説明

有機太陽電池セル及び太陽電池モジュール

【課題】トップ入射構造を有する,安価に製造できる有機太陽電池セルを提供する。
【解決手段】トップ入射構造を有する有機太陽電池セルを、絶縁性基板11に、厚さ方向に貫通した1つ以上の接続孔11aが設けられており、絶縁性基板11の下部電極層12側とは反対側の面に、各接続孔11aを覆う形状の接続用電極16が設けられており、絶縁性基板11の各接続孔11a内に、接続用電極16と下部電極層12との間を電気的に接続する導電性部材15が設けられている構成を採用しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換用の有機半導体層を備える太陽電池セルと、そのような太陽電池セルを複数個含む太陽電池モジュールとに、関する。
【背景技術】
【0002】
無機系の光電変換層を備えた太陽電池セル、そのような太陽電池セルを複数個直列接続(又は直並列接続)した太陽電池モジュールとしては、具体的な構成が異なるさまざまなものが知られている。
【0003】
例えば、各種膜の形成とレーザを用いたパターニングとにより、1枚の基板上に,直列接続された複数の太陽電池セルを形成した太陽電池モジュール(例えば、特許文献1参照。)や、複数の太陽電池セルをインターコネクタによって直列接続した太陽電池モジュール(例えば、特許文献4参照。)が知られている。
【0004】
また、透明電極層のシート抵抗によりセルサイズが制限されないようにするために、集電用の補助電極を透明電極層上に設けた,トップ入射型の太陽電池セル(例えば、特許文献3参照。)も知られている。
【0005】
このように、無機系の太陽電池セル/モジュールとしては、さまざまな構成のものが知られているのであるが、光電変換層を有機半導体層とすれば、より安価に太陽電池セルを製造することが可能となる。さらに、基板として、プラスティックフィルム等を用いれば、ロール状に巻き取った基板を繰り出しながら連続的に複数の太陽電池セルを製造すること(つまり、安価に、太陽電池セルを製造すること)が可能になる。そのため、有機半導体を用いた有機太陽電池セル(例えば、特許文献2参照。)の開発が進められている。しかしながら、トップ入射型構造(透明な上部電極を介して光電変換層に太陽光が入射される構造)を有する有機太陽電池セルの下部電極の,他の有機太陽電池セルの上部電極(透明電極)への接続は、有機半導体層の一部除去等により下部電極を露出させるといった煩雑な、コストのかかるプロセスにて行っているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3584750号公報
【特許文献2】特開2008−201819号公報
【特許文献3】特開平5−183177号公報
【特許文献4】特開平5−160425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、トップ入射構造を有する,安価に製造できる有機太陽電池セルを、提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の課題は、安価に製造できる太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、絶縁性基板上に、下部電極層と有機半導体層を含む光電変換部と透明電極層とが、この順に積層された部分を含む有機太陽電池セル(
つまり、トップ入射構造を有する有機太陽電池セル)を、『前記絶縁性基板に、厚さ方向に貫通した1つ以上の接続孔が設けられており、前記絶縁性基板の前記下部電極層側とは反対側の面に、前記1つ以上の接続孔を覆う形状の接続用電極が設けられており、前記絶縁性基板の各接続孔内に、前記接続用電極と前記下部電極層との間を電気的に接続する導電性部材が設けられている構成』を有するものとしておく。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の態様では、絶縁性基板上に、下部電極層と有機半導体層を含む光電変換部と透明電極層とが、この順に積層された部分を含む有機太陽電池セルを、『前記絶縁性基板の前記下部電極層側とは反対側の面の端部に、接続用電極が設けられており、前記絶縁性基板の前記端部側の側面に、前記接続用電極と前記下部電極層との間を電気的に接続する側面接続部材が設けられている構成』を有するものとしておく。
【0011】
