【0094】
なお、直接帯電手段としては、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電ローラーに樹脂シートの等を巻き付け感光体と帯電ローラーを帯電性の安定する距離で非接触に保った状態で帯電を行なうNCローラ帯電方式をとることも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
【0095】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。デジタル式電子写真方式としては、レーザー、LED、光シャッターアレイ等を用いることが好ましい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
【0096】
現像装置4は、電子写真感光体1に形成された静電潜像を現像できれば、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。
【0097】
また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。現像方式は、接触方式、非接触方式のいずれの方式で行なってもよい。用いるトナーとしては、粉砕トナーの他に、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。特に、ケミカルトナーの場合には、通常4〜8μm程度の小粒径のものが用いられ、形状も球形に近いものから、ポテト状、ラグビーボール状の球形から外れたものも使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
【0098】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
【0099】
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0100】
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
【0101】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。本発明は、この転写電圧が大きい場合により大きな効果を発現する。
【0102】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0103】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0104】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着、IH定着、ベルト定着、IHF定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。なお、これら定着方式は単独で用いても良く、複数の定着方式を組み合わせた形で使用してもよい。
【0105】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。
即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0106】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そして、このトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
【0107】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0108】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【0109】
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。例えば、露光部3、現像部4、転写部5及びクリーニング部6の内、少なくとも1つをドラム状感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化とすることが出来る。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【0110】
上述したような本発明の有機化合物の製造方法により製造した電子材料を使用した場合、画像形成装置は、画像特性(特にメモリ特性)に優れ、特に、繰返しにおける特性に優れる。また、環境変動による画像特性の変化にも優れる。また、細線再現において優れる事から、重合トナーとの組合せにおいても効果を発揮する。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
なお、以下の説明において、Etはエチル基を表わし、Phはフェニル基を表わす。また、「部」は、特に断らない限り「重量部」を表わす。また、「HPLC」は特に断らない限り「高速液体クロマトグラフィ」を表す。
【0112】
〔4−メトキシジフェニルアミンの製造〕
〔実施例1A〕
4−ヒドロキシジフェニルアミン37g、及び、ヨウ素化メタン50gを、メチルエチルケトン150mL中に溶解させた。この溶液に、炭酸カリウム(旭硝子製FG粉砕品:個数平均粒径55μm、比表面積1.8m2/g、嵩密度0.44g/mL)70gを添加し、75℃まで昇温し、反応させたところ、反応終了に、24時間かかった。
これに、水100mL、トルエン200mLを加え分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留し、4−メトキシジフェニルアミン35gを得た(収率88%、HPLC純度97%)。
【0113】
〔実施例1B〕
4−ヒドロキシジフェニルアミン37g、及び、ヨウ素化メタン50gをメチルエチルケトン150mL中に溶解させた。この溶液に、炭酸カリウム(旭硝子製FG−R10:個数平均粒径11μm、比表面積2.0m2/g、嵩密度0.29g/mL)100gを添加し、還流させて反応させたところ、反応終了に、2日間要した。
これに、水100mL、トルエン200mLを加え分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留し、4−メトキシジフェニルアミン30gを得た(収率83%、HPLC純度98%)。
【0114】
〔比較例1A〕
4−ヒドロキシジフェニルアミン37g、及び、ヨウ素化メタン50gをメチルエチルケトン150mL中に溶解させた。この溶液に、炭酸カリウム(旭硝子製F:個数平均粒径480μm、比表面積0.22m2/g、嵩密度1.3g/mL)69gを添加し、還流下反応させたところ、反応終了に、3日間要した。
これに、水100mL、トルエン200mLを加え分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、HPLCおよび、1H−NMRにて分析したところ、原料の4−ヒドロキシジフェニルアミンが5%残存し、4−ヒドロキシ−N−メチルジフェニルアミンが最大成分(60%)であり、目的とする4−メトキシジフェニルアミンは、少量しか存在(17%)していなかった。また、同定できない成分が多数認められた。
【0115】
〔比較例1B〕
4−ヒドロキシジフェニルアミン37g、及び、ヨウ素化メタン50gをメチルエチルケトン150mL中に溶解させた。この溶液に、炭酸カリウム(関東化学製鹿一級:個数平均粒径0.8mm)69gを添加し、還流下、7日間反応させた。
これに、水100mL、トルエン200mLを加え分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、HPLCおよび、1H−NMRにて分析したところ、原料の4−ヒドロキシジフェニルアミンが5%残存し、4−ヒドロキシ−N−メチルジフェニルアミンが最大成分(80%)であり、目的とする4−メトキシジフェニルアミンは、微量しか存在(2%)していなかった。また、比較例1A以上に同定できない成分が多数認められた。
【0116】
【表1】