すなわち、本発明の各態様の有機太陽電池セルは、接続用電極を利用すれば他の有機太陽電池セルと接続できるものであると共に、下部電極を露出させるためのプロセスを行うことなく製造できるものとなっている。従って、本発明の各態様の有機太陽電池セルは、安価に製造できるものであると共に、安価な太陽電池モジュール(請求項2,4)を実現できるものとなっていることになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トップ入射構造を有する,安価に製造できる有機太陽電池セル、安価に製造できる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る有機太陽電池セルの要部断面図。
【図2】第1実施形態に係る有機太陽電池セルの接続用電極側から見た平面図。
【図3】第1実施形態に係る有機太陽電池セルを用いて製造した太陽電池モジュールの構成図。
【図4】第2実施形態に係る有機太陽電池セルの要部断面図。
【図5】第2実施形態に係る有機太陽電池セルを用いて製造した太陽電池モジュールの構成図。
【図6】第2実施例に係る有機太陽電池セルの製造手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
《第1実施形態》
図1に、第1実施形態に係る有機太陽電池セル10の要部断面図(図2におけるX−X断面図)を示し、図2に、接続用電極16側から見た有機太陽電池セル10の平面図を示す。
【0016】
これらの図から明らかなように、有機太陽電池セル10は、厚さ方向に貫通した複数の接続孔11aが、その端部に設けられている絶縁性基板11の一方の面上に、下部電極層12、光電変換部13、上部電極層14を積層したものである。また、有機太陽電池セル10は、絶縁性基板11の各接続孔11a内に、各接続孔11aと同形状の導電性部材15が設けられ、絶縁性基板11の他方の面上に、各接続用孔11aを覆う形状の導電性部材である接続用電極16が設けられたものともなっている。
【0017】
以下、この有機太陽電池セル10の各構成要素の詳細を、有機太陽電池セル10の製造方法と共に、説明する。なお、以下の説明では、絶縁性基板11の下部電極層12が形成
される側の面のことを、表面と表記し、逆側の面のことを、裏面と表記する。
【0018】
この有機太陽電池セル10は、『接続孔11aを全く有さない絶縁性基板11上に下部電極層12等を形成した後に、下部電極層12等が形成されている絶縁性基板11に複数の貫通孔11aをあけ、各貫通孔11aへの導電性部材15の充填等を行う』といった手順や、『複数の接続孔11aを有する絶縁性基板11上に下部電極層12等を形成した後に、各接続孔11a内への導電性部材15の充填等を行う』といった手順でも、製造できるものである。ただし、そのような手順は、煩雑なものである。そのため、有機太陽電池セル10の製造時には、通常、以下の手順で、絶縁性基板11と導電性部材15と接続用電極16とからなる部分(以下、基板部と表記する)が製造される。
【0019】
まず、絶縁性基板11に加工する絶縁性部材を用意する。この絶縁性部材は、適度な強度を有する絶縁性板状部材でありさえすれば良い。ただし、連続的な有機太陽電池セル10の製造を可能とするため/可撓性を有する有機太陽電池セル10を実現できるようにするためには、絶縁性部材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリレート、環状ポリオレフィン、アラミド等の有機フィルムを採用しておくことが望ましい。なお、用意する絶縁性部材のサイズは、1つの絶縁性基板11(1個の有機太陽電池セル10の構成要素として使用できるサイズの絶縁性基板11)しか得られないサイズのであっても、複数個の絶縁性基板11を得られるサイズであっても良い。
【0020】
また、絶縁性部材の厚さが厚すぎると、有機太陽電池セル10の重量が増えると共に、有機太陽電池セル10の製造コストが高くなってしまうことになる。逆に、絶縁性部材の厚さが薄すぎると、機械的強度が弱い有機太陽電池セル10が得られてしまうことになる。そのため、絶縁性部材の厚さは、1μm以上、20mm以下としておくことが好ましく、5μm以上、10mm以下としておくことが望ましい。
【0021】
絶縁性基板11(絶縁性部材)に設ける接続孔11aの形状、数は、特に限定されない。また、絶縁性基板11への接続孔11aの形成は、レーザ加工や、パンチング等の機械的な加工により行うことが出来る。
【0022】
複数の接続孔11aを有する絶縁性基板11を製造した後には、各接続孔11a内に導電性部材15を形成(充填)すると共に、絶縁性基板11の裏面上へ図2に示したような形状の接続用電極16(詳細は後述)を形成するためのプロセスが行われる。このプロセスとしては、絶縁性基板11の裏面側に、銀ペースト等の導電ペーストをスクリーン印刷するプロセスや、マスクを形成した絶縁性基板11の裏面上に、CVD装置、真空蒸着装置等にて、導電性材料(例えば、Al等の金属や、導電性高分子等)を堆積させるプロセスを採用することが出来る。
【0023】
そして、当該プロセスの完了後に、必要な後処理(導電ペーストを乾燥させるための熱処理、マスクの除去処理等)を行うことによって、基板部(絶縁性基板11と導電性部材15と接続用電極16とからなる部分)が製造される。
【0024】
上記手順(又は他の手順)により形成される接続用電極16は、絶縁性基板11の複数の接続項11aを覆う形状の、導電性材料からなるものでありさえすれば良い。従って、接続用電極16を、図2に示したように、単純な矩形パターンとしておくことが出来る。
【0025】
なお、後述するように、この接続用電極16は、他の有機太陽電池セル10との間の接
続に使用されるものである。従って、接続用電極16は、有機太陽電池セル10の端部に設けておくことが好ましく、上記した接続孔11aも、絶縁性基板11の端部に設けておくことが好ましい。また、有機太陽電池セル10の重量が増える(固定が困難になる)/有機太陽電池セル10の製造に必要とされる材料量が増える(製造コストが上がる)ことを防ぐために、接続用電極16は、適度なサイズの、過度に厚くない厚さ(例えば、1μm厚)のものとしておくが望ましい。
【0026】
絶縁性基板11上に形成される下部電極層12は、導電性を有する層でありさえすれば良く、その製造方法も何であっても良い。従って、下部電極層12としては、金、アルミニウム等の金属や各種金属の合金、フッ化リチウム、フッ化セシウム等の無機塩、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム、フッ化セシウム等の金属酸化物等の蒸着膜/スパッタ膜等を採用することが出来る。
【0027】
また、下部電極層12の厚さは、シート抵抗が十分に低くなる、過度に厚くない厚さ(例えば、50nm〜1000nm程度の厚さ)でありさえすれば良い。
【0028】
光電変換部13は、有機半導体層を含むものでありさえすれば良い。より具体的には、光電変換部13は、有機半導体層(p型の半導体とn型の半導体を含む層)のみからなるものであっても、有機半導体層と他の層(例えば、正孔輸送層)とからなるものであっても良い。
【0029】
なお、有機半導体層を構成し得るp型の半導体としては、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポリフィリン等のプルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェン及びこれら化合物を骨格として含む誘導体が例示できる。さらに、有機半導体層を構成し得るp型の半導体として、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール等の高分子等も例示できる。
【0030】
また、有機半導体層を構成し得るn型の半導体としては、フラーレン(C60、C70、C76);オクタアポフィリン;上記p型半導体のパーフルオロ体;ナフラレンテトラカルボン酸無水物、ナフラレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化合物;及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などを例示できる。
【0031】
また、有機半導体層の具体的な構成例としては、p型半導体とn型半導体が層内で相分離した層(i層)を有するバルクヘテロ接合型、それぞれp型半導体を含む層(p層)とn型半導体を含む層(n層)を積層した積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型およびそれらの組み合わせを、挙げることが出来る。なお、有機半導体層の各層(p層、i層、n層)の厚みに特に制限はないが、均一性が比較的良く、透過率も或る程度高い有機半導体層を得るためには、その膜厚を、3nm以上、200nm以下としておくことが好ましく、10nm以上、100nm以下としておくことが望ましい。
【0032】