【0117】
〔N−(4−イソプロピルフェニル)N,N−ジフェニルアミンの製造〕
〔実施例2〕
ジフェニルアミン16.9g、及び、4−ヨードクメン30gをニトロベンゼン50mL中に溶解させた。この溶液に、炭酸カリウム(旭硝子製粉砕品:個数平均粒径26μm、比表面積0.6m2/g、嵩密度0.66g/mL)25g、金属銅粉5gを添加し、210℃まで昇温して、9時間反応させた。
これに、水200mL、トルエン200mLを加え分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留し、N−(4−イソプロピルフェニル)N,N−ジフェニルアミン24.5gを得た(収率85%、HPLC純度96%)。
【0118】
〔比較例2〕
ジフェニルアミン16.9g、及び、4−ヨードクメン30gをニトロベンゼン50mL中に溶解させた。この溶液に、炭酸カリウム(関東化学製鹿一級:個数平均粒径0.8mm)25g、金属銅粉5gを添加し、210℃まで昇温して、2日間反応させた。
これに、水200mL、トルエン200mLを加え分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留し、N−(4−イソプロピルフェニル)N,N−ジフェニルアミン22gを得た(収率77%、HPLC純度95%)。
【0119】
【表2】

【0120】
〔N,N,N−トリス(p−トリル)アミンの製造〕
〔実施例3〕
p−トルイジン10.7g、p−ヨードトルエン30g、炭酸カリウム(旭硝子製粉砕品:個数平均粒径26μm、比表面積0.6m2/g、嵩密度0.66g/mL)25g、及び、金属銅粉5gを四つ口フラスコ中に添加し、210℃まで昇温して、9時間反応させた。
これに、水200mL、トルエン200mLを加え、分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留した後、フラッシュクロマトグラフィー(移動相:トルエン、固定相:シリカゲル50g)にて精製し、N,N,N−トリス(p−トリル)アミン25gを得た(収率87%、HPLC純度99%)。
【0121】
〔比較例3A〕
p−トルイジン10.7g、p−ヨードトルエン30g、炭酸カリウム(関東化学製鹿一級:個数平均粒径0.8mm)25g、及び、金属銅粉5gを四つ口フラスコ中に添加し、210℃まで昇温して、9時間反応させた。
これに、水200mL、トルエン200mLを加え、分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留した後、フラッシュクロマトグラフィー(移動相:トルエン、固定相:シリカゲル50g)にて精製し、N,N,N−トリス(p−トリル)アミン23gを得た(収率80%、HPLC純度98%)。
【0122】
〔比較例3B〕
p−トルイジン10.7g、p−ヨードトルエン30g、炭酸カリウム(旭硝子製FG:個数平均粒径0.29mm、比表面積1.3m2/g、嵩密度0.9g/mL)25g、及び、金属銅粉5gを四つ口フラスコ中に、添加し、210℃まで昇温して、8時間反応させた。
これに、水200mL、トルエン200mLを加え、分液し、有機層を水100mLにて3回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウム20gにて乾燥した後、溶媒を留去した。残渣を、減圧蒸留した後、フラッシュクロマトグラフィー(移動相:トルエン、固定相:シリカゲル50g)にて精製し、N,N,N−トリス(p−トリル)アミン23gを得た(収率83%、HPLC純度98%)。
【0123】
【表3】