上部電極層14は、透明な、導電性材料層であれば良い。ただし、出力の高い有機太陽電池セル10を得るためには、上部電極層14を、波長500nmにおける透過率が50%以上である層としておくことが望ましい。なお、そのような上部電極層12を実現できる材料としては、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズインジウム(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物、或いは、金、白金、銀、クロム等の金属及びその合金、ポリチオゲン誘導体に
ポリスリレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSや、ポリピロー留及びポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性ポリマー等を例示できる。
【0033】
また、上部電極層14の厚さは、高い導電性が得られる,過度に厚くない厚さ(例えば、50nm〜1000nm程度の厚さ)としておくのが望ましい。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る有機太陽電池セル10は、絶縁性基板11内の導電性部材15により下部電極層12が、セル裏面の接続用電極16と接続された構成を有している。
【0035】
従って、この有機太陽電池セル10を用いて太陽電池モジュールを製造する場合には、図3に模式的に示してあるように、各有機太陽電池セル10の接続用電極16を、導電性を有するインターコネクタ30により、他の有機太陽電池セル10の上部電極層14に接続してやれば良いことになる。
【0036】
なお、有機太陽電池セル10間を接続するインターコネクタ30としては、ステンレス、アルミ、銅、鉄、などの金属箔を切断したものを用いることができる。また、太陽電池モジュールの製造(組み立て)時に、有機太陽電池セル10間に設けるインターコネクタ30は、1本であっても複数本であっても良い。
【0037】
インターコネクタ30の接続用電極16/上部電極層14への取り付けには、導電性接着剤や、導電性両面テープ(導電性基材(金属箔等)の両面に導電性接着剤が塗布されたもの)を用いることができる。また、導電性接着剤としては、金粉、銀粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、カーボン粉などを導電フィラーとして含む、二液型、熱硬化型の接着剤を用いることができる。ただし、導電性接着剤は、その体積抵抗値が、10-1〜10-6[Ω・cm]程度のものであることが望まれる。
【0038】
このように、有機太陽電池セル10は、接続用電極16を利用すれば他の有機太陽電池セル10と接続できるものであると共に、下部電極12を露出させるためのプロセスを行うことなく製造できるものとなっている。従って、この第1実施形態に係る有機太陽電池セル10は、安価に製造できるものであると共に、安価に太陽電池モジュールを実現できるものとなっていることになる。
【0039】
《第2実施形態》
まず、図4を用いて、本発明の第2実施形態に係る有機太陽電池セル20の構成を、有機太陽電池セル10と異なる部分を中心に、説明する。
【0040】
図示してあるように、本実施形態に係る有機太陽電池セル20も、有機太陽電池セル10(図1参照)と同様に、接続用電極16が形成されている絶縁性基板11上に、上部電極層14等が積層されたものである。
【0041】
ただし、有機太陽電池セル20には、絶縁性基板11として、接続孔11aが設けられていないものが使用されている。また、有機太陽電池セル20の接続用電極16は、その1辺が、絶縁性基板11の1辺とほぼ一致するものとなっている。
【0042】
さらに、有機太陽電池セル20は、下部電極12上に、当該下部電極12の接続用電極16側の端部を覆わない形状/サイズの上部電極層14及び光電変換部13を積層した構造を有している。なお、そのような構造(以下、段差構造と表記する)は、上部電極層14及び光電変換部13の形成時にマスクを使用するといった方法や、下部電極12と同サイズの上部電極層14及び光電変換部13を形成後、その端部をレーザ等により除去する
といった方法により、実現できる。
【0043】
そして、有機太陽電池セル20は、接続用電極16が設けられている側の側面に、接続用電極16と下部電極層12とを電気的に接続する側面接続部材17が設けられたものとなっている。
【0044】
以上の説明から明らかなように、この有機太陽電池セル20は、絶縁性基板11(の接続孔11a)内に導電性部材15を設けるのではなく、セル側面に側面接続部材17を設けることにによって、接続用電極16と下部電極層12とが電気的に接続されるようにしたものとなっている。