【0124】
〔Ph−CH=CH−CO2Etの製造〕
〔実施例4〕
(EtO)2P(O)−CH2−CO2Etを0.11g、ベンズアルデヒド0.05g、アントラセン0.10g(系内リファレンス)、炭酸カリウム(旭硝子製FG−F10:個数平均粒径11μm、比表面積0.5m2/g、嵩密度0.61g/mL)1.5gを、テトラヒドロフラン(以下適宜、「THF」という)5mL(水0.1mL含有)溶液に添加し、超音波を20分かけた。HPLCにて、反応転化率を確認すると、反応転化率(Ph−CH=CH−CO2Et収率)は、85%である事が認められた。
【0125】
〔比較例4〕
(EtO)2P(O)−CH2−CO2Etを0.11g、ベンズアルデヒド0.05g、アントラセン0.10g(系内リファレンス)、炭酸カリウム(関東化学製鹿一級:個数平均粒径0.8mm)1.5gを、THF5mL(水0.1mL含有)溶液に添加し、超音波を20分かけた。HPLCにて、反応をチェックすると、反応転化率(Ph−CH=CH−CO2Et収率)は、40%である事が認められた。
【0126】
【表4】

【0127】
〔トリフェニル酢酸エチルの製造〕
〔実施例5〕
炭酸カリウム(旭硝子製FG−F20:個数平均粒径19μm、比表面積0.5m2/g)0.76g、沃化エチル1.6mL、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(以下適宜、「HMPA」という)15mLの混合物に、トリフェニル酢酸1.44gを加え、室温で反応させたところ、反応完結に、20時間かかった。
反応混合物を50mLの水に注ぎ、エーテル40mLで二回抽出した後、エーテル溶液を水洗した。その後、硫酸ナトリウム2gで有機層を乾燥させた後、溶媒を留去した。残渣を、ヘキサンで洗浄し、目的とするトリフェニル酢酸エチル1.5g(収率94%)を得た(HPLC純度99%)。
【0128】
〔比較例5〕
炭酸カリウム(関東化学製特級:個数平均粒径0.6mm)0.76g、沃化エチル1.6mL、HMPA15mLの混合物に、トリフェニル酢酸1.44gを加え、室温で反応させたところ、反応完結に、36時間かかった。
反応混合物を50mLの水に注ぎ、エーテル40mLで二回抽出した後、エーテル溶液を水洗した。その後、硫酸ナトリウム2gで有機層を乾燥させた後、溶媒を留去した。残渣を、ヘキサンで洗浄し、目的とするトリフェニル酢酸エチル1.4g(収率88%)を得た(HPLC純度98%)。
【0129】
【表5】

【0130】
〔p−アセトトルイジンの製造〕
〔実施例6〕
室温下、攪拌装置、温度計を装着した200mLの四つ口フラスコに、p−アセトトルイジン14.9g(0.10mol)、p−ブロモトルエン25.7g(0.15mol)、ヨウ化銅(I)1.9g(0.01mol)、炭酸カリウム(旭硝子製FG−R20:個数平均粒径20μm、比表面積1.9m2/g、嵩密度0.33g/mL)20.7g(0.15mol)を、順次に加え、系内に窒素を流しながら10分間攪拌した。この後、180℃まで加熱し、32時間その温度で加熱しつづけ、反応させた。
反応終了後、70℃まで冷却し、トルエン100mLを加え、固形分を濾別した。濾液中のp−アセトトルイジンの残存量をHPLCで定量したところ、反応転化率は95%であった。
【0131】
〔比較例6A〕
室温下、攪拌装置、温度計を装着した200mLの四つ口フラスコに、p−アセトトルイジン14.9g(0.10mol)、p−ブロモトルエン25.7g(0.15mol)、ヨウ化銅(I)1.9g(0.01mol)、炭酸カリウム(関東化学製特級:個数平均粒径0.6mm)20.7g(0.15mol)を順次に加え、系内に窒素を流しながら10分間攪拌した。この後、180℃まで加熱し、45時間その温度で加熱しつづけ、反応させた。
反応終了後、70℃まで冷却し、トルエン100mLを加え、固形分を濾別した。濾液中のp−アセトトルイジンの残存量をHPLCで定量したところ、反応転化率は85%であった。
【0132】
〔比較例6B〕
室温下、攪拌装置、温度計を装着した200mLの四つ口フラスコに、p−アセトトルイジン14.9g(0.10mol)、p−ブロモトルエン25.7g(0.15mol)、ヨウ化銅(I)1.9g(0.01mol)、炭酸カリウム(旭硝子製FG:個数平均粒径0.29mm、比表面積1.3m2/g、嵩密度0.9g/mL)20.7g(0.15mol)を順次に加え、系内に窒素を流しながら10分間攪拌した。この後、180℃まで加熱し、35時間その温度で加熱しつづけ、反応させた。
反応終了後、70℃まで冷却し、トルエン100mLを加え、固形分を濾別した。濾液中のp−アセトトルイジンの残存量をHPLCで定量したところ、反応転化率は89%であった。
【0133】
〔比較例6C〕
室温下、攪拌装置、温度計を装着した200mLの四つ口フラスコに、p−アセトトルイジン14.9g(0.10mol)、p−ブロモトルエン25.7g(0.15mol)、ヨウ化銅(I)1.9g(0.01mol)、炭酸カリウム(旭硝子製FG−F20をペイントシェーカーでガラスビーズ存在下30分粉砕した:個数平均粒径2μm)を順次に加え、系内に窒素を流しながら10分間攪拌した。この後、180℃まで加熱し、32時間その温度で加熱しつづけ、反応させた。
反応終了後、70℃まで冷却し、トルエン100mLを加え、固形分を濾別した。濾液中のp−アセトトルイジンの残存量をHPLCで定量したところ、反応転化率は90%であった。
【0134】
【表6】