【0045】
従って、この有機太陽電池セル20を用いる場合にも、図5に模式的に示してあるように、各有機太陽電池セル20の接続用電極16を、導電性を有するインターコネクタ30により、他の有機太陽電池セル20の上部電極層14に接続してやれば、太陽電池モジュールを実現できることになる。
【0046】
ここで、有機太陽電池セル20に、上記段差構造を採用している理由を説明しておくことにする。
【0047】
接続用電極16と下部電極層12とを側面接続部材17にて電気的に接続する場合、側面接続部材17が上部電極層14と接しないようにすることが必要である。そして、比較的に複雑なプロセスを採用すれば、上部電極層14が露出しているセル側面(図1参照。)に、上部電極層14と接しないように、側面接続部材17を形成することが出来る。しかしながら、安価に有機太陽電池セルを製造できるようにするためには、側面接続部材17を簡単に形成できるようにしておくべきである。そして、上記のような段差構造を採用しておけば、側面接続部材17の取り付け位置が、多少、ずれても、側面接続部材17と上部電極層14とが接しないことになり、その結果として、“金属シートをセル側面に導電性接着剤で貼り付ける”ことによって側面接続部材17を形成できることになる。
【0048】
そのため、有機太陽電池セル20に、上記段差構造を採用しているのである。従って、段差構造を採用したくない理由がある場合には、段差構造を採用しない形で有機太陽電池セル20を製造しても良い。
【0049】
最後に、本発明の太陽電池セルについての2つの実施例を、説明しておくことにする。
【0050】
《第1実施例》
第1実施例に係る有機太陽電池セルは、図1に示した構成を有するものである。そして、第1実施例に係る有機太陽電池セル(以下、有機太陽電池セル10と表記する)は、以下の手順で製造されたものとなっている。
【0051】
まず、絶縁性基板11に加工する絶縁性部材として、膜厚100umのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用意した。なお、用意したPENフィルムは、それを切断することによって、5cm×5cmサイズの絶縁性基板11を複数得ることが出来るサイズのものである。次いで、そのPENフィルムの各所(接続用電極16を形成する部分)に、直径100μmの複数個の接続孔11aを5mm間隔であけることによって、複数の絶縁性基板11に相当する部材(以下、太陽電池セルシートと表記する)を得た。
【0052】
その後、太陽電池セルシートの片面に銀ペーストをスクリーン印刷してから、太陽電池セルシートを150℃の環境下で30分間熱処理するという手法で、導電性部材15を各接続孔11a内に形成(充填)すると共に、接続用電極16を、太陽電池セルシート内の
各絶縁性基板11上に形成した。なお、この際、形成した接続用電極16は、図2に示した形状のものである。
【0053】
次に、太陽電池セルシートの,接続用電極16の形成面とは反対側の面に、下部電極層12として、膜厚100nmのアルミニウム膜を蒸着法により形成した。
【0054】
その後、形成した下部電極層12上にPEDOT−PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)―ポリ(スチレンスルフォン酸))溶液を塗布してから、120℃で10分間乾燥させることにより、膜厚がおよそ30nmの正孔輸送層(光電変換部13の一部)を形成した。
【0055】
さらに、有機半導体塗布液をワイヤーバーにより塗布してから、120℃で10分間乾燥させることにより、膜厚がおよそ100nmの有機半導体層(光電変換部13の残りの部分)を正孔輸送層上に形成した。なお、実際に使用した有機半導体塗布液は、ポリチオフェン(P3HT;ポリ3−ヘキシルチオフェン)とフラーレン(PCBM;1−(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル(6.6)−C61)の1.0wt%クロロベンゼン溶液を、重量比1:1で混合したものである。
【0056】
次いで、形成した有機半導体層上に、上部電極層14として、膜厚200nmのITO膜をスパッタ法により形成した。そして、上記一連の工程を経た太陽電池セルシートを、5cm角サイズに切断することによって、第1実施例に係る有機太陽電池セル10を製造した。
【0057】