【0135】
〔ポリ(エーテルスルホン)の製造〕
〔実施例7〕
N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ビフェニル−ジアミン5.2gとビス(4−フルオロフェニル)スルホン2.5gとをジメチルアセトアミド40mL中、炭酸カリウム(旭硝子製FG−F20:個数平均粒径20μm、比表面積0.5m2/g)(20mmol)の存在下、140℃で3時間縮合反応させ、ポリ(エーテルスルホン)が得られた。
このポリマーの重量平均分子量(Mw)は3.0×104、数平均分子量(Mn)は8.8×103であった。なお、分子量はTHF中でGPCにより測定したものである(ポリスチレン標準)。
【0136】
このポリマーを用いて、特開平9−188756の実施例8と同様にデバイスを作製し、電界発光素子として有効に働くことを確認した。
【0137】
〔比較例7〕
N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ビフェニル−ジアミン5.2gとビス(4−フルオロフェニル)スルホン2.5gとをジメチルアセトアミド40mL中、炭酸カリウム(関東化学製特級を10分間すり鉢で擂った物:個数平均粒径0.3mm)(20mmol)の存在下、140℃で3時間縮合反応させ、ポリ(エーテルスルホン)が得られた。
このポリマーの重量平均分子量(Mw)は1.5×104、数平均分子量(Mn)は6.0×103であった。なお、分子量はTHF中でGPCにより測定したものである(ポリスチレン標準)。
【0138】
【表7】

【0139】
〔画像形成試験〕
〔実施例D1〕
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ351mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行ない、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行なうことにより、約6μmの陽極酸化被膜を形成した。
【0140】
また、電荷発生物質として、Y型オキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部とを混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いて、この微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)を1,2−ジメトキシエタン253部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンを85部の混合液に溶解させて得られたバインダ液、及び、230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液を調製した。
【0141】
この分散液に、陽極酸化処理したアルミニウムシリンダーを浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.3μm(嵩密度0.3g/m2)となるように電荷発生層を作製した。
次に、電荷輸送物質として実施例3で製造した化合物60部と、バインダ樹脂として下記式(a)で表わされる構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(PC1;粘度平均分子量約30000)100部と、下記式(b)で表わされる構造を有する酸化防止剤8部と、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:KF96,信越化学工業(株))0.05部とを、THF/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640部に溶解させた液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する感光体ドラムA(感光体)を得た。
【0142】
【化2】

【0143】
作製した感光体ドラムAを、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電(マイナス極性)、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行なった。
【0144】
感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度(E1/2)として測定した(μJ/cm2)。また、該露光光を1.0μJ/cm2の強度で照射したときの100ms後の露光後表面電位(VL1)を測定した(−V)。
【0145】
さらに、上記プロセスの電位測定と除電の間に、転写をシュミレートする目的で、プラス極性のコロトロン帯電器を装着した。1サイクル/sのスピードでドラムを回転させ、除電光はオフとし、マイナス、プラスの帯電のサイクルを4000回繰り返した。その後、ふたたび除電光をオンし、VL1と同様にして露光後表面電位(VL2)を測定した(−V)。ここで、マイナス帯電はスコロトロンで初期表面電位を−700Vに帯電させる条件とし、プラス帯電は出力一定7kVでコロトロン帯電とした。
ΔVL=VL2−VL1を計測することで、プラス帯電の繰り返しが電子写真感光体特性に与える影響の大きさを評価した。この結果を表8に記す。
【0146】
更に、電子写真感光体Aを、A3印刷対応である市販のタンデム型カラープリンター(沖データ社製 Microline3050c)のシアンドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。まず、温度35℃、湿度80%の条件下、印刷のメディアタイプをOHPに設定し、縦送りで、三菱化学メディア社製A4版OHPフィルムMC502にシアン色の画像を100枚印刷した。次に、A3紙にシアンのベタ画像を印刷し、画像評価を行なった。A3紙に印刷されたベタ画像のOHPの通紙エリア(感光体がOHPシートを通して転写によるダメージを受けた部分)とOHPの非通紙エリア(感光体が直接転写によるダメージを受けた部分)の濃度差を確認したところ、目視で濃度差は、わずかに確認される程度であった。
【0147】
〔比較例D1〕
実施例D1において、使用した電荷輸送剤の代わりに、比較例3Aで製造した化合物を使用する以外は、実施例D1と同様に、電気特性の評価、画像特性の評価を行なった。電気特性の結果を表1に記す。
画像特性においては、A3紙に印刷されたベタ画像のOHPの通紙エリア(感光体がOHPシートを通して転写によるダメージを受けた部分)とOHPの非通紙エリア(感光体が直接転写によるダメージを受けた部分)の濃度差を確認したところ、目視で濃度差は、はっきり認められるものであった。
【0148】
【表8】

【0149】
〔まとめ〕
上記の実施例及び比較例の結果から、本発明の有機化合物の製造方法によれば、炭酸塩を用いて、高い収率、高い純度で、有機化合物を製造することができることが確認された。
また、本発明の有機化合物の製造方法により得られた有機化合物を電子材料として用い、その電子材料を使用して電子写真感光体及び画像形成装置を構成すれば、高いパフォーマンスを有する電子写真感光体及び画像形成装置を得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、産業上の任意の分野に用いることができ、特に、画像形成装置を使用する産業分野に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0152】
1 電子写真感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料に反応をさせて有機化合物を製造する有機化合物の製造方法であって、
前記反応の反応系に、個数平均粒径が60μm以下5μm以上の炭酸塩を存在させる
ことを特徴とする有機化合物の製造方法。
【請求項2】
前記炭酸塩がカリウム塩である
ことを特徴とする請求項1に記載の有機化合物の製造方法。
【請求項3】
前記有機化合物として、アミン化合物、アリール化合物、エーテル化合物、アルケン化合物及びエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を製造する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機化合物の製造方法。
【請求項4】
前記炭酸塩の比表面積が、0.5m2/g以上である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
【請求項5】
前記炭酸塩の嵩密度が、0.25g/mL以上1.1g/mL以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
【請求項6】
前記反応の反応温度が−10℃以上250℃以下である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
【請求項7】
前記反応において、比誘電率が2以上50以下の反応溶媒を使用する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法で作製された
ことを特徴とする電子材料。
【請求項9】
請求項8に記載の電子材料を使用した
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、
該感光層中に、請求項8に記載の電子材料を含有する
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項11】
請求項10記載の電子写真感光体と、
該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、
帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、
該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えた
ことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項12】
請求項10記載の電子写真感光体と、
該電子写真感光体を帯電させる帯電部、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部のうち、少なくとも一つとを備えた
ことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−161619(P2007−161619A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357650(P2005−357650)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】