有機太陽電池セル10の評価は、製造した有機太陽電池セル10を用いて図3に示した構成の太陽電池モジュールを製造し、その出力を測定することによって行った。そして、その測定結果は、有機太陽電池セル10に採用されている上記電極構成が、有機太陽電池セル10から問題なく電力を取り出せるものであることを示すものとなっていた。
【0058】
《第2実施例》
第2実施例に係る有機太陽電池セルは、図4に示した構成を有するものである。そして、第2実施例に係る有機太陽電池セル(以下、有機太陽電池セル20と表記する)は、以下の手順で製造されたものとなっている。
【0059】
まず、貫通孔11aを備えない絶縁性基板11を用いて、上記した第1実施例と同様の手順で、有機太陽電池セルを製造した。
【0060】
次いで、図6に模式的に示したように、当該有機太陽電池セルの上部電極層14及び光電変換部13の,接続用電極16側の端から所定長さ(本実施例では、2mm)の部分を、レーザにより除去した。その後、その一部を除去した有機太陽電池セルの接続用電極16側の側面に、接続用電極16と下部電極層12とが電気的に接続されるように側面接続部材17としてのAlテープを導電性接着剤により貼り付けることにより、有機太陽電池セル20を製造した。
【0061】
有機太陽電池セル20の評価は、製造した有機太陽電池セル20を用いて図5に示した構成の太陽電池モジュールを製造し、その出力を測定することによって行った。そして、その測定結果は、有機太陽電池セル20に採用されている上記電極構成も、有機太陽電池セル20から問題なく電力を取り出せるものであることを示すものとなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の有機太陽電池セル、太陽電池モジュールは、光熱費の削減等に利用することが
できる。
【符号の説明】
【0063】
10,20 有機太陽電池セル
11a 接続孔
11 絶縁性基板
12 下部電極層
13 光電変換部
14 上部電極層(透明電極層)
15 導電性部材
16 接続用電極
17 側面接続部材
30 インターコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に、下部電極層と有機半導体層を含む光電変換部と透明電極層とが、この順に積層された部分を含む有機太陽電池セルであって、
前記絶縁性基板に、厚さ方向に貫通した1つ以上の接続孔が設けられており、
前記絶縁性基板の前記下部電極層側とは反対側の面に、前記1つ以上の接続孔を覆う形状の接続用電極が設けられており、
前記絶縁性基板の各接続孔内に、前記接続用電極と前記下部電極層との間を電気的に接続する導電性部材が設けられている
ことを特徴とする有機太陽電池セル。
【請求項2】
請求項1記載の有機太陽電池セルである第1乃至第N(N≧2)の太陽電池セルと、
それぞれ、第1乃至第N−1の太陽電池セルの接続用電極と第2乃至第Nの太陽電池セルの上部電極層とを電気的に接続するN−1個のインターコネクタと、
を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項3】
絶縁性基板上に、下部電極層と有機半導体層を含む光電変換部と透明電極層とが、この順に積層された部分を含む有機太陽電池セルであって、
前記絶縁性基板の前記下部電極層側とは反対側の面の端部に、接続用電極が設けられており、
前記絶縁性基板の前記端部側の側面に、前記接続用電極と前記下部電極層との間を電気的に接続する側面接続部材が設けられている
ことを特徴とする有機太陽電池セル。
【請求項4】
請求項3記載の有機太陽電池セルである第1乃至第N(N≧2)の太陽電池セルと、
それぞれ、第1乃至第N−1の太陽電池セルの接続用電極と第2乃至第Nの太陽電池セルの上部電極層とを電気的に接続するN−1個のインターコネクタと、
を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記絶縁性基板が、プラスティックフィルムである
ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の有機太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−159937(P2011−159937A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22785(P2010−22785)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】